(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】食用油酸化防止装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20220203BHJP
C11B 5/00 20060101ALI20220203BHJP
A23D 9/02 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A47J37/12
C11B5/00
A23D9/02
(21)【出願番号】P 2018111537
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】305042596
【氏名又は名称】熊本電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509034292
【氏名又は名称】野口 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】熊本 元信
(72)【発明者】
【氏名】野口 博文
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-093037(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0086595(KR,A)
【文献】国際公開第2016/139744(WO,A1)
【文献】特開2006-192404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10-37/12
C02F 1/46
C11B 5/00
A23D 9/02
H01B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留された食用油に浸漬した電極から電子を放出して食用油の酸化を防止するための食用油酸化防止装置において、
電極は、貯留された食用油の内部に挿入して電子を放出するための中空円筒形状の導電体に、直流電源と接続するための導電ワイヤを接続するとともに、導電ワイヤを中空状のセラミックス体で被覆
し、電極の外周で導電ワイヤを接続して、電極全体を中空円筒形状としたことを特徴とする食用油酸化防止装置。
【請求項2】
前記セラミックス体は、複数の環状のセラミックスリングで構成したことを特徴とする請求項1に記載の食用油酸化防止装置。
【請求項3】
前記電極は、導電体の両端部に導電体の外径よりも拡大した絶縁体を設け
、絶縁体は、中空円筒形状で、端部に内側に張り出した鍔部を形成して、導電体の両端部の端面が露出しないようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の食用油酸化防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留された食用油に浸漬した電極から電子を放出して食用油の酸化を防止するための食用油酸化防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フライヤー等で使用される食用油は、長時間にわたって貯留槽に貯留された状態となっている。
【0003】
そして、貯留槽に貯留された食用油は、空気中の酸素と接触して酸化してしまい、劣化してしまう。
【0004】
そのため、従来より、貯留槽に貯留された食用油の酸化を防止するための食用油酸化防止装置が開発されている。
【0005】
この従来の食用油酸化防止装置では、直流電圧を生成する直流電源の接地端子(グランド端子)を金属製の貯留槽に接続するとともに、直流電源に電極をケーブルを介して接続し、電極を貯留槽の内部に貯留された食用油に浸漬させる。そして、直流電源から接地端子と電極との間に負電圧を印加することによって、電極から電子を放出させて、食用油の酸化を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の食用油酸化防止装置では、直流電源と電極とをケーブルを介して接続しているために、食用油の熱によってケーブルのビニール製の被覆が溶けてしまうおそれがあった。
【0008】
そのため、上記従来の食用油酸化防止装置では、被覆が溶けて内部の導電ワイヤが作業者の身体や金属製の貯留槽などと接触して誤電流が漏出してしまうおそれや、溶けたビニール製の被覆が食用油に混入してしまうおそれなどがあり、安全上での問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る本発明では、貯留された食用油に浸漬した電極から電子を放出して食用油の酸化を防止するための食用油酸化防止装置において、電極は、貯留された食用油の内部に挿入して電子を放出するための中空円筒形状の導電体に、直流電源と接続するための導電ワイヤを接続するとともに、導電ワイヤを中空状のセラミックス体で被覆し、電極の外周で導電ワイヤを接続して、電極全体を中空円筒形状とすることにした。
【0010】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記セラミックス体は、複数の環状のセラミックスリングで構成することにした。
【0011】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記電極は、導電体の両端部に導電体の外径よりも拡大した絶縁体を設け、絶縁体は、中空円筒形状で、端部に内側に張り出した鍔部を形成して、導電体の両端部の端面が露出しないようにすることにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、貯留された食用油に浸漬した電極から電子を放出して食用油の酸化を防止するための食用油酸化防止装置において、電極は、電子を放出するための導電体に、直流電源と接続するための導電ワイヤを接続するとともに、導電ワイヤを中空状のセラミックス体で被覆することにしているために、食用油の熱に耐えることができ、食用油酸化防止装置の安全性を向上させることができる。
【0014】
特に、セラミックス体を複数の環状のセラミックスリングで構成した場合には、可撓性を持たせることができ、使い勝手を向上させることができる。
【0015】
また、電極を直流電源に接続した一対の正側電極と負側電極とで構成することにした場合には、導電性を有しない貯留槽であっても使用することが可能となり、これによっても使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る食用油酸化防止装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る食用油酸化防止装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、食用油酸化防止装置1は、所定電圧の直流電圧を生成する直流電源2に電極3(一対の正側電極4と負側電極5)とを接続している。
【0019】
この食用油酸化防止装置1では、食用油を貯留するフライヤー等の貯留槽6の内部に正側電極4と負側電極5とを載置することで、貯留槽6の内部に貯留された食用油に電極3(正側電極4及び負側電極5)を浸漬させる。
【0020】
そして、食用油酸化防止装置1では、直流電源2から正側電極4と負側電極5との間に直流電圧を印加する。すると、負側電極5から正側電極4に向けて食用油の内部を通過して電子が流動する。食用油は、電子を放出してプラスイオン化すると、酸素のマイナスイオンと結合して酸化が生じる。そのため、食用油中に電子を流動させることで、電子の作用によって食用油がプラスイオン化してしまうのを抑制し、食用油の酸化(酸素のマイナスイオンとの結合)を防止する。
【0021】
電極3は、正側電極4及び負側電極5とも同様の構成となっている。そのため、ここでは、負側電極5の構成について説明する。なお、正側電極4は、負側電極5と異なる構造としてもよく、貯留槽6が金属等の導電性を有する素材で形成されている場合には、貯留槽6の外部において直流電源2と貯留槽6とを直接ケーブル等で接続してもよい。
【0022】
負側電極5は、
図2に示すように、電極体7と導電線8とで構成している。
【0023】
電極体7は、電子を放出するための金属等の導電性を有する素材からなる導電体9の両端部にプラスチック等の絶縁性を有する素材からなる絶縁体10,10を取付けている。
【0024】
この電極体7(導電体9及び絶縁体10,10)は、中空円筒形状となっている。絶縁体10は、端部に内側及び外側に張り出した鍔部11を形成するとともに、絶縁体10の外径を導電体9の外径よりも拡大しており、絶縁体10の内側中空部分に導電体9を挿入して、導電体9の両端部の外周面及び端面が露出(通電)しないようにしている。
【0025】
このように電極体7は、導電体9よりも絶縁体10を拡径することで、導電体9が貯留槽6に直接接触して誤電流が漏出してしまうのを防止している。
【0026】
また、電極体7は、全体を中空円筒形状とすることで、貯留槽6に貯留された食用油の内部(貯留槽6の底)に抵抗なく円滑に挿入することができるようにしている。
【0027】
導電線8は、金属製等の導電性及び可撓性を有する素材からなる導電ワイヤ12をセラミック製の絶縁性及び耐熱性を有する素材からなるセラミックス体13で被覆している。
【0028】
導電ワイヤ12は、一端にハトメ14を介して電極体7の導電体9の外周に接続するとともに、他端に直流電源2に装着されるバナナクリップ等の端子15を接続している。この導電ワイヤ12は、食用油の熱で溶けないように耐熱性を有している。
【0029】
セラミックス体13は、1本の中空円筒形状として、中空部分に導電ワイヤ12を挿通させてもよいが、ここでは、複数の環状のセラミックスリング16で構成し、各セラミックスリング16の中空部分に導電ワイヤ12を挿通させている。
【0030】
以上に説明したように、上記食用油酸化防止装置1は、電極3を、電子を放出するための導電体9に、直流電源2と接続するための導電ワイヤ12を接続するとともに、導電ワイヤ12を中空状のセラミックス体13で被覆する構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成の食用油酸化防止装置1では、導電ワイヤ12を被覆するセラミックス体13が食用油の熱に耐えることができ、被覆の溶出や食用油への混入のおそれがなくなり、食用油酸化防止装置1の安全性を向上させることができる。
【0032】
また、上記食用油酸化防止装置1は、セラミックス体13を複数の環状のセラミックスリング16で構成している。
【0033】
そのため、上記構成の食用油酸化防止装置1では、導電ワイヤ12を被覆するセラミックス体13に可撓性を持たせることができ、電極3の引き回しなどが楽に行え、食用油酸化防止装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0034】
また、上記食用油酸化防止装置1は、電極3を直流電源2に接続した一対の正側電極4と負側電極5とで構成している。
【0035】
そのため、上記構成の食用油酸化防止装置1では、導電性を有しない貯留槽6であっても使用することが可能となり、また正側電極4と負側電極5とを貯留槽6の内部に自由に配置することができ、これによっても食用油酸化防止装置1の使い勝手を向上させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 食用油酸化防止装置 2 直流電源
3 電極 4 正側電極
5 負側電極 6 貯留槽
7 電極体 8 導電線
9 導電体 10 絶縁体
11 鍔部 12 導電ワイヤ
13 セラミックス体 14 ハトメ
15 端子 16 セラミックスリング