(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】表面保護剤
(51)【国際特許分類】
C04B 41/64 20060101AFI20220117BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20220117BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220117BHJP
C09D 183/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C04B41/64
C09K3/18 104
C09D7/63
C09D183/00
(21)【出願番号】P 2018002073
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 夏樹
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198639(JP,A)
【文献】特開2015-229693(JP,A)
【文献】特開2005-040750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00- 41/72
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料の表面に適用される表面保護剤
(BH型粘度計にて、回転数20rpm 、ローターNo.2を用いて測定したときの20℃における粘度が100mPa・s以上のものを除く)であって、該表面保護剤が(1)シラン化合物と、(2)脂肪酸又はその塩と、(3)
溶媒揮発抑制剤としての脂肪酸アマイドとを含有し、前記脂肪酸又はその塩の表面保護剤における含有量が0.5質量%以上であるとともに、セメント系材料の表面に適用した後にイオン交換により固化し得ることを特徴とする表面保護剤。
【請求項2】
前記表面保護剤がシリコーンオイルにより分散されていることを特徴とする請求項1に記載の表面保護剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系材料の表面を保護する表面保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント系材料の表面を保護する表面保護剤としては、シラン系表面保護剤及びケイ酸塩系表面保護剤が知られている。シラン系表面保護剤としては、例えば特許文献2に開示されるように、シラン化合物が加水分解及び脱水縮合されることで保護層を形成する。シラン系表面保護剤により形成された保護層は、シラン化合物の有する疎水性基に基づく撥水性によってセメント系材料への水の浸入を抑制する。
【0003】
一方、ケイ酸塩系表面保護剤としては、例えば特許文献3に開示されるように、ケイ酸ナトリウム等のアルカリケイ酸塩(水ガラス)がゲル化されることで保護層を形成する。ケイ酸塩系表面保護剤により形成された保護層は、水に不溶なケイ酸系ゲルを含むことで、セメント系材料への水、気体等の劣化因子の侵入を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-198639号公報
【文献】特開2009-091167号公報
【文献】特開2011-256066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のようにシラン系表面保護剤により得られる保護層は撥水性を有するため、セメント系材料への水の浸入を抑制するという観点では、シラン系表面保護剤がケイ酸塩系表面保護剤よりも有利である。これに対して、ケイ酸塩系表面保護剤は、セメント系材料の空隙を物理的に閉塞する効果が得られ易いため、水以外の物質の侵入を抑制するという観点では、ケイ酸塩系表面保護剤がシラン系表面保護剤よりも有利である。
【0006】
ここで、各表面処理剤に含有する成分の特性を踏まえると、シラン化合物及びアルカリケイ酸塩のいずれも含有する表面保護剤によれば、セメント系材料への水の浸入を抑制し、かつセメント系材料への水以外の物質の侵入を抑制する効果が得られると考えられる。ところが、シラン化合物とアルカリケイ酸塩とは、相溶性や共存下での安定性に乏しいため、シラン化合物及びアルカリケイ酸塩のいずれも含有する表面保護剤の調製は困難であり、また表面保護剤中において各成分の安定性も得られ難くなる。そこで、シラン系表面保護剤及びケイ酸塩系表面保護剤を個別にセメント系材料に適用することも考えられる。この場合、一方の表面保護剤を適用したセメント系材料に対して他方の表面保護剤を適用するタイミングについて、例えば一方の表面保護剤の反応速度に応じて設定することになる。こうした反応速度は、表面保護剤を適用する温度等の環境やセメント系材料の表面状態に影響される。このため、各表面保護剤を別々に適用する作業は、上記タイミングの設定等によって煩雑になるおそれや、相溶性や共存下での安定性が乏しい成分を同時に適用することで、形成される保護層の物性がばらつくおそれがある。
【0007】
以上のように、シラン化合物及びアルカリケイ酸塩を用いた場合、セメント系材料への水分の浸入を抑制し、かつセメント系材料への水以外の物質の侵入を抑制する効果を高めることは困難であった。
【0008】
上記のような課題に対応するため、特許文献3に示すようなシラン化合物と脂肪酸又はその塩とを含有する表面保護剤が提案されている。しかし、セメント系材料が摩耗等により表面が消失してしまった場合でも、消失層よりも深く表面保護剤を浸透させることにより、セメント系材料への水分及び水以外の物質の侵入を抑制する技術の登場が待たれていた。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セメント系材料への水分の浸入を抑制し、かつセメント系材料への水以外の物質の侵入を抑制する効果を高めるとともに、表面保護剤のセメント系材料への浸透性を高めることができる表面保護剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、表面保護剤に含有させる成分によって、撥水性という化学的な作用に加えて、セメント系材料の空隙を閉塞するという物理的な作用も発揮させることに着目した。そして、本発明者らは、表面保護剤に含有させる表面保護成分として、化学的な作用を発揮するシラン化合物に加えて、脂肪酸又はその塩を含有させることで、物理的作用を発揮させることが可能であることに着目するとともに、さらに脂肪酸アマイドを含有させることにより、上記課題を解決した。
【0011】
上記課題を解決する表面保護剤は、セメント系材料の表面に適用される表面保護剤であって、該表面保護剤が(1)シラン化合物と、(2)脂肪酸又はその塩と、(3)脂肪酸アマイドとを含有し、前記脂肪酸又はその塩の表面保護剤における含有量が0.5質量%以上であるとともに、セメント系材料の表面に適用した後にイオン交換により固化し得るものである。
上記表面保護剤では、シリコーンオイルにより分散されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セメント系材料への水分の浸入を抑制し、かつセメント系材料への水以外の物質の侵入を抑制する効果を高めるとともに、セメント系材料に対する浸透性を高めることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の含浸深さ試験の測定位置を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の表面保護剤の実施形態について説明する。
本発明の表面保護剤は、(1)シラン化合物と、(2)脂肪酸又はその塩と、(3)脂肪酸アマイドとを含有する。
【0015】
前記シラン化合物は、加水分解及び脱水縮合されることで、撥水性を有する保護層を形成する。
シラン化合物は、疎水性基と加水分解性基とを有する。疎水性基は、非加水分解性を有し、セメント系材料に撥水性を付与する。加水分解性基は、膜の形成やセメント系材料への結合に寄与する。
【0016】
前記シラン化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(1)で表される化合物の縮合物であるオリゴマーが挙げられる。オリゴマーとしては、例えば2量体から10量体の範囲のものが好ましい。
【0017】
R1nSi(OR2)4-n ・・・(1)
一般式(1)中、R1は、炭素数1~30のアルキル基、置換アルキル基又はアリール基を示し、R2は炭素数1~6のアルキル基を示す。nは1又は2である。nが2の場合、R1は互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。R2は互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0018】
R1で示されるアルキル基は、分岐鎖を有していてもよいし、環状構造を有していてもよい。
R1で示される置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基及び芳香族置換アルキル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、アルキル基のフッ素化物、塩素化物及び臭素化物が挙げられる。芳香族置換アルキル基としては、例えば、ベンジル基及びハロゲン置換ベンジル基が挙げられる。
【0019】
R1で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基及びナフチル基が挙げられる。R2で示されるアルキル基は、分岐鎖を有していてもよい。
シラン化合物は、一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
表面保護剤中におけるシラン化合物の含有量は、好ましくは1~95質量%であり、より好ましくは1~90質量%である。
脂肪酸又はその塩は、イオン交換により固化し得るものである。脂肪酸又はその塩としては、例えば炭素数が10~30のものが好ましい。脂肪酸又はその塩は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。また、脂肪酸又はその塩は、直鎖であってもよいし、分岐鎖を含んでいてもよい。脂肪酸の塩としては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0021】
前記脂肪酸又はその塩は、一種又は二種以上を用いることができる。
表面保護剤中における脂肪酸又はその塩の含有量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。表面保護剤中における脂肪酸又はその塩の含有量は、好ましくは50質量%以下である。
【0022】
前記脂肪酸アマイドは表面保護剤中の溶媒を吸収して揮発を抑制することにより、シラン化合物及び脂肪酸又はその塩がセメント系材料中に浸透するための十分な時間を確保する作用がある。この作用により、シラン化合物及び脂肪酸又はその塩をセメント系材料中により深く浸透させることができるため、セメント系材料が摩耗等により表面が消失してしまった場合でも、消失層よりも深く表面保護剤を浸透しているため、セメント系材料への水分及び水以外の物質の侵入を抑制することができる。
【0023】
前記脂肪酸アマイドとしては例えば、飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、置換アマイド、メチロールアマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。飽和脂肪酸アマイドとしては例えば、ラウリン酸アマイド(融点87℃)、パルチミン酸アマイド(融点100℃)、ステアリン酸アマイド(融点101℃)、ヒドロキシステアリン酸アマイド(融点107℃)等、不飽和脂肪酸アマイドとしては例えば、オレイン酸アマイド(融点75℃)、エルカ酸アマイド(融点81℃)等、置換アマイドとしては、N-ステアリルステアリン酸アマイド(融点95℃)、N-ステアリルオレイン酸アマイド(融点67℃)、N-オレイルステアリン酸アマイド(融点74℃)、N-ステアリルエルカ酸アマイド(融点69℃)等、メチロールアマイドとしてはたとえば、メチロールステアリン酸アマイド(融点110℃)等、飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、メチレンビスステアリン酸アマイド(融点142℃)、エチレンビスカプリン酸アマイド(融点161℃)、エチレンビスラウリン酸アマイド(融点157℃)、エチレンビスステアリン酸アマイド(融点145℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド
(融点145℃)、エチレンビスベヘン酸アマイド(融点142℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド(融点140℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド(融点142℃)、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アマイド(融点135℃)、N,N‘-ジステアリルアジピン酸アマイド(融点141℃)等、不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては例えば、エチレンビスオレイン酸アマイド(融点119℃)、エチレンビスエルカ酸アマイド(融点120℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド(融点110℃)、N,N’-ジオレイルアジピン酸アマイド(融点118℃)、N,N‘-ジオレイルセバシン酸アマイド(融点113℃)等、脂肪酸エステルアマイドとしては例えば、ステアロアミドエチルステアレート(融点82℃)等が挙げられる。
【0024】
前記脂肪酸アマイドの表面保護剤における含有量は0.1~0.5質量%であることが好ましい。この範囲にあるとき脂肪酸アマイドによる表面保護剤の溶媒の揮発抑制効果に優れる。特に溶媒がシリコーンオイルであるときにより優れている。
【0025】
前記シラン化合物、脂肪酸又はその塩及び脂肪酸アマイドは、溶液又は液滴の状態で表面保護剤中に含有される。すなわち、シラン化合物、脂肪酸又はその塩及び脂肪酸アマイドは、表面保護剤中において溶媒に溶解された状態、又は液状の分散媒中に液滴として分散された状態(エマルション)で存在する。このように表面保護剤は、シラン化合物、脂肪酸又はその塩及び脂肪酸アマイドのいずれも溶媒に溶解された溶液、又は、シラン化合物、脂肪酸又はその塩及び脂肪酸アマイドの少なくとも一つが液滴として分散された分散液とされる。
【0026】
溶媒及び分散媒は、例えば、シラン化合物、脂肪酸又はその塩及び脂肪酸アマイドの溶解性又は分散安定性に応じて選択することができる。溶媒及び分散媒としては、例えば、水、アルコール、シリコーンオイル、ケトン、エステル、エーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、イソドデカン、及びケロシンが挙げられる。溶媒及び分散媒は、一種又は二種以上を用いることができる。これらのうち、シリコーンオイルを用いることが好ましい。シリコーンオイルを用いることにより表面保護剤中の溶媒の揮発を最適に調整することができる。
【0027】
表面保護剤中には、表面保護成分の溶解性又は分散性を高めるために、各種界面活性剤を含有させてもよい。
表面保護剤には、必要に応じて、例えば、着色剤、緩衝剤、防腐剤、及び消泡剤を含有させることもできる。
【0028】
表面保護剤は、撹拌機又は分散機を用いて調製することができる。
次に、上記表面保護剤のセメント系材料への適用について作用とともに説明する。
表面保護剤は、例えば、刷毛、ローラー、又はスプレーを用いる塗布法や含浸法を用いてセメント系材料に適用される。表面保護剤は、セメント系材料の表面(外面)の一部に適用されてもよいし、全体に適用されてもよい。
【0029】
セメント系材料に適用されたシラン化合物は、撥水性を有する保護層を形成する。セメント系材料に適用された脂肪酸又はその塩は、脂肪酸又はその塩の有する炭化水素基をR3で表し、セメント系材料に存在するイオンをXn+(但し、nは1又は2である)で表した場合、例えば、以下に示す反応式によりイオン交換されることで固化する。
【0030】
n(R3-COO-)+Xn+ → (R3-COO)nX
脂肪酸又はその塩から生成した固化物は、金属石鹸である。この固化物がセメント系材料の空隙を閉塞することで、セメント系材料への水及び水以外の物質の侵入を抑制する。水以外の物質は、例えば、セメント系材料やセメント系材料を含む材料の劣化因子になり得る物質であって、各種気体や各種液状体が挙げられる。
【0031】
脂肪酸又はその塩を固化させるイオン、すなわち脂肪酸又はその塩とのイオン交換により金属石鹸を生成させるイオンとしては、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、リチウムイオン(Li+)、及びバリウムイオン(Ba2+)が挙げられる。
【0032】
上述した表面保護剤のセメント系材料への適用に際して、セメント系材料に脂肪酸又はその塩を固化させるイオンが十分に存在しない場合には、固化促進剤を用いることが好ましい。また、セメント系材料に脂肪酸又はその塩を固化させるイオンが存在しない場合は、固化促進剤が用いられる。固化促進剤には、脂肪酸又はその塩を固化させるイオンが含有される。
【0033】
固化促進剤は、例えば、上記イオンの水酸化物を溶媒に溶解させることで調製される。溶媒としては、例えば、水、アルコール等の水性溶媒が挙げられる。溶媒は、一種又は二種以上を用いることができる。固化促進剤中における上記イオンの含有量は、水酸化物に換算した含有量において、0.1~30質量%が好ましい。
【0034】
固化促進剤を用いてセメント系材料の表面を保護する表面保護工法は、固化促進剤を前記セメント系材料に適用する工程と、表面保護剤をセメント系材料に適用する工程とを含む。すなわち、固化促進剤は、上記表面保護剤が適用されたセメント系材料に適用されてもよいし、上記表面保護剤を適用する前のセメント系材料に適用されてもよい。さらに、固化促進剤は、表面保護剤と同時にセメント系材料に適用されてもよい。
【0035】
固化促進剤は、例えば、刷毛、ローラー、又はスプレーを用いる塗布法や含浸法を用いてセメント系材料に適用される。
セメント系材料としては、例えば、モルタル、コンクリート等、セメント系材料と他の無機材料との複合材料等が挙げられる。
【0036】
ここで、鋼材が内部に配置されるセメント系構造物(例えば、コンクリート構造物)は、大気中の二酸化炭素の侵入により中性化されると、鋼材の腐食を招くことになる。この中性化は、水酸化カルシウムが二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムに変化することが主要因である。この点、セメント系構造物に対して表面保護剤を適用することは、特に有利である。すなわち、セメント系構造物に表面保護剤を適用することで、脂肪酸又はその塩がセメント系構造物に存在するカルシウムイオンとのイオン交換によって固化される。脂肪酸又はその塩から生成した固化物により、セメント系構造物の空隙が閉塞されることで、セメント系構造物への二酸化炭素の侵入が抑制される。これにより、セメント系構造物の中性化が抑制されるため、鋼材の腐食を抑制することが可能である。
【0037】
なお、上述した表面保護工法は、セメント系材料を含む構造物に適用する以外に、セメント系材料を含む製品の製造工程や加工工程においても適用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を基に本発明の効果を説明する。
表1に示す組成の表面保護剤を調整し、土木学会規格:表面含浸材の試験方法(案)JSCE-K571-2013に従って評価を行った。
まず初めに、普通ポルトランドセメント1000質量部、珪砂3000質量部、水500質量部をモルタルミキサーを用いて混合し、寸法100×100×400mmの鋼製型枠に流し込んで成型して、23℃50Rh%の環境下で28日間養生した。続いて、外観観察試験にあっては、成型物を50mm幅で切断して100×100×50mmの大きさとして試験用基板とし、含浸深さ試験にあっては、成型物を100mm幅で切断して100×100×100mmの大きさとして試験用基板とした。
【0039】
【0040】
続いて、試験用基板の側面(切断面を除く4面)にシリコーン樹脂製シーリング材(製品名「POSシールLM」、セメダイン社製)を塗りつけて24時間放置し、切断面に表1に示す表面保護剤を塗付量200g/m2で刷毛塗りして23℃50Rh%の環境下で14日間静置して試験体とした。また、比較対象として表面保護剤を塗付していない試験体(原状試験体)も作製した。
【0041】
外観観察試験として、晴天時に屋外で、試験体の切断面(表面保護剤を塗付した面)と原状試験体の切断面とを比較し、表面保護剤の塗付による外観変化(色調及び光沢)の有無を目視観察した。試験の結果、原状試験体の切断面と表面保護剤の塗付面とに差異がない場合〇、色調又は光沢にわずかに差異がみられる場合を△、色調又は光沢に著しい差異がみられる場合を×とした。
【0042】
含浸深さ試験として、試験体の切断面に対して垂直に2分割して割裂させた後、水に1分間浸漬して取り出した。割裂面1は
図1に示すように、吸水により変色している帯域2と撥水している帯域3とがあるが、このうち、撥水している帯域3の幅を測定し、含浸深さとした。含浸深さの測定位置は、試験体の割裂面1の中心およびその中心から25mm離れた位置の3箇所とし、対面する割裂面1で合計6箇所の含浸深さをノギスを用いて0.1mm単位で測定しその平均値を測定した。
【0043】
また、吸水率の試験として、表1の表面保護剤をモルタル片(寸法:40mm×40mm×160mm)の外面全体に刷毛を用いて塗布した後、2週間養生した。次に、このモルタル片の質量(吸水前の質量:M1)を測定した後に、水中に1日間浸漬した。続いて、水中からモルタル片を取り出し、表面の水を拭き取った後に、モルタル片の質量(吸水後の質量:M2)を測定した。
【0044】
M1とM2とを下記式に代入して、1日間の浸漬による吸水率を算出した。
吸水率(%)=(M2-M1)/M1×100
実施例2~5及び比較例1の表面保護剤についても、実施例1と同様に吸水率を算出した。
【0045】
これらの試験の結果を表1に併記する。
【符号の説明】
【0046】
1…試験体の割裂面
2…吸水により変色している帯域
3…撥水している帯域