IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図1
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図2
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図3
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図4
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図5
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図6
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図7
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図8
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図9
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図10
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図11
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図12
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図13
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図14
  • 特許-エレベータのドア装置及びエレベータ 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】エレベータのドア装置及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/30 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
B66B13/30 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020085190
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178718
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
(72)【発明者】
【氏名】新井 晋治
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】劉 紅軍
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-255488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に移動して開口を開閉するドアと、
開口の下縁に沿って配置される敷居と、
敷居の上面から出退自在であり、突出時にドアの下部に係入する可動部材と、
ドアの移動に関連して作動し、可動部材の出退動作を操作する操作手段とを備え、
敷居は、上面から下方に形成されるガイド孔を備え、
可動部材は、ガイド孔に挿入され、ガイド孔にガイドされつつ直線運動して出退動作するとともに、操作手段とは別部材であり、下方に入力部を備え、
操作手段は、入力部と接触しつつ揺動運動して可動部材を直線運動させる作用部を備える
エレベータのドア装置。
【請求項2】
可動部材は、ブロック状であり、
ガイド孔は、可動部材が横に移動したり、傾くのを規制すべく、可動部材の断面形状と同じ断面形状を有する
請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
ガイド孔は、可動部材の落下を防止する底部段付き孔である
請求項1又は2に記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
ドアは、第1ドアと、第1ドアよりも移動量が多い第2ドアとの組み合わせからなる2枚ドアを備え、
可動部材は、第1ドア用の第1可動部材と、第2ドア用の第2可動部材とを備え、
敷居は、第1可動部材用のガイド孔と、第2可動部材用のガイド孔とを備え、
操作手段は、第1可動部材用の第1作用部と、第2可動部材用の第2作用部とを備える
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
操作手段は、第1可動部材が先に突出を開始し、第2可動部材が後に突出を開始するよう構成される
請求項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項6】
操作手段は、
ドアの移動に伴って横方向に運動するカムと、
カムの運動に伴って上下方向に運動するカムフォロアと、
カムフォロアの運動に伴って揺動し、揺動中心を挟んでカムフォロアと反対側の所定部位に作用部が形成される揺動部材とを備える
請求項ないしのいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項7】
ドアの下部は、ドアの幅に沿って上方に凹となる溝を備え、
カムは、溝に設けられ、横方向に対して傾斜する傾斜カムを備え、
カムフォロアは、開口の枠外において、敷居に形成された貫通孔に挿入され、カムフォロアの上端側は、敷居の上面よりも上方に位置して傾斜カムと接触し、カムフォロアの下端側は、敷居の下方に位置して揺動部材と接触し、
揺動部材は、敷居の下方に位置し、敷居に沿った長尺部材であり、
可動部材の入力部は、敷居の下方に位置して揺動部材の作用部と接触する
請求項6に記載のエレベータのドア装置。
【請求項8】
溝は、ドアの前後方向に並列する2つの溝を備え、
カムは、一方の溝に設けられ、
可動部材は、突出時にもう一方の溝に係入する
請求項7に記載のエレベータのドア装置。
【請求項9】
揺動部材の揺動中心は、揺動部材の重心よりもカムフォロアに寄った部位に設定される
請求項6ないし8のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のドア装置を備える
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア装置及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご及び各階床の乗場は、それぞれドア装置を備える。かごドア装置は、かごドアと、ドア支持構造と、ドア開閉装置とを備える。乗場ドア装置は、乗場ドアと、ドア支持構造とを備える。かごが階床に停止すると、ドア開閉装置が作動し、かごドアが開動作する。かごドアと乗場ドアとは、作動的に連結されており、乗場ドアは、かごドアの開動作に従動して開動作する。所定時間開放後あるいはドア閉ボタンが押されると、ドア開閉装置が反転作動し、かごドアが閉動作するとともに、これに従動して乗場ドアが閉動作する。
【0003】
ドア支持構造は、敷居を備える。敷居は、「シル」ともいい、かごの開口の下縁及び乗場の開口の下縁に沿って設けられる。敷居は、ドアの開閉動作を可能としつつ、ドアの下部を支持する構造体である。敷居は、開口の下縁に沿って溝を備える。ドアは、下端から突出するガイドシューを備える。ガイドシューは、敷居の溝に係入され、これにより、ドアの下部は、前後方向に動かないように支持される。
【0004】
敷居の溝には、埃や小石等の異物が溜まったり、鍵等が落ちてはまることがある。この状態でかごドアが閉じると、ガイドシューがこれらを噛み込み、かごドアが僅かに傾いた状態で閉じることがある。そして、この状態でかごが走行すると、走行中の振動でかごドアが僅かに開き、ドア全閉検知スイッチがOFFとなり、かごが緊急停止してしまうことがある。この場合、復旧までに乗客がかご内に閉じ込められるという不具合が発生する。
【0005】
そこで、異物が溝に溜まらないように、溝がないタイプの敷居を用いることが考えられる。この場合、ドアの下部を支持するために、ガイドシューが敷居の上面に突出して設けられる。
【0006】
しかし、ガイドシューが突出していると、人がかごに乗り降りする際、邪魔である。また、つまずいたり、引っ掛かったりして、安全上好ましくない。
【0007】
そこで、これらの不具合を解消するため、特許文献1では、敷居と、敷居上に往復動可能に設けられ、下端部に案内溝が形成されているドアと、案内溝内に設けられている案内片操作カムと、敷居の下部に揺動可能に設けられているとともに、一端部に敷居の戸袋部に出没可能な戸袋側案内片を、他端部に敷居の出入口部に出没可能な出入口側案内片をそれぞれ有している揺動部材とを備え、戸開時には、出入口側案内片が下動するとともに、戸袋側案内片が上動し、戸閉時には、案内片操作カムにより戸袋側案内片が押圧されて下動するとともに、出入口側案内片が敷居上に突出して案内溝に係合するドア装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-10441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のドア装置において、出入口側案内片は、揺動運動により敷居の上面から出退する。このため、敷居には、出入口側案内片よりも大きめの孔が形成される必要がある。この場合、出入口側案内片と孔との間に隙間が形成され、隙間に異物等が挟み込まれ、出入口側案内片の出退動作が阻害されるという問題が発生する。
【0010】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、溝がないタイプの敷居を用いるドア装置において、ドアの下部を支持する構造の最適化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエレベータのドア装置は、
横方向に移動して開口を開閉するドアと、
開口の下縁に沿って配置される敷居と、
敷居の上面から出退自在であり、突出時にドアの下部に係入する可動部材と、
ドアの移動に関連して作動し、可動部材の出退動作を操作する操作手段とを備え、
敷居は、上面から下方に形成されるガイド孔を備え、
可動部材は、ガイド孔に挿入され、ガイド孔にガイドされつつ直線運動して出退動作するとともに、操作手段とは別部材であり、下方に入力部を備え、
操作手段は、入力部と接触しつつ揺動運動して可動部材を直線運動させる作用部を備える
エレベータのドア装置である。
【0012】
ここで、本発明に係るエレベータのドア装置の一態様として、
可動部材は、ブロック状であり、
ガイド孔は、可動部材が横に移動したり、傾くのを規制すべく、可動部材の断面形状と同じ断面形状を有する
との構成を採用することができる。
また、本発明に係るエレベータのドア装置の他態様として、
ガイド孔は、可動部材の落下を防止する底部段付き孔である
との構成を採用することができる。
【0013】
この場合、
ドアは、第1ドアと、第1ドアよりも移動量が多い第2ドアとの組み合わせからなる2枚ドアを備え、
可動部材は、第1ドア用の第1可動部材と、第2ドア用の第2可動部材とを備え、
敷居は、第1可動部材用のガイド孔と、第2可動部材用のガイド孔とを備え、
操作手段は、第1可動部材用の第1作用部と、第2可動部材用の第2作用部とを備える
との構成を採用することができる。
【0014】
さらに、この場合、
操作手段は、第1可動部材が先に突出を開始し、第2可動部材が後に突出を開始するよう構成される
との構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータのドア装置の他態様として、
操作手段は、
ドアの移動に伴って横方向に運動するカムと、
カムの運動に伴って上下方向に運動するカムフォロアと、
カムフォロアの運動に伴って揺動し、揺動中心を挟んでカムフォロアと反対側の所定部位に作用部が形成される揺動部材とを備える
との構成を採用することができる。
【0016】
この場合、
ドアの下部は、ドアの幅に沿って上方に凹となる溝を備え、
カムは、溝に設けられ、横方向に対して傾斜する傾斜カムを備え、
カムフォロアは、開口の枠外において、敷居に形成された貫通孔に挿入され、カムフォロアの上端側は、敷居の上面よりも上方に位置して傾斜カムと接触し、カムフォロアの下端側は、敷居の下方に位置して揺動部材と接触し、
揺動部材は、敷居の下方に位置し、敷居に沿った長尺部材であり、
可動部材の入力部は、敷居の下方に位置して揺動部材の作用部と接触する
との構成を採用することができる。
さらに、この場合、
溝は、ドアの前後方向に並列する2つの溝を備え、
カムは、一方の溝に設けられ、
可動部材は、突出時にもう一方の溝に係入する
との構成を採用することができる。
さらに、これらの場合、
揺動部材の揺動中心は、揺動部材の重心よりもカムフォロアに寄った部位に設定される
との構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベータは、
上記ドア装置を備える
エレベータである。
【発明の効果】
【0018】
以上の如く、本発明によれば、溝がないタイプの敷居を用いるドア装置において、ドアの下部を支持する構造の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るエレベータの概略斜視図である。
図2図2(a)は、同エレベータのかごであって、かごドアが全閉した状態の正面図である。図2(b)は、同かごであって、かごドアが全開した状態の正面図である。
図3図3は、同エレベータのかごドア装置及び乗場ドア装置の一部断面側面図である。
図4図4(a)は、同かごの下部であって、かごドアが全開した状態の正面図である。図4(b)及び図4(c)は、同下部であって、かごドアが閉じる途中の状態の正面図である。図4(d)は、同下部であって、かごドアが全閉した状態の正面図である。
図5図5(a)は、同エレベータのかごドア装置及び乗場ドア装置の下部であって、図4(a)のA-A線断面図である。図5(b)は、同下部であって、図4(d)のB-B線断面図である。
図6図6(a)は、同かごの下部であって、図5(a)のC線位置に対応する断面図である。図6(b)は、同下部であって、図5(a)のD線位置に対応する断面図である。図6(c)は、同下部であって、図5(b)のE線位置に対応する断面図である。図6(d)は、同下部であって、図5(b)のF線位置に対応する断面図である。
図7図7(a)ないし図7(d)は、変形例に係るかごの下部であって、図6(a)ないし図6(d)の断面位置に対応する断面図である。
図8図8(a)は、本発明の第2実施形態に係るエレベータのかごであって、かごドアが全閉した状態の正面図である。図8(b)は、同かごであって、かごドアが全開した状態の正面図である。
図9図9は、同エレベータのかごドア装置及び乗場ドア装置の一部断面側面図である。
図10図10(a)は、同かごの下部であって、かごドアが全開した状態の正面図である。図10(b)ないし図10(d)は、同下部であって、かごドアが閉じる途中の状態の正面図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、同かごの下部であって、図10(d)の続きのかごドアが閉じる途中の状態の正面図である。図11(c)は、同下部であって、かごドアが全閉した状態の正面図である。
図12図12(a)は、同エレベータのかごドア装置及び乗場ドア装置の下部であって、図10(a)のA-A線断面図である。図12(b)は、同下部であって、図11(a)のB-B線断面図である。図12(c)は、同下部であって、図11(c)のC-C線断面図である。
図13図13(a)は、同かごの下部であって、図12(a)のD線位置に対応する断面図である。図13(b)は、同下部であって、図12(a)のE線位置に対応する断面図である。図13(c)は、同下部であって、図12(b)のF線位置に対応する断面図である。図13(d)は、同下部であって、図12(b)のG線位置に対応する断面図である。
図14図14(a)は、同かごの下部であって、図12(c)のH線位置に対応する断面図である。図14(b)は、同下部であって、図12(c)のI線位置に対応する断面図である。
図15図15(a)及び図15(b)は、変形例に係るかごの下部であって、図14(a)及び図14(b)の断面位置に対応する断面図である。図15(c)及び図15(d)は、他の変形例に係るかごの下部であって、図14(a)及び図14(b)の断面位置に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明に係るエレベータの第1実施形態として、左右各1枚のドアによるセンターオープンタイプ(2CO)のドア装置を備えるエレベータについて、図面を参酌して説明する。
【0021】
図1に示すように、エレベータ1は、階層を有する建物内において上下方向に延びる昇降路10と、昇降路10内を昇降するとともに、指定された階層に停止するかご20とを備える。
【0022】
かご20は、かご室21と、かご枠22とを備える。かご枠22は、かご室21を囲むように配置され、上枠と、下枠と、縦枠22aとを備える。縦枠22aの上部及び下部には、ガイドシュー23,23が取り付けられる。昇降路10内には、かご20の両側方において上下方向に延びる一対のガイドレール11,11が配置される。かご20の上下左右の4つのガイドシュー23,…が一対のガイドレール11,11を摺動することにより、かご20は、ガイドレール11,11に案内されて昇降路10内を昇降可能となる。
【0023】
かご20は、かごドア装置24を備える。かごドア装置24は、かごドア25と、ドア支持構造26と、ドア開閉装置29とを備える。かごドア25は、横方向に移動してかご室21の前面の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。ドア支持構造26は、かごドア25の開閉動作を可能としつつ、かごドア25を支持する構造体である。ドア開閉装置29は、かごドア25を開閉動作させるための装置で、たとえばかご室21の前面上部に配置される。
【0024】
これに対し、各階床の乗場30は、三方枠31と、乗場ドア装置32とを備える。三方枠31は、壁面に形成され、枠内がかご20の開口に対応した大きさの開口となる。乗場ドア装置32は、乗場ドア33と、ドア支持構造34とを備える。乗場ドア33は、横方向に移動して三方枠31内の開口(出入口)を開閉して人の乗り降りを可能とする。乗場ドア33は、通常は閉となっており、階床に停止したかご20のかごドア25の開閉動作に従動して開閉される。一般的には、かごドア25は、乗場ドア33側に突出する係合部を備え、乗場ドア33は、かごドア25側に突出する被係合部を備え、かご20が乗場30に到来すると、係合部と被係合部とが係合し、かごドア25と乗場ドア33とが作動的に連結される。ドア支持構造34は、乗場ドア33の開閉動作を可能としつつ、乗場ドア33を支持する構造体である。
【0025】
図2及び図3に示すように、かごドア装置24のドア支持構造26は、ドアレール27と、敷居28とを備える。ドアレール27は、帯状に形成され、かご室21の前面上部に左右方向に設けられる。かごドア25は、ドアハンガ250を備える。ドアハンガ250は、一対のローラ251,251を備える。一対のローラ251,251は、ドアレール27の上縁部に載置される。これにより、かごドア25は、ドアレール27に沿って左右方向にスライド可能な状態で、ドアレール27に吊り下げられる。このように、ドアレール27は、かごドア25の開閉動作を可能としつつ、かごドア25の上部を支持する構造体である。他方、敷居28は、かご20の開口20aの下縁に沿って、かつ、両端が開口20aの下縁よりも左右に広がるように、かご室21の前面下部に左右方向に設けられる。敷居28は、かごドア25の開閉動作を可能としつつ、かごドア25の下部を支持する構造体である。乗場ドア装置32のドア支持構造34も、ドアレール35と、敷居36とを備え、かごドア装置24のドア支持構造26と同様の構造である。
【0026】
ドア開閉装置29は、駆動モータ290と、減速プーリ291と、一対のプーリ292,292と、減速ベルト293と、駆動ベルト294と、連結具295とを備える。駆動モータ290は、かご室21の上面前部に設けられる。減速プーリ291は、かご室21の前面上部の左右いずれか一端側に設けられる。一方のプーリ292は、減速プーリ291と同軸かつ一体に設けられる。他方のプーリ292は、かご室21の前面上部の左右いずれか他端側に設けられる。減速ベルト293は、駆動モータ290の駆動軸及び減速プーリ291間に巻き掛けられた無端ベルトである。駆動ベルト294は、一対のプーリ292,292間に巻き掛けられた無端ベルトである。連結具295は、かごドア25(のドアハンガ250)を駆動ベルト294に連結する器具である。
【0027】
駆動モータ290が駆動すると、回転が減速ベルト293を介して減速プーリ291に伝達され、減速プーリ291及びプーリ292が回転し、これに伴い、駆動ベルト294が循環する。これにより、左右2枚のかごドア25,25は、ドアレール27に沿って往復動し、開閉動作する。一方のかごドア25は、駆動ベルト294の一辺に連結され、他方のかごドア25は、駆動ベルト294の他辺に連結される。これにより、一対のかごドア25,25は、互いに相反する方向に移動する。すなわち、ドア装置24,32は、かご20の開口20aが中央から開くセンターオープンタイプである。
【0028】
図4及び図5に示すように、敷居28は、固定ガイドシュー(ガイドレール)280と、可動ガイドシュー281とを備える。固定ガイドシュー280は、敷居28のうち、かご20の開口20aの枠外(すなわち、開口20aの枠線Sの外側)の部分において、敷居28の上面に突出して設けられる。固定ガイドシュー280は、かごドア25の幅の1/2以上の幅を有する。本実施形態においては、固定ガイドシュー280は、かごドア25の幅と同じ幅を有する。可動ガイドシュー281は、本発明の可動部材に相当する。可動ガイドシュー281は、敷居28のうち、開口20aの枠内(すなわち、開口20aの枠線Sの内側)の部分であって、敷居28の上面から出退自在に設けられる。可動ガイドシュー281は、開口20aの中心線(かごドア25の停止線と一致)Cの近傍に配置される。可動ガイドシュー281は、固定ガイドシュー280の幅よりも短く、かごドア25の幅の1/2以下の幅を有する。このため、固定ガイドシュー280は、レール状であり、可動ガイドシュー281は、ブロック状である。
【0029】
かごドア25の下端には、第1溝252と、第2溝253が形成される。第1溝252及び第2溝253は、かごドア25の幅に沿って設けられ、上方に凹となる溝である。第1溝252及び第2溝253は、かごドア25の前後方向に並列して設けられる。固定ガイドシュー280及び可動ガイドシュー281は、第1溝252に係入される。これにより、かごドア25は、固定ガイドシュー280及び可動ガイドシュー281にガイド(案内)及び支持されつつ、開閉動作する。
【0030】
図5及び図6に示すように、可動ガイドシュー281は、敷居28に形成されたガイド孔282に挿入され、ガイド孔282にガイド(案内)されつつ、出退動作する。ガイド孔282は、敷居28の上面から下方に(向かって)形成される。本実施形態においては、ガイド孔282は、敷居28の上面に対して垂直方向に形成される。ガイド孔282は、可動ガイドシュー281の断面形状と同じ断面形状を有し、可動ガイドシュー281が横に移動したり、傾くのを規制する。これにより、可動ガイドシュー281は、上下方向に直線運動する。
【0031】
可動ガイドシュー281の出退動作を操作する手段(可動ガイドシュー操作手段)として、かごドア装置24は、カム254と、カムフォロア283と、揺動部材(レバー)284とを備える。カム254は、かごドア25に設けられ、かごドア25の開閉動作に伴って左右方向に直線運動する。カムフォロア283は、カム254と接触し、カム254の直線運動に伴って上下方向に直線運動する。揺動部材284は、カムフォロア283と接触し、カムフォロア283の直線運動に伴って揺動運動する。可動ガイドシュー281は、揺動部材284と接触し、揺動部材284の揺動運動に伴って上下方向に直線運動する。可動ガイドシュー281は、かごドア25の全開状態では、敷居28の上面から突出しない状態にある。本実施形態においては、可動ガイドシュー281は、可動ガイドシュー281の上面と敷居28の上面とが面一となる状態にある。そして、かごドア25が閉動作してカムフォロア283及び揺動部材284が作動すると、可動ガイドシュー281は、押し上げられて敷居28の上面から突出する。これにより、可動ガイドシュー281は、出退動作する。
【0032】
カム254は、第2溝253に設けられる。カム254は、平行カム254aと、傾斜カム254bとを備える。平行カム254aは、左右方向に沿って設けられ、カムフォロア283を従動させない部分である。傾斜カム254bは、左右方向に対して傾斜し、カムフォロア283を従動させる部分である。傾斜カム254bは、かごドア25の閉動作方向に対し、平行カム254aの後位に位置する。
【0033】
カムフォロア283は、ロッド等の長尺部材であり、敷居28に形成された貫通孔に挿入され、貫通孔にガイド(案内)されつつ、スライド動作する。本実施形態においては、貫通孔は、敷居28の上面に対して垂直方向に形成される。これにより、カムフォロア283は、上下方向に直線運動する。本実施形態においては、カムフォロア283の上端部及び下端部は、先端にローラを回転自在に備え、円端の接触子となっている。カムフォロア283の上端側の接触子は、敷居28の上面よりも上方に位置し、カム254と接触する。カムフォロア283の下端側の接触子は、敷居28の上面よりも下方に位置し、揺動部材284と接触する。
【0034】
カムフォロア283は、かご20の開口20aの枠内に突出しないよう、開口20aの枠外に配置される。しかし、開口20aの枠線Sから遠ざかった位置に配置されると、かごドア25が全閉したときに、カムフォロア283がカム254から離脱してしまうことになる。そこで、カムフォロア283は、かごドア25の全開状態と全閉状態とのラップ領域の幅に収まるように配置される。具体的には、カムフォロア283は、開口20aの全開側の枠線Sの近傍に配置される。
【0035】
揺動部材284は、帯板体等の長尺部材であり、敷居28の上面よりも下方に位置し、中間部の第1部位(図6では点で表す)がかご室21又は敷居28に直接又は間接に固定された取付部材(ブラケット)285に回転自在に取り付けられることにより、揺動する。揺動部材284の第2部位は、カムフォロア283の下端側の接触子と接触する。揺動部材284の第3部位は、可動ガイドシュー281と接触する。揺動部材284の第3部位は、可動ガイドシュー281を動作させる部分であることから、可動ガイドシュー281に対する作用部284aとなる。本実施形態においては、揺動部材284の第2部位は、揺動部材284の一端部であり、揺動部材284の第3部位は、揺動部材284の他端部である。
【0036】
揺動部材284の第1部位は、揺動部材284の重心よりもカムフォロア283に寄った位置に設定される。このため、揺動部材284には、第1部位を中心として、第2部位が上がり、第3部位が下がる回転方向に回転力が働く。これにより、揺動部材284とカムフォロア283とは、常時接触しているとともに、カムフォロア283がカム254に押し付けられることにより、カムフォロア283とカム254とは、常時接触している。
【0037】
なお、可動ガイドシュー281は、かごドア25の第1溝252の下方に配置され、揺動部材284は、第2溝253の下方に配置される。このため、可動ガイドシュー281及び揺動部材284は、前後方向にずれて配置される。そこで、作用部284aは、揺動部材284の本体と交差する方向(前後方向)に突出し、可動ガイドシュー281と接触可能な形状を有する。
【0038】
可動ガイドシュー281は、下方に突出する入力部281aを備える。入力部281aは、ロッド等の長尺部材であり、可動ガイドシュー281の下面に突出して設けられる。本実施形態においては、入力部281aは、先端にローラを回転自在に備え、円端の接触子となっている。入力部281aの接触子は、敷居28の上面よりも下方に位置し、揺動部材284の作用部284aと接触する。
【0039】
乗場ドア装置32も、固定ガイドシュー(ガイドレール)360と、可動ガイドシュー361と、可動ガイドシュー操作手段とを備え、かごドア装置24と同じ構造である。
【0040】
本実施形態に係るエレベータ1の構成は、以上の説明のとおりである。次に、ドア装置24,32の開閉動作について、図4及び図6を参酌して説明する。なお、ドア装置24,32は、上述のとおり、連動し、同じ開閉動作となる。そこで、以下においては、かごドア装置24の開閉動作について記載し、乗場ドア装置32の開閉動作については、かごドア装置24の開閉動作についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0041】
かごドア25の全開状態(図4(a)、図6(a)、(b))では、固定ガイドシュー280がかごドア25の第1溝252に係入し、かごドア25の下部は、前後方向に動かないように支持される。これに対し、可動ガイドシュー281は、敷居28の上面から突出しない位置状態にある。本実施形態においては、可動ガイドシュー281は、この上面と敷居28の上面とが面一となる位置状態にある。これにより、人は、可動ガイドシュー281でつまずいたり、可動ガイドシュー281に引っ掛かることなく、安全にかご20を乗り降りすることができる。
【0042】
そして、かごドア25が閉動作を開始すると、かごドア25は、固定ガイドシュー280にガイドされつつ、移動する。しかし、可動ガイドシュー281は、かごドア25の下部の先端部(かごドア25の下部の左右両端部のうち、かご20の開口20aの中心線Cに近い側の端部)が可動ガイドシュー281を通過するまでは、敷居28の上面から突出しない位置状態が維持される(図4(b))。これは、カムフォロア283が平行カム254aと接触し、作動しないからである。
【0043】
かごドア25がさらに移動して可動ガイドシュー281を通過し、可動ガイドシュー281がかごドア25の下部に隠れた状態になると、カムフォロア283が傾斜カム254bと接触して作動し、これに伴い、揺動部材284が作動し、可動ガイドシュー281が揺動部材284に押し上げられる。このため、可動ガイドシュー281は、突出を開始する(図4(c))。
【0044】
そして、かごドア25の全閉状態(図4(d)、図6(c)、(d))では、可動ガイドシュー281は、完全に突出し、かごドア25の第1溝252に係入する。また、かごドア25は、固定ガイドシュー280から離脱するわけではなく、固定ガイドシュー280の先端部が第1溝252に係入した状態が残される。これにより、かごドア25の下部は、基端部(かごドア25の下部の左右両端部のうち、かご20の開口20aの中心線Cから遠い側の端部)及び先端部(かごドア25の下部の左右両端部のうち、開口20aの中心線Cに近い側の端部)の左右両端部にて、固定ガイドシュー280及び可動ガイドシュー281により、前後方向に動かないように支持される。
【0045】
このように、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、ドア25,33の全開状態及びドア25,33の開閉動作中では、出入口(かご20の開口20a及び乗場30の三方枠31内の開口)の下縁は、なんらの突出物もないフラットな状態である。このため、人は、つまずいたり、引っ掛かることなく、安全にかご20を乗り降りすることができる。他方、ドア25,33の全閉状態では、ドア25,33の下部の両端部は、前後方向に動かないように支持される。このため、ドア25,33に外力が加わっても、これに対抗することができ、ドア25,33又はドア支持構造26,34が破損するのを好適に防止することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、敷居28,36は、溝がないフラットタイプである。このため、溝に異物が溜まり、ドア25,33が傾いた状態になること及びこれに伴う誤作動を好適に防止することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、敷居28,36に形成されるガイド孔282,362は、可動ガイドシュー281,361の断面形状と同じ断面形状を有し、可動ガイドシュー281,361が横に移動したり、傾くのを規制し、可動ガイドシュー281,361を直線運動させる。すなわち、可動ガイドシュー281,361とガイド孔282,362との間に隙間は形成されない。このため、隙間に異物等が挟み込まれ、可動ガイドシュー281,361の出退動作が阻害されるという問題の発生を好適に防止することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、可動ガイドシュー281,361とガイド孔282,362との間に隙間や段差が形成されない。このため、可動ガイドシュー281,361を幅広化することができる(特許文献1に記載のものであれば、出入口側案内片を幅広化することにより、隙間や段差がより大きなものとなり、異物等の挟み込みの問題が顕著化する。)。そして、可動ガイドシュー281,361を幅広化することにより、ドア25,33の下部の支持力を強化することができるとともに、ドア25,33の開閉動作の安定性を向上することができる。また、幅広の可動ガイドシュー281,361を使用できるため、幅広のドア装置(サイズが大きいかご)に好適に適用することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、可動ガイドシュー281,361は、横に移動したり、傾くことなく、前後方向において強固に固定される。このため、ドア25,33に大きな外力が加わっても、これに対抗することができ、耐衝撃性を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るドア装置24,32によれば、可動ガイドシュー操作手段内において、カム254,334とカムフォロア283,363、カムフォロア283,363と揺動部材284,364とは、常時接触している。また、可動ガイドシュー操作手段(の揺動部材284,364)と可動ガイドシュー281,361とも、常時接触している。このため、離間した状態から接触する状態への変化に伴う騒音の発生を好適に防止することができる。
【0051】
<第1実施形態の変形例>
図7に第1実施形態の変形例が示される。第1実施形態においては、左右のドア25,25に対して設けられる左右一対の可動ガイドシュー281,281は、物理的に分離された部材である。これに対し、変形例では、一対の可動ガイドシュー281,281は、下部が横架部により連結され、一体化されている。入力部281aも一つに統合される。可動ガイドシュー操作手段も一つにすることもできる。このため、変形例によれば、部品数及び工数を削減、ひいては製造コストを削減することができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るエレベータの第2実施形態として、2枚のドアによるサイドオープンタイプ(2S)のドア装置を備えるエレベータについて、図面を参酌して説明する。なお、以下においては、本実施形態に係るエレベータが第1実施形態に係るエレベータと異なる点について記載し、同じ点については、第1実施形態についての記載と同様であるとして、記載を省略する。また、かごドア装置24及び乗場ドア装置32は、同じ構造である。そこで、以下においては、かごドア装置24について記載し、乗場ドア装置32については、かごドア装置24についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0053】
図8及び図9に示すように、ドア装置24において、ドア25は、第1ドア25s及び第2ドア25fの2枚ドアで構成される。また、ドア装置24において、第1ドア25s及び第2ドア25fは、同じ方向に移動する。ただし、第2ドア25fは、第1ドア25sよりも多く移動する。これにより、サイドオープンタイプは、出入口が端から開く構造である。なお、第1ドア25sは、移動量が少ない、すなわち移動速度が遅い、ということで、一般的に「スロードア」といわれる。第2ドア25fは、移動量が多い、すなわち、移動速度が速い、ということで、一般的に「ファーストドア」といわれる。
【0054】
ドアレール27は、第1ドア25s用のものと、第2ドア25f用のものとがあり、前後方向に間隔を有して並列する。第1ドア25sは、一方のドアレール27に沿って左右方向にスライド可能な状態で、一方のドアレール27に吊り下げられる。第2ドア25fは、他方のドアレール27に沿って左右方向にスライド可能な状態で、他方のドアレール27に吊り下げられる。一般的には、第1ドア25sは、内側、第2ドア25fは、外側、に配置される。
【0055】
ドア開閉装置29は、さらに、取付部材(アーム)296と、一対のプーリ297,297と、駆動ベルト298とを備える。取付部材296は、左右方向に延び、第1ドア25s(のドアハンガ250)に連結して設けられる。一対のプーリ297,297は、取付部材296の両端部に設けられる。駆動ベルト298は、一対のプーリ297,297間に巻き掛けられ、両端がかご室21の上面前部に固定される無端状のベルトである(ワイヤである場合もある)。第2ドア25fは、一つの連結具295を介して駆動ベルト294に連結されるとともに、もう一つの連結具295を介して駆動ベルト298に連結される。
【0056】
駆動モータ290が駆動すると、第2ドア25fは、ドアレール27に沿って移動する。また、これに伴い、駆動ベルト298が駆動ベルト294の半分の速度に減速されて循環し、取付部材296が半分の速度で移動する。このため、第1ドア25sは、ドアレール27に沿ってかつ第2ドア25fの半分の移動量で移動する。これにより、第2ドア25fが第1ドア25sを覆うようにして両者が重なるかごドア25の全開状態から、かごドア25が閉動作すると、第2ドア25fが第1ドア25sの2倍の移動量で移動し、かごドア25の全閉状態となる。
【0057】
図10ないし図12に示すように、固定ガイドシュー(ガイドレール)280は、第1ドア25s用のものと、第2ドア25f用のものとがある。可動ガイドシュー281も、第1ドア25s用のもの(第1可動ガイドシュー281s)と、第2ドア25f用のもの(第2可動ガイドシュー281f)とがある。
【0058】
第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、敷居28のうち、かご20の開口20aの枠内(すなわち、開口20aの枠線Sの内側)の部分であって、敷居28の上面から出退自在に設けられる。第1可動ガイドシュー281sは、開口20aの中心線(第1ドア25sの停止線とおおむね一致)Cの近傍に配置される。第2可動ガイドシュー281fは、開口20aの全閉側の枠線(第2ドア25fの停止線とおおむね一致)Sの近傍に配置される。
【0059】
第1ドア25s用の固定ガイドシュー280及び第1可動ガイドシュー281sは、第1ドア25sの第1溝252に係入される。第2ドア25f用の固定ガイドシュー280及び第2可動ガイドシュー281fは、第2ドア25fの第1溝252に係入される。これにより、第1ドア25sは、第1ドア25s用の固定ガイドシュー280及び第1可動ガイドシュー281sにガイド(案内)及び支持されつつ、開閉動作する。また、第2ドア25fは、第2ドア25f用の固定ガイドシュー280及び第2可動ガイドシュー281fにガイド(案内)及び支持されつつ、開閉動作する。
【0060】
図12ないし図14に示すように、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、敷居28に形成されたガイド孔282に挿入され、ガイド孔282にガイド(案内)されつつ、出退動作する。ガイド孔282は、敷居28の上面から下方に(向かって)形成される。本実施形態においては、ガイド孔282は、敷居28の上面に対して垂直方向に形成される。ガイド孔282は、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fの断面形状と同じ断面形状を有し、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fが横に移動したり、傾くのを規制する。これにより、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、上下方向に直線運動する。
【0061】
本実施形態に係る可動ガイドシュー操作手段は、第1実施形態に係る可動ガイドシュー操作手段と基本的には同じ構成である。異なる点は、本実施形態に係る可動ガイドシュー操作手段は、1つの揺動部材(レバー)284で、二つの可動ガイドシュー281s,281fを操作する点である。このため、揺動部材284は、2つの作用部(第1作用部284a及び第2作用部284b)を備える。第1作用部284aは、揺動部材284の第3部位に設けられ、第1可動ガイドシュー281sに対する作用部である。第2作用部284bは、揺動部材284の第4部位に設けられ、第2可動ガイドシュー281fに対する作用部である。なお、揺動部材284の第1部位は、揺動部材284の中間部に設定される揺動中心であり、揺動部材284の第2部位は、揺動部材284の、カムフォロア283の下端側の接触子と接触する部位である。本実施形態においては、揺動部材284の第2部位は、揺動部材284の一端部であり、揺動部材284の第3部位は、揺動部材284の、第2部位からの距離が第1部位よりも遠い位置にある中間部の部位であり、揺動部材284の第4部位は、揺動部材284の他端部である。
【0062】
揺動部材284の第1部位は、第2部位と第3部位との間であって、揺動部材284の重心よりもカムフォロア283に寄った位置に設定される。このため、揺動部材284には、第1部位を中心として、第2部位が上がり、第3部位及び第4部材が下がる回転方向に回転力が働く。これにより、揺動部材284とカムフォロア283とは、常時接触しているとともに、カムフォロア283がカム254に押し付けられることにより、カムフォロア283とカム254とは、常時接触している。
【0063】
なお、第1可動ガイドシュー281sは、第1ドア25sの第1溝252の下方に配置され、揺動部材284は、第1ドア25sの第2溝253の下方に配置され、第2可動ガイドシュー281fは、第2ドア25fの第1溝252の下方に配置される。このため、第1可動ガイドシュー281s、揺動部材284及び第2可動ガイドシュー281fは、前後方向にずれて配置される。そこで、第1作用部284a及び第2作用部284bは、揺動部材284の本体と交差する方向(前後方向)に突出し、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fと接触可能な形状を有する。
【0064】
揺動部材284は、中間部の所定部位(本実施形態においては、揺動部材284の第3部位あたり)が屈曲し、非線形となっている。これは、第2可動ガイドシュー281fの突出動作のタイミングを第1可動ガイドシュー281sの突出動作のタイミングよりも遅らせるとともに、第2可動ガイドシュー281fの退避動作のタイミングを第1可動ガイドシュー281sの退避動作のタイミングよりも早めるためである。この点については、後に説明する。
【0065】
また、このため、揺動部材284の第1作用部284aと第1可動ガイドシュー281sの入力部281aとは、常時接触しているが、揺動部材284の第2作用部284bと第2可動ガイドシュー281fの入力部281aとの間には、離間状態が発生する。この離間により、第2可動ガイドシュー281fが落下してガイド孔282から離脱するのを防止するため、第2可動ガイドシュー281f用のガイド孔282は、第2可動ガイドシュー281fの落下を防止する底部段付き孔となっている。
【0066】
本実施形態に係るエレベータ1の構成は、以上の説明のとおりである。次に、ドア装置24,32の開閉動作について、図10図11図13及び図14を参酌して説明する。なお、ドア装置24,32は、上述のとおり、連動し、同じ開閉動作となる。そこで、以下においては、かごドア装置24の開閉動作について記載し、乗場ドア装置32の開閉動作については、かごドア装置24の開閉動作についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0067】
かごドア25の全開状態(図10(a)、図13(a)、(b))では、固定ガイドシュー280が第1ドア25s及び第2ドア25fの各第1溝252に係入し、第1ドア25s及び第2ドア25fの下部は、前後方向に動かないように支持される。これに対し、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、敷居28の上面から突出しない位置状態にある。本実施形態においては、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、この上面と敷居28の上面とが面一となる位置状態にある。これにより、人は、第1可動ガイドシュー281s又は第2可動ガイドシュー281fでつまずいたり、第1可動ガイドシュー281s又は第2可動ガイドシュー281fに引っ掛かることなく、安全にかご20を乗り降りすることができる。
【0068】
そして、かごドア25が閉動作を開始すると、第1ドア25s及び第2ドア25fは、固定ガイドシュー280,280にガイドされつつ、移動する。しかし、第1可動ガイドシュー281sは、第2ドア25fの下部の先端部(第2ドア25fの下部の左右両端部のうち、開口20aの全閉側の枠線Sに近い側の端部)が第1可動ガイドシュー281sを通過するまでは、敷居28の上面から突出しない位置状態が維持される(図10(b))。これは、カムフォロア283が平行カム254aと接触し、作動しないからである。また、第2可動ガイドシュー281fは、第2ドア25fの下部の先端部が第2可動ガイドシュー281fを通過するまでは、敷居28の上面から突出しない位置状態が維持される(図10(b)、(c)、(d)、図11(a))。これは、揺動部材284が可動ガイドシュー281fと離間しているからである。
【0069】
第2ドア25fがさらに移動して第1可動ガイドシュー281sを通過し、第1可動ガイドシュー281sが第2ドア25fの下部に隠れた状態になると、カムフォロア283が傾斜カム254bと接触して作動し、これに伴い、揺動部材284が作動し、第1可動ガイドシュー281sが揺動部材284に押し上げられる。このため、第1可動ガイドシュー281sは、突出を開始する(図10(c))。
【0070】
そして、第2ドア25fがさらに移動して第2可動ガイドシュー281fを通過し、第2可動ガイドシュー281fが第2ドア25fの下部に隠れた状態になると、揺動部材284がそれまで離間していた第2可動ガイドシュー281fと接触し(図11(a)、図13(c)、(d))、第2可動ガイドシュー281fが揺動部材284に押し上げられる。このため、第2可動ガイドシュー281fは、突出を開始する(図11(b))。
【0071】
そして、かごドア25の全閉状態(図11(c)、図14(a)、(b))では、第1可動ガイドシュー281s及び第2可動ガイドシュー281fは、完全に突出し、第1可動ガイドシュー281sは、第1ドア25sの第1溝252に、第2可動ガイドシュー282fは、第2ドア25fの第1溝252に、それぞれ係入する。また、第2ドア25fは、固定ガイドシュー280から離脱するが、第1ドア25sは、固定ガイドシュー280から離脱するわけではなく、固定ガイドシュー280の先端部が第1ドア25sの第1溝252に係入した状態が残される。これにより、第1ドア25sの下部は、基端部(第1ドア25sの下部の左右両端部のうち、かご20の開口20aの中心線Cから遠い側の端部)及び先端部(第1ドア25sの下部の左右両端部のうち、開口20aの中心線Cに近い側の端部)の左右両端部にて、固定ガイドシュー280及び第1可動ガイドシュー281sにより、前後方向に動かないように支持される。また、第2ドア25fの下部は、基端部(第2ドア25fの下部の左右両端部のうち、開口20aの全閉側の枠線Sから遠い側の端部)及び先端部(第2ドア25fの下部の左右両端部のうち、開口20aの全閉側の枠線Sに近い側の端部)の左右両端部にて、第1ドア25s及び第2可動ガイドシュー281fにより、前後方向に動かないように支持される。
【0072】
このように、本実施形態に係るドア装置24,32によっても、第1実施形態に係るドア装置24,32と同様の作用効果を奏する。
【0073】
<第2実施形態の変形例>
図15(a)及び(b)に第2実施形態の一つの変形例が示される。図15(c)及び(d)にもう一つの変形例が示される。第2実施形態においては、第2ドア25fに対し、可動ガイドシュー281は、1つであって、かご20の開口20aの全閉側の枠線Sの近傍に設けられる。これに対し、一つの変形例では、第2ドア25fに対し、可動ガイドシュー281は、2つ(第2可動ガイドシュー281f1及び第3可動ガイドシュー281f2)であって、開口20aの中心線Cの近傍及び開口20aの全閉側の枠線Sの近傍に設けられる(第2ドア33fに対しても同様。)。作用部も、2つ(第2作用部284b1、第3作用部284b2)設けられる。もう一つの変形例では、第2ドア25fに対し、可動ガイドシュー281は、1つであるが、第2実施形態の可動ガイドシュー281よりも幅広で、開口20aの中心線C及び全閉側の枠線S間の中央部に設けられる(第2ドア33fに対しても同様。)。このため、これらの変形例によれば、第2ドア25fの下部の支持力を強化することができるとともに、第2ドア25fの開閉動作の安定性を向上することができる。なお、これら2つの変形例は、第1実施形態に係るドア装置24,32にも適用できることはいうまでもない。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
上記各実施形態においては、可動ガイドシュー281,361は、ドア25,33の下部の先端部が可動ガイドシュー281,361を通過するまでは、敷居28,36の上面から突出しない位置状態が維持され、ドア25,33の下部の先端部が可動ガイドシュー281,361を通過した時点で突出を開始するものである。また、可動ガイドシュー操作手段は、このような可動ガイドシュー281,361の突出動作を得るために設計される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ドアが全閉状態となる手前の時点で突出を開始する可動ガイドシューについては、すでにその時点で出入口が狭まって人は通れなくなっているので、ドアの下部の先端部が可動ガイドシューを通過する前の時点で突出を開始するようにしてもよい。
【0076】
また、上記第2実施形態においては、第1可動ガイドシュー281s,361sは、第2ドア25f,33fの下部の先端部が第1可動ガイドシュー281s,361sを通過するまでは、敷居28,36の上面から突出しない位置状態が維持され、第2ドア25f,33fの下部の先端部が第1可動ガイドシュー281s,361sを通過した時点で突出を開始するものである。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。第1可動ガイドシューは、これよりも遅い時点(たとえば、第1ドアの下部の先端部が第1可動ガイドシューを通過する前の時点や通過した時点)で突出を開始するようにしてもよい。
【0077】
また、上記第2実施形態においては、第2可動ガイドシュー281f,361f用のガイド孔282,362は、第2可動ガイドシュー281fの落下を防止する底部段付き孔である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。第1実施形態における可動ガイドシュー用のガイド孔や、第2実施形態における第1可動ガイドシュー用のガイド孔も、底部段付き孔としてもよい。また、この場合、揺動部材の作用部が常時接触せず、離間するようにしてもよい。
【0078】
また、上記各実施形態においては、可動ガイドシュー281,361を係入させるために、ドア25,33の下部に溝252,332が形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。可動ガイドシューが係入するのは、たとえば、溝ではなく、局所的に形成される凹部であってもよい。
【0079】
また、上記各実施形態においては、ドア25,33の下部に、固定ガイドシュー280,360及び可動ガイドシュー281,361のために、第1溝252,332が形成され、カム254,334のために、第2溝253,333が形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、溝は、1つであり、この溝に、カムが設置され、ガイドシューが係入するようにしてもよい。
【0080】
また、本発明において、固定ガイドシューは必須ではない。可動ガイドシューだけでドアの下部が支持されるようにしてもよい。
【0081】
また、上記各実施形態の可動ガイドシュー操作手段は、一例に過ぎない。本発明において、操作手段は、各種の形態を採用することができる。
【0082】
また、上記第1実施形態に係るドア装置24,32は、左右各1枚のドアによるセンターオープンタイプ(2CO)であり、上記第2実施形態に係るドア装置24,32は、2枚のドアによるサイドオープンタイプ(2S)である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、左右各2枚のドアによるセンターオープンタイプ(4CO)のドア装置や、1枚のドアによるサイドオープンタイプ(1S)のドア装置にも適用できることはいうまでもない。ちなみに、4COのドア装置は、2Sのドア装置が左右線対称に配置され、かつ、2COのドア装置のように、一方の第2ドアが駆動ベルトの一辺に連結されるとともに、他方の第2ドアが駆動ベルトの他辺に連結される構造である。また、1Sのドア装置は、2Sのドア装置の第1ドアがない構造である。なお、上記第1実施形態の変形例は、4COのドア装置にも適用できることはいうまでもない。また、上記第2実施形態の各変形例は、4COのドア装置や1Sのドア装置にも適用できることはいうまでもない。
【0083】
また、「中央」、「中心」、「端部」、「同じ」、「一致」、「垂直」、「平行」、「面一」、「上下」、「前後」、「左右」といった形状、部位、状態又は方向を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。また、「上方」、「下方」とは、鉛直方向に限定されず、鉛直方向に対して傾斜する方向も含むものである。
【符号の説明】
【0084】
1…エレベータ、10…昇降路、11…ガイドレール、20…かご、20a…開口(出入口)、21…かご室、22…かご枠、22a…縦枠、23…ガイドシュー、24…かごドア装置、25…かごドア、25s…第1ドア、25f…第2ドア、250…ドアハンガ、251…ローラ、252…第1溝、253…第2溝、254…カム、254a…平行カム、254b…傾斜カム、26…ドア支持構造、27…ドアレール、28…敷居、280…固定ガイドシュー(ガイドレール)、281…可動ガイドシュー、281s…第1可動ガイドシュー、281f,281f1…第2可動ガイドシュー、281f2…第3可動ガイドシュー、281a…入力部、282…ガイド孔、283…カムフォロア、284…揺動部材(レバー)、284a…作用部、第1作用部、284b,284b1…第2作用部、284b2…第3作用部、285…取付部材(ブラケット)、29…ドア開閉装置、290…駆動モータ、291…減速プーリ、292…プーリ、293…減速ベルト、294…駆動ベルト、295…連結具、296…取付部材(アーム)、297…プーリ、298…駆動ベルト、30…乗場、31…三方枠、32…乗場ドア装置、33…乗場ドア、33s…第1ドア、33f…第2ドア、330…ドアハンガ、331…ローラ、332…第1溝、333…第2溝、334…カム、334a…平行カム、334b…傾斜カム、34…ドア支持構造、35…ドアレール、36…敷居、360…固定ガイドシュー(ガイドレール)、361…可動ガイドシュー、361s…第1可動ガイドシュー、361f…第2可動ガイドシュー、361a…入力部、362…ガイド孔、363…カムフォロア、364…揺動部材(レバー)、364a…作用部、第1作用部、364b…第2作用部、365…取付部材(ブラケット)、C…開口の中心線、S…開口の枠線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15