IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 広州市賽普特医薬科技股▲フン▼有限公司の特許一覧

特許7007487出血性脳卒中の治療用医薬の製造における化合物の使用
<>
  • 特許-出血性脳卒中の治療用医薬の製造における化合物の使用 図1
  • 特許-出血性脳卒中の治療用医薬の製造における化合物の使用 図2
  • 特許-出血性脳卒中の治療用医薬の製造における化合物の使用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】出血性脳卒中の治療用医薬の製造における化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/56 20060101AFI20220117BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220117BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20220117BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220117BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220117BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20220117BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
A61K31/56
A61K31/565
A61K31/57
A61K31/573
A61P9/00
A61P9/14
A61P7/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020536200
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2018124707
(87)【国際公開番号】W WO2019129181
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】201711479490.8
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519303494
【氏名又は名称】広州市賽普特医薬科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangzhou Cellprotek Pharmaceutical Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】G401-415, 3 Lanyue Road, International Business Incubator, Guangzhou Science City, Guangzhou, 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】顔 光美
(72)【発明者】
【氏名】黄 奕俊
(72)【発明者】
【氏名】銀 巍
(72)【発明者】
【氏名】林 穗珍
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529657(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101683348(CN,A)
【文献】Steroids,2013年,Vol.78,p.996-1002
【文献】分子脳血管病,2013年,Vol.12, No.3,p.20-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
[式中、RはH、1個ないし5個の炭素原子を有するアルキル基又は-CH(CH)(CHCH(CHである]に示す化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩を含む、患者における出血性脳卒中の治療用医薬で、前記出血性脳卒中は脳内出血(ICH)である医薬。
【請求項2】
前記RはHである請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
は、-CHCHCH、-CH(CH、-CH(CHCH、-CH(CH)(CHCH(CHから選ばれる請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記脳内出血は高血圧性脳内出血である請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
前記脳内出血は脳血管奇形、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、虚血性脳卒中による脳梗塞、手術、又は血栓溶解もしくは抗凝固治療によって引き起こされる脳内出血である請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
前記脳内出血(ICH)がクモ膜下出血(SAH)を併発する、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
前記脳内出血(ICH)が手術によって引き起こされる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
前記手術は中枢神経系に直接的な影響を与える手術である請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
前記手術は脳動脈瘤クリッピング術、脳動脈瘤塞栓術又は脳腫瘍切除術である請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
前記患者はヒトである請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項11】
前記医薬はさらに他の治療薬を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項12】
前記脳内出血(ICH)は脳組織の血管の破裂又は破損により血液が血管から流出することである請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5α-アンドロスト-3β,5,6β-トリオール(5α-androst-3β,5,6β-triol、Triolと略記)及びその類似体の新規な医学的用途に関し、詳しく言えば、出血性脳卒中の治療におけるこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は急性脳血管疾患の一つであり、脳部血管の突然破裂又は血管の閉塞により血液が大脳に流入できないことで、脳組織が損傷される疾患で、虚血性脳卒中(ischemic cerebral stroke)、出血性脳卒中(hemorrhagic stroke)を含む。WHOの2014年の統計データによると、脳卒中を主とする脳血管疾患による致死率は全世界で二番目に高く、重度の身体障害と認知障害の最大の要因でもある。2015年に、全世界で脳血管疾患のため死亡したのは632万6100人で、このうち虚血性脳卒中で死亡したのは297万8000人で、出血性脳卒中又は他のタイプの脳卒中で死亡したのは334万8000人である。虚血性脳卒中とは、各種の原因で突然に発生する局所的な脳組織の血液供給障害により、脳組織に虚血低酸素性の病変と壊死が生じ、さらに臨床で対応の機能性神経障害が出現する疾患である。発生機序によって、虚血性脳卒中は主に血栓性脳梗塞、塞栓性脳梗塞、ラクナ脳梗塞、多発性脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)等のタイプを含む。
【0003】
虚血性脳卒中とは異なり、出血性脳卒中(脳出血、脳溢血とも呼ばれる)は、脳内の血管が破裂して、血液が大脳に流入することで、対応の神経系機能障害が生じ、臨床で関連の症状が現れる疾患である。虚血性脳卒中と比べ、出血性脳卒中は急性期で死亡率が高い。脳組織における出血の部位によって、出血性脳卒中は主に脳内出血(intracerebral hemorrhage、ICHと略記)、クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage、SAHと略記)の2つのタイプに分けられ、両者が併発する場合もある。ICHとは、脳実質内に発生する血管破裂が原因となる出血であり、SAHは各種の原因で軟膜とくも膜との間に発生し、且つ血液がクモ膜下腔に流入する出血の総称である。非外傷性ICHでは高血圧が最大の要因であり、次は脳血管奇形、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、手術、虚血性脳卒中による脳梗塞、血栓溶解、抗凝固治療等である。SAHの場合は、脳内動脈瘤が主な要因であり、次は脳血管奇形や高血圧性動脈硬化であり、動脈炎、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)、膠原病、血液疾患、抗凝固治療等にもSAHが見られる。SAHは脳卒中による突然死で最大の要因でもある。
【0004】
外科手術は中枢神経系に損傷を引き起こす一つの要因であり、これは中枢神経系(脳、脊索を含む)の外科手術による神経組織の直接的な損傷、及び手術中の血液供給、出血等の変化によって引き起こされる神経系の組織病理学的な改変であり、組織浮腫、出血、微小出血、梗塞、微小梗塞を含む。中枢神経系の損傷を引き起こす手術の非限定的な例としては、脳動脈瘤クリッピング術又は脳動脈瘤塞栓術、脳腫瘍切除術、中枢神経系に直接的な影響を与える他の手術が挙げられる。
【0005】
脳卒中のタイプによって、治療方法が異なり、逆の方法を採用する場合もある。虚血性脳卒中と出血性脳卒中を区別する方法は本分野で既知の事項であり、例えば、PCT/EP2015/078576、PCT/US2007/073272に関連の記載がある。効果的な治療方法がないため、予防は最良の対策とされる。したがって、出血性脳卒中の治療薬物を提供することは、臨床的に大きな意義がある。近年、神経画像学等の学際的な学科の発展により、急性期の脳卒中はより速やかに且つ正確に診断できるようになり、治療方法の選択と予後の評価には役立つが、脳卒中を完治できる治療方法はまだ見つからなかった。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様では、出血性脳卒中の治療用医薬の製造における式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩の使用が提供される。
式I
【化1】
式中、RはH、1個ないし5個の炭素原子を有するアルキル基、末端アルケニル基又は-CH(CH)(CHCH(CHである。
【0007】
一つの実施形態において、RはHであることが好ましく、即ち前記化合物は5α-アンドロスト-3β,5,6β-トリオール(5α-androst-3β,5,6β-triol、以下、Triolとも略記)。一つの実施形態において、Rは-CHCHCH、-CH(CH、-CH(CHCH、-CH(CH)(CHCH(CHから選ばれる。
【0008】
本発明の別の態様では、患者における出血性脳卒中の治療のために、有効量の式I的化合物、その重水素化物もしくは薬学的に許容されるその塩、又は式Iの化合物、その重水素化物もしくは薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を当該患者に投与することを含む方法が提供される。
式I
【化2】
式中、RはH、1個ないし5個の炭素原子を有するアルキル基、末端アルケニル基又は-CH(CH)(CHCH(CHである。
【0009】
一つの実施形態において、RはHであることが好ましい。一つの実施形態において、Rは-CHCHCH、-CH(CH、-CH(CHCH、-CH(CH)(CHCH(CHから選ばれる。
【0010】
本発明の別の態様では、患者における出血性脳卒中の治療のための、式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩の使用が提供される。
式I
【化3】
式中、RはH、1個ないし5個の炭素原子を有するアルキル基、末端アルケニル基又は-CH(CH)(CHCH(CHである。
【0011】
一つの実施形態において、RはHであることが好ましい。一つの実施形態において、Rは-CHCHCH、-CH(CH、-CH(CHCH、-CH(CH)(CHCH(CHから選ばれる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳組織の血管の破裂又は破損により血液が血管から流出することである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳内出血(ICH)であり、例えば、高血圧性脳内出血である。また、いくつかの実施形態において、前記脳内出血は脳血管奇形、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、虚血性脳卒中による脳梗塞、手術、又は血栓溶解もしくは抗凝固治療によって引き起こされる脳内出血である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中はクモ膜下出血(SAH)であり、例えば、脳内動脈瘤によって引き起こされるクモ膜下出血である。また、いくつかの実施形態において、前記クモ膜下出血は脳血管奇形、高血圧性動脈硬化、動脈炎、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)、膠原病、血液疾患、手術、又は抗凝固治療によって引き起こされるクモ膜下出血である。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳内出血(ICH)とクモ膜下出血(SAH)の併発であり、その非限定的な例としては、高血圧、脳血管奇形、虚血性脳卒中による脳梗塞、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、高血圧性動脈硬化、動脈炎、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)、膠原病、血液疾患、手術、脳内動脈瘤、又は血栓溶解もしくは抗凝固治療によって引き起こされる脳内出血とクモ膜下出血の併発が挙げられる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は手術によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、前記手術によって引き起こされる出血性脳卒中は手術によって引き起こされる脳内出血(ICH)、手術によって引き起こされるクモ膜下出血(SAH)、又は両者の併発である。いくつかの実施形態において、前記手術は、中枢神経系に直接的な影響を与える手術である。いくつかの実施形態において、前記手術は、脳動脈瘤クリッピング術、脳動脈瘤塞栓術又は脳腫瘍切除術である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記薬物はさらに他の治療薬を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記患者はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】Triolによる脳出血モデルのC57Bマウスの脳出血量の顕著な低減である。Aは脳出血後24時間における代表的な脳切片である。Bは24時間後の脳出血量である。各群はn=10であり、**はp<0.01である。
図2】TriolによるC57Bマウスの脳出血後の感覚神経の機能の顕著な改善である。Aは円形試験である。Bは粘着紙試験で、粘着紙に接触する時間である。Cは粘着紙をはがしたまでの時間である。*はp<0.05で、***はp<0.001であり、1群当たりn=12~23匹である。なお、conは正常、shamは偽手術、ICHは脳出血モデル、vehicleは溶媒である。
図3】TriolによるC57Bマウスの脳出血後の感覚-運動神経の機能の顕著な改善である。改良版ガルシア評価尺度(A-D)を、C57Bマウスの脳出血後24時間における感覚-運動神経の機能評価に用いる。Aはひげ触る試験である。Bは肢体対称性試験である。Cは前肢走行試験である。Dは全体的な神経機能評価である。1群当たりn=12~23匹である。*はp<0.05で、**はp<0.01で、***はp<0.001である。なお、conは正常、shamは偽手術、ICHは脳出血モデル、vehicleは溶媒である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で用いられる用語「組成物」とは、治療の目的で所定の動物対象に投与するのに適する製剤であり、少なくとも1種の医薬品有効成分、例えば、化合物を含む。任意選択で、前記組成物はさらに少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。
【0021】
用語「薬学的に許容される」は、その対象となる物質には、治療される疾患又は症状、投与経路を考慮すると、医療従事者が患者への当該物質の投与を避けるような性質がないという意味である。例えば、注射用の場合には、一般に、注射される物質が実質的に無菌であることが求められる。
【0022】
本明細書で、用語「治療有効量」、「有効量」はその対象となる物質と物質の量が、疾患の1種又は複数種の症状の予防、軽減又は改善、及び/又は治療を受ける対象の生存期間の延長に効果的であることを意味する。
【0023】
本明細書で用いられる用語「治療」は、疾患、症状の程度もしくは併発症を軽減し、又は疾患もしくは症状を解消するために、本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む。本明細書で用語「軽減」は、疾患による病的な状態が緩和され又は症状の重症度が下がる過程を説明するために用いられる。症状は解消されず軽減はしている場合もある。一つの実施形態において、本発明の医薬組成物を投与すると、疾患又は症状が解消される傾向にある。
【0024】
用語「手術によって引き起こされる出血性脳卒中」とは、手術によって引き起こされる脳内出血、クモ膜下出血、又は両者の併発である。
【0025】
式Iの化合物、その重水素化物、及び薬学的に許容されるその塩:
本発明の方法又は用途に適用される化合物は、式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
式I
【化4】
式中、RはH、1個ないし5個の炭素原子を有するアルキル基、末端アルケニル基又は-CH(CH)(CHCH(CHである。本明細書で、「本発明の化合物」とも呼ばれる。一つの実施形態において、RはHであり、即ち前記化合物は5α-アンドロスト-3β,5,6β-トリオール(5α-androst-3β,5,6β-triol、以下「Triol」とも略記)であり、構造式は式(II)に示される。Triolは急性の虚血性低酸素性脳損傷に効果的な神経保護剤であることが既に証明されている。
式II
【化5】
【0026】
一つの実施形態において、Rは-CHCHCHで、前記化合物は17-プロピレン-アンドロスト-3β,5α,6β-トリオールである。一つの実施形態において、Rは-CH(CHで、前記化合物は17-イソプロピル-アンドロスト-3β,5α,6β-トリオールである。一つの実施形態において、Rは-CH(CHCHで、前記化合物は17-ブチル-アンドロスト-3β,5α,6β-トリオールである。一つの実施形態において、Rは-CH(CH)(CHCH(CHで、前記化合物はコレスタン-3β,5α,6β-トリオールである。
【0027】
本発明の化合物は薬学的に許容される塩として製剤化されてよい。薬学的に許容される塩の形態の非限定的な例としては、一塩、二塩、三塩、四塩等が挙げられる。薬学的に許容される塩は、その投与量と濃度においては非毒性である。その生理作用の発揮が妨げられない限り、化合物の物理的性質を改変してこのような塩とすることで、薬理学的な用途に適する。物理的性質に対する有用な改変としては、経粘膜投与のために融点を低減すること、より高い濃度での薬物投与のために溶解度を上げることが挙げられる。
【0028】
薬学的に許容される塩は酸付加塩であってよく、例えば、硫酸塩、塩化物、塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、サイクラミン酸塩、キナ酸塩を含む塩である。薬学的に許容される塩は酸から誘導されてよく、前記酸としては、例えば、塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サイクラミン酸、フマル酸、キナ酸である。
【0029】
酸性官能基、例えば、カルボン酸又はフェノールが存在する場合に、薬学的に許容される塩は塩基付加塩であってよく、例えば、ベンジルペニシリンベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、tert-ブチルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミン、亜鉛を含む塩である。前記塩は適切な対応の塩基を使用して製造できる。
【0030】
薬学的に許容される塩は、標準的な技術を利用して製造できる。例えば、遊離塩基の形態の化合物を適切な溶媒、例えば、適切な酸を含む水溶液又は水-アルコール溶液に溶解して、溶液を蒸発して分離させる。別の例として、前記塩は有機溶媒で遊離塩基と酸を反応させて製造される。
【0031】
したがって、特定の化合物が塩基である場合に、本分野の任意の適切な方法で薬学的に許容される所望の塩を製造できる。例えば、無機酸又は有機酸で遊離塩基を処理する。前記無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、類似の酸が挙げられ、前記有機酸としては、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(pyranosidyl acid)(例えば、グルクロン酸、ガラクツロン酸)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、酒石酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、芳香族酸(例えば、安息香酸、ケイ皮酸)、スルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸又は類似体)が挙げられる。
【0032】
同様に、特定の化合物が酸である場合に、任意の適切な方法で薬学的に許容される所望の塩を製造できる。例えば、無機塩基又は有機塩基で遊離酸を処理する。前記無機塩基又は有機塩基としては、アミン(第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミン)、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物又は類似体が挙げられる。適切な塩の非限定的な例としては、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-リシン、L-アルギニン)、アンモニア、第一級アミン、第二級アミンと第三級アミン、環状アミン(例えば、ヒドロキシエチルピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン)から誘導された有機塩、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、リチウムを含む無機塩が挙げられる。
【0033】
化合物の薬学的に許容される塩は錯体の形態で存在し得る。前記錯体の例としては、8-クロロテオフィリン錯体(例えば、ジメンヒドリナート:ジフェンヒドラミンと8-クロロテオフィリンの1:1錯体)、シクロデキストリンを含む様々な錯体が挙げられる。
【0034】
本発明には、当該化合物が使用される薬学的に許容される重水素化合物又は他の非放射性元素によって置換された化合物も含まれる。重水素化とは、薬物活性分子の官能基における1つの、複数の、又は全ての水素を同位体の重水素に置き換えたものである。非毒性で且つ非放射性であり、炭素-水素結合と比べて安定性は約6~9倍高く、代謝サイトをブロッキングして薬物の半減期を引き延ばすことができるため、治療時の用量が低減されるとともに、薬物の薬理活性に影響はないことから、有益な修飾方法とされる。
【0035】
医薬組成物:
本発明の別の態様では、有効量の式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0036】
本発明で「医薬組成物」とは、式Iの化合物と、薬学的に許容される担体とを含む組成物である。前記化合物と薬学的に許容される担体は混合されて組成物に存在している。前記組成物は一般にヒトを対象とする治療に使用される。なお、それらは他の動物を対象とする同じ疾患又は類似の症状の治療にも使用される。本明細書で用語「対象」、「動物対象」、類似の用語とは、ヒト、及び非ヒト脊椎動物、例えば、哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類)、競技動物と産業動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、げっ歯類動物)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)である。
【0037】
剤形の種類は、用途、又は投与経路(例えば、経口、経皮、経粘膜、吸入又は注射(非経口))によって決定され得る。当該化合物が標的細胞に送達されるように剤形が決定される。他の決定要因は本分野で既知の事項であり、考慮すべき事項には、毒性、化合物又は組成物の効果発揮を遅延させる特定の剤形が含まれる。
【0038】
担体又は賦形剤は組成物を製造するために使用されてよい。前記担体又は賦形剤は化合物の投与に役立つものであってよい。担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種の糖(例えば、ラクトース、グルコース、スクロース)、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、生理学的に適合する溶媒が挙げられる。生理学的に適合する溶媒の例としては、注射用水(WFI)、無菌溶液、塩溶液、グルコースが挙げられる。
【0039】
組成物又は組成物の成分を投与するためには様々な経路を利用できる。これには静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、経粘膜、経直腸、経皮、吸入が含まれる。いくつかの実施形態において、注射剤又は凍結乾燥注射剤であることが好ましい。経口投与の場合には、例えば、化合物は通常の経口剤形(例えば、カプセル、錠剤)、液体製剤(例えば、シロップ、エリキシル剤、濃縮された滴剤)として製剤化されてよい。
【0040】
経口薬物製剤を得ることができる。例えば、組成物又はその成分を固形の賦形剤と組み合わせ、任意選択で研磨することにより得た混合物、(必要であれば)適切な補助剤を加えて顆粒に加工した混合物から、錠剤又は糖衣錠を製造する。適切な賦形剤としては、特に、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール等の糖類)、セルロース製剤(例えば、コーンスターチ、小麦デンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、タラカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP、ポビドン(povidone)ともいう)が挙げられる。必要であれば、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はそれらの塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))を加えてもよい。
【0041】
任意選択で、注射用(非経口投与)、例えば、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与及び/又は皮下投与用のものを使用できる。注射用の場合には、本発明の組成物又はその成分は無菌の液体溶液として調製される。生理学的に適合する緩衝液又は溶液、例えば、生理食塩水、ハンクス(Hank)溶液、リンガー(Ringer)溶液において調製されることが好ましい。また、組成物又はその成分は固体の形態として調製され、使用直前に再溶解又は懸濁されてよい。凍結乾燥粉末として製造されてもよい。
【0042】
経粘膜、局所又は経皮の方式で投与されてもよい。経粘膜、局所又は経皮投与の場合には、配合には浸透されるバリアに適する浸透剤が使用される。当該浸透剤は本分野で一般的に既知の事項である、例えば、経粘膜投与の場合には、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体が挙げられる。また、浸透を促すために洗剤も利用できる。経粘膜投与の場合には、例えば、鼻スプレー、坐剤(経直腸又は経膣)を利用できる。
【0043】
投与される各成分の有効量は標準的な手順によって決定され得る。考慮すべき要因には、前記化合物のIC50、前記化合物の生物学的半減期、投与対象の年齢、体積、体重及び対象における他の関連疾患が含まれる。これらの要因と他の要因の重要性は当業者には既知の事項である。一般には、治療対象における用量は約0.01mg/kg~50mg/kgであり、好ましくは0.lmg/kg~20mg/kgである。複数用量としてもよい。
【0044】
本発明の組成物又はその成分は同じ疾患の他の治療薬と組み合わせ使用されてもよい。組み合わせて使用される場合には、当該化合物と1種又は複数種の他の治療薬を異なる時刻で投与すること、又は当該化合物と1種又は複数種の他の治療薬を同時に使用することを含む。いくつかの実施形態において、本発明の1種又は複数種の化合物又は組み合わせて使用される他の治療薬の用量を変えることができる。例えば、当業者が知る方法で、単独で使用される化合物又は治療薬の用量を低減する。
【0045】
なお、組み合わせて使用される又は併用は、他の治療方法、薬物、医学的手順等と同時に使用されることを含み、当該他の治療方法又は手順は、本発明の組成物もしくはその成分の投与とは異なる時刻(例えば、短い期間内に(例えば、数時間(例えば、1、2、3、4~24時間))又は比較的長い期間内に(例えば、1~2日間、2~4日間、4~7日間、1~4週間))で、又は本発明の組成物もしくはその成分の投与と同じ時刻で投与されてよい。組み合わせて使用されることは、1回だけの又は頻度の高くない治療方法又は医学的手順(例えば、手術)と同時に使用され、且つ、当該他の治療方法又は手順前に又はその後に短い期間又は比較的長い期間内に本発明の組成物もしくはその成分が投与されることを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の組成物又はその成分と1種又は複数種の他の治療薬を送達するために用いられ、それらは同じ又は異なる投与経路によって送達される。
【0046】
投与経路を組み合わせて投与することは、同じ投与経路で本発明の組成物又はその成分と1種又は複数種の他の治療薬を、任意の製剤の形態で同時に送達することを含み、当該製剤は化学的に結合された2種の化合物が投与時にそれぞれの治療活性が保持されるような製剤を含む。一つの態様では、当該他の治療薬を使用する治療方法は本発明の組成物又はその成分と同時に用いられてよい。同時に投与するように組み合わせて使用することは、合剤(co-formulation)又は化学的に結合された化合物の製剤の投与、又は短い期間内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内ないし24時間以内)における2種又は複数種の独立な製剤形態の化合物の投与を含み、それらは同じ経路又は異なる経路で投与される。
【0047】
独立な製剤の同時投与は、一つの装置から送られて同時に投与されること、例えば、一つの吸入装置、注射器等を用いて投与すること、又は短い間隔で異なる装置でそれぞれ投与することを含む。同じ投与経路によって送られる本発明の化合物と1種又は複数種の他の薬物を使用する治療方法で、使用される合剤の形態は一つの装置から投与されるために材料から同時に調製したもの、異なる化合物が一つの製剤に組み合わされたもの、又は化合物が化学的に結合されてもそれぞれの生物学的活性が保持されるように修飾されたものを含む。このような化学的に結合された化合物は2つの活性成分を分離させるリンカーを含んでよく、当該リンカーは生体内で保持されるものであってもよいし、生体内で分解されるものであってもよい。
【0048】
治療方法と使用:
本発明の別の態様では、出血性脳卒中の治療用医薬の製造における式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩の使用が提供される。そして、本発明では、出血性脳卒中の治療のための、式Iの化合物、その重水素化物又は薬学的に許容されるその塩の使用が提供される。そして、本発明では、患者における出血性脳卒中の治療のために、有効量の式Iの化合物、その重水素化物もしくは薬学的に許容されるその塩、又は上記の医薬組成物を当該患者に投与することを含む方法が提供される。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳組織の血管の破裂又は破損により血液が血管から流出することである。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳内出血(ICH)であり、例えば、高血圧性脳内出血である。また、いくつかの実施形態において、前記脳内出血は脳血管奇形、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、虚血性脳卒中による脳梗塞、手術、又は血栓溶解もしくは抗凝固治療によって引き起こされる脳内出血である。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中はクモ膜下出血(SAH)であり、例えば、脳内動脈瘤によって引き起こされるクモ膜下出血である。また、いくつかの実施形態において、前記クモ膜下出血は脳血管奇形、高血圧性動脈硬化、動脈炎、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)、膠原病、血液疾患、手術、又は抗凝固治療によって引き起こされるクモ膜下出血である。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は脳内出血(ICH)とクモ膜下出血(SAH)の併発であり、その非限定的な例としては、高血圧、脳血管奇形、虚血性脳卒中による脳梗塞、脳アミロイド血管症、動脈瘤、もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)、脳動脈炎、原発性又は転移性腫瘍、高血圧性動脈硬化、動脈炎、ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)、膠原病、血液疾患、手術、脳内動脈瘤、又は血栓溶解もしくは抗凝固治療によって引き起こされる脳内出血とクモ膜下出血の併発が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は手術によって引き起こされる。いくつかの実施形態において、前記手術によって引き起こされる出血性脳卒中は手術によって引き起こされる脳内出血(ICH)、手術によって引き起こされるクモ膜下出血(SAH)、又は両者の併発。いくつかの実施形態において、前記手術は、中枢神経系に直接的な影響を与える手術である。いくつかの実施形態において、前記手術は、脳動脈瘤クリッピング術、脳動脈瘤塞栓術又は脳腫瘍切除術である。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記薬物はさらに他の治療薬を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記患者はヒトである。
【実施例
【0056】
材料と方法:
実験動物:清潔で健常なC57雄マウス112匹を用いる。マウスは8~10週齢で、体重は20~22gであり、北京維通利華実験動物技術有限公司が提供する。飼育条件は、温度が22~26℃で、湿度が50~60%である。ケージ分けして、標準飼料と純水を給餌し、適応するように1週間飼育する。
【0057】
試薬と装置:主な試薬と装置は以下のとおりである。コラゲナーゼタイプVII(米Sigma社提供)、Triol(広州市賽普特医薬科技股フン有限公司提供)、ヘモグロビン検出キット(Drabkin試薬:炭酸水素ナトリウム1.0g、水素化カリウム0.05g、フェリシアン化カリウム0.2gに蒸留水を加え1000mlとし、4℃で保管する)、エンフルラン、抱水クロラール、ボーンワックス、マイクロシリンジ、TESバッファー、塩化カルシウム、灌流液、使い捨て注射器、凍結保存用チューブ等。
【0058】
脳出血モデルの作成と投与:脳出血モデルの作成:ラットの体重を秤量し、5%エンフルランで誘導して麻酔し、2%エンフルランに70%NOと30%Oを混合したもので麻酔を維持する。腹臥位で脳定位固定装置に固定し、対象部位を消毒し、皮膚を切り開き、頭蓋骨を露出して穴を開け、マイクロシリンジで徐々に0.35UのコラゲナーゼタイプVII0.3μlを注射し、5分間保持して徐々に針先部から5分間で引き出し、頭蓋骨に開けた穴を骨接着剤で覆い、皮膚を縫合し、通常の手順で消毒する。偽手術群では同様の方法で針をさし、注射はしない。モデル作成1時間後に、60mg/kgで溶媒又はTriolを腹腔内注射する。
【0059】
動物の群分け:乱数発生によってC57マウスを、正常対照群(n=12)、偽手術群(n=12)、脳出血群(n=26)、脳出血+モデル作成1時間後溶媒腹腔内注射群(n=26)、脳出血+モデル作成1時間後Triol腹腔内注射群(n=26)の5群に分ける。
【0060】
神経行動学による評価:脳出血モデル作成24時間後に、神経機能の測定を行う。
【0061】
脳出血量測定:モデル作成24時間後に、抱水クロラールを腹腔内注射して麻酔し、心臓よりPBSを灌流して洗い流し、直ちに脳を取り出し、マウスの出血側大脳を分離し、生理食塩水で洗い流して表面の血液を除き、ホモジナイズし、上清液を得て保管し、ヘモグロビン検出キットで脳内のヘモグロビン含有量を測定する。
【0062】
結果:
Triolによる脳出血モデルのC57Bマウスの脳出血量の顕著な低減:
コラゲナーゼの脳内定位注射によりC57Bマウスに脳出血を誘発して1時間後に、各処理を実施する。24時間後に、Triolによって、コラゲナーゼが注射された脳半球で出血面積(体積)が明らかに減少することが確認された(図1のA)。ヘモグロビン含有量を測定したところ、Triolで治療した出血脳半球は、ヘモグロビン含有量、即ち出血量が脳出血モデル群と比べて顕著に低減していた(p<0.01)(図1のB)。上記の結果から、Triolは脳出血を効果的に軽減できることが示される。
【0063】
TriolによるC57Bマウス脳出血後の感覚神経の機能の顕著な改善:
コラゲナーゼを注射し脳出血を誘発して24時間後に、C57Bマウスの感覚機能の各項目はいずれも大幅に低下している。Triolを投与した後、マウスが円の中心から出発し円の範囲を出るまでの時間は短くなる傾向にあることから、Triolによって脳出血マウスに方向感覚が回復されたことが示される(図2のA)。粘着紙試験で、Triolの投与により脳出血マウスの粘着紙に接触する時間が顕著に短縮され(p<0.05)、粘着紙をはがしたまでの時間も顕著に短縮され(p<0.001)、脳出血により損なわれたマウスの体表の触覚が顕著に改善される(図2のBとC)。
【0064】
TriolによるC57Bマウス脳出血後の感覚-運動神経の機能の顕著な改善:
コラゲナーゼを注射し脳出血を誘発して24時間後に、C57Bマウスの感覚-運動機能の各項目は明らかに低下している。Triolを投与した後、マウスのひげを触る行動と回避行動が明らかに回復されることから、Triolによって、脳出血マウスに精密な触覚反応運動が明らかに改善されたことが示される(p<0.001)(図3のA)。Triolを投与した後、マウスの肢体の対称な運動が明らかに改善され(p<0.01)(図3のB)、前肢を使う走行も明らかに改善される(p<0.05)(図3のC)ことから、Triolによって、脳出血により損なわれたマウスの固有感覚及び運動制御機能が回復されたことが示される。全体的な評価では、Triolが脳出血マウスの神経機能スコアを顕著に改善している(p<0.001)(図3のD)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】国際特許第PCT/EP2015/078576号
【文献】国際特許第PCT/US2007/073272号
図1
図2
図3