(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
H02P 8/24 20060101AFI20220117BHJP
B41J 11/00 20060101ALI20220117BHJP
H02P 8/32 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H02P8/24
B41J11/00 A
H02P8/32
(21)【出願番号】P 2020170875
(22)【出願日】2020-10-09
(62)【分割の表示】P 2016216733の分割
【原出願日】2016-11-04
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛之
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-017897(JP,A)
【文献】特開平05-161396(JP,A)
【文献】特開昭60-066693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/00-8/42
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送すると共に、
1相励磁と
2相励磁とが交互に
行われるステッピングモータと、
前記ステッピングモータの停
止相が
前記1相励磁である場合には、前記ステッピングモータの停
止相よりも1つ前のタイミング
である前記2相励磁で前記ステッピングモータの回転駆動を停止させる制御手段と
を備え
、
コンピュータから次の印字指令を受けた場合に、前記制御手段は、印字する前に前記ステッピングモータを1ステップ駆動することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記コンピュータから次の印字指令を受けた場合に、前記制御手段は
、前記ステッピングモータ
に含まれる固定子と回転子との位置合わせを行う時間だけ前記
1相励磁を保持した後
、印字のため
に前記ステッピングモータの回転駆動を開始させることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステッピングモータを用いたプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プリンタでは、一般に、用紙搬送にステッピングモータが使用される。高速で用紙を搬送する場合には、
図1に示すように、搬送開始時にステッピングモータを起動速度から目標速度まで加速し、ステッピングモータの停止前にステッピングモータを起動速度にまで減速する台形制御が用いられる。なお、用紙の搬送量及びステッピングモータの駆動量は、
図1の網掛部の面積である。
【0004】
また、目標速度が上がると加減速時間も増加する傾向にあるため、
図2に実線で示すように、ステッピングモータの停止時に、ステッピングモータを起動速度まで減速せずに急停止させることで、搬送時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステッピングモータの慣性が大きくない場合には急停止させる制御を行っても問題とはならないが、ステッピングモータの高速化に伴いステッピングモータの慣性が大きくなると、
図3に示すように、ステッピングモータの急停止時にオーバーランが発生する。この時、ステッピングモータはオーバーラン後に振動が減衰して目的の位置(
図3図示下側の点線位置)で停止する。しかしながら、ステッピングモータにギアを介して接続されているプラテンローラにより搬送される用紙は、ギアのバックラッシュの影響で目標の位置まで戻らない。このため、次に印字した場合に、ステッピングモータ停止前の印字位置と次の印字位置との間に印字されない部分(いわゆる白スジ)が発生して、印字品質が低下していた。
【0007】
本発明は、印字品質を向上させることができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、明細書に開示されたプリンタは、用紙を搬送すると共に、1相励磁と2相励磁とが交互に行われるステッピングモータと、前記ステッピングモータの停止相が前記1相励磁である場合には、前記ステッピングモータの停止相よりも1つ前のタイミングである前記2相励磁で前記ステッピングモータの回転駆動を停止させる制御手段とを備え、コンピュータから次の印字指令を受けた場合に、前記制御手段は、印字する前に前記ステッピングモータを1ステップ駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印字品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一般的なステッピングモータの加減速制御を示す図である。
【
図2】ステッピングモータの停止時にステッピングモータの回転を急停止させるステッピングモータの加減速制御を示す図である。
【
図3】急停止時のステッピングモータ及び用紙の停止位置の関係を示す図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るサーマルプリンタの概略構成図である。
【
図5】ROMに格納された加速テーブルの一例を示す図である。
【
図6】ステッピングモータの加減速制御を示す図である。
【
図7】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】(A)は、ステッピングモータを1-2相励磁で駆動した場合の従来のモータ駆動のタイミングチャートである。(B)は、ステッピングモータを1-2相励磁で駆動した場合の第2の実施の形態に係るモータ駆動のタイミングチャートである。
【
図9】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【
図10】(A)は、従来のモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。(B)は、第3の実施の形態に係るモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【
図11】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】(A)及び(B)は、第4の実施の形態に係るモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【
図13】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【
図14】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【
図15】第5の実施の形態に係るモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【
図16】MCUによって実行されるステッピングモータの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図4は、第1の実施の形態に係るサーマルプリンタの概略構成図である。
【0013】
図4において、サーマルプリンタ1は、サーマルプリンタ1の動作を制御する制御部2と、印刷を実行するプリンタ部3とを備えている。制御部2は、モータドライバ21、電源22、分圧回路23及びMCU(Micro Controller Unit)24を備えている。プリンタ部3は、ステッピングモータ30、サーマルヘッド31-34、ラッチレジスタ35、シフトレジスタ36、サーミスタ37、フォトセンサ38及びカバーオープン検出センサ39を備えている。MCU24は、算出手段、制御手段及び検出手段として機能する。
【0014】
モータドライバ21は、ステッピングモータ30の動作を制御する。電源22は、モータドライバ21、分圧回路23及びサーマルヘッド31-34に電圧を供給する。分圧回路23は、電源22からの電圧を分圧しMCU24に供給する。
【0015】
MCU24は、加速テーブル、プログラムコード及びフォントデータを格納するROM25と、一時的なグラフィックデータや設定を保存するRAM26とを内蔵している。また、MCU24は、分圧回路23から出力される電圧に応じて、サーマルヘッド31-34へ印加する電流を調整する。MCU24は、電源22の電源容量の情報を保持し、サーマルヘッド31-34の消費電流を検出する。
【0016】
ステッピングモータ30は、不図示のプラテンローラにギアを介して接続され、プラテンローラを回転させて用紙を搬送する。ステッピングモータ30は、例えば、1-2相励磁で駆動する2相ステッピングモータである。
【0017】
サーマルヘッド31-34は一列に並んで配置されており、各サーマルヘッドは一列に並んだ144個の発熱体を含む。従って、サーマルヘッド31-34では、計576個の発熱体が一列に配置されている。
【0018】
シフトレジスタ36及びラッチレジスタ35は、発熱体と同数、即ち576ビットのデータを保持する。シフトレジスタ36及びラッチレジスタ35が保持するデータの各ビットは、対応する各発熱体のオン/オフを示す。サーミスタ37は、サーマルヘッド31-34の温度を検出する。フォトセンサ38は、用紙の状態を検出する。カバーオープン検出センサ39はプリンタ部3を覆うカバーの開閉状態を検出する。
【0019】
文字コードなどの印刷データがコンピュータ10からプリンタ1に送信されると、MCU24はROM25から文字コードに対応するグラフィックデータ(フォントデータ)を読出し、RAM26へ保存する。
【0020】
コンピュータ10が一行分の印刷データ送信後に改行コードなどの印刷開始データをプリンタ1に送信すると、MCU24はRAM26へ保存した一行分のグラフィックデータを1ラインずつプリンタ部3へ送信し、印刷を実行する。
【0021】
まず、MCU24は、1ライン分のグラフィックデータをクロック同期通信S1でシフトレジスタ36へ転送し、転送完了後にラッチ信号S2によりシフトレジスタ36のデータをラッチレジスタ35へ保存する。
【0022】
次に、MCU24は、モータドライバ21を介して駆動制御信号S3をステッピングモータ30に出力し、ステッピングモータ30を1ライン分駆動させると共に、発熱体オン信号S4-S7をサーマルヘッド31-34にそれぞれ出力する。これにより、各発熱体が通電され、印刷が実行される。尚、発熱体に対応する発熱体オン信号及び発熱体に対応するラッチレジスタ35上のデータがともにオンの場合に、当該発熱体が通電する。
【0023】
シフトレジスタ36へのグラフィックデータの転送、サーマルヘッド31-34への通電、及びステッピングモータ30の駆動を一行分の印刷データに対応するライン数分繰り返すことで、サーマルプリンタ1は一行の印刷を行う。
【0024】
図5は、ROM25に格納された加速テーブルの一例を示す図である。
図5に示すように、ROM25に格納された加速テーブルには、加速ステップ41、駆動周波数42、加速ステップ時間43及び回転速度44が含まれている。
【0025】
加速ステップ41は、ステッピングモータ30を順次加速又は減速していくときのステップ数を表している。駆動周波数42は、各加速ステップにおいてMCU24からステッピングモータ30に出力される駆動制御信号S3の周波数を表している。加速ステップ時間43は、各加速ステップにおいて駆動制御信号S3をステッピングモータ30に出力する時間を表している。回転速度44は、各加速ステップ41におけるステッピングモータ30の回転速度を表している。尚、加速ステップ時間43は駆動周波数42と反比例関係にあり(ステップ時間=1/駆動周波数)、回転速度44は駆動周波数42と比例関係にあるため(回転速度=ステップ角度/360°×駆動周波数×60)、MCU24は加速ステップ時間43及び回転速度44から駆動周波数42を算出することができ、さらに、駆動周波数42から加速ステップ時間43及び回転速度44を算出することもできる。従って、加速テーブルは、駆動周波数42と、加速ステップ時間43・回転速度44とのいずれか一方のみを備えてもよい。加速ステップ41の値が増加すると、駆動周波数42及び回転速度44の値は増加し、加速ステップ時間43の値は減少する。
【0026】
MCU24は、モータドライバ21を介して、駆動周波数42の値に対応する周波数を有する駆動制御信号S3を、加速ステップ時間43の値に対応する時間だけステッピングモータ30に出力する。これにより、各加速ステップにおいて、ステッピングモータ30は、加速ステップ時間43に記録された時間だけ、駆動制御信号S3の駆動周波数42に同期した速度、即ち、回転速度44で回転する。
【0027】
加速ポインタ45は現在の加速ステップを示し、MCU24が保持している。ステッピングモータ30の加速時には、MCU24の制御により加速ポインタ45が
図5図示の下方に段階的に移動し、加速ポインタ45が示す加速ステップ41の値が増加する。ステッピングモータ30の減速時には、MCU24の制御により加速ポインタ45が
図5図示上方に段階的に移動し、加速ポインタ45の示す加速ステップ41の値が減少する。
【0028】
停止速度ポインタ46は、ステッピングモータ30が急停止しても白スジを発生させない加速ステップの最大値、つまり非印字部分を発生させない停止速度を示し、MCU24が保持している。ステッピングモータの停止速度はあらかじめ求めておく。停止速度ポインタ46は、サーマルプリンタ1の不図示のボタンやスイッチ、又はコンピュータ10によって設定することができる。
図5の例では、停止速度ポインタ46は、加速ステップ「q」に設定されている。停止速度ポインタ46は、加速ステップ41の最小値「1」(起動速度)と加速ステップ41の最大値「r」(目標速度)との間に設定される。
【0029】
図6は、ステッピングモータの加減速制御を示す図である。
【0030】
MCU24は、印刷開始時に、コンピュータ10から受信した印刷データ内のライン数を表す改行量と、1ラインの搬送に必要なモータステップ数を表すモータ分解能とに基づいて、必要な用紙の搬送残量を算出する。具体的には、搬送残量は、改行量とモータ分解能との乗算によって算出される。
【0031】
図6に示すように、ステッピングモータ30の制御期間には、ステッピングモータ30が目標速度Crまで加速していく加速域の期間と、ステッピングモータ30が一定速度Crで駆動される定速域の期間と、ステッピングモータ30が停止速度Cqまで減速していく減速域の期間とがある。
【0032】
加速域の第1ステップでは、MCU24は、加速テーブル内の加速ステップ1に記録された駆動周波数A1を有する駆動制御信号S3を、加速ステップ時間B1だけステッピングモータ30に出力する。MCU24は、ステッピングモータ30を1ステップ駆動する度に、加速ポインタ45を1つ下に移動して加速ステップ41の値を1増加し、搬送残量を1減少する。
【0033】
以降、MCU24は同様に、加速テーブル内の各加速ステップに記録された駆動周波数を有する駆動制御信号S3を、対応する加速ステップ時間だけ、順次ステッピングモータ30に出力する。これより、ステッピングモータ30は、駆動制御信号S3に基づいて目標速度Crまで順次加速される。ステッピングモータ30の回転速度が目標速度Crになると、加速ポインタ45は
図5の加速ステップ「r」に設定される。また、加速域、定速域及び減速域の各期間において、MCU24は、駆動制御信号S3をステッピングモータ30に出力するとき、ステッピングモータ30の駆動にあわせて印字処理を行う。
【0034】
次に、定速域の期間では、MCU24は、1ステップごとに、加速テーブル内の加速ステップ「r」に記録された駆動周波数Arを有する駆動制御信号S3を、加速ステップ時間Brだけステッピングモータ30に出力する。MCU24は、ステッピングモータ30を1ステップ駆動する度に加速ポインタ45を加速ステップ「r」に維持するとともに、搬送残量を1減少する。さらに、MCU24は、搬送残量と停止速度ポインタ46の値との加算値が加速ポインタ45の値を超えているか否かを判別する。搬送残量と停止速度ポインタ46の値との合計が加速ポインタ45の値を超えている場合には、MCU24は定速域の制御を継続する。一方、搬送残量と停止速度ポインタ46の値との合計が加速ポインタ45の値以下となった場合には、MCU24は定速域の制御を終了し、減速域の制御を開始する。
【0035】
減速域の加速ステップ「r-1」では、MCU24は、加速テーブル内の加速ステップ「r-1」に記録された駆動周波数Ar-1を有する駆動制御信号S3を、加速ステップ時間Br-1だけステッピングモータ30に出力する。MCU24は、ステッピングモータ30を1ステップ駆動する度に、加速ポインタ45を1つ上に移動して加速ステップ41の値を1減少し、搬送残量を1減少する。
【0036】
同様に、MCU24は、加速テーブル内の各加速ステップに記録された駆動周波数を有する駆動制御信号S3を、対応する加速ステップ時間だけ、順次ステッピングモータ30に出力する。これより、ステッピングモータ30は、駆動制御信号に基づいて、停止速度Cqまで順次減速される。
【0037】
搬送残量が0になる、つまり加速ポインタ45の値が停止速度ポインタ46の値に一致すると、MCU24は駆動停止信号をステッピングモータ30に出力する。これより、ステッピングモータ30は急停止する。
【0038】
このように、MCU24は、ステッピングモータ30の回転速度を白スジを発生させない速度まで低下させてから、ステッピングモータ30を急停止させるので、印字品質を向上させることができる。さらに、MCU24は、ステッピングモータ30を起動速度まで減速する必要がないので、ステッピングモータ30の停止前にステッピングモータ30を起動速度まで減速する場合に比べて、用紙の搬送時間を短縮することができる。
【0039】
図7は、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
【0040】
MCU24は、印刷開始時に、コンピュータ10から受信した印刷データ内のライン数を表す改行量と、1ライン分の用紙搬送に必要なモータステップ数を表すモータ分解能とに基づいて、搬送残量を算出する(ステップS11)。算出された搬送残量は、モータステップ数のダウンカウント値として設定される。具体的には、搬送残量は改行量とモータ分解能との乗算によって算出される。
【0041】
MCU24は、搬送残量が0を超えているか否かを判別する(ステップS12)。搬送残量が0の場合には(ステップS12でNO)、MCU24はステッピングモータ30を停止させて本処理を終了する。一方、搬送残量が0を超えている場合には(ステップS12でYES)、MCU24はステッピングモータ30を1ステップ駆動する処理を実行し(ステップS13)、搬送残量を1減少する(ステップS14)。
【0042】
次に、MCU24は、搬送残量と停止速度ポインタ46の示す加速ステップの値との合計が加速ポインタ45の値を超えているか否かを判別する(ステップS15)。ステップS15では、ステッピングモータ30の状態が(i)加速域又は定速域であるか、若しくは(ii)減速域であるかを判断している。搬送残量と停止速度ポインタ46の値との合計が加速ポインタ45の値以下である場合には(ステップS15でNO)ステッピングモータ30が減速域であるため、MCU24は加速ポインタ45を搬送残量と停止速度ポインタ46の値との合計値に設定し(ステップS16)、ステップS19に進んでステップS16で設定した加速ポインタに対応する加速ステップ時間を取得する。なお、ステップS14で搬送残量が1減少しているため、ステップS16で設定される加速ポインタ45の値は1減る。
【0043】
一方、搬送残量と停止速度ポインタ46の値との合計が加速ポインタ45の値を超えている場合には(ステップS15でYES)、ステッピングモータ30が加速域又は定速域であるため、MCU24は加速ポインタ45が加速テーブル内の加速ステップの最大値を指しているか否かを判別する(ステップS17)。ステップS17では、ステッピングモータ30の状態が(iii)加速域であるか又は(iv)定速域であるかを判断している。
【0044】
加速ポインタ45が加速テーブル内の加速ステップの最大値を指している場合には(ステップS17でYES)、MCU24はステッピングモータ30が目標速度に達したと判断し、加速テーブルを参照して現在の加速ステップに対応する加速ステップ時間を取得する(ステップS19)。
【0045】
一方、加速ポインタ45が加速テーブル内の加速ステップの最大値でない場合には(ステップS17でNO)ステッピングモータ30が加速域であるため、MCU24は加速ポインタ45を1増加し(ステップS18)、ステップS19に進んでステップS18で更新した加速ポインタに対応する加速ステップ時間を取得する。
【0046】
MCU24は、S19で取得した加速ステップ時間が経過したか否かを判別する(ステップS20)。このステップS20では、各加速ステップにおけるステッピングモータ30の励磁期間が経過しているか否かを判別している。加速ステップ時間が経過していない場合には(ステップS20でNO)、ステップS20を繰り返す。一方、加速ステップ時間が経過した場合には(ステップS20でYES)、ステップS12に戻り、次のステップ駆動に移る。
【0047】
図7によれば、ステッピングモータ30の回転速度を停止速度ポインタが示す速度まで低下させて(ステップS16、ステップS12でNO)からステッピングモータ30を停止させるので、白スジの発生を防止し印字品質を向上させることができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、ステッピングモータ30の制御に関して第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の構成については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図8(A)は、ステッピングモータ30を1-2相励磁で駆動した場合のモータ駆動のタイミングチャートである。
図8(B)は、ステッピングモータ30を1-2相励磁で駆動した場合の第2の実施の形態に係るモータ駆動のタイミングチャートである。
【0050】
MCU24は、A・B相→B相→B・/A相→/A相→/B・/A相→/B相→/B・A相→A相…の順でステッピングモータ30の各モータ相のオン/オフを切替えることでステッピングモータ30を駆動し、用紙を搬送する。
【0051】
図8(A)では、MCU24は、ステッピングモータ30を1相(/B相)(位置50)で停止させ、目的のモータ停止位置となるように停止後も一定時間励磁している。このとき、ステッピングモータ30は1相励磁で停止するため、制動力が低く、目的のモータ停止位置からのズレを示すオーバーラン量が多くなるおそれがある。
【0052】
一方、第2の実施の形態では、
図8(B)に示すように、MCU24はステッピングモータ30を
図8(A)の停止相よりも1つ前のタイミングの2相(/A・/B相)(位置51)で停止させることで、モータ駆動量を1ステップ減らし、またステッピングモータ30の制動力を上げることができる。これにより、オーバーランが抑制され、印字品質を向上させることができる。なお、
図8(B)では、ステッピングモータ30の停止後も/A相と/B相とが励磁され、
図8(A)でのステッピングモータ停止後の励磁相(
図8(B)に1点鎖線で示す励磁相)とは励磁相が異なる。
【0053】
図9は、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
図7のフローチャートと同一のステップについては、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図9において、搬送残量が0を超えている場合には(ステップS12でYES)、MCU24は、搬送残量が1を超えているか否かを判別する(ステップS21)。搬送残量が1を超えている場合には(ステップS21でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30を1ステップ駆動する(ステップS13)。一方、搬送残量が1である場合には(ステップS21でNO)、MCU24は、ステッピングモータ30の回転駆動を停止させ(ステップS13A)、搬送残量を1減少する(ステップS14)。ステップS14の後、処理はステップS17に進む。
図9では、第1の実施の形態と異なりステップS15及びS16が存在しないので、ステッピングモータ30の状態が減速域にはならず、定速域で且つ搬送残量が0になると、ステッピングモータ30の制御処理は終了する。
【0055】
図9によれば、搬送残量が1である場合、MCU24はステッピングモータ30の回転駆動を停止させるので、オーバーランを抑制し、印字品質を向上させることができる。
【0056】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、ステッピングモータ30の制御内容に関して第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の構成については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0057】
本実施の形態では、ステッピングモータ30の分解能が1ライン当たり2ステップであり、サーマルヘッド31-34に1ライン当たり1回通電するものとする。
【0058】
図10(A)は、従来のモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
図10(B)は、第3の実施の形態に係るモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。尚、
図10(B)の1点鎖線は、
図10(A)と異なる部分を示している。
【0059】
図10(A)では、MCU24はヘッド通電が終わるまでステッピングモータ30を駆動させているが、ステッピングモータ30の停止後も、ステッピングモータ30のオーバーランにより用紙は搬送されてしまう。この結果、次に印字すると、白スジが発生する。
【0060】
図10(B)では、MCU24は搬送残量が所定のオーバーラン量(例えば4ステップ)以下になるとモータ駆動を停止させ、惰性により用紙が搬送されるオーバーラン中にサーマルヘッド31-34に通電している。これにより、白スジの発生を抑制し、印字品質を向上させることができる。
【0061】
図11は、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
図7のフローチャートと同一のステップについては、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図11において、搬送残量が0を超えている場合には(ステップS12でYES)、MCU24は、搬送残量が予め設定されたオーバーラン量を超えているか否かを判別する(ステップS22)。オーバーラン量は、実験により予め目標速度毎に計測されており、ROM25に格納されている。搬送残量がオーバーラン量を超えている場合には(ステップS22でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30を1ステップ駆動する(ステップS13)。一方、搬送残量がオーバーラン量となった場合には(ステップS22でNO)、MCU24はステッピングモータ30の回転駆動を停止させるとともに、サーマルヘッド31-34への通電を実行して(ステップS13B)、搬送残量を1減少する(ステップS14)。ステップS14の後、処理はステップS17に進む。
図11では、第2の実施の形態(
図9)と同様に、ステップS15及びS16が存在しないので、ステッピングモータ30の状態が減速域になることはない。
【0063】
図11によれば、MCU24は、搬送残量と目標速度でのオーバーラン量とを比較して(ステップS22)、搬送残量がオーバーラン量以下になると(ステップS22でNO)、ステッピングモータ30の回転駆動を停止させ、オーバーラン中に惰性によって用紙が搬送される期間にもサーマルヘッド31-34の通電を実行する(ステップS13B)。よって、白スジの発生を抑制し、印字品質を向上させることができる。
【0064】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、ステッピングモータ30の制御内容に関して第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の構成については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第2及び第3の実施の形態では、オーバーラン抑制のためのステッピングモータ30の駆動量が、用紙の搬送量よりも小さくなる。このため、MCU24が次の印刷データを印字するためにステッピングモータ30を駆動してもギアのバックラッシュによって用紙は搬送されず、印字先頭で文字の潰れが発生する可能性がある。
【0066】
図12(A)は、第2の実施の形態と同様に、ステッピングモータ30を停止させた後に次の印字を開始するときに実行される、第4の実施の形態に係るモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【0067】
図12(A)では、第2の実施の形態(
図8(B))と同様に、MCU24はステッピングモータ30を2相励磁(/A・/B相)の状態で停止させる。尚、一点鎖線は、MCU24がステッピングモータ30を1相励磁(/B相)の状態で停止させることを示している。
【0068】
MCU24は、コンピュータ10から次の印字指令を受けた場合、
図12(A)に示す「停止中」期間の終了に合わせてステッピングモータ30を1ステップ駆動し、モータ位相を合せるための整定時間(ステッピングモータ30の固定子と回転子との位置合わせを行う時間)だけ1相励磁を保持した後ステッピングモータを2相励磁して次の印字を開始させる。
【0069】
図12(B)は、第3の実施の形態と同様に、ステッピングモータ30を停止させた後に次の印字を開始するときのモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【0070】
図12(B)では、
図10(B)と同様に、MCU24は搬送残量がオーバーラン量(例えば4ステップ)以下になるとモータ駆動を停止させ、オーバーラン中にサーマルヘッド31-34の通電を実行している。尚、一点鎖線は、搬送残量が0になるまでMCU24がステッピングモータ30を駆動させた場合のステッピングモータ30の各相の励磁状態を示している。
【0071】
MCU24は、コンピュータ10から次の印字指令を受けた場合、
図12(B)に示すように、モータの位相を元の位相に合せるために、図示「位相あわせ」の期間にステッピングモータ30をオーバーラン量に対応するステップ数、つまり印字停止前に駆動するはずであった4ステップ分だけ印字前に回転駆動させ、その後ヘッドに通電して印字を開始させる。
【0072】
図13は、第2の実施の形態と同様にステッピングモータ30を停止させた後に次の印字を開始させるときに、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
図9のフローチャートと同一のステップについては、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0073】
MCU24は、搬送残量が1となった場合には(ステップS21でNO)、ステッピングモータ30の回転駆動を停止させ(ステップS13A)、スキップ量を1増加し(ステップS26)、搬送残量を1減少する(ステップS14)。スキップ量とは、ステッピングモータ30を駆動させなかったステップの数を示し、MCU24に保持されている。
【0074】
MCU24は、コンピュータ10から次の印字指令を受けると、最初にスキップ量の値を確認する(ステップS23)。スキップ量が0の場合には(ステップS23でNO)、ステップS11に進む。一方、スキップ量が0でない場合には(ステップS23でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30をスキップ量に相当するステップ数だけ回転駆動させる(ステップS24)。その後、MCU24はスキップ量に0を設定し(ステップS25)、ステップS11に進む。
【0075】
このように、
図13では、搬送残量が1となった場合に、MCU24は、ステッピングモータ30の回転駆動を停止させ、スキップ量を増加する。また、次の印字処理時に設定されているスキップ量だけステッピングモータ30を回転駆動させてから印字を開始する。従って、次の印字開始前に、ギアのバックラッシュの影響を取り除くことができるので、印字先頭で潰れが発生することを回避できる。
【0076】
図14は、第3の実施の形態でステッピングモータ30を停止させた後に、次の印字を開始させるときに、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
図11のフローチャートと同一のステップについては、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0077】
MCU24は、搬送残量がオーバーラン量以下である場合には(ステップS22でNO)、ステッピングモータ30の回転駆動を停止した状態でサーマルヘッド31-34の通電を実行して(ステップS13B)、スキップ量を1増加し(ステップS26)、搬送残量を1減少する(ステップS14)。ステップS26の処理は、搬送残量が0となるまで繰り返される。
【0078】
MCU24は、コンピュータ10から次の印字指令を受けると、最初にスキップ量の値を確認する(ステップS23)。スキップ量が0の場合には(ステップS23でNO)、ステップS11に進む。一方、スキップ量が0ではない場合には(ステップS23でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30をスキップ量に相当するステップ数だけ回転駆動させる(ステップS24)。MCU24は、スキップ量に0を設定し(ステップS25)、ステップS11に進む。
【0079】
このように、
図14では、搬送残量がオーバーラン量以下である場合に、MCU24は、スキップ量を1ずつ増加し、次の印字開始前に、設定されているスキップ量だけステッピングモータ30を回転駆動させる。従って、次の印字開始前に、ギアのバックラッシュの影響を取り除くことができるので、印字先頭で潰れが発生することを回避できる。
【0080】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態は、ステッピングモータ30の制御に関して第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の構成については、同一の参照番号を付し、その説明を省略する。第5の実施の形態は、第1~第4の実施の形態と組み合わせることが可能である。
【0081】
サーマルプリンタ1は、1ラインの印字率が高いとサーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超える場合がある。サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超える場合には、MCU24は、1ライン印字時にサーマルヘッド31-34の発熱体に同時に通電せず、複数回に分けて通電する、いわゆる分割印字制御を行う。
【0082】
しかしながら、分割数が増えると通電時間の増大により印字速度が急激に低下する場合がある。このような場合も、前述のステッピングモータ30の急停止と同様に、ステッピングモータ30のオーバーランによる白スジが発生する。
【0083】
このため、第5の実施の形態では、サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超える場合には、MCU24は、オーバーラン量が1ライン未満になるようにステッピングモータ30の目標速度を制限する。さらに、分割印字時に、1ライン印刷時の2ステップ目で印字速度が低下した場合には、MCU24は次のラインの印刷開始までステッピングモータ30を停止させる。このように分割印字制御中にステッピングモータ30を停止させることで、ステッピングモータ30のオーバーランによる印字品質の低下を抑制することができる。
【0084】
図15は、サーマルヘッドに1ラインごとに1回通電する高速印字を実行しているときに、1ライン当たり4回通電する処理に切り替わることとなった場合のモータ駆動及びヘッド通電を示すタイミングチャートである。
【0085】
サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超える場合、MCU24は1ラインに対して4回通電を行う分割印字制御に切り替える。MCU24は通常、4回通電制御時の2回目の通電タイミングでは、
図15に一点鎖線で示すようにステッピングモータ30の/B相をオフにしてA相のみの1相励磁にする。しかし、4回通電を行うことによりステッピングモータが急減速すると判断した場合、MCU24は4回通電制御の2ステップ目でステッピングモータ30を駆動せず、A相・/B相の2相励磁の状態を保持する。
【0086】
同一ラインに対する4回通電が終わると、次のラインで、MCU24は、通常の1-2相励磁の制御に戻る。なお、この時一時的に2-2相励磁となる。急減速直後であるため、MCU24は目標速度までステッピングモータ30の回転を加速しながら、サーマルヘッド31-34に通電する。
【0087】
図16は、MCU24によって実行されるステッピングモータ30の制御処理を示すフローチャートである。
図7のフローチャートと同一のステップについては、同一のステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0088】
搬送残量が0を超えている場合には(ステップS12でYES)、MCU24は、現在が1ラインの印刷における1回目の通電タイミング(1ステップ目)であるか否かを判別する(ステップS29)。現在が1ラインの1回目の通電タイミングである場合には(ステップS29でYES)、MCU24は、サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超えるか否かを判別する(ステップS27)。ここでは、MCU24は、分割印字制御を行うか否かを判断している。尚、上述したように、MCU24は予め電源22の電源容量の情報を保持しており、サーマルヘッド31-34の消費電流は1ライン中でオンする発熱体の数を計数することで算出する。
【0089】
サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超えている場合には(ステップS27でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30のオーバーラン量が1ライン未満になるようにステッピングモータ30の目標速度を制限する又は減少させる、即ち、分割印字制御を行わない場合よりも目標速度を減少させ(ステップS28)、ステップS13に進む。一方、サーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量以下である場合(ステップS27でNO)、MCU24は、ステッピングモータ30の目標速度の制限を解除し(ステップS31)、ステップS13に進む。
【0090】
また、現在が1ラインの1回目の通電タイミングでない場合には(ステップS29でNO)、MCU24は、ステッピングモータ30の目標速度を制限しているか否か判別する(ステップS32)。ステッピングモータ30の目標速度を制限している場合(ステップS32でYES)、ステップS14に進む。一方、ステッピングモータ30の目標速度を制限していない場合(ステップS32でNO)、ステップS13に進む。
【0091】
このように、1ラインの1回目の通電タイミングである場合(ステップS29でYES)で、かつサーマルヘッド31-34の消費電流の合計が電源22の電源容量を超えている場合には(ステップS27でYES)、MCU24は、ステッピングモータ30のオーバーラン量が1ライン未満になるようにステッピングモータ30の目標速度を制限し又は減少させる(ステップS28)。よって、ステッピングモータ30のオーバーランによる印字品質の低下を抑制することができる。
【0092】
第1~第5の実施の形態では、媒体を搬送する媒体搬送装置としてサーマルプリンタ1の例が挙げられているが、媒体搬送装置はサーマルプリンタに限定されるものではない。例えば、媒体搬送装置は、ステッピングモータを用いて媒体を搬送するチケット発券機などでもよい。
【0093】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 サーマルプリンタ
10 コンピュータ
22 印字電源
24 MCU(Micro Controller Unit)
25 ROM
26 RAM
30 ステッピングモータ
31-34 サーマルヘッド
41 加速ステップ
45 加速ポインタ
46 停止速度ポインタ