(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】塩基性酸素転炉用羽口
(51)【国際特許分類】
C21C 5/48 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
C21C5/48 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020122207
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195-1501, USA
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100219553
【氏名又は名称】板谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アナンドクマー マクワーナ
(72)【発明者】
【氏名】アナップ バサント サネ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイビッド ブジンスキー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジェイ.ブラジーノ
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-181514(JP,A)
【文献】特開昭56-105413(JP,A)
【文献】特開昭50-128612(JP,A)
【文献】特表2009-542909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356645(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 7/00
F27D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性酸素転炉(BOF)底部撹拌における使用のための羽口であって、
内管であって、第1の
内径を有する下部セクション、前記第1の
内径よりも小さい第2の
内径を有する上部セクション、および前記内管の下部セクションを前記内管の上部セクションに接続する、30°~60°の収束角Θを有する収束移行セクションを含み、前記内管上部セクションの下流端にある内側ノズルで終端する内管と、
前記内管を取り囲んでそれとの間に環状部を形成する外管であって、前記第1の
内径よりも大きい第3の
内径を有する下部セクション、前記第3の
内径よりも小さいが前記第2の
内径よりも大きい第4の
内径を有する上部セクション、および前記外管の下部セクションを前記外管の上部セクションに接続する収束移行セクションを有し、前記外管上部セクションの下流端にある外側ノズルで終端する外管とを備え、
前記羽口は、前記羽口によって形成されるジェットが、0.75~2の膨張マッハ数を有する噴出モードにある攪拌モードと、安定した非予混合火炎が形成されて、前記内側ノズルまたは前記外側ノズルのいずれかの閉塞を取り除くことができるバーナーモードとの2つのモードで動作可能である、羽口。
【請求項2】
前記羽口を、攪拌モード中に前記噴出モードで動作させるとき、前記膨張マッハ数は1.25よりも大きい、請求項1に記載の羽口。
【請求項3】
前記内管の前記上部セクションの外面に15°~75°のテーパー角度でらせん状に巻き付けられた、直径方向反対側の1対のワイヤをさらに備える、請求項1に記載の羽口。
【請求項4】
前記内管に不活性ガスを供給するように構成された第1の不活性ガス弁、および前記内管に燃料を供給するように構成された燃料弁と、
前記外管に不活性ガスを供給するように構成された第2の不活性ガス弁、および前記外管に酸化剤を供給するように構成された酸化剤弁と、
前記羽口を攪拌モードまたはバーナーモードで動作させるようにプログラムされたコントローラと、をさらに備え、前記攪拌モードでは、前記第1の不活性ガス弁および前記第2の不活性ガス弁は開かれる一方で、前記燃料弁および前記酸化剤弁は閉じられ、前記バーナーモードでは、前記燃料弁および前記酸化剤弁は開かれる一方で、前記第1の不活性ガス弁および前記第2の不活性ガス弁は閉じられる、請求項1に記載の羽口。
【請求項5】
前記羽口の前記内管内の第1の背圧を示す信号を前記コントローラに送信するように構成された、前記羽口の前記内管の上流の導管内の第1の圧力センサと、
前記羽口の前記外管内の第2の背圧を示す信号を前記コントローラに送信するように構成された、前記羽口の前記外管の上流の導管内の第2の圧力センサと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1の背圧および前記第2の背圧の一方または両方が前記羽口内の所定の正常背圧範囲から逸脱したとき、羽口動作を前記攪拌モードから前記バーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、請求項4に記載の羽口。
【請求項6】
前記羽口の前記外管の前記上部セクション内の温度を示す信号を前記コントローラに送信するように構成された温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記温度が前記羽口内の所定の正常温度範囲から逸脱したとき、羽口動作を前記攪拌モードから前記バーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、請求項4に記載の羽口。
【請求項7】
前記羽口の前記内側ノズルおよび前記外側ノズルの視覚画像を前記コントローラに送信するように構成されたカメラをさらに備え、
前記コントローラは、前記視覚画像が前記内側ノズルおよび前記外側ノズルの一方または両方の部分的な閉塞を示すとき、羽口動作を前記攪拌モードから前記バーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、請求項4に記載の羽口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、塩基性酸素転炉(BOF)を底部攪拌するために不活性ガスを使用する運用性を改善するための羽口に関する。
【0002】
BOFは、20世紀半ば以降、主に酸素を使用して炭素および不純物を除去することにより、銑鉄を鋼に変換するために一般的に使用されている。BOFは、空気を銑鉄に吹き込んでこの変換を達成する初期のベッセマープロセスを改善したものである。BOFでは、酸素を溶融銑鉄に吹き込むことで、金属の炭素含有量を低下させ、低炭素鋼に変える。プロセスは、化学的な根拠に基づき、焼石灰またはドロマイトのフラックスを使用して、不純物の除去を促進し、槽の内張りを保護する。
【0003】
BOFでは、頂部ランスを使用して酸素を超音速で浴中に吹き込み、酸素と炭素の発熱反応を引き起こして、熱を発生させ、炭素を除去する。酸素を含む成分をモデル化し、目標の化学的性質および温度に約20分以内に到達するように、正確な量の酸素を吹き込む。
【0004】
酸素吹き込みの冶金性および効率は、(複合吹き込みとも呼ばれこともある)底部攪拌によって改善され、基本的には、下からガスを導入して溶融金属を攪拌して、反応速度を向上させ、温度をより均一にすることで、炭素対酸素の比率をより適切に制御することと、リンの除去とを可能とする。
【0005】
米国外では、底部攪拌のためにアルゴンおよび/または窒素などの不活性ガスを使用することが比較的一般的である。BOF底部攪拌の利点には、潜在的により高い収率とエネルギー効率の向上が含まれる。しかしながら、BOF底部攪拌は、米国で一般的に使用されるスラグはねかけの慣行により、底部攪拌ノズルを維持することの信頼性が低いことおよび難しさから、米国では一般的ではない。スラグはねかけは、耐火性および槽の寿命を改善させる助けとなるが、既存の底部攪拌ノズルの閉塞を引き起こす。
【0006】
BOF底部攪拌を採用している米国以外の施設でさえ、既存の底部攪拌ノズルが詰まったり閉塞したりするまでの寿命は、多くの場合、炉キャンペーンの長さよりも著しく短い。例えば、BOFキャンペーンが、1万、1万5千、または2万回の溶解行程を実行することは珍しくないが、底部攪拌ノズルは、使用できなくなるまでに、3~5千回の溶解行程よりも長持ちすることはめったにない。したがって、炉キャンペーンの少なくとも半分、場合によっては85%に対して、底部攪拌は利用できない。
【0007】
歴史的には、溶融金属の下からガスを導入する他の運用が、製鋼において時々使用されてきた。例えば、1970年代に、天然ガス(または冷却材として使用される他のガス)を酸素と一緒に、同心ノズルを有する羽口(通常は、酸素が内側中央ノズルを流れ、燃料が外側環状ノズルを流れる)を通して注入することにより、製鋼における脱炭に酸素を使用するプロセスが開発された。例えば、100%底部吹き込み(OBM)プロセスでは、プロセスに酸素を注入する羽口を覆うために、天然ガスを使用する。やはり羽口を通して粉末ライムを注入するQ-BOP(塩基性酸素プロセス)など、このプロセスのいくつかの変形も使用されている。これらの方法は、例えば、Chapter 8:Oxygen Steelmaking Furnace Mechanical Description and Maintenance Considerations;Chapter 9:Oxygen Steelmaking Processes;Fruehan, R.J.,The Making,Shaping and Treating of Steel:Steelmaking and Refining Volume,11th Edition,AIST,1998,ISBN:0930767020;およびhttps://mme.iitm.ac.in/shukla/BOF%20steelmaking%20process.pdfに記載されている。これらのプロセスは、通常、底部の摩耗が大きくなり、炉キャンペーンの途中で底部を交換する必要がある。
【0008】
他の例では、底部攪拌が必要でない場合でも不活性ガス流を常に高流量に維持して、詰まりの可能性に対抗するが、これは、非効率的であり、過剰量の不活性ガスを使用する。例えば、Mills,Kenneth C.,et al.“A review of slag splashing.”ISIJ international 45.5(2005):619-633);およびhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational/45/5/45 5 619/ pdfを参照されたい。
【0009】
さらに他の例では、詰まりが検出された場合に攪拌に使用される50%高い流量と組み合わせて、スラグの化学組成が変更されている。例えば、Guoguang,Zhao&Husken,Rainer&Cappel,Jurgen.(2012),Experience with long BOF campaign life and TBM bottom stirring technology,Stahl und Eisen,132.61-78(which improved tuyere life to 8,000-10,000cycles)を参照されたい。しかしながら、これらの変更には、プロセスに関する多くの知識と制御、すなわちMgOペレットの追加やスラグ中の[C]-[O]レベルに応じたCaO/SiO2比の管理が必要である。
【0010】
炉において設計および実装された羽口は多数あるが、それぞれに欠陥がある。
【0011】
例えば、米国特許第4,417,723号は、逆攻撃による耐火壁の浸食を最小化し、連続的ガス吹き込み動作を維持するように設計された同心二重管羽口を記載している。
【0012】
米国特許第5,329,545号は、電気アーク炉内に酸素および不活性ガスを吹き込むために使用される羽口を記載している。羽口は、溶融金属の噴水の形成を回避するために、電気アーク炉内の比較的浅い溶融金属で動作するように特に開発された。狭い内径の羽口は、より低い容積流量の酸素または不活性ガスで、音速の流れを作り出す。
【0013】
米国特許第4,758,269号は、溶融鋼浴下で、精製反応および撹拌を改善するようにガス分配が改善された、酸素を吹き込むための羽口を開示している。この羽口は、ガスが金属浴にらせん状に入る複数の管を有する。デバイスはまた、供給ガスの圧力に基づいて、ラドル内の気泡が分配される領域の制御を容易にする。
【0014】
米国特許第5,458,320号は、溶融金属浴中にガスを注入するための3本の同心パイプの羽口を教示している。液中羽口は、羽口を溶融金属から保護し、攪拌に使用されるガスの流れを制限しない、最適な大きさの増分を管出口に形成するように設計された。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、金属浴を攪拌して、温度および化学的性質において浴の均一性を迅速に達成し、それによって製品品質の改善を達成するために炉内で使用することができるデバイスに関する。これらのデバイスまたは羽口は、これらに限定されないが、底部または側面吹き込み運用のためのラドル、塩基性酸素転炉、銅精錬炉を含む、金属溶融または精錬炉で使用することができる。
【0016】
態様1.内管であって、第1の直径を有する下部セクション、第1の直径よりも小さい第2の直径を有する上部セクション、および内管の下部セクションを内管の上部セクションに接続する、30°~60°の収束角Θを有する収束移行セクションを含み、内管上部セクションの下流端にある内側ノズルで終端する内管と、内管を取り囲んでそれとの間に環状部を形成する外管であって、第1の直径よりも大きい第3の直径を有する下部セクション、第3の直径よりも小さいが第2の直径よりも大きい第4の直径を有する上部セクション、外管の下部セクションを外管の上部セクションに接続する収束移行セクションを有し、外管上部セクションの下流端にある外側ノズルで終端する外管と、を備える羽口であって、羽口によって形成されるジェットが、0.75~2、好ましくは1.25よりも大きい膨張マッハ数を有する噴出モードにある攪拌モードと、安定した非予混合火炎が形成されて、内側ノズルまたは外側ノズルのいずれかの閉塞を取り除くことができるバーナーモードとの2つのモードで動作可能である、羽口。
【0017】
態様2.内管の上部セクションの外面に15°~75°のテーパー角度でらせん状に巻き付けられた直径方向反対側の1対のワイヤをさらに備える、態様1に記載の羽口。
【0018】
態様3.内管に不活性ガスを供給するように構成された第1の不活性ガス弁、および内管に燃料を供給するように構成された燃料弁と、外管に不活性ガスを供給するように構成された第2の不活性ガス弁、および外管に酸化剤を供給するように構成された酸化剤弁と、羽口を攪拌モードまたはバーナーモードで動作させるようにプログラムされたコントローラと、をさらに備え、攪拌モードでは、第1の不活性ガス弁および第2の不活性ガス弁は開かれる一方で、燃料弁および酸化剤弁は閉じられ、バーナーモードでは、燃料弁および酸化剤弁は開かれる一方で、第1の不活性ガス弁および第2の不活性ガス弁は閉じられる、態様1または態様2に記載の羽口。
【0019】
態様4.羽口の内管内の第1の背圧を示す信号をコントローラに送信するように構成された、羽口の内管の上流の導管内の第1の圧力センサと、羽口の外管内の第2の背圧を示す信号をコントローラに送信するように構成された、羽口の外管の上流の導管内の第2の圧力センサと、をさらに備え、コントローラは、第1の背圧および第2の背圧の一方または両方が羽口内の所定の正常背圧範囲から逸脱したとき、羽口動作を攪拌モードからバーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、態様3に記載の羽口。
【0020】
態様5.羽口の外管の上部セクション内の温度を示す信号をコントローラに送信するように構成された温度センサをさらに備え、コントローラは、温度が羽口内の所定の正常温度範囲から逸脱したとき、羽口動作を攪拌モードからバーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、態様3または態様4に記載の羽口。
【0021】
態様6.羽口の内側ノズルおよび外側ノズルの視覚画像をコントローラに送信するように構成されたカメラをさらに備え、コントローラは、視覚画像が内側ノズルおよび外側ノズルの一方または両方の部分的な閉塞を示すとき、羽口動作を攪拌モードからバーナーモードに切り替えるようにプログラムされている、態様3~5のいずれか1つに記載の羽口。
【0022】
本明細書に開示されるシステムおよび方法のさまざまな態様は、単独で、または互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1は、BOF底部攪拌において使用する羽口の一実施形態の側断面図である。概略。
【0024】
図2Aおよび
図2Bは、安定した火炎の生成を支援するためのメカニズムを備えた、
図1のような羽口の内側ノズルの側断面図である。
図2Aは、内側ノズル出口の近くに乱流を生成するためのらせん状に巻かれたワイヤを示し、
図2Bは、ノズル出口の近くに乱流を生成するための内側ノズルの外壁の溝または切り込みを示す。
【0025】
図3は、バーナーモードで動作している
図1のような羽口の側断面図である。
【0026】
図4は、
図1のような羽口をさまざまな動作モードで動作させるための制御システムの概略図である。
【0027】
図5は、
図1のような羽口の変換内側ノズルを通る、ガス流量対圧力を示すグラフである。
【0028】
図6は、液中燃焼中に不具合が発生した場合の、
図1のような羽口への溶融金属の逆流による測定温度上昇を示すグラフである。
【0029】
図7は、底部攪拌を使用しないベースラインBOF製鋼プロセスの一連の動作を示す概略図である。
【0030】
図8は、底部攪拌を使用する、改変されたBOF製鋼プロセスの一実施形態の一連の動作と、スラグはねかけ中に底部攪拌羽口が詰まるのを抑制するための本明細書に記載のプロセスとを示す概略図である。
【0031】
図9は、底部攪拌羽口の詰まりの可能性を低減するために、スラグはねかけ中に
図1のような羽口から高運動量火炎または熱ジェットが排出されるプロセスの一実施形態を示す概略断面図である。
【0032】
図10Aおよび
図10Bは、試験中、BOFの外で、その2つのモードで動作する羽口を示す写真である。
図10Aは、バーナーモード中に羽口によって生成された安定した火炎を示し、
図10Bは、水プール中で羽口によって生成された安定したジェットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
スラグはねかけも行う運用において、改善された信頼性、問題のタイムリーな検出/軽減、および底部撹拌羽口のより簡単なメンテナンスをもって、BOFにおける底部撹拌の使用を容易にするために、本発明の底部または側部撹拌羽口を本明細書で説明する。この羽口はまた、現行ではスラグはねかけを利用していないBOF底部攪拌運用が、スラグはねかけを使用し、その便益を享受し始めることを可能にする。羽口は、BOFの底部または側壁のいずれかに取り付けることができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、酸化剤は、少なくとも23%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%の分子酸素濃度を有する富化空気または酸素を意味するものとする。本明細書で使用される場合、不活性ガスは、窒素、アルゴン、二酸化炭素、他の同様の不活性ガス、およびこれらの組み合わせを意味するものとする。本明細書で使用される場合、燃料は、天然ガスを含み得るがこれに限定されない気体燃料を意味するものとする。
【0035】
スラグはねかけも使用するBOFにおいて底部撹拌を使用できるようにするために、本発明者らは、新しいBOFと、連続的なスラグはねかけ動作の結果として生じた底部蓄積状態との両方で、底部撹拌羽口が詰まる可能性を最小限に抑えることと、所望の撹拌状態を達成する羽口ノズル流れ構造を有することとが必要であると判断した。
【0036】
典型的なBOF製鋼プロセスは、
図7に5つのステップで示された4つの段階、すなわち流し込み段階(ステップ1)、吹き込み段階(ステップ2で開始し、ステップ3で終了する)、タップ段階(ステップ4)、およびスラグはねかけ段階(ステップ5)を有する。サイクルは繰り返され、ステップ5の後、プロセスはステップ1に再循環する。
【0037】
ステップ1(溶銑流し込み)では、溶銑(銑鉄)が上部開口部から炉槽に装填または流し込まれ、所望の充填レベルが達成される。
【0038】
ステップ2(吹き込み開始)では、酸素の流れが、炉の上部開口部から挿入されたランスを通して注入され、この過程で、溶融金属の上面にスラグが形成される。ステップ3(吹き込み終了)では、酸素の流れが停止され、ランスが上部開口部から取り外される。
【0039】
ステップ4(タップ)では、炉を傾け、スラグを炉内に残したまま、溶融金属を炉の側面のタップから流し出す。
【0040】
ステップ5(スラグはねかけ)では、炉が直立位置に戻され、窒素の流れが、炉の上部開口部から挿入されたランスを通して注入される。窒素は、超音速で大量(例えば、20,000SCFM)にBOF内に流入され、溶融スラグを炉槽の壁全体にはねかける。この結果、BOF槽が保護スラグの層でコーティングされ、BOFプロセス中に消費または浸食された槽の耐火物の一部が部分的に置き換えられる。しかしながら、スラグはねかけは、底部攪拌ノズルを備えた槽内で行われた場合、槽の底部に配置された底部攪拌ノズルを部分的または完全に詰まらせる結果となることが多い。この詰まりは、底部攪拌ノズルを通してBOFへ入るさらなるガスの流れを本質的に阻止または制限し、最終的に、複数回のスラグはねかけの後、底部攪拌の能力をまったく失う結果となる。
【0041】
したがって、BOF底部攪拌羽口を使用することの主な課題は、時間が経つにつれ、攪拌ガスによるスラグまたは金属の冷却のため、羽口が、羽口の出口に部分的または完全な閉塞を生じる可能性があることである。さらに、これらの閉塞は、羽口出口から下流の位置に存在する可能性がある。これらのタイプの閉塞は、羽口内のガスの流れに影響を与えないが、ただし、不足膨張ジェットが他の炉領域で方向転換されるため、攪拌の効果が失われる。羽口の下流に形成されるこれらの閉塞は、羽口内の流体の流動特性に本質的に影響を与えないため、検出および排除が困難である。
【0042】
さらに、液中ガス注入羽口は、噴出レジームで動作するように設計されている。噴出レジームにおける羽口の動作は、周囲の耐火壁への逆攻撃の発生と、羽口内部への溶融金属の侵入とを低減する助けとなる。羽口を動作させる安定した噴出状態を達成するための基準は、膨張マッハ数とジェット膨張角との2つの変数に基づくと理解される。膨張マッハ数が1.25で、膨張半角が5°を超えるジェットは、安定した噴出レジームにある。この安定した噴出レジームを達成するには、供給ガス要件がかなり高く、圧縮デバイスの使用が必要になる。これらのデバイスを使用すると、羽口の運転コストが増加する。
【0043】
本発明の目的は、炉における液中ガス攪拌運用の利点を維持しながら、上記の欠点を排除する助けとなる羽口を提供することである。現行の羽口の設計は、2つの異なる動作モードにおける羽口の動作融通性を提供することにより、この目的を達成している。2つの動作モードは、攪拌モードとバーナーモードであり、動作モードは、コントローラメカニズムを使用して選択することができる。デバイスのさらなる目的は、効果的な攪拌のための安定した噴出状態とプロセスフロー要件とを維持しながら、外部圧縮機を必要とせずに標準の高圧貯蔵槽または空気分離ユニットで達成できる圧力で動作することである。
【0044】
スラグはねかけ中に底部撹拌ノズルを通して窒素を流すことにより、既存の底部撹拌ノズルを開いたままにしようとする以前になされた試みは不成功であった。本明細書では、以前の問題を克服するための自立型底部攪拌羽口、およびそのような羽口と共に使用するための制御システムを開示する。自立型羽口は、基本的に同心管設計で、1つの流体が内側の中央ノズルを通って流れ、別の流体が外側の環状ノズルを通って流れる。以下の説明では、内側の中央ノズルは一次ノズルと称されるこことがあり、外側の環状ノズルは二次ノズルと称されることがある。
【0045】
1つの実施形態では、BOFの運転段階に応じて、内側中央通路は燃料または不活性ガスのいずれかを選択的に流すように構成され、外側環状通路は酸素または不活性ガスのいずれかを選択的に流すように構成される。一代替実施形態では、やはりBOFの運転段階に応じて、内側中央通路は酸化剤または不活性ガスのいずれかを選択的に流すように構成され、外側環状通路は燃料または不活性ガスのいずれかを選択的に流すように構成される。
【0046】
より具体的には、各撹拌羽口は、例えば
図10に示すように、同軸ノズル(パイプインパイプ構成)で作られている。羽口は、BOF内に設置され、したがって、炉内に面した出口端または高温先端を有する。運転中、BOF内の運転段階に応じて、燃料と酸素、または代わりに窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスが、内側ノズルおよび外側ノズルの両方に交換可能に導入される。
【0047】
一次ノズルの主な役割は、攪拌、例えば逆攻撃を防ぐための噴出流にとって効果的な流動レジームを提供することである。二次ノズルの主な役割は、酸化剤または燃料を流す手段を提供し、特別な特徴、例えば渦流を使用して、スラグはねかけ段階中に非予混合火炎を安定化させるのを助けることである。
【0048】
一次ノズルは、いくつかの構成のうちの1つを有することができる。例えば、一次ノズルは、収束ノズル、(超音速流を生成するための)収束発散ノズル、キャビティノズル、または収束発散ノズルとキャビティとの組み合わせであり得る。さらに、羽口は、単一または複数のこれらの発散、収束、または収束発散ノズルを有することができる。
【0049】
図1は、液中ガス注入のための攪拌モード(羽口10によって形成されるジェットが噴出レジームにある場合)およびバーナーモード(燃料および酸化剤を燃焼させて、羽口の出口をスラグ形成しないよう維持する場合)の2つの異なるモードで動作できる羽口10の一実施形態を示す。攪拌モードでは、羽口は、その上にある浴の適切な混合を助ける。バーナーモードでは、羽口は、羽口の出口での固化物または半固形物の閉塞を取り除くメカニズムを提供する。したがって、羽口は、羽口の出口に蓄積された材料を潜在的に除去することにより、より長いキャンペーンのために、攪拌モードにおける混合の有効性を維持し、羽口の出口またはその下流の完全な閉塞を取り除くことにより、より長い時間にわたり、羽口のライフキャンペーンを延長することを可能にする。
【0050】
図1の実施形態では、羽口10は、外管20および内管30の2つの同心管を含む。外管20は、下部セクション22と、下部セクション22の下流の収束移行セクション24と、収束移行セクション24の下流の、外側または二次ノズル28で終端する上部セクション26とを含む。内管30は、外管20の下部セクション22と整列した下部セクション32と、外管20の収束移行セクション24と整列した収束移行セクション34と、内側または一次ノズル38で終端する上部セクション36とを含む。
【0051】
外管20の下部セクション22は直径dLOを有し、外管20の上部セクション26は直径dUOを有し、上部セクション直径は下部セクション直径よりも小さく、収束移行セクション24は、好ましくは30°~60°である角度Θで収束して、下部セクション22と上部セクション26とを結合する。同様に、内管30の下部セクション32は直径dLIを有し、内管30の上部セクション36は直径dUIを有し、上部セクションの直径は下部セクションの直径よりも小さく、収束移行セクション34は、角度Θで収束して、下部セクション32と上部セクション36とを結合する。収束移行セクション24、34の使用は、単一の管直径を有する管からなる以前の設計で達成可能なものよりも低い圧力で、各それぞれの管の出口で音速流状態を達成する助けとなる。
【0052】
図示の実施形態は、一次ノズル38および二次ノズル28が整列していることを示しているが、場合によっては、一方のノズルを他方に対して、一方のノズルの水力直径を基準にして所望の長さまたは無次元の長さだけ引っ込めることが望ましい場合がある。さらに、内管30および外管20は、一般に断面が円形であるが、その形状は、羽口10の良好な動作に必要ではなく、場合によっては非円形断面の管を使用してもよい。
【0053】
羽口10の全長L1は、用途のタイプに応じて、好ましくは約40インチ~55インチの範囲である。L2で示される収束移行セクション24、34の下流端の位置は、羽口10のノズル28、38から約10インチ~20インチであることが好ましい。収束移行セクション24、34をノズル28、38から後退させることにより、羽口10は、その耐用年数中の摩耗および浸食に対応することができる。しかしながら、羽口10の摩耗を見ることのない用途では、収束ノズルは、羽口10のノズル28、38の近くまたはそれらの位置に配置することができる。
【0054】
内管30の上部セクション36に対する下部セクション32の面積比は、好ましくは1~20の範囲、より好ましくは5~10の範囲である。円形内管30の場合、これは直径比1~4.5、好ましくは比2.2~3.2に変換される。一般的に、面積比が大きいほど、収束移行セクション34の出口において同じ出口速度を達成するのに必要な供給圧力は低くなる。収束移行セクション24、34のテーパー角度θは、約15°~約75°、好ましくは約30°~約60°、より好ましくは約45°であり得る。
【0055】
内側ノズル30の上部セクション36の直径dUIは、好ましくは2~12mmの範囲、より好ましくは5mm~8mmの範囲である。内側ノズル38の出口面のサイズは、主に、撹拌モード動作中に噴出流状態に到達する必要性によって決定される。泡立ち現象および噴出流レジームは、文献で十分に立証されており(例えば、Farmer L, Lach D,Lanyi M and Winchester D.Gas injection tuyere design and experience,72nd Steelmaking Conference Proceedings,pg 487-495(1989)を参照されたい)、ジェットが安定噴出レジームにあるためには、完全膨張マッハ数は1.25より大きくなければならないことが立証されている。噴出流は、(a)底部耐火物への逆攻撃を防止すること、および(b)より効果的な攪拌を達成すること、の助けとなる。連続的なガスの流れ(気泡形成なし)が生成されて、羽口への液体(金属/スラグ)の周期的な逆流を防ぐように、不足膨張ジェットを発生させるのに十分なガス圧がある場合(羽口を出るガスの圧力が周囲の流体の圧力または静的ヘッドよりも大きい場合)に、噴出流が生成される。
【0056】
内側ノズル30の下部セクション32の直径dLI、は、好ましくは5~30mmの範囲、より好ましくは8mm~16mmの範囲である。
【0057】
外側ノズル20の上部セクション26の直径d
UOは、外側ノズル38に対する、内側ノズル38の出口におけるバーナーモード中の流体速度の比
が、好ましくは1~5の範囲、より好ましくは約2であるように設定される。
【0058】
外側ノズル20の下部セクション22の直径dLOは、外側ノズル30の内面21と内側ノズル30の外面33との間の距離が、距離zに等しく一定であるように設定される。
【0059】
好ましくは、酸化剤は90%を超える純度の純酸素であり、天然ガスが燃料である。しかしながら、特定の理由により判断され、当技術分野で知られている任意の他の酸化剤と燃料との組み合わせを使用してもよい。
【0060】
攪拌モード中、内側ノズル38および外側ノズル28は、好ましくは不活性ガスを放出する。バーナーモード中、内側ノズル38は好ましくは気体燃料を流し、外側ノズル28は好ましくは酸化剤を流す。酸化剤対気体燃料比は、好ましくは、気体燃料の完全燃焼に十分な酸化剤が存在するようなものである。しかしながら、用途に基づいて、燃料希薄または燃料豊富な火炎を使用することができる。バーナーモードにおける羽口の発火率(MMBtu/時)は、用途タイプに依存し、発火率は、0.1~3MMBtu/時の範囲、好ましくは0.1~1MMBtu/時の範囲、より好ましくは0.2~0.5MMBtu/時の範囲とすることができる。酸化剤と燃料の混合物は、好ましくは、周囲からのエネルギー(高温または熱)により、または外部点火源を使用することにより、点火する。
【0061】
羽口10のバーナーモードでは、連続的な外部点火源なしに安定火炎動作を容易にするために、2本のワイヤ40を使用することにより、渦が二次ノズル内の流体に付与される。2本のワイヤ40は、
図1に示され、
図2Aにさらに詳細に示されるようならせん状パターンで、上部セクション36の少なくとも一部に沿って、内管30の外面33に巻き付けられる。あるいは、
図2Bに示されるように、ワイヤ40の代わりに、溝39を使用することができる。ワイヤ40は、好ましくは30°~60°、より好ましくは約40°~50°の範囲のらせん角θ
iで巻かれている。2本のワイヤ40の開始位置は180度離れており、したがて、ワイヤ40は、内側ノズル38からの流体によって生成された領域52内に、(
図3に示される領域54内の)羽口10の出口において、外側ノズル28からの流体の対称的流動場を生成するのを助ける。
【0062】
2本のワイヤ40は、好ましくは、内管30の外面33の長さL
2の一部または全部に対してらせん状に巻かれる。長さL
2全体にわたるワイヤ40の存在は、何らかの理由で羽口10が摩耗した場合でも、外管20内の流体に渦を提供する助けとなる。長さL
2は、収束移行セクション34の下流端から内側ノズル38の出口面までの距離として定義される。ワイヤ40は、燃料、酸化剤、および燃焼生成物の激しい混合を容易にし、安定した火炎をもたらす。
図3に示すように、燃料と酸化剤の良好な混合は、周囲の溶融または固化したプロセス流体50からの火炎かく乱を防ぐ助けともなる。プロセス流体は、溶融金属もしくはスラグ、またはスラグと金属の混合物であり得る。ワイヤは、好ましくは内側ノズル30の外面33と外側ノズル20の内面21との間の距離zの約3分の1の直径d
iを有する。
【0063】
羽口10を制御するためのシステム100を
図4に示す。外側導管120は、流体を羽口10の外管20に供給し、内側導管130は、流体を羽口10の内管30に供給する。外側導管120には、制御弁62を介して不活性ガスまたは制御弁64を介して酸化剤のいずれかが供給され、一方、内側導管130には、制御弁72を介して不活性ガスまたは制御弁74を介して燃料のいずれかが供給される。コントローラ80は、所望の動作モードに基づいて、また可能であればさまざまなセンサからのフィードバックにも基づいて、制御弁62、64、72、74を動作させる。コントローラ80は、羽口10の動作中、冷却目的で羽口10を通る連続流を維持するために、弁62または弁64のいずれかが常に開いていること、および弁72または弁74のいずれかが常に開いていることを保証するようにプログラムされている。攪拌モード中、コントローラ80は、弁62および弁72を開いて、羽口10の両方の管20、30を通して不活性ガスを流す。バーナーモード中、コントローラ80は、弁64および弁74を開いて、燃料および酸化剤を羽口10を通して流し、本質的に羽口10をバーナーとして使用する。
【0064】
コントローラ80は、プロセス要件に基づき攪拌モードとバーナーモードとの間で切り替える循環プロセスを行うようにプログラムすることができる。さらに、コントローラ80は、センサから信号を受信して、攪拌モードとバーナーモードとを切り替えることができる。センサは、温度センサ、例えば、羽口10のノズル28、38の近くに設置された1つ以上の熱電対素子84、差圧計66、76、流量計68、78、および/またはカメラ82とすることができる。
【0065】
1つの実施例において、最初に攪拌モードで動作する羽口10を考える。カメラ82が、羽口ノズル28、38の周りの蓄積またはブリッジ形成を検出するか、または差圧ゲージ66、76の一方が、(例えば、羽口出口での潜在的な部分的閉塞のために)期待値から逸脱した値を示すと、コントローラ80は、弁62、72を閉じ、同時に弁64、74を開くことにより、バーナーモードを作動させることができる。バーナーモード中に生成される火炎からの熱放出は、羽口10のノズル28、38の近くの出口の上の部分的閉塞を溶かしたりまたはブリッジ形成を解消する助けとなる。ブリッジ形成が解消されるか、閉塞が排除されると、コントローラ80は、不活性ガス用の適切な弁を開き、燃料および酸化剤を供給する弁を閉じることにより、羽口を切り替えて攪拌モードに戻すことができる。
【0066】
本明細書に記載されたような範囲の寸法を有するプロトタイプの羽口10を実験室設定で製造および試験し、攪拌モードおよびバーナーモードの2つの動作モードにおけるデバイスの機能および動作を検証した。この試験により、羽口10が期待どおりに機能および動作することが確認された。
図5は、プロトタイプ羽口の理論的および実験室で判定された流れ圧力特性を示す。このプロットは、プロトタイプ羽口の膨張マッハ数も示す。左側のY軸は流体供給圧力用であり、右側のY軸は膨張マッハ数用である。プロットは、80psiaを超える供給圧力で、膨張マッハ数が1.25を超え、羽口が噴出レジームにおいて動作することを示す。さらに、プロットは、噴出流レジームを達成するために、圧縮デバイスを使用せずに、標準のガス供給タンクまたは空気分離ユニットを使用して、供給圧力が達成可能であることを示す。さらに、実験室で測定された流れ圧力特性は、羽口の理論的に決定された圧力流れ特性の10%以内である。
【0067】
プロトタイプ羽口の動作をバーナーモードにおいても試験した。羽口は、0.05~1.00MMbtu/時の発火率範囲で安定した火炎を生成する
図10Aは、この羽口によって生成された高運動量で非予混合の0.4MMBtu/時の火炎の画像を示す。
図10Bは、水プール中で攪拌モードのプロトタイプ羽口によって生成された安定したジェットを示す。
【0068】
さらに、羽口のバーナーモードの動作を溶融スラグプール中で試験した。火炎は安定しており、溶融スラグプール中でうまく動作し、
図9に模式的に示すように、羽口出口上のスラグ層にはっきりと開いた穴を作った。
【0069】
羽口閉塞を検出してフィードバックを羽口制御弁に送信する制御メカニズムも実験室で試験した。このプロトタイプ設計では、熱電対と流量測定デバイスとを能動センサ素子として使用して、制御メカニズムを試験および検証した。熱電対を、耐火性るつぼ内と、羽口内部のいくつかの重要な位置に設置した。溶融スラグおよび金属のプールを、羽口の出口の上の耐火性るつぼ内に作成した。流体流の損失状態をシミュレートするために、ガスの流量をゼロに減少させた。
図6は、耐火性るつぼおよびプロトタイプ羽口内に設置された熱電対から得られた温度データを示す。温度および時間はそれぞれY軸とX軸である。稼働時間236分後、ガスの流量をゼロに減少させた。
図6は、流れが減少し始めると、溶融金属またはスラグが羽口内部に逆流し、熱電対A、B、およびDの温度読み取り値が上昇することを示す。この運転中、るつぼの温度は1775°F近くに留まった。熱電対AおよびBの温度読み取り値の上昇は、725F/分に近く、二次流を開始して、羽口内の溶融金属またはスラグのさらなる逆流を回避するためのフィードバックをコントローラに提供するために使用された。熱電対読み取り値Dは、流体流の冷却効果の喪失による管の温度上昇を示す。溶融材料が熱電対Dの位置まで到達しなかったため、温度読み取り値Dは、熱電対AおよびBよりも低かった。
【0070】
2つの動作モードにおける自立型羽口の機能。BOFの吹き込み段階中、羽口は、炉内の溶融鋼の効果的な攪拌を達成するのに十分な速度で不活性ガスがノズルを流れる底部攪拌(BS)モードで機能する。BOFのスラグはねかけ段階中、羽口は、燃料および酸化剤の組み合わせと、任意選択で不活性ガスとが羽口を流れるスラグはねかけ(SS)モードで機能する。
【0071】
より具体的には、
図8は、自立型底部攪拌羽口の動作戦略を示し、特に、提案されたプロセスがBOF製鋼の標準プロセスとどのように異なるかを示す。ステップ1~3(流し込み段階および吹き込み段階の間)では、底部攪拌羽口は攪拌モードで動作するが、ステップ4~5(タップ段階およびスラグはねかけ段階の間)では、底部攪拌羽口はバーナーモードで動作する。
【0072】
ステップ1(溶銑流し込み)では、炉内への溶銑の流し込みを開始する前に、両方のノズル通路を通る不活性ガスの流れを開始(または継続)し、不活性ガスの流れを流し込みの間ずっと維持する。これにより、底部攪拌ノズルが過熱したり詰まったりするのを防ぐ。ステップ2(吹き込み開始)では、両方のノズル通路を通る不活性ガスの流れを同じまたは異なる流量で継続し、溶融金属の撹拌を達成する。ステップ3(吹き込み終了)では、ステップ2中と同様に、不活性ガスの流れを継続する。ステップ1~3の間、最も効果的な結果は、アルゴン、窒素、二酸化炭素、またはこれらの組み合わせなどの不活性ガスを羽口の一次ノズルおよび二次ノズルの両方に流すことにより得られる。
【0073】
ステップ4(タップ)では、BOF槽を傾けて金属を流し出すとき、ノズル通路を通る流れを、一方の通路を通る燃料と他方の通路を通る酸化剤とに切り替えて、火炎を生成する(炉壁は十分に高温で、ノズルから出る燃料と酸化剤の混合物の自然発火を引き起こす)。各底部攪拌羽口から出る火炎の形態での燃焼は、スラグはねかけ動作の開始前に開始しなければならない。ステップ5(スラグはねかけ)では、火炎が、羽口の詰まりを防止し、ブリッジ形成も防止する。したがって、ステップ4およびステップ5の間、燃料と酸化剤とがノズルから導入される。一次ノズルを通して酸化剤を導入し、二次ノズルを通して燃料を導入することが好ましい。しかしながら、その逆の構成も使用し得る。さらに、窒素や空気などの希釈ガスを一次ノズルおよび二次ノズルのいずれかまたは両方を通る流れに追加して、熱放出の位置(すなわち、燃焼の大部分がノズルからどれだけ離れて起こるか)、および所望のフロープロファイルを提供するのに必要な容積または運動量(すなわち、窒素または空気を追加すると、容積流量または運動量が増加する)を管理する助けとすることができる。これは、酸化剤および/または燃料に対する希釈ガスの比率または相対的割合を調整することによって達成することができる。
【0074】
センサが、ノズルの詰まりを検出および防止する機能を強化するために使用され得る。1つの実施形態では、背圧の増加を引き起こすノズルの詰まりまたはブリッジ形成を検出するために、羽口出口端またはその近くに圧力変換器が設置される。圧力センサはまた、圧力降下の変化によって示されるように、ノズルの浸食、ならびにノズルの収束発散および/または空洞特徴部の損傷を検出するためにも使用され得る。別の実施形態では、熱電対を羽口出口端またはその近くに設置して、ノズルの浸食、およびノズルを介しての溶融金属の浸出による正常動作からの温度の逸脱を検出し得る。
【0075】
本発明は、本発明のいくつかの態様の例示として意図されている実施例に開示された特定の態様または実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に同等であるいかなる実施形態も本発明の範囲内である。本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明のさまざまな変更が、当業者には明らかになり、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。