(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】蛍光イメージングのためのIR色素
(51)【国際特許分類】
A61K 49/00 20060101AFI20220117BHJP
C07D 209/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
A61K49/00
C07D209/02
(21)【出願番号】P 2020036477
(22)【出願日】2020-03-04
(62)【分割の表示】P 2017527921の分割
【原出願日】2015-11-23
【審査請求日】2020-04-02
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516360476
【氏名又は名称】リ-コール,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アール.ドラネイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エム.ボルチェック
(72)【発明者】
【氏名】ケイティ シェペ
(72)【発明者】
【氏名】バシル エリッツィン
(72)【発明者】
【氏名】ジョイ コバー
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 49/00-51/12
C07K 209/00-209/96
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断的有効量の式2の化合物である2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネートまたはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを含む肝臓胆道イメージングにおいて使用するための医薬組成物であって、
式2の化合物は、以下の構造:
【化1】
を有し、
投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施され;
対象の肝臓系の組織が電磁放射線に曝され;そして
前記化合物からの蛍光放射線が検出される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記投与は静脈内投与により実施される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬的に許容されるカチオンは、カリウムまたはナトリウムからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物は、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記投与は、前記化合物の量が約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
投与後の期間、対象の肝臓系の組織に残存する投与した化合物の蛍光強度を測定することを更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
測定した投与後の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記処置は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、および開腹処置からなる群より選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
投与後約6時間まで、肝臓における投与した化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した化合物の蛍光強度の測定値よりも高い、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
診断的有効量の式2の化合物である2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネートまたはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを含む肝臓胆嚢管イメージングにおける使用のための医薬組成物であって、
式2の化合物は、以下の構造:
【化2】
を有し、
投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施され;
対象の肝臓系の組織を電磁放射線に曝され;そして
前記化合物からの蛍光放射線が検出される;前記医薬組成物。
【請求項11】
前記投与は静脈内投与により実施される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬的に許容されるカチオンは、カリウムまたはナトリウムからなる群より選択される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物は、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与される、請求項10~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記投与は、前記化合物の量が約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、又は、
前記投与は、前記化合物の量が約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる診断的有効量で実施される、請求項10~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
投与後の期間、対象の肝臓系の組織に残存する投与した化合物の蛍光強度を測定することを更に含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
測定した投与後の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記処置は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、および開腹処置からなる群より選択される、請求項10~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
投与後約6時間まで、肝臓における投与した化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した化合物の蛍光強度の測定値よりも高い、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
診断的撮像量の式2の化合物である2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネートを含む医薬組成物であって、
式1の化合物は、以下の構造:
【化3】
を有する、前記医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物は、静脈内(IV)バッグ内に含まれる、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項19
又は20に記載の医薬組成物および説明文書を含むキット。
【請求項22】
式2の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート:
【化4】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを含む物質の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2014年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/084,971号の優先権を主張し、その教示はすべての目的のためにその実体において参照により本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、蛍光イメージングの方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
従来の腹腔鏡検査およびロボット腹腔鏡検査技術は、結腸直腸手術および婦人科手術の分野において急速に成長している。Simorov et al., “Laparoscopic colon resection trends in utilization and rate of conversion to open procedure: a national database review of academic medical centers” Ann Surg. 2012 256(3)、462-468; Wright et al., “Robotically assisted vs laparoscopic hysterectomy among women with benign gynecologic disease” JAMA 2013 309(7)、689-698;及び、Park et al., “Ureteral injury in gynecologic surgery: a 5-year review in a community hospital” Korean J. Urol. 2012 53(2)、120-125に記載される近年の研究では、全結腸直腸切除の42%および婦人科的処置の30%超がこの方法で試みられると報告している。
【0005】
下記の文献に記載のように、腹腔鏡的なアプローチは、術後の痛みの減少、病院の滞在期間の短縮、外科手術部位の感染の減少、病院全体のコストの削減など、従来の開腹手術に比べていくつかの利点をもたらす。Kiran et al., “Laparoscopic approach significantly reduces surgical site infections after colorectal surgery: data from national surgical quality improvement program” J Am Coll Surg. 2010 211(2) 232-238; Bilimoria et al., “Laparoscopic-assisted vs. open colectomy for cancer: comparison of short-term outcomes from 121 hospitals” J Gastrointest Surg. 2008 12(11) 2001-2009; Juo et al., “Is Minimally Invasive Colon Resection Better Than Traditional Approaches?: First Comprehensive National Examination With Propensity Score Matching” JAMA Surg. 2014 149(2) 177-184; Wilson et al., “Laparoscopic colectomy is associated with a lower incidence of postoperative complications compared with open colectomy: a propensity score-matched cohort analysis” Colorectal Dis. 2014 16(5) 382-389; Kobayashi et al., “Total laparoscopic hysterectomy in 1253 patients using an early ureteral identification technique” J Obstet Gynaecol Res. 2012 38(9) 1194-1200;及び、Makinen et al., “Ten years of progress--improved hysterectomy outcomes in Finland 1996-2006: a longitudinal observation study” BMJ Open 2013 3(10) e003169。
【0006】
しかしながら、触覚および2次元画像では限界があるため、医原性尿管損傷をもたらす可能性がある。まれではあるが、腹腔鏡による尿管損傷は死亡率が高い重大な合併症である。報告では、Park et al.; Palaniappa et al., “Incidence of iatrogenic ureteral injury after laparoscopic colectomy” Arch Surg. 2012 147(3), 267-271; 及び da Silva et al., “Role of prophylactic ureteric stents in colorectal surgery” Asian J Endosc Surg. 2012 5(3), 105-110に記載のように、結腸直腸手術および婦人科手術における発生率は0.1~7.6%で、そのうちの80%以上が術中に発見できないものである。術中に尿管を同定するための現在の技術には、尿管ステント留置、X線透視法、および可視色素が挙げられる。しかし、下記の文献に記載のように、ステントと蛍光透視法の両者が患者にさらなるリスクをもたらしたり、可視色素の感受性があまり高くないことがある:Tanaka et al., “Real-time intraoperative ureteral guidance using invisible near-infrared fluorescence” J Urol. 2007 178(5)、2197-2202; Bothwell et al., “Prophylactic ureteral catheterization in colon surgery. A five-year review” Dis Colon Rectum. 1994 37(4)、330-334; Wood et al., “Routine use of ureteric catheters at laparoscopic hysterectomy may cause unnecessary complications” J Am Assoc Gynecol Laparosc. 1996 3(3)、393-397;及び、Brandes et al., “Diagnosis and management of ureteric injury: an evidence-based analysis” BJU Int. 2004 94(3)、277-289。
【0007】
シアニン色素を用いた蛍光イメージングは、外科ナビゲーションを支援し、解剖学的構造のリアルタイム照射をもたらすべく急成長している分野である。下記の文献に記載のように、700~900nmの範囲の照射だと、組織の自己蛍光による妨害を避けることができ、約1cmの組織に照射することができる。Adams et al., “Comparison of visible and near-infrared wavelength-excitable fluorescent dyes for molecular imaging of cancer” J Biomed Opt. 2007 12(2)、024017; 及び、Keereweer et al., “Optical Image-Guided Cancer Surgery: Challenges and Limitations” Clin Cancer Res. 2013 19(14)、3745-3754。
【0008】
蛍光イメージングの別の用途として、胆道(biliary duct)および胆嚢管(cystic duct)を含む胆嚢系の解剖学的構造のリアルタイムの術中イメージングがある。現行の方法では、手術前にインドシアニングリーン(ICG)色素を胆道内注入または静脈注射のいずれかによって使用することが多い。しかしながら、研究によりICG色素を用いる明らかな問題が示された。これらの問題として、胆汁への排泄効率および動態の悪さ(Tanaka et al., “Real-time intraoperative assessment of the extrahepatic bile ducts in rats and pigs using invisible near-infrared fluorescent light” Surgery 2008 144(1) 39-48)、患者に対する有害反応(Benya et al., “Adverse reactions to indocyanine green: a case report and a review of the literature” Cathet Cardiovasc Diagn. 1989 17(4) 231-233)が含まれる。
【0009】
非侵襲的に内部標的を検出および測定するために感受性の高い組成物および方法が必要とされている。具体的には、腹腔鏡手術またはロボット手術中に生じる可能性がある様々な臓器に対する損傷を検出するための改善された安定なシアニン色素の必要性が存在する。本発明は、これらその他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0010】
一つの実施形態では、本発明は、腎臓尿管(kidney ureter)イメージングのための方法であって、診断的有効量の式1の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-(4-スルホナトフェノキシ)シクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート化合物:
【化1】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、を対象に投与すること、ここで、当該投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施される;対象の腎臓系の組織を電磁放射線に曝すこと;並びに、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を包含する。
【0011】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を静脈内投与により投与することを含む。
【0012】
一つの実施形態では、上記方法は、上記医薬的に許容されるカチオンがカリウムまたはナトリウムからなる群より選択される式1の化合物を投与することを含む。
【0013】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与することを含む。
【0014】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0015】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0016】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0017】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0018】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0019】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0020】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の腎臓系(renal system)の組織に残存する投与した式1の化合物の蛍光強度を測定することを含む。いくつかの態様では、上記方法は、尿または胆汁における式1の化合物を可視化する。
【0021】
一つの実施形態では、上記方法は、測定した投与後の式1の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光であることを含む。
【0022】
一つの実施形態では、上記方法は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、および開腹処置からなる群より選択される処置を含む。
【0023】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後約6時間まで、腎臓における投与した式1の化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した式1の化合物の蛍光強度の測定値よりも高いことを含む。
【0024】
一つの実施形態では、本発明は、式1の形態Aである固体形態(多形体)を提供する。式1の形態Aは、2θによるピークが約4.3°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Aは、2θによるピークが約4.3°、約9.6°、約12.9°、約18.3°、及び約20.8°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Aは、実質的に
図1Eに示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0025】
一つの実施形態では、本発明は、胆道(biliary duct)イメージングのための方法であって、式1の化合物を対象に投与すること;および、前記化合物からの蛍光放射線を検出することを含む前記方法を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、実質的に表2に示すピークを含むXRPDパターンをもたらす式1の化合物の多形体または固体形態(形態A)を提供する。
【0027】
一つの実施形態では、本発明は、式1の形態Bである固体形態(多形体)を提供する。式1の形態Bは、2θによるピークが約21.2°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Bは、2θによるピークが約5.3°、約14.2°、約14.3°、約20.7°、及び約21.2°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Bは、実質的に
図1Hに示すX線粉末回折パターンを有する。
【0028】
一つの実施形態では、本発明は、肝臓胆道(liver biliary)イメージングのための方法であって、診断的有効量の式2の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート:
【化2】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、を対象に投与すること、ここで、当該投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施される;対象の肝臓系の組織を電磁放射線に曝すこと;並びに、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を包含する。
【0029】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を静脈内投与により投与することを含む。
【0030】
一つの実施形態では、上記方法は、上記医薬的に許容されるカチオンがカリウムまたはナトリウムからなる群より選択される式2の化合物を投与することを含む。
【0031】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与することを含む。
【0032】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0033】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0034】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0035】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0036】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0037】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0038】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の肝臓系の組織に残存する投与した式2の化合物の蛍光強度を測定することを含む。
【0039】
いくつかの態様では、上記方法は、尿または胆汁における式2の化合物を可視化する。
【0040】
一つの実施形態では、上記方法は、測定した投与後の式2の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光であることを含む。
【0041】
一つの実施形態では、上記方法は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、および開腹処置からなる群より選択される処置を含む。
【0042】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後約6時間まで、肝臓における投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値よりも高いことを含む。
【0043】
一つの実施形態では、本発明は、肝臓胆嚢管(liver cystic duct)イメージングのための方法であって、診断的有効量の式2の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート:
【化3】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、を対象に投与すること、ここで、当該投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施される;対象の肝臓系の組織を電磁放射線に曝すこと;並びに、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を包含する。
【0044】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を静脈内投与により投与することを含む。
【0045】
一つの実施形態では、上記方法は、上記医薬的に許容されるカチオンがカリウムまたはナトリウムからなる群より選択される式2の化合物を投与することを含む。
【0046】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与することを含む。
【0047】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0048】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0049】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0050】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0051】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0052】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0053】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の肝臓系の組織に残存する投与した式2の化合物の蛍光強度を測定することを含む。
【0054】
一つの実施形態では、上記方法は、測定した投与後の式2の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光であることを含む。
【0055】
一つの実施形態では、上記方法は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、および開腹処置からなる群より選択される処置を含む。
【0056】
一つの実施形態では、本発明は、腎臓尿管イメージングのための方法であって、式2の化合物を対象に投与すること;および、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を提供する。
【0057】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後約6時間まで、肝臓における投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値よりも高いことを含む。
【0058】
一つの実施形態では、医薬組成物は、診断的撮像量の式1の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0059】
一つの実施形態では、診断的撮像量の式1の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む上記医薬組成物は、静脈内(IV)バッグ内に含まれる。
【0060】
一つの実施形態では、医薬組成物は、診断的撮像量の式2の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0061】
一つの実施形態では、診断的撮像量の式2の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む上記医薬組成物は、静脈内(IV)バッグ内に含まれる。
【0062】
一つの実施形態では、本発明は、診断的撮像量の式1の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物、並びに説明文書または使用説明書を含むキットを包含する。上記医薬組成物は、静脈内(IV)バッグ内に含まれ得る。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、診断的撮像量の式2の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物、並びに説明文書または使用説明書を含むキットを包含する。上記医薬組成物は、静脈内(IV)バッグ内に含まれ得る。
【0064】
一つの実施形態では、本発明は、式2の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート:
【化4】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを含む物質の組成物を含む。
【0065】
他の実施形態、態様、および目的は、以下の詳細な説明および図面でよりよく理解されるであろう。
【0066】
各図において、800CWは比較例1に記載の化合物に対応し;800BK-スルホネートは、式1の化合物を指し;800BK-NOSは、式2の化合物を指す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A-1D】
図1A-1Dは、種々のサンプルについてのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図1Aおよび1Cに示すサンプルは形態Aを示す。
図1Bは形態Aであるものの結晶性が低い。
図1Dは、結晶形AのXRPDパターンを示す。
【
図1E-1F】
図1E-1Fは、種々のサンプルについてのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図1Eは、結晶形AのXRPDパターンを示す。
図1Fは、非晶質形態のXRPDを示す。
【
図1G-1I】
図1G-1Iは、種々のサンプルについてのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図1Hおよび1Iは、結晶形BのXRPDパターンを示す。比較のために、
図1Gは
図1Dと同一である。
【0068】
【
図2A-2C】
図2Aおよび2Bは、A549細胞(A)およびA431細胞(B)のインビトロ細胞ベースの分析を示す。
図2Cは、インビボイメージング(0.03~1μM)のために調製された各色素の蛍光を濃度の関数として示す。
【0069】
【
図3A-3C】
図3A-Cは、比較例1の化合物(
図3A)、式1の化合物(
図3B)、および式2の化合物(
図3C)のプローブについてマウスの背側蛍光画像を示す。プローブ投与後のおよその時間点(30分、2時間、5時間、および24時間)における画像を示す。すべての動物および臓器の画像収集にPearl(登録商標)Impulseの小型動物イメージングシステムを使用した。
【0070】
【
図4A-4C】
図4A-4Cは、比較例1の化合物(
図4A)。式1の化合物(
図4B)、および式2の化合物(
図4C)のプローブについて同じマウスの腹側蛍光画像を示す。プローブ投与後のおよその時間点(30分、2時間、5時間、および24時間)における画像を示す。矢印は、膀胱の局所膀胱シグナルを示す。白い矢印は胆嚢シグナルを指す。
【0071】
【
図5】
図5は、
図4の比較例1の化合物、式1の化合物、および式2の化合物のプローブの画像に対する全身蛍光強度数を示す。
【0072】
【
図6A-6C】
図6A-Cは、比較例1の化合物(
図6A)、式2の化合物(
図6B)、式1の化合物(
図6C)のマウス臓器の蛍光データを示す。蛍光シグナルは、全プローブの面積(ピクセル)に合わせた(800nm)。
【
図6D】
図6Dは、肝臓、脾臓、腸、脳、心臓/肺、腎臓、脳、および筋肉(
図6D)のマウス臓器の蛍光データを示す。蛍光シグナルは、全プローブの面積(ピクセル)に合わせた(800nm)。
【0073】
【
図7】
図7は、式1の化合物の投与後のマウスにおける尿管、腎臓および膀胱の画像を示す。
【0074】
【
図8A-8B】
図8AおよびBは、選択されたタンパク質の染色電気泳動ゲルのヒストグラムにおけるプローブの蛍光検出を示す図であり、色素の、ヒト(H)、ウシ(B)、オボアルブミン(O)、または5%FBS(ウシ胎仔血清)に対する非特異的または親和性を示す(
図8A)。染色された電気泳動ゲルの蛍光画像において、濃い灰色は試験対象の化合物からのシグナルを表し、薄灰色はタンパク質搭載のクーマシーブルー評価を表し、白色は両方の色が存在する場所を表す(
図8B)。
【0075】
【
図9】
図9は、対照サンプル(プローブなし)、式1の化合物、式2の化合物、およびインドシアニングリーン(ICG)色素についてのマウス尿の蛍光シグナル(800nm)分析を示す。
【0076】
【
図10A-10B】
図10A、10Bは、50 nmoleのICGのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(
図10A)、1 nmoleの式2の化合物のPBS溶液(
図10B)についての胆道画像を示す。各条件について表示された画像化領域は、それぞれ1分、30分、2時間、5時間および24時間(左→右)で記録した。
【
図10C-10D】
図10C、10Dは、、0.5 nmoleの式2の化合物のPBS溶液(
図10C)、および0.1 nmoleの式2の化合物のPBS溶液(
図10D)についての胆道画像を示す。各条件について表示された画像化領域は、それぞれ1分、30分、2時間、5時間および24時間(左→右)で記録した。
【
図10E】
図10Eは、0.1 nmoleの式2の化合物のPBS溶液(
図10E)についての胆道画像を示す。各条件について表示された画像化領域は、それぞれ1分、30分、2時間、5時間および24時間(左→右)で記録した。
【0077】
【
図11A-11C】
図11A-11Cは、投与後のマウスの様々な臓器の画像を示す。比較対照(
図11A)、式1の化合物(
図11C)および式2の化合物(
図11B)の投与後24時間におけるマウスの種々の臓器の蛍光画像。検査した臓器は、心臓(Ht)、肺(Ln)、(Kd)、肝臓(Lv)、脾臓(Spl)、腸(Int)、脳(Br)、および筋肉(Ms)である。24時間で、肝臓および腎臓にいくらかのシグナルが残るが、シグナルは72時間までに実質的に減少する。
【
図11D-11E】
図11D-11Eは、投与後のマウスの様々な臓器の画像を示す。式1の化合物(
図11E)および式2の化合物(
図11D)の投与後72時間におけるマウスの種々の臓器の蛍光画像。検査した臓器は、心臓(Ht)、肺(Ln)、(Kd)、肝臓(Lv)、脾臓(Spl)、腸(Int)、脳(Br)、および筋肉(Ms)である。24時間で、肝臓および腎臓にいくらかのシグナルが残るが、シグナルは72時間までに実質的に減少する。
【0078】
【
図12】
図12は、800CW、800BK-スルホネート(式1の化合物;800BKまたはBK)および800BK-NOS(式2の化合物;800NOSまたはNOS)の注入された色素溶液のスポット検査を示す。
【0079】
【
図13A】
図13Aは、検査対象の色素の1つを注入した代表的なマウスの背側および腹側図の動物の全体像を示す。図の各パネルは、注入から15分後、1時間後、2時間後、4時間後6時間後および24時間後の動物の背側および腹側図を示す。800CWの色素を注入した動物を
図13Aに示す。
【
図13B】
図13Bは、検査対象の色素の1つを注入した代表的なマウスの背側および腹側図の動物の全体像を示す。図の各パネルは、注入から15分後、1時間後、2時間後、4時間後6時間後および24時間後の動物の背側および腹側図を示す。800NOSの色素を注入した動物を
図13Bに示す。
【
図13C】
図13Cは、検査対象の色素の1つを注入した代表的なマウスの背側および腹側図の動物の全体像を示す。図の各パネルは、注入から15分後、1時間後、2時間後、4時間後6時間後および24時間後の動物の背側および腹側図を示す。800BKの色素を注入した動物を
図13Cに示す。
【0080】
【
図14】
図14は、動物全体のLUT尺度、臓器の1/10のLUT尺度、および臓器の1/100のLUT尺度を示す。
【0081】
【
図15A-15D】
図15A-15Dは、臓器1/10のLUT尺度上の腎臓(左下)、肝臓(右下)、肺(左上)および筋肉(右上)のシグナル強度を示す。プローブ無し(対照)、800CW色素、800NOS色素、および800BK色素を注入した動物由来の臓器をそれぞれ
図15A、
図15B、
図15C、および
図15Dに示す。
【0082】
【
図16A-16D】
図16A-16Dは、臓器1/10のLUT尺度上の腎臓(左下)、肝臓(右下)、肺(左上)および筋肉(右上)のシグナル強度を示す。プローブ無し(対照)、800CW色素、800NOS色素、および800BK色素を注入した動物由来の臓器をそれぞれ
図16A、
図16B、
図16C、および
図16Dに示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
I.定義
本明細書で使用される用語「a」、「an」または「the」は、1つのメンバーを有する態様を含むだけでなく、2つ以上のメンバーを有する態様も含む。例えば、本明細書に記載の化合物を使用することを含むイメージング方法の実施形態は、本方法が本明細書に記載の2つ以上の化合物を使用することを含む態様を含む。
【0084】
数値の変更において本明細書で使用する「約(approximately)」または「約(about)」という用語は、その値の上下で規定された範囲を示す。「X」が値である場合、「約(approximately)X」または「約(about)X」は、0.9X~1.1Xの値を示し、より好ましくは0.95X~1.05Xの値を示す。「約(approximately)X」または「約(about)X」という場合、具体的には、少なくともX、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xの値を指す。例えば、「約(approximately)X」または「約(about)X」は、例えば「0.98X」といったクレーム限定をするために明細書の記載についてのサポートを教示、提供する意図である。
【0085】
量「X」が全ての整数値(例えば「X個の炭素」)のみを許容し、Xが最大15である場合、「約X」は(X-1)から(X+1)を示す。この場合、本明細書で使用される「約X」は、少なくともX、X-1、およびX+1の値を示す。Xが16以上の場合、0.90Xと1.10Xの値を最も近い整数値に繰り上げ又は繰り下げて範囲の境界を定義する。
【0086】
数値範囲の前に「約(approximately)」または「約(about)」という修飾語を使用する場合、この修飾語は範囲の両端に適用される。したがって、「約(approximately)700~850nm」は、「約(approximately)700nm~約(approximately)850nm」に相当する。よって、「約(about)700~850nm」は、「約(about)700nm~約(about)850nm」に相当する。「約(approximately)」または「約(about)」を複数の値の集合の最初の値を修飾するのに使用する場合、この修飾語はその集合内の全ての値に適用される。したがって、「約680、700、または750nm」は、「約680nm、約700nm、または約750nm」に相当する。
【0087】
本明細書で使用される「バランス電荷(balanced charge)」は、化合物およびその関連する対イオンの正味の電荷が標準的な生理学的条件下でゼロであるという条件を含む。バランス電荷を達成するために、当業者は、インドリニウム環の+1電荷をバランスさせる第1の追加のスルホナト基(first additional sulfonato group)の後に、カチオン性対イオン(例えば、ナトリウムなどの第I族金属のカチオン)を添加して追加のスルホナト基による負電荷のバランスをとらなくてはならないことを理解するだろう。同様に、任意の追加のカチオン基(例えば、生理学的条件下で最も塩基性のアミノ基)のバランスをとるためにアニオン性対イオンを添加しなければならない。
【0088】
II.実施例
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明するが、そのような実施形態は単なる例示目的として設けるものであり、本発明の範囲を限定する意図ではない。本発明の実施には、本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替を採用してもよい。
【0089】
シアニン色素のいくつかの利点として以下の特徴が挙げられる:(1)シアニン色素は光を強く吸収して蛍光を発する;(2)多くのシアニン色素は、蛍光顕微鏡下で迅速に光漂白(photo-bleach)しない;(3)多くの構造および合成手順が利用可能であり、色素の種類が多用途(versatile)である;(4)シアニン色素は、比較的小さい(典型的な分子量は約1,000ダルトンである)ので、ひどい立体障害を引き起こさない。
【0090】
一般に、シアニン色素は、Hamer, F. M., Cyanine Dyes and Related Compounds, Weissberger, Mass., ed. Wiley Interscience, N.Y. 1964に教示された手順に従って調製される。例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第6,663,847号;第6,887,854号;第6,995,274号;第7,504,089号;第7,547,721号;第7,597,878号および第8,303,936号には、種々なシアニン色素の合成メカニズムが記載されている。
【0091】
反応性官能基を含む他のシアニン色素も知られている。例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第4,337,063号;4,404,289号;及び4,405,711号には、N-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基を有する種々のシアニン色素の合成について記載されている。参照により本明細書に援用される米国特許第4,981,977号には、カルボン酸基を有するシアニン色素の合成について記載されている。参照により本明細書に援用される米国特許第5,268,486号には、アリールスルホン酸シアニン色素を製造する方法が開示されている。参照により本明細書に援用される米国特許第6,027,709号には、ホスホルアミダイト基を有するシアニン色素の製造方法が開示されている。参照により本明細書に援用される米国特許第6,048,982号には、イソチオシアネート、イソシアネート、ホスホラミダイト、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ-もしくはジ-ハロゲン置換ピリジン、モノ-もしくはジ-ハロゲン置換ジアジン、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、グリオキサールおよびアルデヒドからなる群から選択される反応性基を有するシアニン色素の製造方法が開示されている。
【0092】
本明細書に記載のように、本発明は、式1を有する化合物
【化5】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、のシアニン色素の使用を提供する。
【0093】
一つの実施形態では、本発明は、式1の形態Aである固体形態(多形体)を提供する。式1の形態Aは、2θによるピークが約4.3°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Aは、2θによるピークが約4.3°、約9.6°、約12.9°、約18.3°、及び約20.8°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Aは、実質的に
図1Eに示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0094】
一つの実施形態では、本発明は、式1の形態Bである固体形態(多形体)を提供する。式1の形態Bは、2θによるピークが約21.2°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Bは、2θによるピークが約5.3°、約14.2°、約14.3°、約20.7°、及び約21.2°にあることを含むX線粉末回折パターンを有する。形態Bは、実質的に
図1Hに示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0095】
いくつかの態様では、対象に投与する前に、本発明の多形体を組成物に調合する。
【0096】
式1の化合物は、結晶形態または非結晶形態、またはそれらの混合物として存在し得る。結晶形態である本発明の塩について、結晶化の間に溶媒分子が結晶格子内に取り込まれる医薬的に許容される溶媒和物を形成してもよいことを当業者は理解するであろう。溶媒和物は、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミンおよび酢酸エチルなどの非水性溶媒を含み得る。一実施形態では、本発明は、結晶格子に組み込まれた式1の化合物のナトリウム塩を提供する。
【0097】
1つの態様では、本発明は、単離されたまたは純粋な形態の式1の化合物の多形体を提供する。「単離された」または「純粋な」あるいは「実質的に純粋な」形態とは、多形体が、試料中に存在し得る他の物質に対し、>75%、特に>90%、>91%、>92%、>93%、>94%、>95%、>96%、>97%、>98%、又は>99%の量で存在する試料を指す。
【0098】
本発明の方法に従って製造された多形体は、当該技術分野に係る任意の方法によって特徴付けされ得る。例えば、本発明の方法に従って製造された多形体は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、熱ステージ顕微鏡法、および分光法(例えば、ラマン、固体核磁気共鳴(ssNMR)、および赤外線(IR))によって特徴付けされてもよい。
【0099】
XRPD
【0100】
本発明に係る多形体は、X線粉末回折パターン(XRPD)によって特徴付けされてもよい。XRPDピークの相対強度は、サンプル調製技術、サンプルのマウント手順、および使用する特定の機器によって変わることがある。さらに、機器のばらつきやその他の要因が2θ値に影響を与える可能性がある。したがって、XRPDのピーク割り当ては約0.2度のプラスまたはマイナスで変化する可能性がある。
【0101】
本発明の多形体の形態は、造影剤の製造に有用であり、結晶形態および半結晶形態を生成する結晶化プロセスによって得ることができる。種々の実施形態において、結晶化は、反応混合物において式1の化合物を生成し反応混合物から所望の多形体を単離すること、あるいは、溶媒中に原料化合物を場合により加熱して溶解させ、続いて生成物の冷却(能動冷却を含む)および/または一定時間貧溶媒を添加することによる結晶化/凝固のいずれかによって実施される。結晶化の後に、制御された条件下で、最終多形形態における含水量が所望の値に達するまで乾燥を行うことができる。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、式1の化合物(形態Aまたは形態B)の多形体を製造する方法を提供する。様々な実施形態において、本発明は、非晶質形態を所望の多形体に変換することを含む、式1の化合物の多形体を製造する方法に関する。ある実施形態では、本方法は、非晶質形態を含む組成物を、非晶質形態の全量の少なくとも約50%を所望の多形体の少なくとも約50%に変換させるのに十分な条件に暴露し、必要に応じて所望の多形体を単離することを含む。
【0103】
特定の例では、結晶質の固体は、非晶質の固体よりも精製しやすいものであり、結晶形態がより高純度で製造することができる。これは、適切な条件下では、より制御されていない方法で形成された非晶質の固体とは対照的に、結晶の形成のほうが固体から不純物を排除する傾向があるからである。同様に、結晶構造は保護効果をもたらすので、結晶質の固体はしばしば非晶質の固体より良好な安定性を有する。多形体の材料では、不純物を除き安定性を高めるのに、通常、結晶形態のほうが他の形態よりも効果的であることがある。
【0104】
一つの実施形態では、本発明は、式2の組成物:
【化6】
またはその水和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するものを提供する。
【0105】
本発明の1つの実施形態は、臓器イメージングのための方法であって、診断的有効量の式1の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-(4-スルホナトフェノキシ)シクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート化合物:
【化7】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、を対象に投与すること、ここで、当該投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施される;対象の臓器系の組織を電磁放射線に曝すこと;並びに、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を含む。一つの実施形態では、臓器は、腎臓、膀胱、肝臓、脾臓、腸、心臓、肺、および筋肉の1つまたは複数を含む。一つの実施形態では、臓器は腎臓、膀胱、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、臓器は腎臓の尿管である。
【0106】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を静脈内投与により投与することを含む。式1の化合物は、ボーラス注射、例えば、静脈内ボーラス注射として投与することができる。いくつかの実施形態では、式1の化合物を含む組成物の約5mL~約10mLをボーラス注射で投与する。
【0107】
一つの実施形態では、上記方法は、上記医薬的に許容されるカチオンがカリウムまたはナトリウムからなる群より選択される式1の化合物を投与することを含む。
【0108】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与することを含む。
【0109】
式1の化合物は、水に非常に可溶性があり得る。いくつかの実施形態では、式1の化合物は、水中に少なくとも200mg/mL、または約300mg/mL~約320mg/mLの濃度で再懸濁される。
【0110】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0111】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0112】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0113】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0114】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0115】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0116】
一つの実施形態では、上記方法は、式1の化合物を約30.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0117】
式1の化合物は、無毒であり得る。それらは光を吸収して蛍光を発することができ、蛍光イメージング下で迅速に光漂白しない。投与すると、式1の化合物は、対象の体液の自然な流れによりその対象の組織や臓器に輸送することができる。このように、式1の化合物は、投与部位から所望の部位、組織、臓器に、例えば可視化のために運搬または移送できる。
【0118】
ある実施形態では、本明細書の化合物および方法は、肝臓、胆嚢、脾臓、小腸および関連する管の任意の部分を含む胆道を画像化することができる。場合により、胆道(biliary tract)には、肝内胆管、胆嚢管、胆嚢から総胆管、総胆管(common bile duct)、肝臓、および胆嚢、小腸が含まれる。いくつかの例では、本明細書の化合物は、投与後の期間、対象の胆汁または尿中に見られる。本発明は、尿または胆汁における式1又は2の化合物の組成物を提供する。
【0119】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、尿または胆汁における式1又は2の化合物の可視化をもたらす。
【0120】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の臓器に残存する投与した式1の化合物の蛍光強度を測定することを含む。一つの実施形態では、臓器は、腎臓、膀胱、肝臓、胆嚢、脾臓、腸、心臓、肺、および筋肉の1つまたは複数を含む。一つの実施形態では、臓器は、腎臓、膀胱、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、臓器は、腎臓の尿管である。いくつかの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の尿または胆汁に残存する投与した式1の化合物の蛍光強度を測定することを含む。
【0121】
一つの実施形態では、上記方法は、測定した投与後の式1の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光であることを含む。
【0122】
一つの実施形態では、上記方法は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、内視鏡処置、および開腹処置からなる群より選択される処置を含む。
【0123】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後約6時間まで、腎臓における投与した式1の化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した式1の化合物の蛍光強度の測定値よりも高いことを含む。
【0124】
一つの実施形態では、医薬組成物は、診断的撮像量の式1の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0125】
別の実施形態は、臓器イメージングのための方法であって、診断的有効量の式2の2-((E)-2-((E)-3-(2-((E)-3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(4-スルホナトブチル)インドリン-2-イリデン)エチリデン)-2-フェノキシシクロヘキセ-1-エン-1-イル)ビニル)-3,3-ジメチル-1-(4-スルホナトブチル)-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネート:
【化8】
またはその溶媒和物もしくは多形体と、医薬的に許容されるカチオンを有するもの、を対象に投与すること、ここで、当該投与は、処置前、処置中、処置後およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1回または複数回実施される;対象の臓器系の組織を電磁放射線に曝すこと;並びに、前記化合物からの蛍光放射線を検出すること;を含む前記方法を含む。一つの実施形態では、臓器は、腎臓、膀胱、肝臓、脾臓、腸、心臓、肺、および筋肉の1つまたは複数を含む。一つの実施形態では、臓器は肝臓である。一つの実施形態では、臓器は肝臓の胆管(biliary duct of a liver)である。一つの実施形態では、臓器は肝臓の胆嚢管(cystic duct of a liver)である。
【0126】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を静脈内投与により投与することを含む。式2の化合物は、ボーラス注射、例えば、静脈内ボーラス注射として投与することができる。いくつかの実施形態では、式2の化合物を含む組成物の約5mL~約10mLをボーラス注射で投与する。
【0127】
一つの実施形態では、上記方法は、上記医薬的に許容されるカチオンがカリウムまたはナトリウムからなる群より選択される式2の化合物を投与することを含む。
【0128】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を、生理学的滅菌済み生理食塩水、滅菌済み水溶液、発熱物質を含まない水溶液、等張食塩水、及びリン酸緩衝液からなる群より選択される医薬的に許容される担体との組み合わせで投与することを含む。
【0129】
式1の化合物は、水に非常に可溶性があり得る。いくつかの実施形態では、式2の化合物は、水中に少なくとも200mg/mL、または約300mg/mL~約320mg/mLの濃度で再懸濁される。
【0130】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約3000.0μg/kg~1500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0131】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1500.0μg/kg~1000.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0132】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約1000.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0133】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約500.0μg/kg~170.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0134】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約170.0μg/kg~120.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0135】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約120.0μg/kg~60.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0136】
一つの実施形態では、上記方法は、式2の化合物を約30.0μg/kg~500.0μg/kgの範囲にわたる該化合物の診断的有効量で投与することを含む。
【0137】
式2の化合物は、無毒であり得る。それらは光を吸収して蛍光を発することができ、蛍光イメージング下で迅速に光漂白しない。投与すると、式2の化合物は、対象の体液の自然な流れによりその対象の組織や臓器に輸送することができる。このように、式2の化合物は、投与部位から所望の部位、組織、臓器に、例えば可視化のために運搬または移送できる。
【0138】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の臓器系の組織に残存する投与した式2の化合物の蛍光強度を測定することを含む。一つの実施形態では、臓器は、腎臓、膀胱、肝臓、胆嚢、脾臓、腸、心臓、肺、および筋肉の1つまたは複数を含む。一つの実施形態では、臓器は肝臓である。別の実施形態では、臓器は、肝臓の胆管である。別の実施形態では、臓器は、肝臓の胆嚢管である。いくつかの実施形態では、上記方法は、投与後の期間、対象の尿または胆汁に残存する投与した式2の化合物の蛍光強度を測定することを含む。
【0139】
一つの実施形態では、上記方法は、測定した投与後の式2の化合物の蛍光強度は、投与から約24時間後のバックグラウンド蛍光であることを含む。
【0140】
一つの実施形態では、上記方法は、腹腔鏡下処置、ロボットによる処置、ロボットによる腹腔鏡下処置、内視鏡処置、および開腹処置からなる群より選択される処置を含む。
【0141】
一つの実施形態では、上記方法は、投与後約6時間まで、肝臓における投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値は、脾臓、腸、心臓、肺、筋肉の1つまたは複数あるいはそれらの組み合わせにおける投与した式2の化合物の蛍光強度の測定値よりも高いことを含む。
【0142】
一つの実施形態では、医薬組成物は、診断的撮像量の式2の化合物、医薬的に許容されるカチオン、及び医薬的に許容される担体を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、式1の化合物または式2の化合物の医薬組成物は、医薬的に許容されるカチオンおよび医薬的に許容される担体との組み合わせで診断有効量にて存在する。そのような実施形態では、医薬組成物は、静脈内点滴バッグに含まれる。
【0144】
選択された実施形態では、式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの診断有効量は、独立して、例えば、3000.0、2800.0、2600.0、2400.0、2200.0、2000.0、1800.0、1600.0、1400.0、1200.0、1000.0、950.0、900.0、850.0、800.0、750.0、700.0、650.0、600.0、550.0、500.0、490.0、480.0、470.0、460.0、450.0、440.0、430.0、420.0、410.0、400.0、390.0、380.0、370.0、360.0、350.0、340.0、330.0、320.0、310.0、300.0、290.0、280.0、270.0、260.0、250.0、240.0、230.0、220.0、210.0、200.0、190.0、180.0、170.0、160.0、150.0、140.0、130.0、120.0、110.0、100.0、95.0、90.0、85.0、80.0、75.0、70.0、65.0、60.0、55.0、50.0、49.0、48.0、47.0、46.0、45.0、44.0、43.0、42.0、41.0、40.0、39.5、39.0、38.5、38.0、37.5、37.0、36.5、36.0、35.5、35.0、34.5、34.0、33.5、33.0、32.5、32.0、31.5、31.0、30.9、30.8、30.7、30.6、30.5、30.4、30.3、30.2、30.1μg/kg未満である。
【0145】
選択された実施形態では、式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの診断有効量は、独立して、例えば、2800.0、2600.0、2400.0、2200.0、2000.0、1800.0、1600.0、1400.0、1200.0、1000.0、950.0、900.0、850.0、800.0、750.0、700.0、650.0、600.0、550.0、500.0、490.0、480.0、470.0、460.0、450.0、440.0、430.0、420.0、410.0、400.0、390.0、380.0、370.0、360.0、350.0、340.0、330.0、320.0、310.0、300.0、290.0、280.0、270.0、260.0、250.0、240.0、230.0、220.0、210.0、200.0、190.0、180.0、170.0、160.0、150.0、140.0、130.0、120.0、110.0、100.0、95.0、90.0、85.0、80.0、75.0、70.0、65.0、60.0、55.0、50.0、49.0、48.0、47.0、46.0、45.0、44.0、43.0、42.0、41.0、40.0、39.5、39.0、38.5、38.0、37.5、37.0、36.5、36.0、35.5、35.0、34.5、34.0、33.5、33.0、32.5、32.0、31.5、31.0、30.9、30.8、30.7、30.6、30.5、30.4、30.3、30.2、30.1、30.0μg/kg超である。
【0146】
選択された実施形態では、式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの診断有効量は、独立して、例えば、約30.0μg/kg~約3000.0μg/kg、約30.1μg/kg~約2800.0μg/kg、約30.2μg/kg~約2600.0μg/kg、約30.3μg/kg~約2400.0μg/kg、約30.4μg/kg~約2200.0μg/kg、約30.5μg/kg~約2000.0μg/kg、約30.6μg/kg~約1800.0μg/kg、約30.7μg/kg~約1600.0μg/kg、約30.8μg/kg~約1400.0μg/kg、約30.9μg/kg~約1200.0μg/kg、約31.0μg/kg~約1000.0μg/kg、約31.5μg/kg~約950.0μg/kg、約32.0μg/kg~約900.0μg/kg、約32.5μg/kg~約850.0μg/kg、約33.0μg/kg~約800.0μg/kg、約33.5μg/kg~約750.0μg/kg、約34.0μg/kg~約700.0μg/kg、約34.5μg/kg~約650.0μg/kg、約35.0μg/kg~約600.0μg/kg、約35.5μg/kg~約550.0μg/kg、約36.0μg/kg~約500.0μg/kg、約36.5μg/kg~約490.0μg/kg、約37.0μg/kg~約480.0μg/kg、約37.5μg/kg~約470.0μg/kg、約38.0μg/kg~約460.0μg/kg、約38.5μg/kg~約450.0μg/kg、約39.0μg/kg~約440.0μg/kg、約39.5μg/kg~約430.0μg/kg、約40.0μg/kg~約420.0μg/kg、約41.0μg/kg~約410.0μg/kg、約42.0μg/kg~約400.0μg/kg、約43.0μg/kg~約390.0μg/kg、約44.0μg/kg~約380.0μg/kg、約45.0μg/kg~約370.0μg/kg、約46.0μg/kg~約360.0μg/kg、約47.0μg/kg~約350.0μg/kg、約48.0μg/kg~約340.0μg/kg、約49.0μg/kg~約330.0μg/kg、約50.0μg/kg~約320.0μg/kg、約55.0μg/kg~約310.0μg/kg、約60.0μg/kg~約300.0μg/kg、約65.0μg/kg~約290.0μg/kg、約70.0μg/kg~約280.0μg/kg、約75.0μg/kg~約270.0μg/kg、約80.0μg/kg~約260.0μg/kg、約85.0μg/kg~約250.0μg/kg、約90.0μg/kg~約240.0μg/kg、約95.0μg/kg~約230.0μg/kg、約100.0μg/kg~約220.0μg/kg、約110.0μg/kg~約210.0μg/kg、約120.0μg/kg~約200.0μg/kg、約130.0μg/kg~約190.0μg/kg、約140.0μg/kg~約180.0μg/kg、及び約150.0μg/kg~約170.0μg/kgの範囲内にある。
【0147】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約3000.0μg/kg~約1500.0μg/kgの範囲内にある。
【0148】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約1500.0μg/kg~約1000.0μg/kgの範囲内にある。
【0149】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約1000.0μg/kg~約500.0μg/kgの範囲内にある。
【0150】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約500.0μg/kg~約170.0μg/kgの範囲内にある。
【0151】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約170.0μg/kg~約120.0μg/kgの範囲内にある。
【0152】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約120.0μg/kg~約60.0μg/kgの範囲内にある。
【0153】
一つの実施形態では、診断的有効量の式1の化合物は、約30.0μg/kg~約500.0μg/kgの範囲内にある。
【0154】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約3000.0μg/kg~約1500.0μg/kgの範囲内にある。
【0155】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約1500.0μg/kg~約1000.0μg/kgの範囲内にある。
【0156】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約1000.0μg/kg~約500.0μg/kgの範囲内にある。
【0157】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約500.0μg/kg~約170.0μg/kgの範囲内にある。
【0158】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約170.0μg/kg~約120.0μg/kgの範囲内にある。
【0159】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約120.0μg/kg~約60.0μg/kgの範囲内にある。
【0160】
一つの実施形態では、診断的有効量の式2の化合物は、約30.0μg/kg~約500.0μg/kgの範囲内にある。
【0161】
本発明の式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの診断有効量は、広い用量範囲にわたって有効である。正確な用量は、投与経路、各化合物の投与形態、治療対象の性別、年齢、および体重、および担当者の好みおよび経験に依存する。
【0162】
選択された実施形態では、投与後の式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの蛍光強度は、独立して、例えば、投与後、24時間、23時間、22時間、21時間、20時間、19時間、18時間、17時間、16時間、15時間、14時間、13時間、12時間、11時間、10時間、9.5時間、9.0時間、8.5時間、8.0時間、7.5時間、7.0時間、6.5時間、6.0時間、5.5時間、5.0時間、4.75時間、4.50時間、4.25時間、4.00時間、3.75時間、3.50時間、3.25時間、3.00時間、2.75時間、2.50時間、2.25時間、2.00時間、1.75時間、1.50時間、1.25時間、1.00時間、0.90時間、0.80時間、0.70時間、0.60時間、0.50時間、0.40時間、0.30時間、0.20時間未満の時間間隔で測定してもよい。
【0163】
選択された実施形態では、投与後の式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの蛍光強度は、独立して、例えば、投与後、23時間、22時間、21時間、20時間、19時間、18時間、17時間、16時間、15時間、14時間、13時間、12時間、11時間、10時間、9.5時間、9.0時間、8.5時間、8.0時間、7.5時間、7.0時間、6.5時間、6.0時間、5.5時間、5.0時間、4.75時間、4.50時間、4.25時間、4.00時間、3.75時間、3.50時間、3.25時間、3.00時間、2.75時間、2.50時間、2.25時間、2.00時間、1.75時間、1.50時間、1.25時間、1.00時間、0.90時間、0.80時間、0.70時間、0.60時間、0.50時間、0.40時間、0.30時間、0.20時間、0.10時間超の時間間隔で測定してもよい。
【0164】
選択された実施形態では、投与後の式1の化合物および式2の化合物のそれぞれの蛍光強度は、独立して、例えば、投与後、約0.10時間~約24時間、約0.20時間~約23時間、約0.30時間~約22時間、約0.40時間~約21時間、約0.50時間~約20時間、約0.60時間~約19時間、約0.70時間~約18時間、約0.80時間~約17時間、約0.90時間~約16時間、約1.00時間~約15時間、約1.25時間~約14時間、約1.50時間~約13時間、約1.75時間~約12時間、約2.00時間~約11時間、約2.25時間~約10時間、約2.50時間~約9.5時間、約2.75時間~約9.0時間、約3.00時間~約8.5時間、約3.25時間~約8.0時間、約3.50時間~約7.5時間、約3.75時間~約7.0時間、約4.00時間~約6.5時間、約4.25時間~約6.0時間、約4.50時間~約5.5時間、約4.75時間~約5.0時間の範囲内の時間間隔で測定してもよい。
【0165】
本明細書に記載の方法の実施形態では、サンプルは、検出可能な光学応答を与えるように選択された光の波長で照射され、光学応答を検出する手段で観察される。本発明の色素化合物を照射するのに有用な装置には、タングステンランプ、ハンドヘルド紫外線ランプ、水銀アークランプ、キセノンランプ、発光ダイオード(LED)、レーザおよびレーザダイオードが含まれるが、これらに限定されない。これらの照明源は、場合により、外科用カメラ、腹腔鏡および顕微鏡と一体化して使用される。本発明の好ましい実施形態は、633~636nm、647nm、660nm、680nm、および700nmを超える、例えば780nm、810nmおよび850nmなどの波長又はその近辺で励起可能な色素であり、これらの領域は比較的安価な励起源の出力によく合っている。光学応答は、目視検査によって、CCDカメラ、ビデオカメラ、写真フィルムなどの装置のいずれかの使用によって任意に検出される。
【0166】
用いたNIRイメージングプローブは、独立して、励起773nmおよび発光790nmの式1の化合物、または、励起772nmおよび発光787nmの式2の化合物であった。
【0167】
本明細書に記載の式1の化合物および式2の化合物は、投与形式と適合する様式で、インビボイメージングに有効または適切であるような量で投与することができる。投与量は、個体の年齢、体重、身体活動および食事、イメージング対象の組織または臓器、および実施される処置または手術の種類などの様々な因子に依存する。ある実施形態では、用量は、化合物の投与に伴う特定の個体における有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定され得る。
【0168】
しかしながら、特定の患者に対する特定の投与量および投与頻度は変化することがあり、使用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用期間、および治療を受ける対象の年齢、体重、遺伝的特徴、一般的な健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重篤度を含む様々な要因に依存することが理解される。
【0169】
ある実施形態では、剤型(dosage form)は、固体、半固体または凍結乾燥粉末形態、好ましくは正確な用量で簡便な投与に適した単位剤(unit dosage form)の形態を取ることができる。いくつかの実施形態では、投与は、容器、バイアルまたはシリンジを1回または複数回投与するための特定の用量で行う。
【0170】
本明細書中で使用される場合、用語「単位剤」は、ヒトおよび他の哺乳類のための単位用量として適切な物理的に個別の単位を指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤(例えば、アンプル)と組み合わせて、所望の開始(onset)、耐容性および/または蛍光効果を生じるように計算された所定量の造影剤をそれぞれ含む。さらに、より濃縮された剤型を調製してもよく、そこから希釈した単位剤をその後製造してもよい。したがって、より濃縮された剤型は、造影剤の量が実質的に多い、例えば少なくとも1,2,3,4,5,6,7,8,9,10倍以上の量を含有する。
【0171】
このような剤型を調製する方法は、当業者に知られている(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照)。剤型は、典型的には、従来の薬学的担体または賦形剤を含み、さらに他の医薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織透過促進剤、可溶化剤などを含んでもよい。適切な賦形剤は、当技術分野で周知の方法(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th ED., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)参照)によって、特定の剤型および投与経路に合わせて調整することができる。
【0172】
ある実施形態では、剤型は、化合物の保存、単離、精製および/または凍結乾燥のための安定化剤を含有する。凍結乾燥のための薬剤としては、単糖類、二糖類またはデキストランなどの糖類が挙げられるが、これらに限定されない。他の糖類には、グルコース、ガラクトース、キシロース、グルクロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、マンニトール、または5%デキストロースが挙げられる。
【0173】
静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、筋肉内注射などの非経口投与の場合、有効な投与は、滅菌注射溶液および滅菌包装粉末の形態であり得る。好ましくは、注射可能な溶液は、約4.5~約7.5のpH、または生理学的pHで調合される。
【0174】
いくつかの実施形態では、イメージングに有効な投与形態として、本明細書に記載の凍結乾燥した化合物の、高品質で室温で数ヶ月安定な易溶解性の形態が挙げられる。凍結乾燥した式1または式2の化合物は、ヒト成人などの対象に対する単回投与量用の量の化合物を含有する密閉されたバイアルまたはシリンジのような任意の適切なタイプの密封容器に保存できる。「バイアル」という用語は、本明細書では、薬物の密閉および滅菌保存、出荷、および少量(例えば、単回投与量)の薬物の取り扱いに適するように設計および調整された任意の薬物パッケージングデバイスを広範に指すのに使用する。単一チャンバのバイアル(single-chamber vial)(水なしの凍結乾燥化合物のみを含む)はよく知られている。典型的な単一チャンバのバイアルは、静脈内注入バッグと共に使用するように設計されてもよい。あるいは、式1または式2の化合物を含有する水性液体の即時再構成および注入を可能にするために、凍結乾燥化合物および滅菌水溶液の両方を含む2チャンバのバイアル(two-chamber vials)を使用することができる。
【0175】
本明細書では、式1の化合物または式2の化合物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、例えば、凍結乾燥形態の式1の化合物を含む1つまたは複数のバイアルまたはシリンジを含む。別の実施形態では、キットは、例えば、凍結乾燥形態の式2の化合物を含む1つまたは複数のバイアルまたはシリンジを含む。また、かかるキットは、投与前に化合物を再構成するために、薬学的に許容される担体または滅菌された水溶液、例えば滅菌水を含めてもよい。場合によっては、キットはまた、化合物を非経口投与するための、または静脈内注入バッグと共に使用するための無菌シリンジを含む。このキットには、取扱説明書も含まれる。
【0176】
ある範囲が本明細書で使用される場合、その範囲および明細書に記載の特定の実施形態のすべての組み合わせおよびサブコンビネーションが含まれることが意図される。数値または数値範囲を指すときに「約(approximately)」という用語を使用することは、言及された数値または数値範囲が実験的変動内(または統計的な実験誤差内)での近似であることを意味し、したがって、数値または数値範囲は、 例えば、記載された数または数値範囲の1%~15%の間である。用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有する(having)」または「含む(including)」などの関連用語)は、記載された特徴「から成る(consist of)」または「から本質的になる(consist essentially of)」という実施形態を含む。
【実施例】
【0177】
実施例1
式1の化合物は、3,3-ジメチル-2-[2-[2-クロロ-3-[2-[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-2H-インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-3H-水酸化インジウム、分子内塩、トリナトリウム塩(1g, 1.05mmol)を25 mLの水に溶解し、窒素で15分間スパージすることによって合成できる。4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物(875mg, 3.77mmol)を3.6mLの1N NaOH(3.6mmol)に溶解し、反応混合物に加えた。反応混合物を40℃の油浴に入れ、16時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、次いで生成物を80:20のエタノール:水から再結晶させた。化合物を濾過し、次いでエタノールで洗浄し、60℃で18時間真空乾燥した。
【0178】
式1の化合物多形体(形態A)は、以下のように調製できる。
【0179】
3,3-ジメチル-2-[2-[2-クロロ-3-[2-[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-2H-インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-3H-水酸化インジウム、分子内塩、トリナトリウム塩(20g, 21mmol)と、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物(5.84g, 25.2mmol)との混合物を水(120 mL)に懸濁する。懸濁液を85℃に加熱し、完全な溶解が観察される。水酸化ナトリウム水溶液(10N, 2.5ml, 25mmol)を滴下し、反応物を45分間撹拌する。イソプロパノール(360ml)をゆっくりと加えて、反応温度を60℃以上に維持する。次いで、混合物を周囲温度までゆっくりと冷却し、得られたスラリーを濾過する。フィルターケーキを40mlのイソプロパノール:水(3:1)ですすぎ、40mlのイソプロパノールで2回すすぎ、真空下で50~60℃にて乾燥させて、18.4gの式1の化合物を暗緑色固体として得る。次いで、10g(9mmol)のこの物質を、水(50ml)およびイソプロパノール(100ml)で約70℃にて溶解し、混合物を周囲温度までゆっくりと冷却することによって再結晶させる。固体を濾過により集め、20mlのイソプロパノール:水(2:1)で濯ぎ、20mlのイソプロパノールで2回すすぎ、真空下で50~60℃にて乾燥させて、6.7gの式1の化合物を結晶暗緑色固体として得る。
【0180】
形態AのX線粉末回折(XRPD)
【0181】
XRPD分析は、3~35°2θの間でサンプルを走査するPANalytical X’pert proで実施した。材料を静かに粉砕し、試料を支持するためにカプトンまたはマイラーポリマーフィルムを有するマルチウェルプレート上に載せた。次いで、マルチウェルプレートを、透過モードで動作するPanalytical回折計に装填し、分析した。
【0182】
XRPDデータを
図1A-1Fに示す。図示のように、
図1Aおよび
図1Cは同一であり、いずれもやや結晶性であり、形態Aを表す。1Bは、結晶性が類似しており、形態Aである。
【0183】
【0184】
【0185】
固体状態の形態についての特徴的なXRPD角度およびd-間隔を、形態Aについて表1に要約する。ピーク位置を測定し、表にした。
【0186】
【0187】
固体状態の形態についての特徴的なXRPD角度およびd-間隔を、形態Aについて表2に要約する。ピーク位置を測定し、表にした。
【0188】
【0189】
一つの実施形態では、形態Bを形態Aから製造することが可能である。形態Aは結晶性であり、規定された形態を有さない小さな複屈折粒子として存在する。この物質は吸湿性であり(27重量%の吸湿率~90%RH)、ストレス条件下で形態を変え得る。形態Aが40℃/75%RHにさらされると、形態の変化が起こる。この形態は、GVS後のサンプルで見られた形態に対応する。HPLC純度に変化は見られなかった。
【0190】
【0191】
固体状態の形態についての特徴的なXRPD角度およびd-間隔を、形態Bについて表3に要約する。ピーク位置を測定し、表にした。
【0192】
【0193】
実施例2
式2の化合物は、3,3-ジメチル-2-[2-[2-クロロ-3-[2-[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-2H-インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-5-スルホ-1-(4-スルホブチル)-3H-水酸化インジウム、分子内塩、トリナトリウム塩(1g, 1.05mmol)を25 mLの水に溶解し、窒素で15分間スパージすることによって合成できる。フェノキシド三水和物(390mg、2.29mmol)を超純水2mLに溶解し、反応混合物に加えた。反応混合物を40℃の油浴に入れ、4時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、次いで生成物を90:10のエタノール:水から再結晶させた。化合物を濾過し、次いでエタノールで洗浄し、60℃で18時間真空乾燥した。
【0194】
比較例1
800CWとも称する比較例1の化合物の構造を以下に示す:
【化9】
【0195】
インドシアニングリーン(ICG)色素の構造を以下に示す:
【化10】
【0196】
実施例3:インビトロ
2種の癌腫細胞株(A431およびA549)を用いたインビトロ細胞ベースのアッセイを行い、式1の化合物および式2の化合物の非特異的結合を評価した。これらの色素を800CWと比較した。
図2A、
図2B及び
図2Cを参照されたい。
【0197】
式2の化合物は、式1の化合物および800CWのいずれとも比較して、2倍の非特異的結合の有意な増加を示した。式1の化合物は800CWと匹敵していた。
【0198】
3つの化合物の全てが同等の蛍光を有することを確認するために、希釈系列を作製し、Odyssey SA蛍光イメージングシステム(LI-COR Biosciences)で画像化した。各ウェルの蛍光を機器ソフトウェアで定量した。
図2Cは、この試験における3つの化合物のすべての蛍光が非常に近いことを示し、つまり、プレートベースのアッセイで注目された高濃度の蛍光の増加は、化合物が細胞に非特異的に結合する傾向によるためである可能性が高いことが確認される。
【0199】
一般に、非特異的な結合が低いほうが利点である。いずれの細胞株も、1μM未満の濃度の全ての化合物については非特異的な結合が低いことを示す。しかしながら、濃度が高くなると全て結合を開始する。
【0200】
実施例4:インビボ
プローブを注入した動物を、Pearl Impulseイメージングシステム(LI-COR Biosciences)の800個の蛍光チャネルを用いて経時的に画像化した。800CW、式1の化合物、および式2の化合物についてのクリアランスプロファイルを、ヌードマウス(全ての化合物について1 nmoleの用量)で行った。連続画像と切除された臓器を24時間にわたって評価した。一連の背面画像を
図3に示す。Pearl Impulse小動物イメージングシステムを全ての動物および臓器の画像取得に使用した。
【0201】
比較例1の化合物を基準として使用する。背面図からは、如何なるプローブについても腎臓シグナルがなかった。注入後2時間で、式2の化合物は、背部から見える肝臓領域に発光する高いシグナルを示す。式2の化合物は、肝臓で急速に収集されるため広範囲に発光することはなく、注入後5時間において全身シグナルが800CWおよび式1の化合物と比較して低い。
【0202】
実施例5:腹部画像
腹側画像を
図4に示す。目視検査では、式1の化合物および800CWは、それらのクリアランスパターンにおいて類似する。これらの2つのプローブは、腎臓を介して急速に消失するようである。この特徴は、泌尿器系のイメージングに非常に便利である。
【0203】
一方、式2の化合物は、肝臓を通過する。この特徴は、この臨床応用に現在使用されているICGを「模倣する」胆管をモニターする色素にとって非常に有用な特性である。インビトロプレートベースのアッセイから、式1の化合物および式2の化合物の両方が800CWと類似の蛍光強度を有するように見えた。しかし、インビボのデータからは、式1の化合物は組織を通って急速に移動するが、臓器においては長期間保持されるようである。
【0204】
膀胱シグナルは、800CWおよび式1の化合物のプローブ(紫色の矢印)で示される最も強いシグナルである。
【0205】
3つのプローブ(腹部図)についての全身の蛍光数を
図5に示す。非侵襲的イメージングは、動物の全体の深さのシグナルを捕えないが、強度値により相対的な傾向を示すのに有用である。
【0206】
800CWおよび式1の化合物の方が式2の化合物と比較してクリアランスが遅い。式2の化合物のシグナルは800CWおよび式1の化合物のシグナルよりも全体的に低いようであるが、肝臓に速やかに集まるように見える。投与後24時間で、残りの蛍光は、3つのプローブ全てについてほぼ同じ程度まで減少する。
【0207】
蛍光シグナルを調べる別の方法は、特定の時点で残っている化合物の割合(%)を測定することである。30分の時点が、他の時点を正規化するベースラインである。このデータを以下の表4に示す。
【表4】
【0208】
各時点で残っているシグナルの割合(%)は、注入後30分の時点で示されるものがベースラインとして使用される。
【0209】
最大の減少は、式2の化合物について2時間の時点で起こる。式1の化合物は800CWに非常によく似ており、注入後24時間で、残りのシグナルがすべての化合物で非常に類似し、ベースラインの2%未満となる。
【0210】
実施例5:臓器
臓器を24時間で切除し、画像化した。データを
図6に示す。
【0211】
式1の化合物は、注入後24時間で、式2の化合物と比較して、肝臓および腎臓においてより高いレベルで保持される。驚くべきことに、主に肝臓から除去される式2の化合物は、800CWおよび式1の化合物と比較して、24時間の時点で肝臓シグナルが低い。これは、800CWおよび式2の化合物と比較して、式1の化合物の組織からの全体的なクリアランスがより遅いことによって説明され得る。
【0212】
800CWまたは式1の化合物または式2の化合物のいずれも脳内では検出されず、血液脳関門を通過できない可能性が高い。
【0213】
図7は、腎臓と膀胱と尿管を示す。腎臓の尿管をスクリーニングするために式1の化合物を投与する場合、その領域の画像を投与後に撮影した。
【0214】
図8は、ヒト(H)、ウシ(B)、オボアルブミン(O)、または5%FBS(ウシ胎仔血清)に対する対象化合物の非特異性または親和性を示す選択されたタンパク質の染色電気泳動ゲルの蛍光画像を示す。式2の化合物は、ICGと同様に、胆道検査に有用である可能性があることは明らかである。
【0215】
実施例7:マウスの尿
式1の化合物の主な排出経路が腎臓であるため、マウスの排尿を分析した。尿は、式1の化合物および式2の化合物のいずれも投与されなかったマウス(対照)、式1の化合物、ICG、および式2の化合物のいずれかを投与したマウスから得た。尿をアセトニトリル:メタノール混合物で抽出し、
図9に示すように、オデッセイCLxイメージャ(LI-COR Biosciences)で画像化する。
【0216】
対照およびICGについて蛍光シグナルは見られなかった。ICGは肝臓によって排除されるので、シグナルは期待されない。式2の化合物についてはわずかな蛍光があり、肝臓の排泄が完全ではないことが示唆される。
【0217】
実施例8:ICGとの比較
式2の化合物とICGとの比較を、胆管を画像化するための一般的なアプリケーションについて行った(
図10Aおよび10B)。Pearl Impulse小動物イメージングシステムを全ての動物および臓器の画像取得に使用した。ICGは、水性媒体にあまり溶解せず、インビボで式2の化合物よりもはるかに弱い蛍光シグナルを与える。50nmoleのICGリン酸緩衝生理食塩水溶液を調製し、静脈内に注入し、1分、30分、2時間、5時間および24時間の時点での局在を1nmoleの式2の化合物の溶液と比較した。
【0218】
1分、30分、2時間、5時間および24時間の時間でインキュベートした式2の化合物についての用量反応の比較を
図10B(1 nmole)、
図10C(0.5 nmole)、
図10Dおよび
図10E(0.1 nmole)に示す。全ての画像は、
図10Eを除いて同じLUTテーブルを使用して示す。
図10DのLUTは可視化のために800nmシグナルを明るくすべく減少した。
【0219】
胆嚢は、1 nmole(
図10B)および0.5 nmole(
図10C)の用量について静脈内投与の30分後に視認でき、2時間および5時間の画像でも視認できた。
図10Dの0.1 nmole用量の画像は、1 nmoleと0.5 nmoleの用量系列と同じ尺度を用いると非常に低い検出シグナルを示すように見える。しかし、尺度を
図10Eのように調整すると、胆嚢の標的領域は非常に低いバックグラウンドで視認できる。特定のイメージングシステムまたはアプリケーションに対応する広い範囲の投与が可能である。
【0220】
実施例9:切除臓器の評価
式1の化合物及び式2の化合物について、各種臓器の蛍光シグナル強度を24時間及び72時間で調べた(
図11A-11E)。臓器は、心臓(Ht)、肺(Ln)、腎臓(Kd)、肝臓(Lv)、脾臓(Spl)、腸(Int)、脳(Br)、筋肉(Ms)である。24時間で、肝臓および腎臓にいくらかのシグナルが残るが、72時間までにシグナルは実質的に減少する。
【0221】
図11Aは、投与24時間後の対照(800CW)を用いた結果を示す。
【0222】
図11Bは、投与の24時間後の式2の化合物を用いた結果を示す。
図11Cは、投与の24時間後の式1の化合物を用いた結果を示す。
【0223】
図11D-11Eは、それぞれ式2および式1の化合物の投与72時間後の結果を示す。
【0224】
図11Fは、胆管構造が視認できるかどうかを決定する外科的に切開した動物を示す。その動物の肝臓を、重要な構造を露出させるように配置した。
図11F-11Hは、カローの三角形に関連する胆嚢および胆管を露出させるために隆起したローブを有する肝臓の白色光画像;式2の化合物の蛍光試験によって検出した800nm画像;白色光画像の上に800nmの画像を重ね合わせた合成画像;を示す。
【0225】
実施例10:マウスの排除経路
この実施例は、本明細書に記載される色素を動物に注入した場合の色素の排泄を評価するための実験を記載する。検査した色素は、安定なシアニン色素(IR色素):800CW、800BK-スルホネート(式1の化合物;800BKまたはBK)および800BK-NOS(式2の化合物;800NOSまたはNOS)であった。この研究では、ヌードマウス12匹(処理群あたり3匹)に、(1)プローブなし(対照群);(2)800CW;(3)800NOS;または(4)800BKを注入した。これらの3つのプローブ(800CW-1166g/mole(1091.1g/moleであったはずである)、800NOS-1011.09g/moleおよび800BK-1113.14g/mole)をPBSに溶解した。3つのプローブのスポット検査を行って、1nmole/100μlの注入量に希釈した場合の蛍光シグナルを検出した(
図12)。800CWの蛍光は800NOSおよび800BKの蛍光よりわずかに高かった。
【0226】
マウスに尾静脈注射により1 nmoleの色素を与えた。静脈注射後24時間にわたって、注射後5分、1時間、2時間、4時間、6時間および24時間で連続的にマウスを画像化した。1種の色素につき1つの動物の代表的な一連の画像を
図13A-13Cに示す。1つの動物につき
図13A-13Cいずれかの染料を含む。すべてのデータは同じLUTに標準化した。対照マウス(プローブなし)を参照(シグナルコントロールなし)として使用した。画像処理は、Pearl(登録商標)Trilogy Imaging System(LI-COR(登録商標))を用いて行った。
【0227】
次いでマウスを殺し、その臓器および組織(すなわち、肝臓、腎臓、肺、脾臓および筋肉)を採取した。臓器を画像化して蛍光を検出した。同じLUTを動物および臓器の画像に使用した場合、臓器の蛍光は検出できなかった。そのようにして、動物尺度の下端を拡張して、臓器の画像を評価することができた(
図14)。例えば、
図15A-15Dの画像には、「臓器1/10尺度」を用いた。
図16A-16Dの画像には、「臓器1/100尺度」を用いた。
【0228】
図15Aは、対照動物の臓器における蛍光を示さない。800CW(
図15B)、800NOS(
図15C)および800BK(
図15D)で処理した動物では、腎臓(左下)および肝臓(右下)が検出可能なシグナルを有していた。800CWの処理以外の処理により筋肉(右上)または肺組織(左上)は視認できなかった。1/10のLUT尺度では、動物のLUT尺度全体の1/10がハイレベルとなる。データは、動物全体のLUT尺度で画像を撮影すると、これらの臓器に残っている残存色素のみがあることを示す。
【0229】
図16A-Dは、調整された尺度は動物全体の尺度の1/100である、動物全体のLUT尺度を100分の1にした場合の臓器内のシグナルを示す。
図16Aは、対照動物からのシグナルを示す。
図16B、
図16Cおよび
図16Dは、それぞれ800CWで処理した動物、800NOSで処理した動物および800BKで処理した動物の臓器からのシグナルを示す。
【0230】
800CWと800BKは腎臓で排泄された。800CW動物における全体的なシグナルがより高いのは、主に、動物に注射されたプローブの濃度がたまたま高いということによるものである。
【0231】
800NOSは、胆道(肝臓、胆嚢および胆管)および腸を介して体内から排除された。800NOSで処理した動物では、色素は急速に肝臓から排除されたので、15分後に肝臓が視認された後に胆嚢が視認された。また、データは、色素が排泄のために腸に移動したことを示した。2~6時間の間は主なシグナルが腸内にあった。注入後24時間で、腸のシグナルはほとんど検出できなかった。
【0232】
臓器は3つのLUT尺度の下で画像化した。カバーされるシグナル範囲が徐々に小さくなっていく。尺度のレベルの下部の赤色から青色の完全な色の範囲をカバーするようにそれぞれ増加させて拡大した(
図14)。肝臓、腎臓、肺および筋肉といった標的臓器のいずれにもほとんどシグナルが残っていない。800CWおよび800BKについて、腎臓においても同様のシグナル強度が見られた。肝臓では、800BKは800CWに比べて高いシグナルを示した。結果は800BKが800CWおよび800NOSと比較して肝臓でより長い保持時間を有することを示す。これは、800BKの血漿タンパク質結合が800CWよりも多い(より高い)ことによると考えられる。
【0233】
この例は、IRDye 800NOSのクリアランスが全身から胆道系にわたり急速であり、肝臓での保持時間は非常に短く、また腸内へ迅速な排泄があることを示す。肝臓による迅速なクリアランスは、800NOSが低い血漿タンパク質結合活性を有することを意味する。
【0234】
実施例11:子宮摘出術における尿管の可視化
式1の医薬製剤を5mLの生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を含むバイアル(25mg)に溶解し、手術の15分前に5mg/mLの濃度でボーラス注射により患者に投与する。この処置のための医療装置は、PINPOINT内視鏡蛍光イメージングシステム(Novadaq, Mississauga, Ontario, Canada)である。処置中の任意の時点で、外科医が尿管を識別する必要があるとき、装置のモードを近赤外線検出画像に切り替え、外科医は医療装置のモニタまたはディスプレイを介して尿管を可視化する。この尿管の識別は、外科医が白色光イメージングを用いて尿管を同時に見つけることができるオーバーレイ画像としてモニタ上に可視化される。
【0235】
実施例12:胆嚢摘出術における胆道の可視化
式2の医薬製剤を5mLの生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を含むバイアル(25mg)に溶解し、手術開始の15分前に5mg/mLの濃度でボーラス注射によって患者に投与する。この手順のための医療装置は、da Vinci Firefly 外科システム(Intuitive Surgical、Sunnyvale CA)である。手術中、外科医が胆道を識別する必要があるとき、装置のモードを近赤外線検出画像に切り替え、外科医は、必要に応じて白色光画像と近赤外線画像を切り替えることによって医療装置のモニタまたはディスプレイを介して胆道を識別する。
【0236】
本明細書に記載される実施例および実施形態は、説明目的のみのためであり、その様々な変更または改変が当業者によって示唆されるものであり、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれ、本明細書で引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。