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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20220117BHJP
   H01H 50/12 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H01H50/54 S
H01H50/12 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021040646
(22)【出願日】2021-03-12
(62)【分割の表示】P 2016216653の分割
【原出願日】2016-11-04
(65)【公開番号】P2021089904
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】窪野 和男
(72)【発明者】
【氏名】村越 拓治
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191857(JP,A)
【文献】特表2012-501059(JP,A)
【文献】特開2016-031802(JP,A)
【文献】特開2002-334644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 50/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定端子と、
第1貫通孔が形成された可動片を含む可動ばねと、
第2貫通孔を有する導電板と、
前記固定接点と接離する頭部と、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通される脚部とを有する可動接点とを備え、
前記導電板は、前記頭部と前記可動ばねとの間に配置され、
前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の径方向において前記頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出し、
前記導電板は、前記可動接点が配置される第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを備え、前記第2領域は前記固定接点から離れる方向に折り曲げられていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記導電板は、前記第1領域に隣接する第3領域を備え、前記第3領域は前記固定接点から離れる方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、通電容量を増やすために、可動ばね及び導電補助部材に可動接点を固定する電磁継電器が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の導電板を重ね合わせて通電容量を増やした電磁継電器が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-191857号明細書
【文献】特開2015-18763号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通電容量を増やす場合、接点に印加される電流が増加し、接点で発生する熱も増加するため、接点のサイズを大きくする必要がある。しかし、可動ばね又は導電板の大きさによっては、接点のサイズを大きくすると可動ばね又は導電板から接点がはみ出してしまう。可動ばね又は導電板から接点がはみ出すと、接点から可動ばね又は導電板に電流や熱を効率的に伝えられなくなるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、導電板に電流や熱を効率的に伝えることができ、且つ通電容量を増やすことができる電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、明細書に開示された電磁継電器は、固定接点を有する固定端子と、第1貫通孔が形成された可動片を含む可動ばねと、第2貫通孔を有する導電板と、前記固定接点と接離する頭部と、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔に挿通される脚部とを有する可動接点とを備え、前記導電板は、前記頭部と前記可動ばねとの間に配置され、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔の径方向において前記頭部は前記導電板の外縁からはみ出さず、前記可動片の外縁からはみ出し、前記導電板は、前記可動接点が配置される第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを備え、前記第2領域は前記固定接点から離れる方向に折り曲げられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電磁継電器によれば、導電板に電流や熱を効率的に伝えることができ、且つ通電容量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る電磁継電器(以下、リレーという)1の分解図である。
図2】リレー1の斜視図である。
図3】接極子16の側面図である。
図4】(A)は、可動ばね18の正面図である。(B)は、可動ばね18の側面図である。(C)は、可動接点36a及び36bが取り付けられた可動ばね18を示す図である。
図5】(A)は、導電板40の正面図である。(B)は、可動接点36a及び36bの構成図である。(C)は、可動接点36aが可動ばね18及び導電板40に取り付けられた状態を示す部分拡大図である。
図6】(A)は、固定端子22a及び22bの正面図である。(B)は、固定端子22a及び22bの側面図である。
図7】(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図である。(B)は、固定端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図である。(C)は、固定端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。
図8】(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図である。(B)は固定端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図である。(C)は固定端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。
図9】(A)は、可動ばね18及び導電板40の第1変形例を示す図である。(B)は、導電板40の第2変形例を示す図である。
図10】(A)は、導電板40の第3変形例を示す図である。(B)は図10(A)の導電板40の側面図である。(C)は、導電板40の第4変形例を示す図である。(D)は図10(C)の導電板40の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る電磁継電器(以下、リレーという)の分解図である。図2は、リレーの斜視図である。
【0011】
本実施の形態に係るリレー1は、高電圧対応リレーであり、例えば、電気自動車のバッテリープリチャージ(メインリレー接点への突入電流防止)用リレーとして使用される。
【0012】
リレー1は、高電圧の負荷遮断時に、固定接点と可動接点との間に発生するアークを確実に消弧する必要がある。また、一般的な直流高電圧対応リレーでは負荷側の接続に極性の指定があるが、バッテリープリチャージ用リレーであるリレー1では、バッテリー充電時及び放電時に電流方向が互いに逆転するため、負荷側の接続の極性を指定しないことが要求される。従って、リレー1は、可動接点と固定接点との間に流れる電流の向きにかかわらず、アークを消弧する必要がある。尚、リレー1の用途は、電気自動車に限定されるものではなく、様々な装置や設備に利用することができる。
【0013】
図1に示すように、リレー1は、ケース10、磁気消弧用の永久磁石12、ヒンジばね14、接極子16、可動ばね18、導電板40、絶縁カバー20、固定端子22(22a,22b)、鉄芯24、スプール26、ベース28、コイル30、一対のコイル端子32(32a,32b)、継鉄34及び固定板44を備えている。一対のコイル端子32は、鉄芯24、スプール26及びコイル30を有する電磁石装置31を励磁するための電流を供給する。
【0014】
絶縁カバー20の前端には磁石ホルダー20fが形成されており、磁石ホルダー20f内に永久磁石12が保持される。磁石ホルダー20f及び永久磁石12は、図2に示すように、固定端子22a,22bの間に配置される。なお、図2ではケース10を図示省略している。また、例えば、永久磁石12のN極を有する面は固定端子22b側に向けられており、永久磁石12のS極を有する面は固定端子22a側に向けられている。尚、N極とS極の位置が逆であってもよい。また、交流高電圧の負荷遮断時には永久磁石12は必要ではないが、永久磁石12を設けることによりアーク消弧を速やかに行うことができる。
【0015】
図1に戻り、ヒンジばね14は、側面視で逆L字状に形成されており、接極子16の垂下部16bをベース28に向けて下方向に付勢する水平部14aと、継鉄34の垂直部34bに固定される垂下部14bとを備えている。
【0016】
接極子16は、図3に示すように側面視で「く」の字の形状の磁性体であり、鉄芯24に吸着される平板部16aと、屈曲部16cを介して平板部16aから下方に延びる垂下部16bとを備えている。さらに、図1および図2に示すように、屈曲部16cの中央には、ヒンジばね14が突出する貫通孔16dが形成されている。また、平板部16aには、継鉄34の突起部34cが嵌る切り欠き部16eが形成されている。垂下部16bには、可動ばね18を垂下部16bにかしめ固定するための突起16fが設けられている(図3参照)。
【0017】
接極子16は、継鉄34の突起部34cに嵌められた切り欠き部16eを支点として回転運動をする。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着する。このとき、ヒンジばね14の水平部14aは垂下部16bと接触し、垂下部16bにより上方向に押される。コイル30の電流が切断されると、ヒンジばね14の水平部14aの復元力により垂下部16bは押し下げられる。これにより、平板部16aは鉄芯24から引き離される。ここで、鉄芯24又は絶縁カバー20に対向する平板部16aの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。また、継鉄34又は絶縁カバー20に対向する垂下部16bの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。
【0018】
図4(A)は、可動ばね18の正面図であり、図4(B)は、可動ばね18の側面図である。図4(C)は、可動接点36a及び36bが取り付けられた可動ばね18を示す図である。図5(A)は、導電板40の正面図である。図5(B)は、可動接点36a及び36bの構成図である。図5(C)は、可動接点36aが可動ばね18及び導電板40に取り付けられた状態を示す部分拡大図である。
【0019】
図4(A)に示すように、可動ばね18は、正面視でコの字形状の導電性の板ばねであり、例えば、銅合金で構成されている。可動ばね18は、一対の可動片、即ち第1可動片18a及び第2可動片18bと、第1可動片18a及び第2可動片18bの上端を連結する連結部18cとを備えている。
【0020】
第1可動片18a及び第2可動片18bは、長手方向における中央より下端に近い位置18da及び位置18dbでそれぞれ折曲加工されている。ここで、第1可動片18aの位置18daより連結部18c側の部分を上部18a1とし、第1可動片18aの位置18daより先端側の部分を下部18a2とする。同様に、第2可動片18bの位置18dbより連結部18c側の部分を上部18b1とし、第2可動片18bの位置18dbより先端側の部分を下部18b2とする。下部18a2及び下部18b2は可動接点36a及び36bをかしめ固定する平坦部として機能する。
【0021】
第1可動片18aの下部18a2には、可動接点36aをかしめ固定するための貫通孔19aが設けられている。第2可動片18bの下部18b2には、可動接点36bをかしめ固定するための貫通孔19bが設けられている。貫通孔19a及び19bは、第1貫通孔として機能する。第1可動片18a及び第2可動片18bは上部18a1及び上部18b1に対して、可動接点36a及び36bがそれぞれ接触する固定接点38a及び38bから離れる方向にそれぞれ折り曲げられている。
【0022】
連結部18cには、垂下部16bの突起16fに嵌められる貫通孔18eが形成されている。突起16fを貫通孔18eに嵌めてかしめることで、可動ばね18は垂下部16bの第1面に固定される。
【0023】
図4(C)に示すように、可動接点36a及び36bが可動ばね18に取り付けられると、可動接点36aが下部18a2からはみ出し、可動接点36bが下部18b2からはみ出す。この場合、可動接点36a及び36bから可動ばね18に電流や熱を効率的に伝えられなくなる。
【0024】
図5(A)に示す導電板40は、正面視でコの字形状であり、例えば、銅で構成されている。導電板40は、可動ばね18よりも高い導電率及び高い熱伝導率を有する。導電板40は、一対の脚片、即ち第1脚片40a及び第2脚片40bと、第1脚片40a及び第2脚片40bの上端を連結する連結部40cとを備えている。第1脚片40a及び第2脚片40bの下端には、可動接点36a及び36bを第1可動片18a及び第2可動片18bとともにかしめ固定するための貫通孔42a及び42bがそれぞれ設けられている。貫通孔42a及び42bは可動接点36a及び36bの脚部362が挿通する第2貫通孔として機能する。
【0025】
図5(B)に示すように、可動接点36a及び36bはリベット状であり、固定接点38a及び38bと接触する頭部361と、可動ばね18の貫通孔19a及び19b並びに導電板40の貫通孔42a及び42bに挿入される脚部362とを備えている。可動接点36a及び36bは、貫通孔19a及び19bの位置と貫通孔42a及び42bの位置とを合わせた状態で導電板40及び可動ばね18にかしめ固定される。可動接点36a及び36bが導電板40及び可動ばね18にかしめ固定されると、頭部361の接触面363は導電板40に接触する。
【0026】
図5(C)に示すように、可動接点36aを導電板40及び可動ばね18にかしめ固定する際、可動接点36aの頭部361はその径方向において可動ばね18の下部18a2の外縁からはみ出すが、導電板40の第1脚片40aの外縁からははみ出さないように固定される。同様に、可動接点36bを導電板40及び可動ばね18にかしめ固定する際、可動接点36bの頭部361はその径方向において導電板40の第2脚片40bの外縁からはみ出さないように固定される。また、可動接点36a及び36bを導電板40及び可動ばね18にかしめ固定する際、導電板40は、可動ばね18と接触面363との間に配置される。即ち、頭部361の接触面363は導電板40に接触する。このように、本実施の形態では、接触面363の全体が導電板40と接触するように導電板40を可動ばね18と接触面363との間に配置するので、可動接点36a及び36bから導電板40に電流や熱を効率的に伝えることができ、リレーの通電容量を増大させることができる。
【0027】
図6(A)は、固定端子22a及び22bの正面図であり、図6(B)は、固定端子22a及び22bの側面図である。
【0028】
固定端子22a及び22bは、ベース28に設けられた不図示の貫通孔に上方から圧入され、ベース28に固定される。固定端子22a及び22bは、側面視でクランク状に曲げられている。固定端子22a及び22bの各々は、上部22e、傾斜部22f及び下部22dを備えている。上部22eは傾斜部22fを介して下部22dに連結され、上部22e、傾斜部22f及び下部22dは一体形成されている。下部22dは不図示の電源等に接続され、通電性能を向上するためにブレード端子になっている。ブレード端子とすることで、例えば二股端子と比べて基板への接触面積を増やせるので通電性能が向上する。上部22eは下部22dよりも可動ばね18、導電板40から離れるように曲げられている。上部22eの上端22gは、上部22eの他の部分よりも可動ばね18、導電板40から離れるように曲げられている。固定端子22a及び22bの上部22eには、固定接点38a及び38bがそれぞれ設けられている。
【0029】
図1に戻り、絶縁カバー20は樹脂で構成されており、絶縁カバー20の天井部20eには、鉄芯24の頭部24aを露出する貫通孔20aが形成されている。絶縁カバー20の底部には、絶縁カバー20をベース28に固定するために突起状の固定部20b及び20cが形成されている。固定部20bはベース28の一端に係合し、固定部20cはベース28の不図示の孔に挿入される。また、樹脂で構成されたバックストップ20dが絶縁カバー20と一体形成されている。ストッパーとしてのバックストップ20dは、コイル30に電流が流れず電磁石装置31がオフの場合に可動ばね18と当接する。バックストップ20dにより、可動ばね18や継鉄34などの金属部品同士の衝突音の発生を抑制でき、リレー1の作動音を低減できる。
【0030】
鉄芯24は、スプール26の頭部26bに形成された貫通孔26aに挿入される。スプール26はベース28と一体形成され、コイル30が巻線されている。鉄芯24、スプール26及びコイル30は、電磁石装置31を構成する。電磁石装置31は電流のオン/オフに応じて接極子16の平板部16aを引きつける。これにより、固定端子22a及び22bに対する可動ばね18の開閉動作が実行される。ベース28には、一対のコイル端子32が圧入され、コイル端子32にはそれぞれコイル30の巻線が絡げられる。
【0031】
継鉄34は側面視でL字形の導電性の部材であり、ベース28の裏面に固定される水平部34aと、水平部34aに対して垂直に立設される垂直部34bとを備えている。垂直部34bは、ベース28の下方からベース28及び絶縁カバー20の不図示の貫通孔に圧入される。これにより、図2に示すように、垂直部34bの上部の両端に設けられた突起部34cが絶縁カバー20の天井部20eから突出する。固定板44は、水平部34aに固定するためのフック部44aを有し、ベース28の裏面に固定される。
【0032】
図7(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、固定接点と可動接点とが離れている状態を図示している。図7(B)は固定端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、図7(C)は固定端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。図7(A)~図7(C)において、電流の流れる向きは矢印で示されている。
【0033】
図7(A)では、固定端子22a及び22bのいずれか一方が不図示の電源側に接続され、他方が不図示の負荷側に接続されている。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着し、突起部34cを支点として接極子16が回動する。接極子16の回動に伴って垂下部16b及び可動ばね18が固定端子22側に向けて回転し、可動接点36a及び36bはそれぞれ対応する固定接点38a及び38bに接触する。可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触している状態で、固定端子22bを正極側として電圧が印加されると、電流は、図7(A)に示すように、固定端子22b、固定接点38b、可動接点36b、導電板40、可動ばね18、可動接点36a、固定接点38a、固定端子22aの順に流れる。尚、可動接点36bと可動接点36aとの間では、電流は導電板40及び可動ばね18の両方に流れる。コイル30に流れる電流が切断されると、ヒンジばね14の復元力によって接極子16が図7(B)に示される反時計方向に回動する。接極子16の回動によって、可動接点36a及び36bはそれぞれ固定接点38a及び38bから離れ始めるが、固定接点38a及び38bと可動接点36a及び36bとの間にアークが発生するため、可動接点36a及び固定接点38a間を流れる電流並びに可動接点36b及び固定接点38b間を流れる電流は完全には遮断されない。
【0034】
図7(A)~(C)に図示するリレー1では、図7(B)に示すように磁界の向きは固定端子22aから固定端子22bに向かう。従って、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークは、ローレンツ力により図7(B)の矢印Aで示すようにベース28に向かう下方向の空間に引き伸ばされて消弧する。一方、可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークは、ローレンツ力により図7(C)の矢印Bで示すようにベース28から離れる上方向の空間に引き伸ばされて消弧する。
【0035】
図8(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、図8(B)は固定端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、図8(C)は固定端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。なお、電流の流れる向きは、図7(A)~図7(C)の例とは逆になっている。
【0036】
図8(A)では、図7(A)と同様に、固定端子22a及び22bのいずれか一方が電源側に接続され、他方が負荷側に接続されている。可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触している状態で、固定端子22aを正極側として電圧が印加されると、電流は、図8(A)に示すように、固定端子22a、固定接点38a、可動接点36a、導電板40、可動ばね18、可動接点36b、固定接点38b、固定端子22bの順に流れる。そして、コイル30に流れる電流が切断されると、ヒンジばね14の復元力によって接極子16が図8(B)に示される反時計方向に回動し、可動接点36a及び36bはそれぞれ固定接点38a及び38bから離れる。
【0037】
図8(A)~(C)に図示するリレー1でも、磁界の向きは固定端子22aから固定端子22bに向かう。従って、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークは、ローレンツ力により図8(B)の矢印Aで示すように上方向の空間に引き伸ばされて消弧され、可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークは、ローレンツ力により図8(C)の矢印Bで示すようにベース28に向かう下方向の空間に引き伸ばされて消弧される。
【0038】
従って、本実施の形態のリレー1によれば、可動接点36a及び固定接点38a間並びに可動接点36b及び固定接点38b間を流れる電流の向きに関わらず、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークと可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークとを同時に、且つそれぞれ反対方向の空間にそれぞれ引き伸ばして消弧することができる。
【0039】
図9(A)は、可動ばね18及び導電板40の第1変形例を示す図である。図9(B)は、導電板40の第2変形例を示す図である。
【0040】
図9(A)に示すように、中央に矩形の貫通孔51が形成された金属板を折り曲げることによって可動ばね18及び導電板40を一体形成してもよい。この場合、貫通孔42a及び19a並びに貫通孔42b及び19bは、折り曲げて重ね合わされた端部50a及び50bにそれぞれ形成される。また、貫通孔42a及び19a並びに貫通孔42b及び19bは、プレス加工にて一括形成される。可動ばね18及び導電板40を1枚の導電板で形成することで、部品数を削減でき、組立工程の効率化が可能になる。また、貫通孔42a及び19a並びに貫通孔42b及び19bは、折り曲げて重ね合わされた端部50a及び50bに一括形成されるので、貫通孔42a及び19aの位置ズレ並びに貫通孔42b及び19bの位置ズレが回避され、組立工程の効率化が可能になる。
【0041】
図9(B)に示すように、中央に矩形の貫通孔52が形成された薄い金属板を折り曲げることにより2枚重ねの導電板40を形成してもよい。1枚の厚い導電板に比べて、剛性の上昇を抑えて、通電容量を向上させることができる。
【0042】
図10(A)は、導電板40の第3変形例を示す図である。図10(B)は図10(A)の導電板40の側面図である。図10(C)は、導電板40の第4変形例を示す図である。図10(D)は図10(C)の導電板40の側面図である。
【0043】
図10(A)及び図10(B)に示すように、導電板40の第1脚片40a及び第2脚片40bを、かしめ固定された可動接点36a及び36bが上方にはみ出ない位置41a及び位置41bで折曲加工してもよい。ここで、第1脚片40aの位置41aより下を下部40a2とし、位置41aより上を上部40a1とする。同様に、第2脚片40bの位置41bより下を下部40b2とし、位置41bより上を上部40b1とする。下部40a2及び40b2は、第1領域として機能し、上部40a1及び40b1は、第2領域として機能する。
【0044】
上部40a1、上部40b1及び連結部40cは、可動接点36a及び36bがそれぞれ接触する固定接点38a及び38bから離れる方向に折り曲げられている。この場合、固定端子22a及び22bと導電板40との間の間隔が固定端子22a及び22bから上方に向かって徐々に広がるので、アークを上方向の空間に移動させながら効率的に消弧することができる。
【0045】
さらに、図10(C)及び図10(D)に示すように、導電板40の第1脚片40a及び第2脚片40bを、可動接点36a及び36bが下方にはみ出ない位置43a及び位置43bでそれぞれ折曲加工してもよい。ここで、下部40a2は位置41aと位置43aとの間の部分であり、下部40b2は位置41bと位置43bとの間の部分であり、第1脚片40aの位置43aより下を最下部40a3とし、第2脚片40bの位置43bより下を最下部40b3とする。
【0046】
最下部40a3及び40b3は、それぞれ固定接点38a及び38bから離れる方向に折り曲げられている。この場合、固定端子22a及び22bと導電板40との間の間隔が固定端子22a及び22bから下方に向かって徐々に広がるので、最下部40a3及び40b3によりアークを下方向の空間に移動させながら効率的に消弧することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態では、導電板40は、頭部361と可動ばね18との間に配置され、可動ばね18の貫通孔19a及び19b並びに導電板40の貫通孔42a及び42bの径方向において、頭部361は下部18a2及び18b2の外縁からはみ出しても、導電板40の外縁からはみ出さない。従って、頭部361の全体が接触する導電板40を可動ばね18の下部18a2及び下部18b2と頭部361との間に配置するので、可動接点36a及び36bから導電板40に電流や熱を効率的に伝えることができ、通電容量を増大させることができる。また、かしめ固定された脚部362は貫通孔19a及び19bの径方向において下部18a2及び18b2の外縁からはみ出さない。
【0048】
また、通電容量を増大させる導電板40が設けられているので、可動ばね18の通電容量を考慮することなくばね負荷設計の自由度が向上する。さらに、可動ばね18のサイズを変更できないような構造上の制約がある場合でも、導電板40を設けることで通電容量を向上させることができる。さらに、導電板40を熱伝導率の高い材料で構成することで、アークの熱を効率的に冷却することができ、可動接点36a及び36bの開閉性能を向上させることができる。
【0049】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 電磁継電器
10 ケース
12 永久磁石
14 ヒンジばね
16 接極子
18 可動ばね
19a,19b,42a,42b 貫通孔
20 絶縁カバー
22,22a,22b 固定端子
24 鉄芯
26 スプール
28 ベース
30 コイル
32,32a,32b コイル端子
34 継鉄
36a,36b 可動接点
38a,38b 固定接点
40 導電板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10