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特許7007386心不全患者の体液過剰を治療及び予防する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】心不全患者の体液過剰を治療及び予防する装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20220117BHJP
【FI】
A61F2/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019540338
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 US2018015304
(87)【国際公開番号】W WO2018140637
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2019-07-25
(31)【優先権主張番号】62/450,434
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディー.グッドマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル ダブリュ.ダグデール
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー.トロカンスキー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.ボーネッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム.ブリンクマン
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/127477(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0039537(US,A1)
【文献】特表2014-502191(JP,A)
【文献】国際公開第2015/100393(WO,A1)
【文献】特表2017-500144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、第2部分と、前記第1部分及び前記第2部分の間に位置するチャネルとを含む移植型流量制限デバイスを含む装置であって、前記第1部分及び前記第2部分の少なくとも一方は、前記チャネルを通る血流量を変えるよう調節可能な物理的寸法を有し、
前記移植型流量制限デバイスが、
患者の大動脈内部に移植され、そして
少なくとも1つの枝血管の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発し、前記少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させつつ、前記少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持する
よう構成されている、装置。
【請求項2】
前記移植型流量制限デバイスは、前記大動脈の前記少なくとも1つの血管枝の遠位側で50%~70%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記移植型流量制限デバイスは、寸法調節して前記大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させるよう構成されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記移植型流量制限デバイスが、前記移植型流量制限デバイスの少なくとも一方の端部に対して低減された径を有する中央部分を含み、前記中央部分は、寸法調節して前記大動脈の前記少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記移植型流量制限デバイスが、主要幹部分と、前記主要幹部分から延びる1つ又は2つ以上の枝とを含んでおり、前記1つ又は2つ以上の枝は、前記主要幹部分に対して低減された径を有し、前記移植型流量制限デバイスを寸法調節して、前記大動脈の前記少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1部分及び前記第2部分のうちの少なくとも一方が寸法減少部分を含み、前記寸法減少部分は、前記寸法減少部分を通る血流の量又は圧力を前記移植型流量制限デバイスの遠位側で変化させるよう調節するように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1部分及び前記第2部分は、前記少なくとも1つの枝血管のいずれかの側に移植されるよう構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記移植型流量制限デバイスは、前記大動脈内部の圧力を変化させて、前記大動脈の前記少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させるよう構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記移植型流量制限デバイスは、前記大動脈の前記少なくとも1つの枝血管に対して遠位側の圧力を増大させて、前記大動脈の前記少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させるよう構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月25日付けで出願された米国仮特許出願第62/450,434号の優先権を主張する。これによって、その開示内容全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、心不全及び/又は他の心臓血管疾患を治療するためのシステム、医療デバイス、及び方法に関する。より具体的には、本開示は、患者の心臓に加えられる圧力を増大させる過剰体液貯留を取り除くことに関する。
【背景技術】
【0003】
心不全患者は、体内に過剰体液を貯留していることがある。過剰体液貯留は間質腔内の体液蓄積を増大させ、すでに不全になりつつある心臓に対する負荷を強めるおそれがある。過剰体液(又は循環血液量過多)は、心不全患者の入院の主な原因である(米国内では一年当たりほぼ1,000,000人)。
【0004】
過剰体液貯留は利尿薬(又は他の医薬品)によって薬学的に治療することができる。しかしながら、患者は、薬物耐性、不正確な投与又はその他の問題、例えば投薬指示を遵守しないという問題を被ることがある。非薬学的選択肢、例えば、腎機能に影響を与えることにより薬学的有効性の代わりとなるか、或いは薬学的有効性を増強する移植型デバイス手段は、体内の過剰体液貯留を治療する上で、これらの問題及びその他の問題を回避するのに有益であり得る。同様に、慢性の高血圧症(hypertension)も降圧薬(又は他の医薬品)によって薬学的に管理することができる。加えて、他の疾患状態が低血圧症、心拍出量低下、及び腎機能不全を招くおそれがある。腎臓が全身血圧を制御する中心的な役割を有している限り、非薬学的選択肢、例えば、腎機能に影響を与えることにより薬学的有効性の代わりを提供するか、或いは薬学的効力を増強する移植型デバイス手段が、高血圧症及びその他の疾患状態を管理する代替手段を提供することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の種々の態様は、患者の大動脈内部に移植型流量制限デバイスを配置することを含む方法を対象とする。これらの方法は、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させつつ、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するように、移植型流量制限デバイスを調節することを含んでもよい。
【0006】
本発明の態様はまた、患者の大動脈に移植されるように構成された移植型流量制限デバイスを含む装置を対象とする。移植型流量制限デバイスは、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させつつ、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されていてもよい。
【0007】
本開示の種々の態様はまた、大動脈を源とする枝血管の灌流を増強する方法を対象としている。これらの方法は、移植型流量制限デバイスを患者の大動脈に配置すること、そして移植型流量制限デバイスを調節して大動脈内部の圧力を変化させ、大動脈の枝血管内への血流量を変化させつつ、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持することを含んでよい。
【0008】
一つの例(「例1」)によれば、移植型流量制限デバイスを含む装置であって、移植型流量制限デバイスは、患者の大動脈内部に移植され、そして少なくとも1つの枝血管の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発し、少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させつつ、少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成された、移植型流量制限デバイスを含む。
【0009】
例1に加えて別の例(「例2」)によれば、移植型流量制限デバイスは、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で50%~70%の大動脈狭窄を誘発するように構成されている。
【0010】
例1~2のいずれか1つに加えて別の例(「例3」)によれば、移植型流量制限デバイスは、寸法調節して大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させるよう構成されている。
【0011】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例4」)によれば、移植型流量制限デバイスは流量制限バルーンを含み、流量制限バルーンは、寸法調節して大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0012】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例5」)によれば、移植型流量制限デバイスは、移植型流量制限デバイスの少なくとも一方の端部に対して低減された径を有する中央部分を含み、中央部分は、寸法調節して大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0013】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例6」)によれば、前記移植型流量制限デバイスが、主要幹部分と、主要幹部分から延びる1つ又は2つ以上の枝とを含んでおり、1つ又は2つ以上の枝は、主要幹部分に対して低減された径を有し、移植型流量制限デバイスを寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発する。
【0014】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例7」)によれば、移植型流量制限デバイスが、1つ又は2つ以上のテザーによって本体部分内部に固定された制限部分を含んでおり、制限部分は、移植型流量制限デバイスを寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発する。
【0015】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例8」)によれば、移植型流量制限デバイスが第1調節可能部分と第2調節可能部分とを含み、第1調節可能部分及び第2調節可能部分のうちの少なくとも一方は、移植型流量制限デバイスを寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0016】
例8に加えて別の例(「例9」)によれば、第1調節可能部分及び第2調節可能部分のうちの少なくとも一方が寸法減少部分を含み、寸法減少部分は、寸法減少部分を通る血流量、又は圧力を前記移植型流量制限デバイスの遠位側で変化させるよう調節するように構成されている。
【0017】
例8又は9に加えて別の例(「例10」)によれば、第1調節可能部分及び第2調節可能部分が、少なくとも1つの枝血管のいずれかの側に移植されるよう構成されている。
【0018】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例11」)によれば、移植型流量制限デバイスが、第1部分と、第2部分と、第1部分と第2部分との間のチャネルとを含み、第1部分及び第2部分は、移植型流量制限デバイスを寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0019】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例12」)によれば、移植型流量制限デバイスがバルーン部分とカテーテル部分とを含み、そしてバルーン部分は、移植型流量制限デバイスを寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0020】
例1~3のいずれか1つに加えて別の例(「例13」)によれば、移植型流量制限デバイスが、制限構造とノブとを含み、ノブは、制限構造を寸法調節して、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発するよう構成されている。
【0021】
例1~13のいずれか1つに加えて別の例(「例14」)によれば、移植型流量制限デバイスは、大動脈内部の圧力を変化させて、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させるよう構成されている。
【0022】
例1~14のいずれか1つに加えて別の例(「例15」)によれば、移植型流量制限デバイスは、大動脈の少なくとも1つの枝血管に対して遠位側の圧力を増大させて、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させるよう構成されている。
【0023】
一つの例(「例16」)によれば、心臓機能を改善する方法であって、方法は:患者の大動脈に移植型流量制限デバイスを配置することと;そして、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節して、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させつつ、少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持して、腎動脈圧に影響を与え且つ全身血圧を制御することと、を含む。
【0024】
例16に加えて別の例(「例17」)によれば、移植型流量制限デバイスは流量制限バルーンを含み、そして移植型流量制限デバイスの物理的寸法の調節することは、流量制限バルーンの寸法を変化させることを含む。
【0025】
例16に加えて別の例(「例18」)によれば、移植型流量制限デバイスは、血流を導くよう構成された1つ又は2つ以上の枝を含み、そして移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、1つ又は2つ以上の枝のうちの少なくとも1つの枝の寸法を変化させて、腎動脈のうちの少なくとも1つ腎動脈内への血流量を変化させることを含む。
【0026】
例16に加えて別の例(「例19」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、移植型流量制限デバイスを通る流れの収縮の程度を操作することを含む。
【0027】
例16に加えて別の例(「例20」)によれば、大動脈の少なくとも1つの枝血管は少なくとも1つの腎動脈であり、そして移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、腎動脈のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させ、腎臓灌流を血行動態的に増大させる。
【0028】
例16に加えて別の例(「例21」)によれば、この方法はまた、患者のニーズに応じて、移植後に、移植型流量制限デバイスによって与えられる制限の量を調節することを含む。
【0029】
例16に加えて別の例(「例22」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、患者の腎臓内への流量を変化させて、正常な腎機能へと向かう変化を患者にもたらす神経ホルモン反応を生じさせることを含む。
【0030】
例16に加えて別の例(「例23」)によれば、この方法はまた、移植型流量制限デバイスと一緒に配置されたセンサを含み、センサは、デバイスを通る血流を監視するよう構成されており、センサは、圧力センサ及び流量センサのうちの少なくとも一方である。
【0031】
例23に加えて別の例(「例24」)によれば、この方法はまた、センサによって監視された血流量に応じて移植型流量制限デバイスを通る血流量を変化させることを含む。
【0032】
一つの例(「例25」)によれば、心臓機能を改善する方法であって、方法は:患者の大動脈内部に移植型流量制限デバイスを配置することと;そして、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節して、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させつつ、少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持して、患者の交感神経系の活性化を低減することにより患者の心機能を維持又は改善し、安静時の心拍数、血圧、及びN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(nt-proBNP)のうちの少なくとも1つを減少させるか、又は心収縮性を改善することと、を含む。
【0033】
例25に加えて別の例(「例26」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発する。
【0034】
例26に加えて別の例(「例27」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で50%~70%の大動脈狭窄を誘発する。
【0035】
例25に加えて別の例(「例28」)によれば、大動脈の少なくとも1つの枝血管は少なくとも1つの腎動脈であり、そして移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、静脈流出圧力に対して、患者の腎臓を横切る少なくとも1つの腎動脈の圧力開口における血圧を増大させ、より多くの血液が腎臓を通流するようにすることを含む。
【0036】
例28に加えて別の例(「例29」)によれば、少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させることは、患者の利尿作用を高め、体液貯留を少なくするために腎臓による体液濾過作用を高めることを含む。
【0037】
例29に加えて別の例(「例30」)によれば、少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させることは、患者のレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の刺激を低減する。
【0038】
別の例(「例31」)によれば、腎機能を改善する方法であって、方法は:患者の大動脈に移植型流量制限デバイスを配置することと;そして、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節して、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させつつ、少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持して、患者の腎臓の健康状態を維持又は改善することと、を含む。
【0039】
例31に加えて別の例(「例32」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で40%~80%の大動脈狭窄を誘発する。
【0040】
例32に加えて別の例(「例33」)によれば、移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、大動脈の少なくとも1つの血管枝の遠位側で50%~70%の大動脈狭窄を誘発する。
【0041】
例31に加えて別の例(「例34」)によれば、大動脈の少なくとも1つの枝血管は少なくとも1つの腎動脈であり、そして移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、静脈流出圧力に対して、患者の腎臓を横切る少なくとも1つの腎動脈の圧力開口における血圧を増大させ、より多くの血液が腎臓を通流するようにすることを含む。
【0042】
例31に加えて別の例(「例35」)によれば、尿生成量を増大させるために移植型流量制限デバイスの物理的寸法を調節することは、血清クレアチニンを低下させ、又は血漿NGALを低下させる。
【0043】
一つの例(「例36」)によれば、装置が移植型流量制限デバイスを含み、移植型流量制限デバイスは:器官へ血流を提供する、患者の血管内部の所定の場所に移植され;かつ、その場所の遠位側で40%~80%の血管狭窄を誘発し、器官内への血流量を変化させつつ、その場所に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されている。
【0044】
例36に加えて別の例(「例36」)によれば、移植型流量制限デバイスは、器官内への血流量を変化させるために寸法調節するように構成されている。
【0045】
多数の実施態様が開示されているが、下記詳細な説明から、本発明のさらに他の実施態様が当業者には明らかになる。詳細な説明は本発明の例示的実施態様を示し説明する。従って、図面及び詳細な説明は例示的なものと見なされるべきであり、制限的なものと見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0047】
図2図2は、本開示の種々の態様に基づく、拘束カフを含む移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0048】
図3図3は、本開示の種々の態様に基づく、流量制限ステントグラフトを含む移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0049】
図4A図4Aは、本開示の種々の態様に基づく、分流ステントグラフトを含む移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0050】
図4B図4Bは、本開示の種々の態様に基づく、別の分流ステントグラフトを含む移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0051】
図5図5は、本開示の種々の態様に基づく、流量制限バルーンを含む移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0052】
図6図6は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの一例を示す図である。
【0053】
図7図7は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例を示す図である。
【0054】
図8A図8Aは、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの一例を示す斜視図である。
【0055】
図8B図8Bは、本開示の種々の態様に基づく、図8Aに示された移植型流量制限デバイスの例を示す上面図である。
【0056】
図9図9は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例を示す図である。
【0057】
図10図10は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例を示す図である。
【0058】
図11図11は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
開示された対象は種々の変更形及び代わりの形態を受け入れることができるが、具体的な実施態様が一例として図面に示されており、また下記に詳述される。しかしながら、これは、記載された特定の実施態様に開示を限定しようとするものではない。反対に、開示は添付の請求項によって特徴付けられる、開示された対象の範囲内に含まれる全ての変更形、同等物、及び代替形をカバーするものとする。
【0060】
測定値の範囲(例えば直前に開示されたもの)に関して本明細書中に使用される「約」及び「ほぼ」という用語は、提示された測定値を含み、そして提示された測定値に適度に近い任意の測定値をも含むが、しかしながら、適度に僅かな量だけ、例えば測定誤差、測定設備及び/又は製造設備の較正の差、測定値の読み出し及び/又は設定におけるヒューマンエラー、他の構成部分と関連する測定差を考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われる調節、特定の実施シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調節及び/又は操作、及び/又はこれに類するものに起因するものと当業者によって理解され、容易に確認されるような適度に僅かな量だけ異なっていてよい測定値を意味するよう、相互に置き換え可能に用いることができる。
【0061】
本開示の種々の態様は、患者の心不全及び/又は他の心臓血管疾患、例えば高血圧症及び低血圧症を治療することを対象とする。本開示の種々の態様は、生理学的に媒介される治療反応を誘発するために、腎血流の血行動態を操作する移植型デバイスを対象とする。ある特定の例では、患者の心臓機能は体内に過剰体液を貯留すること(例えば循環血液量過多)によって危険に晒される。体液の貯留は、主に組織内の体液蓄積量を増大させ、そして種々の循環における圧力を高めることがある。既に不全になりつつある心臓内の、そして心臓自体の、又は心臓との組み合わせにおける増大した圧力は患者にさらなる害を及ぼすことがある。下記でさらに詳述するように、本開示の種々の態様は過剰体液の貯留を軽減すること、そして心臓から過剰体液を逸らせることを対象とする。
【0062】
ある特定の例では、患者の心臓機能は、体内に過剰に体液が貯留すること(例えば循環血液量過多)によって危険に晒されることがある。体液の貯留は、主に組織内の体液蓄積量を増大させ、そして種々の循環における圧力を高めることがある。既に不全になりつつある心臓内の、そして心臓自体の、又は心臓との組み合わせにおける増大した圧力は、患者にさらなる害を及ぼすことがある。ある特定の例では、流量変更デバイスによって、増大する天然利尿作用が過剰体液の貯留を減らし、心臓の周り(及び/又は胸腔)から過剰体液を逸らせる。
【0063】
ある特定の例では、心不全(例えば末期心不全)の患者は、心拍出量(例えば1分間当たりの心臓によって送出される血液量)が低減している。このことは、利尿作用の減少を招くことがある。本明細書中に論じられる流量制限デバイス、及び流量制限デバイスを含む方法は、患者の腎動脈の開口における血圧を増大させることにより、静脈流出圧力に対して、腎臓を横切る圧力を増大させることを対象とする。これにより、より多くの血液が腎臓を通流するようになる。このことは腎臓が体液濾過量を増大させるのを可能にし、その結果、利尿作用が改善され、体液鬱滞が少なくなる。
【0064】
ある特定の例では、心不全(例えば末期心不全)の患者は、心拍出量(両腎臓のうちの一方における血圧及び血流量)の減少に部分的に起因して、交感神経系の上昇状態を有することがある。この状態の1つの補償出量は、心拍出量を維持しようとするための信号を生成することである。この信号は心臓にさらなる負担(心筋酸素需要)をかける。本明細書中に論じられる流量制限デバイス、及び流量制限デバイスを含む方法は、腎臓内の圧力(平均収縮期又は最大収縮期)を増大させることにより、神経ホルモン反応の刺激を低減すること(例えば交感神経系活性化の減少)を対象とする。流量制限デバイスを又は流量制限デバイスを含む方法によって、交感神経系の活性化が低減される結果、安静時の心拍数及び血圧を減少させることができる。
【0065】
更にある特定の例では、心不全(例えば末期心不全)の患者は、心拍出量の減少の結果、腎臓への血流が損なわれることに部分的に起因して、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化を有することがある。RAASが上昇した結果、不都合な心臓血管構造変化を刺激する信号が生成される。本明細書中に論じられる流量制限デバイス、及び流量制限デバイスを含む方法は、腎臓内の圧力(平均収縮期又は最大収縮期)を増大させることにより、RAASの刺激を低減することを対象とする。流量制限デバイス、及び流量制限デバイスを含む方法によって、RAASの活性化が低減される結果、交感神経系活性化を低減し、及び不都合な心臓リモデリングを軽減することができる。
【0066】
図1は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイス100の一例を示す図である。移植型流量制限デバイス100は患者の血管系内部に配置されている状態で示されている。図1に示された患者の血管系は、患者の心臓102と、大動脈基部104と、上大静脈106と、大動脈弓108と、肺動脈幹110と、下行大動脈112と、腹腔動脈114と、上腸間膜動脈116と、腎動脈118,120と、下腸間膜動脈122と、腹部大動脈124と、腸骨動脈126,128とを含む。移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120の遠位側で大動脈内部に配置されていてよい。加えて、移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持しつつ、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させるよう構成されていてよい。加えて、移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120の遠位側で大動脈に配置された移植型流量制限デバイス100に加えて、又はその代わりに、腸骨動脈126,128のうちの一方又は両方の周りに配置されてもよい。
【0067】
ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、大動脈を源とする枝血管(腎動脈118,120、又は腸骨動脈126,128)の灌流を増強することを目的としてよい。移植型流量制限デバイス100は、大動脈内部の圧力を増大させて枝血管内への血流量を増大させるように、移植型流量制限デバイス100を通る血流に対する抵抗を増大させることによって調節することができる。加えて、移植型流量制限デバイス100は、灌流を連続的に増強するために大動脈に留まるよう構成されていてよい。
【0068】
腎動脈118,120のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させるように構成された移植型流量制限デバイス100は、心臓から体液を逸らせることができる。心不全患者の場合、(少なくとも部分的には)損なわれた心拍出量の結果として腎臓を通る血流量が不充分になることによって、体液過剰が引き起こされることがある。腎動脈118,120のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させるように移植型流量制限デバイス100を使用することにより、腎臓灌流量を薬学的にではなく、血液動態的に増大させることができる。腎臓灌流量を増大させるように、腎動脈118,120に対して遠位側の血流に対する抵抗を増大させてよい。これにより遠位側の灌流量が減少する。腎臓灌流量の増大は、腎臓における産生を促進し、ひいては体液量を除去する。加えて、移植型流量制限デバイス100は、これと併せて行われる薬理的治療の性能を向上させるよう使用することもできる。例えば、患者の腎機能を付加的に向上させることにより、薬理学的治療(例えば利尿薬及び/又は高血圧症薬剤)を向上させることができる。
【0069】
ある特定の例では、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させつつ、腎動脈118,120に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されている移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120のうちの少なくとも一方又は両方の腎動脈内への血流量に焦点を当てることができる。腎動脈118,120に対して近位側で制限することにより、大動脈によって供給される他の部位、例えば腹腔動脈114、上腸間膜動脈116、又は脳へ血流を導くことができる。このように、ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120の少なくとも部分的に遠位側で患者の大動脈内部に配置することができる。その結果、腎動脈118,120のうちの一方又は両方への血流量を増大させることにより、腎臓のうちの少なくとも一方への血流量を増大させることができ、これにより、体液除去量を増大させ、そして患者の心臓に加えられる圧力を低下させることができる。
【0070】
移植型流量制限デバイス100は尿産生量を増大させること、及び/又は全身血圧を修正することへの非薬学的アプローチを提供する。患者は薬物耐性、不正確な投与、又は望ましくない副作用を被ることがある。薬物が役に立たない場合には、アクアフェレシス(aquapheresis)又は血液透析を用いて血液から直接に体液を濾過することができるものの、これらの解決手段は比較的侵襲的であり、患者の生活様式に破壊的影響を与える。加えて、アクアフェレシス(aquapheresis)又は血液透析は血液動態の不安定性を、関連する心臓血管合併症、腎臓損傷、感染症とともにもたらし、且つ/又は資本的設備を必要とすることもある。
【0071】
移植型流量制限デバイス100は、経皮的又は外科的に、一時的又は永久的に移植されると末梢抵抗を変化させることができ、患者のニーズを満たすように調節することができる。移植型流量制限デバイス100は、患者が介入を必要とする限り、移植後に体内に残ってもよい。移植型流量制限デバイス100は、数時間、数日間、又は数年間にわたって移植されていてよい。
【0072】
移植型流量制限デバイス100によって付与される量、又は抵抗又は流量制限は、患者のニーズを満たすように移植後に調節することができる。移植型流量制限デバイス100は、大動脈内部の圧力を変化させることにより、腎動脈118,120内又は目標枝、例えば腸骨動脈126,128内への血流量を増減することができる。移植型流量制限デバイス100によって、腎動脈118,120又は目標枝、例えば腸骨動脈126,128に対して遠位側の圧力を増大させることにより、これらに対して近位側の部位内(例えば、移植型流量制限デバイス100の配置に応じて腎動脈118,120及び/又は腸骨動脈126,128内)への血流量を増大させることができる。
【0073】
ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は患者における長期にわたる、又は慢性的な生理学的変化を生じさせることができる。腎臓内への流量を変化させる移植型流量制限デバイス100は、正常な腎機能に向かうために患者に変化をもたらす神経ホルモン反応を生じさせることができる。腎臓は患者の身体を通る全身血圧のフィードバック調節器である。腎臓内への流量を変化させる移植型流量制限デバイス100は、全身血圧を調節するために腎臓の天然フィードバックメカニズムに影響を与える非薬学的手段を提供する。腎臓灌流の血液動態変化度を調節することにより、血圧を制御するために患者固有の調節を行うことができる。流量制限デバイス100によって付与される大動脈流抵抗を調節することによって、腎臓動脈圧力及び/又は流量に影響を与えることができ、そしてこのことは、全身血圧の一時的な変化又は長期にわたる変化として現れることがある。腎臓媒介血圧レベルの、流量制限デバイス100によって誘発される変化は、それ自体で治療的有用性を有してもよい。同様に、腎臓媒介血圧レベルの、流量制限デバイス100によって誘発される変化を、種々の血圧用薬剤と組み合わせて用いることにより、個人ベースで血圧管理を最適化してもよい。ある特定の例では、流量制限デバイス100は、腎動脈118,120に対して遠位側の大動脈内部で、通常の血流と比較してほぼ10%~30%だけ、血流に対する抵抗を増大させてもよい。流量制限デバイス100は、腎臓内への血流量を増大させるために、腎動脈118,120に対して遠位側の大動脈を、ほぼ10%~30%だけ塞いでもよい。ある特定の例では、腎動脈118,120に対して遠位側の大動脈を、ほぼ70%を上回るパーセンテージで塞ぐ(そこを通る血流に対する抵抗を増大させる)と、全身血圧を制御するための腎臓の天然フィードバックメカニズムに基づいて腎臓への血流量を減少させ得る。
【0074】
ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100はセンサ130を含んでよい。センサ130は、移植型流量制限デバイス100の中又はその近くで血流量(又は他の血液動態パラメータ)を監視するよう構成されていてよい。或いはセンサ130は、血流内の種々の生化学パラメータ、バイオマーカーパラメータ、薬理学パラメータを監視することもできる。センサ130は圧力センサ又は流量センサのうちの一方であってよい。加えて、移植型流量制限デバイス100は、センサ130によって監視された血流に応じて血流量を変化させるよう構成されてもよい。ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、大動脈内部、又は腎動脈118,120内部の圧力差を変化させることにより、腎動脈118,120のうちの1つ又は2つ以上への血流量を変化させるように形成することができる。圧力差を変化させる移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120の一方又は両方への血流量を増減することができる。例えば、腎動脈118,120に対して遠位側の移植型流量制限デバイス100によって圧力を増大させることにより、血液は腎動脈118,120内へ強制的に送り込まれる。移植型流量制限デバイス100によって加えられる圧力量を調節して、腎動脈118,120のうちの一方又は両方の腎動脈内への所望の血流量を達成してもよい。センサ130は、患者の外部の情報源、例えば個人健康状態トラッカー、又は生活様式指導インターフェイスと組み合わせて使用し、移植型流量制限デバイス100によって圧力量が加えられるのを支援して、腎動脈118,120のうちの一方又は両方の腎動脈内への所望の血流量を達成してもよい。
【0075】
ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、腎動脈118,120の少なくとも部分的に遠位側で、患者の40%~80%の大動脈狭窄を誘発し、そして大動脈の少なくとも1つの枝血管(例えば腎動脈118,120のうちの一方又は両方)内への血流量を変化させつつ、少なくとも1つの枝血管(例えば腎動脈118,120のうちの一方又は両方)に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されている。ある特定の例では、誘発される狭窄は50%~70%である。臨床的には、足関節血圧、ドップラー超音波速度、足関節上腕血圧比、又は下肢におけるその他の血液動態パラメータを採用して、誘発される狭窄の程度を最適化しつつ、適切な肢灌流を確保することができる。加えて、移植型流量制限デバイス100は、器官内に通じる、患者の別の血管内へ埋め込まれてもよい。これらの例では、移植型カプセル化デバイス100は、移植型流量制限デバイス100が移植された場所の遠位側で、移植型流量制限デバイス100が移植された血管の40~80%の狭窄を誘発するよう構成される。加えて、移植型流量制限デバイス100をこのように移植することによって、血管が通じる器官内への血流量を変化させつつ、移植場所に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持する。
【0076】
これに加えてある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、移植型流量制限デバイス100の物理的寸法を調節して、大動脈の少なくとも1つの枝血管(例えば腎動脈118,120)内への血流量を増大させつつ、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持し、患者の心機能を維持又は改善することによって、心機能を改善するために使用することができる。物理的寸法の調節に関するさらなる議論に関しては、図2~11を参照することができる。
【0077】
移植型カプセル化デバイス100の物理的寸法を調節することにより、少なくとも1つの枝血管(例えば腎動脈118,120)の遠位側で、40%~80%、より具体的な例では50%~70%の大動脈狭窄を誘発することができる。ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100の物理的寸法を調節することは、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させることにより、静脈流出圧力に対して、患者の腎臓を横切る圧力を増大させ、より多くの血液が腎臓を通流するようにすることを含む。加えて、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させることは、患者の利尿作用を高め、体液貯留を少なくするために腎臓による体液濾過作用を高めることを含む。さらに、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させると、患者の交感神経系の活性化が低減され、これにより、安静時の心拍数、血圧、及び/又はN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(nt-proBNP)が低下する。加えて、患者の交感神経系の活性化が低減されると、心臓の収縮性を改善することもできる。ある特定の例では、腎動脈118,120のうちの少なくとも1つの腎動脈の開口における血圧を増大させることにより、患者のレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の刺激が低減される。
【0078】
ある特定の例では、移植型流量制限デバイス100は、移植型流量制限デバイス100の物理的寸法を調節することによって、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を増大させつつ、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持し、患者の腎臓健康状態を維持又は改善するよう、使用することができる。腎臓の健康状態は、腎臓が被った、又は被り続けている損傷の量、又は健常時の患者のベースライン腎機能に対する機能の減少を含んでよい。ある特定の例では、腎臓損傷は、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)を測定することにより定量化することができる。物理的寸法の調節をさらに論じるために、図2~11を参照することができる。移植型流量制限デバイス100の物理的寸法を調節することにより、少なくとも1つの枝血管(例えば腎動脈118,120)の遠位側で、40%~80%、より具体的な例では50%~70%の大動脈狭窄を誘発することができる。臨床的には、足関節血圧、ドップラー超音波速度、又は下肢におけるその他の血液動態パラメータを採用して、適切な肢灌流を確保しつつ、誘発される狭窄の程度を最適化することができる。
【0079】
図1に示された一例としての移植型流量制限デバイス100は、本明細書全体を通して開示された開示内容の実施態様の使用又は機能の範囲に関していかなる制限も示唆しないものとする。一例としての移植型流量制限デバイス100は、単一の構成部分又はそこに例示された構成部分の組み合わせに関する依存関係又は要件を有するものと解釈されるべきではない。加えて、図1に示された構成部分のうちのいずれか1つ又は2つ以上は、実施態様において、この図に示された他の構成部分(及び/又は例示されていない構成部分)のうちの種々のものと統合することができる。例えば、図2~11に関連して論じられる流量制限デバイスは、図1に関連して論じられたセンサを含んでよい。
【0080】
図2は、本開示の種々の態様に基づく、拘束カフを含む移植型流量制限デバイスの一例200を示す図である。移植型カプセル化デバイス200は、患者の大動脈に配置された状態で示されている。図2に示された患者の血管系は、患者の心臓202と、大動脈基部204と、上大静脈206と、大動脈弓208と、肺動脈幹210と、下行大動脈212と、腹腔動脈214と、上腸間膜動脈216と、腎動脈218,220と、下腸間膜動脈122と、腹部大動脈224と、腸骨動脈226,228とを含む。移植型流量制限デバイス200は、腎動脈218,220の遠位側で大動脈内部に配置されていてよい。
【0081】
移植型流量制限デバイス200は、腎動脈218,220のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させるよう構成されてよい。図2に示されているように、移植型流量制限デバイス200は拘束カフであってよい。ある特定の例では、拘束カフは縫合、薄いグラフト層(例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE))、又は他の同様の構造であってよい。移植型流量制限デバイス200を配置することは、腎動脈218,220の遠位側の大動脈の周りに拘束カフを配置して、腎動脈218,220のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させることを含むことができる。加えて、移植型流量制限デバイス200は、腎動脈218,220の遠位側で大動脈の周りに配置された移植型流量制限デバイス200に加えて、又はその代わりに、腸骨動脈226,228のうちの一方又は両方の周りに配置されてもよい。
【0082】
拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、大動脈及び/又は腸骨動脈226,228を減径することにより、その遠位側で抵抗を増大させ、血流量を低減する。拘束カフ移植型流量制限デバイス200の減径量は、顕著な臨床症状をもたらす点まで遠位側灌流を損なうことなく、腎動脈218,220のうちの少なくとも一方を介して腎臓への血流量を最適化するように調節することができる。拘束カフ移植型流量制限デバイス200を介して加えられる緊張を調節することにより、拘束カフ移植型流量制限デバイス200の減径量を変化させて、腎動脈218,220のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を変化させてもよい。
【0083】
拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、腎動脈218,220に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持することもできる。動脈218,220に対して遠位側に配置された拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、その中の血流量を増大させる一方で、腎動脈218,220に対して近位側の大動脈部位へのほぼ正常な流量を維持することができる。腎動脈218,220に対して近位側で血流量を監視することができ、そして拘束カフ移植型流量制限デバイス200を介して加えられる制限の量を調節することにより、腎動脈218,220に対して近位側の大動脈部位へのほぼ正常な流量を維持し、そして腎動脈218,220のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させることもできる。
【0084】
移植型流量制限デバイス200によって付与される量、又は抵抗、又は流量制限は、患者のニーズを満たすように移植後に調節することができる。拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、大動脈内部の圧力を変化させ、腎動脈218,220内又は目標枝、例えば腸骨動脈226,228内への血流量を増減することができる。拘束カフ移植型流量制限デバイス200によって、腎動脈218,220、又は目標枝、例えば腸骨動脈226,228に対して遠位側の圧力を増大させることにより、これらに対して近位側の部位内(例えば、拘束カフ移植型流量制限デバイス200の配置に応じて腎動脈218,220及び/又は腸骨動脈226,228内)への血流量を増大させることができる。ある特定の例では、拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、患者における長期にわたる、又は慢性的な生理学的変化を生じさせることができる。腎臓内への流量を変化させる拘束カフ移植型流量制限デバイス200は、正常な腎機能に向かうために患者に変化をもたらす神経ホルモン反応を生じさせることができる。腎臓は患者の身体を通る全身血圧のフィードバック調節器である。腎臓内への流量を変化させる移植型流量制限デバイス100は、全身血圧のために身体を通るフィードバックメカニズムを提供し、患者のニーズを満たすために調節することができる。
【0085】
図3は、本開示の種々の態様に基づく、流量制限ステントグラフトを含む移植型流量制限デバイスの一例300を示す図である。移植型カプセル化デバイス300は、患者の大動脈に配置された状態で示されている。図3に示された患者の血管系は、患者の心臓302と、大動脈基部304と、上大静脈306と、大動脈弓308と、肺動脈幹310と、下行大動脈312と、腹腔動脈314と、上腸間膜動脈316と、腎動脈318,320と、下腸間膜動脈322と、腹部大動脈324と、腸骨動脈326,328とを含む。移植型流量制限デバイス300は、腎動脈318,320の遠位側で大動脈内部に配置されていてよい。
【0086】
移植型流量制限デバイス300は、腎動脈318,320のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させるよう構成されてよい。図3に示されているように、移植型流量制限デバイス300は流量制限ステントグラフトであってよい。流量制限ステントグラフトデバイス300は、大動脈及び/又は腸骨動脈326,328の径を低減することにより、その遠位側で抵抗を増大させ、血流量を低減する。図3は、流量制限ステントグラフトデバイス300を大動脈内部に配置した状態で示しているが、これに加えて又はこの代わりに、患者は腸骨動脈326,328のうちの一方又は両方の腸骨動脈の内部に配置された流量制限ステントグラフトデバイス300を含んでもよい。流量制限ステントグラフトデバイス300は直径方向に調節可能であってよい。制限ステントグラフトデバイス300は、複数回にわたって直径方向に調節して、所望の形状及び直径に達してもよい。ある特定の例では、流量制限ステントグラフトデバイス300は、流量制限ステントグラフトデバイス300内部に加えられた膨張力によって直径方向に調節することができる。膨張力はバルーン構造によって加えることができる。流量制限ステントグラフトデバイス300は、ステント及びグラフト構造を含んでよい。流量制限ステントグラフトデバイス300のステント及びグラフト構造のいずれか又は両方は、膨張力に応じて新しい直径を維持するよう構成されてよい。
【0087】
ある特定の例では、流量制限ステントグラフトデバイス300は、例えばバルーンによって拡張可能なステント構成部分を含んでいてよい。流量制限ステントグラフトデバイス300は、拡張可能部分を含んでいてよく、或いは流量制限ステントグラフトデバイス300全体がバルーンによって拡張されるようになっていてもよい。例えば、流量制限ステントグラフトデバイス300の拡張可能部分は、制御された拡張状態を有するよう構成されてよく、これにより、複数の調節された直径を通して、初期留置直径を超えて、バルーンによって拡張可能な流量制限ステントグラフトデバイス300の最大直径拡張限界値まで直径方向の調節を行うことが可能になる。直径方向に調節可能なデバイス及び関連する方法の例が、Bohn他の米国特許出願公開第2016/0143759号明細書にも記載されている。
【0088】
好適なステントパターン及び関連する製造方法の例が、Vonesh他の米国特許第6,673,102号明細書にも記載されている。流量制限ステントグラフトデバイス300のステントは種々のワイヤ材料から形成されてよい。ワイヤ材料は、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金(ニチノール)、タンタル、エルジロイ(elgiloy)、種々のポリマー材料、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は生体吸収性材料、例えば左旋性ポリ乳酸(L-PLA)又はポリグリコール酸(PGA)を含む。種々の例において、ステントは自己拡張型であり、拘束されると流量制限ステントグラフトデバイス300に自己拡張力を加える。このようなものとして流量制限ステントグラフトデバイス300のステントは、超弾性材料、例えばニチノール金属から形成されてよい。超弾性材料は、例えばVonesh他の米国特許第6,673,102号に記載されているもののように、圧密化形態(直径)において緊密な圧縮に耐え、次いでひとたび所定の位置で解放されると、展開形態(直径)まで自己拡張する。いくつかの実施態様では、流量制限ステントグラフトデバイス300は、典型的な生物学的圧力(例えば典型的には循環圧)よりも大きい圧力下で、そして流量制限ステントグラフトデバイス300のステントによって加えられる拡張力下で、機械的に調節されるよう構成されていてよい。
【0089】
例えば、流量制限ステントグラフトデバイス300は、制御型拡張エレメントを有していてよい。制御型拡張エレメントは、流量制限ステントグラフトデバイス300の1つ又は2つ以上の部分を形成する制御型拡張材料を降伏又は塑性変形させることによって、又はこのような制御型拡張材料の繊維微細構造又は他の微細構造を再編成させることによって、又は流量制限ステントグラフトデバイス300のファスナ又は折り目を解放することによって、又は流量制限ステントグラフトデバイス300の他の機械的調節によって、任意に機械的に調節することができる。流量制限ステントグラフトデバイス300を機械的に調節するために必要とされる圧力は典型的な生理学的条件(例えば典型的な最大血圧)よりも高いので、流量制限ステントグラフトデバイス300は、流量制限ステントグラフトデバイス300の最大直径拡張限界値を上回ることにより流量制限ステントグラフトデバイス300を壊滅的に故障させる傾向のある圧力よりも低い圧力で、調節された直径を維持することができる。流量制限ステントグラフトデバイス300の制御型拡張は、典型的な生物学的条件下で経時的に実質的な直径クリープ、又は自然発生的な直径拡張が生じることなしに、機械的に調節された直径を維持するよう構成されていることが好ましい。流量制限ステントグラフトデバイス300の制御型拡張部分は任意には1つ又は2つ以上の層を含み、種々の材料から形成されていてよい。これらの材料は、フルオロポリマー材料、例えばGoreの米国特許第3,953,556号明細書、米国特許第3,962,153明細書、米国特許第4,096,227明細書、米国特許第4,187,390明細書、及び米国特許第4,902,423号明細書に記載された膨張可能な延伸PTFEチューブ、又はArmstrong他の米国特許出願公開第2013/0204347号明細書の膨張可能なラティスを含む。制御型拡張に関してさらに参照するために、2016年4月21日付けで出願されたPCT/US2016/028671を引用することができる。この文献は、参照することにより全体的に特に制御型拡張を目的として本明細書中に援用される。
【0090】
流量制限ステントグラフトデバイス300は砂時計形ステントグラフトである。砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300は、分離された部分を有していてよく、これらの分離された部分は直径方向に調節可能であり、砂時計形状の各部分にステントを含む。これらのステントは砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300の各区分に位置する不連続なリング又は部分であってよい。例えば、砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300のより大きい端部は、砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300のより小さな直径の内側部分とは異なるステント部分を有していてよい。流量制限ステントグラフトデバイス300はニチノール(NiTi)又はステンレス鋼とePTFEとから製作されていてよく、自己拡張型であるか又はバルーン拡張型であってよい。砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300は、大動脈及び/又は腸骨動脈326,328の寸法(直径)を低減して、その遠位側で抵抗を増大させ、血流量を低減することができる。砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300は、これにより腎動脈318,320のうちの一方又は両方の腎動脈内への血流量を増大させる。砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300の寸法(例えば直径)を変化させることにより、制限量を上述のように調節することができる。砂時計形流量制限ステントグラフトデバイス300の中央部分をバルーンによってさらに開くことにより、これを通る流量を調節することができる。
【0091】
流量制限ステントグラフトデバイス300は、腎動脈318,320に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持することもできる。腎動脈318,320に対して近位側で血流量を監視することができ、そして流量制限ステントグラフトデバイス300を介して加えられる制限の量を調節することにより、腎動脈318,320に対して近位側の大動脈部位へのほぼ正常な流量を維持し、そして腎動脈318,320のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させることもできる。心不全患者の場合、(少なくとも部分的には)損なわれた心拍出量の結果として腎臓を通る血流量が不充分になることによって、体液過剰が引き起こされることがある。腎動脈318,320のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させる流量制限ステントグラフトデバイス300は、腎臓灌流量を血液動態的に増大させることができる。増大した腎臓灌流は過剰体液を1日当たりほぼ1リットルまで除去することができる。
【0092】
移植型流量制限デバイス300によって付与される量、又は抵抗、又は流量制限は、患者のニーズを満たすように移植後に調節することができる。移植型流量制限デバイス300は大動脈内部の圧力を変化させることにより、腎動脈318,320内(及び/又は腸骨動脈326,328)内への血流量を増減することができる。ある特定の例では、移植型流量制限デバイス300は患者における長期にわたる、又は慢性的な生理学的変化を生じさせることができる。腎臓内への流量を変化させる移植型流量制限デバイス300は、正常な腎機能へと向かう変化を患者にもたらす神経ホルモン反応を生じさせることができる。腎臓は患者の身体を通る全身血圧のフィードバック調節器である。腎臓内への流量を変化させる移植型流量制限デバイス300は、全身血圧のために身体を通るフィードバックメカニズムを提供し、患者のニーズを満たすために調節することができる。
【0093】
図3に示された一例としての移植型流量制限デバイス300は、本明細書全体を通して開示された開示内容の実施態様の使用又は機能の範囲に関していかなる制限も示唆しないものとする。一例としての流量制限デバイス300は、単一の構成部分又はそこに例示された構成部分の組み合わせに関する依存関係又は要件を有するものと解釈されるべきではない。例えば、実施態様において、流量制限ステントグラフトデバイスの一例300は、拘束カフ移植型流量制限デバイス200と同様に、移植後に収縮を可能にする特徴を含んでいてよい。加えて、図3に示された構成部分のうちのいずれか1つ又は2つ以上は、実施態様において、この図に示された他の構成部分(及び/又は例示されていない構成部分)のうちの種々のものと統合することができる。
【0094】
図4Aは、本開示の種々の態様に基づく、分流ステントグラフトを含む流量制限デバイスの一例400aを示す図である。移植型流量制限デバイス400aは、患者の大動脈に配置された状態で示されている。図4Aに示された患者の血管系は、患者の心臓402と、大動脈基部404と、上大静脈406と、大動脈弓408と、肺動脈幹410と、下行大動脈412と、腹腔動脈414と、上腸間膜動脈416と、腎動脈418,420と、下腸間膜動脈422と、腹部大動脈424と、腸骨動脈426,428とを含む。移植型流量制限デバイス400aは、腎動脈418,420の遠位側で大動脈に配置されていてよい。
【0095】
移植型流量制限デバイス400aは、腎動脈418,420のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させるよう構成されてよい。図4に示されているように、移植型流量制限デバイス400aは分流ステントグラフトデバイスであってよい。分流ステントグラフトデバイス400aは、1つ又は2つ以上の枝430,432を含んでいてよい。枝430,432は、腎動脈418,420内部に配置されていてよく、分流ステントグラフトデバイス400aの主要本体部分は大動脈内部に配置されている。分流ステントグラフトデバイス400aの枝430,432は、腎動脈418,420内へ血流を導くことにより、その中の血流量を増大させることができる。分流ステントグラフトデバイス400aは、分流ステントグラフトデバイス400aに対して遠位側での血流を可能にする。分流ステントグラフトデバイス400aの枝430,432は、分流ステントグラフトデバイス400aの遠位側で血流に対する抵抗を増大させ、これにより腎動脈418,420内への血流量を増大させることができる。
【0096】
ある特定の例では、分流ステントグラフトデバイス400aは直径方向に調節可能であってよい。ある特定の例では、分流ステントグラフトデバイス400aは流量制限ステントグラフトデバイス400a内部に加えられる膨張力によって、直径方向に調節することができる。力は分流ステントグラフトデバイス400aの主要ボディ部分内、又は枝430,432内に加えることにより、寸法を調節することができる。枝430,432又は分流ステントグラフトデバイス400aの他の部分の寸法を制限又は拡張することによって流量を調節することができる。分流ステントグラフトデバイス400aは、ニチノール(NiTi)又はステンレス鋼とePTFEとから製作されていてよく、自己拡張型であるか又はバルーン拡張型であってよい。
【0097】
分流ステントグラフトデバイス400aは、腎動脈418,420に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持することもできる。腎動脈418,420に対して近位側で血流量を監視することができ、そして分流ステントグラフトデバイス400aを介して加えられる制限の量を調節することにより、腎動脈418,420に対して近位側の大動脈部位へのほぼ正常な流量を維持し、そして腎動脈418,420のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させることもできる。
【0098】
図4Bは、腎動脈418,420を含む患者の血管構造の一部を、別の移植型流量制限デバイス400bが大動脈内部に配置された状態で示している。移植型流量制限デバイス400bは、枝を備えていない分流ステントグラフトデバイス400bであってもよい。分流ステントグラフトデバイス400bは円錐形ステントグラフトであってよい。分流ステントグラフトデバイス400bは、腎動脈418,420のうちの一方又は両方の腎動脈内へ血流を強制的に供給するか、又は誘導することができる。分流ステントグラフトデバイス400bの近位端は必要に応じて、遠位流量を増大させるように拡大することができる。分流ステントグラフトデバイス400bの一部は、血栓形成を防止するのに充分な材料通流量を可能にするように多孔質であってよい。ある特定の例では、分流ステントグラフトデバイス400bは円錐形ではなく、ほぼ円筒形であってよく、この場合、分流ステントグラフトデバイス400bの多孔性によってもたらされる灌流を介して、腎動脈418,420のうちの一方又は両方の腎動脈内へ血流が分流される。
【0099】
図4A~Bに示された一例としての分流ステントグラフトデバイス400a~bは、本明細書全体を通して開示された開示内容の実施態様の使用又は機能の範囲に関していかなる制限も示唆しないものとする。一例としての流量制限分流ステントグラフトデバイス400a~bは、単一の構成部分又はそこに例示された構成部分の組み合わせに関する依存関係又は要件を有するものと解釈されるべきではない。例えば、いくつかの実施態様において、分流ステントグラフトデバイスの一例400a~bは、拘束カフ移植型流量制限デバイス200と同様に、移植後に収縮を可能にする特徴を含んでいてよい。加えて、図4A~Bに示された構成部分のうちのいずれか1つ又は2つ以上は、いくつかの実施態様において、これらの図に示された他の構成部分(及び/又は例示されていない構成部分)のうちの種々のものと統合することができる。心不全患者の場合、(少なくとも部分的には)損なわれた心拍出量の結果として腎臓を通る血流量が不充分になることによって、体液過剰が引き起こされることがある。流量制限ステントグラフトデバイス400a~bは、腎動脈418,420のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させる。このことは腎臓灌流量を機械的に増大させる。腎臓灌流量を増大させることにより、過剰体液を1日当たりほぼ1リットルまで除去することができる。
【0100】
図5は、本開示の種々の態様に基づく、流量制限バルーンを含む移植型流量制限デバイスの一例500を示す図である。移植型流量制限デバイス500は、患者の大動脈に配置された状態で示されている。図5に示された患者の血管系は、患者の心臓502と、大動脈基部504と、上大静脈506と、大動脈弓508と、肺動脈幹510と、下行大動脈512と、腹腔動脈514と、上腸間膜動脈516と、腎動脈518,520と、下腸間膜動脈522と、腹部大動脈524と、腸骨動脈526,528とを含む。移植型流量制限デバイス500は、腎動脈518,520の遠位側で大動脈に配置されていてよい。
【0101】
移植型流量制限デバイス500は、腎動脈518,520のうちの少なくとも1つの腎動脈内への血流量を増大させるよう構成されてよい。図5に示されているように、移植型流量制限デバイス500は、フロールーメン530を備えたバルーンであってよい。バルーン移植型流量制限デバイス500は、腎動脈518,520の遠位側の部位内の血流量を減少させ、遠位側灌流に対する抵抗を形成し、これにより腎臓内へ付加的な血流を強制的に供給することができる。腎動脈518,520のうちの一方又は両方への血流量を増大させることにより、腎臓の少なくとも一方への血流量を増大させると、体液除去量が増大し、これにより患者の心臓に加えられる圧力が減少する。フロールーメン530を介して膨張を増減することによって、バルーン移植型流量制限デバイス500の寸法を変更することにより、腎動脈518,520のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を変化させることができる。バルーン移植型流量制限デバイス500は取り外し可能であってもよく、これによりフロールーメン503を取り除くことができ、バルーン移植型流量制限デバイス500を一時的に大動脈内に移植することができる。
【0102】
加えて、バルーン移植型流量制限デバイス500は、腎動脈518,520に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持することもできる。腎動脈518,520に対して近位側で血流量を監視することができ、そしてバルーン移植型流量制限デバイス500を介して加えられる制限の量を調節することにより、腎動脈518,520に対して近位側の大動脈部位へのほぼ正常な流量を維持し、そして腎動脈518,520のうちの少なくとも一方の腎動脈内への血流量を増大させることもできる。
【0103】
図6は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの一例600を示す図である。流量制限デバイスの一例600は本体部分602と制限部分604とを含んでいてよい。移植型流量制限デバイスの一例600は、患者の大動脈に移植され、そして例えば図1を参照しながら詳細に上述したように、枝血管に対して近位側の大動脈内部のほとんど制限されていない血流量を維持しつつ、大動脈の少なくとも1つの枝血管内への血流量を変化させるよう構成されていてよい。
【0104】
移植型流量制限デバイス600は、本体部分602内部に配置されてよい制限部分604を含んでいてよい。制限部分604は1つ又は2つ以上のテザー606,608、又は他の類似の構造によって本体部分602内部に固定されていてよい。制限部分604は、(図6に示されているように)本体部分602内部の中央に配置されるか、或いはその内部境界の近くに配置されてよい。制限部分604は、移植型流量制限デバイス600の遠位側で血流に抵抗し、血流を(上述のような)枝血管内へ誘導するよう構成されていてよい。制限の量、ひいては血流量は、移植型流量制限デバイス600を短くする(制限部分604の直径を増大させる)ことによって、又は直径を増大させるために本体部分602に捩り動作を加えることによって制限部分604の直径を変化させることにより、又は流動パターンを変化させることにより、変えることができる。本体部分602はグラフト構成部分及び/又はステント構成部分から形成されてよい。ある特定の例では、流量制限デバイス600は、移植型ステントグラフトと併せて使用することができる。
【0105】
図7は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例を示す図である。移植型流量制限デバイス700は、患者の大動脈702に移植され、そして例えば図1を参照しながら詳細に上述したように、少なくとも1つの枝血管704,706に対して近位側の大動脈702内部のほとんど制限されていない血流量を維持しつつ、大動脈702の少なくとも1つの枝血管704,706内への血流量を変化させるよう構成されていてよい。
【0106】
移植型流量制限デバイス700は、第1調節可能部分708と第2調節可能部分710とを含んでよい。第1調節可能部分708及び第2調節可能部分710は中間部分712によって分離されていてよい。中間部分712は、移植型流量制限デバイス700のための構造安定性を提供することができ、そしてステント様構成部分によって形成された開いたワイヤ又はストラットを含むことができる。移植型流量制限デバイス700の残りの部分はグラフト構成部分単独によって形成されてよく、或いはステント構造と組み合わせて形成されてもよい。
【0107】
第1調節可能部分708及び第2調節可能部分710は、少なくとも1つの枝血管704,706のいずれの側にも移植されるよう構成されていてよい。加えて、第1調節可能部分708及び第2調節可能部分710は、これらを通る血流量を変化させるために、直径方向に調節可能であってよい(例えばバルーン膨張)。第1調節可能部分708及び第2調節可能部分710は、漏斗形状又はその他の形状であり、寸法減少部分を含んでよく、寸法減少部分は、移植型流量制限デバイス700の遠位側でそこを通る血流量又は血圧を変化させるように調節することができる。
【0108】
図8A~Bは、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの一例800を示す斜視図及び上面図である。移植型流量制限デバイス800は、患者の大動脈802に移植され、そして例えば図1を参照しながら詳細に上述したように、大動脈802の少なくとも1つの枝血管804,806内への血流量を変化させつつ、少なくとも1つの枝血管804,806に対して近位側の大動脈802内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されていてよい。ある特定の例では、移植型流量制限デバイス800は、少なくとも一方の枝血管804,706の遠位側で大動脈802内部に移植されてよい。
【0109】
移植型流量制限デバイス800は第1部分808と、第2部分810と、第1部分808と第2部分810との間のチャネル812とを含んでよい。第1部分808及び第2部分810は、チャネル812を通る血流量を変化させるよう、直径方向に調節可能であってよい(例えばバルーン膨張)。第1部分808及び/又は第2部分810は、移植型流量制限デバイス800の遠位側でチャネル812を通る血流量又は血圧を変化させるように調節することができる。
【0110】
図9は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例900を示す図である。移植型流量制限デバイス900は、患者の大動脈902に移植され、そして例えば図1を参照しながら詳細に上述したように、大動脈902の少なくとも1つの枝血管(図示せず)内への血流量を変化させつつ、少なくとも1つの枝血管に対して近位側の大動脈902内部のほとんど制限されていない血流量を維持するよう構成されていてよい。
【0111】
移植型流量制限デバイス900はバルーン部分904とカテーテル部分906とを含んでよい。カテーテル部分906はバルーン部分904を膨張させ収縮させるためのルーメンを含んでいてよい。バルーン部分904は、移植型流量制限デバイス900の遠位側で移植型流量制限デバイス900を通る血流量又は血圧を変化させるように調節することができる。加えて、移植型流量制限デバイス900は1つ又は2つ以上のステント部分908,910を含んでいてよい。これらのステント部分は、大動脈902内部の移植型流量制限デバイス900を安定化させるよう構成されている。
【0112】
本明細書中に論じられたグラフト構成部分は、選択された体腔内のグラフトとして使用するのに適したものであれば、いかなる材料から形成されてもよい。グラフト構成部分は同じ又は異なる材料から成っていてよい。さらに、グラフト構成部分は複数の材料層を含んでよい。これらの材料層は同じ材料であっても異なる材料であってもよい。数多くのグラフト材料が知られており、具体的には血管グラフト材料として使用し得る材料が知られている。一実施態様の場合、前記材料は、組み合わせて使用し、グラフトを含むために集成することができる。ステントグラフトにおいて使用されるグラフト材料は、押し出すか、塗布するか、又はラッピングされたフィルムから成形するか、或いはこれらを組み合わせて形成することができる。具体的な用途のために、ポリマー、生分解性材料、及び天然材料を使用することができる。
【0113】
図10は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例1000を示す図である。移植型流量制限デバイス1000は分岐ステントグラフトであってよい。分岐ステントグラフトは第1脚部1002と第2脚部1004とを含む。第1脚部1002及び第2脚部1004の直径及び/又は長さは、移植型流量制限デバイス1000を通る血流に対する抵抗を変化させるよう、独立して調節可能であってよい。
【0114】
移植型流量制限デバイス1000は患者の大動脈内に移植されてよい。移植型流量制限デバイス1000は、腎動脈に対して遠位側に移植されて、腎臓への血流量を増大させてもよい。移植型流量制限デバイス1000は、腎動脈に対して近位側の公称(nominal)血流量及び血圧をほぼ維持するのに対して、腎動脈に対して遠位側の血流又は血圧に対する抵抗を増大させることができる。
【0115】
図11は、本開示の種々の態様に基づく移植型流量制限デバイスの別の例1100を示す図である。流量制限デバイス1100は制限構造1102を含んでよい。制限構造1102は形状が楕円形であってよく、その長さ及び/又は直径を増減するように調節可能であってよい。流量制限デバイス1100は患者の大動脈内部の中心に配置されていてよい。流量制限デバイス1100は患者の大動脈内に移植されてよい。移植型流量制限デバイス1100は、腎動脈に対して遠位側に移植されて、腎臓への血流量を増大させてもよい。移植型流量制限デバイス1100は、腎動脈に対して遠位側の血流又は血圧に対する抵抗を増大させつつ、腎動脈に対して近位側の公称(nominal)血流量及び血圧をほぼ維持することができる。
【0116】
制限構造1102は、その長さ及び/又は直径を増減するよう構成されたノブ1104を含んでよい。ノブ1104は、カテーテル又はワイヤアクセスメカニズムによって作動させることができる。制限構造1102はステント構成部分とグラフト構成部分とを含んでよい。制限構造1102はePTFEによって被覆されたニチノール構造であってよい。制限構造1102のステント構成部分(ニチノール構造)は、ノブ1104を作動させることに基づいて捩って、その長さ及び/又は直径を増減することができる。
【0117】
移植型流量制限デバイス1100は、アンカー1106,1108,1110,1112を含んでよい。アンカー1106,1108,1110,1112は、制限構造1102にカップリングすることができる。加えて、アンカー1106,1108,1110,1112は、大動脈内部に移植型流量制限デバイス1100を固着するよう構成されていてよい。ある特定の例では、移植型流量制限デバイス1100はステントグラフト構成部分1114を含んでよい。ステントグラフト構成部分1114は、移植型流量制限構造1102(及びアンカー1106,1108,1110,1112)を患者から取り除くのを容易にすることができる。ステントグラフト構成部分1114を残しながら移植型流量制限構造1102(及びアンカー1106,1108,1110,1112)を取り除くことにより、移植型流量制限構造1102が交換されるのが可能になり、又は移植型流量制限構造1102が永久に取り除かれるのが可能になる。
【0118】
本明細書中で論じられ、図1~11に示された一例としての分流ステントグラフトデバイスは、本明細書全体を通して開示された開示内容の実施態様の使用又は機能の範囲に関していかなる制限も示唆しないものとする。一例としての流量制限分流ステントグラフトデバイスは、単一の構成部分又はそこに例示された構成部分の組み合わせに関する依存関係又は要件を有するものと解釈されるべきではない。例えば、いくつかの実施態様において、分流ステントグラフトデバイスの一例は、直径方向に調節可能なステント及び/又はグラフト構成部分を含んでよい。例えば、本明細書中に論じられるステント構成部分は直径方向に調節可能であってよいので、デバイスの伸長がステント構成部分の直径を増大させることができ、そしてデバイスの短縮がステント構成部分の直径を減少させることができる。直径方向に調節可能なステント構成部分に関するさらなる議論のために、米国特許第8,936,634号明細書を参照することができる。直径方向に調節可能なステント構成部分の教示内容を具体的に参照することにより、前記明細書が本明細書中に援用される。加えて、本明細書中で論じられたグラフト構成部分も直径方向に調節可能であってもよい。直径方向に調節可能なグラフト構成部分に関するさらなる議論のために、米国特許第6,336,937号明細書及び米国特許第9,522,072号明細書を参照することができる。直径方向に調節可能なグラフト構成部分の教示内容を具体的に参照することにより、前記明細書が本明細書中に援用される。加えて、分流ステントグラフトデバイスは、図1を参照しながらさらに詳細に論じたように、腎臓内への流量を変化させ、そして患者に変化をもたらす神経ホルモン反応を生じさせることもできる。
【実施例
【0119】
試験法
【0120】
本明細書中に論じられた流量制限デバイスのための好適な試験法、及び流量制限デバイスを含む方法の非制限的な例は、心不全(冠状動脈微小塞栓術が駆出率約30%をもたらした)を誘発されたイヌの反応を評価することを伴った。4頭のイヌが腎動脈に対して遠位側に流量制限デバイスを受容し、3頭を対照のために飼育した。デバイスによって誘発された狭窄の平均直径は約60%であった(約55~64%の範囲)。動物を35日間にわたる生存中に飼育し、血液化学特性、バイオマーカー及び血液動態状態を、試験全体に渡り監視した。
【0121】
血管動態状態のシフトは、対照群に対して試験群において観察され、心機能の改善と交感神経系緊張の減少を示した。例えば、心拍数、及び平均動脈圧が減少したのに対して、収縮性が対照に対して増大した。これらの比較結果は、対照と比較したバイオマーカー、例えばpro-BNP及びNGALの正シフトによって裏付けられた。一例としては、インプラントを有する動物は、約21%高いクレアチニン含有率を有する、約35%多い尿を生成した。これにより、利尿作用誘発の結果として血清クレアチニンの増大は約52%減少した。表1は試験の結果を示す。

【表1】
【0122】
試験の終わりに、全ての動物(試験及び対照)が80mgボーラスのLasix(利尿薬)を受容した。このモデルにおいて、健常な動物が被る血清クレアチニンレベルの変化は最小限であるに対して、心不全の動物は顕著な増大を被る。この試験は、腎臓に負荷を与えた時のデバイスの影響を実証するために行われた。表2はボーラス投与後の結果を示す。

【表2】
【0123】
上記結果は、腎動脈に対して遠位側で動脈内に配置された、詳細に上述した流量制限デバイスが、体液過剰及び心不全と関連する心臓負荷の症状を軽減するのを助けることを示している。デバイスは、狭窄に対して近位側の血圧を増大させ、このようにして腎臓灌流圧を増大させ、ひいては腎臓灌流量を増大させることが明らかになる。このデバイスの副次的効果は、RAAS系の活性化を低減することである。このデバイスの有効性は、中心血液動態、左室(LV)機能及び腎機能の評価に基づいている。
【0124】
以前の試験では、誘発された狭窄が、約40%に達するまでは流量又は圧力に対してほとんど効果を有することはなく、到達後に、動脈の直径及び血流量に応じて影響が生じることが明らかとなっている。しかしながら上記動物試験に基づいて、それを上回ると影響が劇的に増大する閾値があることが発見された。これらの結果に基づく狭窄のレジメンは40%~80%、そしてより具体的には50%~70%である。臨床的には、足関節血圧、ドップラー超音波速度、又は下肢におけるその他の血液動態パラメータを採用して、適切な肢灌流を確保しつつ、誘発される狭窄の程度を最適化することができる。
【0125】
合成ポリマー(グラフト構成部分として使用されてよい)の一例としては、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリホルムアルデヒド、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロロエチレン、ポリビニルクロリド、ポリウレタン、エラストマー有機ケイ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、これらの混合物、ブレンド、及びコポリマーがグラフト材料として適している。一実施態様の場合、前記グラフトは、ポリエステルのクラス、例えばDACRON(登録商標)及びMYLAR(登録商標)を含むポリエチレンテレフタレート、及びポリアミド、例えばKEVLAR(登録商標)、ポリフルオロカーボン、例えば共重合ヘキサフルオロプロピレンを含む、そして含まないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(TEFLON(登録商標)又はGORE-TEX(登録商標))、及び多孔質又は無孔質ポリウレタンから形成される。ある特定の例では、グラフトは、英国特許第1,355,373号明細書、同第1,506,432号明細書、又は同第1,506,432号明細書、或いは米国特許第3,953,566号明細書、同第4,187,390号明細書、又は同第5,276,276号明細書に記載された延伸フルオロカーボンポリマー(特にPTFE)材料を含む。前記明細書の全体は参照することにより援用される。好ましいフルオロポリマーのクラスには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)とのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のホモポリマー、及びTFEとのそのコポリマー、エチレン-クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレン-テトラフルオロエチレン(ETFE)とポリビニリデンフルオリド(PVDF)とポリビニルフルオリド(PVF)とのコポリマーが含まれる。特に好ましいのは、血管プロテーゼにおいて広範に使用されているという理由から、ePTFEである。ある特定の例では、グラフトは上に挙げた前記材料の組み合わせを含む。ある特定の例では、グラフトは体液をほとんど通さない。前記ほぼ不透過性のグラフトは、体液をほとんど通さない材料から形成することができ、或いは(例えば上記異なるタイプの材料又は当業者に知られている異なるタイプの材料を層化することにより)体液をほとんど通さないように処理又は製造された透過性材料から構成することもできる。
【0126】
グラフト材料の付加的な例としては、ビニリデンフルオリド/ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオリド、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペンタフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロアセトン、ヘキサフルオロイソブチレン、フッ素化ポリ(エチレン-コ-プロピレン)(FPEP)、ポリ(ヘキサフルオロプロペン)(PHFP)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-テトラフルオロエチレン)(PVDF-TFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-ヘキサフルオロプロペン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロペン)(PTFE-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ビニルアルコール)(PTFE-VAL)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ビニルアセテート)(PTFE-VAC)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-プロペン)(PTFEP)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン-コ-ビニルアルコール)(PHFP-VAL)、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)(PETFE)、ポリ(エチレン-コ-ヘキサフルオロプロペン)(PEHFP)、ポリ(ビニリデンフルオリド-コ-クロロトリフルオロエチレン)(PVDF-CTFE)、及びこれらの組み合わせ、並びに米国特許出願公開第2004/0063805号明細書に記載された付加的なポリマー及びコポリマーが挙げられる。前記明細書はあらゆる目的のために参照することにより全体的に本明細書中に援用される。付加的なポリフルオロコポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)/ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)を含む。PAVEは、米国特許出願公開第2006/0198866号明細書及び米国特許第7,049,380号明細書に本質的に記載されているように、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、又はペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)を含む。前記両明細書は、あらゆる目的のために参照することにより全体的に本明細書中に援用される。他のポリマー及びコポリマーは、ポリラクチド、ポリカプロラクトン-グリコリド、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、多糖類、ポリホスファゼン、ポリ(エーテル-エステル)コポリマー、例えばPEO-PLLA、又はこれらのブレンド、ポリジメチル-シロキサン、ポリ(エチレン-ビニルアセテート、アクリレート系ポリマー、又はコポリマー、例えばポリ(ヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリジノン、フッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、セルロースエステル、及び米国特許出願公開第2004/0063805号明細書に記載された任意のポリマー及びコポリマーを含む。前記明細書は、あらゆる目的のために参照することにより全体的に本明細書中に援用される。
【0127】
本明細書中で論じられたグラフト構成部分は、カップリング部材を使用して自己拡張型ステントエレメントに取り付けることができる。カップリング部材は概ね、少なくとも1つのほぼ平らな表面を有する平らなリボン又はテープである。ある特定の例では、テープ部材は、接着剤で被覆された延伸PTFE(ePTFE)から形成されている。接着剤は熱可塑性接着剤であってよい。ある特定の例では、熱可塑性接着剤はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)であってよい。より具体的には、ePTFEのFEP被覆側は、自己拡張型ステント及びグラフト構成部分の外面に向き、これに接触することができ、こうして自己拡張型ステントをグラフト構成部分に取り付ける。グラフトにステントを取り付ける材料及び方法は、Martinの米国特許第6,042,602号明細書において論じられている。前記明細書は、あらゆる目的のために参照することにより全体的に本明細書中に援用される。
【0128】
本明細書中で論じられるステントエレメントは、種々様々な生体適合性材料から製作することができる。これらの材料は316Lステンレス鋼、コバルト-クロム-ニッケル-モリブデン-鉄合金(「コバルト-クロム」)、他のコバルト合金、例えばL605、タンタル、ニッケル-チタン合金(例えばニチノール)、又は他の生体適合性金属を含んでよい。ある特定の例では、詳細に上述したように、ステント(及びグラフト)は自己拡張型であってよい。プロテーゼはバルーンによって拡張可能であってよい。
【0129】
種々の材料、種々の金属を含む超弾性合金、例えばニチノールが、これらのステントにおける使用に適している。材料の主要な要件は、材料が極めて薄いシート又は小さな直径のワイヤとして作成されても好適にばね弾性的であることである。高いばね弾性を形成するように物理的、化学的、及び他の形式で処理された種々のステンレス鋼が、他の金属合金、例えばコバルトクロム合金(例えばELGILOY(登録商標))、白金/タングステン合金、及び特にニッケル-チタン合金(例えばニチノール)と同様に適している。
【0130】
本発明の範囲を逸脱することなしに、論じられた模範的実施態様に種々の変更及び追加を施すことができる。例えば、上記実施態様が特定の特徴に言及するのに対して、本発明の範囲は、特徴の異なる組み合わせを有する実施態様、並びに記載された特徴の全てを含んではない実施態様をも含む。従って、本発明の範囲は、全てのこのような代替形、改変形、変更形を、請求の範囲内に、これらの全ての同等物と一緒に含まれるものとして包含するものとする。
図1
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