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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】履物の設計のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A43D 1/02 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A43D1/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020067422
(22)【出願日】2020-04-03
(62)【分割の表示】P 2016567558の分割
【原出願日】2015-05-08
(65)【公開番号】P2020163154
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】61/991,298
(32)【優先日】2014-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517154030
【氏名又は名称】アールエスプリント エヌ.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】クラッカース,トム
(72)【発明者】
【氏名】ウィルセン,ジャン-ピエール
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0133431(US,A1)
【文献】特表2007-526028(JP,A)
【文献】特開2005-192744(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042094(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0073162(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247909(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0138923(US,A1)
【文献】米国特許第8036768(US,B2)
【文献】欧州特許出願公開第1980224(EP,A2)
【文献】特開2013-017822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43D 1/00-999/00
A43B 1/00- 23/30
B29D35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物部品を設計するように構成された装置であって、
履物のひな型モデルと実行可能なソフトウェアとを備えた情報記憶装置と、
使用者の情報を作成するように構成されたセンサと、
前記情報記憶装置および前記センサと情報通信する処理装置とを備え、
前記処理装置は、前記ソフトウェアを実行し、前記装置に、
使用者の動的な足圧の測定を含む前記使用者の情報の受信と、
使用者のモデルの生成であって、
受信した前記使用者の情報、および、
前記使用者の情報において提供されている少なくとも1つのタイプの足の特徴と、前記使用者の情報において提供されていない異なるタイプの足の特徴とを関連付ける統計的な足の情報に基づいた、前記使用者の足のモデルを含む使用者のモデルの生成と、
前記使用者のモデルと1つ以上の足の統計形状モデルとの比較に基づく、前記使用者に固有の1つ以上の問題点の決定と、
前記使用者のモデルと前記1つ以上の足の統計形状モデルとの前記比較に基づいた1つ以上の矯正特徴の決定であって、前記使用者が着用しているときの注文履物のモデルに基づいて、履物部品が足に合うことおよび履物部品の挙動に影響を与えることによって前記1つ以上の問題点に対処するための1つ以上の矯正特徴の決定と、
決定された前記1つ以上の矯正特徴を備えた注文履物のモデルの生成とを行わせるように構成され
前記1つ以上の矯正特徴は、低減または増加された厚み、屈曲線、リブ、切れ込み、細溝、または微細構造の領域のうちの少なくとも1つを備え、前記微細構造は前記1つ以上の問題点に対処するように構成されたサイズと位置を有し、前記微細構造はビーム、格子、正規3Dグリッド、正規または非正規の開放または閉鎖のセル構造、発泡またはスポンジ状構造、トラス、バネ、乱毛、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、六方晶系、三方晶系、正方晶系、および立方晶系の構造のうち1つ以上を含む、
装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記ソフトウェアを実行し、前記装置に、
前記注文履物のモデルに基づいた履物部品の作成をさらに行わせるように構成され、
前記履物部品は3Dプリント技術によって作成される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記使用者の情報は、足圧情報と、歩行情報と、足の身体情報と、足の画像情報とのうちの1つ以上を含み、前記歩行情報は歩幅、歩調、整列、足音および足の回転のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記履物部品は、インソールと、ミッドソールと、アウトソールとのうちの1つである請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記履物部品は、低減または増加された、厚み、屈曲線、リブ、切れ込み、細溝、または微細構造の領域のうちの少なくとも1つを備えた請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記履物部品は使用者の足の生体機械的作用を変化させるように構成された請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記履物部品は使用者の足の静的重量分布を改善するように構成された請求項2に記載の装置。
【請求項8】
使用者のモデルに基づいた注文履物のモデルの装置による設計の方法であって、
前記装置による、使用者の動的な足圧の測定を含む使用者の情報の受信と、
使用者のモデルの生成であって、
受信した前記使用者の情報、および、前記使用者の情報において提供されている少なくとも1つのタイプの足の特徴と、前記使用者の情報において提供されていない異なるタイプの足の特徴を関連付ける統計的な足の情報に基づいた、前記使用者の足のモデルを含む前記使用者のモデルの生成と、
前記装置による、前記使用者のモデルと1つ以上の足の統計形状モデルとの比較に基づく、前記使用者に固有の1つ以上の問題点の決定と、
前記装置による、前記使用者のモデルと前記1つ以上の足の統計形状モデルとの前記比較に基づいた1つ以上の矯正特徴の決定であって、前記使用者が着用しているときの前記注文履物のモデルに基づいて、履物部品が足に合うことおよび履物部品の挙動に影響を与えることによって前記1つ以上の問題点に対処するための1つ以上の矯正特徴の決定と、
前記装置による、決定された前記1つ以上の矯正特徴を備えた前記注文履物のモデルの生成と、を行う方法であって、
前記1つ以上の矯正特徴は、低減または増加された、厚み、屈曲線、リブ、切れ込み、細溝、または微細構造の領域のうちの少なくとも1つを含み、前記微細構造は前記1つ以上の問題点に対処するように構成されたサイズと位置を有し、前記微細構造はビーム、格子、正規3Dグリッド、正規または非正規の開放または閉鎖のセル構造、発泡またはスポンジ状構造、トラス、バネ、乱毛、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、六方晶系、三方晶系、正方晶系、および立方晶系の構造のうち1つ以上を含む、
方法。
【請求項9】
前記注文履物のモデルに基づいた履物部品の作成をさらに含み、
前記履物部品は3Dプリント技術によって作成される請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記使用者の情報は、足圧情報と、歩行情報と、足の身体情報と、足の画像情報とのうちの1つ以上を含み、前記歩行情報は歩幅、歩調、整列、足音および足の回転のうち1つ以上を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記履物部品は、インソールと、ミッドソールと、アウトソールとのうちの1つである請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記履物部品は、低減または増加された、厚み、屈曲線、リブ、切れ込み、細溝、または微細構造の領域のうちの少なくとも1つを備えた請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記履物部品は使用者の足の生体機械的作用を変化させるように構成された請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記履物部品は使用者の足の静的重量分布を改善するように構成された請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
本願は履物の分野に関し、特に、注文履物の設計のための方法および装置に関する。
【0002】
従来の履物は、使用者に対して特注生産されない。むしろ、履物は、最も多くの足に、最も多くの時間適合する一般的な特徴に基づいて設計される。結果として、履物はたいてい、使用者にとって快適でなく、かつ/または問題のある足に関連した状態の矯正または防止ができない。
【0003】
足に関連する様々な問題を矯正しようと、履物の挿入物(例えば、中底)が使用されてきた。残念なことに、多くの場合、履物の挿入物は元の履物よりも、使用者の足により適するものではない。結果として、少なくともある程度、使用者の実際の足に気を配る間、「注文」履物挿入物が試され、問題を矯正または防止するために発展してきた。
【0004】
残念ながら、注文履物挿入物は、非注文履物とは別に使用されるように意図されている、注文中底に多くが限られている。例えば、中物および表底のような、非注文履物の他の特徴は、使用者に対して特注生産されないため、注文履物挿入物の効果は制限されている。
【0005】
さらに、注文履物挿入物の設計は、たいてい手動であり、時間を消費し、誤りが多い傾向にあり、高額な操作である。このようなものとして、このような注文履物挿入物の大規模生産は、当然、それぞれの履物挿入物が注文されるため、問題がある。これらの要因およびその他は、注文履物の有用性と効果とを制限し、これらの費用を上昇させてきた。
【0006】
したがって、必要とされるものは、注文履物の設計と製造とのための、改善された方法および装置である。
【0007】
〔概要〕
本願は注文履物、および、特に、中底、中物、および表底のような、注文履物部品の設計のための方法および装置を記載する。
【0008】
一実施形態において、使用者のモデルに基づいた注文履物の設計の方法は、使用者に関係する使用者の情報の入手と、入手した前記使用者の情報に基づいた使用者のモデルの生成と、前記使用者のモデルに基づいた1つ以上の矯正情報の決定と、決定された矯正特徴を備えた注文履物のモデルの生成とを含んでいる。
【0009】
前記方法は、さらに、前記注文履物のモデルに基づいた履物部品の作成をさらに含んでいてもよく、前記履物部品は追加の製造技術によって作成される。
【0010】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記使用者の情報は、足圧情報と、歩行情報と、身体情報と、画像情報とのうちの1つ以上を含む。
【0011】
前記方法のいくつかの実施形態において、1つ以上の矯正情報の決定は付加的な統計情報に基づく。
【0012】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記統計情報は統計形状モデルを含む。
【0013】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記履物部品は、中底と、中物と、表底とのうちの1つである。
【0014】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記注文履物のモデルは、曲げ線パターンと、変更厚み領域と、気泡構造とのうちの少なくとも1つを備えている。
【0015】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記履物部品は、曲げ線パターンと、変更厚み領域と、気泡構造とのうちの少なくとも1つを備えている。
【0016】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記履物部品は使用者の足の生体機械的作用を変化させるように構成されている。
【0017】
前記方法のいくつかの実施形態において、前記履物部品は使用者の足の静的重量分布を改善するように構成されている。
【0018】
他の実施形態において、履物部品を設計するように構成された装置は、履物のひな型モデルと実行可能なソフトウェアとを備えた情報記憶装置と、使用者の情報を作成するように構成されたセンサと、情報記憶装置とセンサと情報通信する処理装置とを備え、前記処理装置は、前記ソフトウェアを実行し、前記装置に、使用者に関係する使用者の情報の入手と、入手した前記使用者の情報に基づいた使用者のモデルの生成と、前記使用者のモデルに基づいた1つ以上の矯正情報の決定と、決定された矯正特徴を備えた注文履物のモデルの生成とを行わせるように構成されている。
【0019】
前記処理装置はさらに、前記ソフトウェアを実行し、前記装置に、前記注文履物のモデルに基づいた履物部品の作成をさらに行わせるように構成されていてもよく、前記履物部品は追加の製造技術によって作成される。
【0020】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記使用者の情報は、足圧情報と、歩行情報と、身体情報と、画像情報とのうちの1つ以上を含む。
【0021】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記処理装置は、前記ソフトウェアを実行し、前記装置に、統計情報に基づく1つ以上の矯正情報の決定をさらに行わせるように構成されている。
【0022】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記統計情報は統計形状モデルを含む。
【0023】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記履物部品は、中底と、中物と、表底とのうちの1つである。
【0024】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記注文履物のモデルは、曲げ線パターンと、変更厚み領域と、気泡構造とのうちの少なくとも1つを備えている。
【0025】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記履物部品は、曲げ線パターンと、変更厚み領域と、気泡構造とのうちの少なくとも1つを備えている。
【0026】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記履物部品は使用者の足の生体機械的作用を変化させるように構成されている。
【0027】
前記装置のいくつかの実施形態において、前記履物部品は使用者の足の静的重量分布を改善するように構成されている。
【0028】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、注文履物システムの実施形態を描写する。
【0029】
図2は、注文履物の設計のための方法を描写する。
【0030】
図3Aは、例示的な情報収集システムのグラフィカルユーザインタフェースを描写する。
【0031】
図3Bは、例示的な履物設計構成要素のグラフィカルユーザインタフェースを描写する。
【0032】
図4A-4Cは、矯正特徴を含む、例示的な中物(履物部品)を描写する。
【0033】
図5A-5Bは、複数の矯正領域を備えている、例示的な中底(履物部品)を描写する。
【0034】
図6A-6Bは、付加的に製造された中底(履物部品)を描写する。
【0035】
図7は、例示的な追加の製造装置を描写する。
【0036】
図8は、例示的なコンピュータを描写する。
【0037】
〔特定の発明の実施形態の詳細な記載〕
注文履物は、足に関連する、知られている様々な状態の処置に対して有益であるかもしれない。例えば、足の回内(すなわち、立つ、歩く、および走る間の、足の内側への回転)は、むくみとアキレス腱の問題との原因となるかもしれない。回内の処置のため、注文履物は足への静的および動的圧力を矯正または改善をするように設計されていてもよい。例えば、注文履物は足の平均的な土踏まずの下における支持を補正してもよく、履物の特定の方向へ曲げる力を低減してもよい。
【0038】
他の例として、中間の荷重を低減し、第一趾(すなわち、足の親指)に対する特注の支持提供する注文履物と共に、腱膜瘤が処置されるかもしれない。足裏筋膜炎、関節炎、血行不足、中足骨痛症、膝蓋大腿膝痛、過労性脛部痛、アキレス腱炎、反復運動損傷、およびその他の当業者によって知られているもののような、その他の状態もまた、注文履物を使用して処置されてもよい。
【0039】
足の状態に対し逆に作用する、現行の処置に加えて、注文履物は足の損傷と状態の兆候とを防止することを促進してもよい。例えば、注文履物は、足踏みの衝撃の間のより良好な体重の分散、または動態的変動の間の足踏みおよび回転の方法の変更によって、足、足首、脚、膝、背中等への損傷に関連する圧力を低減してもよい。同様に、注文履物は、(動きの推移の間の、脚の前部の回転のような)他の方向への動きの促進の間、(足首の回転運動のような)特定の方向における動きを防止してもよい。
【0040】
さらに、注文履物は、(例えば、運動選手に対する)生体機械的な能力を改善してもよい。例えば、注文履物は、走者の全般の速度を次第に向上させる走りのような、動態的活動の間の足の衝撃の角度を変化させてもよい。当業者に知られているものとして、注文履物の他の多くの利益が存在する。
【0041】
注文履物は、特定の使用者の身体的特徴または特性―いわゆる「静的」使用者情報に関する情報を使用して設計されてもよい。例えば、使用者の足の寸法および(例えば、立っている間の)静的な足の圧力が測定されてもよい。
【0042】
注文履物は、動的足圧力の測定のような、動的使用者情報を使用して設計されてもよい。例えば、使用者の足の動的圧力は、走る、歩く、跳ぶ、着地する、旋回する、回転する、振動する等のような、動的な足の活動の間に測定されてもよい。事実上すべての機能的生体機械的測定が、注文設計の間に使用されてもよい。
【0043】
注文履物は、統計母集団情報のような、非使用者固有情報を使用して設計されてもよい。例えば、特定の寸法の足の平均的な形状が、統計的に決定されてもよく、またはそうでなければ、現行の統計データセットから使用されてもよい。さらに、これらとその他の身体的な足の特徴とに対する統計的な平均は、分布、標準偏差、分散、および技術において知られているもののような、統計変数に関連していてもよい。このように、靴の寸法のような、使用者に関連した単一の足の特徴を知ることは、多くの関連する統計的な足の特徴(例えば、形状、寸法等)の使用を可能にするかもしれない。
【0044】
結局、後述されるように、使用者固有の解剖学的特徴、使用者固有の整形外科的要求、使用者固有の処置の要求、使用者固有の能力の要求、および当業者に知られているようなその他のものからなる、前述の情報の種類およびその他は、注文履物の作成に使用されてもよい。
【0045】
〔静的な使用者固有の情報〕
静的な使用者固有の情報は、注文履物の設計に用いられてもよい。異なる種類の静的な使用者固有は、異なる方法によって生成されることができる。
【0046】
例えば、性別、身長、および体重などの基本的な使用者の情報は、注文履物の設計のために用いられてもよい。基本的な使用者の情報には、客観的なもの(例:身長および体重)があっても、主観的なもの(例:活動レベルおよび使用者の嗜好)があってもよい.
静的な使用者固有の情報は、身体部分固有であってもよい。例えば、特定の使用者の足に関する情報は、足長、足幅、土踏まず高、土踏まず位置、足形、足紋、靴サイズ、様々な方向の足の屈曲または伸展、足の内反および外反、様々な足の筋肉の強さ、骨の整列、回内、回外、および当業者に知られている他の特徴を含んでもよい。場合によって、物理的特徴は、手動の物理的計測手段(例:巻尺)を用いて測定されても、デジタルの計測システム(例:デジタル秤)によって測定されてもよい。
【0047】
足のような、様々な身体部分の形状および配置の複雑さを考慮すれば、情報をより正確に捕捉する方法が、有益であろう。
【0048】
例えば、使用者固有の情報は、ライブカメラまたはスチールカメラなどの画像センサを1つ以上用いて、生成されてもよい。イメージセンサを1つ備える従来のデジタルカメラまたは画像センサを2つ以上備えるステレオカメラを含む、様々な種類のカメラを用いることができる。携帯機器のカメラを含む従来のデジタルカメラは、奥行きおよび3D構造を推測するために異なる角度から、身体部分などの客体の画像を複数撮影することに用いられてもよい。足(または、足首、脹脛などのような他の解剖的特徴)などの身体部分の複数の画像は、3Dモデルなどの三次元(3D)の使用者固有の情報を決定する目的において、例えば、コンピュータシステムによって分析されてもよい。
【0049】
例えば、「2D画像からの3D顔復元」と題された米国特許8,126,261は、その内容全体は参照によって本明細書に組み込まれるが、複数の二次元(2D)画像から、顔などの3Dモデルを決定するための方法を開示している。同様に、「周期的照明を用いたデジタル3Dカメラ」と題されたPCT特許公開WO2012/129252は、その内容全体は参照によって本明細書に組み込まれるが、デジタルカメラと投光パターンとを用いて、2D画像情報を用いて3Dモデルを決定する方法を開示している。加えて、2つ以上のカメラを、3Dの使用者固有の情報を生成するために、同時に用いてもよい。例えば、「環境の3Dモデルを形成するための方法および装置」と題された米国特許8,532,368は、その内容全体は参照によって本明細書に組み込まれるが、携帯ステレオカメラシステムを用いて、3Dモデルを決定する方法を開示している。したがって、画像センサは、上述の方法および周知の他の方法において、2Dの使用者固有の情報を捕捉するため、および、2D情報に基づいた使用者固有の3Dモデルを構築するために用いられてもよい。
【0050】
場合によって、携帯機器(例:スマートフォンおよびタブレット)は、「3Dカメラ」として参照されてもよいステレオ画像センサを含んでもよい。このような機器は、画像情報を捕捉し、独立した処理システムによる追加的な処理を必要とせずに3D情報または3Dモデルを作成する能力を有してもよい。
【0051】
加えて、マイクロソフト社(米国,ワシントン州,レッドモンド)から購入できる「Kinect」などのより高度なカメラシステムは、奥行き情報を含む画像情報を提供する。同様に、4DDynamics(ベルギー,アントワープ)の3Dスキャナ「Gotcha」またはDitizerTM(米国,ニューヨーク州、ニューヨーク)のMakerBot(登録商標)を用いてもよい。
【0052】
使用者固有の情報を決定するために、1以上のカメラなどの画像捕捉機器を用いることは、このような機器は通常デジタルかつ可搬かつ比較的安価であることから、有益である。このため、注文履物を設計するためのシステムは、全体または部分(例:画像システム)が運搬可能であってもよい。このようなシステムは、可搬性によって、異なる状況において使われることがより可能になる。
【0053】
他の機器が3Dの使用者固有の情報を生成するために用いられてもよい。例えば、光学式スキャナ、レーザ式スキャナ、および当業者に知られている他のスキャンシステムを、足などの身体部分にスキャンし、スキャンされた身体部分に関する3Dモデルを作成するために、用いてもよい。例えばレーザ式または光学式のスキャンシステムは、スキャンされている客体のかなり精密な3Dモデルを生成できることから、有益である。ただし、このようなスキャンシステムは、上述のような画像に基づくモデルシステムよりも、可搬性が低く、高価なことがある。
【0054】
医療画像技術も、2Dおよび3Dの使用者固有の情報を生成するために、用いてもよい。例えば、X線スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、陽電子放射断層撮影(PET)スキャン、磁気共鳴画像(MRI)、超音波スキャン、および当業者に知られている他の医療画像技術を、2Dおよび3Dの使用者固有の情報を作成するために、用いてもよく、2Dおよび3Dの使用者固有の情報を、次に、足などの身体部分の2Dまたは3Dのモデルを作成するために、用いてもよい。特に、或る種類の医療画像は、骨格、骨の整列、筋肉と靭帯との配置、軟骨の配置、および周知の他の特徴および機能などの、体内の解剖的特徴および機能について、追加的に詳細も提供することができる。注文履物の設計は、このような特徴を効果的に説明するかもしれない。
【0055】
センサも、使用者固有の情報を決定するために、用いてもよい。例えば、圧力感知パッドは、使用者の足紋に関連する圧力の分布を記録できる。つまり、使用者の静的な足紋に関連して読み取る圧力を複数生成するために、使用者が圧力感知パッドの上に立ってもよい。
【0056】
場合によって、様々な形式の計測手段、画像化、およびセンシングを、足型などの使用者の身体部分の押し型(cast)、流し型(mold)、または他の印象に用いてもよい。これによって、注文履物の設計のために、例えばスキャン機材と同じ場所に、使用者が居る必要はなくなる。あるいは、場合によって、使用者は、カメラ付き携帯電話またはビデオカメラなどの使用者所有の機材を用いて、2Dまたは3Dの画像情報などの情報を生成し、そして、使用者用の注文履物を設計するための情報処理システムに、その情報を提供してもよい。この場合、別の態様の注文履物設計システムと同じ場所に、使用者がいる必要はなくなる。例えば、使用者は、自身が生成した複数の2Dの画僧情報と一緒に、基本的な使用者の情報(例:身長、体重、および嗜好情報)を、使用者用の注文履物を設計および製造するのにその情報を用いる遠隔サービスに、提供してもよい。
【0057】
一般的に言えば、静的な使用者固有の情報を生成する前述の方法を、足などの使用者の身体部分の2Dまたは3Dモデルを詳細に作製するために、用いてもよい。次に、それらのモデルは、使用者用の注文履物設計するために、用いられることができる。最後に、Materialise USA(米国,ミシガン州,プリマス)から市販されているソフトウェアなどのコンピュータ支援設計(CAD)またはコンピュータ支援製造(CAM)のソフトウェアを、使用者固有の情報の処理および注文履物の設計の作成のために、用いてもよい。
【0058】
〔動的な使用者固有の情報〕
注文履物は、動的な使用者固有の情報を用いて設計されてもよい。動的な使用者固有の情報は、例えば走行、歩行、跳躍、着地、旋回、前後転(rolling)、搖動などの動的な使用者の運動に関して収集される情報を含む。
【0059】
動的な使用者固有の情報を測定する手段の1つである圧力感知マットまたはパッドは、時間をかけて圧力情報を測定し、その情報を例えば処理システムに提供するように構成されている。このような圧力感知パッドは、使用者の運動中に同時に一歩より多く測定できるように、比較的大きくてもよい。加えて、十分なサイズの圧力感知パッドは、歩幅、歩調、整列、足音、足の回転、および当業者に知られている他の特徴などを測定可能であってもよい。
【0060】
足の動的な圧力分布を測定するスステムは、例えば、欧州特許出願EP0970657A1および欧州特許出願EP1127541A1に開示されており、それらの内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる。運動中の足の動的圧力の測定に基づいて、足の様々な部分の運動について、推測することができる。最終的に、注文履物を、動的な圧力測定に基づいて設計してもよい。
【0061】
圧力感知機器を、例えば使用者装着型の力センサ、運動捕捉センサ、および画像センサなどの他の動的な情報を捕捉する機器と併せて用いてもよい。力センサは、例えば、使用者に取り付けて、使用者が動的に運動しているときの力を測定することができる。場合によっては、運動感知センサを備える携帯機器を、分析用の運動情報の収集に用いてもよい。このため、上述のように、使用者は使用者所有の携帯機器を、静的な使用者の情報(基本的な使用者の情報および静止カメラなど)を捕捉するためだけでなく、力および運動の情報などの動的な使用者の情報を捕捉するためにも、用いてもよい。場合によって、使用者は、使用者所有の携帯機器を用いて、注文履物の設計に必要な全情報を収集してもよい。
【0062】
運動捕捉システムを、動的な使用者の情報を捕捉および分析するために、用いてもよい。例えば、使用者に取り付けられたコンピュータ識別可能な標的および監視システムを用いるシステムは、動的な使用者の情報を生成するために、標的を追跡してもよい。
【0063】
動的な情報の測定を、組み合わせてもよい。例えば、圧力感知パッドおよび/または運動センサを、動画捕捉機材と一緒に用いてもよいことから、動的な情報を活動中の使用者の動画映像と比較できる。例えば、高速カメラは、足などの使用者の身体部分の運動を記録することができ、同時に、圧力感知センサは、足の運動、衝撃などに関する情報を捕捉することができる。
【0064】
〔統計的な身体部分の情報〕
注文履物を、人口情報などの統計的な身体部分の情報を用いて設計してもよい。例えば、特定サイズの靴を、分析する人口情報に基づいて統計的に予測可能な幾つかの特性と、関連付けてもよい。上述のように、特定サイズの靴を、そのサイズの「平均的」な足の足長および足幅に関する統計的な分布に関連付けるのと同様に、そのサイズの足の、例えば爪先、踵、土踏まずなどの様々な解剖的特徴の配置に関する統計的な分布に関連づけてもよい。
【0065】
場合によって、統計的な形状モデル(SSM)を、複数のユーザ固有の2Dまたは3Dの身体部分の情報に基づいて、構築してもよい。統計的な形状モデルを、例えば、使用者の身体部分の形状を分析するのに、または、注文履物の設計のために使用者の身体部分のモデルを作成するのに、用いることができる。このような統計的な形状モデルは、不完全か、または精密でない使用者固有の情報しか取得できないとき、特に有用かもしれない。加えて、足などの身体部分の統計的な形状モデルを、その身体部分の2Dまたは3D情報の自動分析を提供するために、用いてもよい。
【0066】
〔使用者のモデル〕
使用者のモデルを、静的な使用者固有の情報、動的な使用者固有の情報、統計的な情報、または本明細書中に記載したような他の情報のうちの1つ以上に基づいて、生成してもよい。場合によって、使用者のモデルは、使用者の足などの身体部分の2Dまたは3Dモデルであってもよい。場合によって、使用者のモデルは、2Dまたは3Dにおける使用者の身体部分の描画等のグラフィック情報を含んでもよく、そうではなく、使用者に関する様々な属性または特性を含む情報モデルであってもよい。場合によって、使用者のモデルは、同一モデル内に、グラフィック情報と属性情報との両方を含む。例えば、使用者モデルは、画像情報に基づいた使用者の身体部分の視覚的な描写、ならびに、動的な使用者固有の情報に基づいた視覚的な描写における様々な点に関連付けられた圧力情報を含んでもよい。
【0067】
場合によっては、信頼できる使用者固有の情報を、ほとんど受け取ることができないため、使用者のモデルを、統計的な情報またはひな型、あるいはその両方に主に基づいて、生成してもよい。例えば、使用者のモデルを、圧力情報などの静的なまたは動的な情報として保管してもよい。この情報は、モデルを改善できるため、適切な注文履物を使用者用に設計できる。
【0068】
〔履物の部分〕
注文履物は、幾つかの個別の履物の部分を備えてもよい。例えば、本体、中底、中物、および表底などを備えてもよい。
【0069】
本体は、使用者の足の横と上とを囲む履物(靴など)の部分であってよい。本体は、踵支持部、足首支持部、帯紐、靴紐、ストラップ、舌革、および周知の他の構造などの部分を含んでもよい。場合によって、本体は、ユーザが例えば靴紐またはストラップを用いて選択的に結合させる2以上の部分を、含んでもよい。
【0070】
中底は、使用者の足の裏(および横の一部範囲)と直接接触する履物(靴など)の内側部分であってもよい。場合によって、注文中底は、靴の固定された(すなわち永続)部分であっても、靴の取り外し可能な部分であってもよい。
【0071】
中物は、主に衝撃吸収部分である場合もある、中底と表底との間の履物の部分であってもよい。場合によって、中物を、使用者の体重の相当部分を指示することを主に担うと共に、使用中に履物に衝撃吸収特性を提供するように設計してもよい。場合によって、中物を、中底および/または表底に見出される特徴の効力を強めるように設計してもよい。
【0072】
表底は、履物の最外部分であってもよく、地面と向かい合うように設計してもよい。場合によって、表底は、代わりに接地面(tread)として知られている。表底を、例えば、様々な面上において靴が踏ん張るための構造および/または組織を備えるように、設計してもよい。加えて、表底を、穿刺または他の有害な侵害から使用者の足を保護するために、設計敷いてもよい。加えて、上述のように、表底は、中底に見出される特徴の効力を強めるように設計してもよい。
【0073】
場合によって、履物(靴など)は、上述の部分を1つ以上含んでもよい。これら履物の部分の異なる組み合わせは、想定されている。例えば、ある種の履物は、本体と表底と中底とを備えるが、中物を欠いてもよい。場合によって、本体と中底と中物と表底とのうちの1つ以上は、永続的に互いに取り付けられている。例えば、本体と中底と中物と表底とは、別々に設計され、もしかすると異なる材質を含んだとしても、一体の履物として製造されることができる。
【0074】
場合によって、本体と中底と中物と表底のうちの1つ以上は、上述の様々な種類の情報に基づいて設計した注文履物の部分である。場合によって、上述の履物の部分のうちの1つ以上は、1種以上の素材ならびに/あるいは1つ以上の構造または矯正特徴を備えてもよい。例えば、中物は、履物の全体重量を減らしながら、衝撃を吸収するための様々な3D構造を備えてもよい。
【0075】
〔履物の矯正特徴〕
注文履物は、1つ以上の矯正特徴を備えてもよい。矯正特徴は、具体的には、使用者が着用しているとき、履物が足に合うことおよび/または履物の挙動に影響するように、設計される。
【0076】
実施形態によっては、矯正特徴は、使用者の足の解剖的または生体機械的な問題を矯正するものである。例えば、使用者の土踏まずが比較的高い場合、標準的な履物においては支持に問題が生じる。この場合、注文履物が備えてもよい注文履物の部分は、使用者の体重を履物内により良く分配するために、高い土踏まずの下に支持部を加える中敷きなどである。
【0077】
実施形態によっては、矯正特徴は、傷害または解剖的問題を矯正するというよりも、むしろ傷害を防止するものである。例えば、動的な情報を、運動中(例:走行時)の使用者の足の平衡を割り出すために、用いてもよい。割り出された平衡を、最適な平衡シーケンスと比較してもよい。最適な平衡シーケンスは、長期にわたり傷害を負わずに高い水準において競技しているアスリートなどの使用者を特徴付ける動的または統計的な情報から導出することができる。このように、矯正構造を、傷害を防止するために、運動中の足の平衡を改善する働きかけをするように、設計してもよい。
【0078】
さらに、実施形態によっては、矯正特徴は、既存の又は潜在的な問題を矯正するというよりも、むしろ挙動を改善するものである。例えば、既に示したように、走行中の足の接地の初期に関係する特徴は、アスリートの走行速度に関係する。これに留意して、動的な情報を、着地域(例:踵、足の中間部、足の前部)、足の中央部と側方部との各々に掛かる力の比率、接地の最大力、足を繰り出す速度、および他の周知の特徴などの走行中の使用者の足の接地の初期の特徴を割り出すために、収集してもよい。割り出したこれらの特徴に基づいて、中物または表底などの注文履物の部分は、走行速度および/または区立を改善するために、走行時の使用者の足の接地の初期を修正するように、構成されることができる。
【0079】
矯正特徴は、例えば、履物部分の厚みを増減する領域を含んでもよい。例えば、注文中底に、土踏まず付近の厚みを増して、土踏まずを支持する付加的な支持体を設けてもよい。
【0080】
また、矯正特徴は、履物部分の屈曲をある方向に促進または抑制する屈曲線、リブ、切れ込み、細溝、またはその他のパターンを、備えてもよい。このような矯正特徴の数、厚み、方向、および相対的な近さは、履物部分がある方向に屈曲する傾向に影響することができる。例えば、表底が特定方向のリブおよび切れ込みを備えることによって、設計された方向に外底が屈曲する傾向を促進し、かつ、望ましからざる方向に屈曲する傾向を是正してもよい。
【0081】
また、矯正特徴は、比較的単純なまたは比較的複雑な微細構造を備えてもよい。微細構造例は、例えば、ビーム、格子、正規3Dグリッド、正規または非正規の解放または閉鎖の細胞構造、発泡またはスポンジ状構造、トラス、バネ、モジャモジャ(shock)、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、六方晶系、三方晶系、正方晶系、または立方晶系の構造、および周知の他の構造を含む。微細構造は、履物部分の機械的挙動などの履物部分の特性に影響することができる。さらに、弾性、粘弾性、剛性、摩耗抵抗性、および密度の履物部分の他の特性に、微細構造は影響することができる。なお「微細構造(microstructure)」の接頭辞「微細(micro)」は、主に、かなり小さいレベルの構造をカスタマイズできる能力に言及する物であって、微細構造のサイズを全体として限定するものではない。実際、微細構造を備える構造は、どのようなサイズまたは形状に構築されてもよい。
【0082】
微細構造の様態に加えて、構造(すなわち、構成要素の部分)の位置およびサイズは、履物の特性に影響することができる。
【0083】
加えて、微細構造間の接続点の特性も、履物部分の特性に影響することができる。例えば、接続点の厚みは、特定の履物部分の機械的特性に影響することができる。場合によっては、例えば、接続点を選択的に厚くしたり薄くしたりすることによって、異なる方向の異なる負荷に対する履物部分の反応の仕方に影響することができる。
【0084】
場合によって、矯正特徴を積層したり組み合せたりすることによって、履物部分がより複雑な特性を備えてもよい。例えば、ある履物部分の厚みを変化させるのに加えて、その履物部分の厚みを構成する個別層が、微細構造または上述の他の構造などの独自矯正特徴に含まれていてもよい。
【0085】
場合によって、矯正特徴は履物部分の表面にあってもよい。例えば、組織、パターン、線、または上述の他の構造などの表面特徴を、注文履物の使用者に、さらなる踏ん張り、足触り、快適さなどを提供するために用いてもよい。
【0086】
場合によって、1つ以上の上述の矯正特上は、履物部分に関連する領域に配置されてもよい。このような領域は、異なる区域における履物の異なる機械的特性に影響するように構成されることができる。場合によって、履物部分の全体が、1つの領域であっても、履物部分(例:中底)が、1以上の領域を含んでもよい。場合によって、1つの領域が備える微細構造などの矯正特徴は、単一であってもよい。
【0087】
要するに、履物における異なる矯正特徴の選択、配置、および物理的特性を、使用者の生体機械的な問題を矯正または是正したり、傷害を防止したり、および/または、さらなる成績を促進したりするために、用いてもよい。
【0088】
〔付加的な製造〕
注文履物は、追加的な製造技術を用いて、製造されることができる。多くの追加的な製造技術が知れらており、例えば、立体リトグラフィ法(SLA)、選択的レーザ焼結法(SLS)、選択的レーザ融解法(SLM)、および熱溶解積層法(FDM)がある。
【0089】
立体リトグラフィ法(SLA)は、一度に一層ずつ物体を「印刷(printing)」するために用いられる追加的な製造技術である。SLA装置は、例えば、放射される放射線によって光反応性材料を硬化させるために、レーザを用いてもよい。実施形態によっては、SLA装置は、一度に一層ずつ物体を構築するために、例えば、硬化可能な感光性高分子(「樹脂」)などの光反応性材料の表面に交差するようにレーザを導く。各層について、レーザビームは、液体樹脂の表面上において物体の断面を追跡し、その断面を硬化および凝固すると共に、下層に結合する。一層が完了した後、SLA装置は、単層の厚みと同一距離分、製造プラットフォームを下げ、それから、未硬化の樹脂(すなわち光反応性材料など)の新たな表面を、前層の上に堆積する。の表面上に、新たなパターンが追跡され、これによって、新たな層が形成される。一度に一層ずつこのプロセスを繰り返すことによって、完全な3D部品を形成することができる。
【0090】
選択的レーザ焼結法(SLS)は、物体を3D印刷するために用いられる、別の追加的な製造方法である。SLS装置は、たいてい、プラスチック、金属、セラミック、またはガラスの粉末を小粒ずつ「焼結(sinter)」(すなわち、熱溶解)して、3D物体にするために、高出力レーザを用いる。SLAと同様に、SLS装置は、CAD設計に従って、粉末ベッドの表面上を断面スキャンするために、レーザを用いることができる。また、SLAと同様に、SLS装置は、一層が完了した後、製造プラットフォームを一層の厚み分下げて、新たな層を形成するために粉末の新たな層を加えることができる。実施形態によって、SLS装置は、焼結プロセス中の温度にレーザが上げることを容易にするために、粉末を予熱してもよい。
【0091】
選択的レーザ融解法(SLM)は、物体を3D印刷するために用いられる、さらに別の追加的な製造方法である。SLSのように、SLM装置は、通常、金属粉末の薄層を選択的に融解して、固体の金属の物体を形成するために、高出力レーザをもちいる。同様である一方、融点がはるかに高い材料を通常用いるため、SLMはSLSから異なる。SLMを用いて物体を構築すると、金属粉末の薄層は、様々な被覆メカニズムによって分配されることができる。SLAおよびSLSのように、製造する表面が上下に動くため、各層は個別に形成されることができる。
【0092】
熱溶解積層法(FDM)は、押出ノズルから熱可塑性材料などの小さいビーズを押し出して層を形成することによって、3D物体を形成する別の追加的な製造方法である。通常の手順では、押出ノズルを熱して、押し出すときに原材料を融解する。そして、原材料は、ノズルから押し出されるとすぐに固まる。押出ノズルは、装置の機構によって、1以上の方向に動かされることができる。上述の追加的な製造技術と同様に、押出ノズルは、CADまたはCAMソフトフェアに制御された経路に従う。また同様に、部品は、下から上に、一度に一層ずつ構築される。
【0093】
様々な材料を用いて追加的な製造装置によって物体を形成してもよく、例えば、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネイト(PC)、PC-ABS、PLA、ポリスチレン、リグニン、ガラスまたは金属の粒などの添加物を含むポリアミド、メチルメタクリレート‐アクリロニトリルブタジエン‐スチレン共重合体、重合体‐セラミック複合材料などの吸収性材料、および、他の同様に適合する材料を用いてよい。実施形態によっては、市販されている材料を活用してもよい。このような材料には、例えば、DSM Somosから販売されているDSM Somos(登録商標)シリーズの材料7100、8100、9100、9420、10100、11100、12110、14120、および15100;Stratasysから販売されているABSplus‐P430、ABSi、ABS‐ESD7、ABS‐M30、ABS‐M30i、PC‐ABS、PC‐ISO、PC、ULTEM 9085、PPSF、およびPPSU材料;3-Systemから販売されている材料のAccura Plastic、DuraForm、CastForm、Laserform、およびBisJet line;アルミニウム、クロムめっきコバルト、およびステンレス鋼材料;マルエージング鋼;ニッケル合金;チタンEOS GmbHから販売されているPA線材料、PrimeCastおよびPrimePart材料、ならびにAlumideおよびCarbonMideが含まれてもよい。
【0094】
注文履物は、注文履物部分を含めて、追加的な製造技術を用いて製造されてもよい。追加的な製造装置は、履物部分または履物の全体を単一かつ一体の被加工物に「3D印刷」してもよいことから、有利である。例えば、中底と中物と表底とを別々に製造するのではなくて、追加的な製造装置は、非同質の矯正特徴(例:微細構造)を各個別層が備えるように、注文履物部分を一層ずつ生成することができる。このため、3D印刷は、従来の製造技術と比べて、履物のカスタマイズできる度合いをはるかに高くできる。
【0095】
さらに、注文履物を3D印刷することは、所望の履物設計に到るための材料と製造しなければならない個別構成要素との数を減らすことができることから、有利である。さらに、追加的な製造技術は、従来の製造技術と比べて、注文履物を生成するために、幅広い材料を活用することができる。
【0096】
場合によって、追加的な製造技術は、従来の製造工程を改善することができる。例えば、履物部分は、表面組織、パターン、構造などを含むことができるが、これは、複数の部分を互いに接着、融合、または他の方法によって固定するような従来の製造工程にも有用かもしれない。場合によって、表面組織は、微細構造によって生成されてもよい。別の例として、追加的に製造された履物部分を仕上げている製造層は、接着または他の固定手段による他の履物部分との接合の改善のために、高い間隙率および/または特別な組織を、備えてもよい。
【0097】
(ある例示の実施形態の説明)
図1は、注文履物システム100の実施形態を示す。図示した実施形態において、注文履物システム100は、情報収集システム110、情報処理システム120、製造システム130、及び情報記憶装置140を備えている。
【0098】
情報収集システム110は、使用者の足に関する情報のような、特定の使用者に関するデータを収集する。情報収集システム110は、動的情報収集コンポーネント114と同様に、静的情報収集コンポーネント112を含んでいてもよい。
【0099】
静的情報収集コンポーネント112は、静的な使用者固有のデータを収集する、上述したように、静的情報収集コンポーネント112は、副次的なデータ(例えば、使用者の嗜好)と同様に、基礎解剖学データのような、基礎的な使用者データの収集手段を含んでもよい。例えば、静的情報収集コンポーネント112は、使用者の特性又は特質(例えば、足のサイズ)の手動測定値を入力するための使用者インターフェースを含んでいてもよい。
【0100】
静的情報収集コンポーネント112は、また、ライブカメラ若しくはスチールカメラ、光学式スキャナ若しくはレーザ式スキャナのようなスキャナ、X線、MRI若しくはCATスキャナのような画像診断システム、並びに、感圧パッドのような他の検出システムを備えていてもよい。例えば、静的情報収集コンポーネント112は、使用者の足のような使用者の身体部分を撮影するために用いられるカメラを備えていてもよい。デジタル画像は、すなわち、例えば、注文履物の設計中に用いられ得る、使用者固有の2D静的情報である。
【0101】
静的情報収集コンポーネント112は、また、使用者が足を踏んだ時の、使用者の足に関連する2D圧力データを生成する感圧パッドを備えていてもよい。
【0102】
動的情報収集コンポーネント114は、動的な使用者固有のデータを収集する。上述したように、動的情報収集コンポーネント114は、感圧パッド、携帯センサ、モーションキャプチャシステム、又はイメージキャプチャシステムを備えていてもよい。上述した装置は、動的な使用者固有の2D又は3Dデータを生成し得る。
【0103】
例えば、使用者は、大きな感圧パッドの長さ分歩く又は走ってもよく、これにより、各足が着地し、回転し、そして再び離れるまでの動的情報を記録してもよい。同様に、使用者は、感圧パッド上において飛び上がり下りをしてもよい。実施形態のいくつかにおいて、ライブ画像又は静止画像を、他のセンサデータ(例えば、圧力パッドデータ)と同時に収集してもよく、これにより、さらなる分析のために、E2203.WO+ PATENT-17センサデータを、使用者の足の実際の物理的動作と並列させることができる。
【0104】
実施形態のいくつかにおいて、感圧パッドのような1つのセンサを、静的な使用者固有のデータ(例えば、パッド上に立っている状態)及び動的な使用者固有のデータ(例えば、パッド上において歩く、走る、ジャンプする等の状態)を収集するために用いてもよい。同様に、カメラのようなイメージセンサを、静的な使用者固有のデータ(例えば、静止画像)と動的な使用者固有のデータ(例えば、ビデオ又は高速静止画像)とを収集するために用いてもよい。
【0105】
実施形態のいくつかにおいて、情報収集システム110は、注文履物システム100の他の部品から独立しており、かつ、携帯可能である一方で、他の部品は携帯できなくてもよい。情報収集システム110は、センサ(例えば、感圧パッド及びカメラ)と、センサを支持する処理装置(例えば、モバイル機器、コンピュータ、サーバ等)とを備えていてもよい。
【0106】
情報収集システム110は、ローカル情報記憶装置(図示せず)を備えていてもよいし、及び/又は情報記憶装置140のような遠隔情報記憶装置に連結されていてもよい。情報収集システム110が収集したデータは、検知され、測定され、決定され、入力され、又はそうでなければ生成された後、ローカル情報記憶装置又は遠隔情報記憶装置(又はその両方)に蓄積されてもよい。
【0107】
情報収集システム110は、例えば、有線又は無線データ接続を介して、注文履物システム100の他の構成要素とデータ通信するようになっていてもよい。例えば、情報収集システム110が携帯可能であり、注文履物システム100の他の構成要素から独立している実施形態においては、情報収集システム110は、これらの構成要素に接続されていてもよく、かつ、インターネットのようなネットワーク接続を介して、データを共有するようになっていてもよい。他の実施形態において、接続を、種々の構成要素間で特別に変更してもよい。
【0108】
情報処理システム120は、情報収集システム110とデータ通信する。情報処理システム120は、情報収集システム110が収集した静的なデータ及び/又は動的なデータを受け取ってもよく、注文履物の設計に当該データを用いてもよい。
【0109】
例えば、モデル設計要素122は、画像データのような静的な使用者固有のデータを、足のような使用者の身体部分の2D又は3Dモデルを構築するために採用してもよい。モデル設計要素122は、さらに、感圧データのような他の静的な使用者固有のデータを採用し、2D又は3Dモデルを上書きしてもよく、そうでなければ、これを2D又は3Dモデルと組み合わせてもよい。例えば、足のような身体部分の3Dモデルを、さらに、静的な圧力データを用いて改変することによって、そのモデルが、足のモデルの異なる部分における静的な圧力を示すようにしても良い。これらの違いは、例えば、「ヒートマップ」のような色勾配を用いて示すことができる。より特異的には、データを2D又は3Dモデルとして表し、又は、使用者の足の裏における2D圧力分布のような、3Dモデルの2D投影図に投影することもできる。
【0110】
モデル設計要素122は、さらに、感圧データのような動的な使用者固有のデータを採用し、2D又は3Dモデルを上書きしてもよく、そうでなければ、これを2D又は3Dモデルと組み合わせてもよい。例えば、足のような使用者の身体部分の3Dモデルに作用する力は、上述したヒートマップを用いて表すことができ、又は、例えば、使用者の足のモデルに作用する力の方向及び強さを示すベクトルにより表すこともできる。使用者固有のデータの種々の型を組み合わせるMyriad方法が、当業者に知られている。
【0111】
モデル設計要素122は、さらに、母集団データのような統計情報を採用し、これを他の使用者固有のデータと組み合わせてもよい。例えば、使用者の身体部分の外観的特徴のみが分かっている場合(例えば、画像データにより)、統計的形状モデルのような統計情報を、使用者の身体部分の2D又は3Dモデルを補完するために用いてもよい。例えば、外観的特徴から分かる、使用者の足の予測された骨の構造を、統計的形状モデルを用いたモデルに組み込むことができる。同様に、使用者の身体部分の内部特徴点のみが分かっている場合(例えば、X線データ)、使用者の足の予測された内部構造を、統計的形状モデルを用いたモデルに組み込むことができる。
【0112】
モデル設計要素122は、例えば、情報記憶装置140から統計情報にアクセスしてもよい。さらに、モデル設計要素122又は履物設計要素124は、受信した使用者固有のデータに基づいて統計情報を生成してもよく、また、生成した統計情報を、ローカルに、又は情報記憶装置140に蓄積してもよい。
【0113】
使用者の身体部分(例えば、足)の特定の条件に関する分類は、使用者固有のデータの受信処理及び使用者の身体部分モデルの設計処理中に実行されてもよい。例えば、感圧パッド上の使用者の足の静的又は動的圧力測定値を、「アーチインデックス」を生成するために用いてもよい。さらに、決定したアーチインデックスを、使用者の足を複数の解剖学的標準「アーチ型」の1つに分類するために用いてもよい。
【0114】
例えば、足の前方、足の中間、及びかかと(以下、A、B、及びCと称する)の接触表面の測定を、以下の式による「アーチインデックス(AI)」の決定に用いてもよい:B/(A+B+C)=AI。当該式に基づいて、使用者のアーチ型を、以下の例示のカテゴリーのように分類してもよい:
【0115】
【表1】
【0116】
モデル設計要素122は、使用者固有の身体部分モデル設計の開始点として用いることが意図される2D又は3Dモデルのような身体部分のテンプレートを有していてもよい。いくつかの場合において、テンプレートは、統計的形状モデルに基づき得る一方で、ここにデザインされたものでもよい。テンプレートは、使用者固有のデータが乏しいとき、あるいは不正確である場合に有用であり得る。
【0117】
履物設計要素124は、注文履物モデルを設計するための使用者固有の統計情報、使用者固有の動的情報、モデルデータ、分類データ等のような受信したデータを用いてもよい。
【0118】
いくつかの例において、履物設計要素124は、中底、中物又は表底のような、注文履物の一部を生成してもよい。さらに、履物設計モデルに基づく履物の機械的性質に影響するため、注文履物の一部の設計は、微構造のような、1以上の補正的特徴の型を有してもよい。この方法において、注文履物を、例えば、使用者の足の生体機械的機能を補正又は改善するように設計してもよい。さらに、履物設計要素124は、履物を製造するときに用いる適切な材料を決定してもよいし、材料の範囲を提案してもよい。
【0119】
例えば、履物設計要素124は、中底のある部分を固くし、中底の他の部分における特定の方向における撓みを向上させるような微構造を有する中底を設計するために用いられてもよい。さらに、注文中底を、その物理的特性(例えば、強度、弾性、重さ等)により選択された特定の材料から製造してもよい。
【0120】
実施形態のいくつかにおいて、履物設計要素124は、設計を変更及び確認するために、履物設計モデルを試験してもよい。例えば、履物設計要素124は、種々の補正的特徴の望ましい効果を変更するため、及び、モデル設計全体を確認するために、固定要素分析(FEA)を行ってもよい。この方法において、実際の履物を製造する前に、仮想環境において履物設計モデルを十分に試験することができる。
【0121】
履物設計要素124は、履物設計モデルの開始点として用いられることが意図される2D又は3Dモデルのような、履物テンプレートを有していてもよい。いくつかの場合において、テンプレートは、統計的形状モデルに基づいていてもよいが、ここに設計したものであってもよい。
【0122】
実施形態のいくつかにおいて、履物設計要素124は、モデル設計要素122により生成されたモデルのような、使用者の足の1以上のモデルに基づいて、自動的に履物設計を生成するように構築されたプログラムを有している。そのような実施形態において、履物設計要素124は、足のような使用者の身体部分のモデルを処理してもよく、また、例えば、状態を処置する、状態を予防する、又は性能を改善するために、注文履物設計全体に適用すべき1以上の修正を決定してもよい。履物設計の自動生成に用いられるプログラムは、適切な注文履物設計を決定するために、母集団データのような統計情報と同様に、使用者固有のデータに依存してもよい。実施形態のいくつかにおいて、履物設計要素124は、体部、中底、中物及び表底のような、設計される履物の種々の部分を操作者に選択させてもよいし、履物設計要素124がプログラムに基づいて自動的に決定してもよい。
設計要素 実施形態のいくつかにおいて、履物設計要素124は、完全に自動よりも半自動である。そのような実施形態において、履物設計要素124は、例えば、テンプレート設計を自動的に選択し、ある補正的特徴をこれに適用するが、設計に関する操作者の入力を追及するために、設計処理の間の予め定められた時点において停止してもよい。
【0123】
他の実施形態において、履物設計要素124は、注文履物設計を生成するために、設計者により手動で用いられてもよい。そのような実施形態において、設計者は、どの部分を設計するか、これらの部分に関する特性、さらに、これらの部分において用いられる補正的特徴のような、履物設計のための種々の選択肢を選択することができる。さらに、中底のような履物の一部を、履物設計の目的からさらに1以上の区分に分割してもよい。また、各区分は、足の生体機械的機能を補正、改善又は変更するために設計された個々の特性を有していてもよい。
【0124】
履物設計要素124は、例えば、CAD又はCAMソフトウエアであってもよい。実施形態のいくつかにおいて、履物設計要素124は、体部、中底、中物、又は表底のような、注文履物の一部を設計するように構築された専用のCAD又はCAMであってもよい。実施形態のいくつかにおいて、モデル設計要素122及び履物設計要素124は、単一のソフトウエアが両方の機能を実行できるように、組み込まれている。他の場合においては、各要素が分離したモジュールであってもよい。
【0125】
実施形態のいくつかにおいて、情報処理システム120は、モデルデータ処理要素(図示せず)を含んでもよく、付加的に製造される対象の表面を定義するために用いられる少なくとも1つの特性を示す表面先駆データの処理を含む、モデルデータの処理方法を実行するように構成されていてもよい。他の実施形態において、方法は、処理された表面先駆データであって、付加的に製造される対象の少なくとも一部の表面を代表する表面データに基づいて生成する工程と、付加的に製造される対象の少なくとも1つの部分に対応する部分データを生成する工程とを、付加的に含んでもよい。これら及び他の実施形態は、UK特許出願番号GB1314421.7に、“データ処理”の題名で記載されており、当該文献を参照として本明細書中にそのすべてを組み込む。
【0126】
表面先駆データは、付加的に製造される対象の表面を定義するために用いられる少なくとも1つの特性を表し得る。特に、定義された表面は、3D空間に表面領域及び構造を有する。それゆえに、表面先駆データは、表面の定義において使用される少なくとも1つの先駆体を定義してもよく、対象の表面を直接示していなくてもよい。しかしながら、表面先駆データを、対象の全表面又は表面の一部を算出するために用いてもよい。そのような場合、表面先駆データは、付加的に製造される対象の少なくとも一部の表面を間接的に定義すると考えられ得る。とりわけ、表面の凹凸を定義するだけの線は、もし凹凸の線が表面領域を有する表面を定義しないなら、対象の表面を定義し得ない。
【0127】
表面先駆体の使用は、STL、AMF、又は当業者に公知の他のフォーマットのようなデータフォーマットと比較して、付加的に製造される対象を表すデータのファイルサイズを低減し得る。付加的に製造される対象を表すデータのファイルサイズの低減により、データネットワーク間(例えば、情報処理システム120と製造システム130との間)の移送速度及び効率を向上させ得る。さらに、コンピュータのハードウエア要求、及び、利用可能なバンド幅のようなネットワークの要求を、データファイルサイズの低減により、効果的に低減し得る。最後に、データファイルサイズの低減は、(STL及びAMFフォーマットのような公知のデータフォーマットと比較して)例えば、追加の製造装置134のような追加の製造装置を取り扱うための部分データを生成するための、データファイルの処理速度及び効率を向上させ得る。
【0128】
特に、表面先駆データの使用は、多孔質構造、メッシュ構造、格子構造、及び入り組んだ表面細部を有する構造のような複雑な構造を有する、付加的に製造される対象を表すデータのファイルサイズも低減し得る。STL及びAMFのような公知のデータフォーマットにおいて、付加的に製造される対象の表面の構成は、例えば、複数のモザイク模様の三角形のような、三角形のメッシュを表すデータにより直接的に表される。対象の表面は、対象のいずれかの部位の範囲を定義する表面領域であることに留意する。表面は、それゆえに、対象の外部表面、及び内部表面を定義し、例えば、対象内の空洞又は多孔質構造を定義する。多孔質構造の表面のように、より複雑な表面を定義するために、複雑な表面を表すために必要な上昇した粒状度を提供する公知の方法において、より小さい三角形が用いられる。より複雑な表面を定義するためのより小さい三角形の使用によって、対象のいずれかの表面を定義するためにより多くの三角形が必要となる。STL及びAMFのような公知のデータフォーマットにおいて、三角形メッシュの各三角形は、三角形の頂点のそれぞれの座標データによりコードされている。それゆえに、複雑な表面を表すために、数の多い小さい三角形により確定する場合、結果として得られるデータのファイルサイズは、実際に送信及び/又は処理するには大きくなり過ぎる。
【0129】
実施形態のいくつかにおいて、情報処理システム120は、注文履物システム100の他の要素から独立し、携帯可能であるが、他の要素は組み込まれている。例えば、情報処理システム120は、携帯可能なラップトップコンピュータのようなコンピュータシステムであり得る。他の実施形態において、情報処理システム120は、注文履物システム100の他の要素から離れていてもよい。例えば、情報処理システム120は、データリンクからデータを受信し、当該データを遠隔処理する遠隔サーバであり得る。
【0130】
情報処理システム120は、ローカル情報記憶装置(図示せず)及び/又は情報記憶装置140のような、情報記憶装置を遠隔操作するための接続部を含んでいてもよい。モデル設計要素122(例えば、使用者固有の身体部分モデル)及び履物設計要素(例えば、注文履物モデル)の出力は、情報記憶装置140に蓄積してもよい。
【0131】
情報処理システム120は、例えば、有線又は無線データ接続を介して、注文履物システム100の他の要素とデータ通信してもよい。例えば、情報処理システム120が、注文履物システム100の他の要素から独立し、携帯可能である実施形態においては、情報処理システム120は、インターネットのようなネットワーク接続を介して他の要素と接続し、データを共有してもよい。他の実施形態において、接続を、種々の要素間において特異的に変更してもよい。
【0132】
製造システム130は、制御器132及び追加の製造装置134を備えていてもよい。製造システム130は、注文履物、又は、中底、中物及び表底のような注文履物の一部を製造するために、情報処理システム120からデータを受信してもよい。例えば、製造システム130は、情報処理システム120から、“STL”又は“PLY”の形式においてフォーマットされたファイルの注文履物設計データを受信してもよく、追加の製造装置134を作動するための制御器132により判断してもよい。製造システム130については、図7を参照して以下により詳細に説明する。
【0133】
特に、図1における情報収集システム110、情報処理システム120、製造システム130、及び情報記憶装置140間に示された情報通信の線は、描写に過ぎない。注文履物システム100の種々の要素間の情報通信経路は、例えば、直接又は間接であり得、単一又は複数のネットワークを横断し得、介在する装置を含み得、有線又は無線であり得、異なるプロトコルを使用可能であり、異なる媒体を用い得る。さらに、情報通信経路は、一方向でも良いし、データを種々の要素間において共有し得るように二方向であってもよい。
【0134】
実施形態のいくつかにおいて、注文履物システム100の要素は、図1に、単一システム内に組み込まれるように図示されている。そのような実施形態において、使用者は、スキャンし(例えば、イメージセンサを用いて)、試験し(例えば、感圧パッドを用いて)、次いで、注文履物、又は体部、中底、中物若しくは表底のような注文履物の一部を受け取ることの全てを、同じ場所において行うことができる。そのような実施形態において、操作者は、注文履物の設計を行うか、又は少なくとも確認するために存在し得る。しかしながら、他の実施形態において、処理の全体を自動で行ってもよい。例えば、実施形態のいくつかにおいて、注文履物システム100の全体は、履物店、スポーツ用品店等におけるキオスクのようなものになり得る。
【0135】
他の実施形態において、注文履物システム100の要素は分離している。例えば、情報収集システム110は、情報処理システム120及び製造システム130(これらの2つのシステムは組み込まれているか、共に配置されていてもよい)から分離していてもよい。例えば、キオスク等は、イメージセンサ及び感圧パッドのような種々のセンサを含む情報収集システムを備えていてもよく、これらは、他の位置にある情報処理システム120及び製造システム130と情報通信する。特に、これらの種々の要素が、ある実施形態において物理的に分離し得る一方で、使用者のスキャンと注文履物の提供とを同じ位置において行うために、履物店のような特定の位置に共に配置されてもよい。
【0136】
さらに他の実施形態において、情報収集システム110及び製造システム130は、共に配置されている一方で、情報処理システム120は分離して配置されていてもよい。情報処理システム120により複雑な処理が行われるため、情報処理システム120は、遠隔サーバのように、情報収集システム110及び製造システムから離れて配置され鵜ことが望ましい。例えば、履物店は、同じ場所に情報収集システム110及び製造システム30を有している一方で、情報処理システム(及びもしかするとその操作者も)は、完全に別の場所に位置している。この方法において、注文履物の販売者は、全ての要素に関連する費用及びスペースを制限することができ、使用者に最も利便性のある注文履物システム100のみを有することができる。そのような実施形態は、注文履物システムの供給者が、異なる設備の分散及び販売モデルを利用することも可能にする。例えば、注文履物システムの供給者は、情報収集システムのような、システムの特定の要素を購入する一方で、情報処理システムのような他の要素に申込みモデルを提供することができる。最終的に、注文履物システム100は、特定のエンドユーザシステムを必要とするように、組み込まれるか、又は組み立てられる。
【0137】
図2は、体部、中底、中物又は表底のような注文履物を設計するための方法を図示する。
【0138】
方法200は、使用者固有の情報を入手する、工程202から始まる。上述したように、使用者固有の情報には、静的又は動的な使用者固有の情報が含まれ得る。使用者固有の情報は、例えば、図1に記載された情報収集システム110のような情報収集システムから入手することができる。
【0139】
方法200は、その後、統計情報を入手する、工程204に移動する。上述したように、統計情報は、例えば、母集団情報に基づき、異なる解剖学的特徴の統計的形状モデルを含んでもよい。しかしながら、他の統計情報を含んでもよい。例えば、公知の使用者の靴のサイズに基づく基礎測定値を用いてもよい。
【0140】
方法200は、使用者のモデルを生成する、工程206に移動する。上述したように、使用者のモデルは、使用者の足のような使用者の身体部分の2D又は3Dモデルであり得る。使用者のモデルは、工程202において入手した使用者固有の情報及び工程204において入手した統計情報のいくつか又は全てに基づき得る。実施形態のいくつかにおいて、信頼できる使用者固有の情報がほとんど入手できない場合、統計情報若しくはテンプレート、又はその両方に最初は基づいて、使用者のモデルを生成してもよい。
【0141】
工程206で生成した使用者のモデルは、単なる2D又は3D形状情報を超えた多くの追加の形状を含んでもよい。例えば、使用者のモデルは、圧力情報のような静的又は動的な情報が補充されていてもよい。このデータがモデルを向上させることにより、使用者に適切な注文履物を設計することができる。
【0142】
方法200は、次に、使用者固有の問題点を使用者のモデルに基づいて特定する、工程208に移動する。
【0143】
実施形態のいくつかにおいて、使用者固有の問題点を、例えば足のような身体部分の理想的なモデルと使用者のモデルとを比較することにより決定する。使用者のモデルを、動作モデル(例えば、理想的な圧力分布モデル)と同様に、形状モデルと比較してもよい。実施形態のいくつかにおいて、使用者のモデルは、「理想的な」動的情報と比較した動的情報を含む。他の実施形態において、使用者のモデルは、潜在的な問題を特定するために、テンプレート又は統計的形状モデルと比較してもよい。回内、回外、底豆、不均衡、偏平足、アーチ不良、動作不良等のような問題は、使用者のモデルに基づいて特定してもよい。
【0144】
他の実施形態において、使用者固有の問題点は、例えば、熟練の技術者又は整形外科の医師等による使用者のモデルの検査に基づいて同定してもよい。そのような場合には、問題点は手動で同定されるが、得られる矯正特徴は自動で生成されてもよい。
【0145】
方法200は、次に、工程208において同定した1以上の使用者固有の問題点に取り組むために、矯正特徴を決定する、工程210に移動する。上述したように、微構造を含む矯正特徴の多くの型は、矯正履物の設計に使用してもよい。
【0146】
例えば、選択した方向における望まない移動を防ぐ一方で、他の方向への自由な移動を可能にするように、適切な微構造を決定してもよい。同様に、履物の部分の種々の区域に調整した厚みを、より均一な支持を提供するために決定してもよい。他の矯正特徴は、上述したように、決定されてもよい。
【0147】
方法200は、次に、注文履物モデルを生成する、工程212に移動する。例えば、注文履物モデルは、体部、中底、中物又は表底のような履物の部分を含んでもよい。
【0148】
実施形態のいくつかにおいて、注文履物モデルは、最初は履物テンプレートであり、基礎の使用者固有の情報に基づいて、部分的にのみ特別に作成したものであってもよい。例えば、注文履物モデルは、ある靴のサイズの使用者のための、体部、中底、中物又は表底テンプレートとしてもよい。テンプレートは、次に、例えば、工程210において決定した1以上の矯正構造と組み合わせる等、さらに特別に変更してもよい。
【0149】
実施形態のいくつかにおいて、初期テンプレートは、上述した足のアーチの種々の型のように、解剖学的型のある分類又はカテゴリーに基づいていてもよい。このような使用者の身体部分に関連する分類又はカテゴリーは、テンプレートに基づく初期モデルの速さ及び正確さを向上させ得る。
【0150】
他の実施形態において、注文履物モデルはテンプレートから生成されず、むしろ、使用者固有の情報に完全に基づいて生成される。これは、使用者固有の総合的な情報が存在する特定の使用者の場合にあり得る。
【0151】
実施形態のいくつかにおいて、注文履物モデルを、適切なソフトウエアにより自動的に生成する。他の実施形態において、注文履物モデルを、半自動又は完全に手動で生成してもよい。
【0152】
方法200は、次に、体部、中底、中物、又は表底のような注文履物を製造する、最終工程214に移動する。
【0153】
実施形態のいくつかにおいて、注文履物を、上述したような追加の製造技術、及び、当業者に公知の他の技術を用いて、製造する。上述したように、製造された注文履物は、使用者固有の問題を解決し得ると同時に、けが及び足の状態の発生を避けることを支援し、又は、生体機械的機能を向上させさえする(例えば、アスリートのため)。
【0154】
図3Aは、図1における情報収集システム110のような、例示の情報収集システムの図式的なユーザインターフェースを示している。図1において、動的な使用者固有の足の圧力情報302は、図式的なユーザインターフェース上に表示される。この実施形態において、圧力情報302は、特定の時に、感圧パッドに付加された圧力を示している。この実施形態において、圧力情報は、ある色が他の色よりも高い圧力を示すようにコードされた色である。
【0155】
図3Aは、特定の時に、感圧パッドに付加された使用者の足による平均的な圧力の中間点及び方向を示す、決定したベクトル304も図示している。
【0156】
図3Aは、また、動的な圧力情報306の時間に対する指標化を図示している。これらの情報は、どこで使用者の動的な移動圧力が最大化するかを同定し、これにより、その最大圧力点を低減させるように矯正構造を設計することができ、有用であり得る。決定したベクトルは、使用者の歩幅及び足取りの位置合わせの決定、又は、使用者の歩みのバランス特性の決定に有用であり得る。
【0157】
図3Aは、平均的な動的情報308もまた図示する。平均的な動的情報は、多くの歩数に渡る、感圧パッドにおける使用者の足の平均的な圧力を示す。特に、「ホットスポット」310(例えば、比較的高圧の領域)を、平均的な動的情報308により決定する。ホットスポット310を、図2の工程208に対して上述したように、使用者固有の問題として同定してもよい。
【0158】
図3Aに示された使用者固有の情報は、例えば、図1に示した情報処理システム120のような情報処理システムに送られてもよいし、使用者のモデルを生成する又は補完するためのシステムにより使用してもよい。
【0159】
図3Bは、図1に示す情報処理システム120の履物設計要素124のような、例示の履物設計要素の図式的なユーザインターフェースを示す。特に、図3Bは、複数の区域(例えば、区域314)を含む例示の履物の部分312(ここでは中底)を示す。履物の部分312は、(傾斜角度316により示されている)肥厚部のような矯正構造を含む。
【0160】
特に、図3Bは、履物設計要素の単一の実施形態でしかない。より総合的な設計可能性を有する異なる実施形態が想定される。
【0161】
図4A~4Cは、動的な使用者固有の情報に基づいて設計された例示の中物を示し、快適性が向上し、痛みが軽減することを意図した矯正特徴を含む。特に、図4Aは、歩行又は走行するときに、使用者が足のかかと部分において着地することに貢献する、使用者の中物(履物の部分)を示す。したがって、図4Aの中物は、最善な衝撃吸収のために、かかと部分に粘弾性部材402(矯正特徴)を含む。
【0162】
図4Bは、歩行及び走行時に使用者の足の中心部分において着地することに貢献する、使用者の中物(履物の部分)を示す。したがって、図4Bの中物は、歩みの衝撃を分散させるために、かかと及び足の前方部分に、粘弾性部材402及び404(矯正特徴)を有している。
【0163】
図4Cは、歩行及び走行時に使用者の足の前方(又はつま先)部分において着地することに貢献する、使用者の中物(履物の部分)を示す。したがって、図4Cの中物は、最善な衝撃吸収のために、足の前方部分に粘弾性部材404を有している。
【0164】
図4A~4Cに関して、中物の基礎の厚み406は、例えば、履物の意図される使用(特に走行速度)、使用者の体重、足前方における着地、局所の補正の必要性、及び使用者の着地パターンに基づいて決定し得る。さらに、中物の厚みは、かかとから足の中央、さらに足の前方までの間において変化させてもよい。
【0165】
さらに、ヒール408の高さ、及び図4A~4Cに示す中物の対応するヒールの落差(例えば、ヒール部分と足の前方部分の高さとの間の差)は、使用者の姿勢における回内又は回外の程度のような他のパラメータと同様に、上述したパラメータに基づいて決定し得る。同様に、中物のビードの落差(例えば、足の中央部分と前方部分との間の高さの差)は、使用者の着地パターン、使用者の望む走行スピード、又は当業者に公知の他の特徴に基づいて決定することができる。
【0166】
例えば、かかとにより優先的に着地する使用者は、足の中央において優先的に着地する使用者と比較して、ヒールの落差がより低い方が有益であり得る。足の中央において優先的に着地する使用者は、足の前方において優先的に着地する使用者よりも、ヒールの落差がより低いことを要求し得る。他の例において、ビードの落差は、使用者の目的とする歩行速度又は走行速度に基づいて上昇し得る。
【0167】
最後に、図4A~4Cに記載された中物の「ロッカー」の高さ(例えば、ソールの前方部分の下の凹部であり、これにより回転中にソールを確実に地面に接触させる)は、使用者が主として走行者又は歩行者のいずれであるかのような、使用者の特徴及び動作に基づいて決定し得る。
【0168】
図5Aおよび5Bは複数の領域すなわち「ゾーン」(例えば、502、504、506、および508)を備える中底(履物部品)を描写する。描写された実施形態において、それぞれのゾーンは、それぞれのゾーンにおける履物部品の機械的特性を変化させるための、異なる微細構造を備える。例えば、微細構造はそれぞれの特定のゾーンの、硬さ、圧縮性、弾性、曲げ性等に寄与してもよい。いくつかの実施形態において、ゾーンは多くの類似した、または異なる種類の微細構造を備えていてもよい。
【0169】
図5Aおよび5Bにおいて、様々なゾーンが使用者固有の情報(例えば、足の解剖学的特性および動的測定)を基に決定されている。特に、図5Aおよび5Bにおける実施形態は、足の骨格、関節、筋肉、腱等の衝撃を最小化するために、(例えば、図1に描写されるような履物設計要素を使用して)設計されている。さらに、様々なソーンが使用時における履物の機械的特性に影響を及ぼす。例えば、特に中底のかかと部分におけるゾーンが、足首の損傷を避けるための回旋、特に側回旋を防止してもよい上に、足前部におけるゾーンは、足の回転を可能とするために、比較的より柔軟であってもよい。
【0170】
図5Aおよび5Bに描写された注文履物部品の微細構造およびその他の特徴は、いくつかの層を確立してもよく、それぞれの層は同じまたは異なる微細構造を備える。非均質の層の履物部品を設計することにより、単一の、均一に分配された素材からなる履物部品と比べて、より複雑な機械的特性(例えば、圧縮性、曲がり等)が得られてもよい。
【0171】
図6Aおよび6Bは、異なる角度(おおよそ上部および下部)からの付加的に製造された注文履物部品600を描写する。注文履物部品600は、上述および図1の情報収集システム110に関するような、使用者固有の情報に基づいている。注文履物部品600の設計は、図1の参照と共に記載および描写されるように、情報処理システムと共に作成されている。最終的に、注文履物部品600は、図1から7の参照と共に記載および描写されるように、追加の製造システムと共に上述されるような技術を使用して、付加的に製造されている。
【0172】
注文履物部品600は矯正特徴を含む。例えば、注文履物部品600の全体の厚みは、使用者の体重分布に影響を及ぼし、適切な足の動きと快適性とを促進するために、意図的に変化させられている。注文履物部品600は設計された方向における曲がりを促進し、他の方向への曲がりを妨げる、(図6Aに描写されるような)リブ602もまた備えている。最終的に、注文履物部品は(図6Bに描写されるような)矯正微細構造604もまた備えている。
【0173】
図6Bに描写されているように、微細構造604は、例えば、上述の追加の製造技術を使用して、層ごとに作成されている、複雑3次元細胞構造である。図6に描写された実施形態における微細構造の軸は、注文履物部品600のねじれの抵抗に影響を及ぼすように方向づけされている。
【0174】
いくつかの実施形態において、微細構造の軸は注文履物部品600のそれぞれの領域すなわちゾーンに平行である必要はない。例えば、いくつかの実施形態において、微細構造の軸は、かかとの領域における地点のような共通の地点から扇状に広がってもよい。
【0175】
図7は、図6Aおよび6Bに描写された注文履物部品のような、注文履物を製造するために、SLA、SLS、SLM、および技術において知られているその他のような、追加の製造技術を実行するように構成されていてもよい、例示的な追加の製造装置700を描写する。
【0176】
追加の製造装置700は、放射器720、走査器730、および基盤740と情報通信する制御器710を含む。明白に、FDMを実行するための同様の追加の製造装置が、押し出しノズル、および関連機械制御器として、放射器720、および走査器730と置き換えられてもよい。
【0177】
制御器710は、例えば、追加の製造装置700を操作するためのソフトウェアを有するコンピュータシステムであってもよい。他の実施形態において、制御器710は一般的な目的の処理装置、デジタル信号処理装置(DSP)、用途固有集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のプログラム可能な論理装置、離散ゲート、またはトランジスタ論理、離散ハードウェア要素、またはこれらの技術において知られているような、ここで記載される機能を実行するために設計された、いずれかの適する組み合わせを具体化してもよい。
【0178】
以前と同じく、図7における、制御器710と、放射器720、走査器730、および基盤740との間に描写された、情報通信の線のみが描写されている。
【0179】
制御器710は放射器720を制御してもよい。例えば、制御器710は放射器720に、放射器の電源をつけるまたは落とすために情報信号を送信してもよい。加えて、制御器710は放射器720の出力強度を制御してもよい。いくつかの実施形態において、制御器710は同じ追加の製造装置700において複数の放射器720(図示せず)を制御してもよい。いくつかの実施形態において、放射器720は制御器710に、付加的に情報を送り返してもよい。例えば、放射器720は、出力、電力使用、温度、および技術において知られているその他の操作変数のような、操作変数を送信してもよい。放射器720の操作変数は、さらに物体750を制御または最適化するために制御器710によって使用されてもよい。
【0180】
制御器710は走査器730もまた制御してもよい。例えば、制御器710は光学要素734の補正、操作、調節、結合、またはその他の使用を引き起こしてもよい。例えば、制御器710は結果として生じるビーム736の大きさまたは結果として生じるビーム地点738の大きさに影響を及ぼすために動かされる集光レンズ要素を引き起こしてもよい。さらに、異なる方向と物体750の異なる位置とにおいて、結果として生じるビーム736を向け直す鏡または同様の光学要素を引き起こしてもよい。さらなる例として、制御器710は放射器720が有効であっても結果として生じるビーム736を隠すためのシャッタまたは同様の光学要素を引き起こしてもよい。
【0181】
いくつかの実施形態において、制御器710は走査器730から戻る情報を受け取ってもよい。例えば、走査器730は、出力、電力使用、温度、ビームサイズ補正、ビーム強度、ビーム方向、ビームスポット位置、光学要素の位置、光学要素の状態、および技術において知られているその他の操作変数のような、操作変数を送信してもよい。放射器720の操作変数は、さらに物体750を制御または最適化するために制御器710によって使用されてもよい。いくつかの実施形態において、制御器710は走査730の一部であってもよい。
【0182】
制御器710は基盤740もまた制御してもよい。例えば、制御器710は基盤740に、1つ以上の方向(例えば、上下または側面から側面へ)の動きを引き起こしてもよい。制御器710は、位置、温度、重量、近接、および技術において知られているその他のような操作情報を、基盤740から受け取ってもよい。制御器710は、走査器730が材料の層を物体750に加える処理を行えるように、物体750の1つの層の増分において基盤740に動きを引き起こしてもよい。物体750の層は3次元設計製図(例えば、3次元CAD)または1つ以上の次元の断面製図(例えば2次元CAD)において規定されてもよい。
【0183】
いくつかの実施形態において、制御器710は、光学的な追加の製造装置700によって製造される物体の3次元CAD製図のような物体の設計情報を蓄積してもよく、またはそうでなければ物体の設計情報へのアクセスを有してもよい。例えば、制御器710は、CADソフトのような物体設計のソフトウェアおよびハードウェアも含むコンピュータシステムの一部であってもよい。このように、制御器710は、放射器720、走査器730、および基盤740を制御し、物体750を製造するために、物体の設計情報へのアクセスを有してもよい。いくつかの実施形態において、制御器710は、図7のデータベース760のような、貯蔵所、データベース、または設計情報の同様のものと、通信路によって接続されてもよい。
【0184】
いくつかの実施形態において、制御器710は、例えば、図1の情報処理システム120から、履物の設計情報受け取ってもよい。このように、制御器710は、中底、中物、および表底のような注文履物部品を含む、注文履物の付加的な製造を指示してもよい。
【0185】
放射器720は、例えば、ダイオードレーザ、パルスレーザ、またはファイバ層、あるいは技術において知られているその他の種類のレーザのような、レーザ放射器であってもよい。いくつかの実施形態において、放射器720は、紫外レーザ、二酸化炭素レーザ、またはイッテルビウムレーザであってもよい。放射器720は、技術において知られているその他の種類の照射放射器であってもよい。
【0186】
放射器720は、例えば、レーザビーム722としてビームを照射し、走査器730によって処理される。明白に、図7には示されないものの、鏡、レンズ、プリズム、フィルタ等のような光学要素は、放射器720と走査器730との間に配置されてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態において、放射器720は走査器730の一部であってもよい。
【0188】
走査器730は光学要素734を含んでいてもよい。例えば、光学要素は、レンズ、鏡、フィルタ、分割器、プリズム、拡散器、窓、置換器、および技術において知られているその他の光学要素を含んでいてもよい。光学要素734は、走査器730または制御器710によって、受け取られた情報を基に、固定されても、あるいは可動であってもよい。
【0189】
走査器730は、走査器730の操作の間、様々な操作パラメータを感知するセンサ(図示せず)も含んでいてもよい。一般的にいえば、センサは光学的な追加の製造装置700の較正と製造性能との向上のために、走査器730および/または制御器710への情報のフィードバックを提供してもよい。
【0190】
例えば、走査器730は、位置センサ、熱センサ、近接センサ等を含んでいてもよい。加えて、走査器730は1つ以上の画像センサを含んでいてもよい。画像センサは、光学的な追加の製造装置700の操作者に可視的なフィードバックを提供するために使用されてもよい。画像センサは、例えば、較正および正確なトラッキングに対して、製造された物体上に発生するビームスポットの大きさ、焦点、および位置を解析するためにも使用されてもよい。さらに、画像センサは、熱を感知可能(例えば、熱画像センサ)であってもよく、処理される基礎材料(例えば、樹脂)の状態の決定に使用されてもよい。例えば、熱画像センサはビームスポット周囲の局地加熱および/または処理された材料の曲がりの程度を測定してもよい。
【0191】
基盤740は、注文履物であってもよい、物体750の製造のための可動の基礎として機能する。上述のように、基盤740は、1つ以上の方向に動いてもよく、制御器710のような制御器によって制御されてもよい。例えば、基盤740は、物体750の製造の間、制御器710によって制御され、同時に物体750の1つの層または断面だけ動かされてもよい。
【0192】
基盤740は、操作情報を決定し、制御器710または光学的な追加の製造装置700の他の部分への情報を送信するセンサを含んでいてもよい。
【0193】
基盤740は、走査器730によって方向付けられた入射するビームスポットによって処理された、製造する材料(例えば、感光性樹脂)を含んだ容器すなわちベッセル(図示せず)に囲われていてもよい。例えば、物体750の不変の層の回復と形成との樹脂に引き起こす、感光性樹脂の層にわたってビームを方向付けてもよい。
【0194】
物体750のような物体のための製造基部として役割を果たすための、十分な強度と弾性とを備える何れかの適する材料からなっていてもよい。
【0195】
プラットフォームの周りの容器または管に加えて、追加の製造装置700は、製造材料供給する構成要素も備えてもよい。例えば、物体750の各個別層がスキャナ730の働きによって完成した後、構成要素は、製造材料の新たな層を供給してもよい。
【0196】
物体750は、SLA、SLS、SLMおよび周知の他の方法などの様々な方法を用いる追加の製造装置700によって、形成される。
【0197】
図8に示されるような例示的なコンピュータ装置700を、図1の情報収集システム110、情報処理システム120、および/または製造システム130に接続した状態において、用いてもよい。
【0198】
コンピュータ装置800は、処理装置810を含む。処理装置810は、様々なコンビュータ構成要素と情報通信する。これらの構成要素は、記憶装置820と入力装置830と出力装置840とを含んでもよい。なお、別個に記載されているが、コンピュータ装置800について記載されている機能ブロックは、構造的に別個の要素である必要はない。例えば、処理装置810とネットワークインターフェースカード860とは、1枚のチップまたはボードに統合されてもよい。
【0199】
処理装置810は、本明細書中に記載されている機能を実行するために設計された、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のプログラム可能な論理的装置、個別ゲートまたはトランジスタ論理回路、個別のハードウェア構成要素、またはそれらの任意の適当な組み合わせであってもよい。処理装置は、また、計算装置の組み合わせとして実現されてもよく、例えば、DSPとマイクロプロセッサ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに接続した1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装されてもよい。
【0200】
処理装置810は、1つ以上の情報バスを経由して、情報を読み出すまたは情報を書き込む記憶装置820に連結されてもよい。処理装置は追加として、または代わりに、プロセッサレジスタのような記憶装置を含んでもよい。記憶装置820は、異なるレベルであれば異なる容量とアクセス速度を備えるマルチレベル階層的キャッシュを含む、処理キャッシュを含んでもよい。記憶装置820は、さらに、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他の揮発性記憶装置、または不揮発性記憶装置を含んでもよい。記憶装置は、ハードドライブ、コンパクトディスク(CD)またはデジタルビデオディスク(DVD)のような光学ディスク、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、Zipドライブ、USBドライブおよび他の周知の記憶装置を含んでもよい。
【0201】
処理装置810は、また、それぞれがコンピュータ装置800の使用者からの入力を受け付け、使用者へ出力を提供する、入力装置830および出力装置840に接続されてもよい。適当な入力装置は、キーボード、ロールボール、ボタン、キー、スイッチ、ポインティングデバイス、マウス、ジョイスティック、遠隔操作装置、赤外線検出器、音声認識システム、バーコードリーダ、スキャナ、(例えば、手のジェスチャまたは顔のジェスチャを検出するビデオ処理ソフトウェアに接続されうる)ビデオカメラ、モーション検出器、(例えば、ボイスコマンドを検出する音声処理ソフトウェアに接続されうる)マイクロフォン、または使用者からコンピュータへ情報を伝達することができる他の装置を含むが、これらに限定されることはない。入力装置は、表示装置と関連付けられたタッチスクリーンの形式であってもよく、この場合、使用者は、画面を触ることによって表示装置のプロンプトに応答する。使用者は、キーボードまたはタッチスクリーンなどの入力装置を通じて、テキスト情報を入力してもよい。適当な出力装置は、ディスプレイおよびプリンタを含む映像出力装置、スピーカ、ハンドフォン、イヤホン、およびアラームを含む音響出力装置、積層造形装置、および触覚出力装置を含むが、これらに限定されることはない。
【0202】
処理装置810は、ネットワークインターフェースカード860にさらに接続されてもよい。ネットワークインターフェースカード860は、1つ以上のデータ送信プロトコルによってネットワーク経由において送信するための、処理装置810によって生成されたデータを準備する。ネットワークインターフェースカード860は、またネットワーク経由において受信したデータを復号するように構成されている。実施形態によって、ネットワークインターフェースカード260は、送信機、受信機、または両方を含んでもよい。特定の実施形態において、送信機および受信機は、単一の一体化された構成要素であっても、2つの別々の構成要素であってもよい。ネットワークインターフェースカード860は、本明細書中に説明された機能を実行するために設計された、汎用プロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または他のプログラム可能な論理的装置、別々のゲートまたはトランジスタ論理回路、別々のハードウェア構成要素、またはそれらの任意の適当な組み合わせとして実装されてもよい。
【0203】
本明細書中に開示した発明は、ソフトフェア、ファームフェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせを生産できる標準的なプログラミング技術または標準的な光学技術を用いた、製造方法または製造装置または製造品として、実行されてもよい。本明細書において、「製造品(article of manufacture)」という用語は、ハードウェア内または非一時的なコンピュータ読取可能な媒体内において実行される符号または論理を指示し、例えば、光学記憶装置、および揮発性または非揮発性の記憶装置、または、信号、搬送波などのような一時的なコンピュータ読取可能な媒体などを指示する。このようなハードウェアは、これに限らないが、FPGA、ASIC、複雑プログラム可能論理装置(CPLD)、プログラム可能論理アレイ(PLA)、マイクロプロセッサ、他の類似の処理装置を含む。
【0204】
広範に記載されているように、本発明の精神または範囲から離れることなく、多数のバリエーションおよび/または変形例が可能であることは、当業者には十分に理解できるものである。故に、上述の実施形態は、説明のためのものに過ぎず、制限するものではないと、見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
図1】注文履物システムの実施形態を描写する図である。
図2】注文履物の設計のための方法を描写する図である。
図3A】例示的な情報収集システムのグラフィカルユーザインタフェースを描写する図である。
図3B】例示的な履物設計構成要素のグラフィカルユーザインタフェースを描写する図である。
図4A】矯正特徴を含む、例示的な中物(履物部品)を描写する図である。
図4B】矯正特徴を含む、例示的な中物(履物部品)を描写する図である。
図4C】矯正特徴を含む、例示的な中物(履物部品)を描写する図である。
図5A】複数の矯正領域を備えている、例示的な中底(履物部品)を描写する図である。
図5B】複数の矯正領域を備えている、例示的な中底(履物部品)を描写する図である。
図6A】付加的に製造された中底(履物部品)を描写する図である。
図6B】付加的に製造された中底(履物部品)を描写する図である。
図7】例示的な追加の製造装置を描写する図である。
図8】例示的なコンピュータを描写する図である。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8