(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】微生物の存在を判定し、前記微生物を同定するための方法、システム、及びコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20220117BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220117BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2019510638
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2017071775
(87)【国際公開番号】W WO2018041900
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-31
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スートゥラ, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】バルラス, フィリピーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アルシェニー, デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュラン, ジェラルディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】フルシロン, コリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルセ, ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ペラン, ギヨーム
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-125696(JP,A)
【文献】特開2003-116593(JP,A)
【文献】特表2014-513960(JP,A)
【文献】特表2015-536140(JP,A)
【文献】特開2016-052256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の一又は複数のコロニーと培地とを含むペトリ皿中の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するための方法であって、前記培地が、微生物の一又は複数のコロニーと、存在する場合前記少なくとも一種の特定された微生物とが適切な増殖条件下で増殖するのを可能にするように適応されている方法において、
- 撮像システムを用いて、ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像を取得するステップであって、第一の初期画像が複数の可視画素を含み、各画素が画素値と関連付けられているステップ;
- 少なくとも一つの初期画像に第一の処理を適用することによってペトリ皿の第一の処理済み画像を取得するステップであって、第一の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーに関連付けられた画素のみに関連しているステップ;
- 第一の処理済み画像に第二の処理を適用することによってペトリ皿の複数の第二の処理済み画像を取得する ステップであって、第二の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーと微生物の前記一又は複数のコロニーの周辺の周囲ゾーンとに関連付けられた画素のみに関連しているステップ;
- 少なくとも一つの初期画像と複数の第二の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第三の処理済み画像を取得するステップであって、複数の第三の処理済み画像が培地に関連付けられた画素のみに関連する可視画素を含むステップ;
- 複数の第二の処理済み画像と第一の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第四の処理済み画像を取得するステップであって、複数の第四の処理済み画像の可視画素が周囲ゾーンに関連付けられた画素のみに関連しているステップ;
- 複数の第三の処理済み画像の平均画素値と複数の第四の処理済み画像の平均画素値との間の差分値を、赤緑青(RGB)色チャネルの少なくとも各色チャネルについて計算することによって、複数の第三及び第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量を決定するステップ;
- 決定された特徴量を分類することによって、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在の指標の値を決定するステップ;
- 指標の値を閾値と比較するステップ;
- 比較の結果に応じて、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
第一の処理がセグメンテーション処理である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セグメンテーション処理が、閾値の決定と、画素値と前記閾値の比較とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記セグメンテーション処理が、グラフベースの領域セグメンテーション処理である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第二の処理が、複数の定義された値を有する膨張基準に関連付けられた膨張処理である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
特徴量を決定するステップが、複数の第三の処理済み画像と第四の処理済み画像を画素パッチに分割することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各画素パッチについて、前記第三の処理済み画像と第四の処理済み画像の画素値間の画素値の最大差分を計算することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
特徴量を決定するステップが、グレースケール画像に対して画素値の最大差分を計算することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
特徴量を決定するステップが、複数の第一の処理済み画像の中央画素値とHSV空間に対する複数の第一の処理済み画像の中央画素値とを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
特徴量を分類するステップが、特徴量の分布をガウス分布と比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
特徴量を分類するステップが、分類及び回帰ツリーアルゴリズムとサポートベクトルアルゴリズムを適用して、対応する第一及び第二スコアを提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
特徴量を分類するステップが、ベイズ定理を第一及び第二スコアに適用することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
指標の値を閾値と比較するステップが、ガウス分布の平均と標準偏差σに基づいて閾値を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも特定された微生物の存在を判定するステップが、ベータ溶血性細菌である細菌の存在を判定することを含む、請求項1、2、3、5、6、7、8、10又は
13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも特定された微生物の存在を判定するステップが、プロテウス菌である細菌の存在を判定することを含む、請求項1、4、9、11
又は1
2の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
微生物の一又は複数のコロニーと培地とを含むペトリ皿中の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するためのシステムであって、前記培地が、微生物の一又は複数のコロニーと、存在する場合前記少なくとも一種の特定された微生物とが適切な増殖条件下で増殖するのを可能にするように適応されており、ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像を取得するための撮像システムと、処理システム(108)とを備えるシステム(100)において、前記処理システム(108)が、
- ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像の第一の処理済み画像を取得するための第一の処理ユニットであって、第一の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーに関連付けられた画素のみに関連する第一の処理ユニット(116);
- ペトリ皿の第一の処理済み画像の複数の第二の処理済み画像を取得するための第二の処理ユニットであって、第二の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーと微生物の前記一又は複数のコロニーの周辺の周囲ゾーンとに関連付けられた画素のみに関連する第二の処理ユニット(118);
- 別の初期画像と第二の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第三の処理済み画像を取得するためと、第二の処理済み画像と第一の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第四の処理済み画像を取得するための計算ユニットであって、第三の処理済み画像の可視画素が培地に関連付けられた画素のみに関連し、第四の処理済み画像の可視画素が周囲ゾーンに関連付けられた画素のみに関連する計算ユニット(120);
- 第三の処理済み画像の平均画素値と第四の処理済み画像の平均画素値との間の差分値をRGB色チャネルの少なくとも各色チャネルに対して計算することによって、複数の第三の処理済み画像と第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量を決定するための特徴抽出ユニット(122);
- 及びペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在の指標の値を決定し、指標の値を閾値と比較し;かつ比較の結果に応じて、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するための分析ユニット(110)
を備える、システム(100)。
【請求項17】
プログラマブルデータ処理装置に請求項1から
15の何れか一項に記載の方法のステップを実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペトリ皿中の生物学的サンプルであって微生物を含む生物学的サンプルを分析するための微生物学的分析の分野に関し、より具体的には、ペトリ皿中の細菌などの微生物の存在を判定し、前記微生物を同定するための方法、システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物学の分野では、特定の細菌の存在を判定し前記細菌を同定するために、例えば微生物、細胞抽出物又は細胞内抽出物を含む生物学的サンプルの増殖について分析が実施されることはよく知られている。而して、対応する疾患を診断することができる。
【0003】
従来技術には、細菌を同定する幾つかの解決策が存在している。解決策は、記述子と呼ばれる基準を使用する教師あり学習アルゴリズムを含む方法に基づいている。記述子は細菌の色、形態及び構造に関連する。
【0004】
そのような方法はまた孤立した細菌コロニーの位置を決定するためのステップを伴って作動する。その位置は、半自動化された形でユーザーによって、又は自動化された形で特定のセグメンテーションアルゴリズムを適用することによって、提供されうる。しかし、位置を提供するこれらの方法は双方とも不正確であり、位置の誤った決定につながる幾つかのエラーを発生させる。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0087017号は、細菌コロニーの自動分類のための方法を開示している。その方法は、ペトリ皿内の細菌コロニーの分類ステップに基づいており、前記分類ステップは、各細菌コロニーの色、形状及び輪郭などの基準に基づいている。
【0006】
しかしながら、そのような自動化方法は、ペトリ皿の内容物の分析には適用されない。実際、ペトリ皿中の細菌コロニー周辺の環境もまた前記細菌コロニーに関連する特定の生物学的現象とそれらの培地との相互作用を特定するためには分析されなければならない。そのような生化学的反応は、様々な微生物を識別し、診断仮説を作り又はそれを棄却することを可能にするために生物学者によって使用される。
【0007】
例えば、血液寒天培地を含むペトリ皿中の微生物の増殖を分析することに関して、従来技術の方法は、特定の微生物を特徴付けるために寒天培地中の血液細胞が分解されるレベルを決定する溶血現象の性質を特定するためのステップを含む。溶血現象は、寒天の血液細胞を破壊することができるタンパク質を産生する所定の微生物の能力に関連している。溶血現象には、次のようにアルファ、ベータ、ガンマと命名された3タイプがある:
- アルファ溶血現象は、血液寒天上で増殖する細菌コロニーを囲む緑がかった変色を生じさせる。この種の溶血現象は、血液寒天の赤血球のヘモグロビンの部分的分解を表す。
- ベータ溶血現象は、細菌コロニーの近くにある赤血球のヘモグロビンの全分解を表す。
- ガンマ溶血現象は細菌コロニーの周辺領域に如何なる分解もないことに対応する。
【0008】
他の状況では、細菌と培地との間の相互作用は、特定の色の出現のようなコロニーを囲む目に見えるアーティファクトを生み出す。これらの色の変化は、培地と細菌によって産生される代謝産物との間の化学反応によるものであり、前記化学反応は微生物自体の性質に応じて正又は負の反応として解釈されうる。今日、溶血現象の性質又はコロニー周辺の色の変化を決定するためにペトリ皿の内容物を見なければならないユーザーによってそのようなステップが提供される。しかしながら、そのようなヒューマン分析は誤りを招く可能性がある。加えて、分析されるべきペトリ皿の数が増加している状況では、前記同定ステップは時間のかかるプロセスである。
【0009】
よって、ペトリ皿中の生物学的エレメントの自動同定を効率的な形で可能にするためには従来技術の方法を改良する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様によれば、微生物の一又は複数のコロニーと培地とを含むペトリ皿中の少なくとも一種の特定された微生物(例えば少なくとも一種の特定された細菌)の存在を判定するための方法であって、前記培地が、微生物の一又は複数のコロニーと、存在する場合前記少なくとも一種の特定された微生物とが適切な増殖条件下で増殖するのを可能にするように適応されている方法において、
- ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像を取得するステップであって、第一の初期画像が一又は複数の可視画素を含み、各画素が画素値と関連付けられているステップ;
- 少なくとも一つの初期画像に第一の処理を適用することによってペトリ皿の第一の処理済み画像を取得するステップであって、第一の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーに関連する画素のみに関連付けられているステップ;
- 第一の処理済み画像に第二の処理を適用することによってペトリ皿の複数の第二の処理済み画像を得るステップであって、第二の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーと微生物の前記一又は複数のコロニーの周辺の周囲ゾーンとに関連付けられた画素のみに関連しているステップ;
- 少なくとも一つの初期画像と複数の第二の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第三の処理済み画像を取得するステップであって、複数の第三の処理済み画像が培地に関連付けられた画素のみに関連する可視画素を含むステップ;
- 複数の第二の処理済み画像と第一の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第四の処理済み画像を取得するステップであって、複数の第四の処理済み画像の可視画素が周囲ゾーンに関連付けられた画素のみに関連しているステップ;
- 複数の第三の処理済み画像の平均画素値と複数の第四の処理済み画像の平均画素値との間の差分値を、赤緑青(RGB)色チャネルの少なくとも各色チャネルについて計算することによって、複数の第三及び第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量を決定するステップ;
- 決定された特徴量を分類することによって、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在の指標の値を決定するステップ;
- 指標の値を閾値と比較するステップ;
- 比較の結果に応じて、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するステップ
を含む、方法が提供される。
【0011】
本出願の文脈において、「平均画素値」という用語は、以下を指す:
- 画素値の算術平均、又は
- 画素値の中央値。
【0012】
本発明の好ましい実施態様によれば、複数の第三の処理済み画像と第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量は、複数の第三の処理済み画像の中央画素値と複数の第四の処理済み画像の中央画素値との間の差分値を赤緑青(RGB)色チャネルの少なくとも各色チャネルに対して計算することによって決定される。
【0013】
好ましくは、第一の処理はセグメンテーション処理である。
【0014】
本発明に係る方法は、微生物のコロニーの周辺の特定のゾーンの自動同定と、溶血現象又はプロテウス感染などの生物学的現象にそれぞれ関連しているベータ溶血性又はプロテウス菌のような細菌の存在の自動判定に基づくペトリ皿の内容物の自動分析を提供する。よって、本方法は、視覚的同定ステップ及び/又は視覚的判定ステップの動作を回避する。
【0015】
本発明に係る方法は、ペトリ皿中の微生物のコロニーの周辺の特定のゾーンを同定するためのステップを含み、前記特定のゾーンは細菌コロニー又はコロニーの細菌クラスターを含みうる。
【0016】
本発明の更なる態様によれば、微生物の一又は複数のコロニーと培地とを含むペトリ皿中の少なくとも一種の特定された微生物(例えば少なくとも一種の特定された細菌)の存在を判定するためのシステムであって、前記培地が、微生物の一又は複数のコロニーと、存在する場合前記少なくとも一種の特定された微生物とが適切な増殖条件下で増殖するのを可能にするように適応されており、ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像を取得するための撮像システムと、処理システムとを備えるシステムにおいて、前記処理システムが、
- ペトリ皿の少なくとも一つの初期画像の第一の処理済み画像を取得するための第一の処理ユニットであって、第一の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーに関連付けられた画素のみに関連する第一の処理ユニット;
- ペトリ皿の第一の処理済み画像の複数の第二の処理済み画像を取得するための第二の処理ユニットであって、第二の処理済み画像の可視画素が微生物の一又は複数のコロニーと微生物の前記一又は複数のコロニーの周辺の周囲ゾーンとに関連付けられた画素のみに関連する第二の処理ユニット;
- 第二の初期画像と第二の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第三の処理済み画像を取得するためと、第二の処理済み画像と第一の処理済み画像との間の差分を計算することによってペトリ皿の複数の第四の処理済み画像を取得するための計算ユニットであって、第三の処理済み画像が培地に関連付けられた画素のみに関連し、第四の処理済み画像の可視画素が周囲ゾーンに関連付けられた画素のみに関連する計算ユニット;
- 第三の処理済み画像の平均画素値と第四の処理済み画像の平均画素値との間の差分値をRGB色チャネルの少なくとも各色チャネルに対して計算することによって、複数の第三の処理済み画像と第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量を決定するための特徴抽出ユニット;
- 及びペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在の指標の値を決定し、指標の値を閾値と比較し;かつ比較の結果に応じて、ペトリ皿中の周囲ゾーン内の少なくとも一種の特定された微生物の存在を判定するための分析ユニット
を備える、システムが提供される。
【0017】
先に示されたように、本発明の好ましい実施態様によれば、複数の第三処理済み画像と第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量は、複数の第三の処理済み画像の中央画素値と複数の第四の処理済み画像の中央画素値との間の差分値を赤緑青(RGB)色チャネルの少なくとも各色チャネルに対して計算することによって決定される。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、実行されると、プログラマブルデータ処理装置に本発明に係る方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下に、例示としての添付図面について言及する。
【0020】
【
図1】本発明の一実施態様に係るシステムの模式図を表す。
【
図2】発明の一実施態様に係る、円形孔、白背景円、及び黒背景円を備えたホイール形態のコントローラを表す。
【
図3】本発明の一実施態様に係る、ペトリ皿に照射される異なるタイプの照明ビームを示す撮像システムの模式図である。
【
図4】本発明の一実施態様に係る、細菌の存在を判定するための方法のフローチャートを示す。
【
図5】本発明の一実施態様に係る、溶血性細菌の存在を判定するための方法のフローチャートを示す。
【
図6】本発明の一実施態様に係る、血液寒天と溶血性細菌を含んでいるペトリ皿の原画像を表し、前記原画像はバックライト照明に関係している。
【
図7】
図7a、7b及び7cは、本発明の一実施態様に係る、中央底部ビューと共に、原画像の赤、緑及び青の色チャネル画像をそれぞれ示す。
【
図8】本発明の一実施態様に係る、原画像のGrowthMaskと呼ばれる二値画像を示す。
【
図9】
図9aは、本発明の一実施態様に係る、
図6の原画像のHaloMaskに関連する画像を示す。
図9bは、発明の一実施態様に係る、
図6の原画像のCultureMediumMaskを示す。
【
図10】
図10a及び10bは、本発明の一実施態様に係る、50ピクセルの
膨張パラメータを有する200×200ピクセルの画素パッチのためのHaloMask及びCultureMediumMaskをそれぞれ示す。
【
図11】
図11aは、本発明の一実施態様に係る、10ピクセルの
膨張パラメータを有するHaloMaskの画素パッチを示す。
図11bは、本発明の一実施態様に係る、10ピクセルの
膨張パラメータを有するCultureMediumMaskの画素パッチを示す。
【
図12】
図12aは、本発明の一実施態様に係る、50ピクセルの
膨張パラメータを有するHaloMaskの画素パッチを示す。
図12bは、本発明の一実施態様に係る、50ピクセルの
膨張パラメータを有するCultureMediumMaskの画素パッチを示す。
【
図13】
図13aは、本発明の一実施態様に係る、60ピクセルの
膨張パラメータを有するHaloMaskの画素パッチを示す。
図13bは、本発明の一実施態様に係る、60ピクセルの
膨張パラメータを有するCultureMediumMaskの画素パッチを示す。
【
図14a】本発明の一実施態様に係る、ベータ溶血性細菌、アルファ溶血性細菌、及びガンマ溶血性細菌を含むペトリ皿中のパッチレベルでの特徴の分布を示す。
【
図14b】本発明の一実施態様に係る、青色チャネル上のHaloMaskとCultureMediumMaskとの間の色の差分値に関する画素パッチの分布を示すグラフを表す。
【
図15】本発明の一実施態様に係る、プロテウス菌の存在を判定するための方法のフローチャートを示す。
【
図16】
図16aは、本発明の一実施態様に係る、CPS培地とプロテウス菌を含むペトリ皿の原画像を示す。
図16bは、本発明の一実施態様に係る、
図16aの原画像のBinaryGrowthMaskと呼ばれる二値画像を示す。
【
図17】
図17aは、本発明の一実施態様に係る、
図16aの原画像の有色のGrowthMaskを示す。
図17bは、本発明の一実施態様に係る、
図16aの原画像の有色のHaloMaskを示す。
図17cは、本発明の一実施態様に係る、
図16aの原画像の有色のCutureMediumMaskを示す。
【
図18】
図18aは、本発明の一実施態様に係る、70ピクセルの
膨張パラメータを有する、CPS培地とクラス4の細菌を含むペトリ皿の底部環状ビューと重ね合わせたHaloMaskの輪郭を示す。
図18bは、本発明の一実施態様に係る、10ピクセルの
膨張パラメータを有する、CPS培地とクラス4の細菌を含むペトリ皿の底部環状ビューと重ね合わせたHaloMaskの輪郭を示す。
【
図19】本発明の一実施態様に係る、プロテウス菌の存在確率の分布を表すグラフを示す。
【
図20】本発明の一実施態様に係る、プロテウス菌を含む不透明なCPSなどの不透明培地を含むペトリ皿の原画像を示す。
【
図21】本発明の一実施態様に係る、左側底部環状ビューに関係した
図20のペトリ皿の画像を示す。
【
図22】本発明の一実施態様に係る、上部環状ビューに関係した
図20のペトリ皿の画像を示す。
【
図23】本発明の一実施態様に係る、CARTアルゴリズム及びSVMアルゴリズムを用いたプロテウス菌の存在の確率p(Halo/X)の分布と、半透明培地を含むペトリ皿に対するプロテウス菌の存在の最終確率の分布とを示すグラフを表す。
【
図24】本発明の一実施態様に係る、CARTアルゴリズム及びSVMアルゴリズムを用いたプロテウス菌の存在の確率p(Halo/X)の分布と、不透明培地を含むペトリ皿に対するプロテウス菌の存在の最終確率の分布とを示すグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明は、特定の実施例に基づいて、十分に明確かつ完全な形で本発明を開示する。しかしながら、この説明は、保護の範囲を以下に記載される特定の実施態様及び実施例に限定するものとして理解されるべきではない。
【0022】
以下の説明において、「ペトリ皿」という用語は、ペトリ皿とペトリ皿を覆う蓋とのアセンブリを定義する。ペトリ皿は、ペトリ皿上又は蓋上に示されたセリグラフィを含みうる。
【0023】
以下の説明において、「画素」という用語は画像中の位置に関連し、「画素値」という用語は前記画像中の画素の対応するキャプチャ強度の検出値を指す。
【0024】
以下の説明において、「暗画素」という用語は、0の画素値を有する画素に関する。
【0025】
以下の説明において、「可視画素」という用語は、明画素としても知られる、0以外の値を有する画素に関する。
【0026】
説明された計算オペレーションは、関連画像の画素値に関連付けられたオペレーションに関する。
【0027】
以下の説明において、ペトリ皿の表面の表現は、正規直交空間x、y、zにおいて行われ、ここでzは、z=f(x,y)のように、xとyの関数である。
【0028】
以下の説明において、ペトリ皿に関連付けられた画素は、DishMaskと呼ばれる画像中のゾーンを画定する。
【0029】
以下の説明において、培地に関連付けられた画素は、CultureMediumMaskと呼ばれる画像中の培地ゾーンを画定する。
【0030】
同様に、微生物コロニーの周辺に位置する画素は、HaloMaskと呼ばれる画像中の周囲ゾーン又はハローゾーンを画定する。
【0031】
以下の説明において、「原画像」という用語は、画像キャプチャ装置を用いて獲得されているペトリ皿の画像に関する。
【0032】
以下の説明において、「初期画像」という用語はペトリ皿の画像に関し、ここで該初期画像は原画像又は画像キャプチャ装置で獲得された後に撮像システム内で処理されている画像に関しうる。
【0033】
図1は、本発明に係るシステム100の一例を示す。システム100は、サンプル容器バンク102、自動画線装置104、スマートインキュベータシステム106、処理システム108及び分析ユニット110を備える。
【0034】
サンプル容器バンク102は、その内部で生物学的サンプルを増殖させ、かつ分析することができるサンプル容器を手作業で又は自動的につくる。サンプル容器は典型的にはペトリ皿であるが、他の容器をまた使用してもよい。従って、ここにおけるペトリ皿への言及は、限定的であることを意図していない。
【0035】
サンプル容器バンク102は、適切な培地をペトリ皿に添加し、生物学的サンプルを増殖させることができるようにする。
【0036】
自動画線装置104は、生物学的サンプルをペトリ皿に塗布し、ついで既知の方法で生物学的サンプルを分布させる。例えば、ペトリ皿に、ペトリ皿の半径にほぼ等しい長さの櫛を使用して、サンプルが塗布される。櫛を適用しついで回して、生物学的サンプルをペトリ皿の表面全体に広げる。適当な自動画線装置104の一例は、PREVI(登録商標)Isolaの商品名で本願人により市販されている。
【0037】
生物学的サンプルがペトリ皿中の培地にわたり分布させられたところで、ペトリ皿は、オペレータによって手作業で、又はコンベアベルトもしくは他の自動システムによって、次の処理段階まで、つまりスマートインキュベータシステム106まで移送される。
【0038】
スマートインキュベータシステム106は、インキュベータ112と撮像システム114を備える。ペトリ皿はスマートインキュベータシステム106内に導入され、予め決められた時間の間、予め決められた温度でインキュベートされる。これにより、生物学的サンプルが増殖させられ、ペトリ皿内の培地の表面にわたり多数の微生物コロニーがつくり出される。ペトリ皿が要求された通りにインキュベートされた後、ペトリ皿は撮像システム114に移送される。撮像システム114は、全体としてシステム100内で生成されたコロニー及び培養物の画像を作成するためのシステムである。撮像システムの詳細は以下に更に説明される。
【0039】
画像は生物学的サンプルの分析の第一段階に使用される。この段階は、生物学的サンプルのコロニー及び他の様相を同定し、全体システム100の更なる動作及び機能を支援し容易にすることができる。
【0040】
ペトリ皿の画像が生成された後、ついでペトリ皿は次の処理段階、つまり処理システム108に移送される。これは、コンベアベルトもしくは他の自動システムによって自動的に、又はオペレータによって、実施されうる。
【0041】
処理システム108は、必要とされる生物学的サンプル分析に応じて、様々な異なった形式をとりうる。例えば、特定のコロニーが、更なる分析又は処理のために、画像に基づいて抽出されうる。多くの他の処理をこのときにペトリ皿に対して適用することができる。必要な場合、ペトリ皿は、更なる増殖のためにスマートインキュベータシステム106に戻し、及び/又は撮像システム114に戻すことができる。
【0042】
全ての必要な処理と撮像が完了した後、ペトリ皿は分析ユニット110に手動又は自動プロセスによって移送されうる。
【0043】
先に述べたように、スマートインキュベータシステム106は撮像システムを備える。撮像システム114はベースユニットを備える。ベースユニットは、赤、緑及び青のバックライト照明を発生させるための光学系及び制御回路を備える。ベースユニットは、
図2に示された3つの位置をとるホイール形態のコントローラを備えうる。これらの位置は、「無背景」、「白背景」及び「黒背景」である異なった照明に対応する。「無背景」位置はホイールの円形孔150に関連する。「白背景」位置はホイールの白背景円160に関連する。「黒背景」位置はホイールの黒背景円170に関連する。無背景はバックライトに使用される一方、白と黒は、サンプルの性質に応じて、あらゆる他のタイプの照明に対して使用される。
【0044】
ベースユニットの上方にサンプル保持ユニットがある。サンプル保持ユニットは、摺動して出し入れできるドローア(引き出し)を備え得、またペトリ皿を支持するよう適応された凹所を備える。加えて、サンプル保持ユニットは、4つの赤、緑及び青の水平照明源を備える。4つの照明源は、サンプル凹所の周りに直線的に位置させられ、独立して制御可能である。使用にあたり、ペトリ皿の頂面が4つの水平照明源の頂部に実質的に整列させられる。水平照明源は、ペトリ皿を水平又はほぼ水平なビームで照射することを可能にする。
【0045】
サンプル凹所の底部は、バックライト照明が使用中の生物学的サンプルを照射できるように光学的に透過性であることに留意されるべきである。サンプル保持ユニットは、4つの水平照明源を動作させるのに必要とされる光学系及び制御器を更に備える。
【0046】
サンプル保持ユニットは、生物学的サンプルがコンベアベルトによって撮像のための位置に移送される別の配向を備えうる。ドローアは、各々がバックライトを使用できるように透明であるサンプル保持ゾーンを有するコンベアベルトシステムにより置き換えることができる。コンベアベルトシステムは生物学的サンプルを適切な位置に移動させることができ、ついで必要な画像を撮ることができる。ついで、コンベアベルトが次の生物学的サンプルを撮像位置に移動させ、第一の生物学的サンプルを次の処理段階に移動させる。これにより、異なった位置で、かつ生物学的サンプルが移動しているときに、画像を撮ることができる。
【0047】
更なる代案では、撮像システムは、ペトリ皿をサンプルホルダー内に又はコンベアベルト上に載置できるロボットアームを備えうる。加えて、ロボットアームは、撮像前にペトリ皿の蓋を取外し、その後に蓋を再配置することができる。これは、ペトリ皿を逆さにし、蓋を落下させることによって行うことができる。蓋を外すことにより、生物学的サンプルが所定の照明源によって照射されるときに蓋が反射を生じさせないのを確実にする。
【0048】
撮像ゾーンに対する出し入れに加えて、サンプル保持ユニットは、通常の位置に対して生物学的サンプルの位置を変化させる機構をまた備えていてもよい。例えば、サンプル保持ユニットは、サンプルを特定のビームに対して特定の角度になるように配向させることができるようにしてもよい。他の動き、例えば、生物学的サンプルの回転を適当な機構によって実施することもできる。その結果、生物学的サンプルと照明源の任意の相対移動を、サンプル保持ユニットにおける生物学的サンプル又は照明源の何れかを移動させることによって実現することができる。変形は無限である。
【0049】
撮像システム114は、サンプル保持ユニットの上方に位置させられる第一の中間ユニットを更に備える。第一の中間ユニットは、直線状に配置された4つの赤、緑、青の照明源を備える。照明源は、使用にあたり、サンプル保持ユニット中のサンプル凹所上に環状照射を生じるように適応され、かつ独立して制御可能である。環状照射は、側方、非側方、又はあらゆる他の適切な配向を含む、任意の適切な方向からサンプルに入射するように調整されうる。
【0050】
撮像システム114はまた第二の中間ユニットを備える。第二の中間ユニットは、直線状に配置した4つの赤、緑、青の照明源を備える。照明源は上向きにされ、ユニットの上方から反射して逆環状照射を生じ、これが使用中にサンプル凹所中のサンプルを照射する。各照明源は独立して制御可能である。
【0051】
撮像システム114のヘッドユニットは第二の中間ユニットの上方に位置させられる。ヘッドユニットは、それぞれ独立して制御可能である白色光照明源を備える。8つの照明源が配置され、使用時に、サンプル凹所上に垂直照明をもたらす。
【0052】
ヘッドユニットは、サンプル凹所に向けられたカメラ等の画像キャプチャ装置254をまた備える。ユニットの何れかの照明源の任意の組合せによる照射をサンプル凹所に向けることができる。画像キャプチャ装置は、ついで、照射されているサンプル凹所中の任意の生物学的サンプルから画像をキャプチャできる。画像の使用と更なる処理は以下に更に詳細に説明される。
【0053】
ヘッドユニットは、様々な光源を動作させるために使用される制御パッドをまた備えていてもよい。その機能を制御する各ユニットにおける制御回路及び光学系に加えて、全体制御システムがあってもよい。全体制御システムは、コンピューター、ディスプレイユニット、処理モジュール及び画像増強アルゴリズム、画像処理、及び任意な他のプロセス又は技術を備えうる。
【0054】
全体制御システムは、どの照明源を特定の用途に使用するかを制御するために使用されうる。加えて、全体制御システムは、異なった画像増強技術及び異なった用途に対する画像処理を適用しうる。画像増強技術は、画像の画質を向上させ、又は関連情報を専門家が見れるように可視化する方法及び技術である。以下により詳細に説明するが、例としては、垂直統合又は溶血のための統合のような異なった画像の統合、エッジ照明補正、露光時間補正等がある。画像処理は、決定支援又は自動決定を提供するための画像からの情報の抽出である。これは、必ずしも画像の修正を含むものではなく、より高レベルの情報/解釈を自動的に決定することを含む。以下により詳細に説明するが、例としては、皿の環の検出、マークの検出、増殖(集団、孤立コロニー、スウォーミング)の検出、増殖/非増殖に関する全体的な決定等がある。
【0055】
全体制御システムを使用して、撮像システムに対する任意の他の機能及び/又は制御動作を実行することができる。これらには、限定されないが、以下のものがある:
- サンプル凹所内へのサンプルの添加及び取出し;
- サンプル凹所内へのサンプル位置決めのチェック及び調整;
- 輝度レベルの制御;
- 赤、緑、青成分バランスの制御;
- 露光時間の制御;
- 照明組合せの制御;
- システムの検査;
- システムの較正;及び
- 使用及び分析目的に基づく任意の他の適切な制御。
【0056】
撮像システムを形成するユニットの各々は、他のユニットに対して相対移動させることができる。これがなされるとき、生物学的サンプルが全ての照明源によって照射されるのを確実にするために所定の光学的調整が必要な場合がある。
【0057】
撮像システム114の作用を、以下に
図3を参照してより詳細に説明する。
【0058】
図3は、様々な照明源と、これら照明源が撮像システム114に位置させられた生物学的サンプルにどのように影響を与えるかを示す撮像システム114の概略図である。サンプルは、生物学的サンプルを含むペトリ皿の面と同じ面に位置させられた略水平のビーム302,304によって照射されうる。略水平のビームは、実際には、参照符号302及び304で示されたものに加えて、紙面に対して直交する成分を含む。略水平のビーム302,304は、サンプル保持ユニット中の水平照明源によってつくられる。
【0059】
サンプルはまたベースユニットによってペトリ皿の下で発生されられ、撮像システム114の底部から撮像システム114の頂部に向かって垂直方向に発するバックライトビーム306によっても照射されうる。
【0060】
環状ビーム又は底部環状ビーム308もまた生物学的サンプル300を照射することができ、ペトリ皿の上方に位置する第一の中間ユニットによってつくられる。底部環状ビーム308は、ペトリ皿に向かって決められた角度で発せられる。ペトリ皿の上方に位置させられた第二の中間ユニットによってつくられる逆環状ビーム又は上部環状ビーム310もまたペトリ皿を照射することができる。逆環状ビーム310は、ペトリ皿から離れる方向に撮像システム114の上部に向かって決められた角度で発せられ、ついでペトリ皿に向かって反射される。
【0061】
垂直ビーム312もまたペトリ皿を照射することができ、ヘッドユニット中の照明源によって生成される。
【0062】
垂直ビームとバックライト照明は、ペトリ皿中の生物学的サンプルに対して実質的に直交する方向に照射する。従って、これら照明源の各々の光軸は生物学的サンプルに対してまた直交する。略水平の照明、環状照明及び逆環状照明は、ペトリ皿に直交しない。よって、同様に、これらの光源の光軸は生物学的サンプルに非直交である。非直交源は、直交源で達成されるものに対して多様な範囲又は代替的な画像をもたらす。これら非直交源は、それらでつくり出される任意の画像に、付加的で異なった光学的特徴をもたらす。これにより、コロニーのアイソレーションと検出が確実に改善される。
【0063】
図3に示され、適切なユニットによりつくられる照明源は、任意の好ましいタイプ、例えば、赤、緑及び青(RGB)周波数で動作する発光ダイオード(LED);単純な白色光源;紫外光(UV)源、又は任意な他の適切な放射源でありうる。照明源は、例えば、64個の白色LED、86個の赤色LED、86個の緑色LED及び86個の青色LEDを含む322個のLEDを含みうる。任意の位置における光源の数は、ここに示し記載したものとは変えることができる。RGB照明は、各位置において各それぞれの周波数で動作する3色LEDのトリオにして設けられる。異なった照明源に対しては、RGB LEDの異なる組合せが存在しうる。各タイプの照明は、LEDの特定の配置を有する特定のカードによって提供される。ベースユニットは、それぞれが3個で配置された複数のダイオードを有する2つのカードによってバックライトビーム306を生じさせる。LED404の各トリオは、赤、緑及び青色LEDを含む。全体で45のLEDトリオが各カードに位置させられ、バックライトビーム306を生成するのに使用される。各トリオのうち、赤、緑及び青色LEDを一度に一回点灯し、一つの色の照明を他の色の後につくるようにすることができる。
【0064】
上述した照明の全ての例では、生物学的サンプルの画像は画像キャプチャ装置254によって上方からキャプチャされる。コロニーの増殖及び他の時間に関連する効果を測定するために、画像キャプチャ装置254が、予め決められた時間の期間にわたり一連の画像シーケンスのセットを撮り込んでもよいことに留意されたい。加えて、画像キャプチャ装置254は、コロニーの増殖進行等が測定されている所定の用途ではビデオカメラであってもよい。ペトリ皿の動きはまた適当なコンベアベルト又はロボットアームによって撮像システム114にペトリ皿を出し入れすることによってもたらすこともできる。
【0065】
画像キャプチャ装置254は、異なった照明源から異なったタイプの画像を撮るように適応される。典型的には、特定の用途に対して一連の画像が撮られる。このシーケンスは、特定の照明又は照明の組合せでサンプルを照射するステップと、これに続く、関連照明により、例えば単色、白黒、又はRGBのような特定のタイプの画像を撮るステップとを含む。ついで、次の画像が、異なったタイプの照明又はその組合せで撮られ、全ての必要な画像が撮られるまでこのシーケンスが継続する。画像キャプチャ装置254は、適切なタイプの画像を撮るためにシーケンス内で制御される。
【0066】
先に述べたように、撮像システム114における生物学的サンプルは、異なった方向からサンプルに当たる複数の異なった光源から照射されうる。生物学的サンプルが照射された後、生物学的サンプルの画像が上方から撮られる。各照射は、生物学的サンプルの異なった様態を強調する。
【0067】
バックライト照明は、ペトリ皿のベース上の任意のマーキング、ペトリ皿のエッジ及び蓋の形態を含むペトリ皿の詳細;及び生物学的サンプル中のコロニーの配置及び密度の詳細なビューを示す。この照明は、コロニーをアイソレートし、類似のコロニー(例えば、α及びβ溶血性種)間の相違を判定することができる情報を提供し、一般的にサンプルの内容物のビューを与える。
【0068】
略水平の照明は、サンプル及びその内容物によって屈折され反射されて、アーティファクトをアイソレートし、排除するのに使用されうる画像を形成する。加えて、この画像は、以下に更に詳細に説明されるように培地による照射の吸収に基づいて補正を行うために使用することができる。また、画像を後で使用し、コロニーによるペトリ皿のカバー率を決定して、コロニー濃度の推定値を提供し、また不透明でない培地上での増殖又は非増殖を判定することができる。
【0069】
環状照明は、サンプルに向けられ、培地と形成されている任意のコロニーとによって画像キャプチャ装置254まで反射され又は屈折される。この照明によって生成される画像の目的は、培地とコロニーの色を識別する能力にある。色を識別する能力は、幾らかの微生物が非常に特有の色彩を有しているため、特定の微生物を同定するための重要なツールとなることがよくある。全体の結果は、生物学者が微生物の特定のタイプ、例えば、色、コロニー様態等について見ようと期待するものに最も近いビューである。これは、培地とコロニー周辺の色彩の微かな変化を識別するのに特に重要である。加えて、環状照明により生成される画像は、発色培地中の細菌コロニーの下側と周辺の色の微かな変化を検出することを可能にする。
【0070】
側方環状照明は、4つの直線的に位置させられた照明源のうちの一つのみによる照明である。これにより、輪郭と凹凸を識別するのに使用できる陰影を有する画像が得られる。照明源の各々が、照射方向の結果として異なった陰影効果を生じる。
【0071】
逆環状照明は、ヘッドユニットからサンプル上へ反射される。ついで、サンプルは照射を画像キャプチャ装置254まで反射させ又は屈折させる。このようにしてキャプチャされた画像は、サンプル中の異なったコロニーのコントラストの詳細を与える。この画像はまた色情報に寄与しうる。加えて、この画像は、テクスチャ情報;コロニーの様態及び色;スウォーミング限界についての情報及びコロニーの凹凸についての所定の情報、例えば、隆起、形態及び形状を提供しうる。
【0072】
逆環状照明は、階調変化を可視化できる疑似垂直照明をつくり出す。これはテクスチャと粒度情報を与え、また大きな隆起はないが、不規則表面を有するコロニーを検出するのに有用である。一実施態様では、画像の飽和の可能性に対処するために、逆環状照明を使用して多数の異なった画像を撮り、続いて統合させることができる。
【0073】
垂直照明源は、生物学的サンプルを上方から照射する。この照射は生物学的サンプル及びコロニーによって反射されて、詳細な輪郭情報を与える画像が得られる。これを使用して、生物学的サンプルの凹凸とコロニーの高さを識別することができる。次に、コロニーの凹凸は非常に特定的であることが多いため、この情報を使用して微生物の特定のタイプを判定することができる。例えば、あるコロニーはドーム形状をしており、他のものはでこぼこで、また他のものは平坦である等々である。
【0074】
上述のように、照明源と方向の各々を使用して、異なった画像特性を強調し、向上させることができる。記載した実施例は、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる照明源と方向からの照射を使用することにより、変更させ又は適応させることができる。
【0075】
更に、例えば赤外線や紫外線のように、照明の異なった波長を異なった用途に使用することができる。
【0076】
撮像システム114は、照明源の組合せから画像をつくり出して、生物学的サンプルの画像の一つより多くの特徴を強調し向上させうる複合画像を作成することができる。
【0077】
作成される画像に対して効果を有しうる他の要因は、サンプルを増殖させるために使用される培地のタイプである。多くの異なった培地が存在し、これらには、特に尿サンプルを使用して大腸菌、プロテウス属、及びKESCを同定するように適合された培地であるCPS;及び溶血能を識別するのに有用な血液を含む培地であるCOSが含まれる。
【0078】
異なった培地、例えばCPS及びCOSは、性質と色がかなり異なる。その結果、これら培地に加わる照明は異なるタイプの画像をつくり出しうる。而して、異なった照明源と照明源の組合せを異なる培地に使用することができる。
【0079】
先に述べたように、システム100は、処理システム108と分析ユニット110を備える。処理システム108は、第一の処理ユニット116、第二の処理ユニット118、計算ユニット120及び特徴抽出ユニット122を備える。
【0080】
第一の処理ユニット116は、微生物のコロニーに関連付けられたペトリ皿の内容物と培地に関連付けられたペトリ皿の内容物との間の目に見える分離線を示す二値画像を取得するために、バックライト又は底部環状ビューなどのペトリ皿の原画像に適用され、撮像システム114によって提供されるセグメンテーション処理である第一の処理を動作させることができる。よって、第一の処理ユニット116は、微生物のコロニーに関連付けられた画素のみに関連する可視画素を含むGrowthMaskと名付けられた二値画像である第一の処理済み画像を提供する。
【0081】
第一の処理ユニット116は、ペトリ皿のエッジに対するペトリ皿の内容物の位置を見つける周知のエッジ検出処理と、画像ノイズを除去するための周知の処理において2つの原画像を統合させる周知の統合処理とを含む追加の処理をまた動作させることができる。
【0082】
第二の処理ユニット118は、Dilated(GrowthMask)と名付けられた第二の処理済み画像を得るためにGrowthMaskに適用されている膨張演算である第二の処理を動作させることができる。Dilated(GrowthMask)は、微生物のコロニーに関連付けられた画素とまた微生物のコロニー周辺の周囲ゾーンに関連付けられた画素のみに関連する可視画素を含む。膨張パラメータは、Dilated(GrowthMask)が周囲ゾーンを包含するように定義される。膨張パラメータは、以下に記載のようにユーザーによって決定される。周囲ゾーンは、同じ画像中の微生物の色と比較したときに別の色を示すゾーンに関連しうる。周囲ゾーンは、微生物の色の変色を示すゾーン、又は同じ画像中の微生物の色と比較したときに新しい色素沈着を示すゾーンにまた関連しうる。
【0083】
計算ユニット120は、2つの画像間の差分計算に関する第三の処理を動作させて結果の画像を取得することができる。よって、計算ユニット120は、ペトリ皿の原画像、すなわちDishMaskとGrowthMaskとの間の差分を計算して、CultureMediumMaskと名付けられた第三の処理済み画像を提供することができる。CultureMediumMaskは、培地に関連付けられた画素のみに関連する可視画素を含む。
【0084】
計算ユニット120はまたDilated(GrowthMask)とGrowthMaskとの間の差分計算に関する第四の処理を動作させて、HaloMaskと名付けられた第四の処理済み画像を提供することができる。HaloMaskは周囲ゾーンのみに関連する可視画素を含む。
【0085】
特徴抽出ユニット122は、HaloMask及びCultureMediumMaskの特徴量を決定するための特徴抽出処理を動作させることができる。特徴量は、HaloMaskとCultureMediumMaskの画素値に関連する。特徴抽出ユニット122は、少なくとも3つの赤緑青(RGB)色チャネルについて、第三の処理済み画像の平均画素値と第四の処理済み画像の平均画素値との間の差分を計算する。上述のように、「平均画素値」という用語は、画素値の算術平均又は画素値の中央値を指す。
分析ユニット110は、細菌の存在を判定し、前記細菌を同定するために、決定された特徴量に基づいて分析処理を動作させることができる。より具体的には、分析ユニット110は、指標の値を、決定された閾値と該指標の値を比較するために決定する。比較の結果に応じて、分析ユニット110はペトリ皿内の細菌の存在又は細菌の非存在の何れかを判定する。
【0086】
本発明によれば、
図4に示されるように、本方法は、特定の照明条件に従って、撮像システム114を用いてペトリ皿の原画像を取得するためのステップ400を含む。確かに、照明条件は、同定される細菌の種類によって変わりうる。原画像は、例えば、ペトリ皿のエッジを検出するために処理されてもよい。
【0087】
次に、本方法は、セグメンテーション処理である第一の処理を原画像に適用することによってGrowthMaskと名付けられた第一の画像を取得する、第一の処理済み画像を取得するためのステップ402を含む。ついで、本方法は、膨張処理である第二の処理を第一の処理済み画像に適用してDilated(GrowthMask)と名付けられた第二の画像を取得する、第二の処理済み画像を取得するためのステップ404を含む。本方法は、第三の処理を適用してCultureMediumMaskと名付けられた第三の画像を取得する、第三の処理済み画像を取得するための更なるステップ406を含む。本方法は第四の処理を適用してHaloMaskと名付けられた第四の画像を取得する、第四の処理済み画像を取得するためのステップ408をまた含む。本方法は、第三の処理済み画像と第四の処理済み画像に関連付けられた特徴量を決定して、第三の処理済み画像と第四の処理済み画像との間の色差分を決定するためのステップ410を更に含む。本方法は、特徴量を分類することによって指標の値を決定するためのステップ412をまた含む。ついで、ステップ414において、指標の値が閾値と比較される。本方法は、細菌の存在を判定し、かつペトリ皿中の前記細菌を特定された細菌であると同定する最終ステップ416を含む。
【0088】
本発明の第一の実施態様では、本方法は溶血現象を識別するためのベータ溶血性細菌の存在の判定に関する。第一の実施態様の方法は、
図5に示される以下のステップを含む。
【0089】
第一の実施態様では、HaloMaskは、溶血現象の特徴である微生物コロニーの周辺の変色又は退色ゾーンを示すハローゾーンに関する。変色ゾーンは、同じ画像中の微生物の色から生じる。培地は血液寒天である。
【0090】
第一の実施態様では、本方法は、
図7a、7b、及び7cに示される画像の統合からなる初期画像を取得するためのステップ500を含む。初期画像は、撮像システム114を用いてRGB色チャネルに対して中央底部環状ビューを使用することによって取得される。実際、溶血現象は、このビューで撮影された画像、特に緑色及び青色チャネルで、あまり目立たない。
図7aは、赤色チャネルに対する原画像を示す。
図7bは緑色チャンネルに対する原画像を示し、
図7cは青色チャンネルに対する原画像を示す。
【0091】
ついで、本方法は、周知のエッジ検出法を用いてペトリ皿のエッジを決定するためのステップ502と、周知のガウスフィルタを用いて画像ノイズを除去するためのステップとを含み、ここでσ=1及びk=5×5である。
【0092】
ついで、本方法は、各色チャネルを分離するためのステップ504と、双方の画像に対して平均画素値を持つ緑色チャネルからの画像と青色チャネルからの画像を統合して平均画像を提供するためのステップ506とを含む。確かに、赤色チャンネルから画像を除去すると、ハローゾーンを微生物コロニーと見なすことが回避される。
【0093】
本方法は、以下のステップを含むセグメンテーション処理を更に含む。セグメンテーション処理は、緑色チャネル画像と青色チャネル画像の統合画像に基づいて、周知の大津法に従ってステップ508において閾値を決定することを含む。確かに、大津法は、決定された画像上の位置(x,y)における画素値の平均値を比較するthreshold(Otsu)と呼ばれる閾値を提供する。より具体的には、大津法は、明画素値が第一のクラスに関連し、暗画素値が第二のクラスに関連する、クラス内分散及びクラス間分散に関連する比率を最小にする閾値を提供する。本願の状況では、明画素が微生物コロニーに関連し、暗画素が培地に関連する。
【0094】
ついで、本方法は、次のセグメンテーション式(1)を適用することによって中央底部環状画像をセグメント化するためのステップ510を含む:
ここで、
は緑色及び青色チャネルに対する同じ画像上の位置(x,y)にある同じ画素の平均値である。
【0095】
大津法の適用は二値画像を提供する。
【0096】
本方法は、
図8に示されるGrowthMaskと呼ばれる二値画像を得るために二値画像に対して周知のクロージング演算子に基づくモルフォロジー演算を適用するための任意的なステップ512をまた含む。
【0097】
ついで、第一の実施態様に係る方法は、撮像システム114でバックライトビューを使用することによって、
図6に示された第二の原画像を取得するための別のステップ514を含む。確かに、溶血現象は、このビューで撮影された画像においてより明確であり、培地に関連するゾーンは赤であり、変色ゾーンは、白色もしくは黄色、又は黄色と白色からなる複合色で透明であり、微生物に関連するゾーンは黒色など暗い。
【0098】
本方法は、GrowthMaskに周知の膨張演算を適用するためのステップ516を含み、前記膨張演算は、ディスク状部材などの構造化部材に基づいている。膨張演算は、Dilated(GrowthMask)と呼ばれるGrowthMaskの対応する膨張画像を取得するために、matlab関数imdilateなどの周知の関数と、特定の膨張パラメータdを用いて演算される。
【0099】
図9aに示されるHaloMaskと
図9bに示されるCultureMediumMaskは、以下に示されるようにDilated(GrowthMask)から推定できる。
ここで、GrowthMaskに示された微生物のコロニーがDilated(GrowthMask)から除去されてHaloMaskが得られる。
ここで、微生物のコロニー及び溶血現象に関連するハローゾーンがDishMaskから除去されてCultureMediumMaskが得られる。
【0100】
HaloMaskは微生物コロニーの周辺の色を示す。
CultureMediumMaskは、培地の元の色、つまり微生物の増殖による影響を受けていない色を示す。
【0101】
次のステップ518において、HaloMaskとCultureMediumMaskがそれぞれ画素パッチに分割される。
図10aはHaloMaskの画素パッチを示し、
図10bはCultureMediumMaskの画素パッチを示す。
図10a及び
図10bにおいて、各画素パッチは200×200ピクセルを含み、
膨張のサイズは50ピクセルである。画素パッチのサイズは、関連する中央値を検出するように適応される。
【0102】
HaloMaskとCultureMediumMaskの分割は、HaloMaskのための2つの隣接する画素パッチとCultureMediumMaskのための2つの隣接する画素パッチの間で50%のオーバーラップ率で処理される。よって、ハロー画素と培地画素の両方を含む画素パッチの数が最適化される。
【0103】
加えて、HaloMaskに関連した画素パッチに対して基準が設定される。ハローゾーンが100未満のピクセルを含む領域を含む画素パッチは、本方法の次のステップには考慮されない。
【0104】
更なるステップ520において、HaloMask及びCultureMediumMaskの中央画素値が、各画素パッチに対して、RGB色空間の各チャネルに対して、またグレースケール表示に対して演算される。
【0105】
HaloMask及びCultureMediumMaskについての統計的中央画素値の差分の計算は、膨張パラメータdの増加する値に基づいて数回処理される。
【0106】
次のステップのために選択されるべき膨張パラメータdの決定は、次にステップ522において処理される。
【0107】
膨張パラメータdの決定は、HaloMaskの画素値とCultureMediumMaskの画素値との間の差分値を最大にする
膨張パラメータdの値を決定する次の式に基づく。以下の
膨張式(2)が、各RGB色チャネル及びグレースケール表示に対して適用される:
膨張パラメータの増加する値は、10ピクセルから60ピクセルまでの間隔において、dの2つの連続する値に対して10ピクセルの幅で、選択される。
【0108】
ステップ522は、Dilated(GrowthMask)と呼ばれる複数の二値画像、従って複数のHaloMaskとCultureMediumMaskを提供する。
【0109】
図11a、12a及び13aは、それぞれ、異なる値の
膨張パラメータdを有するHaloMaskの一例を示すもので、
図11aではd=10ピクセル、
図12aではd=50ピクセル、そして
図13aではd=60ピクセルである。
【0110】
図11b、12b及び13bは、それぞれ、異なる値の
膨張パラメータdを有するCultureMediumMaskの一例を示すもので、
図11bではd=10ピクセル、
図12bではd=50ピクセル、そして
図13bではd=60ピクセルである。
本願の状況では、決定された
膨張パラメータはd=50ピクセルである。
【0111】
決定された
膨張パラメータに基づいて、HaloMaskとCultureMediumMaskとの間の同じチャネルに対する中央画素値の差分が、RGB色チャネルに対する中央値とグレースケール表示の中央値との間の4つの差分値を提供する次の特徴式(3)を適用することによってステップ524において演算される:
【0112】
更なるステップ526において、分析ユニット110は、以下の期待値式(4)を用いて計算される閾値を設定する決定された規則に従って特徴パッチ値を分類するためのステップを動作させる:
ここで、Featuresパッチは、青チャネル上のHaloMaskとCultureMediumMaskとの間の中央画素値の差分値である。
【0113】
図14aは、ベータ溶血性細菌、アルファ溶血性細菌及びガンマ溶血性細菌にそれぞれ関連するペトリ皿の画像を、青チャネル上のパッチレベルでの特徴量の表示と共に示す。
【0114】
期待値式に関連する値のセットは、Beta溶血パッチとNoBeta溶血パッチの分布を表し、ここで、Beta溶血パッチは溶血現象を表すハローゾーンを含み、NoBeta溶血パッチは溶血現象を表すハローゾーンを含まない。
【0115】
ステップ528において、NoBeta溶血パッチの分布が、
図14bに示されるように、平均値μ及び標準偏差σに基づくガウス分布と比較される。
【0116】
図14b
に示され、以下の3σ規則(5)に基づく閾値は、以下に示されるように正規分布を決定するように設定される:
これは、閾値がμ+3σに等しいことを意味する。
【0117】
ステップ530において、分析ユニット110は、ベータ溶血性細菌の存在又は非存在を判定する。Featuresパッチ値が高い正の値の場合、これらの値はベータ溶血性細菌の存在を示している。
【0118】
Featuresパッチ値が負であるか又は0に近い場合、これらの値は、アルファ溶血性又はガンマ溶血性細菌の存在など、他の現象を示している。
【0119】
更なる特定の実施態様では、画素パッチの使用は、局所的に、すなわちペトリ皿の画像の特定のゾーンにおける、溶血現象の存在を判定するための方法を提供する。
【0120】
プロテウス菌の存在の判定に関する本発明の第二の実施態様によれば、本方法は
図15に示される以下のステップを含む。
【0121】
第二の実施態様では、HaloMaskは、微生物コロニーの周辺の色素沈着ゾーンを示すハローゾーンに関し、色素沈着ゾーンの色は、同じ画像中の微生物の存在によって引き起こされる。培地は、CPSなどの発色培地に関連する。
【0122】
第二の実施態様では、本方法は、バックライト無背景ビューと中央底部環状の黒背景ビューを使用することによってペトリ皿の2つの元のビューを取得するためのステップ1500を含む。中央底部環状の黒背景ビュー画像は、4つの底部環状側方ビュー画像の中央値画像である。
【0123】
図16aは、バックライト無背景ビューを使用することによってペトリ皿の原画像を示している。実際には、
図16aは、微生物コロニーの存在に関連する暗いゾーンを示し、色素沈着ゾーンは、暗いゾーン周辺の褐色を有するゾーンに関連する。
【0124】
ついで、本方法は、ペトリ皿のエッジを周知のエッジ検出法で決定するためのステップを含む。
【0125】
本方法は、書誌参照[1]に開示されている特定のグラフベースの領域セグメンテーション処理を適用するためのステップ1502を更に含む。
【0126】
グラフベースの領域セグメンテーション処理は、培地ゾーンに関連する背景と呼ばれる第一の領域と、ペトリ皿の残りの部分に関連する前景と呼ばれる第二の領域とを含み、またセリグラフィに関連するセリグラフィゾーンを含む画像を提供する。
【0127】
そのようなセグメンテーション処理は、同じマスク内、すなわち同じ前景領域内で、微生物コロニーのクラスターと微生物の孤立したコロニーの両方をセグメント化する。加えて、グラフベースの領域セグメンテーションは、プロテウスハローの存在を伴う本願の状況におけるように、培地ゾーンの僅かな色の変化に適応される。
【0128】
セグメンテーション処理は、周知の検出アルゴリズムを用いてセリグラフィゾーンを検出するためのステップをまた含む。
【0129】
ついで、セグメンテーション処理は、
図16bに示されるように、GrowthMaskと呼ばれる二値画像を提供する。
【0130】
本方法は、GrowthMaskに膨張演算を適用するための更なるステップ1504を含み、前記膨張演算は、ディスク形の部材などの構造化部材に基づいている。膨張演算は、Dilated(GrowthMask)をつくり出すためにmatlab関数imdilateのような周知の関数によって演算される。
【0131】
HaloMaskは、微生物コロニー周辺の色素沈着ゾーンを含みうるゾーンに関連し、前記色素沈着ゾーンがプロテウス菌の存在を表している。CultureMediumMaskは、培地の元の色、つまり色素沈着ゾーンの影響を受けていない色を示す。
【0132】
図17bに示されるHaloMaskと
図17cに示されるCultureMediumMaskは、以下の式(6)及び(7)に示されるように、
図16aに示される原画像に関連するDilated(GrowthMask)及びDishMaskから推定することができる:
【0133】
膨張演算は、膨張パラメータdの増加する値に基づいて数回適用される。膨張パラメータdの増加する値は、10ピクセルから70ピクセルまでの間隔において、dの2つの連続値に対して10ピクセルの幅で、選択される。ステップ1504は、Dilated(GrowthMask)と呼ばれる複数の画像を提供する。
【0134】
図18aは、
膨張パラメータd=70ピクセルのHaloMaskの例を示している。
図18bは、
膨張パラメータd=10ピクセルのHaloMaskの例を示している。
【0135】
次のステップにおいて、特徴抽出ユニット120が、HaloMask及びCultureMediumMaskの特徴を決定する。従って、特徴抽出ユニット120は色特徴を抽出する。
【0136】
本方法は、RGB色空間及びHSV(色相、彩度、明度)空間についての画素値の統計的中央値を演算するためのステップ(図示せず)を含む。HSV空間では、0と1が同じ色相値に対応する色相スケールの不連続性を回避するために、値Hがベクトル(cosH,sinH)で置き換えられる。よって、HSV空間は4つのチャネルを含む。
【0137】
統計的中央値を演算するために、2つの異なる画像が選択される。第一の画像はバックライト無背景ビューに関連し、第二の画像は中央底部環状の黒背景ビューに関連する。中央底部環状の黒背景ビュー画像は、4つの底部側方ビュー画像の中央値画像である。
【0138】
本方法は、各RGB色チャネル及びHSV空間の各チャネルについて、次の特徴式(8)を演算するためのステップ1506を含む:
【0139】
RGB色空間では、2つの異なる画像に7つの膨張演算が適用される3つのRGB色チャネルがある。従って、上記の式を適用する場合、抽出される合計42の特徴がある。
【0140】
HSV空間では、7つの膨張演算が2つの異なる画像に適用される4つのチャネルがある。従って、上記の式を適用する場合、抽出される合計56の特徴がある。
【0141】
ついで、抽出された特徴の全体の合計は98である。
【0142】
ついで、分析ユニット120が、従来技術において周知の教師あり学習プロセスに使用される2つの分類アルゴリズムに基づいて分類ステップ1508及び1510を適用することによって動作する。
【0143】
第一の分類アルゴリズムは、分類及び回帰ツリー(CART)アルゴリズムに関連する。例えば、matlabクラス「ClassificationTree」がCARTアルゴリズムをモデル化するために使用される。第一のアルゴリズムの適用は、ペトリ皿がプロテウス菌を含む可能性を表す第一のスコア値を提供する。
【0144】
第二の分類アルゴリズムは、サポートベクターマシン(SVM)アルゴリズムに関連し、ライブラリー「libSVM」を使用して作成される。第二のアルゴリズムの適用は、ペトリ皿がプロテウス菌を含む可能性を表す第二のスコア値を提供する。
【0145】
第一のスコアと第二のスコアは2つの異なる分類アルゴリズムによって提供されるので、第一のスコアと第二のスコアは比較可能な値ではなく、最終スコアを決定するために同じ計算内で組み合わせることはできない。
【0146】
分類ユニット120は、ベイズ定理を適用して事後確率の値、すなわちp(Halo; X)を取得することによって動作し、ここで、Haloはハローを表すイベントである。
【0147】
第一の分類アルゴリズムでは、XはCARTアルゴリズムによって選択された特徴の量を表す。選択された特徴は、98の既存の特徴のなかでプロテウス菌の存在を判定するための最も識別力のある特徴である特徴に関連する。
【0148】
第二の分類アルゴリズムでは、Xは決定線から最も近い例の距離を表す。最も高い距離Xは、ペトリ皿がプロテウス菌を含む可能性を決定するための信頼できる結果を表す。
【0149】
ハローの存在の確率は、以下の式(9)で計算することができる:
- ここで、p(X;Halo)はペトリ皿がHaloを含むと仮定するXを観測する確率であり;
- p(Halo)はハローの存在の先験確率であり;
- そして、p(Halo;X)は、値Xが与えられた場合のハロー存在の確率である。
【0150】
ペトリ皿にプロテウス菌が含まれていない場合、ハローが発生する確率は0になると予想される。
【0151】
しかしながら、ペトリ皿が視覚的なハローを有さず、ハローを有する確率がまた0に等しいプロテウス菌を含む場合がありうる。従って、プロテウス菌の検出を容易にするために、上記の式(9)はそのような状況の考慮を避けるために修正される。以下の式(10)は、全てのプロテウス菌について可視ハローの存在に関連した仮説を考慮に入れている。
【0152】
分類ユニット120は、ついで、以下の式(10)を演算する。
- ここで、p(X;Proteus)は、ペトリ皿がプロテウス菌を含むと仮定するXの確率であり;
- そして、p(Proteus)は、プロテウス菌の存在の先験確率である。
【0153】
確率p(X;Proteus)に関連する値の集合は、平均値μ及び標準偏差σを有するガウス分布に基づく値の分布として
図19に表される。
【0154】
p(Proteus)は先験確率であり、デフォルトで1/6に設定された調整可能なパラメータである。実際、CPS培地は最大6クラスの細菌を含みうる。
【0155】
p(X)は、以下の式(11)により計算される正規化因子の推定値である:
p(Proteus)、p(X;Proteus)、p(NoProteus)及びP(X;NoProteus)は、教師あり学習プロセスに使用されるデータセットから既知である。
【0156】
従って、更なるステップ1512において、p(Halo;X)の第一の値が、第一の分類アルゴリズム、すなわちCARTアルゴリズムに関連した第一のスコアを用いて計算される。
【0157】
更なるステップ1514において、p(Halo;X)の第二の値が、第二の分類アルゴリズム、すなわちSVMアルゴリズムに関連した第二のスコアを用いて計算される。
【0158】
従って、p(Halo;X)の第一及び第二の値は、今は同じタイプの値、すなわち比較可能な値である第一及び第二の確率に関連する。
【0159】
更なるステップ1516において、p(Halo;X)の第一及び第二の値の最小値が取得され、p(Halo;X)の第一及び第二の値の間の最も低い最小値が選択される。
【0160】
ついで、ステップ1516において、0%から100%の間のプロテウス菌の存在の最終確率が取得される。
【0161】
ユーザーは、ステップ1518においてプロテウス菌の存在の確率の値を比較することによって、ステップ1520においてペトリ皿中のプロテウス菌の存在の確率を決定するために50%のような閾値を使用することを決定することができる。
【0162】
第一の分類アルゴリズムと第二の分類アルゴリズムにそれぞれ基づく2つの確率の使用は、各分類アルゴリズムによって独立して生じるエラーの補正をもたらす。
【0163】
プロテウス菌の存在の判定に関連する別の実施態様では、培地は不透明CPSなどの不透明培地でありうる。
【0164】
図20は、プロテウス菌を含む不透明CPSのような不透明培地を含み、バックライトビューに関連したペトリ皿の原画像を示す。
【0165】
図21及び
図22は、それぞれ左側底部環状ビュー及び上部環状ビューに関連した
図20のペトリ皿の画像を示す。
【0166】
本発明の更なる実施態様は、培養培地が不透明培地である、プロテウス菌の検出に関連した上記の方法に関する。
【0167】
上記方法に関連するステップ1500及びステップ1504から1520は同じままである。セグメンテーション処理の適用に関連するステップ1502のステップは、不透明培地の存在を考慮に入れるように適応されなければならない。実際、不透明培地の存在下では、セグメンテーション処理は、適応されたグラフベースの領域セグメンテーションアルゴリズムの適用を含み、セリグラフィゾーンの検出及び除去に関連するステップは除去される。
【0168】
この実施態様では、原画像として使用される画像は、バックライトビューと上部環状ビューに基づいている。前記原画像と前景抽出処理に関連した閾値を組み合わせる方法などの他のパラメータが、不透明培地を用いたプロテウス菌の検出に関連した方法が効率的な形で動作することを可能にするように適合化される。
【0169】
以下の説明は、ベータ溶血性細菌の検出とプロテウス菌の検出に関する本発明の方法の適用に関する。
【0170】
ベータ溶血性細菌の検出に関する方法は、単一細菌コロニーとCOS及びCAN培地のような血液寒天培地とを含むペトリ皿を含む第一データセットに適用されており、前記ペトリ皿は24時間インキュベートされている。
【0171】
第一のデータセットは合計104のペトリ皿を含み、グラウンドトゥルースリファレンスによれば、21のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含み、83のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含まない、すなわちベータ溶血性細菌以外の細菌を含む。
【0172】
下記の表1は、前記第一データセットに本方法を適用した結果を示しており、合計21のペトリ皿のうち14のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含んでいると同定され、合計83のペトリ皿のうち83のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含んでいないと同定されている:
【0173】
表1から、本発明に係る方法を適用する場合、ベータ溶血性細菌を含む7つのペトリ皿が検出されず、同定されていないようである。確かに、対応するペトリ皿内のハローゾーンははっきりと見えず、従って前記ペトリ皿についてのハローゾーンと培地ゾーンとの間の色の違いは溶血性細菌の存在を判定するのに十分なコントラストレベルをもたらさない。
【0174】
下記の表2は、95%の信頼区間と指標としてパーセンテージを使用して、表1に示したものと同じ結果を示す。
【0175】
上記の表2によれば、グローバル精度のパーセンテージは93%より高い。
ベータ溶血性細菌の検出に関する方法はまた単一細菌コロニーと血液寒天培地、例えばCOS及びCAN培地とを含むペトリ皿を含む第二のデータセットにも適用されており、前記ペトリ皿は24時間インキュベートされている。
【0176】
第二データセットは合計70のペトリ皿を含み、グラウンドトゥルースリファレンスによれば、24のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含んでおり、46のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含まない、すなわちベータ溶血性細菌以外の細菌を含む。
【0177】
下記の表3は、前記第二データセットに対して本方法を適用した結果を示しており、合計241のペトリ皿のうち23のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含んでいると同定され、合計46のペトリ皿のうち43のペトリ皿がベータ溶血性細菌を含んでいないと同定されている:
【0178】
表3から、本発明に係る方法を適用する場合、ベータ溶血性細菌を含む一つのペトリ皿は検出されず、同定されていないようである。実際、ペトリ皿には一つの微生物コロニーしか含まれておらず、セグメンテーション処理では正しいCultureMediumMaskと正しいHaloMaskを提供しなかった。
【0179】
表3から、またベータ溶血性細菌の3つの誤った検出が生じたようである。これらの誤った検出は、ガンマ溶血性細菌のコロニー周辺のハローゾーンの存在によって、又はセリグラフィゾーンの存在によって、又はペトリ皿のエッジの存在によって発生しうる。しかしながら、そのような誤検出は、大津法による閾値の決定に関連する方法のステップにおいて読み出されうる。
【0180】
下記の表4は、95%の信頼区間で、指標としてパーセンテージを使用することによって表1に示したものと同じ結果を示している:
【0181】
上記の表4によれば、グローバル精度のパーセンテージは94%より高い。
表1、2、3及び4に示された結果は、ベータ溶血性細菌の検出のための本発明の方法に対して95%の高レベルの精度を示している。
【0182】
プロテウス菌の検出に関する方法は、単一細菌コロニーと2つの異なるクラスの細菌由来の細菌の混合物と半透明の発色培地を含むペトリ皿に関する第一のデータセットに適用され、前記ペトリ皿は24時間インキュベートされている。
【0183】
第一のデータセットは、ハローゾーンを有するプロテウス菌とハローゾーンを有しないプロテウス菌を含む。
【0184】
上述のように、プロテウス菌を検出するための本発明に係る方法は、特徴データをハローゾーンの存在又はハローゾーンの不存在である2つの異なるクラスに特徴データを分離するために2つの教師ありモデルアルゴリズムを使用することによって特徴を分類するステップを含む。各教師ありモデルアルゴリズムに対して同じデータセットが使用される。
【0185】
結果の分析は、使用された教師ありモデルの混乱レベルを決定する混同行列である以下の表5に基づいている。
【0186】
現在の状況では、利用可能なグラウンドトゥルースは、プロテウス菌の存在又はプロテウス菌の不存在であるのに対して、本方法は、ハローゾーンの存在又は不存在に関連する予測を提供する。
【0187】
分類及び回帰ツリーに関する学習モデルを考慮すると、以下の表6に示された結果が得られる:
【0188】
表6は、精度レベルが、非常に良好なレベルである99%であることを示している。
感度レベルは、また良好なレベルである78%である。上記のように、データセットは、ハローゾーンを有さないプロテウス菌を含むペトリ皿を含む。表6に記載のペトリ皿の22%の目視検査は、前記ペトリ皿の大部分がハローゾーンを有さないプロテウス菌を含んでいることを示している。また、コロニーの境界は、教師ありモデルアルゴリズムによってハローゾーンであると誤って検出されているようである。しかしながら、統計的中央画素値の使用はこの問題を克服する。
【0189】
SVMに関する学習モデルを考慮すると、以下の表7に示される結果が得られる:
【0190】
ハローゾーンを有し、プロテウス菌を含まないペトリ皿のパーセンテージは、分類及び回帰ツリーについて表6において読み出された対応するパーセンテージとは異なる。
【0191】
不透明な培地を考慮する場合、プロテウス菌の検出に関する結果は、半透明の培地で読み出された結果とかなり類似している。加えて、不透明な培地を含むペトリ皿ではハローゾーンがより目に見えるので、この方法は偽陰性の検出がより少ない、すなわちプロテウス菌がハロなしとして分類される。
【0192】
開示から:CARTは、同じ特徴が選択され、10ピクセルに等しい独特の膨張サイズを持つその独特のノードを保持する。
【0193】
下記の表8は、SVMアルゴリズムを適用するための混同行列の一例を示す:
【0194】
プロテウス菌の検出の実施態様に関して上で説明したように、信頼性指標は、2つの教師ありモデルアルゴリズムであるCART及びSVMによって提供される事後確率を使用することによってベイズ定理で計算されるパーセンテージである。信頼性指標の値は区間[0;100]に属し、0%はハローゾーンがないことを意味し、100%はペトリ皿にハローゾーンがあることを意味する。
【0195】
上記のように、
- ここで、p(X;Proteus)は、マージンまでの距離をXとしてペトリ皿にプロテウス菌が含まれていると仮定するXの確率である;
- そしてp(Proteus)は、プロテウス菌の存在の先験確率である。
【0196】
図23は、教師ありモデルアルゴリズムであるCART及びSVMの両方について得られた確率の分布を示し、両方の状況において半透明培地と共にプロテウス菌を含むペトリ皿とプロテウス菌を含まないペトリ皿についての確率を示す。
円は、表6及び7に示された偽陽性結果の検出を示す。
【0197】
図23はまた、教師ありモデルアルゴリズムであるCART及びSVMの両方に対する最低確率Ptree及びPsvmのマージ値Pfを表す最終確率の分布を示す。
【0198】
【0199】
【0200】
上記の表9は、非常に良好なレベルである99%より精度レベルが高いことを示している。確かに、2つの教師ありモデルアルゴリズムによって提供された結果のマージは、偽陽性の検出を回避する。
【0201】
また、感度のレベルは71%であり、これは、一部のペトリ皿にはハローゾーンを含まないプロテウス菌が含まれているため、また良好なレベルである。
【0202】
図24は、教師ありモデルアルゴリズムのCART及びSVMの両方について得られた確率の分布を示し、両方の状況に対して、プロテウス菌と不透明培地を含むペトリ皿、並びに不透明培地を含みプロテウス菌を含まないペトリ皿の確率を示している。
【0203】
図24はまた、教師ありモデルアルゴリズムのCART及びSVMの両方に対する最低確率Ptree及びPsvmのマージ値Pfを表す最終確率の分布を示す。
【0204】
ペトリ皿を18時間インキュベートした別の状況では、以下の表11に示す結果が半透明培地について得られている。
【0205】
不透明培地についての対応する結果を以下の表12に示す。
【0206】
上記の表11及び12に示されるように、18時間及び24時間の期間にわたって得られた結果は、半透明又は不透明な培地を含むペトリ皿について安定している。
【0207】
書誌参照
[1] Pedro F. Felzenszwalb, Daniel P. Huttenlocher,「効率的なグラフベースの画像セグメンテーション」; International Journal of Computer Vision, 2004年9月、第59巻、第2号、167-181頁