(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
(21)【出願番号】P 2021160583
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502330849
【氏名又は名称】有限会社サクセス
(73)【特許権者】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 愼介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064030(JP,A)
【文献】特開2018-075668(JP,A)
【文献】特開2010-099808(JP,A)
【文献】特開2019-188510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断すると共に、該複数のワイヤーの後方位置のそれぞれ
に配置された板状体を揺動させながら前進させることにより該板状体の側面で切断面を研磨する切断研磨工程と
を備え
、
前記切断研磨工程は、前記ワイヤーを前進させる台座と、前記板状体を前進させる台座とが一体に構成されることにより、該ワイヤーによる切断と該板状体による研磨とが同時に進行されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【請求項2】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記複数のワイヤーの後方位置のそれぞれ
に配置された板状体を揺動させながら前進させて該板状体の側面で切断面を研磨するバンド部と
を備え、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記ワイヤーを前進させる台座と前記板状体を前進させる台座とが一体に構成されることにより、ワイヤーによる切断と板状体による研磨とが同時に進行されることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記半導体結晶インゴットが周回する前記ワイヤーの外側に配置されて該ワイヤーおよび前記板状体が周方向外方に進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記半導体結晶インゴットが周回する前記ワイヤーの内側に配置されて該ワイヤーおよび前記板状体が周方向内方に進行することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施した半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットの側面全体に周回する複数の凹溝を形成する溝加工工程と、
前記溝加工工程において形成された複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させることにより前記半導体結晶インゴットをスライス状に切断すると共に、該複数のワイヤーの後方位置のそれぞれに配置された板状体を揺動させながら前進させることにより該板状体の側面で切断面を研磨する切断研磨工程と
を備え、
前記切断研磨工程は、前記ワイヤーを前進させる台座と、前記板状体を前進させる台座とが一体に構成されることにより、該ワイヤーによる切断と該板状体による研磨とが同時に進行されることを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、溝加工工程において、予め半導体結晶インゴットの側面全体に周回する凹溝を形成しておくことで、凹溝をガイドとしてワイヤーにより半導体結晶インゴットを精度よくスライス状に切断することができる。
【0009】
ここで、半導体結晶インゴットを周回しながら切断するワイヤーの後方には、その切断面を揺動しながら研磨する板状体を配置し、ワイヤーの進行と共に板状体を進行させることで、切断と同時にその切断面のうねりや筋を磨き上げて除去することでき、いわゆる転写を防止して高品質な半導体結晶ウェハを得ることでき、平坦化工程において一般的に行われている遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0010】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0011】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
側面全体に周回する複数の凹溝が形成された前記半導体結晶インゴットに対して、複数の凹溝に配置された複数のワイヤーを周回させながら前進させて切断するワイヤーソー部と、
前記ワイヤーソー部の前記複数のワイヤーの後方位置のそれぞれに配置された板状体を揺動させながら前進させて該板状体の側面で切断面を研磨するバンド部と
を備え、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記ワイヤーを前進させる台座と前記板状体を前進させる台座とが一体に構成されることにより、ワイヤーによる切断と板状体による研磨とが同時に進行されることを特徴とする。
【0012】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明の半導体結晶ウェハの製造方法を実行する装置であって、具体的にワイヤーを前進させる台座と前記板状体を前進させる台座とが一体に構成することで、ワイヤーによる切断と板状体による研磨との同時進行を実現することができる。
【0013】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0014】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第2発明において、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記半導体結晶インゴットが周回する前記ワイヤーの外側に配置されて該ワイヤーおよび前記板状体が周方向外方に進行することを特徴とする。
【0015】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤーソー部とバンド部とを、半導体結晶インゴットが周回するワイヤーの外側に配置し、ワイヤーおよび板状体を周方向外方に進行させることで、ワイヤーによる高精度の切断と板状体による研磨とを具体的に実現することができる。
【0016】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0017】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第2発明において、
前記ワイヤーソー部と前記バンド部とは、前記半導体結晶インゴットが周回する前記ワイヤーの内側に配置されて該ワイヤーおよび前記板状体が周方向内方に進行することを特徴とする。
【0018】
第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、ワイヤーソー部とバンド部とを、半導体結晶インゴットが周回するワイヤーの内側に配置し、ワイヤーおよび板状体を周方向内方に進行させることで、ワイヤーによる高精度の切断と板状体による研磨とを具体的に実現することができる。
【0019】
このように、第4発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
【
図2】
図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程の内容を示す説明図。
【
図3】
図1のSiCウェハの製造方法における切断研磨工程の内容を示す説明図。
【
図4】
図1のSiCウェハの製造方法における第1面加工工程および第2面加工工程の内容を示す説明図。
【
図5】
図1のSiCウェハの製造方法における切断研磨工程の変更例を示す説明図。
【
図6】
図1のSiCウェハの製造方法における切断研磨工程の他の変更例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/
図1)と、切断研磨工程(STEP200/
図1)と、第1面加工工程(STEP300/
図1)と、第2面加工工程(STEP400/
図1)とを備える。
【0022】
図2~
図5を参照して各工程の詳細について説明する。
【0023】
まず、
図2に示すSTEP100の溝加工工程では、予め結晶させたSiC結晶1に対して、インゴット加工工程において、結晶方位を定めて円筒研削加工を施して得られる円筒形状のSiCインゴット10を準備する。
【0024】
そして、STEP100の溝加工工程では、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0025】
具体的に、STEP100の溝加工工程では、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面全体に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0026】
なお、溝加工工程により得られたSiCインゴット10(特に凹溝11)に対して化学処理的手法によりノンダメージの鏡面加工を施すことが望ましい。
【0027】
次に、
図3に示すSTEP200の切断研磨工程では、STEP100の溝加工工程において形成された複数の凹溝11に、切断加工装置であるワイヤーソー部30の複数のワイヤー31を配置し、ワイヤー31を周回させながら前進させることによりSiCインゴット10をスライス状に切断すると共に、複数のワイヤー31の後方位置のそれぞれ
に配置された、研磨加工装置であるバンド部40の板状体41を揺動させながら前進させることにより該板状体41の側面で切断面を研磨する切断研磨する。
【0028】
なお、STEP200の切断研磨工程を実現する、半導体結晶ウェハ(SiCウェハ)の製造装置(切断研磨装置)の構成としては、SiCインゴット10の両端を固定する固定部材32に対して、複数のワイヤー31をワイヤーソーボビン33を介して周回させながら前進させて切断するワイヤーソー部30(ワイヤーソー装置)と、切断面を研磨する板状体41と板状体41の両端に設けられ該板状体41を揺動させる揺動機構42(例えばアクチュエータ装置など)とを有するバンド部40(バンドソー装置と類似する構成であって切断を目的としない装置)と備える。
【0029】
ワイヤーソー部30とバンド部40とは、固定部材32に対してスライド自在に構成された(SiCインゴット10および固定部材32は固定されて動かない)、ワイヤーソー部30を前進させる台座であるフレーム34,35と、バンド部40を前進させる台座であるフレーム34,35とが共通で一体として構成されることにより、ワイヤー31による切断と板状体41による研磨とが同時に進行される。
【0030】
これにより、STEP100の溝加工工程において、予めSiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11が形成されているため、複数の凹溝11をガイドとして複数のワイヤー31によりSiCインゴット10を一回的処理で精度よくスライス状に切断することができる。
【0031】
さらに、SiCインゴット10を周回しながら切断する複数のワイヤー31の後方には、その切断面を揺動しながら研磨する複数の板状体41が配置され、複数のワイヤー31の進行と共に複数の板状体41を進行させることで、切断と同時にその切断面を一回的処理でうねりや筋を磨き上げて除去することができ、表面平滑性の極めて高い高品質なSiCウェハ100を得ることができ、改めて面取り工程や切断面に一面を基準面とする基準面加工工程などを行う必要もない。
【0032】
次に、
図4に示すように、STEP300の第1面加工工程では、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。ここで、STEP200の切断研磨工程により得られたSiCインゴット10は2つの切断面のいずれもが高い平滑性を有するため、いずれの切断面をも支持面(基準面)とすることができるためである。
【0033】
具体的には、第1面加工工程では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0034】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0035】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0036】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより他面120に研削加工が施される。
【0037】
なお、研削加工後には、ドレッサー等によりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0038】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0039】
次に、STEP400の第2面加工工程では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0040】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0041】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサー等をダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0042】
かかるSTEP300の第1面加工工程およびSTEP400の第2面加工工程のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断研磨工程により得られた高い平坦性を有するトランスファレス切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0043】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0044】
なお、STEP300の第1面加工工程およびSTEP400の第2面加工工程の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0045】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法によれば、高品質なSiCウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0046】
なお、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェア洗浄工程が行われてもよい。
【0047】
また、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、
図3のように、ワイヤーソー部30およびバンド部40とSiCインゴット10との位置関係が、SiCインゴット10が周回するワイヤー31の内側に配置されて該ワイヤー31および板状体41が周方向内方(図中上側)に進行する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0049】
例えば、
図5に示すように、ワイヤーソー部30およびバンド部40とSiCインゴット10との位置関係は、SiCインゴット10が周回するワイヤー31の外側に配置されてもよい。この場合、ワイヤー31および板状体41は、周方向外方(図中下側)に進行して、SiCインゴット10を切断研磨する。
【0050】
また、例えば、
図6に示すように、ワイヤーソー部30およびバンド部40とSiCインゴット10との位置関係は、SiCインゴット10が周回するワイヤー31の内側に配置されてもよい。この場合、ワイヤー31および板状体41は、周方向内方(図中下側)に進行して、SiCインゴット10を切断研磨する。
【0051】
さらに、本実施形態において、バンド部40の板状体41は、複数のワイヤー31の後方にすべて設ける場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、板状体41は、1つおきに設けるようにしてもよい。
【0052】
この場合、切断により得られたSiCウェハ100は、2つの切断面のうち一方が板状体41により研磨された基準研磨面であり、他面が板状体41による研磨がなされていない未研磨面となる。そのため、STEP300では、基準研磨面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、ワイヤー跡が残る他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。これにより、複数の板状体41の設置数を半減させてバンド部40の装置構成を簡易にした場合でも、メカニカルポリッシュ装置50により高品質のSiCウェハ100を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…SiC結晶(半導体結晶)、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、20…溝加工ドラム砥石、21…凸部、30…ワイヤーソー部、31…ワイヤー、32…固定部材、33…ワイヤーソーボビン、34,35…フレーム(台座)、40…バンド部、41…板状体、42…揺動機構、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【要約】
【課題】本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したウェハの表面に高精度研削加工を施したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/
図1)と、切断研磨工程(STEP200/
図1)と、第1面加工工程(STEP300/
図1)と、第2面加工工程(STEP400/
図1)とを備える。
【選択図】
図1