(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ソルガムを原料とするバイオマス燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20220203BHJP
C10L 9/08 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C10L5/44
C10L9/08
(21)【出願番号】P 2017178112
(22)【出願日】2017-09-15
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】301034072
【氏名又は名称】メモリアルネットワーク有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306007923
【氏名又は名称】株式会社地球環境EDジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦道
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534272(JP,A)
【文献】特開2016-141801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/00
C10L 9/00
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1段階において、有機物原料である粉砕したソルガムを熱分解室に投入し、投入が完了したら熱源部を作動開始し、熱分解室を初期段階における加熱動作を開始し、
第2段階において、前記加熱の初期段階で熱分解室内に不活性ガスを導入し、それまで熱分解室内に存在していた空気を不活性ガスに置換し、
第3段階において、 熱分解室内の温度を100~150℃に加熱し、
第4段階において、熱分解室内においてソルガムの表面に付着している水分或いはソルガムの組織体内から浸出してきた水分を蒸発させ、
第5段階において、前記蒸発動作によりソルガムの重量パーセントで、約30%の水分を蒸発させた後、熱分解室内の温度を100~150℃の段階よりも高い温度に加熱し、
第6段階において、熱源部の作動を停止し、熱分解室を冷却し、
第7段階において、冷却動作により熱分解室内の温度がほぼ常温になった後、加熱処理後のソルガムを加熱炉の外へ取り出す、
ことを特徴とするソルガムを原料とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項2】
前記第1段階において、原料の投入と加熱動作の初期段階までで約30分間の動作であり、前記初期段階での熱分解室内の温度上昇は100℃以下であり、
前記第2段階において、ガス置換処理は約50分間の動作であり、
前記第3段階において、前記熱分解室内の温度を100~150℃に加熱し、
前記第4段階において、水分の蒸発動作は約120分間の動作であり、
前記第5段階において、過熱動作は約120分位の時間をかけて行われ、
前記第6段階において、冷却動作は約120分位の時間をかけて行われる、
ことを特徴とする請求項
1記載のバイオマス燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物であるソルガム(とうもろこしの一種)を加熱処理することによりソルガムの持つ燃焼カロリーを上昇させて燃料として利用可能にする、バイオマス燃料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では、地球温暖化対策、環境保護の背景から、バイオエネルギーを活用して化石燃料が出すCO2 (二酸化炭素)を削減することに取り組んでおり、政府も、バイオエネルギーにより発電(バイオマス発電)された電気の発電料を火力発電などの通常の手法で発電された電気の発電料よりも高く設定し、バイオエネルギーの活用の普及を応援している。これらのバイオエネルギーにより発電を行う技術の従来例としては、例えば特開2017-105920号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この従来例ではバイオマス発電の燃料として竹材を使う技術が記載されている。この他にもバイオマス発電の燃料としては例えば木質チップが使用される例が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、日本国内を見ても、上記竹材や木質チップを使用してバイオマス発電を行うとしても、高カロリーの資源が不足しているのが現状である。例えばバイオマス発電所のプラントには燃焼カロリーが石炭(5000kcal/kg)程度の発熱量を必要とするが、一般的なバイオマス燃料は燃焼カロリーが1800~2500kcal/kgであり、発熱効率を上げるために発電プラントに水分蒸発工程を加えなければならず、プラントが巨大なものとなっている。バイオマス燃料の発熱量が1800kcal/kgから5000kcal/kgになるようにするためには発電コストが合わず、高カロリーに変換えきる技術が必要になってくる。そして、バイオマス発電に関わる多くの技術者がトレフェクション(半炭化)の研究、実験を行っているが、5000kcal/kgに届かず3000kcal/kg程度の発熱量にしか実現していないのが現実である。
【0005】
本発明は、本発明は上述したような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々のバイオマス燃料(木、枝、葉、根、・・・等)について、それぞれを高カロリーに加工する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、バイオマス燃料の原料としてソルガムを用い、このソルガムを無酸素の雰囲気の下で常温から段階的に加熱するとともにソルガムに含まれる水分を蒸発させ、さらに、所定の温度まで加熱することにより、高カロリーのバイオマス燃料を得ることを要旨とする。バイオマス燃料の原料としてはソルガム、特にベトナムで自生し或いは栽培されているソルガムを用いる。その理由は、ベトナム産のソルガムは糖度が高くバイオマス燃料として最適であることが発明者の研究により判明したからである。また、ベトナム産のソルガムを単なる従来からの処理でバイオマス燃料にしたのでは発熱量を高カロリーにすることはできず、上述のような「無酸素の雰囲気の下で常温から段階的に加熱する」という本発明の処理が有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ソルガムが持つ燃焼カロリーを通常の1500kcal/kgから4500~5500kcal/kgに上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態として示すソルガムを無酸素の雰囲気の下で加熱する手順を説明する加熱処理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のバイオマス燃料の製造方法を実現するための手順を説明する加熱処理説明図である。この加熱処理では、ソルガムを無酸素の雰囲気の下で段階的に加熱する。上述したように、バイオマス燃料の原料としては有機物材料(木、竹、枝、葉、根、・・・等)が用いられる。とりわけ本実施の形態ではソルガム、特にベトナムで自生し或いは栽培されているソルガムを用いる。ベトナム産のソルガムは糖度が高くバイオマス燃料として最適であることが発明者の研究により突き止められている。
本実施の形態では、ソルガムを加熱するためには加熱炉が用いられるが、この加熱炉としては、加熱材料が収容される熱分解室(加熱室)と、加熱用の熱源部と、熱分解室に窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段と、加熱時に加熱材料から出る水分(蒸気)がガスを排出するガス排出手段と、加熱時における熱分解室内の温度を制御するコントローラとを有するものが使用される。
バイオマス燃料の原料であるソルガムの加熱処理は次の手順で行われる。
第1段階、第2段階 図中符号1,2で示すように、有機物原料である粉砕したソルガムを熱分解室に投入する。投入が完了したら熱源部を作動開始し、熱分解室を加熱開始する。この原料の投入と加熱動作の初期段階までで約30分間の動作でありこの間での熱分解室内の温度上昇は100℃以下である(第1段階)。この時点で熱分解室内に窒素10やアルゴン11などの不活性ガスを導入し、それまで熱分解室内に存在していた空気12を不活性ガスに置換する(第2段階)。このガス置換処理は約50分間の動作であり、この処理動作により熱分解室内の気体はほぼ100%不活性ガスに置換される。
第3段階 図中符号3で示すように、熱分解室内の温度を100~150℃に加熱する。
第4段階、第5段階 図中符号4,5で示すように、熱分解室内において有機物原料であるソルガムの表面に付着している水分(H
2O)或いはソルガムの組織体内から浸出してきた水分を蒸発させる(第4段階)。この水分の蒸発動作は約120分間と、時間をかけて行われ、その間、温度は100~150℃に保持される。次にソルガムの重量パーセントで、約30%(25~35%が好ましい)水分を蒸発させた後、熱分解室内の温度を200~300℃に加熱する(第5段階)。この過熱動作は約120分位の時間をかけて行われる。
第6段階 図中符号6で示すように、熱源部の作動を停止し、熱分解室を冷却する。この冷却動作は約120分位の時間をかけて行われ、熱分解室内の温度がほぼ常温になるまで行われる。
第7段階 図中符号7で示すように、冷却動作により熱分解室内の温度がほぼ常温になった後、加熱処理後のソルガムを加熱炉の外へ取り出す。ソルガムは加熱処理によってバイオマス燃料としての性質(特性)を有している。
第8段階 図中符号8で示すように、加熱炉の外へ取り出されたソルガムは燃焼カロリーが4500~5500kcal/kgであり、バイオマス燃料でありながら石炭などの燃料と同等の発熱性能を充分に備えている。
なお、上述した実施の形態の説明ではバイオマス燃料の原料としてソルガムが最適な例として挙げたが、ソルガム以外の材料であっても、上記加熱手順による加熱処理を行った場合、燃焼カロリーの向上という良好な結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、バイオマス燃料の原料としてソルガムを用い、このソルガムを無酸素の雰囲気の下で常温から段階的に加熱しバイオマス燃料を製造する。本発明によれば、ソルガムが持つ燃焼カロリーを通常の1500kcal/kgから4500~5500kcal/kgに上昇させることができ、有用である。
【符号の説明】
【0011】
10 窒素
11 アルゴン
12 空気