(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/06 20060101AFI20220117BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F16H25/06 Z
F16H1/16 Z
(21)【出願番号】P 2021513735
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 KR2019004505
(87)【国際公開番号】W WO2019216561
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0053591
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520440364
【氏名又は名称】パラロイド ギア カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソル,イン ファン
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-515064(JP,A)
【文献】特開昭59-164449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/06
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーム軸;
前記ウォーム軸に設けられ、前記ウォーム軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に大きくなるように形成される縮径部を有し、前記縮径部に螺旋状のウォーム歯が形成されたチャング状ワーム;
前記ウォーム軸と間隔を置いて並んで配置される第1伝動軸;及び
前記第1伝動軸に設けられ、外周面に前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な歯形を有する第1ギア歯が螺旋状に連続して形成されて、前記チャング状ワームのウォームギアと噛み合って回転する第1伝動ギアを含む動力伝達装置。
【請求項2】
前記チャング状ワームの各ウォーム歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有する請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1伝動ギアの外周は、前記縮径部の断面形状に対応して前記第1伝動軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状を有する請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記第1伝動ギアの各第1ギア歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ウォーム軸を挟んで前記第1伝動軸と対向して並んで配置される第2伝動軸;及び
前記第2伝動軸に設けられ、外周面に前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な歯形を有する第2ギア歯が螺旋状に連続して形成されて、前記チャング状ワームのウォームギアと噛み合って回転する第2伝動ギアを更に含む請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記第2伝動ギアの外周は、前記縮径部の断面形状に対応して前記第2伝動軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状を有する請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第2伝動ギアの各第2ギア歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する請求項6に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記ウォーム軸を挟んで前記第1伝動軸と直交して対向配置される第3伝動軸;及び
前記第3伝動軸に設けられ、外周面に円周方向に沿って間隔を置いて前記チャング状ワームのウォーム歯と噛み合う複数の第3ギア歯が形成された第3伝動ギアを更に含む請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記第3伝動ギアの複数の第3ギア歯は、それぞれ同じピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する請求項8に記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝達装置に関するものであり、より詳細には、チャング(杖鼓)状ワームのワームギアと噛み合う新しい形態のギアを用いて、動力を伝えることができる動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置は回転運動を直線運動に、逆に直線運動を回転運動に伝達するか、または回転運動だけを伝達すると共に、回転速度とトルクを変換させるギア列に大別される。
【0003】
通常の場合、動力伝達装置の動力伝達システムは糸巻きに巻いた糸を張りつめた状態で巻き戻す際に、糸の先端が描く軌跡であるインボリュート(involute)曲線を用いた歯形を有するギアが主に使われている。
【0004】
このようなギアはその歯形が円周上に形成され、2つまたはそれ以上の軸の間に円周上に形成されたギアが噛み合って回転や動力を伝達する装置である。ギアを用いる場合は、動力や回転を確かに伝達でき、正確な角速度比で伝達することができる。
【0005】
このようなギアの種類は平ギア、はすばギア、かさギア、ワームとウォームギヤなどがある。
【0006】
特に、ウォームギヤは一般ギアに比べてはるかに大きなギア比を有しており、動力の入力方向と出力方向が互いに直角な特殊ギアである。
【0007】
ワームとウォームギアで構成された動力伝達装置の場合、ワームは棒状であるに対して、ワーム歯と噛み合って接触するウォームギアは円盤形状を有しており、ウォームギヤの歯は円周に沿って間隔を置いて形成される。従って、ワームとウォームギアの相互接触面積が小さくなる、即ち、噛合率が低下するという問題がある。
【0008】
このような問題点を改善するためには、動力伝達装置としてチャング状のワーム、例えばヒンドリーワーム(Hindley worm)が知られている。
【0009】
チャング状ワームは外周面がチャング状に湾曲され、湾曲領域には螺旋状の溝、例えば螺旋状の歯が形成されたものであり、これと噛み合うウォームギアは歯数が多く過ぎるため、隣り合う歯の間の圧力を支持する面積が通常のワーム及びウォームギヤに比べて広がる。従って、ギアの摩耗を減少させると共に、大きな動力を伝えることができる特徴がある。
【0010】
ところで、従来の動力伝達装置はこのようなチャング状ワームとウォームギアに限定して使用しており、チャング状ワームの特徴を十分に生かして様々な形態のギアと一緒に使用する試みがなかった。
【0011】
従って、本出願人はチャング状ワームにチャング状ワームと噛み合って回転することができる新しい形態のギアを開発して、動力を伝えることができる動力伝達装置を発明するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前述した問題点を解決するためになされたものであり、ギアの噛合率を向上させ、ギアの摩耗を減らし、動力伝達効率を向上させることができる動力伝達装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的はウォーム軸;前記ウォーム軸に設けられ、前記ウォーム軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に大きくなるように形成される縮径部を有し、前記縮径部に螺旋状のウォーム歯が形成されたチャング状ワーム;前記ウォーム軸と間隔を置いて並んで配置される第1伝動軸;及び前記第1伝動軸に設けられ、外周面に前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な歯形を有する第1ギア歯が螺旋状に連続して形成されて、前記チャング状ワームのウォームギアと噛み合って回転する第1伝動ギアを含む動力伝達装置によって達成することができる。
【0014】
ここで、前記チャング状ワームの各ウォーム歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有することができる。
【0015】
前記第1伝動ギアの外周は、前記縮径部の断面形状に対応して前記第1伝動軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状を有することができる。
【0016】
前記第1伝動ギアの各第1ギア歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有することができる。
【0017】
前記ウォーム軸を挟んで前記第1伝動軸と対向して並んで配置される第2伝動軸;及び前記第2伝動軸に設けられ、外周面に前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な歯形を有する第2ギア歯が螺旋状に連続して形成されて、前記チャング状ワームのウォームギアと噛み合って回転する第2伝動ギアを更に含むことができる。
【0018】
前記第2伝動ギアの外周は、前記縮径部の断面形状に対応して前記第2伝動軸の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状を有することができる。
【0019】
前記第2伝動ギアの各第2ギア歯は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有することができる。
【0020】
前記ウォーム軸を挟んで前記第1伝動軸と直交して対向配置される第3伝動軸;及び前記第3伝動軸に設けられ、外周面に円周方向に沿って間隔を置いて前記チャング状ワームのウォーム歯と噛み合う複数の第3ギア歯が形成された第3伝動ギアを更に含むことができる。
【0021】
前記第3伝動ギアの複数の第3ギア歯は、それぞれ同じピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、前記チャング状ワームのウォーム歯と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ギアの噛合率を向上させ、ギアの摩耗を減らし、動力伝達効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置を示す構成図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置を示す構成図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すると、明確になるはずである。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現できる。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野における通常の技術者に本発明の範囲を完全に理解させるために提供されるものである。
【0025】
本明細書で用いられる用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数型は特に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は、言及した構成要素以外に1つ以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。明細書全体に亘って同一の図面符号は同一の構成要素を示し、「及び/又は」は言及した構成要素のそれぞれ及び1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。
【0026】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の技術者が共通して理解できる意味として使用され得る。また、一般に用いられる辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的に又は過度に解釈されない。
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0028】
説明に先立ち、複数の実施形態において、同一の構成を有する構成要素については同一符号を使用して代表的に第1実施形態で説明し、その他の実施形態では第1実施形態と異なる構成について説明することにする。
【0029】
図1及び
図2には本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置が示されている。
【0030】
これらの図に示したように、本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置1aはウォーム軸10、チャング状ワーム20、第1伝動軸30、及び第1伝動ギア40を含む。
【0031】
ウォーム軸10は一定の長さを有する円形断面の棒状を有する。ウォーム軸10の両端部は軸受(図示せず)により回転可能に支持される。
【0032】
チャング状ワーム20はウォーム軸10の中央領域に設けられる。チャング状ワーム20はウォーム軸10の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に大きくなるように形成された縮径部21を有する。
【0033】
縮径部21にはワーム歯23が形成されている。ワーム歯23は相異なるピッチ径に応じて相異なる軸方向モジュール、相異なるリード角、相異なる軸方向ピッチを有し、縮径部の外周面にウォーム軸10の軸方向に沿って螺旋状に連続して形成されている。また、各ワーム歯23は縮径部21の断面形状に対応して、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有する。
【0034】
一方、本実施形態おいてはウォーム軸10とチャング状ワーム20が同心をなして一体に作られたことを例示したが、これに限定されず、ウォーム軸10とチャング状ワーム20はキーにより取り外し可能に結合されることもある。
【0035】
ここで、チャング状ワーム20はウォーム軸10に比べて相対的に外径が大きいことが好ましい。
【0036】
第1伝動軸30は一定の長さを有する円形断面の棒状を有する。第1伝動軸30はウォーム軸10と間隔を置いて並んで配置される。第1伝動軸30の両端部は軸受(図示せず)により回転可能に支持される。また、第1伝動軸30は第1伝動軸30の軸方向に沿って左右に流動しないように軸受で支持することができる。
【0037】
第1伝動ギア40は一定の厚さの円盤形状を有する。第1伝動ギア40の外周は、チャング状ワーム20の縮径部21の断面形状に対応して第1伝動軸30の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状、例えば、アーク形態で突出した断面形状を有する。
【0038】
第1伝動ギア40の外周面にはチャング状ワーム20のワーム歯23と共役な歯形を有する第1ギア歯43が第1伝動軸30の軸方向に沿って螺旋状に連続して形成されている。
【0039】
第1伝動ギア40の各第1ギア歯43は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有する。また、各第1ギア歯43はチャング状ワーム20のワーム歯23と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する。なお、第1ギア歯43はチャング状ワーム20のウォーム歯23の数にギヤ比(減速比)を掛けた螺旋数を有する。
【0040】
従って、第1伝動ギア40の各第1ギア歯43の一フランク、例えば各第1ギア歯43の一歯面はチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクに同時に接触し、各ワーム歯23のフランクに沿って噛み合って回転する。この時、第1ギヤ40の各第1ギア歯43の一歯面はチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクにワーム歯23の法線方向に一直線をなして接触する。従って、高速回転の際、ワーム歯23と第1ギア歯43との間に潤滑剤が容易に流入及び流出する。これにより、ワーム歯23と第1ギア歯43との間に発生する摩耗を減らすことができ、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40の寿命も延ばすことができる。
【0041】
また、第1伝動ギア40をチャング状ワーム20と組み立てる際に、チャング状ワーム20の中心線が第1伝動ギア40の中心線を通過しながらウォーム軸10の軸線と直交するようにチャング状ワーム20と第1伝動ギア40を配置する。これにより、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40の噛合率を向上させることができる。
【0042】
一方、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40との間の減速比はチャング状ワーム20の中心線からのピッチワン直径と第1伝動ギア40のピッチワン直径の比により得られる。
【0043】
ここで、本実施形態によると、第1伝動軸30と第1伝動ギア40がキーにより結合されることを例示したが、これに限定せず、第1伝動軸30と第1伝動ギア40は同心をなして一体に作ることも可能である。
【0044】
このような構成によって、本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置1aにおいて、ウォーム軸10と第1伝動軸30はウォーム軸10の回転中心軸線と第1伝動軸30の回転中心軸線との間の軸間距離を有して互いに並んで配置される。
【0045】
そして、チャング状ワーム20の中心が第1伝動ギア40の中心線を通過しながらウォーム軸10の軸線と直交するように、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40が配置される。
【0046】
これにより、第1伝動ギア40の各第1ギア歯43の一フランクはチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクに同時に接触し、フランクに沿って噛み合って回転する。これにより、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40の噛合率が向上し、ギアの摩耗が減り、動力伝達効率を向上させることができる。
【0047】
そして、本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置1aはウォーム軸10に入力される回転数をチャング状ワーム20の中心線からのピッチワン直径と第1伝動ギア40のピッチワン直径によって減速して、第1伝動軸30を回転させることができる。
【0048】
一方、
図3及び
図4には本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置が示されている。
【0049】
本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置1bは前述した第1実施形態とは異なり、前述した第1伝動軸30及び第1伝動ギア40と同じ構造を有する第2伝動軸50及び第2伝動ギア60がウォーム軸10及びチャング状ワーム20を挟んで対向配置されている。
【0050】
即ち、第2伝動軸50はウォーム軸10を挟んで第1伝動軸30と対向して並んで配置されている。
【0051】
第2伝動軸50はウォーム軸10と間隔を置いて並んで配置される。第2伝動軸50の両端部は軸受(図示せず)により回転可能に支持される。また、第2伝動軸50は第2伝動軸50の軸方向に沿って左右に流動しないように軸受で支持することができる。
【0052】
第2伝動ギア60は一定の厚さの円盤形状を有する。第2伝動ギア60の外周は、チャング状ワーム20の縮径部21の断面形状に対応して第2伝動軸50の軸方向に沿って外径が中央から両端に向かって徐々に小さくなる断面形状、例えば、アーク形態で突出した断面形状を有する。ここで、第2伝動ギア60は第1ギヤ40と同じ外径または異なる外径を有することができる。
【0053】
第2伝動ギア60の外周面にはチャング状ワーム20のワーム歯23と同じ歯形を有する第2ギア歯63が第2伝動軸50の軸方向に沿って螺旋状に連続して形成されている。
【0054】
第2伝動ギア60の各第2ギア歯63は、互いに異なるピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有する。また、各第2ギア歯63はチャング状ワーム20のワーム歯23と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する。なお、第2ギア歯63はチャング状ワーム20のウォーム歯23の数に必要なギア比(減速比)を掛けた螺旋数を有する。
【0055】
従って、第2伝動ギア60の各第2ギア歯63の一フランクはチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクに同時に接触し、各ワーム歯23のフランクに沿って噛み合って回転する。この時、第2伝動ギア60の各第2ギア歯63の一歯面はチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクにワーム歯23の法線方向に一直線をなして接触する。従って、高速回転の際、ワーム歯23と第2ギア歯63との間に潤滑剤が容易に流入及び流出する。これにより、ワーム歯23と第2ギア歯63との間に発生する摩耗を減らすことができ、チャング状ワーム20と第2ギヤ60の寿命も延ばすことができる。
【0056】
また、第2伝動ギア60をチャング状ワーム20と組み立てる際に、チャング状ワーム20の中心線が第2伝動ギア60の中心線を通過しながらウォーム軸10の軸線と直交するようにチャング状ワーム20と第2伝動ギア60を配置する。これにより、チャング状ワーム20と第2伝動ギア60の噛合率を向上させることができる。
【0057】
一方、チャング状ワーム20と第2ギヤ60との間の減速比はチャング状ワーム20の中心線からのピッチワン直径と第2伝動ギア60のピッチワン直径の比により得られる。
【0058】
ここで、本実施形態によると、第2伝動軸50と第2伝動ギア60がキーにより結合されることを例示したが、これに限定せず、第2伝動軸50と第2ギヤ60は同心をなして一体に作ることも可能である。
【0059】
このような構成によって、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置1bはウォーム軸10と第1伝動軸30がウォーム軸10の回転中心軸線と第1伝動軸30の回転中心軸線との間の軸間距離を有して並んで配置されると共に、ウォーム軸10と第2伝動軸50がウォーム軸10の回転中心軸線と第2伝動軸50の回転中心軸線との間の軸間距離を有して並んで配置される。
【0060】
そして、チャング状ワーム20の中心が第1伝動ギア40の中心線と第2伝動ギア60の中心線が通過しながらウォーム軸10の軸線と直交するようにチャング状ワーム20と第1伝動ギア40及び第2伝動ギア60が配置される。
【0061】
これにより、第1伝動ギア40の各第1ギア歯43の一フランクと第2ギヤ60の各第2ギア歯63の一フランクはそれぞれ、チャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクに同時に接触し、プランクに沿って噛み合って回転する。これにより、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40及び第2伝動ギア60の噛合率が向上し、ギアの摩耗が減り、動力伝達効率を向上させることができる。
【0062】
そして、本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置1bは第1伝動ギア40と第2ギヤ60の各ピッチ円形の直径を互いに異なるようにまたは同一に形成することにより、ウォーム軸10に入力される回転数をチャング状ワーム20と第1伝動ギア40及び第2伝動ギア60を経て様々な減速比で減速させて、それぞれ第1伝動軸30と第2伝動軸50を同じ回転数で回転させたり、または異なる回転数で回転させることができる。
【0063】
これにより、様々な減速比を有する動力伝達装置を実現することができる。
【0064】
図5及び
図6には本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置が示されている。
【0065】
本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置1cは前述した第1実施形態とは異なり、第3伝動軸70と第3伝動ギア80を更に含む。
【0066】
第3伝動軸70はウォーム軸10を挟んで第1伝動軸30と直交して対向配置されている。
【0067】
第3伝動軸70はウォーム軸10と間隔を置いて直交して配置される。第3伝動軸70の両端部は軸受(図示せず)により回転可能に支持される。また、第3伝動軸70は第3伝動軸70の軸方向に沿って左右に流動しないように軸受で支持することができる。
【0068】
第3伝動ギア80は一定の厚さの円盤形状を有する。第3伝動ギア80の外周は円周方向に沿って円状に形成されている。
【0069】
第3伝動ギア80の外周面にはチャング状ワーム20のワーム歯23と噛み合う複数の第3ギア歯83が円周方向に沿って間隔を置いて形成されている。第3伝動ギア80の複数の第3ギア歯83は、それぞれ同じピッチ円の直径、及び同じ有効歯の高さを有すると共に、チャング状ワーム20のワーム歯23と共役な軸方向モジュール、リード角、軸方向ピッチを有する。
【0070】
一方、チャング状ワーム20と第3ギヤ80との間の減速比はチャング状ワーム20の螺旋数と第3ギヤ80の第3ギア歯83の数の比により得られる。
【0071】
このような第3伝動ギア80はキー90により第3伝動軸70と結合されることが好ましい。
【0072】
このような構成によって、本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置1cはウォーム軸10と第1伝動軸30がウォーム軸10の回転中心軸線と第1伝動軸30の回転中心軸線との間の軸間距離を有して並んで配置されると共に、ウォーム軸10と第3伝動軸70が、ウォーム軸10の回転中心軸線と第3伝動軸70の回転中心軸線との間の軸間距離を有して直交して配置される。
【0073】
そして、チャング状ワーム20の中心が第1伝動ギア40の中心線と第3ギヤ70の中心線が通過しながらウォーム軸10の軸線と直交するようにチャング状ワーム20と第1伝動ギア40及び第3ドライブギヤ70が配置される。
【0074】
これにより、第1伝動ギア40の各第1ギア歯43の一フランクはチャング状ワーム20の各ワーム歯23の一フランクに同時に接触し、フランクに沿って噛み合って回転する。これにより、チャング状ワーム20と第1伝動ギア40の噛合率が向上し、ギアの摩耗が減り、動力伝達効率を向上させることができる。
【0075】
また、チャング状ワーム20のワーム歯23は第3ギヤ80の第3ギア歯83の一フランクにフランクの垂直方向、例えば第3ギア歯83の法線方向に噛み合って回転する。
【0076】
従って、チャング状ワーム20に相異なる形態の第1伝動ギア40と第3ドライブギヤ80をそれぞれ組み合わせることにより、ウォーム軸10に入力される回転数をチャング状ワーム20と第1伝動ギア40及び第3伝動ギア80を経て様々な減速比で減速させ、それぞれ第1伝動軸30と第3伝動軸70を互いに同じ回転数、または異なる回転数で回転させることができる。
【0077】
これにより、第1伝動軸30と第3伝動軸70が互いに直交する形態を有することにより、様々な形態の動力伝達装置を実現することができるだけでなく、様々な減速比を有する動力伝達装置を実現することができる。