IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧 ▶ ダイニチ工業株式会社の特許一覧

特許7007468燃料電池装置、制御装置および制御プログラム
<>
  • 特許-燃料電池装置、制御装置および制御プログラム 図1
  • 特許-燃料電池装置、制御装置および制御プログラム 図2
  • 特許-燃料電池装置、制御装置および制御プログラム 図3
  • 特許-燃料電池装置、制御装置および制御プログラム 図4A
  • 特許-燃料電池装置、制御装置および制御プログラム 図4B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】燃料電池装置、制御装置および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220203BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20220203BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20220203BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20220203BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20220203BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220203BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/04664
H01M8/04955
H01M8/04694
H01M8/04313
H01M8/04 J
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516161
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014698
(87)【国際公開番号】W WO2019208128
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2018087419
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】白石 晋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212559(JP,A)
【文献】特開2003-308859(JP,A)
【文献】特開2009-252594(JP,A)
【文献】特開2002-269661(JP,A)
【文献】特開2016-192269(JP,A)
【文献】特開2011-249185(JP,A)
【文献】特開2008-276948(JP,A)
【文献】特開2015-191765(JP,A)
【文献】特開2014-207060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を貯留する第1タンクと、
前記第1タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
該浄化装置の破過を検知する破過検知装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記補水装置により前記第1タンクに外部の水を補給する補水制御と、
前記破過検知装置により前記浄化装置の破過を検知する破過検知制御と、
メンテナンスが必要となる異常が発生した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御と、
前記破過検知制御により、前記補水制御の実行中に前記浄化装置の破過が検知された場合、前記浄化装置の破過の異常を原因とする前記異常停止制御を実行せずに、前記補水制御の実行を停止する、破過対処制御と、
を実行するように構成された、燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記破過対処制御において、前記補水制御の実行を停止したのち、前記第1タンクに貯留された水の量が、予め決められた所定水量未満となったことを原因とする前記異常停止制御が実行された場合に、
前記浄化装置の破過の情報を外部に発報する破過発報制御を実行する、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御装置が実行するプログラムと該プログラムの実行に必要な情報とを記憶する記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記破過検知装置による前記浄化装置の破過の検知を前記記憶装置に記録する破過記録制御と、
前記浄化装置の破過の記録を前記記憶装置内に保持する記録保持制御と、を実行可能であり、
前記制御装置は、前記破過検知制御により前記浄化装置の破過が検知された場合、前記破過記録制御を実行するとともに、外部からの記録消去命令を受信するまで、前記記録保持制御を実行する、請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記破過検知装置は、
外部から補給され、前記浄化装置を経由した水の量を積算する補水量積算装置と、
前記浄化装置を経由した外部の水の導電率を測定する水質測定装置と、を含み、
前記破過検知制御は、
前記浄化装置を経由した外部の水の総量を示す積算値が、予め決められた第1値を超えるか否かを確認する補水量確認制御と、
前記浄化装置を経由した外部の水の導電率の値が、予め決められた第2値を超えるか否かを確認する導電率確認制御と、を含み
前記制御装置は、前記破過検知制御において、
前記補水量確認制御における前記積算値が前記第1値を超え、かつ、
前記導電率確認制御における前記導電率の値が前記第2値を超える場合に、
前記浄化装置が破過したと検知する、請求項1~3のいずれか1つに記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記補水装置は、外部から補給される水の流入を制御する電磁開閉式の止水弁を含み、
前記積算値は、前記止水弁が開いていた時間を積算した値である、請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記補水装置は、外部から補給される水の流入を制御する電磁開閉式の止水弁を含み、
前記補水制御は、予め決められた第1時間継続して前記止水弁を開いた後、予め決められた第2時間継続して前記止水弁を閉じる止水弁開閉制御を、複数回繰り返して実行する、請求項1~5のいずれか1つに記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記第1時間は、前記第2時間より短い、請求項6に記載の燃料電池装置。
【請求項8】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置であって、
前記燃料電池は、浄化装置と、破過検知装置と、を備え、
前記燃料電池装置内に外部の水を補給する補水制御と、
前記破過検知装置により前記浄化装置の破過を検知する破過検知制御と、を含み、
運転の停止が必要となる事象が発生した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御と、
前記浄化装置に破過が発生した場合に前記補水制御の実行を停止する破過対処制御と、を選択的に実行可能であり、
前記補水制御の実行中に、前記浄化装置の破過が発生した場合、前記異常停止制御に代えて、前記破過対処制御を実行する、制御装置。
【請求項9】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
燃料電池装置内に外部の水を補給する補水制御ステップと、
破過検知装置により浄化装置の破過を検知する破過検知制御ステップと、
運転の停止が必要となる事象を検知した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御ステップと、
前記浄化装置の破過を検知した場合に前記補水制御の実行を停止する破過対処制御ステップと、を実行させる制御プログラムであって、
前記補水制御ステップの実行中に、前記破過検知制御ステップにおいて浄化装置の破過を検知した場合、前記異常停止制御ステップの実行に代えて、実行中の前記補水制御ステップを停止して、前記破過対処制御ステップを実行する、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置、制御装置および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
収納容器内に、水素含有ガスである燃料ガスと、酸素含有ガスである空気とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備える燃料電池モジュールが知られている。また、該燃料電池モジュールおよびその動作に必要な補機類を外装ケース等の筐体に収容した燃料電池装置が、種々提案されている。
【0003】
このような燃料電池装置においては、発電に用いられなかった余剰の燃料ガスを燃焼させ、燃焼後の排ガスを熱交換器等に通して冷却する。この熱交換時に、前記排ガスに含まれる水蒸気が凝縮して生成される凝縮水を、イオン交換樹脂(以下、凝縮水用イオン交換樹脂という)により浄化処理して改質水タンク等の水タンクに貯留する。そして、貯留された水を、天然ガス等の原燃料を水蒸気改質する改質器に改質水として供給する、いわゆる水自立運転が行われている。
【0004】
このような、凝縮水を改質水として利用した燃料電池の運転および制御に関し、特許文献1には、前述の凝縮水を貯留する水タンクの水位が低下し水量が不足する場合、この水タンクに、水道水等の外部の水を、外部水浄化処理用のイオン交換樹脂(以下、補水用イオン交換樹脂という)を経由して浄化してから給水(以下「補水」)する燃料電池装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-159461号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、該燃料電池より排出される排ガスから回収した水を貯留する第1タンクと、前記第1タンクに外部から水を補給する補水装置と、外部から補給される水を浄化する浄化装置と、該浄化装置の破過を検知する破過検知装置と、前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備える。
前記制御装置は、
前記補水装置により前記第1タンクに外部の水を補給する補水制御と、
前記破過検知装置により前記浄化装置の破過を検知する破過検知制御と、
メンテナンスが必要となる異常が発生した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御と、
前記破過検知制御により、前記補水制御の実行中に前記浄化装置の破過が検知された場合、前記浄化装置の破過の異常を原因とする前記異常停止制御を実行せずに、前記補水制御の実行を停止する、破過対処制御と、を実行可能である。
【0007】
また、本開示の制御装置は、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置であって、前記燃料電池は、浄化装置と、破過検知装置と、を備え、前記燃料電池装置内に外部の水を補給する補水制御と、前記破過検知装置により前記浄化装置の破過を検知する破過検知制御と、を含む。
前記制御装置は、運転の停止が必要となる事象が発生した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御と、前記浄化装置に破過が発生した場合に前記補水制御の実行を停止する破過対処制御と、を選択的に実行可能である。
該制御装置は、前記補水制御の実行中に、前記浄化装置の破過が発生した場合、前記異常停止制御の実行に代えて、前記破過対処制御を実行する。
【0008】
また、本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
燃料電池装置内に外部の水を補給する補水制御ステップと、
破過検知装置により浄化装置の破過を検知する破過検知制御ステップと、
運転の停止が必要となる事象を検知した場合に燃料電池の発電運転を停止する異常停止制御ステップと、
前記浄化装置の破過を検知した場合に前記補水制御の実行を停止する破過対処制御ステップと、を実行させる制御プログラムである。
前記制御装置は、前記補水制御ステップの実行中に、前記破過検知制御ステップにおいて浄化装置の破過を検知した場合、前記異常停止制御ステップの実行に代えて、実行中の前記補水制御ステップを停止して、前記破過対処制御ステップを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とから、より明確になるであろう。
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
図2図1のF部分を拡大した、燃料電池装置の改質水タンク周辺の説明図である。
図3】燃料電池装置の外観斜視図である。
図4A】実施形態の燃料電池装置における補水制御開始前の制御フローを示すフロー図である。
図4B】実施形態の燃料電池装置における補水制御開始後の制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態の燃料電池装置について説明する。
図1図2および図3は、実施形態の燃料電池装置の概略構成を説明する図である。なお、図2は、図1のF部を拡大して示す、改質水タンク周りの概略構成である。
【0011】
実施形態の燃料電池装置100は、天然ガス,LPガス等の原燃料と空気とを使用して発電を行なう燃料電池モジュール1の稼動による電力供給と、熱交換器3、ラジエータ、熱媒循環ポンプP2および蓄熱タンク等からなる排熱回収システムを備える。なお、排熱回収システムは、図中に符号HS(ヒートサイクル)で表示されている。また、燃料電池装置100は、温水の供給を行なわない、いわゆるモノジェネレーションシステムとしてもよい。
【0012】
また、燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1等の他、補機として、改質水タンク6、パワーコンディショナ20、制御装置30、記憶装置40、表示装置50等を備えている。さらに、燃料電池装置100は、改質水ポンプP1を含む改質水流路R、排水流路Dと、各種センサ類とを備えている。センサとしては、水位検出装置である、中水位に位置する水検知器WLおよび低水位に位置する水検知器WLと、補水の水質を測定するための水質測定装置である電気伝導率計WCと、を少なくとも備える。
【0013】
燃料電池モジュール1は、収納容器10に収容されている。内部に、複数の燃料電池セルが積層されたセルスタック11と、水蒸気を用いて原燃料の水蒸気改質を行う改質器12と、余剰の燃料ガスに点火するための着火ヒータ(図示省略)、および、触媒容器2に充填された排ガス触媒等を備える。そして、燃料電池モジュール1は、図3に示すように、各フレーム51と外装パネル(図示省略)とからなるケース50の中に配設されている。
【0014】
なお、図3では図示していないが、ケース50内には、図1に例示するような、天然ガス等の原燃料を改質器に送給するガスポンプB1、外気または空気等の酸素含有ガスをセルスタックに送給する空気ブロワB2、改質水タンク6内の改質水を、水蒸気改質用の原料水として改質器12に供給する改質水ポンプP1、改質水タンク6内の余剰水を排出するための排水流路D等が、配設されている。
【0015】
さらに、ケース50内には、先に述べたような、系統電源と連係するパワーコンディショナ20、装置全体をコントロールする制御基板を含む制御装置30、記憶装置40等、および燃料電池の運転を制御するために用いる各種センサ類も、配置される。
【0016】
上述のような構成の燃料電池装置100においては、燃料電池モジュール1に隣接して配置された熱交換器3で、燃料電池モジュール1より排出された排ガスと、熱交換器3内を流れる水等の熱媒または冷媒との間で熱交換が行われ、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。
【0017】
生じた凝縮水は、気液分離器等により分離され、凝縮水流路Cを経由して回収され、改質水タンク6に貯留される。なお、改質水タンク6は、本開示における第1タンクの一例である。
【0018】
水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、燃料電池装置の外に排気される。また、改質水タンク6に貯水された改質水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP1を介して、燃料電池モジュール1内の改質器12に供給され、改質水を用いた原燃料の水蒸気改質に利用される。
【0019】
図2は、燃料電池装置100の構成の中で、燃料電池の発電運転およびそれに用いられる改質水に関連する部分、すなわち図1の二点鎖線F内を拡大して示したものである。
【0020】
凝縮水を浄化して貯留する改質水タンク6は、浄化処理用途の第1改質水タンク61と、貯留用途の第2改質水タンク62と、で構成される。なお、これら第1改質水タンク61と第2改質水タンク62との間は、下部の通水管65で接続されて、連通している。
【0021】
生成された改質水を貯留する第2改質水タンク62の下部または底部には、改質水ポンプP1の吸引口に繋がる改質水導出口62aが設けられている。また、第2改質水タンク62の上部側面には、排水流路Dに繋がる余剰水導出口62bが設けられている。
【0022】
第2改質水タンク62の下部には、貯留された改質水の水位である上水面が、下限水位である渇水位に達したことを検出する水検知器WLが配設されている。
【0023】
なお、図中の各センサの先端の黒点は、センサの配設位置またはプローブ等の先端の、検出位置を示すものである。また、上記の、低水位に位置する水検知器WLの検出位置が示す渇水位は、本開示における後記の異常停止制御が実行される基準となる、予め決められた所定水量、すなわち実施形態における下限水位を示す指標でもある。
【0024】
凝縮水を回収および精製して改質水を作製する第1改質水タンク61の中には、熱交換器3から回収された凝縮水を浄化処理するための凝縮水用イオン交換樹脂が充填された第1のイオン交換樹脂容器63と、改質水の不足時に、外部から補給される水道水等(以下、外部水)を浄化するための補水用イオン交換樹脂が充填された第2のイオン交換樹脂容器64とが、配設されている。
【0025】
第1改質水タンク61の所定の中間位置には、貯留された改質水の水位である上水面が、予め決められた設定水位である中水位まで低下したことを検出するための水検知器WLが配設されている。
【0026】
そして、本実施形態の燃料電池装置100においては、水タンクに外部から水を補給する水補給装置として、図2に示すように、改質水タンク6と、外部の水源である上水道(Waterworks)等との間に、電磁開閉式の止水弁Vを含む水補給流路Gが配設されている。
【0027】
水補給流路Gの下流側の末端である端部は、第1改質水タンク61の下部に設けられた外部水受水口61aに接続されている。外部水受水口61aから流入した外部水は、タンク内部に配設された延設管61bを介して、第2のイオン交換樹脂容器64の底部に設けられた外部水導入口64aから、第1改質水タンク61内に導入される。
【0028】
また、第2のイオン交換樹脂容器64の中には、外部水の浄化のために、前述の補水用イオン交換樹脂が充填されている。外部水は、この補水用イオン交換樹脂を通過する間に、水道水等に含まれる不純物が除去され、導電率1μS/cm程度の脱イオン水、すなわち浄化された水である補水が、精製される。
【0029】
なお、図中の電気伝導率計WCは、前述の補水用イオン交換樹脂が破過していないか否かを判定する、破過検知装置の一例である。電気伝導率計WCは、浄化処理された後の脱イオン水である補水の導電率を測定できるように、補水が滞留する、第2のイオン交換樹脂容器64の上部に配設されている。
【0030】
浄化処理された補水は、第2のイオン交換樹脂容器64の上部側面に設けられた浄化水流出口64bから流出して、第1改質水タンク61内の貯水部に流下して、改質水として貯留される。
【0031】
本実施形態の燃料電池装置100においては、改質水タンク6内の改質水が不足する場合、上述した水道水などの外部水が、補水用イオン交換樹脂を介して浄化された後、補水として改質水タンク6内に導入される。補水が行われる条件および制御等については、後記で説明する。
【0032】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置30を備える。
【0033】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0034】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0035】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0036】
制御装置30は、記憶装置40と、表示装置50と、パワーコンディショナ20と、燃料電池モジュール1と、ガスポンプB1等の原燃料供給装置と、空気ブロワB2等の酸素含有ガス供給装置と、改質水ポンプP1等の水供給用装置、止水弁Vを含む水補給流路G等の水補給装置、および、中水位の水検知器WL,低水位の水検知器WL等の水位検出装置、電気伝導率計WC等の水質測定装置などの各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。
【0037】
制御装置30は、記憶装置40に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。また、表示装置50は、制御装置30からの指示信号に基づいて、指定された必要な情報および警報または警告等を、可視化する。なお、表示装置50は、警報または警告等を音で知らせるための発音機能を備えていてもよい。
【0038】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、本実施形態において、制御装置30は特に、先に述べた外部水の、改質水貯留部への補水を制御する。また、図では、制御装置30および記憶装置40、表示装置50と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0039】
記憶装置40は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置40は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置40は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置40は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。
【0040】
記憶装置40は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置40は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0041】
つぎに、上記構成の燃料電池装置による、改質水が不足する場合の補水制御は、以下のように行われる。なお、以下の説明は、図4A図4Bのフローチャートにもとづいて行う。また、フローチャートにおける各ステップを「S」と省略して呼称する。たとえば、ステップ1,ステップ2・・・は、それぞれ、〔S1〕,〔S2〕・・・と称する。図中も同じである。
【0042】
燃料電池装置の制御装置30は、システムに異常を感知していない通常時または正常時には、第1タンクである改質水タンク6の所定の中間位置に配設された水検知器WLが発信している水検出信号が途切れるまで、すなわち、第1所定水位である中水位の水検知器WLからの水検出信号が受信できなくなるまで、水検知信号の受信の有無を判断する〔S1〕のループ、すなわちフローチャートの〔S1〕における図示左側の「Yes」を繰り返しながら待機する。
【0043】
上記〔S1〕のループ中に、中水位の水検知器WLが発信する水検出信号が受信されなくなった場合、すなわち、第1改質水タンク61内に貯留された凝縮水の水位が、予め決められた第1所定水位を示す中水位を下回り、分岐判断が「No」となった場合、制御装置30はまず、図4Bに示す補水制御〔S3〕を開始する前に、外部水が補給可能であるかどうかを判定する、破過判定制御〔S2〕を実行する。
【0044】
破過判定制御〔S2〕は、コントローラシステムまたはコンピュータシステム等、記憶装置40を含む制御装置30内で単独で実行されるものであり、センサおよび計測器等は使用しない。すなわち、破過判定制御〔S2〕は、制御装置30等を構成するプログラム等の中に予め設定された、補水用イオン交換樹脂の破過を示すコンピュータ・フラグ(以下、CPフラグという)の値が、現在、「0(ゼロ)」であるか「1」であるかにより、現在より以前に、補水用イオン交換樹脂の破過が発生しているか否か、または、破過が発生した記録が残されていないか否か、を判定する。このCPフラグの設定と、CPフラグが「1」の際に実行される場合のある異常停止制御〔S12〕および破過発報制御〔S14〕については、後記で説明する。
【0045】
そして、破過判定制御〔S2〕において、現在、補水用イオン交換樹脂の破過を示すCPフラグの値が「0」であれば、現在以前に破過は発生しておらず、逆にCPフラグの値が「1」であれば、補水用イオン交換樹脂が破過していると、制御装置30は判定する。
【0046】
図4Aの破過判定制御〔S2〕において、分岐判定が「Yes」、すなわち破過を示すCPフラグの値が「0」(Flag=0)である場合、制御装置30は、図4Bに示す補水制御〔S3〕に移行する。
【0047】
制御装置30は、補水用イオン交換樹脂が破過していないことが確認されると、〔S3〕以降において、補水制御を開始する。補水制御は、中水位に位置する水検知器WLが水検知信号を出力するまで、止水弁Vの開閉動作を繰り返すことで実行される。
【0048】
まず、図4Bのフローチャートに示すように、〔S4〕として、外部水導入用の、水補給流路Gに配設された電磁開閉式の止水弁Vを開けて、外部水である水道水を第2のイオン交換樹脂容器64に導入し、補水を開始する。以降、外部水を「水道水」とする。
【0049】
水道水を供給する補水は、第1時間(T1)の間行われ〔S5〕、第1時間T1経過後、電磁開閉式の止水弁Vが、制御装置30の指示により閉じられる〔S6〕。なお、第1時間T1とは、数秒から数十秒の時間であり、この例では、たとえば3.5秒である。
【0050】
つぎに、制御装置30は、〔S6〕において止水弁Vを閉じた後、前述のように止水弁Vが開いていた時間、すなわちこの例では第1時間T1を、記憶装置40に記憶するとともに、既に記憶されている、以前の弁Vの「開」時間と合計・積算して、累積値である累積開弁時間Vを算出し、記録する〔S7〕。なお、上記の制御装置30による弁Vの「開」時間の積算は、本実施形態における補水量積算装置の一例であり、この補水量の積算(演算)を、現有装置の組み合わせで実現した例である。補水量積算装置の構成はこの例に限定されず、後記のような他の構成としてもよい。
【0051】
ついで、制御装置30は、〔S8〕において、補水用イオン交換樹脂が、寿命もしくは使用限度を迎えていないか否かを、判定する。判定は、先に述べた、第1時間T1の積算値である累積開弁時間Vが、予め決められた第1値(W1)以下であるか否かを確認する、補水量確認制御として実行される。
【0052】
仮に、前述の第1値S1が7200秒(2時間)である場合、累積開弁時間Vが、分岐判断が「Yes」となる7200秒以下であれば、制御装置30は、補水用イオン交換樹脂はまだ寿命を迎えていないと判定し、つぎのステップである水量回復判定〔S9〕を行う。
【0053】
また、〔S8〕において、累積開弁時間Vが、前述の第1値W1を超えるまたは上回る、分岐判断が「No」の場合、制御装置30は、補水用イオン交換樹脂は寿命を迎えているおそれがあると判定し、〔S17〕において、補水用イオン交換樹脂に破過が発生していないか否かを、脱イオン水の導電率を計測するように配設された第1の電気伝導率計WCを用いて確認する、導電率確認制御を実行する。この構成により、破過判定の信頼性を向上することができる。
【0054】
上述のように、本フローチャートにおいては〔S7〕で止水弁Vが開いている時間を累積し、その積算値Vを〔S8〕において第1値W1と比較し、第1値W1を超える場合に〔S17〕を実行する。ただし、この〔S7〕と〔S8〕とからなる補水量確認制御は。省略または他の構成により代替することができる。省略した場合には、止水弁Vを閉じるたびに、脱イオン水の導電率の確認を行ってもよい。
【0055】
なお、図4Bに示すフローチャートの〔S17〕において、破過の検知の基準となる脱イオン水の導電率の判定基準である第2値W2は、60μsに設定される。
【0056】
そして、〔S17〕において、第2のイオン交換樹脂容器64上部に配設された第1の電気伝導率計WCが計測した、脱イオン水の導電率が、判定基準である60μs以下「Yes」である場合、制御装置30は、つぎのステップである水量回復判定〔S9〕に移行する。
【0057】
なお、前述の〔S8〕補水量確認制御と〔17〕導電率確認制御とは、本開示における破過検知制御の2つの判断条件を示すものである。これら〔S8〕補水量確認制御と〔17〕導電率確認制御とは、どちらの確認を先に行ってもよく、その確認順序は、入れ替えることができる。また、上述の補水量確認制御における累積開弁時間Vが第1値W1を超え、かつ、導電率確認制御における第1の電気伝導率計WCが計測した脱イオン水の導電率が第2値W2を超える場合に、補水用イオン交換樹脂が破過したとの判定が行われる。
【0058】
水量回復判定〔S9〕は、図4A中の〔S1〕と同様、第1タンクである改質水タンク6の所定の中間位置に配設された水検知器WLを用いて、上記の外部水の補水操作により、改質水タンク6内の改質水の水位が、第1所定水位である中水位まで回復したか否かを、確認するステップである。
【0059】
水量回復判定〔S9〕において、水検知器WLが水検出信号を発信しており、改質水タンク6内の改質水の水位が、第1所定水位である中水位まで回復したことが確認され、分岐判断が「Yes」であれば、制御装置30は、補水制御を正常に終了〔S10〕し、フローの最初であるスタート〔S0〕へ戻る。
【0060】
なお、前記の補水制御を終了〔S10〕した後、発電運転を中止し、所定時間待機した後、再度発電運転を開始してもよい。当該制御はメンテナンスを経ずに再起動するため、本開示の異常停止制御には該当しない。
【0061】
逆に、水量回復判定〔S9〕において、水検知器WLが水検出信号を発信しておらず、改質水タンク6内の改質水の水位が、第1所定水位である中水位まで回復していない、分岐判断が「No」である場合、制御装置30は、補水用水補給流路Gに配設された電磁開閉式の止水弁Vを閉めた状態で、第2時間(T2)の間待機〔S16〕する。
【0062】
その後、〔S4〕に戻り、当該止水弁Vを開けて、水道水を第2のイオン交換樹脂容器64に導入する補水操作を、再度行う。なお、以上のような補水制御は、フローチャート上でループするよう、複数回繰返してもよい。
【0063】
第2時間T2とは、数秒から数十秒の時間であり、この例では、たとえば12秒である。補水用イオン交換樹脂では、この第2時間T2の間に、改質水タンク6に導入された水道水から不純物等を除去し補水を生成する。水道水の浄化を確実に行うため、第2時間T2は、先に述べた、補水用電磁開閉式の止水弁Vの「開」時間である第1時間T1より長く設定される。
【0064】
また、〔S17〕において、第2のイオン交換樹脂容器64上部に配設された第1の電気伝導率計WCが計測した、脱イオン水の導電率が、60μsを超え、補水用イオン交換樹脂が破過したことが検知されたまたは破過したことが疑われる場合、すなわち〔S17〕における分岐判定が「No」の場合、制御装置30は、先述の制御装置30等を構成するプログラム等の中に予め設定された、補水用イオン交換樹脂の破過を示すCPフラグの値を、「0(ゼロ)」から「1」に書き換え〔S18〕してから、補水制御を停止〔S19〕し、フローの最初であるスタート〔S0〕へ戻る。
【0065】
このように補水用イオン交換樹脂の破過が疑われる場合でも、本実施形態の制御装置30は、上記の補水用イオン交換樹脂の破過以外の他の異常がなければ、〔S12〕に例示するような、燃料電池装置の発電運転を停止する異常停止制御は実行せずに、補水用イオン交換樹脂の破過を示すCPフラグの値の、0から1への書き換え〔S18〕を実行してから、補水制御を停止する〔S19〕。
【0066】
したがって、本実施形態における制御装置30は、補水制御の実行中に浄化装置の破過が検知された場合、浄化装置に破過の異常が発生したことを原因とする、すなわち浄化装置の破過に起因する異常停止制御は実行せず、代わりに、実行中の補水制御の実行を停止する〔S19〕。これは、本開示の破過対処制御の一例であると同時に、後述の「メンテナンスが必要となる異常」が発生した場合に実行される異常停止制御の、例外的な処置、または異常停止制御の例外、の一例でもある。
【0067】
なお、CPフラグの値の書き換え〔S18〕は、補水制御の停止〔S19〕の後に行っても差し支えない。また、本実施形態におけるフローチャートには示していないが、浄化装置が破過したことを外部に発報する〔S14〕等の破過発報制御を、補水制御の停止〔S19〕の前または後に実行することもできる。
【0068】
つぎに、〔S18〕にてCPフラグの値を「1」に書き換えたのち、補水制御を停止し、図4Aのフローチャートのスタート〔S0〕に復帰した場合、再度のタンク内凝縮水の水位低下〔S1〕を経て、破過判定制御〔S2〕までフローが進行した時、先に述べたものと異なり、今回は、破過判定制御〔S2〕において、分岐判定は「No」(Flag=1)となる。
【0069】
そのため、制御装置30は、新たに〔S11〕において、改質水タンク6の渇水位置である低水位位置の水検知器WLが、水検出信号を発信しているか否か、すなわちタンク内の貯留凝縮水の上水面が、危険レベルにまで低下していないかどうか、を確認する。
【0070】
この〔S11〕において、低水位位置の水検知器WLからの水検出信号が検出され続けている「Yes」であれば、改質水タンク6内の改質水の貯水量は、まだ危険レベルにまで低下していないと判断して、制御装置30は、先に述べた〔S1〕のループに戻る。
【0071】
つまり、補水用イオン交換樹脂に破過が発生していて、〔S3}以降の補水制御を実行することができなくても、改質水の貯水量が危険レベル以下になるまでは、燃料電池装置の発電運転が継続される。ただし、このように補水がされずに発電運転が継続される場合、回収される凝縮水の量が増えなければ、改質水タンク6の水位は徐々に低下していくことになる。
【0072】
そして、〔S11〕において、低水位位置の水検知器WLからの水検出信号が途絶えた「No」であれば、制御装置30は、改質水タンク6内の改質水の貯水量が危険レベルにまで低下していると判断する。改質水タンク6内の水位が低水位以下となった場合には、一度発電運転を停止〔S12〕させてメンテナンスを施す必要がある。
【0073】
すなわち、手動でのメンテナンスが完了するまでは、発電運転を再開することができない。このように、メンテナンスが必要となる異常な事象が発生した場合に燃料電池装置の発電運転を停止する制御は、異常停止制御の一例であり、上記の例は、タンクに貯留された水の量が予め決められた所定水量未満となったことを原因とする異常停止制御、である。
【0074】
なお、上述の異常停止制御は、図4Aのフローチャートに示すように、発電運転の停止〔S12〕に伴って、異常停止制御実行の原因となった異常の情報(原因情報)を、たとえば表示装置50等を通じて、外部へ発報〔S13〕してもよい。
【0075】
また、本実施形態の燃料電池装置は、前述の原因情報の外部への発報する〔S13〕の後に、「補水用イオン交換樹脂が破過している」という情報を外部に向けて発報する破過発報制御〔S14〕を実行可能である。破過発報制御における異常情報(破過情報)の発報方法は、上述する異常停止制御における異常情報の発報方法と同様であっても、異なっていてもよい。
【0076】
以上、詳述したように、本実施形態の燃料電池装置、制御装置および制御プログラムは、イオン交換樹脂が破過した場合でも、直ちに運転を停止しないため、効率よく発電運転を行うことができる。
【0077】
また、この構成によって、本実施形態の燃料電池装置、制御装置および制御プログラムは、その補水用イオン交換樹脂のメンテナンスを、先に述べた、改質水の貯水量が危険レベル未満となった渇水異常が発生した場合に、当該異常を解消するためのメンテナンスと同じタイミングで行うことが可能になる。したがって、本実施形態の燃料電池装置は、メンテナンスの回数を低減することができる。
【0078】
また、本実施形態の燃料電池装置は、前述の、補水用イオン交換樹脂の破過を示すCPフラグの値の「0」から「1」への書き換え〔S18〕後は、そのCPフラグ「1」は、ユーザ等を含む管理者の命令指示なしに、リセットされない。すなわち、言い換えれば、制御装置30は、補水用イオン交換樹脂の破過を検知した場合、補水用イオン交換樹脂の破過を示すCPフラグを「1」に書き換える破過記録制御を実行するとともに、外部からの記録消去命令等を受信するまで、前記CPフラグを「1」のまま維持する記録保持制御を実行する。
【0079】
この構成により、本実施形態の燃料電池装置、制御装置および制御プログラムは、補水用イオン交換樹脂が破過した、または破過が疑われた際に、それを記憶して、前述のような改質水の貯水量が危険レベル未満となった渇水異常が発生した場合に、この渇水異常について外部に発せられる情報である信号,報告等に加えて、補水用イオン交換樹脂に異常が生じているという情報を、管理者等に確実に伝達することができる。
【0080】
前述の実施形態は、本開示の燃料電池装置における補水用イオン交換樹脂の破過制御の一例である。また、上記例では、制御装置30における破過検知制御に含まれる補水量確認制御に用いられる補水量積算装置の一例として、補水用イオン交換樹脂を流過した水量の積算・累積項目である、電磁開閉式止水弁Vの累積開弁時間Vを用いたが、たとえば、外部水である水道水の、第2のイオン交換樹脂容器64への時間あたり流入量を計測するフローメーター、あるいは、量水計等を備える場合、それらのセンサから得られる値、すなわち水量を積算して、累積水量の値を、補水用イオン交換樹脂の破過判定の指標または基準としてもよい。これらフローメーターおよび量水計等も、補水量積算装置の一例である。
【0081】
また、たとえば、前記の外部水である水道水の、第2のイオン交換樹脂容器64への流入量を、水補給流路Gに配設された止水弁Vが開弁された時間と、水補給流路G中を流れる外部水の水圧または流量等にもとづいて、演算で算出可能であれば、開弁された時間を積算した累積値を、第2のイオン交換樹脂容器64へ流入した累積水量として、補水用イオン交換樹脂の破過判定に利用してもよい。
【0082】
実施形態では、燃料電池装置において異常停止制御が実行される「補水用イオン交換樹脂の破過以外の他の異常」の一例として、改質水タンク6内の水位が低水位以下の渇水位となる場合を例示したが、本開示におけるメンテナンスが必要となる異常な事象・現象は、これに限られるものでない。
【0083】
また、前述の補水用イオン交換樹脂の破過の異常も、最終的にはメンテナンスが必要となるため、上記メンテナンスが必要となる異常に含まれるものである。しかしながら、本実施形態における燃料電池装置は、この「補水用イオン交換樹脂の破過の異常」の処理を、「メンテナンスが必要となる他の異常」と分けて、特例として例外的に処理するものである。
【0084】
また、本実施形態におけるフローチャートには示していないが、補水用イオン交換樹脂が充填された第2のイオン交換樹脂容器64の上部に溜まる脱イオン水の導電率が第3値を超える場合も、本開示におけるメンテナンスが必要となる異常な事象に該当する。
【0085】
その場合、制御装置30は、電気伝導率計の異常または補水電磁弁の異常が発生したと判断して、異常停止制御を実行する。第3値は、上述する第2値より大きい値であり、たとえば、100μs程度である。第2のイオン交換樹脂容器64の上部に溜まる脱イオン水の導電率が第3値を超えるか否かは、発電運転を実行している間、常時、判定していてもよい。
【0086】
なお、燃料電池装置の制御装置30および記憶装置40は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0087】
また、セルスタック装置および燃料電池モジュールは、SOFCに限定されず、たとえば固体高分子形燃料電池〔Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC)〕、リン酸形燃料電池〔Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC)〕、および、溶融炭酸塩形燃料電池〔Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC)〕などのような燃料電池で構成してもよい。
【0088】
さらに、本開示は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本開示の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0089】
1 燃料電池モジュール
6 改質水タンク(第1タンク)
61 第1改質水タンク
62 第2改質水タンク
63 第1イオン交換樹脂容器
64 第2イオン交換樹脂容器
30 制御装置
40 記憶装置
50 表示装置
100 燃料電池装置
【0090】
止水弁
G 水補給流路
WC 電気伝導率計
WL 水検知器(中水位センサ)
WL 水検知器(低水位センサ)
図1
図2
図3
図4A
図4B