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特許7007535ブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法
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  • 特許-ブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 6/02 20190101AFI20220117BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C12H6/02
C12G3/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021121299
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521327367
【氏名又は名称】株式会社 GEEKSTILL
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】岸川 勇太
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-12616(JP,A)
【文献】特開2020-191805(JP,A)
【文献】仏産ブドウのジン「ジーヴァイン フロレゾン」の魅力と、プロが教える美味しい飲み方, Liquor Page [online], 2021年3月21日,[retrieved on 2021.11.15], Retrieved from the Internet <URL:https://liquorpage.com/gvine-gin-floraison/>
【文献】白ブドウから作られた珍しフランスのジンを、,DEED inc. [online],2020年2月22日,[retrieved on 2021.11.15], Retrieved from the Internet<URL:https://typeab.com/2020/02/22/白ブドウから作られた珍しフランスのジンを、/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G、C12H、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウの花を原料用アルコールにボタニカル浸漬する第1のボタニカル浸漬工程と、
前記第1のボタニカル浸漬工程で得る第1の浸漬液を減圧蒸留または常圧蒸留する第1の蒸留工程と、
前記花を水にボタニカル浸漬する第2のボタニカル浸漬工程と、
前記第2のボタニカル浸漬工程で得る第2の浸漬液を減圧蒸留または常圧蒸留する第2の蒸留工程と、
前記第1の浸漬液を前記第1の蒸留工程で蒸留して第1の抽出液を得る第1の抽出工程と、
前記第2の浸漬液を前記第2の蒸留工程で蒸留して第2の抽出液を得る第2の抽出工程と、
前記第1の抽出液と前記第2の抽出液とをブレンドするブレンド工程とを有することを特徴とするブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載するブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法において、
前記ブドウの花を前記原料用アルコールにボタニカル浸漬する前工程としてブドウの花の花梗を除去する加工除去工程を有することを特徴とするブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール感を出すために微量のアルコール成分を含ませたアルコールテイストのノンアルコール飲料が提案されている(特許文献1参照)。これは、ボタニカルの芳香蒸留水のみでアルコール含量0.00%のジンテイストノンアルコール飲料であり、ジュニパーベリーの芳香蒸留水にバラとラベンダーの芳香蒸留水を加えることによりジンの深みのある香りと味を再現し、これにカルダモンとコリアンダーシードの芳香蒸留水を加えることにより、ジュニパーベリーとバラとラベンダーの芳香蒸留水の微妙な苦みに刺激感が加わりジン独特の切れ味あるアルコール感を醸し出したものである。
【0003】
一方、クラフトジンとしてアルコール度数を適宜調整した各種ボタニカルの芳香を発するジンも提案されている。ただ、ブドウの花の香を発するクラフトジンは、出現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-191805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、効率良くブドウの花の香を発することができるクラフトジンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
ブドウの花を原料用アルコールにボタニカル浸漬する第1のボタニカル浸漬工程と、
前記第1のボタニカル浸漬工程で得る第1の浸漬液を減圧蒸留または常圧蒸留する第1の蒸留工程と、
前記花を水にボタニカル浸漬する第2のボタニカル浸漬工程と、
前記第2のボタニカル浸漬工程で得る第2の浸漬液を減圧蒸留または常圧蒸留する第2の蒸留工程と、
前記第1の浸漬液を前記第1の蒸留工程で蒸留して第1の抽出液を得る第1の抽出工程と、
前記第2の浸漬液を前記第2の蒸留工程で蒸留して第2の抽出液を得る第2の抽出工程と、
前記第1の抽出液と前記第2の抽出液とをブレンドするブレンド工程とを有することを特徴とする。
【0007】
第2の態様は、
第1の態様に記載するブドウの花の香を有するクラフトジンの製造方法において、
前記ブドウの花を前記原料用アルコールにボタニカル浸漬する前工程としてブドウの花の花梗を除去する加工除去工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブドウの花のうちアルコールに溶ける成分と水に溶ける成分とが合わさったより強いブドウの花の香りがするクラフトジンを製造することができる。さらに詳言すると、ブドウの花の香の成分のうちアルコールに溶けやすい成分と、水に溶けやすい成分とは独立して個別に存在するが、本発明の如くアルコールと水に個別に浸漬させ、後に両者をブレンドすることにより、それぞれに溶け込んだ個別の香が合わさって醸し出されることで、より強いブドウの花の香を再現することができる。すなわち、本発明では割り水にも固有の香を溶け込ませることができるので、その分効果的にブドウの花の香を醸し出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態では、まずブドウの花を用意し(S1)、花梗除去工程(S2)で花梗を除去して第1のボタニカル浸漬工程(S3)で原料用アルコール(S4)に対するボタニカル浸漬を行う。ここで、花梗除去工程(S2)における花梗の除去は必要に応じて行えば良い。ただ、花梗を除去することで、第1のボタニカル浸漬工程(S3)で浸漬して得る第1の浸漬液から花梗に基づく香を除去することができ、より純粋なブドウの花の香を浸漬液に浸漬させることができる。ここで浸漬させる原料用アルコール(S4)のアルコール度数は、例えば30~38%が好適である。
【0012】
次に、第1のボタニカル浸漬工程(S3)で得た第1の浸漬液を減圧蒸留工程(S5)または常圧蒸留工程(S6)で蒸留して第1の抽出液(S7)を得る。この第1の抽出液は、ブドウの花の香が溶け込んだアルコール度数が65%程度の液体となる。また、この場合の蒸留圧力は、浸漬液の沸点を考慮し、第1の浸漬液の種類に応じ適宜選択する。ブドウの花の浸漬液の場合は、例えば-0.1(Pa)程度が好適である。大きな減圧環境として浸漬液を低温で蒸発させることで、香成分を分散させることなく抽出することができると考えられるからである。
【0013】
一方、花梗を除去したブドウの花は、第2のボタニカル浸漬工程(S9)で水(S8)にもボタニカル浸漬される。かくして、第2のボタニカル浸漬工程(S9)で得る第2の浸漬液にもブドウの花の香りを浸漬させることができる。
【0014】
その後、第2のボタニカル浸漬工程(S9)で得た第2の浸漬液も第1の浸漬液と同様に、減圧蒸留工程(S10)または常圧蒸留工程(S11)で蒸留して第2の抽出液(S12)を得る。この結果得る第2の抽出液(S12)は、ブドウの花の香が溶け込んだ水となる。この水はブレンド工程(S13)で第1の浸漬液とブレンドされる。すなわち、第1の浸漬液であるアルコールを第2の浸漬液である水で割る。この結果得られるブレンド液は、アルコール度数が40~45%のジンとなる。
【0015】
その後ブレンド液は、貯蔵(S14)、瓶詰め(S15)され、クラフトジン(S16)として製品化する。
【0016】
上記本形態に係る方法により得られたクラフトジン(S16)は、ブドウの花の香が溶け込んだジンとなるばかりでなく、製造過程においてアルコールの割り水として用いる水にもブドウの花の香りを溶け込ませ、かつ、この割り水をブドウの花の香が溶け込んだアルコールの割り水としてブレンドしたので、アルコールに溶け込んだブドウの花の香のみならず、割り水に溶け込んだブドウの花の香も重畳されるので、より強いブドウの花の香を発するものとなる。換言すれば、ブドウの花の香の成分のうちアルコールに溶けやすい成分と、水に溶けやすい成分とは独立して個別に存在するので、本形態の如く第1義的にはアルコール濃度の希釈に用いる割り水にも固有の香を溶け込ませることができ、アルコールと水に個別に浸漬させたブドウの花の香成分を、後に両者をブレンドすることによりアルコールおよび水に個別に溶け込んだ香成分が合わさって醸し出されることで、より強いブドウの花の香を再現することができる。
【符号の説明】
【0017】
(S1) ブドウの花
(S3) 第1のボタニカル浸漬工程
(S4) 原料用アルコール
(S5)、(S10) 減圧蒸留工程
(S6)、(S11) 常圧蒸留工程
(S7) 第1の抽出液
(S8) 水
(S9) 第2のボタニカル浸漬工程
(S12) 第2の抽出液
(S13) ブレンド工程



【要約】
【課題】 効率良くブドウの花の香を発することができるクラフトジンの製造方法を提供する。
【解決手段】 ブドウの花(S1)を原料用アルコール(S4)にボタニカル浸漬する第1のボタニカル浸漬工程(S3)と、第1のボタニカル浸漬工程(S3)で得る第1の浸漬液を減圧蒸留(S5)または常圧蒸留(S6)する第1の蒸留工程と、前記花を水(S8)にボタニカル浸漬する第2のボタニカル浸漬工程(S9)と、第2のボタニカル浸漬工程(S9)で得る第2の浸漬液を減圧蒸留(S10)または常圧蒸留(S11)する第2の蒸留工程と、前記第1の浸漬液を前記第1の蒸留工程で蒸留して第1の抽出液を得る第1の抽出工程(S7)と、前記第2の浸漬液を前記第2の蒸留工程で蒸留して第2の抽出液を得る第2の抽出工程(S12)と、前記第1の抽出液と前記第2の抽出液とをブレンドするブレンド工程(S13)とを有する。
【選択図】 図1
図1