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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】工作機械の給排気システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220117BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23Q11/10 F
B23Q11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020104482
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194752
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 研次郎
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-089249(JP,A)
【文献】特開平11-333723(JP,A)
【文献】特開2003-291050(JP,A)
【文献】特開2010-000579(JP,A)
【文献】特開2010-064175(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046884(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094042(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038071(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/059820(WO,A1)
【文献】特開2014-033987(JP,A)
【文献】特開2002-200539(JP,A)
【文献】特開2018-099764(JP,A)
【文献】実開平01-071045(JP,U)
【文献】特開平08-090365(JP,A)
【文献】特開2003-145389(JP,A)
【文献】特表2009-519837(JP,A)
【文献】特開2017-094420(JP,A)
【文献】特開2019-103972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材で仕切られワークを加工する加工空間に漂うクーラントのミストを空気とともに前記加工空間から排気する排気ダクトと、
前記排気ダクトで案内される空気に含まれるミストを除去するミスト凝集部と、
前記ミスト凝集部を通過した空気を前記加工空間に供給する給気ダクトと、
前記排気ダクトから前記給気ダクトの間の少なくとも何れかに備えたファンと、
を備えて構成され、
前記給気ダクトで案内される空気を前記加工空間の上方から下方に向けて噴き出し、前記ワークの加工により生じる切屑を前記加工空間の下方に導くノズル機構を備え、
前記ノズル機構は、前記加工空間を仕切るカバー部材の側壁の横幅方向に亘り直線状のスプレーパターンとなるように、上方から下方に向けて空気を噴き出す単一または複数のフラットノズルを含む工作機械の給排気システム。
【請求項2】
前記ノズル機構は前記カバー部材の複数の側壁に設けられ、前記給気ダクトから分岐する分岐ダクトを介して各フラットノズルに接続されている請求項1記載の工作機械の給排気システム。
【請求項3】
前記ノズル機構は、前記フラットノズルに加えて、前記ワークの加工点近傍で上方から下方に向けて空気を噴き出す円形状のスプレーパターンの円錐ノズルまたは直進ノズルを含む請求項1または2記載の工作機械の給排気システム。
【請求項4】
前記ミスト凝集部の上流側に、前記排気ダクトで案内される空気に含まれる蒸気を凝縮する冷却機構を備えている請求項1から3の何れかに記載の工作機械の給排気システム。
【請求項5】
前記冷却機構は前記加工空間の雰囲気温度を所定温度範囲に調整するように前記排気ダクトで案内される空気を冷却するように構成されている請求項4記載の工作機械の給排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材で仕切られワークを加工する加工空間に漂うクーラントのミストを空気とともに前記加工空間から排気し、ミストを除去した空気を前記加工空間に給気する工作機械の給排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、工具を用いたワークの加工部位に向けてクーラントを吹き付けるクーラントノズルを備え、クーラントで加工部位を冷却することで工具及びワークの温度上昇を抑制し、さらに発生した切屑を加工部位から除去するように構成している。加工点へのクーラントの衝突及び気化によりクーラントがミストとなって加工室内に充満する。
【0003】
そのため、加工空間に充満したミスト状のクーラントを除去すべく、排気ダクトを設け、排気ダクトを介して空気とともに排出されたミストを分離除去するミスト凝集部を備えたミストコレクタを設置していた。
【0004】
特許文献1には、そのような従来の大掛かりなミスト除去装置に代えて、所定の作業空間内の局所空間内において空気を循環させるのみで、高効率かつ低コストに捕集回収することができるようにした循環型オイルミスト成分集塵装置が提案されている。
【0005】
当該循環型集塵装置は、集塵すべきオイルミスト成分等発生源の上方に設けられ、当該オイルミスト成分等発生源の周囲に上方から下方に向けて旋回するエアカーテン流を形成する空気吹出手段と、該空気吹出手段により形成された上記エアカーテン流の内側において下方から上方に向けて旋回しながら上昇する吸気旋回流を形成し、上記オイルミスト成分等発生源から発生するオイルミスト成分等を吸引する空気吸込手段と、該空気吸込手段による空気吸込部にあって上記吸引されるオイルミスト成分を捕集液状化するグリスフィルタと、該グリスフィルタにより捕集液状化されたオイル成分をオイル貯留部に排出するオイル排出手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-310237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した循環型集塵装置では、空気吹出手段により上方から下方に向けて旋回するエアカーテン流を形成し、エアカーテン流の内側で下方から上方に向けて旋回しながら上昇する吸気旋回流を形成することになるのであるが、そのためには、例えばエアカーテン流の下流側にエアカーテン流を受け止めて上方に向かう吸気旋回流を形成するための案内板を設けるなど、エアカーテン流や吸気旋回流を安定的に生成するための構成が必要となる。
【0008】
その結果、加工空間の形状、加工空間に配されるベッド、サドル、コラムなどの形状やサイズが制限され、それらのレイアウトの自由度も低くなり、様々な工作機械に汎用できる装置ではなかった。
【0009】
また、エアカーテン流によってミストの捕捉ができるとしても、機械加工により生じた切屑まで捕捉することは困難であり、エアカーテン流から飛び出してカバー部材の壁面に付着するような事態の発生を抑制することは非常に難しく、結局は人手によりカバー部材の壁面を清掃するという煩雑な作業から開放されるものではなかった。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、加工熱で気化したクーラント成分を含むミストを除去しながらも、カバー部材への切屑などの付着を抑制できる工作機械の給排気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明による工作機械の給排気システムは、カバー部材で仕切られワークを加工する加工空間に漂うクーラントのミストを空気とともに前記加工空間から排気する排気ダクトと、前記排気ダクトで案内される空気に含まれるミストを除去するミスト凝集部と、前記ミスト凝集部を通過した空気を前記加工空間に供給する給気ダクトと、前記排気ダクトから前記給気ダクトの間の少なくとも何れかに備えたファンと、を備えて構成され、前記給気ダクトで案内される空気を前記加工空間の上方から下方に向けて噴き出し、前記ワークの加工により生じる切屑を前記加工空間の下方に導くノズル機構を備え、前記ノズル機構は、前記加工空間を仕切るカバー部材の側壁の横幅方向に亘る直線状のスプレーパターンとなるように、上方から下方に向けて空気を噴き出す単一または複数のフラットノズルを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工熱で気化したクーラント成分を含むミストを除去しながらも、カバー部材への切屑などの付着を抑制できる工作機械の給排気システムを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】工作機械の給排気システムの正面視の説明図である。
図2】工作機械の給排気システムの側面視の説明図である。
図3】工作機械の給排気システムの平面視の説明図である。
図4】ミスト凝集部を含むミストコレクタの説明図である。
図5】加工空間に配された工作機械の説明図で、(a)は側面から視た工作機械の基本構成を示す説明図であり、(b)は正面から視た工作機械の基本構成を示す説明図である。
図6】ノズル機構の別実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[工作機械の給排気システムの基本的な実施形態]
上述したように、本発明による工作機械の給排気システムの第一の特徴構成は、カバー部材で仕切られワークを加工する加工空間に漂うクーラントのミストを空気とともに前記加工空間から排気する排気ダクトと、前記排気ダクトで案内される空気に含まれるミストを除去するミスト凝集部と、前記ミスト凝集部を通過した空気を前記加工空間に供給する給気ダクトと、前記排気ダクトから前記給気ダクトの間の少なくとも何れかに備えたファンと、を備えて構成され、前記給気ダクトで案内される空気を前記加工空間の上方から下方に向けて噴き出し、前記ワークの加工により生じる切屑を前記加工空間の下方に導くノズル機構を備えている点にある。
【0015】
ファンによって加工空間から空気とともにクーラントのミストが排気ダクトに導かれ、ミスト凝集部によってミストが凝集されて、ミストが分離除去された空気が給気ダクトを介して加工空間に還流される。給気ダクトで案内される空気がノズル機構によって加工空間の上方から下方に向けて噴き出され、ワークの加工により生じる切屑が加工空間の下方に導かれる。
【0016】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ノズル機構は、前記加工空間を仕切るカバー部材の側壁に沿って上方から下方に向けて空気を噴き出す直線状のスプレーパターンの単一または複数のフラットノズルを含む点にある。
【0017】
ノズル機構として直線状のスプレーパターンの単一または複数のフラットノズルを採用することにより、クーラントで濡れた切屑がカバー部材の側壁に向かって飛散するような場合でも、加工空間を仕切るカバー部材の側壁に沿って上方から下方に向けて噴き出される空気によって、側壁への付着が効果的に抑制される。
【0018】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記ノズル機構は前記カバー部材の複数の側壁に設けられ、前記給気ダクトから分岐する分岐ダクトを介して各フラットノズルに接続されている点にある。
【0019】
給気ダクトを介して加工空間に供給されるミスト除去後の空気が、分岐ダクトを介してカバー部材の複数の側壁に案内され、分岐ダクトを介して接続されたフラットノズルからカバー部材複数の側壁に沿って上方から下方に向けて噴き出される。
【0020】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記ノズル機構は、前記ワークの加工点近傍で上方から下方に向けて空気を噴き出す円形状のスプレーパターンの円錐ノズルまたは直進ノズルを含む点にある。
【0021】
ノズル機構として円形状のスプレーパターンの円錐ノズルまたは直進ノズルを採用し、ワークの加工点近傍で上方から下方に向けて空気を噴き出すことにより、加工点で発生して飛散する切屑が速やかに下方に案内される。
【0022】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記ミスト凝集部の上流側に、前記排気ダクトで案内される空気に含まれる蒸気を凝縮する冷却機構を備えている点にある。
【0023】
加工熱により蒸発したクーラント成分が冷却機構を経由する際に凝縮された後にミスト凝集部の案内されるため、空気とともに排気ダクトに案内されるクーラント成分がミスト凝集部で効率的に回収除去される。
【0024】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記冷却機構は前記加工空間の雰囲気温度を所定温度範囲に調整するように前記排気ダクトで案内される空気を冷却するように構成されている点にある。
【0025】
加工空間の雰囲気温度が急激に変動すると、工具、ワークやベッド、コラム、主軸などの工作機械の構造体に熱変位が生じる虞がある。そこで、排気ダクトで案内される空気を冷却機構により冷却することにより、加工空間の雰囲気温度が大きく変動しないように、所定温度範囲に調整することができる。
【0026】
[工作機械の給排気システムの詳細な実施形態]
以下、図面に基づいて工作機械の給排気システムの詳細な実施形態を説明する。
【0027】
図5(a),(b)には、カバー部材200で仕切られワーク10を加工する加工空間に設置された工作機械100が示されている。
【0028】
工作機械100は、ベッド1と、ベッド1上の案内面に沿ってZ軸方向に移動するテーブル2と、テーブル2上で垂直姿勢のB軸周りに回転するパレット3と、ベッド1に垂設され、ベッド1上の案内面に沿ってX軸方向に移動するコラム4と、コラム4の案内面に沿ってY軸方向に移動する主軸頭5とを備えた横形のマシニングセンタであり、二点鎖線で示されているように、周囲がカバー部材200で被覆され、カバー部材200には開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。
【0029】
サーボモータMZが駆動されるとベッド1上でテーブル2がZ軸方向の直動駆動軸に沿って移動し、サーボモータMBが駆動されるとテーブル2上でパレット3がB軸周りに回転し、サーボモータMXが駆動されるとベッド1上でコラム4がX軸方向の直動駆動軸に沿って移動し、サーボモータMYが駆動されるとコラム4上で主軸頭5がY軸方向の直動駆動軸に沿って移動する。
【0030】
主軸頭5に設けられた主軸6によって工具7が保持され、サーボモータMS1が駆動されると工具7が水平軸心周りに回転する。パレット3に設けたイケール等の治具により被加工物であるワーク10が保持され、サーボモータMBが駆動されるとイケール等の治具によって保持されたワーク10がパレット3と共にB軸に沿う垂直軸心周りに回転する。
【0031】
予め設定されたNCプログラムに基づいて上述した各サーボモータMX,MY,MZ,MB,MS1がサーボ制御部を介して駆動されることにより、ワーク10と工具7が相対移動してワーク10が所望の形状に機械加工される。
【0032】
テーブル2の下方には冷却や洗浄に供給される流体であるクーラントを回収するクーラントタンク8が設置され、機械加工に伴って発生する切屑がクーラントとともにクーラントタンク8に回収されるように構成されている。クーラントタンク8の底部にはチップコンベア9が配設され、クーラントタンク8に回収された切屑11はチップコンベア9により機外に搬出されて回収容器12に回収される。
【0033】
クーラントタンク8に回収されたクーラントは、サイクロンフィルタなどを介して切屑などの異物が除去された後にクーラントノズル20に循環供給される。
【0034】
主軸6の前面には、工具7によってワーク10が機械加工される際に加工部位に生じる切削熱による温度上昇を抑制するとともに加工部位に付着した切屑を除去するために、冷却及び洗浄用の流体であるクーラントを加工部位に向けて噴射するクーラントノズル20が設けられている。加工時にクーラントを用いる理由は、切削熱による温度上昇に起因する熱変位により、ワークの加工精度が低下することを低減したり、加工点を潤滑して切削抵抗を低減させたり、切削により生じた切屑を除去するためである。
【0035】
ワーク10の加工時には、クーラントノズル20から噴射されるクーラントの一部が切削熱によって気化し、また微粒子化して加工空間に充満し、ミストとして浮遊するため、当該ミストを除去すべく給排気システム300が構築されている。
【0036】
図1から図3に示すように、工作機械の給排気システム300は、カバー部材200で仕切られワーク10を加工する加工空間210に漂うクーラントのミストを空気とともに加工空間210から排気する排気ダクト310と、排気ダクト310で案内される空気に含まれるミストを除去するミスト凝集部を備えたミストコレクタ360と、ミストコレクタ360を通過した空気を加工空間210に供給する給気ダクト320と、排気ダクト310から給気ダクト320の間の何れかに備えたファン368(図4参照。)と、を備えている。
【0037】
排気ダクト310のうちミスト凝集部の上流側直近位置に排気ダクトで案内される空気に含まれるクーラントの蒸気を凝縮する熱交換器350を備えている。熱交換器350には複数枚の吸熱フィンが設けられており、チラー330から当該吸熱フィンを冷却する冷却用の熱媒体が媒体循環路340を介して循環供給されている。即ち、熱交換器350とチラー330によって冷却機構が構成されている。
【0038】
加工空間210から排気ダクト310に流入する空気は約50℃程度に加熱され、クーラントのミストや蒸気が含まれている。このような空気が熱交換器350で吸熱フィンと接触することで冷却され、同時にクーラントの蒸気も凝縮されてミストとなる。冷却機構により約50℃程度の温度が25℃程度の室温まで冷却される。
【0039】
図4に示すように、ミストコレクタ360は排気ダクト310から空気とともに流入するミストを除去して給気ダクト320に吐出す装置であり、上流側から順に、中央から周辺に向けて立ち下がるように湾曲形成された金属板でなる衝突板361、ルーバー状の衝突板362、ドラムフィルタ363、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)365を備えている。ドラムフィルタ363の内側には遠心ファン368と、遠心ファン368を駆動する電動モータ364が設けられている。
【0040】
遠心ファン368により加工空間から排気ダクト310に吸引された空気に含まれる比較的粒径の大きなミストや粗い切屑などが衝突板361に衝突してトラップされ、衝突板361の下方に設置されたドレンパン366に滴下回収される。衝突板361で除去しきれなかったミストや切屑は下流側に備えたルーバー状の衝突板362によってトラップされる。
【0041】
衝突板362を通過した空気は、さらに遠心ファン368によってドラムフィルタ363の内側面に向けて吹き付けられて粒径の小さなミストや切屑が除去され、その後にHEPAフィルタを通過することにより、0.3μm以上のミストなどの微粒子の殆どが除去される。ドレンパン366に回収されたクーラントはドレン口367から排出される。
【0042】
ドレン口367から排出されたクーラントは、クーラント回収機構を介して加工空間210内のクーラントタンク8に回収されて再利用される。図1では破線の矢印で簡略化しているが、クーラント回収機構は、クーラント貯留部と、クーラント還流路と、回収ポンプを備えて構成され、ドレン口367から排出されたクーラントがクーラント貯留部に貯留され、回収ポンプによってクーラント還流路を経由してクーラントタンク8に回収される。
【0043】
なお、上述のミストコレクタ360に組み込まれるミスト除去のための機能部品である衝突板361,362、ドラムフィルタ363、HEPAフィルタ365などの具体的な構成は特に上述したものに限定されるものではなく、所望の機能を実現可能な公知のフィルタなどを用いることができることは言うまでもない。例えば衝突板としてパンチングメタルなどを用いることができ、フィルタとして金属メッシュフィルタなどを用いることができる。
【0044】
図1から図3に戻って説明を続ける。排気ダクト310はカバー部材200の側壁上部に取り付けられるとともに給気ダクト320はカバー部材200の天井部に取り付けられている。
【0045】
加工空間210を仕切るカバー部材200のうち、右側壁200Rの上方空間に第1給気管321が水平姿勢で配され、左側壁200Lの上方空間に第2給気管322が水平姿勢で配され、第1給気管321と第2給気管322が分岐管323で接続されている。第1給気管321及び第2給気管322には、其々等間隔で複数のノズルNr,Nlが取り付けられている。第1給気管321と第1給気管321に取り付けられた複数のノズルNrにより第1ノズル機構N1が構成され、第2給気管322と第2給気管322に取り付けられた複数のノズルNlにより第2ノズル機構N2が構成されている。
【0046】
給気ダクト320から加工空間210に供給された空気は、第1ノズル機構N1を介して右側壁200Rに沿って上方から下方に向けて噴き出され、第2ノズル機構N2を介して左側壁200Lに沿って上方から下方に向けて噴き出される。
【0047】
右側壁200R及び左側壁200Lに沿って流れる空気によって、各側壁200R,200Lに向かって飛散した切屑が加工空間210の下方に導かれることで、各側壁200R,200Lへの切屑の付着が抑制される。下方に導かれた切屑はテーブル2の周囲に配された傾斜案内板に沿ってクーラントタンク8に落下し、その後にチップコンベア9によって機外に搬出される。
【0048】
第1ノズル機構N1及び第2ノズル機構N2を構成するノズルNr,Nlは、直線状のスプレーパターンのフラットノズルが好適に用いられる。ノズルNr,Nlの数やサイズは特に制限されるものではなく、加工点から飛散した切屑を下方に導くことができるように設定すればよい。なお、フラットノズルの形状は特に限定するものではなく、公知のエアーノズルを適宜用いることができることは言うまでもない。また、ノズルNr,Nlの設置角度の適宜設定することができる。
【0049】
図1に示すように、分岐管323の長手方向中央部から下方に第3給気管324が垂下するように配され、その先端にノズルNcがワーク10の加工点近傍を指向するように取り付けられている。ノズルNcとして、円形状のスプレーパターンの円錐ノズルまたは直進ノズルが好適に用いられ、加工点で生じる切屑を吹き飛ばすように空気が噴出される。なお、円錐ノズルまたは直進ノズルの形状は特に限定するものではなく、公知のエアーノズルを適宜用いることができることは言うまでもない。
【0050】
上述した実施形態では、第1給気管321と第1給気管321に取り付けられた複数のノズルNrにより第1ノズル機構N1が構成された例を説明したが、図6(a),(b),(c)に示すように、第1給気管321に管軸方向に沿って幅の狭い単一または複数のスリットSLを形成し、スリットSLから側壁に沿って空気が噴き出すように構成してもよい。図6(b)では、第1給気管321の管軸方向に沿って単一のスリットSLが形成された例を示しているが、第1給気管321の管軸方向に沿ってスリットSLが複数に分割形成されていてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、上方から下方に向けて噴き出されるノズル機構を、右側壁200R及び左側壁200Lに備えた例を説明したが、右側壁200R及び左側壁200Lに限るものではなく、加工空間210を仕切るカバー部材200の測兵のうち、切屑の付着を抑制する必要のある任意の側壁に対してノズル機構を設けることができる。
【0052】
上述の例では分岐管323を加工空間210の内部に配置した例を説明したが、分岐管323は加工空間210の外部、例えば天井壁の上部に設置してもよい。
【0053】
冷却機構を構成する熱交換器350は、排気ダクト310のうちミストコレクタ360の直近上流側に備えていることが好ましいが、設置位置を限定するものではなく、排気ダクト310の何れかの部位に備えていればよい。
【0054】
また、熱交換器350は、排気ダクト310から排気され給気ダクト320から給気される空気の循環経路の何れかに備えていればよく、必ずしも排気ダクト310に備えている必要はない。給気ダクト320に熱交換器350を備える場合は、熱交換器350により凝縮されたミストが加工空間210に流入することになるが、加工空間210の内部温度の上昇を抑制するという効果は十分に発揮させることができる。
【0055】
冷却機構としてチラー330と熱交換器350を用いた構成を説明したが、熱交換器350の具体的構造は特に限定されるものではなく、公知の構造を適宜用いることができる。
【0056】
冷却機構として、コンプレッサーと渦流発生器と調整弁を備えたエアークーラーを用いることも可能である。また、冷凍サイクルを利用し冷却機構を設けてもよい。
【0057】
ミストコレクタ360として衝突板とフィルタを備えた構成を説明したが、具体的な構造は上述した例に限るものではなく、適宜公知の衝突式のミストコレクタを採用することができる。
【0058】
また、単一のサイクロン機構、または複数のサイクロンを配列したサイクロン式のミストコレクタ360を用いてもよい。
【0059】
加工空間210はカバー部材200で密閉されているわけではなく、ある程度の隙間を介して外部と連通状態となっている。そのため、加工空間210に発生するクーラントのミストがカバー部材200の隙間などを介して外部に漏出することがないように、加工空間を負圧に維持する必要がある。
【0060】
加工空間210から排気ダクト310を介して引き抜いた空気の全量を、給気ダクト320を介して加工空間に還流すると、加工空間210が正圧になって給気ダクト320を介して空気を供給することが困難になる。
【0061】
そこで、ミストコレクタ360(ミスト凝集部)を通過した空気の一部を外部に解放した残余を、給気ダクト320を介して加工空間210に供給することで、加工空間210を負圧に維持しつつ循環経路に沿って空気を循環させることができる。
【0062】
冷却機構により調整される空気の温度は、加工により生じる熱によって工具、ワークやベッド、コラム、主軸などの工作機械の構造体に大きな熱変位が発生することがないように抑制できる温度であればよく、特に限定するものではない。本実施形態では、空気の循環がない場合に上昇する温度が50℃程度となるため、少なくとも加工空間210の雰囲気温度が室温から50℃程度まで上昇することがないように、25℃前後の常温まで冷却することにより、加工空間210の雰囲気温度が高くても40℃程度に維持されるように構成されている。
【0063】
上述した実施形態では、ミストコレクタ360に備えた遠心ファン368によって、排気ダクト310及び給気ダクト320で構成される循環経路に沿って加工空間210の空気を循環させる例を説明したが、ミストコレクタ360に備えた遠心ファン368以外のファンを排気ダクト310及び給気ダクト320の何れか一方または双方に備えてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、工作機械100が横形のマシニングセンタで構成された例を説明したが、本発明が適用される工作機械100は横形のマシニングセンタに限るものではなく、各種のマシニングセンタに適用でき、旋盤のような工具を保持する主軸頭を備えていない工作機械に適用することもできる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上に説明したように、本発明により、加工熱で気化したクーラント成分を含むミストを除去しながらも、カバー部材への切屑などの付着を抑制できる工作機械の給排気システムが実現できる。
【符号の説明】
【0067】
1:ベッド
2:テーブル
3:パレット
4:コラム
5:主軸頭
6:主軸
7:工具
8:クーラントタンク
9:チップコンベア
10:被加工物(ワーク)
11:切屑
100:工作機械
200:カバー部材
210:加工空間
300:給排気システム
310:排気ダクト
320:給気ダクト
321:第1給気管
322:第2給気管
323:分岐管
324:第3給気管
330:チラー(冷却機構)
340:媒体循環路
350:熱交換器(冷却機構)
360:ミストコレクタ
368:ファン
N1:第1ノズル機構
N2:第2ノズル機構
Nr,Nl,Nc:ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6