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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】新規免疫療法組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20220117BHJP
   A61K 38/03 20060101ALI20220117BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20220117BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220117BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220117BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220117BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
A61K39/00 Z
A61K38/03
A61K38/10
A61P37/02
C07K7/06 ZNA
C07K7/08
C07K14/415
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2016517506
(86)(22)【出願日】2014-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2016-10-27
(86)【国際出願番号】 AU2014050249
(87)【国際公開番号】W WO2015042664
(87)【国際公開日】2015-04-02
【審査請求日】2017-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】2013903686
(32)【優先日】2013-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】516086462
【氏名又は名称】アラヴァックス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヘアール ロビン エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】プリケット サラ レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ジェニファー メイ
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】冨永 みどり
【審判官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】Clin.Exp.Allergy,2013年 6月,Vol.43,p.684-697
【文献】J.Allergy Clin.Immunol.,2011年,Vol.127,p.608-615
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00-39/44
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ara h1およびAra h2を含む組成物に対する過敏症の脱感作または免疫学的寛容を誘導するための免疫調節組成物であって、該免疫調節組成物は、
【化1】
からなるリストから選択されるAra h1およびAra h2T細胞ペプチドの少なくとも7つを含み、且つ、配列番号11、13、4及び14~16で表されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、
残基Xがセリンであり、該ペプチドのそれぞれが、28アミノ酸長以下であり
組成物は、アミノ酸配列ALMLPHFNSKAMVIVVV(配列番号34)からなるペプチドとアミノ酸配列KAMVIVVVNKGTGNLELVAV(配列番号42)からなるペプチドとの組み合わせを含まない、組成物。
【請求項2】
さらにペプチド
【化2】
を含み、残基Xがセリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記8つのペプチドを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載するペプチドの少なくとも1つが、
【化3】
からなるリストから選択されるAra h1およびAra h2T細胞ペプチドを含み、残基Xがセリンである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
【化4】
からなるリストから選択されるAra h1およびAra h2T細胞ペプチドのそれぞれを含み、残基Xがセリンである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ペプチドが、Ara h1および/もしくはAra h2過敏症またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物に対する過敏症を、前記過敏症により特徴付けられる病態を有する対象に投与された場合に低減させ得る、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドのそれぞれが、20アミノ酸長以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドをコードし、またはそれらをコードする配列に相補的な1つ以上の核酸分子を含む組成物。
【請求項9】
Ara h1および/またはAra h2に対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる哺乳動物における病態の治療のための医薬品の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の免疫調節組成物の使用。
【請求項10】
病態が、ピーナッツまたはAra h1およびAra h2もしくはAra h1様もしくはAra h2様分子を含有する樹木性堅果に対する過敏症である、請求項に記載の使用。
【請求項11】
前記堅果が、ヘーゼルナッツ、アーモンドまたはブラジルナッツである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Ara h1および/もしくはAra h2または前記組成物の他のアレルゲンに対して脱感作させ、またはそれに対する免疫学的寛容を誘導する、請求項11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記脱感作または寛容が、T細胞アネルギーまたはアポトーシスを誘導することにより達成される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記脱感作または寛容が、Ara h1またはAra h2特異的Treg細胞を誘導することにより達成される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物を皮内または経皮投与する、請求項14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項15のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、免疫療法組成物に関する。より特定すると、本発明は、ピーナッツアレルギーまたは他の樹木性堅果に対するアレルギーを有する対象中のTリンパ球と免疫学的に相互作用する免疫療法組成物に関する。この組成物は、好ましくは、Ara h1および/またはAra h2アレルゲンに対するアレルギーを有する対象中のT細胞との免疫相互作用を示す。本発明の組成物は、ピーナッツ、Ara h1および/もしくはAra h2またはそれらの誘導体もしくはホモログに対する異常な、不適切な、またはそうでなければ不所望な免疫応答により特徴付けられる病態の治療的または予防的治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
本明細書において著者により引用される刊行物の参照文献目録は、本明細書の末尾に、アルファベット順にまとめる。
【0003】
本明細書の任意の先行技術に対する参照文献は、その先行技術が共通の一般的知識の一部を形成することの同意でも、その任意の形式の示唆でもなく、そのように解釈されるべきでない。
【0004】
ピーナッツアレルギーは、人口の約1%が罹患する致命的な不治の疾患である(Husain et al.J Am Acad Dermatol.66(1):136-43,2012、Burks,Lancet.371(9623):1538-46,2008)。ピーナッツアレルギーは、微量のピーナッツタンパク質に曝露された際に生じ得るアナフィラキシーの突然発症により特徴付けられる(Hourihane et al.,J Allergy Clin Immunol 100:596-600,1997;Pumphrey,Current Opinion in Allergy&Immunology.4(4):285-90,2004)。ピーナッツ誘導性アナフィラキシーは、非常に高頻度で死亡または致命的な特徴を伴うものである(Bock et al.J Allergy Clin Immunol.119(4):1016-8,2007;Burks 2008、前掲)。ピーナッツタンパク質は、一見安全な食物源内にも高頻度で隠れており、その結果、偶発的な接触が5年の期間にわたり罹患者の最大50%に生じている(Sicherer et al.,Paediatrics 102:e6,1998)。驚くべきことではないが、ピーナッツおよび樹木性堅果アレルギーは、慢性消耗疾病、例えば、関節リウマチを罹患する者と同様、患者および同様に介護者について顕著に心理上の病的状態を伴う(Primeau et al.,Clin Exp Allergy 30:1135-43,2000;Kemp et al.Med.J.Aust.188(9):503-4,2008)。治癒は、死亡原因としてのピーナッツおよび樹木性堅果アレルギーを除去するために必須である一方、ピーナッツアレルギー患者が抱える慢性的な心理的負担を除去するためにも必要である。
【0005】
これまで、ピーナッツアレルギーについての免疫療法の試みの成果は、極端に限定されてきた。Nelsonらは、ピーナッツの臨床的脱感作が、未分画ピーナッツ抽出物を用いるラッシュ免疫療法プロトコルを使用して誘導され得ることを示したが、その臨床的脱感作は維持投薬の間に対象の約半数において消失し、さらにその注射に、強化および維持期間の両方の間に対象の大多数における高頻度のアナフィラキシーのエピソードが伴う(Nelson et al.,J Allergy Clin Immunol 99:744-51,1997)。Oppenheimerらは、研究において同様の知見を実証し、未分画ピーナッツ抽出物を用いる能動療法に、全身性のアナフィラキシーが高率で伴うことを再び示した。その研究におけるデータ収集は、ピーナッツ抽出物をプラセボランダム化対象に投与し、対象が死亡した後で終了し、この病態が危険な性質のものであることを強調した(Oppenheimer et al.,J Allergy Clin Immunol 90:256-62,1992)。全ピーナッツ粉を用いる近年の経口免疫療法の研究により脱感作が実現可能である進展が提供されたが、観察された有害反応により深刻な安全性に関する懸念が強調された(Hofmann et al.J.Allergy Clin.Immunol.124,286,2009;Jones et al.J.Allergy Clin.Immunol.24,292,2009;Clark et al.Allergy 64,1218,2009;Varshney et al.J Allergy Clin Immunol.127(3):654-60,2011;Varshney et al.J Allergy Clin Immunol.124(6):1351-2,2009;Anagnostou et al.Clin Exp Allergy.41(9):1273-81,2011;Allen&O’Hehir.Clin Exp Allergy.41(9):1172-4,2011;Yu et al.Int Arch Allergy Immunol.159(2):179-182,2012;Thyagarajan et al.J Allergy Clin Immunol.126(1):31-2,2010;Blumchen et al.J Allergy Clin Immunol.126(1):83-91,2010)。重度の症状または喘息の傾向がある子供を除いても、2つの研究において、ある例において、最初の食物チャレンジの間(Clark et al.Allergy 64,1218,2009)、他方では、アナフィラキシーをこれまで経験しなかった子供の治療の間にアナフィラキシーエピソードが報告されている(Hofmann et al.J.Allergy Clin.Immunol.124,286,2009)。
【0006】
アレルゲン免疫療法に伴う病的状態を克服するための新規戦略の開発は、成功した免疫療法、およびその副作用に対する免疫学的な基礎の正確な理解に依存する。アレルゲン免疫療法に起因する病的状態はIgEの架橋に起因すること、およびこの作用は長い間、そのような治療法の有効性に要求されないことが確立されている(Litwin et al.,Int Arch Allergy Appl Immunol 87:361-61,998)。寛容の産生における慣用の(未分画ピーナッツ抽出物を用いる皮下注射または舌下または経口)免疫療法の重大な作用のうちの1つは、優勢な特異的T細胞の表現型を、T2から制御性の表現型に変化させる能力であることも公知である。これらの制御性T細胞は、抗炎症性サイトカインであるIL-10および/またはTGFβの産生を介して作用する(Akdis&Akdis,J Allergy Clin Immunol.123:735-46,2009;Akdis&Akdis,Nature Reviews:Drug Discovery.8:645-60.2009;Akdis&Akdis,J Allergy Clin Immunol.127:18-27,2011)。
【0007】
抗体およびリンパ球応答における重要な差異は、抗原の認識において、抗体が分子の三次元構造に依存する立体構造B細胞エピトープを認識する一方で、CD4+T細胞が短い直鎖ペプチドを認識するという点である。抗原認識におけるこの差異は、免疫療法、例として、T細胞エピトープをベースとするペプチド、B細胞エピトープ突然変異体および変更ペプチドリガンドを使用するものの多くの新規戦略の基礎である(Rolland et al.Pharmacology&Therapeutics 121:273-284,2009)。このような方法は、全てIgE架橋およびエフェクター細胞活性化が消失するような分子三次元構造または非存在の分子三次元構造の変更または不存在に依存する。ペプチド免疫療法は、効力が証明されている方法であり、ネコのフケアレルギーおよびハチ毒アレルギーの両方に関して報告されている。3つの異なる研究により、T細胞エピトープ含有配列を使用して、いかなる全身性の副作用も存在せず、主要なハチ毒アレルゲンであるホスホリパーゼA2(PLA2)について臨床および免疫学的寛容を達成することができることが示されている(Muller et al.J Allergy Clin Immunol.101:747-54,1998;Tarzi et al.Clin Exp Allergy.36:465-74,2006;Fellrath et al.J Allergy Clin Immunol.111:854-61,2003)一方、いくつかの研究により、主要なネコアレルゲンであるFel d1の構造をベースとするペプチドを使用して臨床応答の縮小を誘導することができることが実証されている(Norman et al.,Am J Respir Crit Care Med 154:1623-8,1996;Marcotte et al.,J Allergy Clin Immunol 101:506-13,1998;Pene et al.,J Allergy Clin Immunol 102:571-8,1998;Oldfield et al.Lancet 360:47-53,2002;Alexander et al.Clin Exp Allergy 35:52-8,2004;Alexander et al.Allergy 60:1269-74,2005)。ごく最近、第IIa相試験により、Fel d1からの7ペプチド混合物(Toleromune Cat(登録商標)、Cicassia Ltd.,Oxford,UK)の安全性、寛容性および潜在的な効力が確認され(Worm et al.J Allergy Clin Immunol.127:89-97,2011)、第IIb相試験が現在、行われている(Moldaver&Larche.Allergy.66:784-91,2011;Worm et al.Expert Opin.Investig.Drugs.22(10):1347-1357,2013)。このような戦略開発の肝は、T細胞の表現型変化を誘導することができるようにT細胞エピトープを保持することである。
【0008】
MHCクラスII分子上に直接結合する能力により、応答性T細胞(Moldaver&Larche,Allergy 66:784-91,2011)および/またはMHCクラスIIを発現する他のCD4T細胞において寛容、アネルギーおよび/または抑制活性の誘導を促進する炎症促進および共刺激シグナルを有さずに非プロフェッショナルまたは未成熟APCによるペプチドの提示が可能となる。これにより、全分子からプロセシングされたペプチドよりも高頻度においてペプチドの提示が可能となり(Santambrogio et al.Proc Natl Acad Sci U S A,1999,96:15056-61)、それらは全アレルゲンよりも安全でもあるため、より高濃度においてペプチドを与えることができ、したがってT細胞応答がより効率的に再分極される。
【0009】
重要なことに、主要アレルゲンの優性T細胞エピトープに特異的なT細胞の標的化により、全アレルゲン抽出物に対する応答を変更することができる(連鎖的抑制)。ネズミアレルギーモデルにおいて、成功したペプチド免疫療法を報告する多くの研究報告により、主要アレルゲンの優性T細胞エピトープペプチドの投与により、それらペプチドに対する寛容だけではなく、精製アレルゲンおよび全アレルゲン抽出物に対する寛容も誘導されることが実証された(Yang et al.Clin Exp Allergy 40(4):668-78,2010;Yoshitomi et al.J Pept Sci.13(8):499-503,2007;Marazuela et al.Mol Immunol.45(2):438-45,2008;Rupa et al.Allergy.67(1):74-82,2012;Hoyne et al.J Exp Med.178(5):1783-8,1993;Hall et al.Vaccine.21(5-6):549-61,2003)。
【0010】
したがって、主要ピーナッツアレルゲンを同定すること、およびさらにそれらのアレルゲンのT細胞エピトープを同定することの両方が必要とされている。これらのT細胞エピトープの同定、特徴付け、および分析が、特異的免疫療法または予防法の開発に重要である。この目的のため、これまでAra h1および/またはAra h2ピーナッツアレルゲン分子が分析対象であったが、有効なワクチン開発にはT細胞コアエピトープ領域の同定が必須である。
【0011】
本発明に至る研究の中で、優性である、HLAデジェネレート(degenerate)Ara h1および/またはAra h2コアT細胞エピトープ領域が同定された。このコアT細胞エピトープ領域の群は、その高レベルの効力に関してユニークである。あるレベルのT細胞反応性を示す能力のみに基づき同定された既に研究された20merのAra h1および/またはAra h2ペプチドとは異なり、両方とも他のAra h1および/またはAra h2ペプチド断片に対して免疫優性であり、2つ以上のHLA型に結合する点でHLAデジェネレートでもあるコアT細胞エピトープ領域の選択されたセットが同定された。さらに、これらのT細胞エピトープコア領域の多くは、HLA-DQ分子により提示される。HLA-DQ分子は、混合集団においてHLA-DR分子よりも保存されている。したがって、HLA-DQ上で提示されるペプチドは、より広い集団カバレージを可能とする。
【0012】
いっそうさらなる知見において、Ara h1およびAra h2T細胞エピトープの両方を含有するペプチドの7つの特異的な下位群が特に有効な免疫学的アウトカムを提供することも発見された。したがって、このユニークに有効なペプチドの群を同定することにより、Ara h1および/もしくはAra h2またはその誘導体もしくはホモログに対する異常な、不適切な、またはそうでなければ不所望な免疫応答、他の樹木性堅果アレルギー、または例えば、Ara h1および/またはAra h2分子を含有する組成物、例えば、食物に対するアレルゲンにより特徴付けられる病態を治療する特に有効な治療的予防方法の開発が容易になった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体を通して、特に文脈が要求しない限り、単語「含む(comprise)」、および変化形、例えば、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、記述される整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群の包含が意味されるが、任意の他の整数またはステップの除外も整数またはステップの群の除外も意味するものではないと理解される。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「~に由来する」は、特定の整数または整数の群が規定された種からの起源であるが、必ずしも、その規定の源から直接得られたものではないことを示すと解釈されたい。さらに、本明細書において使用される場合、「a」、「および」および「the」の単数形は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の参照対象を含む。
【0015】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野における当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0016】
主題明細書は、参照文献目録の後に本明細書に提示される、プログラムPatentIn Version 3.5を使用して準備されたアミノ酸配列情報を含有する。それぞれのアミノ酸配列は、数字見出し<210>とそれに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2、など)により配列表中で識別される。配列の長さ、タイプ(タンパク質など)およびそれぞれの配列の源となった生物は、それぞれ、数字見出し欄<211>、<212>および<213>に提供される情報により示される。本明細書において言及されるアミノ酸配列は、配列番号の表示とそれに続く配列識別子により識別される(例えば、配列番号1、配列番号2、など)。本明細書において言及される配列識別子は、配列表中の数字見出し<400>とそれに続く配列識別子(例えば、<400>1、<400>2、など)に提供される情報と相関する。すなわち、本明細書において詳述されるとおり、配列番号1は配列表中の<400>1と示される配列と相関する。
【0017】
本発明の1つの態様は、免疫調節組成物であって:
【化1】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログの少なくとも5つを含み、残基Xが、システインまたはセリンであり、配列番号1~6から選択される少なくとも1つのT細胞エピトープ領域および配列番号7~8から選択される少なくとも1つのT細胞エピトープ領域を含む組成物を対象とする。
【0018】
別の態様において、前記
【化2】
は、
【化3】
である。
【0019】
さらに別の態様において、前記
【化4】
は、
【化5】
である。
【0020】
本発明のこれらの態様および実施形態によれば、前記組成物は、前記T細胞エピトープ領域の少なくとも6つを含む。
【0021】
さらなる態様において、前記組成物は、前記T細胞エピトープ領域の少なくとも7つを含む。
【0022】
いっそうさらなる態様において、前記組成物は、前記8つのT細胞エピトープ領域のそれぞれを含む。
【0023】
別の態様において、
【化6】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含み、前記残基Xが、システインまたはセリンである免疫調節組成物が提供される。
【0024】
さらに別の態様において、
【化7】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む免疫調節組成物が提供される。
【0025】
関連態様において、本発明は、1つ以上のペプチドを含む免疫調節組成物であって、ペプチドのそれぞれが、最大60連続アミノ酸長であり、ペプチドが、上記に詳述されるAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域の組合せのそれぞれを含む組成物を対象とする。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、1つ以上のペプチドを含む免疫調節組成物であって、それぞれのペプチドが、最大60連続アミノ酸長であり、ペプチドが、
【化8】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む組成物を対象とする。
【0027】
さらに別の態様において、前記ペプチドまたはT細胞エピトープ領域は、Ara h1および/もしくはAra h2に対する、またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物、例えば、食物中に存在するアレルゲンに対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる病態を有する対象から単離されたT細胞に提示された場合、T細胞機能を改変し得るが、そのペプチドはAra h1特異的および/もしくはAra h2特異的IgEに結合し得ない。
【0028】
これらの態様によれば、前記ペプチドは、
【化9】
からなるリストまたはそれらの機能的誘導体もしくはホモログから選択され、残基Xは、システインまたはセリンである。
【0029】
一実施形態において、前記残基Xは、セリンである。
【0030】
さらなる態様において、前記ペプチドは、
【化10】
またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログから選択される。
【0031】
別の態様において、前記免疫調節組成物は、
【化11】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドまたはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む。
【0032】
いっそうさらなる態様において、本発明者らは、好ましい7つのペプチドのセットを設計し、その5つはAra h1T細胞エピトープを含み、その2つはAra h2T細胞エピトープを含み、一緒に投与された場合、特に有効に機能して脱感作または寛容を誘導し、それによりAra h1および/またはAra h2を含む組成物、例えば、食物に対する過敏を予防または治療的に治療する。これらのペプチドは、
【化12】
である。
【0033】
いっそうさらに別の態様において、
【化13】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドのそれぞれを含む免疫調節組成物が提供される。
【0034】
いっそうさらに別の態様において、
【化14】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドのそれぞれを含み、
これらのペプチドが、Ara h1および/もしくはAra h2過敏症またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物に対する過敏症を、前記過敏症により特徴付けられる病態を有する対象に投与された場合、低減し得る組成物が提供される。
【0035】
本発明は、上記定義のペプチドを含む組成物を対象とする。しかし、主題組成物が追加の構成要素、例えば、追加のペプチドを含み得ることを理解されたい。組成物中に含めることができる他のペプチドの例としては、限定されるものではないが、
【化15】
またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログが挙げられ、残基Xは、システインまたはセリンである。
【0036】
別の態様において、本発明は、上記定義のT細胞エピトープおよびペプチドもしくはそれらの誘導体、ホモログもしくはアナログをコードする、またはそれらをコードする配列に相補的な1つ以上の核酸分子を含む核酸分子組成物を提供する。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、Ara h1および/もしくはAra h2またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物中のアレルゲンに対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる対象における病態を治療および/または予防する方法であって、前記Ara h1および/もしくはAra h2または他のアレルゲンに指向されるT細胞の前記対象における存在または機能を除去または低減させるために十分な時間および条件下で、前記対象に有効量の上記定義の免疫調節組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
さらなる態様において、前記病態は、ピーナッツまたはAra h1およびAra h2もしくはAra h1様もしくはAra h2様分子を含有する樹木性堅果、例えば、ヘーゼルナッツ、アーモンドおよびブラジルナッツに対する過敏症である。
【0039】
別の態様において、前記方法は、前記組成物のAra h1および/もしくはAra h2または他のアレルゲンに対して脱感作させ、またはそれに対する免疫学的寛容を誘導する。
【0040】
さらに別の態様において、前記脱感作または寛容は、T細胞アネルギーまたはアポトーシスを誘導することにより達成される。
【0041】
いっそうさらに別の態様において、前記脱感作または寛容は、Ara h1またはAra h2特異的Treg細胞を誘導することにより達成される。
【0042】
本発明のさらなる態様は、Ara h1および/またはAra h2に対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる哺乳動物における病態の治療のための医薬品の製造における、上記定義の免疫調節組成物の使用を企図する。
【0043】
好ましくは、前記病態は、ピーナッツまたはAra h1および/もしくはAra h2もしくはAra h1様および/もしくはAra h2様分子を含有する樹木性堅果、例えば、ヘーゼルナッツに対する過敏症である。
【0044】
さらに別のさらなる態様において、本発明は、上記定義の組成物を、1つ以上の薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤と一緒に含むワクチンを企図する。前記組成物は、活性成分と称される。
【0045】
本発明のさらに別の態様は、本発明の方法において使用される上記定義の組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ペプチド特異的PBMC T細胞についてのCFSEスクリーンのグラフ表示:(A)全ピーナッツ抽出物またはVax(7ペプチド編集物)とインキュベートされたピーナッツアレルギー対象からのCFSE標識PBMC。枠は、活性化増殖CD4+T細胞(CD25+CFSE低)のパーセントを示す。SIは、抗原なし対照を上回るT細胞活性化の増加倍率を示す。(B)7人の対象(全員、陽性SI>2.5を有する)におけるVax(7ペプチド編集物)に応答するピーナッツアレルギードナーPBMC CD4+T細胞活性化および増殖の確認。
図2】好塩基球活性化試験(BAT)のグラフ表示。(A)全ピーナッツ抽出物またはVax(7ペプチド編集物)とインキュベートされたピーナッツアレルギー対象からの血液を示すFACSプロット。好塩基球は、IgEhi細胞(枠、最初のプロット)として識別され、活性化好塩基球は、CD63hi(枠、プロット2~4)として識別される。(B)BATデータおよび(C)増加濃度( g/ml)の全ピーナッツ抽出物またはVaxとのインキュベーション後のピーナッツアレルギー対象からのヒスタミン放出データ(市販のキットにより計測)。陽性対照は、抗IgEおよびfMLPである。全ピーナッツ抽出物は、高度な好塩基球活性化およびヒスタミン放出を引き起こすが、Vaxは引き起こさない。データは、試験された14人のピーナッツアレルギー対象の代表である。
図3】主要ピーナッツアレルゲンAra h1およびAra h2の優性エピトープを同定するために用いられる方法の概略表示である。
図4】ピーナッツアレルギードナーの全PBMC中のT細胞増殖を誘導する優性20merペプチドの能力を検出するために設計された7日間CFSEアッセイの概略表示である。枠内の数字は、分裂する(CFSE低)CD4+T細胞の%を示し、SI=未刺激対照を上回る分裂細胞の増加倍率。
図5】Ara h1 20merペプチドに対するT細胞系のレスポンダー頻度を実証するグラフ表示である。枠は、(複数のパラメータに基づき)最終的に選択された9つの優性20merを示す。
図6】優性Ara h1 20merを用いるPBMCスクリーニングのグラフ表示である。ピーナッツアレルギードナーからのPBMC中の特異的CD4+T細胞を標的化する優性20merの能力を試験した。
図7】Ara h2 20merペプチドに対するT細胞系のレスポンダー頻度および20mer当たりの特異的TCLの数を実証するグラフ表示である。枠は、複数のパラメータに基づき最終的に選択された4つの優性20merペプチドを示す。
図8】コアT細胞エピトープマッピング結果のグラフ表示である。
図9】優性Ara h1およびAra h2T細胞エピトープのHLA拘束のグラフ表示である。
図10】選択システイン残基がセリン残基により置き換えられたペプチドのT細胞認識のグラフ表示である。Hチミジン取り込みにより決定された「親」(システイン含有)またはセリン置換Ara h2ペプチドに応答するTCL増殖。グラフは、それぞれのエピトープについての代表的なTCLを示す(平均cpmレプリケートウェル+SD)。A)Ara h2(32~44)、B)Ara h2(37~47);C)Ara h2(91~102);D)Ara h2(95~107);E)Ara h2(128~141)。
図11】選択システイン残基がセリン残基により置き換えられたペプチドに応答するT細胞サイトカイン産生のグラフ表示である。ELISPOTにより決定された「親」またはシステイン置換Ara h2ペプチドに応答するサイトカイン分泌。グラフは、それぞれのエピトープに特異的な代表的なTCLを示す(レプリケートウェルの平均スポット数+SD)。IL-4、黒色バー;IL-5、斜線バー;IFN- 、白色バー;A)Ara h2(32~44)、B)Ara h2(37~47);C)Ara h2(91~102);D)Ara h2(95~107);E)Ara h2(128~141)。
図12】ペプチドプールと全ピーナッツに対するPBMC応答のグラフ表示である。それぞれのプール中に含まれるペプチドを表23に示す。P値は、ウィルコクソンのマッチドペア符号順位検定を示す(ノンパラメトリックデータについて)。
図13】ペプチドプールと全ピーナッツに対するPBMC応答のグラフ表示である。それぞれのプール中に含まれるペプチドを表23に示す。P値は、ウィルコクソンのマッチドペア符号順位検定を示す(ノンパラメトリックデータについて)。
図14】好ましい7ペプチドプールに対するPBMC T細胞応答を含むグラフ表示である。統計:複数群間の差を試験するための、ダンポストホック相関を用いるノンパラメトリックデータについてのクラスカル・ウォリス検定。データは、異なるプールについて分析された異なるコホート中の異なる対象における応答の大きさの変動に起因して全ピーナッツに対する応答の%に正規化した。
図15】T細胞増殖のAra h2ペプチド誘導阻害のグラフ表示である。
図16】T細胞増殖のAra h1ペプチド誘導阻害のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、部分的には、一緒に投与された場合、少なくとも5つの群において、単独で、またはエピトープの他の組合せまたは他のAra h1もしくはAra h2ペプチドと一緒に使用されるエピトープのいずれよりも有効な免疫学的アウトカムを産生するAra h1およびAra h2エピトープの群の同定に基礎を置く。特に、8つ全てのエピトープの使用が特に群を抜いて有効な機能的アウトカムを産生することが決定された(最も特定すると、これら8つのエピトープが本明細書に例示される7つのペプチドに関して投与される場合)。この組成物の設計により、病態、例えば、限定されるものではないが、ピーナッツアレルギーにこれまで利用可能であったものよりも有意に有効な治療および予防組成物ならびに治療アプローチの開発が可能となる。
【0048】
したがって、本発明の一態様は、免疫調節組成物であって、
【化16】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログの少なくとも5つを含み、残基Xが、システインまたはセリンであり、配列番号1~6から選択される少なくとも1つのT細胞エピトープ領域および配列番号7~8から選択される少なくとも1つのT細胞エピトープ領域を含む組成物を対象とする。
【0049】
一実施形態において、前記
【化17】
は、
【化18】
である。
【0050】
別の実施形態において、前記
【化19】
は、
【化20】
である。
【0051】
本発明のこれらの態様および実施形態によれば、前記組成物は、前記T細胞エピトープ領域の少なくとも6つを含む。
【0052】
さらなる実施形態において、前記組成物は、前記T細胞エピトープ領域の少なくとも7つを含む。
【0053】
いっそうさらなる実施形態において、前記組成物は、前記8つのT細胞エピトープ領域のそれぞれを含む。
【0054】
したがって、この実施形態によれば、
【化21】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含み、前記残基Xが、システインまたはセリンである免疫調節組成物が提供される。
【0055】
別の実施形態において、
【化22】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む免疫調節組成物が提供される。
【0056】
関連態様において、本発明は、1つ以上のペプチドを含む免疫調節組成物であって、ペプチドのそれぞれが、最大60連続アミノ酸長であり、ペプチドが、上記に詳述されるAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域の組合せのそれぞれを含む組成物を対象とする。
【0057】
この態様によれば、本発明は、1つ以上のペプチドを含む免疫調節組成物であって、ペプチドのそれぞれが、最大60連続アミノ酸長であり、ペプチドが、
【化23】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞エピトープ領域またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む組成物を対象とする。
【0058】
本発明の上記態様の別の実施形態において、前記ペプチドまたはT細胞エピトープ領域は、Ara h1および/もしくはAra h2に対する、またはAra h1および/またはAra h2を含む組成物、例えば、食物中に存在するアレルゲンに対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる病態を有する対象から単離されたT細胞に提示された場合、T細胞機能を改変し得るが、そのペプチドはAra h1特異的および/またはAra h2特異的IgEに結合し得ない。
【0059】
本発明を決して限定するものではないが、ピーナッツは、多くのタンパク質を含有し、SDS-PAGE上で可視的な区別されるバンドの数は、使用される方法に依存する。高速液体クロマトグラフィー後、最大53個のバンドが可視的である(de Jong et al.,Clin Exp Allergy 28:743-51,1998)。これらタンパク質の2つのみが、標準的な基準を使用して主要アレルゲンとしての分類を保証し、それによりピーナッツアレルギー人口の50%を超える範囲内でIgE反応性が生じ;これらのタンパク質は、Ara h1およびAra h2と称される(Burks et al.,Allergy 53:725-30,1998)。多数の研究により、Ara h2がこれら2つのアレルゲンのより強力なものであることが示されている(Blanc et al.Clin Exp Allergy.2009;39(8):1277-85;Koppelman et al.Clin Exp Allergy.2004;34(4):583-90;Palmer et al.Clin Immunol.2005;115(3):302-12)が、Ara h1もピーナッツアレルギーの発症機序において主要な役割を担っており、多数の研究により、症状の重症度とAra h1およびAra h2の両方に対するIgE反応性との間の強力な相関が報告されている(Glaumann et al.Allergy.2012;67(2):242-7;Chiang et al.Pediatr Allergy Immunol.2009;21(2 Pt 2):e429-38;Asarnoj et al.Allergy.2010,65(9):1189-95;Moverare et al.Int Arch Allergy Immunol 2011;156(3):282-90;Lin et al.J Microbiol Immunol Infect.2012;Peeters et al.Clin Exp Allergy.2007;37(1):108-15)。Ara h1は、ピーナッツ中の最も豊富な主要アレルゲンであり、総ピーナッツタンパク質の12~16%を占める(Koppelman et al.Allergy.2001;56(2):132-7)。
【0060】
さらに、本発明を決して限定するものではないが、Ara h1アレルゲンは、7S種子貯蔵糖タンパク質またはビシリンである。ピーナッツ中のAra h1の濃度は、仁のサイズとともに増加するため(4~16mgの抽出Ara h1/1gのピーナッツ)、そのタンパク質の発現はピーナッツの成熟度に関連する(Pomes et al.2006,Clin.Exp.Allergy 36(6):824-30)。Ara h1は、単量体の遠位端において疎水性区域を介して一緒に保持されるホモ三量体であり、IgE結合B細胞エピトープのほとんどがそこに局在する。それぞれの64.5kD単量体は、それぞれα-ヘリックスのループドメインに会合している2つのコアβ-バレルからなるクピンモチーフを有する。
【0061】
Ara h2は、コングルチニン種子貯蔵ファミリーのメンバーとして同定された糖タンパク質である。Ara h2分子量の20%は炭水化物側鎖を表し、それはSDS-PAGE上でダブレットとして移動し、平均分子量は17.5kDaである(Burks et al,Int Arch Allergy Immunol 119:165-172,1992)。これは、試験された6つの血清のうちの6つとのその反応性に基づき主要アレルゲンとして特徴付けられている(Burks et al,1992、前掲)。他の研究者らもその重要性を確認しており;Clarkeは、粗製ピーナッツ抽出物のウエスタンブロッティング時に対象の71%がAra h2に対する特異的IgEを有することを実証した。Kleber-Jankeらは、対象の85%が、ウエスタンブロット時にそれらの組換え体に対するIgEを有することを実証しており、de Jongのグループは、それらの群の約78%が精製天然Ara h2に対する特異的IgEを実証することを示している(Clarke et al.,Clin Exp Allergy 28:1251-7,1998;de Jong et al,1998 前掲;Kleber-Janke et al.,Int Arch Allergy Immunol 119:265-274,1999)。
【0062】
「Ara h1」への言及は、この分子の全ての形態への言及、例として、Ara h1 mRNAの選択的スプライシングから生じ得る任意のアイソフォーム、またはAra h1の機能的突然変異体もしくは多型体への言及として理解されたい。さらに、Ara h1遺伝子によりコードされる任意のタンパク質、任意のサブユニットポリペプチド、例えば、単量体、多量体または融合タンパク質として存在するかに関わらず、生成することができる前駆体にまで拡張されると理解されたい。これは、例えば、天然でAra h1を含有する産物が、例えば、製品、例えば、食物添加物を生成する目的のために、合成により生成される場合に生じ得るAra h1のアナログまたは均等物への言及も含む。これにより、本発明は、Ara h1またはAra h1様分子に対する過敏症により特徴付けられる任意の病態、例えば、ピーナッツアレルギーもしくは樹木性堅果アレルギー、またはAra h1も含有する組成物、例えば、食物中に存在する抗原に対するアレルギーの診断および治療における使用のためのT細胞エピトープおよび方法を提示する。好ましくは、前記Ara h1は、配列番号9に記載の配列を含み、Ara h2は、配列番号10に記載の配列を含む。
【0063】
「T細胞」への言及は、T細胞受容体を含有する任意の細胞への言及として理解されたい。これに関して、T細胞受容体は、 、 、 または 鎖の任意の1つ以上を含み得る。本発明は任意の特定のT細胞の機能的サブクラスに限定されるものではないが、好ましい実施態様において、主題T細胞は、Tヘルパー細胞であり、いっそうより好ましくは、Th2型の細胞および/またはTreg細胞である。これに関して、「T細胞機能を改変する」への言及は、T細胞が遂行し得る任意の1つ以上の機能を改変することへの言及と理解されたい。例えば、主題機能は、増殖、分化または他の形態の細胞の機能的活性、例えば、サイトカインの産生であり得る。一実施形態において、主題機能的活性は、増殖である。
【0064】
Ara h1および/もしくはAra h2に対する、またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物に対する異常な、不所望な、または不適切な免疫応答により特徴付けられる病態を有する対象から単離されたT細胞の「機能を改変する」に関して、これは必ずしも所与の生物学的試料中の全てのT細胞の機能を改変することを言及せず、実際、試料中のT細胞のほんの一部の機能の改変を示す可能性が高いということを理解されたい。例えば、所与のT細胞試料中のTヘルパー細胞のほんの一部が、主題ペプチドとの接触に対して機能的に応答し得る。このような部分的な応答は、本発明の範囲内であることを理解されたい。対象から誘導されたT細胞は、回収されたばかりのT細胞であり得、または試験前に何らかの形態のインビトロまたはインビボ操作の受けたものであり得ることも理解されたい。例えば、T細胞系は、細胞試料から生成することができたものであり得、次いでこれらのT細胞系は、本発明により試験される対象由来T細胞集団を形成する。主題機能的活性がT細胞増殖である限り、好ましくは、T細胞増殖アッセイが、本明細書に開示されるとおり実施される。いっそうさらに好ましくは、T細胞機能の主題改変は、増殖の誘導である。これに関して、「Ara h1反応性」または「Arah2反応性」T細胞への言及は、Ara h1および/またはAra h2T細胞エピトープのHLA提示に対してそれぞれ機能的に応答するT細胞への言及として理解されたい。同様に、「Ara h1特異的」または「Ara h2特異的」IgEへの言及は、Ara h1またはAra h2B細胞エピトープにそれぞれ指向されるIgEへの言及として理解されたい。
【0065】
「異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な」免疫応答への言及は、1つ以上の免疫細胞の活性化および/または機能が関与する生理学的活性の任意の形態への言及として理解されたく、その活性は、不適切な型のものであり、または不適切な程度にまで進行するという点で不適切である。これは、公知の免疫学的原理に従い、生じるべき場合に生じないこと、または生じるべきでない場合に生じること点において異常であり得る。別の例において、免疫応答は、それが生理学的に正常な応答であるが、必要ではない、および/または不所望である点、例えば、無害なアレルゲンに対するI型過敏性応答に関して生じる点で不適切であり得る。本発明に関して、この免疫応答は、Ara h1および/もしくはAra h2に指向され得、またはAra h1および/もしくはAra h2と一緒に組成物中に存在する異なるアレルゲンに指向され得る。本発明をいずれか1つの理論または作用機序に限定するものではないが、過敏性応答がAra h1および/またはAra h2以外のアレルゲンに指向される場合であっても、そのアレルゲンがAra h1および/またはAra h2を含む組成物中に存在する場合、Ara h1および/またはAra h2に指向される本発明の方法を介する治療は、それにもかかわらず、Th2およびTreg機能の有益な改変を誘導し、その結果、それにもかかわらず、無関連アレルゲンに対して存在する過敏症を低減させることが決定された。好ましくは、前記免疫応答は、ピーナッツ過敏症である。
【0066】
「ピーナッツ過敏症」は、IgE介在性ピーナッツ過敏症の臨床症状の誘導を意味する。しかしながら、臨床症状が明白であり得るが、全てのそのような個体が必ずしも、Kallestad Allercoat EAST System(Sanofi-Pasteur Diagnostics,USA)を使用して計測される検出可能なレベルのピーナッツ特異的血清IgEを示すわけではないが、そのような個体も「ピーナッツ過敏症」を示す個体の定義の範囲内に入ることを理解されたい。あるいは、試験は、EAST,PharmaciaまたはUniCapシステムまたはアレルゲン皮膚プリック試験のいずれかを利用して進行し得る。「Ara h1および/またはAra h2過敏症」への言及は、Ara h1および/またはAra h2タンパク質に対する反応性に関して対応する意味を有すると理解されたい。
【0067】
上記の態様によれば、前記ペプチドは、
【化24】
からなるリストまたはそれらの機能的誘導体もしくはホモログから選択され、残基Xは、システインまたはセリンである。
【0068】
一実施形態において、前記残基Xは、セリンである。
【0069】
好ましくは、前記ペプチドは、
【化25】
またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログから選択される。
【0070】
別の実施形態において、前記免疫調節組成物は、
【化26】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドまたはそれらの機能的誘導体もしくはホモログのそれぞれを含む。
【0071】
ピーナッツAra h1およびAra h2過敏症(およびより一般にはアレルギー過敏症)の低減を以下により詳細に考察する。しかしながら、手短に述べると、これは、個体をAra h1およびAra h2特異的に、またはピーナッツまたはより一般的な他のタンパク質に対して部分的もしくは完全に脱感作または寛容化させる形態をとり得る。
【0072】
「ペプチド」への言及は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質またはそれらの一部への言及を含む。ペプチドはグリコシル化されていてよく、もしくは非グリコシル化であってよく、および/またはタンパク質、例えば、アミノ酸、脂質、炭水化物または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に融合、連結、結合している、またはそうでなければ会合している一連の他の分子を含有し得る。以下、「ペプチド」への言及は、アミノ酸の配列を含むペプチドおよび他の分子、例えば、アミノ酸、脂質、炭水化物または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質と会合しているペプチドを含む。
【0073】
「誘導体」は、天然、合成または組換え源、例として、融合タンパク質からの断片、部分、一部およびバリアントを含む。部分または断片は、例えば、主題ペプチドの活性領域を含む。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失または置換から誘導することができる。アミノ酸挿入誘導体としては、アミノおよび/またはカルボキシ末端融合物ならびに単一または複数のアミノ酸の配列内挿入物が挙げられる。挿入アミノ酸配列バリアントは、1つ以上のアミノ酸残基がタンパク質中の所定部位中に導入されているものであるが、ランダム挿入も得られる産物の好適なスクリーニングについて可能である。欠失バリアントは、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去により特徴付けられる。
【0074】
置換アミノ酸バリアントは、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されているものである。置換アミノ酸バリアントの例は、保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換としては、典型的には、以下の群内の置換が挙げられる:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。アミノ酸配列への付加としては、他のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質との融合が挙げられる。一実施形態において、システイン残基は、本明細書に例示のとおり、セリンにより置換されている。
【0075】
主題ペプチドの化学的および機能的な均等物は、それらの分子の機能的活性のいずれか1つ以上を示す分子と理解されたく、任意の源から誘導することができ、例えば、化学合成し、またはスクリーニングプロセス、例えば、天然産物スクリーニングを介して同定することができる。
【0076】
ホモログとしては、ピーナッツ以外の品種から誘導されたペプチド、例えば、他の樹木性堅果に由来するペプチドが挙げられる。
【0077】
本明細書において企図されるアナログとしては、限定されるものではないが、側鎖への修飾、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成の間の非天然アミノ酸および/またはその誘導体の取り込み、ならびに架橋剤の使用、ならびにタンパク質性分子またはそのアナログに対して立体構造制約を与える他の方法の使用が挙げられる。突然変異体としては、改変された機能的活性を示す分子(例えば、1つ以上のT細胞エピトープを発現するが、B細胞反応性を欠くAra h1ペプチド)が挙げられる。
【0078】
本発明により企図される側鎖修飾の例としては、アミノ基の修飾、例えば、アルデヒドとの反応とそれに続くNaBHによる還元による還元的アルキル化;メチルアセトイミデートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアン酸塩によるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;ならびにピリドキサル-5-リン酸によるリジンのピリドキシル化とそれに続くNaBHによる還元によるものが挙げられる。
【0079】
アルギニン残基のグアニジン基は、試薬、例えば、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサルおよびグリオキサルとの複素環縮合生成物の形成により修飾することができる。カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成とそれに続く、例えば、対応するアミドへの後続の誘導体化を介するカルボジイミド活性化により修飾することができる。スルフヒドリル基は、例えば、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸に対する過ギ酸酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸または他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀安息香酸塩、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノールおよび他の水銀物質を使用する水銀誘導体の形成;アルカリpHにおけるシアン酸塩によるカルバモイル化などの方法により修飾することができる。トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジル臭化物もしくはスルフェニルハロゲン化物によるインドール環のアルキル化などにより修飾することができる。他方でチロシン残基は、テトラニトロメタンにより窒化して3-ニトロチロシン誘導体を形成することにより変更することができる。
【0080】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカーボネートによるN-カルボエトキシ化により達成することができる。
【0081】
タンパク質合成の間の非天然アミノ酸および誘導体の組み込みの例としては、限定されるものではないが、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられる。本明細書において企図される非天然アミノ酸のリストを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
例えば、ホモ二価架橋剤、例えば、(CHスペーサー基(n=1~n=6)を有する二価イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ならびに通常、アミノ反応性部分、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドおよび他の基特異的反応部分を含有するヘテロ二価試薬を使用して3D立体構造を安定化させるため、架橋剤を使用することができる。
【0086】
種々の目的のため、例えば、溶解度を増加させる、治療もしくは予防効力を向上させる、安定性を向上させる、またはタンパク質分解に対する抵抗性を増加させる目的のため、本発明によるペプチドの構造を改変することが可能である。免疫原性を改変するため、および/またはアレルギー誘発性を低減させるため、例えば、アミノ酸置換、欠失または付加により、アミノ酸配列が変更された改変ペプチドを産生することができる。同様の構成要素を本発明のペプチドに付加して同じ結果をもたらすすることができる。
【0087】
例えば、ペプチドがT細胞アネルギーを誘導する能力を示すようにペプチドを改変することができる。この例において、公知技術(例えば、それぞれの残基の置換およびT細胞反応性の有無の決定)を使用してT細胞受容体について重要な結合残基を決定することができる。一例において、T細胞受容体との相互作用に必須であると示されている残基は、必須アミノ酸を、存在がT細胞反応性またはT細胞の機能を変更することが示されている別の、好ましくは類似のアミノ酸残基により置き換えること(保存的置換)により改変することができる。さらに、T細胞受容体相互作用に必須ではないアミノ酸残基は、取り込みが次いでT細胞反応性またはT細胞機能を変更し得るが、例えば、関連MHCタンパク質への結合を排除しない別のアミノ酸により置き換えることにより改変することができる。さらに別の例において、正常なT細胞結合を示すが、IgE結合を消失した突然変異ペプチドを作出することができる。
【0088】
例示的な保存的置換を以下に詳述し、以下のものが挙げられる:
【0089】
【表4】
【0090】
このような改変は、本明細書において定義される主題ペプチドの「突然変異体」の範囲内である分子の産生をもたらす。「突然変異体」は、非突然変異ペプチド相当物により示されるものとは区別される1つ以上の構造的特徴または機能的活性を示すペプチドへの言及と理解されたい。
【0091】
本発明のペプチドは、天然アレル変異から生じる1つ以上の多形を取り込むように改変することもでき、D-アミノ酸、非天然アミノ酸またはアミノ酸アナログをペプチド中に置換して本発明の範囲内にある改変ペプチドを産生することができる。ペプチドは、公知技術によりポリエチレングリコール(PEG)とのコンジュゲーションにより改変することもできる。精製を容易にするため、および本発明によるペプチドの溶解度を潜在的に増加させるためにレポーター基を付加することもできる。他の周知の改変のタイプ、例として、特異的エンドプロテアーゼ開裂部位の挿入、官能基の付加または疎水性残基の低疎水性残基による置換、ならびに本発明のペプチドをコードするDNAの部位特異的突然変異導入を使用して広範な目的に有用であり得る改変を導入するすることもできる。上記の本発明によるペプチドに対する種々の改変は、例として言及されるにすぎず、行うことができる広範な改変を示すことのみが意図されている。
【0092】
上記に詳述されるとおり、本発明は、T細胞と相互作用する能力の全てまたは一部を保持するが、部分的に、もしくは完全に阻害され、消失し、またはそうでなければ下方制御されている抗体反応性を示すペプチドを提供する。当業者に周知の方法である任意の好適な方法により抗体反応性の下方制御を生じさせることができる。例えば、B細胞エピトープがその直鎖アミノ酸配列により定義される限り、天然存在配列と区別される突然変異直鎖配列とするために、1つ以上のアミノ酸残基を付加し、欠失させ、または置換することができる。さらに、または代替的に、エピトープが立体構造エピトープにより定義され得る限り、ペプチドの2°構造、またはホモ二量体もしくはヘテロ二量体が存在する限り、ペプチドの3°構造を破壊することにより、その立体構造の破壊に努めることができる。これは、例えば、2°および/または3°構造を安定化させることが公知の結合、例えば、ジスルフィド結合の形成を破壊することにより達成することができる。上記定義のT細胞エピトープに関して、これらのT細胞エピトープ領域は、B細胞エピトープを含まない。
【0093】
関連態様において、本発明者らは、好ましい7つのペプチドのセットを設計し、その5つは、Ara h1T細胞エピトープを含み、その2つは、Ara h2T細胞エピトープを含み、一緒に投与された場合、特に有効に機能して脱感作または寛容を誘導し、それによりAra h1および/またはAra h2を含む組成物、例えば、食物に対する過敏症を予防または治療的に治療する。これらのペプチドは、
【化27】
である。
【0094】
したがって、好ましい実施形態において、
【化28】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドのそれぞれを含む免疫調節組成物が提供される。
【0095】
さらなる態様において、
【化29】
からなるリストからのAra h1およびAra h2T細胞ペプチドのそれぞれを含み、これらのペプチドが、Ara h1および/もしくはAra h2過敏症またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物に対する過敏症を、前記過敏症により特徴付けられる病態を有する対象に投与された場合、低減し得る組成物が提供される。
【0096】
本発明のペプチドは、組換えまたは化学合成手段により調製することができる。本発明の好ましい態様によれば、ピーナッツ過敏性を有する個体からのT細胞と優先的に免疫反応し、本発明のペプチド配列をコードするベクターにより形質転換された宿主細胞の発現により発現される組換えペプチドまたはその突然変異体が提供される。ペプチドは、別のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質と融合することができる。あるいは、ペプチドは、化学合成技術、例えば、Merrifield固相合成手順により調製することができる。さらに、上記の配列の合成ペプチドは好ましい実施態様を提示するが、本発明は、天然存在ペプチドまたはその断片の生物学的に純粋な調製物にも及ぶ。「生物学的に純粋」は、重量、活性または他の好適な手段により決定して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、または好ましくは少なくとも約80%、いっそうさらに好ましくは少なくとも約90%またはそれよりも多くを含む調製物を意味する。
【0097】
したがって、本発明は、上記定義のAra h1および/またはAra h2の少なくとも1つのT細胞コアエピトープ領域を、他のアミノ酸(天然存在であってもなくてもよい)または他の化学種と同時に含むペプチドを包含するものと理解されたい。本発明の好ましい態様において、そのようなペプチドは、Ara h1および/またはAra h2の1つ以上のエピトープ(エピトープは、T細胞コアエピトープ領域である)を含み得る。Ara h1および/またはAra h2の1つ以上のT細胞エピトープを有するペプチドが、治療有効性の増加に望ましい。
【0098】
上記に詳述されるとおり、本発明は、上記定義のペプチドを含む組成物を対象とする。しかし、主題組成物は、追加の構成要素、例えば、追加のペプチドを含み得ることを理解されたい。これらのペプチドは、例えば、コア最小エピトープの部分領域を包含し得る。あるいは、これらは、本明細書に開示のT細胞エピトープのいかなる部分も含み得ないが、いずれかの理由のために取り込むことができる。組成物中に含めることができる他のペプチドの例としては、限定されるものではないが、
【化30】
またはそれらの機能的誘導体もしくはホモログが挙げられ、残基Xは、システインまたはセリンである。
【0099】
規定の状況の詳細を考慮して有利であり得るさらに他のペプチドまたは分子を含めることもできる。
【0100】
別の態様において、本発明は、上記定義のT細胞エピトープおよびペプチドもしくはそれらの誘導体、ホモログもしくはアナログをコードし、またはそれらをコードする配列に相補的な1つ以上の核酸分子を含む核酸分子組成物を提供する。
【0101】
「ペプチド」への言及は、1つ以上のT細胞エピトープを含むペプチドへの言及を含むことを理解されたい。主題ペプチドをコードする核酸分子は、好ましくは、デオキシリボ核酸の配列、例えば、cDNAまたはゲノム配列である。ゲノム配列は、エクソンとイントロンを含み得る。ゲノム配列は、プロモーター領域または他の調節領域も含み得る。
【0102】
核酸分子は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞または植物細胞)中で発現し得る発現ベクターにライゲートすることができる。核酸分子は、別の実体、例えば、シグナルペプチドなどをコードする核酸分子とライゲートまたは融合またはそうでなければ会合させることができる。これは、3’もしくは5’末端部分または3’および5’末端部分の両方のいずれかにおいてその核酸分子と融合、連結またはそうでなければ会合している追加のヌクレオチド配列情報も含み得る。核酸分子は、ベクター、例えば、発現ベクターの部分でもあり得る。後者の実施形態により、形態が本発明により包含される主題ペプチドの組換え体の産生が容易となる。
【0103】
このような核酸は、適切なベクター中への挿入および好適な細胞系中への形質移入による、Ara h1および/もしくはAra h2のT細胞エピトープまたはそれらを含むタンパク質の組換え体の産生に有用であり得る。このような発現ベクターおよび宿主細胞系も本発明の態様を形成する。
【0104】
組換え技術によるペプチドの産生において、本発明によるペプチドをコードする配列を有する核酸またはその核酸配列の機能的均等物により形質転換された宿主細胞を、特定の関連細胞に好適な培地中で培養する。次いで、ペプチドを細胞培養培地、宿主細胞またはその両方から、当分野において周知の技術、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動またはそのペプチドに特異的な抗体を用いる免疫学的精製を使用して精製することができる。
【0105】
Ara h1および/もしくはAra h2、またはAra h1および/もしくはAra h2のT細胞コアエピトープ領域を含有するペプチドをコードする核酸は、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)中で発現させることができる。好適な発現ベクター、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントは、Sambruck et al(1989)に参照される。他の好適な発現ベクター、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現エレメントは、当業者に周知である。酵母における好適な発現ベクターの例としては、Yep Sec 1(Balderi et al.,1987,Embo J.,6:229-234);pMFa(Kurjan and Herskowitz.,1982,Cell.,30:933-943);JRY88(Schultz et al.,1987,Gene.,54:113-123)およびpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)が挙げられる。これらのベクターは、バキュロウイルスおよび哺乳動物発現系として自由に入手可能である。例えば、昆虫細胞中の発現のためのバキュロウイルス系が市販されている(ParMingen,San Diego,CA)一方、哺乳動物細胞中の発現のためのpMsgベクターも市販されている(Pharmacia,Piscataway,NJ)。
【0106】
大腸菌(E.coli)中の発現について、好適な発現ベクターとしては、とりわけ、pTrc(Amann et al.,1998,Gene.,69:301-315)、pGex(Amrad Corporation,Melbourne,Australia);pMal(N.E.Biolabs,Beverley,MA);pRit5(Pharmacia,Piscataway,NJ);pEt-11d(Novagen,Maddison,WI)(Jameel et al.,1990,J.Virol.,64:3963-3966)およびpSem(Knapp et al.,1990,Bio Techniques.,8:280-281)が挙げられる。例えば、pTRC、およびpEt-11dの使用は、未融合タンパク質の発現をもたらす。pMal、pRit5、pSemおよびpGexの使用は、マルトースE結合タンパク質(pMal)、プロテインA(pRit5)、トランケートガラクトシダーゼ(PSEM)またはグルタチオンSトランスフェラーゼ(pGex)に融合しているアレルゲンの発現をもたらす。Ara h1のT細胞エピトープまたはそれを含有するペプチドが融合タンパク質として発現される場合、担体タンパク質と関連ペプチドとの間の融合連結部において酵素開裂部位を導入することが特に有利である。次いで、本発明のペプチドは、酵素部位における酵素的開裂ならびにタンパク質およびペプチド精製のための慣用の方法を使用する生化学的精製を介して融合タンパク質から回収することができる。異なるベクターは、異なるプロモーター領域も有し、それにより、構成的発現もしくは誘導性発現または温度誘導が可能となる。さらに、組換え発現されるタンパク質を分解する変更能力を有する異なる大腸菌(E.coli)宿主中で組換えペプチドを発現させることが適切であり得る。あるいは、大腸菌(E.coli)により優先的に利用されるコドンを使用するために核酸配列を変更することが有利であり得、そのような核酸変更は、発現されるタンパク質のアミノ酸配列に影響を与えないものである。
【0107】
宿主細胞は、慣用の技術、例えば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン介在形質移入またはエレクトロポレーションを使用して形質転換して本発明の核酸を発現させることができる。宿主細胞を形質転換するための好適な方法は、Sambruck et al.(1989)、および他の実験室テキストに見出すことができる。本発明の核酸配列は、標準的技術を使用して化学合成することもできる。
【0108】
本発明によるペプチドの組換え産生に加え、核酸は、実験または精製目的のためのプローブとして利用することができる。
【0109】
目下、本明細書に開示のペプチドの同定および合成により、ピーナッツ関連免疫病態に関して使用される一連の予防および治療的治療プロトコル開発が容易になる。その開発の中で使用される試薬の開発も容易になる。したがって、本発明は、患者の治療的および/または予防的治療におけるペプチドまたはその機能性誘導体、ホモログもしくはアナログの使用に及ぶことを理解されたい。このような治療方法としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:(i)ピーナッツAra h1および/もしくはAra h2またはAra h1様および/もしくはAra h2様分子に対する脱感作または免疫学的寛容の誘導の手段としての、患者への主題ペプチドまたはその突然変異体の投与。これは、例えば、Ara h1および/またはAra h2指向Th2アネルギーまたはアポトーシスを誘導することにより達成することができる。好ましい実施形態において、このようなアウトカムは、T細胞エピトープ反応性を維持するが、IgE結合を受け得ないペプチドの使用により達成される。あるいは、寛容を導入するための規定のレジメンに従う規定濃度の所与のペプチドの投与に基づく治療プロトコルを利用することができる。このような方法により、Ara h1および/もしくはAra h2過敏症を排除し得、またはAra h1および/もしくはAra h2過敏症もしくはAra h1および/もしくはAra h2を含有する組成物中に存在するアレルゲンに対する感受性、例えば、ピーナッツアレルギーの重症度を低減させ得る。本明細書における、Ara h1および/またはAra h2感受性の治療への言及は、感受性がAra h1および/またはAra h2以外のアレルゲンに対して指向されるとしても、Ara h1および/またはAra h2を含む組成物、例えば、一般にピーナッツに対する感受性により特徴付けられる病態の治療の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0110】
好ましくは、このような治療レジメンは、関連個体のT細胞応答またはBおよびT細胞応答の両方を改変し得る。本明細書において使用される場合、ピーナッツ過敏症に罹患する個体のアレルギー応答の改変は、標準的な臨床手順により決定される、Ara h1分子に対する非応答性の誘導または症状の縮小のいずれかとして定義することができる(Varney et al.1991 British Medical Journal 302:265-269)。症状の縮小としては、治療レジメンが完了した後の個体におけるAra h1に対するアレルギー応答の任意の低減が挙げられる。この縮小は、主観的であり得、または、例えば、当分野において公知の標準的な食物チャレンジ試験もしくは標準的な皮膚試験の使用により、臨床的に決定することができる。
【0111】
個体を本発明のペプチドに曝露させることにより、適切なT細胞下位集団を寛容化またはアネルギー化させることができ、その結果、それらはAra h1および/またはAra h2に対して非応答性になり、そのような曝露時の免疫応答の刺激に関与しない。好ましくは、本発明によるペプチドは、免疫優性T細胞エピトープを保持するが、IgE結合が消失している。さらに、問題のアレルゲンがAra h1および/またはAra h2ではなく、Ara h1および/またはAra h2と同一の組成物中に存在する異なるアレルゲン(例えば、異なるピーナッツアレルゲン)に指向されるとしても、Ara h1および/またはAra h2による免疫化により、そのアレルゲンに対する過敏症の程度を低減させるように作用するバイスタンダー抑制効果を誘導し得る。
【0112】
本発明のペプチドの投与は、天然存在Ara h1および/またはAra h2アレルゲンに曝露された場合と比較してサイトカインの分泌プロファイルを改変し得る。この曝露はまた、通常、アレルギー応答に関与するT細胞下位集団を、アレルゲンに通常曝露されている1つまたは複数の部位から離れ、治療物投与の1つまたは複数の部位に向かって移動させ得る。このT細胞下位集団の再分布は、アレルゲンに通常曝露されている部位において通常の免疫応答を刺激する個体の免疫系の能力を良化または低減させ、アレルギー症状の縮小をもたらす。
【0113】
B細胞応答の改変は、例えば、上記に詳述されるT細胞により産生されるサイトカインプロファイルの改変を介して達成することができる。具体的には、T細胞誘導のIL-4およびIL-13産生を減少させ、それによりIgE合成を減少させる。
【0114】
(ii)本発明のペプチドは、生物学的試料または患者からのAra h1および/またはAra h2指向T細胞を除去する吸着剤という性質で使用することができる。
【0115】
したがって、別の態様において、本発明は、Ara h1および/もしくはAra h2、またはAra h1および/もしくはAra h2を含む組成物中のアレルゲンに対する、異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる対象における病態を治療および/または予防する方法であって、有効量の上記定義の免疫調節組成物を、前記Ara h1および/もしくはAra h2または他のアレルゲンに指向されるT細胞の前記対象における存在もしくは機能を除去または低減させるために十分な時間および条件下で前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0116】
好ましくは、前記病態は、ピーナッツまたはAra h1およびAra h2様もしくはAra h1もしくはAra h2様分子を含有する樹木性堅果、例えば、ヘーゼルナッツ、アーモンドまたはブラジルナッツに対する過敏症である。
【0117】
一実施形態において、前記方法は、Ara h1および/もしくはAra h2または前記組成物の他のアレルゲンに対して脱感作させ、またはそれに対する免疫学的寛容を誘導する。
【0118】
別の実施態様において、前記脱感作または寛容は、T細胞アネルギーまたはアポトーシスを誘導することにより達成される。
【0119】
いっそうさらに別の実施態様において、前記脱感作または寛容は、Ara h1またはAra h2特異的Treg細胞を誘導することにより達成される。
【0120】
「有効量」は、少なくとも部分的に所望される免疫応答を獲得するため、または治療される特定の病態の発症を遅延させるため、または進行を阻害するため、または発生もしくは進行を完全に停止させるために必要な量を意味する。量は、治療される個体の健康状態および体調、治療すべき個体の分類群、所望される保護の程度、組成物の配合、医学的状況の評価、および他の関連因子に応じて変動する。この量は、定型的試験を介して決定することができる比較的広い範囲であることが予測される。
【0121】
治療または予防の対象は、一般に、哺乳動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ)である。好ましくは、哺乳動物は、ヒトまたは霊長類である。最も好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0122】
本明細書において、「治療」および「予防」への言及は、その最も広い内容で考慮すべきである。用語「治療」は、必ずしも、対象が完全回復するまで治療されるということを意味しない。同様に「予防」は、必ずしも、対象が最終的に疾患状態にならないことを意味しない。したがって、治療および予防は、特定の状態の症状を良化させること、または特定の病態を発現することを妨害すること、もしくはそうでなければ特定の病態を発現するリスクを減少させることを含む。用語「予防」は、特定の病態の重症度または発症を低減させるものとみなすことができる。「治療」も、既存の病態の重症度を低減させ得る。
【0123】
医薬組成物の形態の本発明の組成物(本明細書において「薬剤」と呼称される)の投与は、任意の簡便な手段により実施することができる。特定の症例に依存する量で投与された場合、医薬組成物の薬剤は治療活性を示すことが企図される。変動は、例えば、ヒトまたは動物および選択される薬剤に依存する。広範囲の用量が適用可能であり得る。患者を考慮して、例えば、約0.01 g~約1mgの薬剤を、1用量当たり投与することができる。投与量レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、いくつかの分割用量を毎日、毎週、毎月または他の好適な時間間隔で投与することができ、または用量は急を要する状況により指示されるとおり比例的に低減させることができる。別の例において、前記組成物を最初に投与して寛容を誘導し、次いで、必要により、組成物のブースター投与を施して寛容を維持する。これらのブースターは、例えば、毎月投与し、任意の期間、例として、患者の一生にわたり投与することができる。
【0124】
薬剤は、簡便な様式、例えば、経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内(慣習的な針または経皮送達デバイスの使用の有無を問わない)、経皮、鼻腔内、舌下もしくは坐剤の経路、または移植(例えば、徐放性分子を使用する)により投与することができる。好ましくは、前記組成物は、皮内投与する。薬剤は、薬学的に許容可能な非毒性の塩、例えば、酸付加塩または金属錯体、例えば、亜鉛、鉄などとの錯体(本出願の目的のための塩とみなされる)の形態で投与することができる。このような酸付加塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩などである。活性成分を錠剤の形態で投与すべき場合、錠剤は、結合剤、例えば、トラガカント、トウモロコシデンプンまたはゼラチン;崩壊剤、例えば、アルギン酸;および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムを含有し得る。
【0125】
これらの方法によれば、本発明により定義される薬剤は、1つ以上の他の化合物または分子と同時投与することができる。「同時投与する」は、同一の配合物中もしくは2つの異なる配合物中の、同一もしくは異なる経路を介する同時投与、または同一もしくは異なる経路による連続投与を意味する。「連続」投与は、2つのタイプの分子の投与の間が、秒、分、時または日の時間差であることを意味する。これらの分子は、任意の順序で投与することができる。本発明のペプチドをそれ自体、同時または連続投与することができることも理解されたい。これらは、1つ以上の組成物として、同時または連続投与することができる。例えば、1つの配合物中でペプチドのいくつかを、および別個の配合物中で他のペプチドを配合することができ;これら2つの配合物をそれぞれの腕部中に1回与える。あるいは、追加の別個の配合物を生成し、異なる部位に同時に、または連続投与することができる。適切な配合物または配合物の混合物の産生を設計および生成することは当業者の技能の十分範囲内である。
【0126】
本発明の別の態様は、Ara h1および/またはAra h2に対する異常な、不所望な、またはそうでなければ不適切な免疫応答により特徴付けられる哺乳動物における病態の治療のための医薬品の製造における上記定義の免疫調節組成物の使用を企図する。
【0127】
好ましくは、前記病態は、ピーナッツまたはAra h1および/もしくはAra h2またはAra h1様および/もしくはAra h2様分子を含有する樹木性堅果、例えば、ヘーゼルナッツに対する過敏症である。
【0128】
さらに別のさらなる態様において、本発明は、上記定義の組成物を1つ以上の薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤と一緒に含むワクチンを企図する。前記組成物は、活性成分と称される。
【0129】
注射使用に好適な医薬形態としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌注射溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられ、またはクリーム剤の形態もしくは他の局所適用に好適な形態であり得る。これは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌および真菌の汚染作用に対して保存しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用、分散液の場合に要求される粒子サイズの維持および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物作用の妨害は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより行うことができる。等張性調節剤は、ヒト血漿と等張の調製物を保持し、したがって組織損傷を回避するために有用である。一般に使用される等張剤としては、デキストロース、トレハロース、グリセリンおよびマンニトールが挙げられる。グリセロールおよび塩化ナトリウムは、他の任意選択であるが、一般に使用されることは少ない。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中で使用することにより行うことができる。
【0130】
滅菌注射溶液は、上記の他の種々の成分とともに適切な溶媒中で、要求量で活性成分を取り込み、必要に応じて、次いで濾過滅菌を行うことにより調製される。一般に、分散液は、基礎分散媒および上記の要求される他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に種々の滅菌活性成分を取り込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と、事前に滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望成分の粉末を生じさせる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0131】
活性成分が、好適に保護される場合、それらは、例えば、不活性な希釈剤もしくは吸収可能な食用担体とともに経口投与することができ、または硬もしくは軟シェルカプセル剤中に密封することができ、または錠剤に圧縮することができ、または食事に直接取り込むことができる。経口治療投与について、活性成分は、賦形剤とともに取り込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウェファー剤などの形態で使用することができる。このような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含有すべきである。組成物および調製物の割合は、もちろん変えることができ、便宜上、単位重量の約5~約80%の間であり得る。このような治療有用組成物中の活性化合物の量は、好適な投与量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物または調製物は、経口単位剤形が、約0.1μg~1000μgの間の活性化合物を含有するように調製される。
【0132】
錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤などは、以下に列記される構成要素も含有し得る:結合剤、例えば、ゴム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、例えばスクロース、ラクトースもしくはサッカリン、または香味剤、例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはチェリー香味料を添加することができる。単位剤形がカプセル剤である場合、それは、上記のタイプの材料に加え、液体担体を含有し得る。種々の他の材料がコーティングとして存在し得、またはそうでなければ投与量単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸薬またはカプセル剤は、セラック、糖またはその両方によりコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、ならびに香味料、例えば、チェリーまたはオレンジフレーバーを含有し得る。もちろん、任意の単位剤形の調製において使用される任意の材料は、薬学的に純粋であるべきであり、用いられる量で実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性化合物は、徐放調製物および配合物中に取り込むことができる。
【0133】
医薬組成物は、遺伝子分子、例えば、標的細胞を形質移入し得、調節剤をコードする核酸分子を担持するベクターも含み得る。ベクターは、例えば、ウイルスベクターであり得る。
【0134】
投与経路としては、限定されるものではないが、呼吸器(例えば、エアロゾルを介して鼻腔内または口腔内)、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、皮内、経皮、筋肉内、眼内、鞘内、大脳内、鼻腔内、点滴、経口、直腸内、IVドリップパッチ(drip patch)を介して、植込および舌下が挙げられる。好ましくは、前記投与経路は、皮下、皮内、経皮または鼻腔内である。
【0135】
本発明のさらに別の態様は、本発明の方法において使用される上記定義の組成物に関する。
【0136】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに記載される。
【実施例
【0137】
実施例1
Ara h1およびAra h2は、ピーナッツ中の最もアレルギー性の豊富なタンパク質であり、それにより、それらの優性T細胞エピトープを含むペプチドが治療法における包含に必須となる。免疫療法のためのペプチドを選択する場合の別の重要な検討事項は、それらが異なるMHCクラスII分子(ヒトにおけるHLA分子)により提示され得、したがって遺伝的に多様なヒト集団の治療に好適か否かである。T細胞に対するペプチド提示のHLA拘束は、遮断抗体およびHLAゲノタイピングを使用して試験し、同定された全てのT細胞エピトープが2つ以上の異なるHLA分子上で提示され得ることを示した。さらに、同定されたT細胞エピトープが、HLA-DR、HLA-DQおよびHLA-DP分子の組合せ上で集合的に提示されることが実証された(表2)。HLA-DQおよびDP拘束T細胞エピトープの包含は、治療物に特に有利である。それというのも、これらのHLA型は、混合集団中でHLA-DR分子よりも保存されており、より少ないT細胞エピトープ配列についてより広い集団カバレージが可能となるためである。
【0138】
隣接または重複T細胞エピトープは、単一ペプチド(<20aa長)に合わせて最終治療物セット中のペプチドの数を最小化し、Ara h2からの3つの候補ペプチドおよびAra h1からの7つの候補ペプチドをもたらした。システイン残基はペプチド安定性および生物学的反応性にとって問題であり得るため、システイン残基を、構造的に保存されているが反応性が低いセリン残基により置換した。安定性および/または溶解度を改善するために2つのAra h1ペプチドに対してわずかな変化も作製した(表2)。全ての場合において、バリアントペプチドに対するT細胞反応性が保持されることが確認された。
【0139】
【表5】
【0140】
これらのペプチドの前臨床スクリーニングにより、PBMC T細胞反応性(図1)、炎症細胞活性化の欠落(図2)および追加のピーナッツアレルギーコホート(n=40)における血清安定性が確認される。分析対象(n=20)の100%においてこれら10個のペプチドの1つ以上のPBMC T細胞認識が確認され、50~90%がそれぞれのペプチドに応答した。これまでの分析は、上記表2の10個のペプチドが十分な、実現可能な好適な混合物を提供することを明確に実証している。
【0141】
実施例2
【0142】
【表6】
【0143】
材料および方法
対象:ピーナッツアレルギー成人対象を、The Alfred Allergy Clinic,Melbourne,Australiaから採用した。ピーナッツアレルギー対象は、IgE介在性ピーナッツアレルギーの臨床症状およびピーナッツ特異的IgE CAPスコア 2( 1.16kUA/l;Pharmacia CAP System(商標)、Pharmacia Diagnostics,Uppsala,Sweden)を有し、多くはアナフィラキシーの病歴を有した。一部の対象を、Victorian Transplantation and Immunogenetics Serviceによりゲノタイピング(HLA-DRB1、-DQB1および-DPB1、エクソン2)した。試験は、The Alfred and Monash University Ethics Committeesにより承認され、それぞれの対象から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0144】
抗原:粗製ピーナッツ抽出物(CPE)を、市販の無塩ドライローストピーナッツから、他で記載されるとおり調製し(de Leon et al.Clin Exp Allergy.2003;33(9):1273-80)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析し、フィルタ滅菌(0.2 m)した。天然Ara h1およびAra h2を、公開されている方法に基づきCPEから濃縮した(de Jong EC et al.Clin Exp Allergy.1998;28(6):743-51)。手短に述べると、Vivaspinカラム(Sartorius Stedim Biotech S.A.,Aubagne,France)を使用してCPEを20mMのTRIS-ビス-プロパン(TBP)、pH7.2中に緩衝液交換し、TBPにより平衡化された5mLのMono-Q 10/10カラム(Pharmacia FPLC System,St Albans,UK)上にアプライした。TBPにより洗浄した後、30mLの0~1MのNaCl/TBPの線形勾配をアプライして結合タンパク質を溶出させた(1mL/分)。0.5mLの分画をSDS-PAGEにより分析し、Ara h1またはAra h2を最小の他のタンパク質とともに含有するものをプールし、PBSに対して透析した。エンドトキシン含有量は、CPE、Ara h1およびAra h2について、それぞれで1.7、4.0および78.0EU/mgであった(Endpoint Chromogenic LALアッセイ、Lonza,Walkersville,USA)。ペプチド(Mimotopes,Victoria,AustraliaおよびGenScript USA Inc,New Jersey,USA)を、10%のジメチルスルホキシド/PBS(20merおよびトランケートペプチドセット)またはPBS、1~2%の酢酸または0.1Mの重炭酸アンモニウム緩衝液中で1~4mg/mlにおいて規定のとおり中で再構成した(カスタム合成コアペプチド)。全ての抗原は、記載のとおり細胞分裂促進性でも毒性でもないことが確認された(Eusebius NP et al.,Int Arch Allergy Immunol.2002;127(3):234-44)。
【0145】
Ara h1およびAra h2特異的CD4+T細胞系(TCL)の生成:5,6-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)ベースの方法を使用してAra h1またはAra h2特異的オリゴクローナルTCLを、ピーナッツアレルギー対象の末梢血単核細胞(PBMC)から生成した(Mannering SI et al.,J Immunol Methods.2005;298(1-2):83-92;Prickett SR,et al.,J Allergy Clin Immunol.2011;127(3):608-15 e1-5)。手短に述べると、2mMのL-グルタミン、100IU/mLのペニシリン-ストレプトマイシンおよび5%のヒトAB血清(Sigma-Aldrich,St Louis,USA)を含有するRPMI-1640(cRPMI)中で培養を実施した。PBMCを0.1μMのCFSE(Molecular Probes,Eugene,USA)により標識し、cRPMI単独、CPE(100μg/mL)、Ara h1もしくはAra h2(10μg/mL)、Ara h1もしくはAra h2 20merペプチドプール(10 g/mL/ペプチド)または対照としての破傷風毒素(TT;10LfU/mL;Statens Serum Institute,Copenhagen,Denmark)とともに37℃において7日間培養した(2.5×106/mL)。CD4-PEおよび7AAD(BD Pharmingen,San Diego,USA)により染色した後、記載のとおり放射線照射同種異系フィーダー細胞、抗CD3(OKT-3)、rIL-2(Cetus,Emeryville,USA)およびFungizone(Invitrogen,Carlsbad,USA)を含有する96Uウェルプレート中にCD4+CFSE弱7AAD細胞をソートした(10個の細胞/ウェル)。必要に応じて細胞にrIL-2をフィードし、10~14日後、48ウェルプレートに移し、Ara h1またはAra h2(10 g/mL)の増殖について試験した。Ara h1またはAra h2陽性TCLをT25培養フラスコ(BD,Franklin Lakes,USA)中で抗CD3およびrIL-2により10~12日間拡張させ、次いでそれぞれの配列に跨る重複20merペプチド(10 g/mL)に対する特異性(増殖)について試験した。コアエピトープ配列を、記載のとおり20merのNまたはC末端からトランケートされたペプチドセットを使用して選択20mer内でマッピングした(Prickett SR,et alc.J Allergy Clin Immunol.2011;127(3):608-15 e1-5)。
【0146】
T細胞アッセイ:全ての培養は、2mMのL-グルタミン、100IU/mLのペニシリン-ストレプトマイシンおよび5%の熱不活化ヒトAB血清(Sigma-Aldrich,St Louis,USA)を含有するRPMI-1640(cRPMI)中で実施した。抗原誘導TCL増殖は、3H-チミジン(H-TdR)取り込みアッセイにより以下のとおり評価した:アッセイは、1×10個のT細胞/ウェル、抗原提示細胞としての1×10個の放射線照射(5000rads)自己EBV形質転換PBMC(EBV-B細胞)および抗原を規定のとおり含有する96Uウェルプレート中の72時間のデュプリケートまたはトリプリケートの培養物に対して実施した。陰性対照はcRPMI単独であった。細胞をH-チミジン(H-TdR;0.5 Ci/ウェル)により最後の16時間パルス処理し、取り込みをレプリケート培養物の1分当たりの平均カウント(cpm)として記録した。 2.5の刺激指数(SI;cpm抗原刺激T細胞/cpm未刺激T細胞)を陽性とみなし、全ての陽性応答が 2つのアッセイにおいて確認された。全PBMC内のペプチド誘導CD4+T細胞増殖の検出を可能とするため、CFSE標識PBMCの7日間培養をTCL生成について記載のとおり設定し、抗CD25抗体(BD)を添加して増殖に加えてT細胞活性化を評価した。少なくとも10,000個のCD4+T細胞を試料ごとに分析し、抗原を有するCD4+CFSE低(増殖)、CD4+CD25+(活性化)またはCD4+CD25+CFSE低(活性化および増殖)細胞の割合を、抗原を有さない同一集団(バックグラウンド)の割合により割ってSIを計算した。CD4+CD25+CFSE低(活性化および増殖)細胞の分析は、T細胞応答の検出のための最も感受性の方法を提供し、陽性としてSI 1.5を指定する。
【0147】
HLAクラスII遮断アッセイ:T細胞および放射線照射EBV-B細胞 (それぞれ1×10個)を、HLA-DR(L243,BD Pharmingen)、HLA-DQ(SVP-L3)もしくはHLA-DP(B7/21)に対する0.1~10 g/mLの遮断モノクローナル抗体(mAb)またはアイソタイプ対照抗体(IgG2a:BD Pharmingen;IgG1:BioLegend,San Diego,USA)とともに37℃において1時間インキュベートしてからペプチド(2~10 g/mL)またはCPE(100 g/mL)を添加し、上記のとおり増殖応答を試験した。
【0148】
サイトカインELISPOTアッセイ:MAIP ELISPOTプレート(Millipore,Billerica,USA)を、PBS中10 g/mLのIL-4、IFN- またはIL-5抗体(eBioscience,San Diego,USA)により4℃において一晩コーティングした。ウェルをブロッキングし(cRPMI、1時間、37℃)、次いでPBMC(3.5×10個)またはT細胞および放射線照射EBV-B細胞(それぞれ1×104個)を、CPE(100 g/mL)、nAra h2(10 g/mL)またはペプチド(10 g/mL)を有するデュプリケート100 L培養物中で添加した。対照は、cRPMI単独、TT(10lfU/ml)およびフィトヘマグルチニン(1 g/mL;Sigma-Aldrich)であった。48時間の37℃における培養後、プレートをビオチン化IL-4、IL-5またはIFN- 抗体(eBioscience)(1 g/mlのPBS、2時間)、次いでExtrAvidin(登録商標)アルカリホスファターゼ(Sigma-Aldrich)(1/3,000PBS、2時間)とともにインキュベートしてから、アルカリホスファターゼ基質(Bio-Rad)により発色させた。スポットが陽性対照ウェル中で出現した場合、プレートを洗浄し、空気乾燥させ、読み取った(AID ELISPOT 4.0hリーダー、Autoimmun Diagnostika,Strassberg,Germany)。
【0149】
好塩基球活性化試験:好塩基球活性化は、記載のとおりフローサイトメトリーにより検出されるCD63上方調節により評価した(Drew AC,et al.,J Immunol.2004;173(9):5872-9)。陽性対照は、ウサギ抗ヒトIgE抗体(7.5μg/mL;DAKO Corporation,CA,USA)、N-ホルミル-メチオニン-ロイシン-フェニルアラニン(fMLP)(0.4μg/mL;Sigma)およびCPEであった。CPEは、3log濃度範囲(50、5および0.5μg/mL)にわたり試験し、ペプチドプールを4log濃度範囲(50、5、0.5および0.05μg/mL)にわたり試験した。ヒスタミン放出は、Histamine ReleaseおよびHistamine ELISAキット(IBL International GmbH,Hamburg,Germany)を製造業者の説明書に従って使用して評価した。
【0150】
結果
優性20mer選択において考慮される因子としては、以下が挙げられる:
・レスポンダー頻度
・患者ごとに生成された特異的TCLの数/患者PBMC中の特異的T細胞の発生率
・T細胞応答の大きさ
・T細胞応答のパターン(対象内および間で認識されるペプチド組合せ)
・ペプチドを用いて全PBMC集団のうち特異的T細胞を直接標的化する能力(CFSEスクリーニング)
・T細胞応答の一貫性
・20merペプチド内のコアT細胞エピトープの同定
【0151】
Ara h1優性20mer選択
145個のAra h1特異的T細胞系(TCL)を18人のピーナッツアレルギードナーから生成し、Ara h1に跨る65/69個の重複20merペプチドがそれらのTCLにより認識された(表3および図5参照)。これら65個の20merの14個を最も高頻度で認識されるものとして選択した(18人のレスポンダーの4~6人;22~33%)(ペプチド番号23、24、26、38、40、44~51および57)。これら14個のペプチドのうち、9つをさらなる分析のために選択した(ペプチド番号23、24、40、46、47、49、50、51および57)(表4)。
【0152】
これらの選択は、対象当たりの特異的TCLの数、TCL応答の大きさ、TCL応答の再現性およびPBMC中の特異的T細胞を標的化する能力に基づき行った。選択された9つの20merは:
・このコホート中の18人の対象の16人(89%)からのTCLにより集合的に認識され、
・典型的には、特異的TCL中の強力で一貫した応答を誘導し、
・それぞれ、多くのレスポンダーからの複数のTCLにより認識され、
・それぞれ、ドナーPBMC中の特異的T細胞を標的化し得た(18/20人の追加の対象において検出可能なPBMC T細胞応答を集合的に誘導し、20mer当たり8~16人のレスポンダー(40~80%)であった。
【0153】
9つの20merの1つ以上は、TCL単離および/またはCFSEスクリーニングにより分析された38人の対象の35人(92%)におけるT細胞により認識された(表3)。
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
優性Ara h1 20merを用いるPBMCスクリーニング
表5は、 1つの優性20merペプチドが18/20人(または全データの22/24人)により認識されることを示す。それぞれの20merペプチドは、少なくとも7人の対象により認識される。CFSEおよびTCLデータを合わせ:認識は、43/45人の対象において確認された。
【0157】
【表9】
【0158】
Ara h2優性20mer選択
69個のAra h2特異的T細胞系(TCL)を、16人のピーナッツアレルギードナーから生成し、Ara h2に跨る16/17個の重複20merペプチドがそれらのTCLにより認識された(表6)。これら16個の20merの4つを最も高頻度に認識されるものとした選択した(それぞれ、16人のレスポンダーの7~9人;44~46%)(ペプチド番号4、5、11、15)(図7)。これらの選択は、対象当たりの特異的TCLの数、TCL応答の大きさ、TCL応答の再現性およびPBMC中の特異的T細胞を標的化する能力に基づき行った。選択された4つの20merペプチドは:
・このコホート中の16人の対象全員(100%)からのTCLにより集合的に認識され、
・典型的には、特異的TCL中の強力で一貫した応答を誘導し、
・それぞれ、多くのレスポンダーからの複数のTCLにより認識され、
・69個全てのTCLの約80%により集合的に認識され、
・それぞれ、ドナーPBMC中の特異的T細胞を標的化し得た(検出可能なPBMC T細胞応答は、試験された6人の対象において実証された)。
【0159】
4つの20merの1つ以上は、TCL単離および/またはCFSEスクリーニングにより分析された16/16人の対象(100%)におけるT細胞により認識された(表6)。
【0160】
【表10】
【0161】
【表11】
【0162】
コアT細胞エピトープマッピング
技術的アプローチ
異なる対象からのTCLを使用してそれぞれのコアT細胞エピトープをマッピングした。正確なT細胞エピトープは、TCLおよび対象間で変動した。それぞれの選択20mer内の最小T細胞刺激配列(コアエピトープ)を、トランケートペプチドセットに対する異なる対象からの反応性TCLの増殖の試験により決定した(図8)。最大T細胞増殖を誘導するために要求される残基の数は、異なるTCLおよび/または対象間で6~19aaで変動した(表8および9)。最適なエピトープ認識に要求されるフランキング残基の数の変動に起因して、TCLは、共通のコア配列を含有するペプチドが認識を誘導した場合に同一のエピトープを認識するとみなした。この基準に基づき、10個の区別されるAra h1および5つの区別されるAra h2CD4T細胞エピトープを同定し(「併合エピトープ」、表8および9)、共通の「最小コアエピトープ」配列は、5~12aaで変動した(下線配列、表8および9)。「併合エピトープ」配列は、考えられる最も広い認識を確保するための異なる対象にわたる最適なT細胞反応性に要求される全ての残基を包含する最小配列であった。
【0163】
(i)優性Ara h1 20mer中に見出されるコアT細胞エピトープ
コアT細胞エピトープ配列を、優性Ara h1 20merペプチド内でマッピングした。重複T細胞エピトープの4つのペアを含む10個のAra h1T細胞エピトープを同定した(「併合T細胞エピトープ」)(表8)。
【0164】
【表12】
【0165】
(ii)優性Ara h2 20mer中に見出されるコアT細胞エピトープ
コアT細胞エピトープ配列を、優性Ara h2 20merペプチド内でマッピングした。重複T細胞エピトープの2つのペアを含む5つのAra h2T細胞エピトープを同定した(「併合T細胞エピトープ」)(表9)。
【0166】
【表13】
【0167】
Ara h1およびAra h2T細胞エピトープのHLA拘束
優性T細胞エピトープのT細胞認識を、HLA-DP、HLA-DQまたはHLA-DRに対するモノクローナル抗体により遮断した(図9)。一部のT細胞エピトープは、HLA-DRおよびHLA-DQ分子上の両方で提示される一方、T細胞エピトープは、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR上で集合的に提示された(表10)。
【0168】
【表14】
【0169】
Ara h1およびAra h2T細胞エピトープ提示のHLA拘束
優性T細胞エピトープを認識するTCLを有する対象に対してHLAタイピングを実施してT細胞エピトープを潜在的に提示し得るHLAサブタイプを評価した。HLA-DR/DQ/DP拘束が確認されたT細胞エピトープを認識する対象についての共有されるHLAアレルの不存在は、T細胞エピトープHLA結合デジェネラシーを示した。Ara h1結果を表11に示し、Ara h2結果を表12に示す。
【0170】
【表15】
【0171】
【表16】
【0172】
Ara h2T細胞エピトープ(95~107)の認識が抗HLA-DQにより遮断された全ての対象間で共有されるHLA-DQB1アレルの不存在は、このT細胞エピトープが複数のHLA-DQB1分子により提示されるはずであることを示した。同様に、Ara h2T細胞エピトープ(127~141)または(37~47)の認識が抗HLA-DRにより遮断された対象間のHLA-DRB1アレルの多様性は、複数のHLA-DRB1分子についての両方のT細胞エピトープの結合デジェネラシーを示した。
【0173】
少なくとも2つのHLA-DR分子による提示に加え、Ara h2T細胞エピトープ(37~47)は、HLA-DQB106:09によっても提示された。それというのも、HLA-DQに関してこのT細胞エピトープを認識した両方の対象は、このアレルを有したためであり、対象9については、DQB1アレルのみが存在した。
【0174】
DPB104:01またはDRB115:01アレルは、Ara h2T細胞エピトープ(32~44)(抗HLA-DPにより遮断)または(95~107)(抗HLA-DRにより遮断)をそれぞれ認識する全ての対象中に存在するため、それらのT細胞エピトープのデジェネラシーは決定することができなかった。しかしながら、DPB10401およびDRB11501は世界中の人口において高頻度であるため、それらのHLA分子により提示されるT細胞エピトープは、依然として広く認識される。
【0175】
所与のHLA型上で優性併合Ara h1T細胞エピトープを認識する2人以上の対象間で共有されるアレルは存在せず、したがって、同定されたAra h1T細胞エピトープのそれぞれが2つ以上の異なるHLA分子によっても提示されることが実証された。
【0176】
HLA結合モチーフの予測:Ara h1 20merペプチド
表13は、優性Ara h1 20mer内の結合モチーフについてのHLA-DR予測アルゴリズムについての結果のまとめを提供する。
【0177】
【表17】
【0178】
HLA結合モチーフの予測:Ara h2 20merペプチド
表14は、3つの優性Ara h2 20mer内の結合モチーフについての2つのHLA-DR予測アルゴリズムについての結果のまとめを提供する(予測および実測エピトープとして示されないNB優性「20mer5」は、「20mer4」と重複する)。
【0179】
【表18】
【0180】
【表19】
【0181】
治療送達のためのペプチドの純化
潜在的に問題となるシステイン残基を、構造的に保存されているが化学反応性が低いセリン残基により置き換えた。T細胞反応性の保持が確認された(図10および11)。セリン含有T細胞エピトープペプチドは、天然システイン含有ペプチドと同等のT細胞応答を示した。
【0182】
重複Ara h1T細胞エピトープを 20aa長の単一ペプチドに合わせる
【0183】
【表20】
【0184】
重複Ara h2T細胞エピトープを 20aa長の単一ペプチドに合わせる
【0185】
【表21】
【0186】
Ara h1およびAra h2候補ペプチドのまとめ
10個の候補ペプチドが存在する:Ara h1からの7つおよびAra h2からの3つ(表18)。
【0187】
【表22】
【0188】
比較のため、13個の追加のより短鎖のペプチドバリアント(単一T細胞エピトープベースとする)も設計する。一部の配列は、産生および溶解度のためにペプチド特性を改善するように延長または短縮した(天然配列およびT細胞認識に重要な残基に沿う)。これは、比較のための23個の候補ペプチドのパネルをもたらした。ペプチドの詳細を表19にまとめる。
【0189】
表18のペプチドの全ては、95~99.9%の純度において産生し、溶液を溶解度について測定した。次いで、T細胞応答を25人のピーナッツアレルギー対象からのPBMCにおける2用量におけるそれらのペプチドのそれぞれと比較して最終的な治療物の組合せを選択した。
【0190】
【表23】
【0191】
・NB緩衝液:全てのペプチドを最初にPBS中で試験し;次いで、配列が高pHについて優先性を示唆した場合、0.1MのNH4HCO3、または低pHについては1%の酢酸;1%の酢酸中で可溶性でない場合、2、5、10%などに増加させる。
・N末端「W」を「ペプチド2から除外して安定性および合成の容易性を改善した。
・C末端「E」を「ペプチド7に付加して溶解度を改善した(そうでなければペプチドは毒性緩衝液中を除き不溶性である)。
【0192】
最終ペプチドの選択についての考慮事項
目的:
集団カバレージおよび/またはT細胞反応性を最大化する一方、配列数および/または長さを最小化する。
ペプチド選択についての幅広い考慮事項:
・23ペプチドスクリーンにおけるT細胞応答の比較
・従来のT細胞反応性データ(個々のT細胞エピトープ/ペプチドについて)
・配列(産生の容易性/溶解度)
・HLA拘束(最もデジェネレートおよびHLA-DQ拘束のT細胞エピトープ)
23ペプチドスクリーンからのデータに基づく選択についての考慮事項:
・CD25+CFSE低細胞についてのSI値に基づく主要評価基準
・1つまたは両方の濃度におけるペプチド当たりのドナーレスポンダー頻度
・長鎖バリアントと短鎖バリアントに対する応答を比較する
・応答の強度/一貫性(すなわち、両方の濃度に対して応答する対象と1つの濃度のみに対して応答する対象)
・応答のパターン
【0193】
表20は、34人のピーナッツアレルギー対象における23個の候補ペプチドの完全セットに対するPBMC T細胞応答の分析を示す。これらのデータは、ペプチドを用いる/未刺激の%CD25+CFSE低CD4+T細胞についてのSI値を示す。
【0194】
データをそれぞれのT細胞エピトープ含有領域の長鎖および短鎖バージョンにグループ化する(欄の境界参照;例えば、第1の「群」=ペプチド1、23および24[Pep1は、別個のT細胞エピトープをそれぞれ含有する重複pep23および24を合わせる])。それぞれの群の下段におけるまとめは、その群から選択された最適なペプチドについてコメントする(データは、ペプチドを用いる/未刺激の%CD25+CFSE低CD4+T細胞についてのSI値を示す)。
【0195】
データは、それぞれのペプチド「群」についての長鎖バージョンの50 gの試料(または応答がこの用量に対して良好である10 gの試料)についての値の降下によりソートする。ペプチド群内のそれぞれの行は、単一対象についてのデータを示すが、対象の順序はそれぞれのペプチド群において変動する。
【0196】
【表24】
【0197】
【表25】
【0198】
【表26】
【0199】
【表27】
【0200】
【表28】
【0201】
34人のコホートにおける23ペプチドパネルに対する応答のまとめ
データは、選択された7つペプチドが最良の組合せであることを示すが、枠は、現プールへの置換(または付加)として他の実現可能ペプチドを含有する群を示す:
例えば、
1)ペプチド3をペプチド15に置き換えることができる
2)ペプチド8をペプチド21に置き換えることができる
3)ペプチド9をペプチド23に置き換えることができる
【0202】
【表29】
【0203】
39人のコホートにおける7ペプチド混合物のそれぞれのペプチドに対する応答のまとめ
・全員が1つ以上のペプチドを認識した
・13/39人(33%)が、ペプチドの100%を認識する
・21/39人(54%)が、>85%(6つ以上)のペプチドを認識する
・31/39人(79%)が、>70%(5つ以上)のペプチドを認識する
・それぞれのペプチドは、少なくとも25/39人の対象(64%)により認識される
試験された74人の対象のうち、全員が7つの選択ペプチドの少なくとも1つのペプチドに対して反応した。
【0204】
異なるペプチドプールに対する応答
【0205】
【表30】
【0206】
【表31】
【0207】
【表32】
【0208】
7ペプチドプール(プール7b)に対する好塩基球応答
好塩基球反応性データを、3~4log濃度範囲( g/ml)にわたるピーナッツ(CPE)または7ペプチドプール(プール7b)とのインキュベーション後に14人のピーナッツアレルギー対象から収集した(図2)。これらの対象において、好塩基球活性化およびヒスタミン放出は、全ピーナッツおよび陽性対照により誘導されたが、7ペプチド混合物によっては誘導されなかった。
【0209】
プール7aおよび7bの選択前。続いて、プール7aおよび7bを設計および試験した。
【0210】
PBMC T細胞応答を、全ピーナッツおよび表23のペプチドプール1~5と比較した(図12および13)。プール1~5に関連して、プールは試験された対象全員において陽性T細胞応答を誘導し得なかった。ほぼ全ての応答は、全ピーナッツに対するものよりペプチドプールに対するものがかなり低く(試験濃度において)、プール2、3および4のそれぞれの1人の対象のみが全ピーナッツに関するペプチドに対する応答と同一以上の応答を示した。プール7aおよび7bに関連して、100%応答は、プール7aおよび7bに対して記載した(SI>1.5)。プール7aおよび7bは、多くの患者において全ピーナッツに対する応答と同等以上の応答を誘導した、6/30人= 100CPE応答、6/30人=CPE応答の50~80%。
【0211】
7ペプチドプールに対するPBMC T細胞応答を比較した場合(図14)、プール7aおよび7b間に有意差は存在しなかった(対応があるデータを比較;1群当たりn=15;第3のAra h2ペプチドの添加に利点なし)。ノンパラメトリックデータ;p=0.9)についての対応がないマン・ホイットニー検定を使用してプール7bについての完全データセット(n=30)をプール7aについてのコホートと比較した場合、有意差は依然として存在しなかった。
【0212】
まとめると、プール7aおよび7bは、両方とも、試験された他の5つのプールよりも有意に良好であった。プール7bに対してプール7aの有意差は存在しなかった。プール7bは、試験された対象の100%により認識され、対象の33%超においてピーナッツと同等以上のPBMC T細胞応答を誘導した。プール1~5は、対象の100%により認識されず、全ピーナッツに等しい応答をほとんど誘導しなかった。
【0213】
【表33】
【0214】
【表34】
【0215】
実施例3
Ara h2エピトープ特異的TCCにおけるAra h2ペプチド誘導T細胞アネルギー(図15
Ara h2ペプチド特異的ヒトT細胞クローンのT細胞(1×10個/ml)を、Ara h2ペプチド
【化31】
の存在下で、100μg/mlにおいてアクセサリー細胞の不存在下で、または完全培地単独(抗原なし)中で16時間培養した。次いで、T細胞を十分洗浄し、完全培地単独、IL-2 50U/mlまたは免疫原性濃度のAra h2ペプチド(10μg/ml)により、アクセサリー細胞としての放射線照射自己PBMC(10個/ウェル)の存在下でリチャレンジした(10個/ウェル)。トリチウム化チミジン取り込みと相関する増殖を、72時間において測定した。結果は、トリプリケート培養物について平均cpm+SDとして表現する。完全培地:RPMI+5%のAB血清+ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン+10U/mLのIL-2。
【0216】
Ara h1エピトープ特異的TCCにおけるAra h1ペプチド誘導T細胞アネルギー(図16
Ara h1ペプチド特異的ヒトT細胞クローンのT細胞(1×10個/ml)を、Ara hIペプチド
【化32】
または無関連バヒアグラスPas n1ペプチド(点線)の存在下で、100μg/mlにおいてアクセサリー細胞の不存在下で、または完全培地単独(抗原なし)中で16時間培養した。次いで、T細胞を十分洗浄し、完全培地単独、IL-2 50U/mlまたは免疫原性濃度のAra hIペプチド(10μg/ml)により、アクセサリー細胞としての放射線照射自己PBMC(10個/ウェル)の存在下でリチャレンジした(10個/ウェル)。トリチウム化チミジン取り込みと相関する増殖を、72時間において測定した。結果は、トリプリケート培養物について平均cpmとして表現する。完全培地:RPMI+5%のAB血清+ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン+10U/mLのIL-2。
【0217】
当業者は、本明細書に記載の本発明が具体的に記載されているもの以外の変動および改変を受け得ることを認識する。本発明は、そのような全ての変動および改変を含むと理解されたい。本発明は、本明細書において個々にまたは集合的に称され、または示されるステップ、特徴、組成物および化合物の全て、ならびに前記ステップまたは特徴のいずれか2つ以上の任意および全ての組合せも含む。
【0218】
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