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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】アレルゲン低減化および抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/36 20060101AFI20220203BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20220203BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20220203BHJP
   A01N 47/44 20060101ALI20220203BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220203BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A01N37/36
C09K3/00 S
A01N59/16 Z
A01N43/40 101K
A01N47/44
A01P3/00
A01N25/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016163991
(22)【出願日】2016-08-24
(65)【公開番号】P2017057194
(43)【公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2015183748
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乾 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伸宏
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-510976(JP,A)
【文献】特開2011-231431(JP,A)
【文献】特開2010-215598(JP,A)
【文献】特開2012-233058(JP,A)
【文献】特開2014-019669(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093519(WO,A1)
【文献】特開2006-001889(JP,A)
【文献】特開2008-297335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101176468(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102138569(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101543228(CN,A)
【文献】特開2001-322937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルゲン低減化剤としてのヒドロキシ酸亜鉛を0.01~9%、ビス4級ピリジニウム塩およびポリヘキサメチレンビグアナイドからなる群より選ばれる一種以上のカチオン性抗菌剤および希土類塩を含有する、床、壁、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット、カーシート、カーマットおよびぬいぐるみからなる群の少なくとも一種に用いられてなる、
または紙、不織布および繊維からなる群の少なくとも一種に加工するためのアレルゲン低減化および抗菌組成物であって、
さらに前記ヒドロキシ酸亜鉛はグルコン酸亜鉛であって、
前記アレルゲンがダニアレルゲンおよびスギ花粉アレルゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアレルゲンであることを特徴とする、アレルゲン低減化および抗菌組成物。
【請求項2】
希土類塩がランタン塩、セリウム塩、サマリウム塩、ガドリニウム塩およびイッテルビウム塩から選択される一種以上の塩であることを特徴とする、請求項1に記載のアレルゲン低減化および抗菌組成物。
【請求項3】
ビス4級ピリジニウム塩が、1,4-ビス(3,3´-(1- デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロミドであることを特徴とする、請求項1または2に記載のアレルゲン低減化および抗菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のアレルゲン低減化および抗菌組成物に関する。さらには、室内等に存在するダニや花粉等のアレルゲンの低減化と、雑菌の繁殖を抑制するためのアレルゲン低減化および抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患は多くの人が悩まされているものであり、特に近年では増加する傾向となっている。これらのアレルギー性疾患の原因となっているのは環境中に存在する種々のアレルゲンであり、それらの中でも屋内に棲息するダニやペットの毛、花粉、カビは代表的な吸入性のアレルゲンとして、良く知られている。特に家屋内に生息する塵性ダニであるヒョウヒダニ類はアレルゲンの発生源として大きな問題となっている。ヒョウヒダニ類は畳、絨毯、寝具、カーテン等の家屋内の繊維製品、あるいは屋外においても電車や自動車等の移動車両の座席シート生地等が生育の温床となる。
【0003】
ヒョウヒダニ類の中でも、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)とヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)は代表的な種であり、これらのダニの死骸や糞が強いアレルゲン物質となる。また春先に飛散するスギ(Cryptomeria japonica)の花粉を初め、多種の植物の花粉もアレルゲンとなるものであり、特にアレルギー性鼻炎を発症させる原因となっている。飛散する花粉は春先のスギ花粉だけでなく、ヒノキ、ヨモギ、ブタクサ、カモガヤ等、多くの種類があり一年を通じて何らかの花粉が飛散している状態であり、いつの時期でも花粉によるアレルギーを引き起こす危険性があると考えられる。
【0004】
住環境において、特に台所、洗面所、トイレ、浴室等の、水回りの生活空間においては雑菌の繁殖が起こりやすく、不快な臭気を発生させる原因となっている。このような臭気の発生を抑制するためには、雑菌の繁殖を抑えることが重要であり、消臭剤によって一時的に軽減させることはできても根本的な解決にはならなかった。雑菌の繁殖を抑制するためには、種々の抗菌組成物が提案されており、無機系抗菌剤として抗菌性金属塩や、有機系抗菌剤として緑茶成分のような天然成分、四級アンモニウム塩等のようなカチオン系抗菌剤が用いられている(特許文献1~4)。最近では雑菌の繁殖抑制による消臭に加えて、ダニや花粉等のアレルゲンの低減化も同時に行えるような剤が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-189606号公報
【文献】特開2005-168579号公報
【文献】特開2004-357746号公報
【文献】特開2007-135849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダニやスギ花粉等の住環境に存在するアレルゲンを低減化させ、さらに処理した部分の雑菌の繁殖を抑制することができるアレルゲン低減化および抗菌組成物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ヒドロキシ酸の亜鉛塩とカチオン性抗菌剤を含有する組成物、さらにはヒドロキシ酸の亜鉛塩、希土類塩とカチオン性抗菌剤を含有する組成物が効率的に住環境に存在するアレルゲンを低減し、雑菌の繁殖を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、(1)ヒドロキシ酸亜鉛およびカチオン性抗菌剤を含有するアレルゲン低減化および抗菌組成物であり、(2)ヒドロキシ酸亜鉛、希土類塩およびカチオン性抗菌剤を含有するアレルゲン低減化および抗菌組成物であり、(3)希土類塩がランタン塩、セリウム塩、ガドリニウム塩およびイッテルビウム塩から選択される一種以上の塩である上記に挙げたアレルゲン低減化および抗菌組成物であり、(4)ヒドロキシ酸亜鉛がグルコン酸亜鉛であり、カチオン性抗菌剤がビス4級ピリジニウム塩およびポリヘキサメチレンビグアナイドから選択される少なくとも一種類である、(1)~(3)に挙げたアレルゲン低減化および抗菌組成物であり、(5)ビス4級ピリジニウム塩が、1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロミドである、(1)~(4)に挙げたアレルゲン低減化および抗菌組成物であり、(6)使用用途が噴霧用であることを特徴とする、(1)~(5)に挙げた記載のアレルゲン低減化および抗菌組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアレルゲン低減化および抗菌組成物を用いて、環境中、例えば室内の床や壁等、室内にあるカーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット等の自動車部品類、ぬいぐるみ等に噴霧、塗布、加工あるいは上記物品から除去、払拭することが可能な組成物を提供することができる。上記物品から除去、払拭する場合には、本発明のアレルゲン低減化および抗菌組成物を紙、不織布または繊維等に加工し、ワイパー、タオル、シート等の形状にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に使用する亜鉛塩はヒドロキシ酸の亜鉛塩であり、ヒドロキシ酸は、水酸基を一つあるいは二つ以上有するカルボン酸であり、具体的な例としては、グリコール酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、タルトロン酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、シキミ酸等が挙げられ、これらのうちグルコン酸、クエン酸、乳酸が好ましく、さらにグルコン酸がより好ましい。例えば、グルコン酸亜鉛は急性経口毒性がラットにおいて5000mg/kgを超える値であり、安全性が非常に高く、母乳代替食品として、また亜鉛欠乏症の予防や治療を目的とした保健機能食品として利用されている。
【0011】
本発明に使用する希土類塩としては、スカンジウム塩、イットリウム塩、ランタン塩、セリウム塩、プラセオジム塩、ネオジム塩、サマリウム塩、ユウロピウム塩、ガドリニウム塩、テルビウム塩、ジスプロシウム塩、ホルミウム塩、エルビウム塩、ツリウム塩、イッテルビウム塩、ルテチウム塩が挙げられ、特にランタン塩、セリウム塩、ガドリニウム塩、イッテルビウム塩が好ましく、ランタン塩、セリウム塩がより好ましい。これらの希土類塩は、一般の試薬や工業用原料として市販されているものを使用することができる。
【0012】
塩としては、いずれの対イオンを有する塩でも使用することができ、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、水酸化物等を例示することができる。有機酸塩としては、一価または二価のカルボン酸やヒドロキシ酸の塩が挙げられ、具体的にはヒドロキシ酸として乳酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸が例示でき、一価または二価のカルボン酸として酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が例示できる。これらのうち、塩化物塩、ヒドロキシ酸塩が好ましく、さらに塩化物塩、グルコン酸塩、乳酸塩がより好ましい。
【0013】
ヒドロキシ酸希土類塩は、一般の試薬や工業用原料として市販されているものを使用することができるが、またヒドロキシ酸と、汎用の無機の希土類塩や希土類酸化物とから水溶液として調製することも可能である。調製のためのこれらのヒドロキシ酸についても、一般に試薬や工業用原料として市販されているものを使用することができる。調製するには、ヒドロキシ酸の水溶液に希土類の酸化物を直接反応させる方法が挙げられる。また塩化物等の無機希土類塩の水溶液にアルカリ金属の水酸化物を反応させて希土類塩の水酸化物をあらかじめ調製し、さらにヒドロキシ酸を水酸化物と反応させて希土類のヒドロキシ酸を調製することで可能である。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0014】
カチオン系抗菌剤としては、ビス4級ピリジニウム塩またはポリヘキサメチレンビグアナイドが好ましく、これらの中から二種類以上を併用しても差し支えない。ビス4級ピリジニウム塩としては、1,4-ビス(3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロミドが挙げられ、例えばハイジェニア(登録商標、タマ化学工業製)として市販されているものや特開2005-162731や特開2006-001889などの明細書に記載されている方法またはそれらに準じる方法によって製造することにより入手することができる。
【0015】
ポリヘキサメチレンビグアナイドは下記化学式(I)で表される化合物であり、ヘキサメチレン基とビグアナイド基が交互に結合したポリマーであり、式中のnは10~16の範囲の整数となり、nの異なる化合物が混合されて使用することも可能である。ポリヘキサメチレンビグアナイドの塩としては、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩等、どのような塩も使用できるが、通常は塩酸塩として「PHMB」等の名称で市販されているものを使用することができる。
【0016】
本発明の、アレルゲン低減化および抗菌組成物におけるヒドロキシ酸亜鉛と希土類塩の配合率は、噴霧用途、あるいは不織布、紙または繊維への加工用途で、ヒドロキシ酸亜鉛については0.01~9%、好ましくは0.1~5%、さらに好ましくは0.2~2%の範囲で使用することができ、希土類塩については0~10%、好ましくは0.01~2%、さらに好ましくは0.05~1%の範囲で使用することができる。本発明の、アレルゲン低減および抗菌組成物におけるカチオン性抗菌剤の配合率については、噴霧用途で0.001%~1%、好ましくは0.002~0.5%、さらに好ましくは0.005~0.1%の範囲で使用することができる。またカチオン性抗菌剤の不織布、紙または繊維への加工用途では、0.001%~5%、好ましくは0.005~2%、さらに好ましくは0.01~1%の範囲で使用することができる。
【0017】
本発明の、アレルゲン低減化および抗菌組成物が対象とするアレルゲンには、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)の糞由来のアレルゲン(Der p1)および虫体由来のアレルゲン(Der p2)、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)の糞由来のアレルゲン(Der f1)および虫体由来のアレルゲン(Der f2)が挙げられる。また植物を由来とするアレルゲンとして、スギ(Cryptomeria japonica)の花粉由来のアレルゲン(Cry j1)を筆頭に、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ、カモガヤ、ハルガヤ等のアレルゲンが挙げられる。その他にも、イヌの毛やフケ由来のアレルゲン(Can f1、Can f2)、ネコの毛やフケ由来のアレルゲン(Fel d1)、ゴキブリ由来のアレルゲン(Bra g1、Bra g2)、カビ由来のアレルゲン(Alt a1)、天然ゴムラテックス由来のアレルゲン等が挙げられる。これらの中でも、ダニ由来のアレルゲンおよびスギ花粉由来のアレルゲンは、特に低減化が必要なアレルゲンとして重要視されている。
【0018】
本発明の、アレルゲン低減化および抗菌組成物が対象とする細菌には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等の一般に繁殖する雑菌が挙げられ、MRSAのような耐性菌も対象とする菌として挙げることができる。
【0019】
また本発明の、アレルゲン低減化および抗菌組成物を製剤化する場合、水をベースとした液剤とすることが適しており、ヒドロキシ酸の亜鉛塩および希土類塩を有効成分の合計として0.01~5%、好ましくは0.1%~3%、さらに好ましくは0.1~2%の範囲で含有する。また噴霧剤として使用するときは、噴霧したときの乾燥性を向上させるため、揮発性の有機溶剤を添加することも可能である。このような有機溶剤として特に制限はないが、安全性に問題のない揮発性が高い溶剤としてエタノールが挙げられる。さらに噴霧剤にはその他の成分として、香料、消臭成分等を添加することも可能である。
【0020】
上記の噴霧剤は、室内等の居住空間、車や電車等の乗り物内の空間に対して適用することができ、空間内に付着あるいは浮遊によって存在する、ダニや花粉等の種々のアレルゲンを低減することが可能となる。
【0021】
製剤を行なう上で、安定性の向上や、香料等の油性成分の溶解等の目的のために界面活性剤を添加することが可能である。界面活性剤は特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤にはアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤では脂肪族アミン塩およびその4級アンモニウム塩等が挙げられ、両イオン性界面活性剤ではベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩等が挙げられる。また、これらの非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤は一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のアレルゲン低減化および抗菌組成物には、物性を損なわない範囲で、公知となっている他のアレルゲン低減化成分をさらに添加することも可能である。アレルゲン低減化成分としては、ジヒドロキシ安息香酸や2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物またはその塩、パラヒドロキシポリスチレンやポリスチレンスルホン酸塩等のポリスチレン系化合物、柿渋等の天然抽出物、カルシウム塩やストロンチウム塩等の無機塩系化合物が挙げられる。
【0023】
本発明のアレルゲン低減化および抗菌組成物は、屋内塵性ダニのアレルゲン除去を目的に使用する場合、殺ダニ剤と同時に加工することにより、そのアレルゲン低減化効果をさらに持続させることも可能である。使用する殺ダニ剤は、屋内塵性ダニに対して致死効果や忌避効果のあるものであれば特に限定はなく、例えば、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、サリチル酸フェニル、シンナムアルデヒド、ヒソップ油、ニンジン種子油等を用いることができ、また天然ピレトリン、フェノトリン、ペルメトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、マラチオン、フェンチオン、ダイアジノン等の有機リン系化合物、ジコホル、クロルベンジレート、ヘキシチアゾクス、テブフェンピラド、ピリダベン、アミドフルメト等を用いることができる。
【0024】
香料としては、例えば、アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド、アントラニル酸メチル、アネトール、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シネオール、n-デシルアルコール、α-テルピネオール、バニリン、ピネン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、リモネン、リナロール等が挙げられる。また天然精油系香料としては、オレンジ油、桂皮油、シソ油、スペアミント油、セージ油、タイム油、ティーツリー油、ナツメグ油、バジル油、ピメント油、ペパーミント油、ラベンダー油、レモン油、ローズマリー油、ユーカリ油などが挙げられる。
【0025】
本発明のアレルゲン低減化および抗菌組成物の製剤化に際しては、前述の界面活性剤、防ダニ剤の他に、必要に応じてキレート剤、防錆剤、スケール防止剤、消泡剤、帯電防止剤、樹脂バインダー、増粘剤、柔軟加工剤等を添加することも可能である。
【実施例
【0026】
本発明を実施例、試験例により更に詳しく説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。なお、下記に示す%はすべて重量%である。
【0027】
実施例および比較例の調製のため、原料として以下の試薬等を使用した。
【0028】
グルコン酸亜鉛三水和物(ヘルシャスZn(登録商標)、扶桑化学工業株式会社製)
塩化ランタン七水和物(和光純薬工業株式会社製)
酸化ランタン(和光純薬工業株式会社製)
90%乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)
プロクセルIB(PHMB20%溶液、登録商標、ロンザジャパン株式会社)
ハイジェニアS-100(タマ化学株式会社製)
【0029】
乳酸ランタン水溶液の調製
玉入れ冷却管を取り付けた100mL容量の三角フラスコに、90%乳酸溶液4.5gとイオン交換水69.0gを混合し、さらに酸化ランタン1.2gを添加した。湯浴中で75℃に加温して撹拌を3時間継続し、酸化ランタンを溶解させた。放冷し、乳酸ランタン水溶液を得た。
【0030】
表1、表2に示す配合で、混合、撹拌、溶解することにより調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
[試験例1]殺菌力試験
細菌に対する抗菌力の評価を行うため、黄色ブドウ球菌(NBRC12732)を用いて殺菌力試験を行った。TGC液体培地にて前培養した黄色ブドウ球菌の菌株を滅菌水に懸濁し、生菌数が約10CFU/mLとなるように調整した菌液を5mLずつ試験管に分注し、これらの菌液に各組成物をそれぞれ菌液に対して所定の濃度(0.5%または2%)となるように添加した。添加後から所定の時間(30分および1時間)が経過した後に各試験管から100μLを採取してシャーレに採り、培地15mLを加えて均一に溶解した。37℃にて3日間培養し、発生したコロニー数をカウントすることにより生菌数を測定した。ブランクとしては滅菌水を用いた。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
[試験例2]ダニアレルゲンの低減化効果の測定
ダニアレルゲンDer f2を含有する、タンパク質量として約900ng/1mL{リン酸緩衝液(pH7.2)}のアレルゲン液1mLに対し、各組成物を、それぞれ150μLまたは500μLを反応させた。
【0036】
次に、ダニアレルゲンと上記組成物を反応させて得られた抽出液を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液(pH7.2)にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識した抗Der f2モノクローナル抗体をリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミンおよび0.05重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液(pH7.2、1重量%牛血清アルブミンおよび0.05重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有)で1200倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、リン酸緩衝液(pH7.2)でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)6.5mLにオルト-フェニレンジアミンジヒドロクロライド(13mg Tablet、和光純薬工業株式会社製)一錠と30%過酸化水素水6.5μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、3分間反応させた。その後直ちに、1mol/L HSOを50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
[試験例3]スギ花粉アレルゲンの低減化効果の測定
スギ花粉アレルゲンCry j1として約12.5ng/1mL{リン酸緩衝液(pH7.2)}のアレルゲン液1mLに対し、各組成物を、それぞれ150μLまたは500μLを反応させた。
【0039】
次に、スギ花粉アレルゲンと上記組成物を反応させて得られた抽出液試料を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識したCry j1モノクローナル抗体053を蒸留水で200μg/mLに溶解し、それをリン酸緩衝液{pH7.2、1重量%牛血清アルブミンおよび0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}で1200倍希釈した液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、リン酸緩衝液{pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有}でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト-フェニレンジアミンジヒドロクロライド(SIGMA CHEMICAL CO.製:26mg Tablet)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/L HSOを50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(テカンジャパン株式会社製)で吸光度(OD490nm)を測定した。結果を表5に示した。
【0040】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の、ヒドロキシ酸亜鉛およびカチオン性抗菌剤を含有するアレルゲン低減化および抗菌組成物、さらにはヒドロキシ酸亜鉛、希土類塩およびカチオン性抗菌剤を含有するアレルゲン低減化および抗菌組成物を使用することにより、着色の問題を起こすことなくダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させることができ、また雑菌の繁殖を抑制することができる。