(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】神経原生及びグリア原生因子及びそれらについてのアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20220203BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220203BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20220203BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220203BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20220203BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12Q1/02
C12N5/10
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2020027198
(22)【出願日】2020-02-20
(62)【分割の表示】P 2019000302の分割
【原出願日】2012-08-20
【審査請求日】2020-03-18
(32)【優先日】2011-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503235673
【氏名又は名称】サンバイオ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】イリナ アイズマン
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー シー.ケース
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500043(JP,A)
【文献】国際公開第2009/073178(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185429(US,A1)
【文献】J. Neurosci. Res. (2009) vol.87, issue 14, p.3198-3206
【文献】脳卒中 (1994) vol.16, no.15, p.354-359
【文献】J. Neurochem. (2010) vol.112, issue 4, p.843-853
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経細胞に対する試験物質の効果を測定するための定量的アッセイにおける
培養システム
の使用であって、
前記培養システムは、
(a)固体支持体及びその上に接着される細胞外マトリックス、ここで、前記細胞外マトリックスは以下の(i)又は(ii)に接着される:
(i)間葉幹細胞(MSC)、又は
(ii)核酸によりトランスフェクトされているMSCであって、ここで、前記核酸がNotch細胞内ドメインをコードするが、しかし完全長Notchタンパク質はコードしないMSC;
(b)胚性皮質細胞;及び
(c)試験物質;
を含む、前記
使用。
【請求項2】
神経発生、星状細胞発生、オリゴデンドロサイト発生、神経前駆体細胞の増殖、又は神経前駆体細胞の分化に対する試験物質の効果が測定される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記MSCがヒトから得られる、請求項1
又は2に記載の
使用。
【請求項4】
前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、請求項
1~3の何れか一項に記載の
使用。
【請求項5】
前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、請求項1~
4の何れか一項に記載の
使用。
【請求項6】
前記試験物質が化合物
である、請求項1~5の何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記試験物質がポリペプチドである、請求項1~5の何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記試験物質が試験細胞である、請求項1~5の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記
試験細胞が、
(a)間葉幹細胞、及び
(b)Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫、
から成る群から選択される、請求項
8に記載の
使用。
【請求項10】
前記試験物質が細胞培養物からのならし培地である、請求項1~5の何れか一項に記載の使用。
【請求項11】
ニューロンの形成を測定するのための、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ニューロンの形成が、神経増生により、又は微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII(TuJ1)、シナプトフィジン及びニューロン特異的エノラーゼから成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、請求項
11に記載の
使用。
【請求項13】
星状細胞の形成
を測定するための、請求項1~
10の何れか一項に記載の
使用。
【請求項14】
前記星状細胞の形成がグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グラスト(Glast)又はグルタミンシンセターゼの発現により測定される、請求項
13に記載の培養システム。
【請求項15】
オリゴデンドロサイトの形成
を測定するための、請求項1~
10の何れか一項に記載の培養システム。
【請求項16】
前記オリゴデンドロサイトの形成が、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、請求項
15に記載の
使用。
【請求項17】
神経前駆体細胞の増殖
を測定するための、請求項1~
10の何れか一項に記載の
使用。
【請求項18】
前記神経前駆体細胞の増殖がネスチン、グラスト(Glast)又はSOX2の発現により測定される、請求項1
7に記載の
使用。
【請求項19】
神経前駆体細胞の分化
を測定するための、請求項1~
10の何れか一項に記載の
使用。
【請求項20】
前記神経前駆体細胞の分化が、神経増生により、又は微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン、ニューロン特異的エノラーゼ、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グルタミンシンセターゼ、GLASTグルタミン酸トランスポーター、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるマーカーの発現により明らかにされる、請求項
19に記載の
使用。
【請求項21】
前記試験物質が神経発生を促進する、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記試験物質が星状細胞発生を促進する、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記試験物質がオリゴデンドロサイト発生を促進する、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記試験物質が神経前駆体細胞の増殖を促進する、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記試験物質が神経前駆体細胞の分化を促進する、請求項1~10の何れか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2011年8月19日に提出された米国特許仮出願第61/575,378号及び2011年12月28日に提出された米国特許仮出願第61/580,991号の利益を主張し;それらの明細書及び図面は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦サポートに関する陳述
該当事項なし。
【0003】
分野
本出願は、神経発生及びグリア発生を促進する物質、及びそのような物質についてのアッセイの分野である。
【背景技術】
【0004】
背景
間葉間質細胞は、間葉幹細胞として知られている多能性細胞集団を含む([1]に概説される)。大人の哺乳類における間葉幹細胞(MSC)の主要源は骨髄であり;骨髄から得られる多能性細胞は、間葉幹細胞(MSC)、骨髄付着間質細胞(MASC)、骨髄付着幹細胞及び骨髄間質細胞(BMSC)として多様に知られている。間葉幹細胞は、神経組織の修復のための有望な細胞療法として研究されてきた([2]に概説される)。神経系へのMSC又はMSC誘導体の移植は、脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷、多発性硬化症、及び新生児低酸素性虚血性脳損傷を包含する神経変性疾患の多くのモデルにおいて有益であることが示されてきた[3~9]。
【0005】
現在の証拠は、MSC又はそれらの誘導体の移植が損傷された神経組織[9-13]及び正常脳組織[14]の両者において内因性再生機構を活性化することを示唆する。それらの再生工程は、内因性神経幹細胞の増強された増殖、新生ニューロンの高められた生存率[10~11]、グリア発生[7]及び炎症性サイトカイン産生のモジュレーション[15]を包含する。神経保護及び神経増殖の増強は、移植された細胞により分泌される拡散性神経栄養因子及びサイトカインにより少なくとも部分的に介在されると思われる。実際、MSCは、培養において多くの増殖因子を分泌することが示されており[16、17];そして分泌される増殖因子の同一性は、神経変性環境下での移植により調節され得る[18、19]。
【0006】
従って、間葉細胞の神経発生及びグリア原性活性を担当できる、MSCにより生成される因子及びそれらの誘導体を同定することは重要である。インビトロでのMSCと神経細胞との間の相互作用の研究は、数個の異なった細胞型(例えば、ニューロン、グリア細胞、神経幹細胞、間葉細胞)(個々は、支持体及び増殖培地に対して異なった必要条件を有する)のために適切である培養条件の創造の課題を有する。実際、ほとんどのシステムにおいては、共培養条件(例えば、血清の存否、又は少数の神経細胞のための支持体としてのMSC単層の使用)は、他を犠牲にして特定の細胞を選択的に好み、これは矛盾した結果を導き[23~26]、そしてMSC効果の適切な定量化を妨げる。例えば、特定の培養システムはニューロンの増殖を好むが、しかしグリア細胞の増殖は好まず;そして神経前駆体細胞及び3種の主な神経細胞(ニューロン、オリゴデンドロサイト及び星状細胞)の増殖を同時に支持するシステムは見出されていない。
【0007】
神経幹細胞の増殖及び種々の神経系統(すなわち、神経新生)への分化に対するMSC及び他の物質の効果は、神経幹/初期前駆体細胞の源としてマイトジェン駆動のニューロスフェアを用いて、インビトロで通常研究され;続いて、それらの分化は、接着性支持体上へのニューロスフェアのプレート、及びマイトジェン増殖因子の回収により誘導される[23~26]。しかしながら、ニューロスフェア中の細胞は、これらの増殖条件が非生理学的に高い濃度の増殖因子及び接着されていない増殖因子に対するレスポンダーを選択するので、神経前駆体の自然のプールを反映しない [27、28]。従って、共培養の開始により、ニューロスフェア由来の細胞が培養条件により再プログラムされている可能性がある。さらに、ニューロスフェア共培養実験において、神経幹細胞前駆体の増殖の状態は、ニューロスフェアそれらの自体内の「盲点」[(blind spot)において生じるので、観察するのが困難である。最終的に、細胞接着状態の変化を通しての神経分化の誘導は、ニューロスフェアシステムにおける試験物質の効果を不明瞭にする。
【0008】
以上の理由のために、同じ条件下での神経前駆体細胞、ニューロン、星状細胞及びオリゴデンドロサイトに対する神経発生及びグリア発生因子の効果を定量化できるシステムはまだ利用されていない。
【0009】
SB623細胞は、Notch 1細胞内ドメインをコードするベクターによりMSCをトランスフェクトすることにより、MSCから誘導される。例えば、米国特許第7,682,825号を参照のこと。これまでの研究は、ヒトMSCにより生成されるECM、及びそれらに由来するSB623細胞が、添加される因子又は血清を伴わないで、ラット胚性皮質細胞の増殖及び分化を効果的に支持することを示している(29、また、米国特許出願第2010/0310529号も参照のこと、この開示は、MSCにより生成されるECM及びSB623細胞の特定の性質を記載するために、その全体が参照により組み込まれる)。
【0010】
上記に示されるように、神経原性及び/又はグリア原性活性を有する物質(例えば、MSC及びそれらの誘導体、例えばSB623細胞)と、神経細胞の複雑な集団との間の相互作用をモデルにし、そしてそのような物質の効力を定量化する単純且つ正確なインヒドロシステムに対する必要性が残存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
培養下で異なった神経細胞の増殖及び分化に影響を及ぼす因子の効果を定量化する能力を最適化する条件下で、神経細胞集団と、MSC及び/又はそれらの誘導体(例えば、SB623細胞)との共培養のためのインビトロシステムが本明細書に提供される。
【0012】
それらの培養システムは、種々のタイプの神経細胞(例えば、ニューロン、星状細胞、オリゴデンドロサイト)に対する物質(例えば、MSC及びそれらの誘導体、例えばSB623細胞、ならし培地、ポリペプチド、有機化合物)の効果を測定するための定量的機能アッセイを提供するために使用され得る。特に、神経栄養性、神経原性、グリア栄養性及びグリア原性因子、及びそのような因子の源が同定され、そして定量化され得る。
【0013】
本明細書に記載されるアッセイを用いて、神経原性及びグリア原性活性を有する多くの物質が同定されている。
【0014】
従って、本発明の開示は、中でも次の実施形態を提供する。
1.神経発生を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で間葉幹細胞(MSC)を培養し;
(b)MSCにより生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体からMSCを除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)ニューロンの増殖を測定することを含んでなり、
ここで、ニューロンの増殖が、前記物質が神経発生を促進することを示唆する、方法。
2.前記MSCがヒトから得られる、実施形態1の方法。
3.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態1の方法。
4.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態1の方法。
5.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態1の方法。
6.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態1の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
7.前記神経発生が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態6の方法。
8.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態1の方法。
9.ニューロンの増殖が、神経増生により、又は微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン及びニューロン特異的エノラーゼから成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、実施形態1の方法。
10.前記ニューロンの増殖が、前記物質の不在下におけるニューロンの増殖と比較される、実施形態1の方法。
【0015】
11.グリア発生を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で間葉幹細胞(MSC)を培養し;
(b)MSCにより生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体からMSCを除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)グリア細胞の増殖を測定することを含んでなり、
ここで、グリア細胞の増殖が、前記物質がグリオ発生を促進することを示唆する、方法。
12.前記MSCがヒトから得られる、実施形態11の方法。
13.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態11の方法。
14.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態11の方法。
15.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態11の方法。
16.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態11の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
17.前記グリオ発生が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態16の方法。
18.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態11の方法。
19.前記グリア細胞の増殖が、前記物質の不在下におけるグリア細胞の増殖と比較される、実施形態11の方法。
20.前記グリア細胞が星状細胞である、実施形態11の方法。
【0016】
21.前記星状細胞の増殖がグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グラスト(Glast)又はグルタミンシンセターゼの発現により測定される、実施形態20の方法。
22.前記グリア細胞がオリゴデンドロサイトである、実施形態11の方法。
23.前記オリゴデンドロサイトの増殖が、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、実施形態22の方法。
24.神経発生を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で細胞を培養し、ここで前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫であり;
(b)前記支持体から前記細胞を除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)ニューロンの増殖を測定することを含んでなり、
ここで、ニューロンの増殖が、前記物質が神経発生を促進することを示唆する、方法。
25.前記MSCがヒトから得られる、実施形態24の方法。
26.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態24の方法。
27.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態24の方法。
28.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態24の方法。
29.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態24の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
30.前記神経発生が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態29の方法。
【0017】
31.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態24の方法。
32.ニューロンの増殖が、神経増生により、又は微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン及びニューロン特異的エノラーゼから成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、実施形態24の方法。
33.前記ニューロンの増殖が、前記物質の不在下におけるニューロンの増殖と比較される、実施形態24の方法。
34.グリア発生を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で細胞を培養し、ここで前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫であり;
(b)前記細胞により生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体から細胞を除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)グリア細胞の増殖を測定することを含んでなり、
ここでグリア細胞の増殖が、前記物質がグリア発生を促進することを示唆する、方法。
35.前記MSCがヒトから得られる、実施形態34の方法。
36.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態34の方法。
37.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態34の方法。
38.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態34の方法。
39.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態34の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
40.前記グリア発生が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態34の方法。
【0018】
41.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態34の方法。
42.前記グリア細胞の増殖が、前記物質の不在下におけるグリア細胞の増殖と比較される、実施形態34の方法。
43.前記グリア細胞が星状細胞である、実施形態34の方法。
44.前記星状細胞の増殖がグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グラスト(Glast)又はグルタミンシンセターゼの発現により測定される、実施形態43の方法。
45.前記グリア細胞がオリゴデンドロサイトである、実施形態34の方法。
46.前記オリゴデンドロサイトの増殖が、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるマーカーの発現により測定される、実施形態45の方法。
47.神経前駆体細胞(NPC)を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で間葉幹細胞(MSC)を培養し;
(b)MSCにより生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体からMSCを除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)神経前駆体細胞の増殖を測定することを含んでなり、
ここで、NPCの増殖が、前記物質がNPCの増殖を促進することを示唆する、方法。
48.前記MSCがヒトから得られる、実施形態47の方法。
49.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態47の方法。
50.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態47の方法。
【0019】
51.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態47の方法。
52.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態47の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
53.前記神経前駆体細胞の増殖が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態52の方法。
54.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態47の方法。
55.前記NPCの増殖がネスチン又はSOX2の発現により測定される、実施形態47の方法。
56.前記NPCの増殖が、前記物質の不在下におけるNPCの増殖と比較される、実施形態47の方法。
57.神経前駆体細胞(NPC)を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で細胞を培養し、ここで前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞(MSC)の子孫であり;
(b)前記細胞により生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体から前記細胞を除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)NPCの増殖を測定することを含んでなり、
ここで、NPCの増殖が、前記物質がNPCの増殖を促進することを示唆する、方法。
58.前記MSCがヒトから得られる、実施形態57の方法。
59.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態57の方法。
60.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態57の方法。
【0020】
61.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態57の方法。
62.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態57の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
63.前記神経前駆体細胞の増殖が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態62の方法。
64.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態57の方法。
65.前記NPCの増殖がネスチン、グラスト又はSOX2の発現により測定される、実施形態57の方法。
66.前記NPCの増殖が、前記物質の不在下におけるNPCの増殖と比較される、実施形態57の方法。
67.神経前駆体細胞(NPC)を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で間葉幹細胞(MSC)を培養し;
(b)前記MSCにより生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体から前記MSCを除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)NPCの分化を測定することを含んでなり、
ここで、NPCの分化が、前記物質がNPCの分化を促進することを示唆する、方法。
68.神経前駆体細胞(NPC)の分化を促進する物質についての試験方法であって、
(a)固体支持体上で細胞を培養し、ここで前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞(MSC)の子孫であり;
(b)前記細胞により生成される細胞外マトリックスが支持体上に残るよう、支持体から前記細胞を除き;
(c)工程(b)の支持体上で胚性皮質細胞を培養し;
(d)工程(c)の培養物に物質を添加し;そして
(e)NPCの分化を測定することを含んでなり、
ここで、NPCの分化が、前記物質がNPCの分化を促進することを示唆する、方法。
69.前記MSCがヒトから得られる、実施形態67又は68の方法。
70.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態67又は68の方法。
【0021】
71.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態67又は68の方法。
72.前記物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態67又は68の方法。
73.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態67又は68の方法。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
74.前記神経発生が前記細胞の表面上に発現されるタンパク質により促進される、実施形態73の方法。
75.前記物質が細胞培養からのならし培地である、実施形態67又は68の方法。
76.前記NPCの分化が、前記物質の不在下におけるNPCの分化と比較される、実施形態67又は68の方法。
77.前記NPCの分化が、神経増生により、又は微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン、ニューロン特異的エノラーゼ、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グルタミンシンセターゼ、GLASTグルタミン酸トランスポーター、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるマーカーの発現により明らかにされる、実施形態67又は68の方法。
78.固体支持体及びその上に接着される生物学的層を含んで成る組成物であって、前記生物学的層が、
(a)間葉幹細胞(MSC)、又は
(b)核酸によりトランスフェクトされているMSCであって、ここで、前記核酸がNotch細胞内ドメインをコードするが、しかし完全長Notchタンパク質はコードしない、MSC
により接着される細胞外マトリックスである、組成物。
79.前記MSCがヒトから得られる、実施形態78の組成物。
80.前記固体支持体が、プラスチック、ニトロセルロース及びガラスから成る群から選択される、実施形態78の組成物。
【0022】
81.胚性皮質細胞をさらに含む、実施形態78の組成物。
82.前記胚性皮質細胞がマウス又はラットから得られる、実施形態81の組成物。
83.試験物質をさらに含む、実施形態81の組成物。
84.前記試験物質が化合物又はポリペプチドである、実施形態83の組成物。
85.前記物質が、細胞、又は細胞培養物である、実施形態83の組成物。特定の実施形態によれば、前記細胞は間葉幹細胞である。さらなる実施形態によれば、前記細胞は、Notch細胞内ドメインをコードする核酸によりトランスフェクトされている間葉幹細胞の子孫(SB623細胞)である。
86.前記試験物質が、細胞、細胞培養物、又は細胞培養物からのならし培地である、実施形態83の組成物。
87.神経新生、神経発生、星状細胞発生、又はオリゴデンドロサイト発生に対する物質の効果を決定するためのキットであって;実施形態78~86の何れか一項に記載の組成物を含んで成る、キット。
88.ニューロン又はグリアマーカー分子の検出のための1又は2以上の試薬をさらに含む、実施形態87のキット。
89.前記検出が、免疫組織化学によってである、実施形態88のキット。
90.前記試薬が、1又は2以上の抗体を含む、実施形態89のキット。
【0023】
91.前記1又は2以上の抗体が、微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン、ニューロン特異的エノラーゼ、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グラスト、グルタミンシンセターゼ、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択される1又は2以上の抗原に対して特異的である、実施形態90のキット。
92.前記検出が、定量的逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)によってである、実施形態92のキット。
93.前記試薬が、1又は2以上のオリゴヌクレオチドプライマー又はオリゴヌクレオチドプローブを含む、実施形態92のキット。
94.前記1又は2以上のオリゴヌクレオチドプライマー又はオリゴヌクレオチドプローブが、微小管結合タンパク質2(MAP2)、ダブルコルチン(DCX)、β-チューブリンIII (TuJ1)、シナプトフィジン、ニューロン特異的エノラーゼ、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グラスト、グルタミンシンセターゼ、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2及びミエリン関連糖タンパク質から成る群から選択されるタンパク質をコードする核酸を特異的に検出する、実施形態93のキット。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1A及び1Bは、ECM-被覆プレート上での単独でのラット神経細胞(「N」で示される)、又はMSCとの共培養でのラット神経細胞(「M」で示される)の増殖の測定の結果を示す。
図1Aは、3つの異なった時点(共培養の開始後、1日目、5日目及び7日目)での共培養におけるDAPI-染色された神経細胞(非MSC)核の数の測定結果を示す。各対のバーに関しては、核形態学により評価される場合、左端のバーは生存神経細胞の数を表し、そして右端のバーは死亡神経細胞の数を表す。
図1Bは、ラットノギン(noggin)遺伝子の相対的レベルによりアッセイされる場合、単独で培養された(「N」で示される)又はMSCと共に共培養された(「M」で示される)神経細胞、及びラット神経細胞の不在下で培養されたMSCにおける、細胞数を示す。2つの時点(1日目及び7日目)についてのデータが示される。
【0025】
【
図2】
図2(パネルA~E)は、ECM-被覆プレート上でのラット神経細胞の培養(N)及びラット神経細胞及びMSCの共培養(N+M)におけるダブルコルチン(DCX)(
図2A)、微小管関連タンパク質-2(MAP2)(
図2B)、ネスチン(Nes)(
図2C)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)(
図2D)及び2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNP)(
図2E)についてのmRNAの発現の時間経過を示す。共培養は、ウェル当たり200のMSCを含んだ。「日」(Days)とは、共培養の開始後の日数を言及する。
【0026】
【
図3】
図3は、ラットE18皮質細胞における種々の神経マーカーをコードするRNAの発現が、細胞外マトリックス(ECM)上で増殖される共培養においてMSC用量に依存することを示す定量的PCR研究の結果を示す。ラットネスチン(rNes)、MAP2(rMAP2)及びCNPase(rCNPase)遺伝子発現のMSC-用量応答が5日目に評価され、ラットGFAP(rGFAP)及びヒトGAP(huGAP)発現が7日目に評価された。ヒトMCS又はSB623細胞単独からのシグナルは、何れのラット発現アッセイにも検出されず、そしてラット細胞からのシグナルは、ヒトGAP発現アッセイにおいては検出されなかった。
【0027】
【
図4】
図4は、ECM被覆プレート上でのラット神経細胞及びMSCの共培養における、qRT-PCRにより決定される種々のマーカーの相対的発現レベルを示す。ラットマーカーは、ネスチン(Nes)、CNPase(CNP)、ダブルコルチン(DCX)、微小管関連タンパク質2(MAP2)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ratGAP)である。培養物においてMSCを同定し、そして定量化するために使用されるヒトマーカーは、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(huGAP)である。ネスチン及びCNPaseの発現は、共培養の5日後にアッセイされ;他のすべてのマーカーは、共培養の7日後にアッセイした。1の発現レベルは、最低MSC用量でのレベルであると任意には割り当てられた。(ウェル当たり32個の細胞)。
【0028】
【
図5】
図5は、ECM被覆プレート上での共培養の2種の異なった段階でのCNPase mRNAの発現レベルに対するMSC濃度の効果を示す。CNPase mRNAレベルは、qRT-PCRにより定量化された。1の相対的発現レベルは、アッセイの特定の日(5日目又は7日目)に観察された最も高いレベルとして任意に設定された。
【0029】
【
図6】
図6は、非接着性条件下で実施される、ラット神経細胞及びMSCの共培養におけるマーカー発現のレベルを示す。神経細胞はまた、対照としてbFGF及びEGFの存在下で、MSCなしで培養された。各組の条件に関しては、バーは、左から右側に、ラットネスチン(rNes)、ラット微小管関連タンパク質-2(rMAP2)、ラットグリア線維性酸性タンパク質(rGFAP)、ラットダブルコルチン(rDCX)、ラット2’,3’-環状ヌクレオチド3’リン酸ジエステラーゼ(rCNPase)、ラットグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(rGAP)及びヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(huGAP)の発現レベルを表す。bFGF/EGFの存在下での神経マーカー遺伝子発現レベルは、1の値を割り当てられ、そして他の値はGFAPを除くすべてのマーカーについて、それに応じて表され、これは、bFGF/EGFサンプルにおいて0.1の値が割り当てられた。
【0030】
【
図7】
図7は、異なった接着条件下で行われた、ラット神経細胞及びMSCの共培養におけるマーカー発現のレベルを示す。「ECM」は、SB623細胞由来の細胞外マトリックスにより被覆されたプレート上での共培養を示す。「Orn/FN」は、オルニチン及びフィブロネクチンにより被覆されたプレート上での共培養を示す。「ULA」は、超低固定(Ultre Low Attachment)プレート上での培養を示す。ECM及びOrn/FNプレート上で、神経細胞を、10:1の比(1.5×10
4個の細胞/cm
2)でMSCと共に共培養した。ULAプレート上で、神経細胞を、2:1の比でMSCと共に(「+MSC、5X」)、又は増殖因子により補充された培地においてMSCの不在下で(「FGF2/EGF」)培養した。各組の条件に関しては、バーは、左から右側に、ラットネスチン(Nes)、ラット2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、ラッドグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ラットダブルコンチン(DCX)、及びヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(huGAP)の発現レベルを表す。ネスチン及びCNPaseレベルを、培養又は共培養の5日後(「5d」)にアッセイし;すべての他のマーカーは7日(「7d」)にアッセイした。
【0031】
【
図8】
図8は、神経細胞によるネスチンmRNAの発現に対するヘパリナーゼの効果を示す。ラット皮質細胞をECM被覆したプレート上で培養した。皮質細胞のプレーティングの前に、ECM被覆したプレートを、2種の濃度のヘパリナーゼI(0.5単位/ml及び1.5単位/ml)、又はヘパリナーゼ緩衝液(「H-緩衝液」)により処理し、あるいは処理しなかった(「添加なし」)。ネスチンmRNA発現を、培養の開始の5日後、qRT-PCRにより測定した。未処理のECM被覆プレート上で培養された細胞において検出されるネスチンmRNAの量が、1の相対的発現レベルとして任意には割り当てられた。
【0032】
【
図9】
図9A~9Dは、qRT-PCRにより決定された、ECM被覆したプレート上で培養された神経細胞による、種々の神経マーカーをコードするmRNAの相対的発現レベルに対する精製された増殖因子(EGF、BMP6、HB-EGF)及びMSCならし培地(CM)の効果を示す。
図9Aは、ネスチン、すなわち神経前駆体細胞のためのマーカーの発現に対する効果を示す。
図9Bは、ダブルコルチン(DCX)、すなわち初期ニューロンのためのマーカーの発現に対する効果を示す。
図9Cは、CNPase、すなわちオリゴデンドロサイトマーカーの発現に対する効果を示す。
図9Dは、GFAP、すなわち星状細胞のためのマーカーの発現に対する効果を示す。
【0033】
【
図10】
図10は、ECM被覆プレート上での神経細胞/MSC共培養における神経細胞によるネスチン発現に対する抗FGF2中和抗体の効果を示す。ラット皮質細胞(5,000個の細胞)が、これら自身により培養され(「MSCなし」)、又は200個のMSCと共に共培養された(「+MSC」)。追加の共培養サンプルはまた、中和抗FGF2抗体(「+MSC+bFM1」)又は非中和抗FGF2抗体(「+MSC+bFM2」)の何れかを含んだ。ネスチン発現は、培養又は共培養の開始の5日後、アッセイした。MSCの不在下で培養された皮質細胞におけるネスチン発現レベルを、1の相対的発現値として任意に割り当てた。
【0034】
【
図11】
図11は、培養されたラット神経細胞におけるネスチン発現に対するMSCならし培地、及びFGF2-枯渇MSCならし培地の効果を示す。ラット皮質細胞が、さらなる追加を有さない(「添加なし」)、MSCならし培地(「CM」)、免疫沈降によりFGF2を枯渇させたMSCならし培地(「FGF2-枯渇されたCM」)、及びFGF2と反応させない対照抗体により処理されたMSCならし培地(「IP-対照-CM」)を有するECM-被覆プレート上で培養された。ネスチン発現は、培養の開始の5日後、アッセイした。ならし培地の不在下で培養された皮質細胞におけるネスチン発現のレベルを、1の相対的発現値として任意に割り当てた。
【0035】
【
図12】200個の間葉幹細胞(「+MSC、200個の細胞」)の存在下で、又は間葉幹細胞(「+CM、10%」)からのならし培地の1:10希釈溶液の存在下でECM被覆プレート上で培養された神経細胞により発現される、ネスチン(Nes)及びグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)をコードするmRNAのレベルを示す。対照細胞は、MSC又はならし培地の不在下で培養された(「添加なし」)。ネスチンについてのアッセイを、培養の開始の5日後に実施し;GFAPについてのアッセイを、培養の開始の7日後に実施した。MSCとの共培養下で発現される各マーカーのレベルを、1の相対的発現として任意に割り当てた。
【0036】
【
図13】
図13は、ECM被覆されたプレート上で培養されたラット皮質細胞において、培養又は共培養の開始の7日後、アッセイしたGFAP mRNAのレベルを示す。皮質細胞を、MSCと共に共培養し(「MSC」)、30ng/mlの組換えノギンタンパク質の存在下でMSCと共に共培養し(「MSC+ノギン」)、又は抗BMP4抗体の存在下でMSCと共に共培養した(「MSC+抗BMP4」)。MSCとの共培養において発現されたGFAPmRNAのレベルを、1の相対的発現値として任意に割り当てた。
【0037】
【
図14】
図14は、ECM被覆プレート上でのラット神経細胞及びMSCの共培養におけるヒト骨形成タンパク質-4(「huBMP4」)、ヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(「huGAP」)、ヒト線維芽細胞増殖因子-2(「huFGF2」)及びラットグリア線維性酸性タンパク質(「rGFAP」)についてのmRNAの発現レベルを示す。共培養の前、MSCを、ヒトBMP-4配列に対して標的化したsiRNAプール(「N+siBMP4+MSC」)、又は対照の非BMP4標的化siRNA(「N+siContr-MSC」)でトランスフェクトした。神経細胞もまた、MSCの不在下で別々に培養した(「N単独」)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
種々の異なったタイプの神経細胞の増殖及び分化を支持するであろうインビトロ培養条件を確立することは困難であることが分かっている。本発明者は、神経前駆体細胞、ニューロン、星状細胞及びオリゴデンドロサイトがすべて増殖し、そして分化することができるインビトロ培養システムを考案した。従って、本明細書に開示される培養システムは最初に、神経細胞の増殖及び分化に対する試験物質の効果の定量的評価を可能にする。このシステムは、試験物質の存在下で細胞外マトリックス上での神経細胞(例えば、胚性齧歯類皮質細胞)の培養、続いて、1又は2以上のマーカー分子の発現についての神経細胞培養物の分析を包含する。それらのアッセイで使用される細胞外マトリックスは、(a)間葉幹細胞、又は(b)Notch細胞内ドメインをコードするが、しかし完全長Notchタンパク質はコードしない核酸によりトランスフェクトされた間葉幹細胞(例えば、SB623細胞)により生成される。
【0039】
このシステムの様々な側面は、様々な神経原性及びグリア原性因子の能力に関する定量的情報を提供するその能力に寄与する。1つの側面によれば、神経細胞が、MSC又はSB623細胞(Notch細胞内ドメインをコードする配列を含むベクターによりMSCをトランスフェクトすることにより、MSCから誘導された細胞)により生成される細胞外マトリックス上で培養される。別の側面によれば、神経細胞が試験物質と共に共培養される時間は、アッセイされるマーカーの検出及び定量化を最適にするよう選択される。アッセイの前の共培養の期間は、各マーカーに固有のものである。例えば、共培養は、ネスチン及びCNPaseの測定のために5日間;及びGFAP、DCX及びMAP2の測定のためには7日間行われる。さらなる別の側面によれば、培養中の細胞の濃度は最適化される。例えば、神経細胞は、1.5×104個の細胞/mlの濃度で使用され;MSC又はSB623細胞は、0.5-1.5×103個の細胞/mlの濃度で使用される。
【0040】
本明細書に開示される定量アッセイシステムは、試験物質(例えば、MSC又はそれらの誘導体SB623細胞、ならし培地、増殖因子、サイトカイン)及び神経細胞集団の共培養のための生物学的支持体として間葉細胞、例えばMSC及びそれらの誘導体(例えば、SB523細胞)からのECMを用い、そして間葉細胞及び神経細胞の両者の増殖に有利である培養システムを提供する。次に、そのようなシステムは、様々なタイプの神経細胞の増殖及び分化に対する、間葉細胞の効果、及び他の細胞及び物質の効果の定量化を可能にする。
【0041】
本明細書に記載されるアッセイの利点は、発生の遷移が、異常物質的条件、例えば接着又は凝集(ニューロスフェア培養を参照のこと)に応答してではなく、生理学的条件下で及び時間経過とともに発生する事実を包含する。さらに、アッセイされる細胞の発生段階は、発生はニューロスフェアの内部には発生しないので、容易に決定され得る。最終的に、本明細書に開示されるアッセイは、外部増殖因子を必要とせず;従って、そのような因子の効果がこのシステムでの定量化を可能にする。
【0042】
このシステムを用いて、本発明者は、間葉細胞ECMが神経細胞集団(例えば、胚性皮質細胞)の増殖を支持するだけでなく、また、間葉細胞ECM上で増殖する神経細胞集団へのMSC又はSB623細胞の添加がすべての神経系統(例えば、ニューロン、星状細胞及びオリゴデンドロサイト)の増殖及び分化を実質的に増強することを確認した。
【0043】
存在する共培養システムに比較して、より低い間葉細胞:神経細胞の比率が、本明細書に記載されるECMに基づく共培養における神経細胞の有意な増殖及び分化を誘導できる。例えば、本明細書に記載されるアッセイシステムは、5,000個の神経細胞に対する約50個の間葉細胞の効果を検出するのに十分な感度を有する。
【0044】
神経原性及びグリオ原性因子、及び神経前駆体細胞の増殖及び分化を促進する因子についての定量的アッセイが本明細書に提供される。アッセイはまた、そのような因子、例えば細胞培養物又はならし培地の源を同定し、そして定量化するためにも使用され得る。
【0045】
アッセイを実施するためには、MSC又はSB623細胞(集合的には、「間葉細胞」として言及される)が、容器、例えば組織培養皿において、容器の表面上に細胞外マトリックスを積層するのに十分な時間、増殖される。何れかの固体支持体が、細胞の増殖及び細胞による細胞外マトリックスの確立をできるだけ支持するよう、細胞がその上で増殖する表面として使用され得る。適切な支持体は、プラスチック、ガラス又はニトロセルロースを包含する。さらに、支持体は、物質、例えばフィブロネクチン若しくはコラーゲン、又は再構成基底膜、例えばMatrigel(商標)により被覆され得る。
【0046】
適切な支持体の例としては、プラスチック組織培養皿又はフラスコを挙げることができる。細胞は、1日、2日、3日、1週、2週、1ヶ月、又は所望に応じてそれらの間の任意の期間、増殖され得る。MSC及びSB623細胞により確立されるECMについてのさらなる詳細に関しては、米国特許出願公開第2010/0310529号を参照のこと;この開示は、MSC及びSB623細胞により確立されるECM(前記出版においては、「分化-制限されたMASCの子孫」として示される)及びその性質を記載するために、参照により組み込まれる。
【0047】
MSCは、骨髄サンプルから接着性細胞を選択することにより得られる。骨髄は市販されているか(例えば、Lonza,Walkersville, MDから)、又は骨髄生検から入手できる。間葉幹細胞の他の源は、例えば脂肪組織、歯髄、臍帯血、胎盤及び脱落膜を包含する。MSCは何れかの動物、例えば哺乳類、例えばヒトから入手できる。
【0048】
MSCの典型的な開示は、米国特許出願公開第2003/0008090号;Prockop (1997) Science 276:71-74 and Jiang (2002) Nature 418:41-49に提供される。MSCの単離及び精製方法は、例えば米国特許第5,486,359号;Pittenger et al. (1999) Science 284:143-147 and Dezawa et al. (2001) Eur. J. Neurosci. 14:1771-1776に見出され得る。ヒトMSCは、市販されているか(例えば、BioWhittaker, Walkersville, MD)、又は例えば骨髄吸引、続いての接着性骨髄細胞の選択により、ドナーから得られる。国際公開第2005/100552号を参照のこと。
【0049】
SB623細胞は、Notch細胞内ドメイン(NICD)をコードするが、しかし完全長Notchタンパク質をコードしない配列を含むベクターによりMSCをトランスフェクトすることにより、MSCから誘導され、そのようなトランスフェクトされた細胞は、外因性NICDを発現するが、しかし外因性の完全長Notchタンパク質を発現しない。MSCを入手し、そしてMSC集団からSB623細胞を誘導するための方法は、例えば米国特許第7,682,825号及び米国特許出願公開番号第2010/0266554号に記載されており、それらの開示は、MSC及びSB623細胞、及びそれらの細胞の入手方法を記載するために、参照により組み込まれる。
【0050】
所定の時間、支持体上での増殖に続いて、MSC又はSB623細胞は、支持体から除かれ、支持体上に接着される細胞外マトリックスの後ろに残される。支持体から細胞を除く方法は、当業界においては周知である。本明細書に開示される方法の実施においては、支持体からの細胞の除去は、細胞により確立されたECMが支持体上に残るように十分に穏やかでなければならない。そのような方法は例えば、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton X-100、NP40)及びアルカリ(例えば、NH4OH)による処理を包含する。さらなる詳細については、下記「実施例」の欄を参照のこと。
【0051】
次に、ECM-含有支持体が、神経細胞及び1又は2以上の試験物質の共培養のための支持体として使用され、そして神経細胞に対する試験物質の効果が決定され、そして定量化される。培養物への神経細胞及び試験物質の導入は、同時であるか、又は何れの順序でもよい。
【0052】
任意の種類の神経細胞又は神経細胞集団も使用され得;そのような細胞は周知である。神経細胞集団の便利な源は、齧歯動物の胚性皮質細胞(例えば、ラット又はマウスからの)であえい、市販されている(BrainBits, Springfield, IL)。ある実施形態によれば、神経細胞集団は、神経前駆体細胞において富化される。
【0053】
試験物質としては、何れかの化合物、高分子(例えば、核酸又はポリペプチド)、細胞、細胞培養物、細胞画分若しくは組織、又はそれらの組合せを挙げることができる。例えば、増殖因子及びサイトカイン、低分子量有機化合物、mRNA分子、siRNA分子、shRNA分子、アンチセンスRNA分子、リボザイム、DNA分子、DNA又はRNA類似体、タンパク質(例えば、転写調節タンパク質)、抗体(例えば、中和抗体)、酵素(例えば、ヌクレアーゼ)、糖タンパク質、グリカン、プロテオグリカン、細胞、細胞膜調製物、細胞培養物、細胞培養物からのならし培地、亜細胞画分及び組織切片又は組織画分は、全て適切な試験物質である。試験物質はまた、電磁放射線、例えば、X線、光(例えば、紫外線、赤外線)又は音(例えば、亜音速又は超音波放射)も包含する。ある実施形態によれば、タンパク質、及びタンパク質に対する中和抗体の組合せが、試験物質として使用される。
【0054】
天然に存在する試験物質としては、細胞により合成され、そして分泌される可溶性分子(例えば、タンパク質)、及び細胞により合成され、細胞表面に輸送され、そして細胞表面に埋め込まれたまま残存する分子(例えば、タンパク質)、並びに細胞の外部に露出される分子(例えば、表面分子、表面タンパク質又は表面糖タンパク質)の全て又は一部を挙げることができる。
【0055】
神経細胞及び試験物質は、この方法の実施者により決定されるように、適切な期間、共培養される。例えば、共培養は、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、1ヶ月、又はそれらの間の任意の期間、実施され得る。
【0056】
神経細胞に対する試験物質の効果は、神経細胞における1又は2以上のマーカーの発現を測定することにより決定される。選択されるマーカーに依存して、神経前駆体細胞、ニューロン、星状細胞又はオリゴデンドロサイトの形成についてアッセイすることができる。
【0057】
1つの実施形態によれば、神経発生又はグリア発生に対する特定の生来の又は組み換えのいずれかのタンパク質の効果は、MSC又はSB623 ECM上で増殖する神経細胞の培養物にタンパク質を添加し、そして適切な神経又はグリアマーカーについてアッセイすることにより決定され得る。任意には、MSC又はSB623細胞からの低濃度(1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、又はそれらの間の任意の値)のならし培地がまた、培養に包含され得る。例えば、ならし培地の包含は、試験される研究以外の研究中のプロセスのために必要とされる追加の因子を提供することができ、それにより、評価されるべき多因子シグナル伝達システムの1つの成分の効果を可能にする。
【0058】
神経前駆体細胞、ニューロン、星状細胞及びオリゴデンドロサイトのための分子及び形態形成マーカーは、当業界において周知であり;以下が例として提供される。
【0059】
神経前駆体細胞のためのマーカーとしては、例えばネスチン、グルタミン酸トランスポーター(GLAST)、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(3-PGDH、星状細胞前駆体)、エフリンB2(EfnB2)、Sox2、Pax6及びムサシ(musasi)を挙げることができる。ある実施形態によれば、増殖能力はまた、神経前駆体細胞のためのマーカーとしても使用され得る。増殖能力は例えば、ブロモデオキシウリジンの取り込み、カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)ラベリング、Ki-67の発現、又は増殖性細胞核抗原(PCNA)の発現により測定され得る。
【0060】
ニューロンのためのマーカーとしては、例えば微小管関連タンパク質(MAP2)、β-チューブリンイソタイプIII (また、βIII チューブリン及びTuJ-1としても知られている)、ダブルコルチン(DCX)、神経フィラメントタンパク質(例えば、神経フィラメント-M)、シナプトフィジン、及びニューロン特異的エノラーゼ(また、エノラーゼ-2及びγエノラーゼとしても知られている)を挙げることができる。神経突起伸長はまた、ニューロン発達のためのマーカーとしても使用され得る。
【0061】
追加のニューロンマーカーが下記表に列挙される:
【0062】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0063】
グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、グルタミン酸トランスポーター(GLAST)、3-PGDH及びグルタミンシンターゼが、星状細胞のためのマーカーとして使用され得る。
【0064】
オリゴデンドロサイトのためのマーカーとして、例えばA2B5抗原、ガラクトセレブロシド(GalC)、2’,3’-環状ヌクレオチド3’ホスホジエステラーゼ(CNPase)、O1抗原、O4抗原、ミエリン塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト転写因子1、オリゴデンドロサイト転写因子2、オリゴデンドロサイト転写因子3、NG2、及びミエリン関連糖タンパク質を挙げることができる。
【0065】
マーカーの発現は、当業界において周知である技法により測定され得る。例えば、タンパク質の発現は、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、ELISA及びタンパク質ブロッティング(例えば、ウェスターンブロット)により測定され、そして定量化され得る。
【0066】
mRNAの発現は、例えばブロッティング、ヌクレアーゼ保護及び逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を包含する方法により測定され、そして定量化され得る。
【0067】
アッセイされる試験物質及びマーカーに依存して、アッセイが神経細胞により生成される分子に対して特異的であり、そして特に、試験物質が細胞、例えばMSCはSB623細胞である場合、試験物質により生成される同じか又は類似する分子と交差反応しないことを確保することが必要である。例えば、MSCはネスチンを発現し;ネスチンがラット皮質細胞及びヒトMSCの共培養下で神経前駆体細胞のためのマーカーとしてアッセイされる場合、ラットネスチンに対して特異的な抗体がこのアッセイに使用される。同様に、核酸発現が例えば、定量的逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)又はTaqManによりアッセイされる場合、種-特異的プライマー(及び、適用できる場合、プローブ)が使用される。
【0068】
ある実施形態によれば、上記アッセイ(すなわち、神経細胞及び試験物質の共培養)において神経細胞によるマーカーの発現が、試験物質の不在下における神経細胞における同じマーカーの発現と比較される。
【0069】
本明細書に記載されるアッセイはまた、ニューロン、星状細胞及びオリゴデンドロサイトを包含する、NPCの子孫の特徴的なマーカーの発現を測定することにより、神経前駆体細胞(NPC)の分化を定量化するためにも使用され得る。そのようなマーカーは当業界において周知であり、そして典型的マーカーが本明細書に記載されている。
【0070】
ある実施形態によれば、試験物質の神経原性又はグリア原性能力をアッセイするためのキット、又はニューロン前駆体細胞の増殖及び/又は分化を促進する物質の能力をアッセイするためのキットが提供される。キットは、1又は2以上の培養容器、及び容器上のMSC又はSB623細胞の増殖を可能にするための任意の培養培地と共に、MSC及びSB623細胞(任意には、低温保存された状態で)の1つ又は両者を含む。キットはまた、培養容器の表面上に接着される細胞外マトリックスを残すために、培養容器からMSC又はSB623細胞を除くための試薬(例えば、非イオン性界面活性剤、例えばTriton X-100又はNonidet P-40;水酸化アンモニウム)も含むことができる。キットはまた、神経細胞(例えば、ラットE18皮質細胞)のサンプルも含むことができる。様々なニューロン及びグリアマーカーに対するラベルされた抗体がまたキットに含まれ;そしてニューロン及びグリアマーカーをコードするmRNAに対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブ及び/またはプライマーもまた、含まれ得る。ニューロン又はグリアマーカー(例えば、タンパク質)、又はそのコーディングmRNAを検出するであろう何れかのタイプの試薬が、キットに含まれる。免疫組織化学、FACS、RT-PCR、電気生理学及び薬理学のために適切な試薬及び/又は緩衝液及び/又は装置もまた、キットに含まれ得る。
【0071】
さらなる実施形態によれば、本明細書に開示されるようなキットは、1又は2以上の培養容器、及びその上に接着されるMSC又はSB623細胞からのECMを含むことができる。そのようなキットは任意には、神経細胞、及びニューロン及び/又はグリアマーカーを検出するための試薬(例えば、抗体、プローブ、プライマー)を、任意には含むことができる。そのようなキットはまた、免疫組織化学、FACS、RT-PCR、電気生理学及び薬理学のために適切な試薬及び/又は緩衝液を任意には含むことができる。
【0072】
さらなる実施形態によれば、キットは、培養容器への適用のための、MSC又はSB623細胞(又はそれらの混合物)からの精製された細胞外マトリックスを含むことができる。
【0073】
さらなる実施形態によれば、キットは、固体支持体(例えば、培養容器)及びその上に接着される生物学的層を含んでなり、ここで前記生物学的層は、
(a)間葉幹細胞、又は
(b)Notch細胞内ドメインをコードするが、しかし完全長Notchタンパク質はコードしない核酸によりトランスフェクトされた間葉幹細胞
により接着される細胞外マトリックスである。
【0074】
キットの操作に関しては、神経細胞が、試験物質の存在下で、MSC又はSB623細胞からの細胞外マトリックスと接触して増殖され、そして神経細胞が選択されたニューロン又はグリアマーカーの発現について分析される。上記キットに関して、培養容器上へのECMの接着(MSC及び/又はSB623細胞による)、及びECMを確立した細胞の除去は、培養容器に神経細胞及び試験物質を添加する前に、使用者により実施される。
【実施例】
【0075】
一般方法:
MSC及びSB623細胞の調製:
MSC及びSB623細胞の調製は記載されている[29]。手短に言えば、ヒト成人骨髄吸引物(Lonza, Walkersville, MD)を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Hyclone, Logan, UT)、2mMのL-グルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシン(両者とも、Invitrogen, Carlsbad, CAから)により補充されたαMEM(Mediatech, Herndon, VA)において増殖させた。第2継代上で、一部の細胞を低温保存し(MSC調製)、そして一部の細胞をSB623細胞の調製のためにプレートした。SB623細胞調製に関しては、MSCを、ヒトNotch1細胞内ドメイン(NICD)をコードするpCI-neo発現プラスミドによりトランスフェクトした。培養の1日後、トランスフェクトされた細胞を、7日間、G418(Invitrogen)による選択下に置き、その後、選択は解除され、そして培養物を、2度の継代により成長せしめ、そして増殖した。次に、SB623細胞を回収し、そしてCryostor CS5 (BioLife Solutions, Bothell, WA)を用いて低温保存した。3種の異なったドナーからの細胞を、本明細書に記載される研究に使用した。MSC及びSB623細胞を、解凍し、そして使用の前にαMEMで1度洗浄した。共培養実験に関しては、次に、細胞を、2%B27及び0.5mMのGlutaMAX(すべては、Invitrogenから)により補充されたNeurobasal培地から成る神経増殖培地に再懸濁した。ECMコーティングの生成又はならし培地(CM)の生成に関しては、細胞を、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンにより補充されたαMEMにプレートした。
【0076】
プレートコーティング
ECMにより被覆されたウェルの調製のために、SB623細胞を、96-ウェルプレートに又はガラスカバースリップ(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)上に、3×104個の細胞/cm2でプレートし、それらを12-ウェルプレート(すべてのプレートは、Corning Inc, Corning, NYから購入された)に配置し、そして5日間、増殖した。続いて、培地を、血清を含まない培地に変え、そして細胞を、さらに2日間、培養した。次に、細胞を、いくらかの改良を伴って、前述のプロトコール[29]を用いて、ECMから除いた。手短に言えば、細胞を、室温で40分間、水中、0.2%Triton X-100(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)により処理し;次に細胞溶解物を注意して吸引し、そして水中、濃縮されたNH4OH(Sigma-Aldrich)の1:100(v/v)溶液を、5~7分間、ゆっくりと添加し、次に除いた。洗浄のために、ウェルをPBSで完全に満たし、そして少なくとも3時間インキュベートした。ウェルは、すぐに使用されるか、又は4℃で保存された。
【0077】
ならし培地(CM)の調製
MSC又はSB623細胞を、3×104個の細胞/cm2でプレートし、そして10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンにより補充されたαMEMにおいて3~4日間、コンフルエントになるまで増殖した。次に、培地を、Neurobasal培地(Invitrogen)により置換し、そして培養物を1~2時間、インキュベートした。この培地を捨て、そして細胞増殖のために典型的に使用される容量の半分を用いて、新鮮なNeurobasal培地により置換した。細胞を24時間インキュベートし、その後、培地を回収し、そして粒状物を、遠心分離により除去した。培地を分注し、そして-70℃で保存した。MSC-CM調製物を、使用の前に2%B27及び0.5mMのGlutaMAXにより補充した。
【0078】
ラット胚性脳皮質細胞の調製
ラット胚性(E18)大脳皮質対を、BrainBits(Springfield, IL)から購入し;そして細胞懸濁液を記載のようにして調製した[29]。手短に言えば、皮質を、0.25%トリプシン/EDTAと共に37℃で5~7分間インキュベートし、そしてトリプシンを除いた。組織を、10%FBSを含むαMEM、次にPBSにより洗浄した。次に、0.25mg/mlのDNase(MP Biomedicals, Solon, OH)を添加し、そして管の内容物を、30秒間、渦動により混合した。得られる細胞懸濁液を、粉末化し、PBSにより希釈し、ペレット化し、そして次に、神経増殖培地(上述の)に懸濁した。
【0079】
共培養実験
上記のようにして被覆されたプレートを、一部の神経増殖培地と共に予め加温し、そして次に、種々の数の間葉細胞を添加した。続いて、神経細胞を、対照のウェル以外のすべてに1.5×104個の細胞/cm2の密度で添加し、そして培養物を、示される期間インキュベートした。各時点で、四重反復のサンプルを含む別々のプレートを用いた。定量化のために、細胞を96ウェルプレートにプレートし、そしてMSC又はSB623細胞を、1.5×103個の細胞/cm2(すなわち、ウェル当たり500個の細胞)から出発して、減少する密度で添加した。免疫染色のために、培養物を、12ウェルプレートのECM被覆されたカバースリップ上にプレートした。MSC又はSB623細胞を、特に断らない限り、1.5×103個の細胞/cm2の一定細胞密度で添加した。
【0080】
細胞(MSC又はSB623)の効果が、それらのならし培地の効果と比較されるサブセットの実験において、低温保存された細胞のアリコートを用いて、実験の前にならし培地を生成し、そして実験の日に同じドナーからの細胞アリコートを、融解し、対応する細胞懸濁液を生成した。細胞を、上記のように減少する濃度で適用し、そしてならし培地を、全培地の50%から出発して、減少する濃度で使用した。遺伝子発現の定量化のために、すべての培養条件を、各神経マーカーについての同じ標準曲線を用いて、同じPCRプレート上で試験した。
【0081】
培地は、共培養実験の間、変えられなかった(96ウェル形式で7~8日間、及びカバースリップ上の細胞を用いて最大14日間、続いた)。培養の徴候は認められず、そして神経細胞の生存率は、Trypan Blue排除を用いて、培養の最終日に評価される場合、95%以上であった。
【0082】
別の組の実験においては、細胞が非接着性条件下で共培養される場合、Ultra-Low Adhesion Costar 12又は24ウェルプレートを用いた。間葉及び神経細胞を、示される量で混合し、そして神経増殖培地にプレートした。対照として、神経細胞を、単独で、又は20ng/ml又は50ng/mlの各EGF及びFGF2の存在下で増殖し、各EGF及びFGF2は、R&D Systems (Minneapolis, MN) 又はPeprotech (Rocky Hill, NJ)の何れかから購入された。培地は実験の間(2週間)、変えられなかった。
【0083】
免疫細胞化学
ガラスカバオースリップ上で増殖した培養物を、4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Science, Hatfield, PA)により20分間、固定し、PBSにより1度、洗浄し、そして10%正常ロバ血清(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)、1%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)、0.1%Triton X-100を含むブロッキング溶液において30分間インキュベートした。次に、ラットネスチンに対するヤギポリクローナル抗体(R&D Systems,カタログ番号AF2736)を、1:1000でブロッキング溶液中に添加し、そして4℃で一晩インキュベートした。カバースリップをPBSにより洗浄し、そして次に、ウサギポリクローナル抗グリア線維性酸性タンパク質(GFAP) (Dako, Denmark) (1:2000)、マウスモノクローナル抗微小管関連タンパク質2(MAP2) (Sigma-Aldrich) (1:1000)又はマウスモノクローナル抗2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase) (Millipore, Billerica, MA) (1:200)の何れかを添加し、そしてカバースリップを、室温で1時間インキュベートした。洗浄の後、カバースリップを、二次抗体:IgGのDyLight 549 488-接合AffiniPure 抗ウサギF(ab’)2フラグメント(1:2000)又はCy3-接合AffiniPure ロバ抗マウスIgG (1:1000)の何れかと組み合わせた、IgGのDyLight 488-接合AffiniPure ロバ抗ヤギF(ab’)2 フラグメント(1:1000)と共に1時間インキュベートし、すべての商品は、Jackson Immunoresearchからであり、そしてすべては、製造業者により、複数の標識に使用するために選択された。PBS及び水による洗浄の後、スリップを、4’,6’―ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Invitrogen)を含むProLong Gold退色防止剤によりマウントした。
【0084】
いくつかの実験においては、固定化の前、細胞を50μg/mlの濃度でのマイトマイシンの存在下又は不在下で10μMの5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BRDU, Sigma-Aldrichからの)と共に7~8時間インキュベートした。次に、培養物を2%PFAにより固定し、0.5%Tritonにより透過処理し、そして0.15MのNaCl及び4.2mMのMgCl2を含む緩衝液中、デオキシリボヌクレアーゼ(MP Biomedicals, Solon, OH)により、37℃で1時間、処理した。次に、培養物を、冷メタノール(Fisher Scientific, Fair Lawn, NJ)により10分間、後-固定した。上記のようなブロッキングの後、培養物を、抗-BRDUモノクローナル抗体(BD Pharmingen)、次に上記抗マウス二次抗体、次にAlexa Flnor-接合TUJ1、ニューロンクラスIII β-チューブリン特異的抗体(Covance, Princeton, NJ)と共にインキュベートした。
【0085】
蛍光顕微鏡検査を、Nikon Eclipse50i (Nikon Instruments, Melville, NY)及びNikon Digital Camera DXM1200Cを用いて、行った。
【0086】
本明細書に記載される条件下で、何れの抗体も間葉細胞とは反応しなかった。
【0087】
遺伝子発現の定量化
様々な神経マーカーをコードするmRNAの発現の定量化のために、細胞の増殖及び培養を、96ウェルプレートにおいて実施した。示される時間の培養の後、培養培地を、10μlのピペット先端を備えたNunc Immuno Washerを用いて、注意して且つ完全に吸引し;そして細胞を、Cell-to-Signal(商標)(Applied Biosystems/Ambion, Austin, TX)又はSideStep(商標) (Agilent Technologies, Santa Clara, CA)の何れかの溶解緩衝液20μl(ウェル当たり)により3分間、溶解した。次に、溶解物を注意して上下にピペッティングし、そしてサンプル(四重反復下で)をペアで組み合わせて(従って、生物学的複製物を製造し)、保存プレートに移し、そして-70℃で凍結した。
【0088】
遺伝子発現の試験のために、サンプルを融解し、そしてアリコートを、PCRグレードの水により1:10に希釈した。高い期待の発現レベルを有するサンプルを用いて、定量化のための一連の標準として作用するよう10%溶解緩衝液により段階希釈溶液を調製した。希釈されたサンプルを、Qiagen (Valencia, CA)からのQuantiTect(登録商標)Probe RT-PCR Master Mix、及びApplied Biosystems (Foster City, CA)から購入したTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイと組み合わせて、一段階qRT-PCR反応における鋳型として使用した。ラット及びヒト細胞からの対応するmRNA間の交差反応の不在が、ラット神経細胞、並びにヒト間葉及び神経細胞を包含する実験において確立された。次の予め最適化されたアッセイ(すべては、エクソン-エクソン境界を越えて設計された)が使用された:ラット-特異的-ネスチン (Rn00564394_m1)、MAP2 (Rn00565046_m1 )、GFAP (Rn00566603_m1)、CNPase (Rn01399463_m1)、ダブルコルチン(Dcx)(Rn00584505_m1)、ゲリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼ(rGAP)(Rn-1462661_g1);及びヒト-特異的 - ゲリセルアルデヒド 3-リン酸デヒドロゲナーゼ(huGAP) (4333764F)、骨形成タンパク質4 (BMP4) Hs00370078_m1、及び線維芽細胞増殖因子2 Hs00266645_m1。括弧内の数字は、製造業者(Applied Biosystems)のアッセイID番号を言及する。増幅反応のために、LightCycler 480 (Roche, Mannheim, Germany)を、40~60の増幅サイクルを有するMaster Mix製造業者のプロトコールに従ってプログラムした。分析は、Second Derivative Maximum法を用いて行われた。
【0089】
神経突起形成の評価
神経細胞を、通常使用されるよりも10倍低いB27(0.2%)を含む神経増殖培地において、1.5×104個の細胞/cm2で、単独で、又は1.5×103個の細胞/cm2でMSC又はSB623細胞の何れかと一緒に、ECMで覆われたガラスカバースリップ上にプレートし、そして18~24時間、増殖させた。次に、上記のようにして、培養物を、MAP2発現のために固定し、そして染色し、そしてDAPI含有培地をマウントした。約12~15の倍率で、同じ露出時間を用いて、写真撮影し、そして条件当たり合計20のニューロンを分析した。最長の神経突起の長さを、各細胞について測定し、そして細胞当たりの神経突起の数を計数した。
【0090】
実施例1:増殖及びニューロン分化に対する間葉細胞の効果
間葉細胞の存在下又は不在下で増殖されたECMに基づく神経培養物の組成を、ネスチン、神経幹細胞/初期前駆体のマーカー及びMAP2、ニューロンマーカーについて、免疫細胞化学を用いて、最初に分析した。様々な時点で、培養物を固定し、そしてラット-特異的抗-ネスチン抗体及び抗-MAP2抗体と共にインキュベートした。すべての培養物をまた、核-特異的染料DAPIにより対比染色した。次に固定され、そして染色された培養物を、蛍光顕微鏡により検査した。1日目、単一陽性Nes+及びMAP2+細胞を、MAP2染色及びネスチン染色が共局在した、いくらかのMAP2+Nes+二重陽性細胞と共に、試験されたすべての培養物に存在した。小画分の二重陰性細胞もまた存在した。3日目までに、二重陽性細胞が検出されない一方で、単一陽性細胞はそれらの突起を拡張した。5日目に、MAP2+ニューロンは、神経突起を拡張し続ける一方で、Nes+細胞は数的に有意に増加した。この時点で、Nes+細胞はコロンーを形成した。より多くのコロニー数及びより大きなコロニーサイズが、間葉細胞の存在下で観察された。二重陽性細胞は検出されなかった。
【0091】
9日目までに、多数のMAP2+Nes+二重陽性細胞、及びMAP2+Nes-ニューロン及びMAP2-Nes+細胞が観察された。二重陽性細胞は、MSCとの共培養に比較して、SB623との共培養において、より多数発現される一方で、間葉細胞なしでの培養物は、最少数のMAP2+Nes+細胞を有した。それらの二重陽性細胞は、特徴的な二小葉形状の核、薄いMAP2陽性突起、及び核周辺部、最も頻繁には、最も顕著な伸長に隣接して位置する2つの核葉間の裂け目に局在する強いネスチン反応性を有した。この形態は、培養の第1日目に存在するMAP2+Nes+二重陽性細胞の形態に類似した。
【0092】
神経細胞及び間葉細胞がPDL上で共培養される場合、ほぼ同じ頻度の二重陽性及び単一陽性細胞が、細胞がECM上で共培養される場合に観察されるように、培養の1日目に観察された。後の時点で、進行した単一陽性Nes+細胞は検出されなかった(非常に希なNes+細胞が、密な核を有する丸形であった)。培養の5日目までに、少数の二重陽性細胞コロニー(各コロニーは非常に少数の細胞から成る)のみが観察された。それらの結果は、PDL上で、ほとんどの又はすべてのNes+細胞がニューロン分化を開始したことを示した。9日目で、二重陽性コロニーが、間葉細胞の存在下で、それらの細胞の不在下でよりも一層、顕著であった。
【0093】
共培養物における間葉細胞の状態をまた、位相差顕微鏡法を用いて、及びα-平滑筋アクチン、すなわち間葉細胞マーカーについて染色して、試験を行った。PDL上で、間葉細胞はかろうじて拡張し、通常約5~7日目で消失した。ECM上で、間葉細胞は、共培養の期間中に容易に検出され;それらは十分に広がり、移動し、そしてゆっくり増殖しているように見えた。
【0094】
神経突起形成は、共培養におけるECM及びPDLの両者上で非常に活動的であったが、しかし培養の最初の18~24時間、間葉細胞の存在下で、さらに増強された。この異なった応答を増強するために、培養物を、低濃度のB27サプリメントを含む神経増殖培地にプレートした。それらの条件下で、より長い神経突起が、神経細胞のみの培養においてよりも、共培養の24時間後、MSC又はSB623細胞の存在下で観察された(表1)。しかしながら、神経突起の数の有意差は認められなかった(表1)。
【0095】
【0096】
実施例2:星状細胞発生に対する間葉細胞の効果
星状細胞の成長を、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の発現についての免疫組織化学分析によりアッセイした。グリア線維性酸性タンパク質(GFAP、星状細胞マーカー)及びネスチンについてのECMに基づく培養物の二重染色は、すべての培養において3日目の前、GFAP反応性の不在を示した。約5日目、GFAP-発現細胞が、単一又は二重陽性細胞としてのNes+コロニー内の共培養に観察されるようになった。GFAP-発現細胞は、間葉細胞を含まない培養において観察されなかった。別のコロニーは、可変比率のGFAP+Nes+細胞及びより十分に分化されたGFAP+Nes-細胞を有した。GFAP+細胞は、間葉細胞を欠いている培養においてはこの時点で検出されなかった。9日目、すべての3種の表現型(GFAP+Nes+、GFAP+Nes+及びGFAP+Nes-)が、すべての培養物に存在し、そしてGFAP+Nes-細胞が卓越した。
【0097】
その細胞内局在化に関しては、GFAP免疫反応性は、いくつかのネスチン陽性糸状細胞におけるネスチンの傍又は内に挿入フィラメントとして最初に(5日目で)出現した。後に、ネスチンは、ネスチン染色の斑状分布により証明されるように、具体的に特定の細胞においてはGFAPにより置換される一方で、他の細胞は、ネスチンのみを発現し続けた。共培養においては、GFAP+Nes+細胞は一般的に、GFAP+Nes-細胞と同じ形態を有した一方で、GFAP-Nes+細胞間では、形態が変化した。1つのタイプの細胞は、非常に長い突起、頻繁には、200μmを超える突起を有した。他のタイプの細胞は、小さいGFAP-Nes+細胞であり、ここでネスチン反応性が、核の片側から「レース」(lace)として、又は二小葉核の裂け目で濃縮され、そして裂け目に接して位置する突起に拡張されて、核に対して偏心的に局在した。後者の形態は、先の実施例に記載されるNes+MAP2+細胞の形態に類似した。
【0098】
GFAP+細胞は、共培養がPDLに上で行われる場合、検出されなかった。
【0099】
実施例3:オリゴデンドロサイト発生に対する間葉細胞の効果
オリゴデンドロサイト発生を、初期オリゴデンドロサイトマーカー2’,3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase)の発現の免疫組織化学分析により評価した。CNPase+細胞は、共培養の9日目では、検出できなかった。12日目、間葉細胞の不在下でのECM上で増殖される培養においては、CNPase反応性は、非常に少数の、通常分裂する細胞においてのみ検出され得た。同じ時点で、間葉細胞を含む共培養においては、GNPase+細胞はクラスターで出現し、そしてCNPase発現は核周囲領域に局在した。SB623細胞による共培養においては、CNPase染色は、細胞質全体に、より強く、より広範囲に拡張した。CNPaseの発現は、ネスチン発現とは共局在しなかった。
【0100】
CNPase+細胞は、共培養がPDL上で行われる場合、検出されなかった。
【0101】
実施例4:共培養での神経細胞の増殖
神経細胞の増殖を、1.5×103個の細胞/cm2のMSCの存在下又は不在下で、1.5×104個の神経細胞/cm2を含む培養物において、2種の方法を用いてアッセイした。最初の方法によれば、DAPI染色された核が、上記のような免疫化学分析のために調製されたスライド上で計数された。200X倍率での5種の顕微鏡視野を、2つの実験から、計数し、そして条件ごとに平均した。非常に凝縮されるか、又は断片化された核は、死亡細胞を示すものとして考えられた。MSC核を、それらの独得のサイズに基づいて、計数から除外した。
【0102】
第2の方法によれば、神経細胞増殖は、ラットノギン、すなわち単一エクソン遺伝子(Rn01467399_s) (Applied Biosystems)についての定量的PCRアッセイを用いて、マイクロプレート形式共培養において測定された。分析は、qRT-PCRプロトコールの逆転写段階を除いたことを除いてqRT-PCRについて記載されるようにして実施した。MSCからのヒトノギン配列の最少増殖が検出された(
図1B)。
【0103】
結果を
図1に示す。両方法は、MSCの存在下で、ラット神経細胞の数がMSCとの7日間の共培養の間、三倍化又は四倍化する一方で、MSCの不在下で、神経細胞数はかろうじて二倍に成ったことを示した。DAPI染色された神経核の形態によりアッセイされる場合、10~20%の細胞は所定の時間で死亡した(
図1A)。
【0104】
神経前駆体細胞の増殖をまた、ECM上でのMSCとラット神経細胞との共培養下でアッセイした。共培養の7日目、培養物を、BRDUに対する抗体及びニューロン特異的TUJ1抗体を固定し、そして免疫染色することに続いて、7時間BRDUにより処理した。神経細胞が単独で培養されるか、又はMSCと共に共培養されるかどうかには関係なく、この時点で、培養物は、抗TUJ1及び抗BRDU抗体の両者との反応性を示す、かろうじて成長する突起を有する小さな細胞を含み、これが増殖する神経前駆体細胞を示す。ラットノギン遺伝子についてのPCRアッセイを用いてのそれらの神経前駆体細胞の定量化は、それらの数が、神経細胞がMSCと共に共培養される場合、増加されたことを示した(
図1B)。
【0105】
実施例5:経時変化
この実験においては、ECM上で培養される神経細胞における種々のニューロン(ダブルコルチン、MAR2)、神経前駆体(ネスチン)及びグリアマーカー(GFAP及びCNPase)の発現の経時変化を、200個のMSC/ウェルの存在下及び不在下で分析した。サンプルを、様々な時点で集め、そして凍結した。続いて、全てのサンプルを融解し、そしてqRT-PCRにより並行してアッセイした。プライマー、プローブ及び増幅条件は上記の通りであった。結果を、
図2に示す。神経マーカーダブルコルチン(DCX)及びMAP2のレベルは、最初は高く、そして培養及び共培養において時間と共に上昇する。中間の培養時で、共培養は、DCX及びMAP2 RNAレベルに対してはほとんど効果を有していないように見る一方で;後の時間では、共培養の活性効果が顕著になる。ネスチン、すなわち神経前駆体細胞マーカーの発現は、共培養の開始で、ほとんど検出できなかったが、しかし7日間の培養にわたって着実に高められ、そしてMSCの存在により増強された。GFAP mRNA、すなわち星状細胞マーカーの発現は、MSCとの共培養の不在下で検出されない一方で;共培養においては、それは、最初に、4日目で検出され、そして6日目と7日目との間で発現の大きな増加が存在した。CNPase mRNA、すなわちオリゴデンドロサイトマーカーの発現は、MSCとの共培養において、最初に4日目で検出され、そして6日目と7日目との間で急増が示された。
【0106】
それらの結果に基づけば、ネスチン及びCNPase mRNA発現の検出のための最適時間は、共培養の5日目であることが決定され;そしてDCX、NAP2及びGFAP mRNA発現の検出のための最適時間は、共培養の7日目であることが決定された。
【0107】
実施例6:用量応答
定量アッセイに関しては、ラット皮質細胞(5000個の細胞/ウェル)を、単独で培養するか、又はウェル当たり500~32個の細胞の減少する数のMSCと共に共培養した。対照として、MSCはまた、500個の細胞/ウェルで単独で培養された。ラットネスチン、MAP2、GFAP及びCNPase mRNAについてのqRT-PCR Taqmanアッセイを用いて、遺伝子発現を定量化した。ヒト特異的グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(huGAP)のqRT-PCR Taqmanアッセイを用いて、MSC数を見積もった。
図3及び4は、共培養サンプルにおけるrNes、rMAP2、rCNPase又はrGFAP遺伝子発現の総レベルが存在するMSCの数に直接的に依存することを示しており、ここで前記MSC数は、ヒト特異的GAP(huGAP)mRNAについてのアッセイにより定量化される。それらの効果は、MSC単独では、ラット特異的プローブ及び条件を用いてシグナルを付与しないので、ヒト配列の増幅により引き起こされなかった。
【0108】
マーカーとしてネスチン、MAP2又はCNPaseを用いてMSC-依存性用量応答を観察するためには、サンプリングのタイミングが重要であった。例えば、ラットネスチン遺伝子発現を試験するための最適なタイミングは、7日目での発現が飽和に達したので、4日目と6日目との間であった。
【0109】
ラットCNPase mRNA発現は、タンパク質を検出することができただいぶ前である、ほぼ5日目で最初に検出された。5日目で、CNPase mRNAレベルは、共培養におけるMSC濃度に対して直接的に比例した。5日目の後、CNPase遺伝子発現レベルは、上昇し続け;しかし7日目まで、MSC-用量依存曲線は二相性になった(
図5)。それらの後の時間で、より高い用量のMSCが、観察の間、CNPase遺伝子発現を漸進的に阻害し、そしてより低い用量は誘導性のままであった。この結果は、タンパク質レベルで確認された:1000個の細胞/cm
2のMSC又はSB623と共に共培養された神経細胞は、100個の細胞/cm
2のMSC又はSB623と共に共培養された神経細胞に比較して、有意に低いCNPase染色を有した。
【0110】
GFAP mRNAの発現は、できるだけ早く検出されるよう(4日目又は5日目)、間葉細胞濃度に対して強く且つ一貫性の用量応答性を示し、そして残りの培養期間(7日目~9日目)、飽和を示さなかった。
【0111】
実施例7:間葉細胞ならし培地、間葉細胞ECM及び肝臓間葉細胞により介在される効果の定量化
この実施例においては、神経細胞分化に対する生存MSCの効果を、それらのならし培地(CM)の効果に比較し;そして支持体としてのECMの使用の効果を、ポリ-D-リシンの使用と比較した。
【0112】
定量的神経分化アッセイ(qRT-PCR)を用いて、間葉幹細胞培養物のどの成分が最も優れた神経新生効果を有したかを決定した。このためには、MSCに対する神経細胞の応答を、MSC-CMに対するその応答と比較し、そして細胞を、ECM-又はPDL-被膜プレート上で共培養した。減少する濃度のMSC及びMSC-CMを用いて、効果が飽和以下で分析されたことを確かめた。結果を、表2に要約する。説明を簡単にするために、表は、最高濃度の間葉細胞(500個の細胞/ウェル)又はMSC-CM(50%)を包含した実験からのデータを単に含む。より低い濃度のそれらの添加剤がより低いマーカー発現レベルを刺激し、このことは、応答が飽和も又はダウン-レギュレートの何れもされなかったことを確認した。結果は、指示される日において添加物を有さないECM上で増殖された培養物中のレベルと比較して表された。
【0113】
1日目での類似するレベルのrMAP2発現が、全ての試験条件下で観察され、このことは、初期ニューロン接着及び成長が類似したことを示唆する。後の5日目、生存MSC又はMSC-CMの何れかの存在は、何れの支持体上でもこのマーカーの発現を、2~3倍に高めた。ネスチン遺伝子発現は、PDL上でよりもECM上で2~3桁程度、強かった。5日目、ネスチン遺伝子発現は、ECM及びPDLの両者上でMSC-CM及び生存MSCの両者の存在下で実質的に高められた。5日目でのCNPase遺伝子発現は、生存MSCにより誘導され、そしてECMに基づく培養上でのMSC-CMにより、より一層強く誘導された一方で、PDLに基づく培養上では、それは検出限界以下であった。CNPase遺伝子誘導は、7日目、PDL上で検出され、そしてMSC-CMは生存MSCよりも、より効果的な刺激であった。GFAP遺伝子発現は、生存MSCにより最も劇的に、及びMSC-CMによれば、より少ない程度にECM上で誘導された。PDL上で、GFAP発現は、研究を通して、定量化限界以下であった。
【0114】
ヒトGAP発現をまた、この研究の1日目及び7日目に試験した。1日目、PDL-被覆されたプレート上で行われる共培養におけるヒトGAP遺伝子発現は、ECM上で培養された細胞においてよりもわずかに低い一方で、7日目、それは定量化限界以下であった。顕微鏡検査は、PDL上での7日後、少数の間葉細胞のみが生存し、そしてこれらはかろうじて広がった一方で、それらはECM上で、それらの典型的な形態を示し、そして数的にわずかに上昇したことを表した。結果を、表3に要約する。
【0115】
【0116】
【0117】
実施例8:非接着性培養におけるMSCの効果
上記実験においては、プレートのECMコーティングは、間葉細胞のコンフルエント層により生成され、ここで前記細胞の濃度は、共培養に使用される間葉細胞の最高濃度よりも約40倍、高かった。共培養における神経幹/初期子孫細胞増殖及び分化の強い刺激が共培養における間葉ECMの存在により引き起こされるかどうかを明確にするために、皮質細胞を、減少する数のMSC又はSB623細胞と共に混合し、そして共培養を、ポリ-D-リシン(PDL)により被覆されたプレートにおいて、非接着性条件下で実施した。対照として、皮質細胞を、単独で、FGF2及びEGFの存在下又は不在下でプレートし;そして間葉細胞を、共培養に使用される最高濃度で、単独でプレートした。
【0118】
ポリ-D-リシン(PDL)コーティングに関しては、プレートを、水中、10μg/mlでのPDL(Sigma-Aldrich)により、室温で1時間、被覆した。次に、PDL溶液を吸引し、ウェルを乾燥させ、そして次にPBSにより1度、洗浄した。細胞がそれらの被覆されたウェルにプレートされる前、PBSを一部の神経増殖培養培地により置換し、そしてプレートを、細胞懸濁液の調製の間、インキュベーター内で加温した。
【0119】
細胞を14日間、共培養した。この間、細胞凝集物がすべてのウェルに形成された。間葉細胞単独での培養においては、それらの凝集物は小さく、そしてそれらのサイズの増大は、培養期間、観察されず;実際、それらの多くは死滅した。すべての他の条件下で、凝集物は有意に成長し、典型的なニューロスフェアを形成した。インキュベーションの最後で、すべてのウェル中の全内容物を集め、ペレット化し、そして等体積の溶解緩衝液に溶解し;次に、ラット神経マーカーの発現についてqRT-PCRにより試験した。
図6は、代表的結果を提供し、これは、MSCの存在が、ECMの不在下で非接着性条件下で用量依存的にrNes、rMAP2、rGFAP及びrCNPase発現を刺激したことを示す。ラットダブルコルチン(rDCX、増幅ニューロンのマーカー)の発現はまた、PDL-被覆された支持体上でのMSCにより刺激された。MSCはまた、用量依存的にrGAPの発現を誘導し、このことは、MSCとの共培養が生存ラット神経細胞の全体数の上昇を刺激したことを示唆する。
【0120】
最高用量のMSCを含む共培養に観察されるニューロスフェアがFGF2及びEGFの存在下で増殖されたニューロスフェアに比較される場合、前者はネスチン遺伝子発現のレベルの1/3であるが、しかし2.5倍高いDcx発現及び55倍高いGFAP発現を有し、並びにより高いレベルのMAP2、CNPase及びrGAP発現(それぞれ、1.5、3.5及び3倍)を有した。ヒトGAP(huGAP)mRNAが非接着条件下で、単独で培養されるMSCにおいて検出されたが、しかしそのレベルは、同数の細胞が神経細胞と共に共培養される場合、劇的に低められた(それぞれ、17.2及び3.1倍)。より低い用量のMSCは、定量限界以下であるhuGAP発現レベルを示した。これは、非接着性条件との組み合わせの神経細胞環境が間葉細胞の増殖のために好ましくなく、そしてそれらはより低いプレート用量で生存しなかったことを示唆する。それにもかかわらず、神経成長を刺激するそれらの能力は持続した。
【0121】
bFGF及びEGFの不在下で培養された皮質細胞においては、すべての神経マーカーの遺伝子発現は、ラットGAPの発現のように、低かった。MSCとの共培養においては、すべてのマーカーの発現は、大部分のMSCが共培養において死滅している事実にもかかわらず、及び単独で培養される場合(huGAPレベルにより示される場合)、用量依存的に高められた。
【0122】
類似する結果が、MSCの代わりにSB623細胞を用いて得られた。それらの結果は、ECM上での共培養において観察される間葉細胞の刺激的効果は、ECM自体によるものではないことを示す。
【0123】
実施例9:接着条件の効果
共培養における神経細胞の分化に対する接着条件の効果を評価した。このために、神経細胞を、SB623細胞由来のECM被覆されたプレート、オルニチン/フィブロネクチン-被覆されたプレート、及びUltra Low Attachment (ULA)プレート (Corning, Lowell, MA)上で、MSCと共に共培養した。オルニチン/フィブロネクチン-被覆されたプレートは、MSCの接着を支持した。ULAプレート上で、神経細胞を、5倍高い濃度のMSC(ECM又はオルニチン/フィブロネクチン上での共培養と比較して)、又は各20ng/mlの線維芽細胞増殖因子-2(FGF2)及び上皮増殖因子(EGF)の何れかと共に培養した。
【0124】
オルニチン/フィブロネクチンコーティング(Orn/FN)を、PBS中、15μg/mlのポリ-L-オルニチン(Sigma-Aldrich)を有するウェルを、37℃で一晩インキュベートし、次にウェルを3度洗浄し、続いてPBSと共に37℃で一晩インキュベートすることにより調製した。この後、ウェルを、PBS中、1μg/mlのウシフィブロネクチン(Sigma-Aldrich)と共に3~30時間インキュベートし、そして細胞をプレートする前に1度洗浄した。
【0125】
ラット皮質細胞及びヒトMSCの混合された懸濁液(10:1の比での神経細胞/MSC、1.5×104/cm2)を、SB623細胞ECM-被覆されたプレート、及びオルニチン/フィブロネクチン-被覆されたプレート上にプレートした。5倍高い濃度のMSC、又はFGF2及びEGFの何れかと共に混合された神経細胞(上記のようにして)を、ULAプレート上にプレートした。マーカー発現を、共培養の5又は7日に、qPT-PCRによりアッセイした。
【0126】
結果を
図7に示す。ECM上でMSCと共に共培養された神経細胞は、すべての他の条件と比較して、有意に高いレベルのGFAPを発現した。ECM-被覆されたプレート上でのネスチン発現は、Orn/FNにより被覆されたプレート上でよりも有意に高く、そして組換えサイトカインにより刺激されるか、又は高濃度のMSCと共に共培養された、ULAプレート上で培養された細胞において観察される発現に類似した。7日間で、ECM上で増殖された共培養物においては、ラットネスチン及びGFAP発現レベルはOrn/FNよりも有意に高い一方で、ラットDCX、CNP及びヒトGAP発現レベルは類似した。ECM上で増殖された共培養物は、非接着性共培養物よりも、GFAP及びDCXの有意に高い発現を示した。
【0127】
非接着性増殖(ULAプレート上での)は、huGAPレベルが、ECM及びOrn/FN-被覆されたプレートと比較して、ULAプレート上で5倍高いMSC濃度にもかかわらず、非常に低かった。非接着性条件下で、FGF2/EGF及びMSCは、類似するレベルのNes及びCNPase発現を支持した。
【0128】
要約すると、ECM-被覆されたプレート上で増殖された神経細胞及びMSCの共培養はOrn/FN上での又はULAウェルにおける共培養と比較して、最も多様な神経細胞集団を含んだ。特に、ECM上での共培養は、FGF2/EGF-駆動のスフェロイドにおけるネスチン発現に比較できるレベルのネスチン発現を支持し、そしてまた、試験される何れかの条件下で最高レベルのGFAP発現を支持した。
【0129】
実施例10:ヘパリン硫酸プロテオグリカンの役割
前述の実施例に記載されるように、豊富なネスチン-発現細胞に対するECMの肯定的効果を考慮して、ネスチン発現に対するヘパリン硫酸プロテオグリカン成分の効果を調べた。
【0130】
それらの実験に関しては、プレートを、上記のように、SB623ECMにより被覆し、次にECMを、10mMのHEPES、pH7.4、100mMのNaCl及び4mMのCaCl
2中、ヘパリナーゼ1(Sigma-Aldrich)の溶液により、室温で一晩処理し、そして1度、洗浄した。ヘパリナーゼ濃度は、
図8に示されている。
【0131】
ラット皮質細胞を、ヘパリナーゼ処理されたECMを含むプレート上で培養した。培養の5日後、ネスチン発現を、qRT-PCRによりアッセイした。
図8に示される結果は、ヘパリナーゼによるECMの処理がネスチン発現のヘパリナーゼ用量依存性低下をもたらすことを示す。結果から、ヘパリン硫酸がネスチン-発現神経細胞の増殖に寄与することが結論づけられ得る。
【0132】
実施例11:MSCによる増殖因子及びサイトカインの発現
定量的RT-PCRを用いて、下記表4に示されるように、一定の増殖因子及びサイトカインをコードするmRNAのMSCによる発現を測定した。
【0133】
【0134】
実施例12:サイカイン、増殖因子及び他のタンパク質の神経原性及び/又はグリア原性効果についてのアッセイ
ECM上で培養される神経細胞に、組換え因子を単独で、又は5%MSCならし培地(MSC-CM)と共に添加することにより、MSCにより生成される多くの増殖因子及びサイトカインを、神経発生及びグリア発生を刺激するそれらの能力について試験した。
【0135】
ECMを、培養下でSB623細胞を増殖し、次に培養容器から細胞を洗浄することにより生成した。一次胚性ラット皮質細胞(Brain Bits, Springfield, IL)を、表5に示すように、5%MSCならし培地及び特定の組換えサイトカイン又は増殖因子の存在下でECM上で5又は7日間、培養した。次に、細胞を、種-特異的定量的RT-PCRにより様々なラットニューロン及びグリアマーカーの発現についてアッセイした。それらの結果の要約を表5に示す。
【0136】
【0137】
ニューロン前駆体(ネスチン)、発生期ニューロン(DCX)、オリゴデンドロサイト(CNPase)及び星状細胞(GFAP)についてのマーカーの発現に対する3種の因子(EGF、BMP6及びHB-EGF)の効果を示す定量的結果を、
図9に示す。
【0138】
実施例13:ネスチン発現のアップレギュレーションでのFGF2の役割
線維芽細胞増殖因子-2(FGF2)は、MSCにより分泌され(上記表4)、そして皮質細胞へのFGF2の添加は、ネスチン、MAR2及びCNPaseの発現を刺激した(上記表5)。2種の追加の実験を行い、ネスチン発現の刺激におけるFGF2つの役割を確かめた。最初に、FGF2に対するブロッキング抗体を、神経細胞及びMSCの共培養物に添加した。第二に、MSCならし培地からFGF2を枯渇し、そしてそれを、神経細胞培養物に添加した。
【0139】
最初の実験のために、次の2種の抗体:bFM1(ラット及びヒトFGF2の両者を認識するFGF2中和抗体)及びbFM2(FGF2-特異的非中和抗体)(両者は、Millipore, Billerica, MAから入手された)を用いた。ラット皮質細胞を、200個の細胞/ウェルの濃度でのMSCの存在下、又はその不在下で、5,000個の細胞/ウェルの濃度で培養した。抗体を、0.2μg/mlの濃度で、皮質細胞及びMSCの共培養物に添加した。
【0140】
この分析の結果を、
図10に示す。神経細胞のMSCとの共培養は、予測されるように、神経細胞によるネスチン発現を増強する。しかしながら、共培養が抗FGF2中和抗体の存在下で実施される場合、ネスチン発現は、バックグラウンドレベル以下に低められた。共培養への非中和抗FGF2抗体の存在は、共培養中の神経細胞におけるネスチン発現のMSC依存性上方制御に対して全く効果を有さなかった。
【0141】
第二の実験に関しては、FGF2枯渇MSC-CM及び対照MSC-CMを次の通りにして調製した。MSC-CMを、抗FGF2中和抗体bFM1と共に、又は対照マウスIgG1と共に、5μg/mlで一晩、4℃で、ロティサリーシェーカー上でインキュベートし、続いてタンパク質A/G-plus Agarose(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を添加し、そして1時間インキュベートした。遠心分離によりビーズを除いた後、上清液を集め、そして減菌濾過した。
【0142】
神経細胞を、追加の添加物を含まないか、又はMSC-CM、FGF2枯渇MSC-CM又は対照の免疫沈澱されたMSC-CMの添加を含むECM-被覆プレート上で5日間培養し、そしてネスチンmRNA発現をqRT-PCRにより測定した。結果を
図11に示す。神経細胞へのMSC-CMの添加は、期待どおり、高められたネスチン発現をもたらした。しかしながら、FGF2枯渇MSC-CMは、ネスチン発現に対する刺激的効果をほとんど有さなかった。非FGF2-特異的抗体を用いて同じ免疫沈澱方法にゆだねられたMSC-CMは、未処理のMSC-CMと同じ程度まで、ネスチン発現を刺激した。
【0143】
それらの結果は、MSC枯渇FGF2が神経細胞においてネスチン誘導を担当できる主要因子であることを示唆し、そしてまた、皮質ECMに基づく培養物における基本的なネスチンレベルが、ラット又はヒト起源のいずれかのFGF2に依存したことも示唆した。
【0144】
実施例14:星状細胞成長におけるMSC由来因子の役割
間葉幹細胞の効果を、ECM被覆プレート上での神経細胞培養におけるネスチン及びGFAPの発現に対する間葉幹細胞からのならし培地の効果と比較した。
図12に示されるように、類似するレベルのネスチンmRNAが、ウェル当たり200のMSCにより、及び10%MSCならし培地により誘導された。しかしながら、ならし培地によるGFAP発現の誘導は、細胞自体により誘導されたその発現の誘導よりも低かった。この結果は、星状細胞成長を担当できる成分が、MSC自体におけるよりもMSCならし培地においてあまり豊富ではなかった(そして/又はあまり活動的ではなかった)ことを示唆した。
【0145】
骨形態形成タンパク質-4(BMP4)、すなわちMSCにより分泌される因子(上記表4)は、神経細胞の培養物に添加される場合、GFAPの発現を刺激した(上記表5)。星状細胞発生におけるBMP4の役割を確かめるために、ラット神経細胞及びMSCの共培養を、BMPアゴニスト(ノギン)及び抗BMP4抗体の存在下で行った。R&D Systems (Minneapolis, MN)から得られた組換えヒトノギンタンパク質が、30nm/mlの最終濃度で共培養物に含まれた。ポリクローナルヤギ抗BMP4及び正常ヤギIgG対照を、2μg/mlで共培養に使用した。それらの試薬、及びマウスIgG1イソタイプ対照は、R&D Systems (Minneapolis, MN)から入手された。
【0146】
図13は、BMPアンタゴニストであるノギンがECM被覆プレート上でMSCと共に共培養された神経細胞におけるGFAP発現の誘導を阻害したことを示す。MSCによるGFAP誘導の部分的阻害はまた、神経細胞が抗BMP4抗体の存在下でMSCと共に共培養される場合、観察された(
図13)。
【0147】
タンパク質A/G-plus Agarose(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)の1時間にわたっての添加に続いて、抗BMP4抗体又は対照(ヤギIgG、又は抗体なし)と共に、ロティカリーシェーカー上で4℃で一晩、5μg/mlで、MSC-CMをインキュベートすることにより、MSCならし培地からBMP4を免疫沈澱する試みが行われた。遠心分離によりビーズを除いた後、上清液を集め、そして滅菌濾過した。しかしながら、GFAPレベルは、BMP4枯渇MSC-CMの存在下で培養された神経細胞に比較して、MSC-CMの存在下で培養された神経細胞においては有意な差は認められなかった。それにもかかわらず、抗BMP4抗体は、組換えBMP4により駆動されるGFAP誘導を防ぐことができた。
【0148】
MSCに比べてMSC-CMの低い星状細胞原性活性;抗BMP4中和抗体により処理された共培養におけるGFAPレベルの部分的低下;及びMSC-CMの星状細胞原性活性に対するBMP4免疫枯渇の抗下の欠乏が、一緒になって、活性BMP4星状細胞-誘導活性が細胞-ECM区画(培地においてよりもむしろ)に存在し、又はそれはラット細胞により、生成されることを示唆する。
【0149】
共培養における活性BMP4がMSC又はラット神経細胞により生成されるかどうかを試験するために、MSCによるBMP4の生成を、共培養の前に、siRNAを用いて阻害した。siRNAトランスフェクションに関しては、新しく融解されたMSCを、αMEM/10%FBS下で6ウェルプレート当たり0.4×106個の細胞でプレートした。次の日、細胞を、ON-TARGETplusSMARTプール ヒトBMP4 siRNA、又は25nMでの対照非標的化プールの何れかにより、DharmaFECT(登録商標)1 (すべての試薬はThermo Scientific Dharmacon(登録商標), Lafayette, COからである)を用いて、その製造業者の説明書に従って、トランスフェクトした。次の日、細胞をトリプシン処理し、そしてリフト(lift)し、そしてFBSを添加することにより、トリプシンを阻害した。次に、細胞をNeurobasal培地により2度洗浄し、そして計数した(生存率は通常、95%超であった)。
【0150】
トランスフェクションの後日、等しい細胞数のトランスフェクタントを、ラット皮質細胞と共にプレートし、そして5日間、共培養した。5日目、ラットGFAP mRNAレベル及びヒトBMP4レベルをアッセイした。
図14に示される結果は、BMP4-siRNAによりトランスフェクトされたMSを含む共培養においては、ラットGFAP mRNAレベルが、有意に低められ、そしてヒトBMP4 mRNAは実質的に検出できない一方で;ヒトGAP及びFGF2遺伝子の発現は影響を受けなかったことを示す。GFAPmRNAレベルの低下は、対照siRNAによりトランスフェクトされた細胞においては観察されなかった。それらの結果は、共培養において星状細胞発生の刺激に寄与するBMP4がMSC由来であったことを強く示唆した。
【0151】
結論及び観察
ECM上で、Nes
+細胞の増殖は、免疫染色及びqRT-PCRを用いて示される場合、生存間葉細胞又はそれらのならし培地により、用量依存性的に有意に拡大された一方で、PDL上で、それらの因子に対する応答は低められた(
図1及び5、並びに表2)。これは、Nes
+幹/初期前駆体細胞の増殖が分泌された間葉細胞-由来の因子により刺激され、そして間葉細胞ECM上での増殖により相乗的に増強されたことを示唆する。この相乗効果のための最も可能性が高い機構は、マトリックスプロテオグリカンによる神経細胞への間葉細胞由来の増殖因子の効果的蓄積、保存及び提供である。神経Nes
+細胞の増殖が離れて作用するMSC-由来の可溶性因子により刺激され得る結論は、最近の報告と一致しており、この報告は、マウスMSCと共に共培養されたが、しかし半透膜によりそれらから分離されたマウスニューロスフェアは、高い百分率のKi-67-陽性細胞を有したことを示している[38]。実際、MSCは、インビボでの神経前駆体の維持に関与していることが示されている多くの増殖因子を分泌することが知られており[16、30]、そしてBMP4、FGF2、EGF、VEGF及びPDGF-AAを包含する、それらのいくつかの分泌が本明細書で使用されるMSC及びSB623細胞バッチにおいて確認されている[39]。
【0152】
共培養下での間葉間質細胞は、Nes
+細胞からの神経突起及び新規ニューロン形成の両者を促進した(
図1及び2;表1及び2)。それらの両効果は、MAP2タンパク質(MAP2タンパク質は、ニューロン細胞体及び神経突起の特異的マーカーである)についての免疫染色を用いて観察され:そして組み合わされた効果がMAP2 mRNAについての発現アッセイを用いて定量化された。増強された神経突起形成及び増加した数のNes
+MAP2
+細胞が、間葉細胞の存在下で、ECM及びPDLの両者上に観察され、これは、神経突起形成及びニューロン形成の両者の可溶性メディエーターがそれらの効果のためにはECMが必要でないように見えることを示唆する。実際、ECM又はPDLに基づく培養物へのMSC-CMの添加は、生存細胞の添加と同じように、効果的にMAP2遺伝子発現を高めた(表2)。MSCの神経突起形成効果は、異なった起源のニューロンに、これまで観察されている[16、23、40、41]。
【0153】
MSC及びSB623を包含する間葉細胞は、共培養下で、ほぼ7日間、二重陽性Nes
+NAP2
+細胞の大規模な出現により示されるように、ECM上での新規ニューロンの形成を高めた(
図1、9日目に示される)。間葉細胞の不在下で、それらの二重陽性細胞は、後で及び少数で出現した。ラットMAP2 mRNA発現アッセイは、ESM及びPDL上で類似する、5日目から出発する(
図5)MSC-用量-依存的ンシグナルの有意な上昇を示した(表2)。この上昇は新生ニューロンの出現に先行しているので、MAP2遺伝子発現のMSC用量-依存性上昇は恐らく、神経芽細胞の増殖に影響を及ぼした。ラットダブルコルチン(rDcx)、すなわち増殖ニューロンのマーカーについてのmRNAのレベルの測定は、MAP2発現についてのそれらのレベルに類似し(示されていない)、このことは、rDcxが恐らく、MAP2のように、新生及び成熟ニューロンの両者において発現されることを示唆する。
【0154】
本明細書において使用されるプレーティング密度で、GFAP発現はECMに基づく培養の特徴であり、そしてPDLに基づく培養には不在であった。GFAPタンパク質染色は、ほぼ7日目でのNes
+糸状又は平坦な星状形の細胞においてネスチンフィラメントについての染色と密接に関連していた(
図3A及び3B)。いくつかの丸型のNes
+細胞は観察されたが、GFAPはPDLに基づく培養においては出現せず、ここでこの形態を有する細胞は非常に希であった。ECM上では、生存間葉細胞の存在はGFP発現を非常に促進した一方で、MSC-CMの存在はあまり効果的ではなく(
図3A及び表1)、このことは、星状細胞分化を促進する因子は恐らく短命であったことを示唆する。同様の結果(肝臓MSCによってよりもMSC-CMによるGFAPのより弱い誘導)が、低密度でプレートされたMSCが、EGF及びbFGFの存在下で成人海馬ニューロスフェア-由来の神経幹細胞と共に共培養される別のシステムで報告されている[26]。このシステムによれば、細胞がポリ-オルニチン/ラミニン又はポリ-リシン/ラミニン-支持体上に播種され;しかしながら、それらの支持体はまた、短時間、10%血清に暴露され、MSC接着を可能にされ、これがコーティングへの血清フィブロネクチンの添加を可能にする。星状細胞を培養するための最も一般的なプロトコールは、培地の10%FBSを含み、これがインビトロでの星状細胞発生のための複雑な「ECMコーティング」の必要性を隠すことができる。本明細書に記載される無血清システムは、この可能性を示唆している。
【0155】
PDL上でのGFAP
+細胞増殖の欠如のために、可溶性の短命の星状細胞-誘導因子がそれらのシグナル伝達のためにECMを必要としたか、又は未熟な場合、丸型のNes
+細胞が誘導因子のための受容体を単純に発現しなかったかどうかは、明確ではない。実際、間葉細胞由来の因子TGFβ、HGF及びBMPは星状細胞発生の促進に関与し[26、43~45];すべてのそれらの因子は、それらの不活性形でECM-結合し、そしてECMから放たれる場合、短い寿命を有している。アストログリア分化のための間葉細胞由来の可溶性及び不溶性因子の重要性の別の実例は、非接着性培養の観察に由来する(
図7)。すべての他の試験された分化マーカーの中で、GFAP遺伝子発現は、EFG及びFGF2の存在下で形成されるニューロスフェアに比較して、MSCの存在下で形成されるニューロスフェアにおける最も劇的な上昇を示した。
【0156】
ECM上で、GFAPを発現しなかった星状細胞様Nes
+細胞を観察した(
図3C)。それらの形態は、それらがラットにおいてGFAP-陰性である、成熟神経幹細胞をゆっくり分割する放射状グリアを表すことを暗示した[46~48]。この独自性はまた、表現型解析により確かめられ得、そして確かめられたなら、本明細書に記載されるアッセイは、MSCに応答してそれらの成熟幹細胞の挙動を観察するために使用され得る。
【0157】
オリゴデンドロサイト分化を、初期オリゴデンドロサイトマーカー、すなわちミエリン-プロセッシング酵素CNPaseを用いて観察し、前記酵素の発現は典型的には、O4発現に続き、そしてミエリン塩基性タンパク質(MBP)の発現に先行する[49]。本明細書に記載される実験においては、CNPaseタンパク質の出現は、そのmRNAの出現の後、比較的遅く検出されるが、しかしMSC又はSB623細胞の存在により促進された(
図4)。定量化可能な発現レベルのCNPase mRNAがかなり早い時期に検出され、そして直接的に、MSC用量依存的であった(
図5)。しかしながら、用量-依存曲線は、二相になり(
図6A)、そして最終的に逆転した。ラットCNPase発現はすべての培養物において時間と共に上昇し続けたが、後の時点で、高い用量よりもむしろ低い用量のMSC又はSB623細胞が全体的に高いレベルのCNPase mRNAを誘導したように見えた。タンパク質染色がこの発見を確認し、そして少数のSB623細胞が、間葉幹細胞よりも10倍、より強いCNPase染色を誘導した一方で、両用量は、分割するCNPase-陽性細胞の数を増大させた(
図6B)。
【0158】
それらの結果は、オリゴデンドロサイト分化の細胞密度依存性阻害の存在を示すが;しかしながら、間葉細胞が直接的に又は間接的に応答できるかどうかは不明である。オリゴデンドロサイト前駆体の拡張及び分化は、細胞密度により調節され[50、51]、そしてその調節機構は未知であるが、広範囲の拡散性因子よりもむしろ局所的な細胞間相互作用が関与することが報告されており;そしてその効果は細胞種特異的であり、すなわちそれはオリゴデンドロサイト系統により特異的に介在されたことが報告されている[50]。本明細書に記載されるアッセイの結果は、より高い用量の間葉細胞が初期のオリゴデンドロサイト前駆体の増殖を高めることにより、間接的にオリゴデンドロサイト分化を阻害する可能性と一致している。ECM上で、MSC-CMは、生存細胞よりも3倍以上高いCNPase発現を誘導し(表2)、そしてはるかに低いGFAP発現がそれらの条件下で検出された。それらの観察は、オリゴデンドロサイトと比較して、星状細胞についての増殖速度と分化速度との間の、及び増殖バランスと分化バランスとの間の相互作用を示唆する。本明細書に開示されるデータはまた、ECM自体がオリゴデンドロサイト増殖及び分化の促進において役割を演じることができる概念を支持する[52]。実際、PDL上で、さらにMSC又はMSC-CMの存在下で、CNPase発現レベルは低く、そしてタンパク質は、2週間にわたって検出されない一方で、ECM上で、タンパク質は、他の添加剤の不在下でさえ検出された。
【0159】
本明細書に開示される方法及び組成物は、混合された異種間共培養物中の試験物質の神経新生活性の定量分析を可能にする。このシステムにおいては、間葉細胞由来のECMが接着性共培養のための支持体として使用され;神経細胞が外部増殖因子なしで、開始から最後まで、同じマイクロ環境下で培養され;一次神経細胞及び試験物質(例えば、MSC調製物)が、低細胞プレーティング密度で直接的に共培養される。このシステムは、分泌された、分散性細胞関連及びマトリックス関連因子の分析を可能にする。分析は、マイクロプレート形式下で、全溶解物からの神経マーカーについてのqRT-PCRに基づく読み出しを用いて、実施され得る。
【0160】
間葉細胞由来のECMを、ヒトMSC由来のECM、及びSB623細胞由来のECMが、比較的低い細胞プレーティング密度で及び増殖因子の不在下で、ラット胚性脂質細胞の増殖及びニューロン及びグリア系統への続く分化を、高い程度、可能にする以前の観察[28]に基づいて、神経細胞共培養のための支持体として選択した。ECMコーティングがネスチン陽性細胞増殖のための好ましい環境を創造したことが本明細書に開示されている。ECMの一体型ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は、ECMのヘパリナーゼ1前処理が、対照-処理されたウェルと比較して、培養でのネスチンレベルを減じたので、重要であった。HSPGの役割は、FGF2シグナル伝達の関与を示唆した。実際、FGF2をブロックする抗体は、対照抗体ではないが、神経培養において基礎レベル以下にネスチン発現を低めた。これは、FGF2がECMに基づく培養において重要な役割を演じることを示唆する。FGF2(ラット又はヒト起源の、又は両者の)は、神経幹/初期前駆体細胞の生存性及び遅い増殖を支持し、そして接着性培養の続く分化を可能にする生理学的刺激を提供することができる。最近の報告は、血管外基底層(画分(fractones))の形態でインビボ神経幹細胞ニッチの一体型部分として間葉細胞-由来のECMを特定し、そしてそのHSPGがFGF2の蓄積を示唆した[31,32]。この観察は、幹細胞ニッチをモデル化するために培養する神経細胞のためへの間葉ECM支持体の使用を正当化する。本明細書に開示されるほとんどの結果は、SB623細胞由来のECMを用いて得られたが、MSC-ECMに基づくシステムもまた、長い培養時間であるが、類似する結果をもたらす。
【0161】
皮質細胞集団が増殖因子又は他の試験物質の不在下でECM上で増殖される場合、分化したグリア細胞が2~3週で検出される[28]。MSCの存在下で、神経細胞集団は、MSC用量依存態様で、有意により急速に増殖し、そして分化した(実施例を参照のこと)。本明細書に記載される種特異的qRT-PCR読み取り法は、5000のラット神経細胞当たり50程のヒトMSCの存在下でラット神経マーカーの誘導を検出できる。神経マーカー発現のレベルは、共培養におけるいくつかの工程の累積結果を反映した。例えば、全ネスチン発現におけるMSC駆動の上昇(
図2)は、細胞性細胞拡張の増大のために、細胞当たりの発現の増加、Nes
+幹細胞(Nes
+コロニー及び分裂するNes
+細胞)の数の上昇、及びNes
+MAP2
+未熟前駆体の数の上昇を反映した(実施例1)。1日目での共培養において顕著なMAP2又はDCX発現のMSC駆動の上昇(
図1)は、恐らく、MSC増強された神経突起形成の結果である(実施例1及び[15、22、33、34])。ニューロンマーカーの第二の上昇が、MAP2及びネスチンタンパク質の両者を共発現する細胞の大規模な出現に先行して、後の時点(6~7日目で)で観察された。それらの結果は、ニューロスフェア起源の神経前駆体の増殖、及びニューロン分化に対するMSCの刺激効果を示す[23~25]、これまでの報告と一致する。
【0162】
MSCは、インビボで神経前駆体及び神経分化の維持に関与することが示されている多くの増殖因子を分泌することが知られており[35に概説される]、そしてBMP4、FGF2、FGF、VEGF及びPDGF-AAを包含するそれらのいくつかの分泌が、本明細書において使用されるいくつかのMSCにおいて確認されている(30、及び共同所有の米国特許出願公開番号第2010/0266554号)。ブロッキング実験は、MSC-生成されたFGF2は共培養におけるMSC駆動のネスチン誘導を担当できる主要因子であったことを示した(実施例13)。ネスチン誘導活性はまた、MSC-CMにより効果的に移され得;そしてその約85-90%がFGF2の免疫沈澱によりMSC-CMから除かれ得た。神経幹細胞の維持におけるFGF2の決定的役割は良く知られているが(36,37に概説される);しかし、本明細書に記載される結果は、MSC駆動のネスチン誘導へのMSC駆動のFGF2の寄与が他の可能性ある寄与物を圧倒したことを示している。
【0163】
無血清条件下での星状細胞発生の誘導(GFAP発現として測定される)は、E18皮質細胞のECMに基づく培養の顕著な特徴である。GFAPタンパク質染色は、ほぼ7日目のネスチンフィラメントについての染色に密接に関連する(実施例2)。さらに、Nes+細胞拡張を付随するネスチンフィラメントの形成は、GFAP誘導がNest+細胞拡張を支持しなかった他の支持体上で観察されなかったので、星状細胞分化のための前提条件であると思われた(38)。MSCはGFAP発現を非常に促進した。ノギン、すなわちBMP活性の負のレギュレーターは、共培養においてGFAP誘導の約90%を阻害したので、BMPは、この効果の主要メディエーターであることが本明細書において見出された。BMP4はMSCにおいて多量、発現された(39、及び表4)。ヒトBMP4を阻止する抗体は、GFAP誘導の約60%排除し、このことは、ヒトBMP4が主要な星状細胞発生BMPであったことを示唆する。BMP4は、マウスニューロスフェアとの共培養における特別に誘導されたラットMSCの星状細胞原性効果の介在に関与した(40)。実施例14は、MSC-CMが、これまでの報告(25)と一致して、MSCよりも低い星状細胞原性であったことを示す。MSC-CMの星状細胞原性残留活性は、BMP4の免疫枯渇により除去されず;これは、BMP4が星状細胞原性残留活性を担当できず、又はそれが不活性形で存在したことを意味する。しかしながら、対照siRNAによってではなく、BMP4-siRNAによりトランスフェクトされたMSCは、共培養にプレートされる場合、星状細胞原性活性が減少した一方で、FGF2発現はトランスフェクションにより変更されなかったことを示す(実施例14)。まとめると、それらの結果は、MSCの星状細胞原性活性がBMP(特に、ヒトBMP4)により一部、介在されており、そして活性BMP4がECMに関連するか又は接着されており、そして培地中に分泌されなかったことを示唆する。それらの結果は、共培養におけるブロッキングTGFβ1は星状細胞発生の阻害をもたらさなかったが、他のMSC-来の因子、例えばTGFβが関与した(25、42)可能性を排除しない。
【0164】
オリゴデンドロサイト分化を、初期オリゴデンドロサイトマーカー、すなわちミエリン-プロセッシング酵素CNPaseを用いてモニターし、この酵素の発現は典型的には、O4発現に続き、ミエリン塩基タンパク質の発現に先行し、そして成熟工程を通して上昇する(43)。以前の報告(24、44、45)と一致して、本明細書に記載される共培養におけるオリゴデンドロサイト発生は明確にMSC依存性であり;しかしながら、MSC用量応答のタイミングは、星状細胞発生のタイミングとは異なった。共培養の5日目、MSC用量とCNPase発現のレベルとの間に直接的な関係が存在し;一方、7日目、上昇する用量のMSCによるCNPase活性化はプラトーに達し、これを越えるMSC用量のさらなる上昇がより低い活性化レベルをもたらした(
図5)。オリゴデンドロサイト前駆体の拡張及び分化は、細胞密度により調節されることが知られている(46)。正確な細胞密度調節機構は未知であるが、オリゴデンドロサイト系統の細胞間の局所的な細胞間相互作用が関与していることが報告されている(47)。CNPase発現の同じ二相性用量応答が、MSCからの高い用量のならし培地で観察され、このことは、高MSC用量での活性化レベルの逆転が高濃度の間葉細胞の存在にはよらないことを示唆する。逆に、高用量のMSCは、オリゴデンドロサイト前駆体の増殖の誘導において非常に効果的であり;前駆体はより急速に高密度に達し、そしてそれら自身の分化(CNPaseのさらなる蓄積)を、より早く抑制した。
【0165】
一次神経細胞集団に対する試験物質の効果の定量的多因子分析を可能にするインビトロシステムが本明細書に開示される。このシステムは、複雑さ、及び一次細胞集団の本質的相互作用のいくつかを保持する。このシステムは、可溶性細胞関連及び/又はマトリックス-結合神経新生因子を同定し、そして定量化するために使用され得、そしてそれぞれ、ニューロン及び星状細胞成長における可溶性FGF2及び細胞関連又はマトリックス-結合BMP4の重要性を示すために使用されている。最終的に、該システムは、種々のロットのMSC又はそれらの誘導体(例えば、SB623細胞)の効力を比較するために、及びMSCに対する神経集団の効果を研究するために使用され得る。
【0166】
本明細書において提供されるデータは、SB623細胞がそれらの親MSCよりも、より効果的に初期神経前駆体の増殖及び分化を誘導できることを示唆する。
【0167】
要約すると、本発明者らは、神経細胞増殖及び分化の種々の段階での物質(例えば、MSC、SB623細胞及びそれらの生成物)の効果のイメージング及び高処理量定量化を可能にするインビトロシステムを記載してきた。このシステムは、多くの分化プロセス、例えばMSC/神経細胞相互作用の研究を促進し、そして神経再生細胞に基づく治療のための効能アッセイのための基礎として役立つであろう。
【0168】
さらに、FGF2の神経原性効果、及びBMP4の星状細胞原性効果が実証されてきた。従って、FGF2及びBMP4は、中枢又は末梢神経系の疾病、障害又は病状の治療に使用のために、神経前駆体細胞、又は共同所有の米国特許第7,682,825号に記載される何れかの神経細胞の代わりに使用され得る。そのために、米国特許第7,682,825号の開示は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。さらに、FGF2及びBMP4は、中枢神経病変(例えば、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)の治療に使用のために、ニューロン前駆体細胞、MASC由来のニューロン細胞、又は共同所有の米国特許第8,092,792号に記載される何れかの移植片形成ユニットの代わりに使用され得る。このために、米国特許第8,092,742号の開示は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
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