(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】切粉回収装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220117BHJP
B23K 11/30 20060101ALI20220117BHJP
B23K 11/36 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23K11/30 350
B23K11/36
(21)【出願番号】P 2017095000
(22)【出願日】2017-05-11
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 弘太郎
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-202504(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,
B23K 11/30,11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップドレッサーの切刃部でスポット溶接用電極チップの先端を切削する際に発生する切粉を回収可能な切粉回収装置であって、
上記切刃部を覆うように上記チップドレッサーに固定され、水平方向に対向する矩形板状の第1及び第2側壁を有するボックス形状のカバーケースと、
上記第1側壁に接続され、上記カバーケースの内部のエアを吸引するエア吸引手段と、
上記第2側壁に形成され、上記エア吸引手段によるエア吸引動作時において上記カバーケースの外部から内部にエアを導入するエア導入孔と、
上記エア吸引手段により吸引するエアと共に移動する切粉を回収する切粉回収手段とを備え、
上記エア導入孔は、上記第2側壁の下部
の両隅部に一対形成され、且つ、上記カバーケースの内部に向かうにつれて次第に上記カバーケースの内側面及び内底面の少なくとも一方に近づくように傾斜していることを特徴とする切粉回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の切粉回収装置において、
上記エア導入孔は、上記第2側壁下部の隅部に沿ってL字状に延びる形状をなしていることを特徴とする切粉回収装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の切粉回収装置において、
上記第2側壁は、矩形枠状をなすベースフレームと、該ベースフレームの内側に組み付けられる本体プレートとを備え、
上記エア導入孔は、上記ベースフレームと上記本体プレートとの間に形成されていることを特徴とする切粉回収装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の切粉回収装置において、
上記本体プレートは、上記ベースフレームの内面側に位置する内側プレートと、上記ベースフレームの外面側に位置する外側プレートとを備え、
上記第2側壁は、上記ベースフレームの内周部分を上記内側プレートの外周部分と上記外側プレートの外周部分とで挟み込んだ状態で上記内側プレート及び上記外側プレートを繋ぐことで組み立てるよう構成されていることを特徴とする切粉回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端をチップドレッサーで切削する際、切削作業により発生した切粉を回収する切粉回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポット溶接は、溶接作業を繰り返した際に電極チップの先端に酸化皮膜が付着することが知られている。そして、電極チップの先端に酸化皮膜が付着した状態のままでスポット溶接を行うと溶接部の品質が低下してしまうので、一般的に、チップドレッサーを用いて電極チップの先端を定期的に切削して酸化皮膜を取り除く作業が行われる。
【0003】
ところで、チップドレッサーで電極チップの先端を切削する際に発生する切粉は、装置の駆動部に付着すると当該駆動部の負荷を高めてしまい、最悪の場合、装置が故障するおそれもあるので、発生した直後に回収するのが望ましい。
【0004】
これに対応するために、切粉を発生直後に回収する装置が一般的に知られている。例えば、特許文献1に開示されている切粉回収装置は、チップドレッサーの切刃部を覆うように固定されたカバーケースを備え、該カバーケースは、水平方向に延びる板状をなしている。カバーケースには、当該カバーケースの内部からエアを吸引するエア吸引ツールと、カバーケース内部に圧縮エアを導入するエア導入ユニットとが接続されている。エア吸引ツールは、カバーケースの水平方向一端に接続される一方、エア導入ユニットは、カバーケースの水平方向他端に接続されていて、エア導入ユニットでカバーケース内部に導入する圧縮エアによる乱気流で切粉を浮遊させながらエア吸引ツールでカバーケース内部のエアを吸引することによりエアと共に切粉を移動させて切粉回収ボックスに回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の切粉回収装置は、エア導入ユニットのカバーケースへの取付部分がチップドレッサーに干渉しないように、カバーケースが水平方向に幅広な形状になっている。したがって、装置全体が大型化してしまい、広い設置スペースが必要になるという問題がある。
【0007】
これを回避するために、切粉回収装置にエア導入ユニットを設けないようにすることが考えられる。
【0008】
しかし、切粉回収装置にエア導入ユニットを設けないようにすると、カバーケース内部におけるエア吸引ツールから遠い側の領域の吸引力が弱まってしまい、特に、カバーケース内部におけるエア吸引ツールから最も遠い領域において切粉の回収能力が低下してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトな形状で、且つ、切粉の回収能力が高い切粉回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、カバーケースにおいてエア吸引手段とエア導入孔とを接近した位置に対向するように設けるとともに、エア導入孔の形状に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、チップドレッサーの切刃部でスポット溶接用電極チップの先端を切削する際に発生する切粉を回収可能な切粉回収装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明では、上記切刃部を覆うように上記チップドレッサーに固定され、水平方向に対向する矩形板状の第1及び第2側壁を有するボックス形状のカバーケースと、上記第1側壁に接続され、上記カバーケースの内部のエアを吸引するエア吸引手段と、上記第2側壁に形成され、上記エア吸引手段によるエア吸引動作時において上記カバーケースの外部から内部にエアを導入するエア導入孔と、上記エア吸引手段により吸引するエアと共に移動する切粉を回収する切粉回収手段とを備え、上記エア導入孔は、上記第2側壁の下部の両隅部に一対形成され、且つ、上記カバーケースの内部に向かうにつれて次第に上記カバーケースの内側面及び内底面の少なくとも一方に近づくように傾斜していることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、上記エア導入孔は、上記第2側壁下部の隅部に沿ってL字状に延びる形状をなしていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記第2側壁は、矩形枠状をなすベースフレームと、該ベースフレームの内側に組み付けられる本体プレートとを備え、上記エア導入孔は、上記ベースフレームと上記本体プレートとの間に形成されていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、上記本体プレートは、上記ベースフレームの内面側に位置する内側プレートと、上記ベースフレームの外面側に位置する外側プレートとを備え、上記第2側壁は、上記ベースフレームの内周部分を上記内側プレートの外周部分と上記外側プレートの外周部分とで挟み込んだ状態で上記内側プレート及び上記外側プレートを繋ぐことで組み立てるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、特許文献1の如きエア導入ユニットをカバーケースに取り付ける必要が無いので、カバーケースを水平方向に短い形状にできる。したがって、装置全体がコンパクトになるので、設備を設置する周りのスペースを有効利用することができる。また、エア吸引手段によってカバーケース内部のエアを吸引すると、カバーケースの内部が負圧になってエア導入孔を介してカバーケースの外側から内側にエアが導入される。このとき、エア導入孔がカバーケースの内側面及び底側面の少なくとも一方に向かうように傾斜しているので、エア導入孔を通過したエアがカバーケースの内側面及び底側面の少なくとも一方で折り返されるとともに、カバーケース内部において渦を巻くように移動して乱気流を発生させる。すると、乱気流によって浮遊させられる切粉がエア吸引手段側に移動し、その後、エア吸引手段によってカバーケースの外側に排出される。このように、カバーケース内部に位置する切粉を内底面に溜めることなく確実にカバーケースの外側に排出でき、切粉の回収能力が高い切粉回収装置にすることができる。
【0017】
また、エア導入孔を通過するエアが、カバーケース内部における特に切粉が溜まり易い隅部に集中的に向かうようになるので、カバーケース内部の隅々に溜まる切粉を確実にカバーケースの外側に排出することができる。
【0018】
第2の発明では、エア導入孔から導入されたエアがカバーケース内底面及び内側面にそれぞれ折り返されて渦を巻くようになる。したがって、カバーケース内部の気流が乱れ易くなってカバーケース内部の切粉が浮遊し易くなるので、切粉を効率良くカバーケースの外側に排出することができる。
【0019】
第3の発明では、2つの部品を組み合わせることで本発明のエア導入孔が形成されるので、エア導入孔を形成するために複雑な孔加工を部品に施す必要が無く、製造し易い装置にできる。
【0020】
第4の発明では、内側プレートと外側プレートとを繋いで一体にすると、内側プレート及び外側プレートがベースフレームとも一体になるので、内側プレート及び外側プレートをベースフレームに組み付けるための追加の部品が必要無く、部品点数の少ない低コストな装置にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る切粉回収装置が装着されたチップドレッサーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る切粉回収装置1が装着されたチップドレッサー10を示す。切粉回収装置1は、
図2に示すように、スポット溶接用溶接ガンに取り付けられた一対の電極チップ11の先端11aをチップドレッサー10によってそれぞれ切削する際に発生する切粉M1を回収するためのものである。
【0024】
上記チップドレッサー10は、
図1に示すように、筒中心線方向が上下方向に向く略円筒状をなすモータケース部10aと、該モータケース部10aの上端から当該モータケース部10aの前方に向かって延出する板状のギアケース部10bと、モータケース部10aの背面に取り付けられ、当該モータケース部10aに加わる衝撃を吸収する衝撃吸収機構部10cとを備え、モータケース部10aの内部には、図示しない駆動モータが収容されている。
【0025】
ギアケース部10bの延出側中央部分における上面及び下面には、
図2に示すように、互いに対向する円形状をなす一対の貫通孔10dが形成されている。
【0026】
ギアケース部10b内部の両貫通孔10d間には、リング状をなす出力歯車12が上下一対のベアリング14を介して上下方向に延びる回転軸心C1周りに回転可能に取り付けられている。
【0027】
出力歯車12の中央には、上下に貫通する装着用孔12aが設けられ、該装着用孔12aには、上記電極チップ11の先端11aを切削するための金属製切削カッター13が装着されている。
【0028】
切削カッター13には、上方と下方とにそれぞれ開口する一対の湾曲面部13aが設けられ、各湾曲面部13aには、電極チップ11先端の径方向に対応するように延びる切刃部13bが設けられている。
【0029】
そして、モータケース部10aに収容された駆動モータの回転駆動により図示しない歯車噛合機構を介して出力歯車12が回転すると、当該出力歯車12とともに切削カッター13が回転するようになっていて、回転状態の切削カッター13の各湾曲面部13aに電極チップ11の先端を宛がうと、切刃部13bが電極チップ11の先端を切削するようになっている。
【0030】
ギアケース部10bの下面には、ボックス形状のカバーケース2がリング状をなす板状ブラケット2aを介して切削カッター13の切刃部13bを覆うように固定されている。尚、板状ブラケット2aは、カバーケース2をギアケース部10bに取り付ける際、回転
軸心C1周りにカバーケース2の取付姿勢を変えることができるようになっている。
【0031】
カバーケース2は、ギアケース部10bの延出方向と直交する水平方向に対向する矩形板状の第1側壁3及び第2側壁4を備えている。
【0032】
第1側壁3の一側縁部と第2側壁4の一側縁部との間、及び、第1側壁3の他側縁部と第2側壁4の他側縁部との間には、難燃性で、且つ、矩形状をなす可撓性の透明樹脂シート材5が一対取り付けられ、各樹脂シート材5の水平方向中途部には、上端寄りの位置から下方に直線状に延びて下端に開口するスリット5aが形成されている。
【0033】
第1側壁3の下端縁部と第2側壁4の下端縁部との間には、矩形状をなす底壁6が設けられ、該底壁6の中央部分には、電極チップ11が通過可能なチップ通過部6aが形成されている。
【0034】
底壁6の下面には、一対のカバーブラシ61がギアケース部10bの延出方向と直交する水平方向に対向するように取り付けられている。
【0035】
カバーブラシ61は、ギアケース部10bの延出方向に沿って延びるベース板61aと、該ベース板61aに植毛された樹脂製の毛束61bとを備え、各毛束61bは、互いに接近するように底壁6の中途部まで延びている。
【0036】
第1側壁3には、水平方向に貫通する取付孔3aが形成され、該取付孔3aには、エア吸引ツール7(エア吸引手段)が接続されている。
【0037】
エア吸引ツール7は、筒中心線がギアケース部10bの延出方向と直交する水平方向に延びる筒体71を備え、該筒体71は、それぞれ両端が開口する第1筒部材72及び第2筒部材73を備えている。
【0038】
第1筒部材72の一端側外周面には、筒中心線周りに延びる環状の第1凹条溝部72aが形成され、該第1凹条溝部72aは、溝幅が広く、且つ、底が浅い形状をなしている。
【0039】
第1筒部材72の中途部外周面には、雄ネジ部72bが上記第1凹条溝部72aに連続して形成されている。
【0040】
上記第1筒部材72の一端側内周面には、上記筒体71の径方向内側に張り出すとともに筒中心線周りに延びる環状張出面部72cが形成されている。
【0041】
該環状張出面部72cの張出面72dは、第1筒部材72の一端面から筒体71の径方向内側に進むとともに次第に第1筒部材72の他端側に湾曲しながら延びる形状をなしている。
【0042】
また、第1筒部材72の内周面における中途部から他端側に亘る部分には、張出面72dに連続する吹出側エア案内面72eが形成され、該吹出側エア案内面72eは、上記張出面72dから遠ざかるにつれて次第に拡径するテーパ状をなしている。
【0043】
第2筒部材73の一端側外周面には、一端に行くにつれて次第に縮径するテーパ面部73aが形成されている。
【0044】
一方、上記第2筒部材73の他端側外周面には、段差状に窪むとともに他端開口周縁に沿って延びる環状取付面部73bが形成されている。
【0045】
該環状取付面部73bの表面には、図示しない雄ネジ部が形成され、該雄ネジ部を第1側壁3における取付孔3aの内周面に形成された雌ネジ部(図示せず)に螺合させることにより、第2筒部材73を第1側壁3に取り付けるようになっている。
【0046】
第2筒部材73の中途部内周面には、筒中心線周りに延びる環状の第2凹条溝部73cが形成され、該第2凹条溝部73cは、溝幅が広く、且つ、底が浅い形状をなしている。
【0047】
第2凹条溝部73cは、筒中心線周りに環状に延びる帯状底面73hと、該帯状底面73hの一方の縁部から筒中心線に直交する方向に延びる第1環状面73iと、上記帯状底面73hの他方の縁部から筒中心線に直交する方向に延びる第2環状面73jとで構成されている。
【0048】
第2筒部材73の一端側内周面には、雌ネジ部73dが第2凹条溝部73cに連続して設けられ、該雌ネジ部73dに上記雄ネジ部72bが螺合可能となっている。
【0049】
一方、上記第2筒部材73の他端側内周面には、他端開口周縁から第2筒部材73の内方に行くにつれて次第に縮径するテーパ状のエア吸込面73eと、該エア吸込面73eに連続して設けられ、第2筒部材73の筒中心線に沿って当該第2筒部材73の一端側に真っ直ぐに延びる吸込側エア案内面73fとが形成され、該吸込側エア案内面73fにおける第2筒部材73の一端側には、第2凹条溝部73cの開口周縁に沿って延びる環状段差面部73gが形成されている。
【0050】
そして、第1筒部材72の一端側を上記第2筒部材73の内部にその他端側から挿入して第1筒部材72の雄ネジ部72bを第2筒部材73の雌ネジ部73dに螺合させることにより、上記筒体71が組み立てられるようになっていて、第1及び第2筒部材72,73を組み立てると、第1凹条溝部72aと第2凹条溝部73cとが対向するようになっている。
【0051】
また、第1及び第2筒部材72,73を組み立てた状態で、第1筒部材72の一端面が第1環状面73iに対向するようになっていて、第1筒部材72の一端面と第1環状面73iとの間に筒中心線周りに延びる環状で、且つ、筒体71の径方向に真っ直ぐに延びるスリット状をなす圧縮エア出口部74が形成されるようになっている。
【0052】
そして、図示しない圧縮エア導入部から圧縮エアを第1凹条溝部72aと第2凹条溝部73cとの間に導入すると、圧縮エアが圧縮エア出口部74から筒体71の内部に向かって進み環状張出面部72cの張出面72dに沿って吹出側エア案内面72e側に向かってスムーズに流れるようになっている(
図2矢印X1参照)。すると、筒体71の内部において第2筒部材73側から第1筒部材72側に向かうエア流れが発生し(
図2矢印X2参照)、カバーケース2内部のエアが吸引されるようになっている。
【0053】
第1筒部材72の他端側には、
図2に示すように、エア吸引ツール7により吸引するエアと共に移動する切粉M1を回収する切粉回収ボックス75(切粉回収手段)が接続されている。
【0054】
第2側壁4は、
図3に示すように、矩形枠状をなすベースフレーム4aと、該ベースフレーム4aの内側に組み付けられる本体プレート4bとを備えている。
【0055】
ベースフレーム4aにおける上半部分の内周縁部は、正面視で半円状をなす一方、下半部分の内周縁部は、正面視でU字状をなしている。
【0056】
また、ベースフレーム4aの内周面には、
図4乃至
図6に示すように、カバーケース2の内部側に行くにつれて次第に拡径する傾斜面4cが上記ベースフレーム4aの内面側略半分に形成されている。
【0057】
本体プレート4bは、
図4乃至
図6に示すように、ベースフレーム4aの内面側に位置する内側プレート8と、ベースフレーム4aの外面側に位置する外側プレート9とを備えている。
【0058】
内側プレート8は、上下方向に延びる平坦な板状をなすベース部81と、該ベース部81の外周縁部からカバーケース2の内部側に行くにつれて次第に拡径する傾斜部82とを備えている。
【0059】
該傾斜部82下部におけるベースフレーム4aの各隅部に対応する位置には、一対の孔形成面82aが形成されている。
【0060】
傾斜部82の各孔形成面82aを除く部分は、上記傾斜面4cに対応する形状をなしており、傾斜部82の各孔形成面82aを除く部分をベースフレーム4aの傾斜面4cに当接させると、
図5及び
図6に示すように、当該傾斜面4cと各孔形成面82aとの間に一対の隙間S1が形成されるようになっている。尚、隙間S1は、カバーケース2の内部側に行くにつれて次第に幅狭となる形状になっている。
【0061】
ベース部81の裏面には、3つの内側ボス部83が形成され、各内側ボス部83は、ベース部81を裏面から見ると逆正三角形の頂点をなす位置関係になっている。
【0062】
内側ボス部83には、当該内側ボス部83の突出端に開口する収容凹部83aが形成され、該収容凹部83aには、ナットN1が収容可能になっている。
【0063】
また、ベース部81の表面側における各内側ボス部83に対応する位置には、3つの嵌合凹部84が形成されている。
【0064】
該各嵌合凹部84の底面には、上記収容凹部83aに連通する連通孔84aが形成され、該連通孔84aには、ボルトB1が挿通可能になっている。
【0065】
外側プレート9は、ベースフレーム4aの開口部分を覆う板状のカバー部91を備え、該カバー部91の下半部分には、
図3に示すように、ベースフレーム4aの各隅部に沿うようにL字状に切り欠かれた一対の切欠部91aが形成されている。
【0066】
外側プレート9の裏面には、当該外側プレート9の外周縁部に沿って延びる環状突条部92が突設されている。
【0067】
該環状突条部92における各切欠部91aに対応する部分以外の箇所は、外側プレート9の外周縁部よりも内側に位置しており、上記ベースフレーム4aの内周面に嵌合可能になっている。
【0068】
環状突条部92をベースフレーム4aの内周面に嵌合させると、
図5及び
図6に示すように、ベースフレーム4aの内周面と環状突条部92における各切欠部91aに対応する部分との間に一対の隙間S2が形成されるようになっている。
【0069】
カバー部91裏面の各嵌合凹部84に対応する位置には、当該各嵌合凹部84に嵌合可
能な3つの外側ボス部93が突設されている。
【0070】
該各外側ボス部93には、ボルトB1を挿通可能な挿通孔93aが形成され、該挿通孔93aにおける外側プレート9の表面側の開口部分には、座繰り部93bが形成されている。
【0071】
そして、内側プレート8の傾斜部82をベースフレーム4aの傾斜面4cに当接させるとともに、外側プレート9の環状突条部92をベースフレーム4aの内周面に嵌合させると、各嵌合凹部84に各外側ボス部93がそれぞれ嵌合し、且つ、ベースフレーム4aの外周部分が内側プレート8の外周部分と外側プレート9の外周部分とに挟み込まれるようになっている。
【0072】
ベースフレーム4aの外周部分が内側プレート8の外周部分と外側プレート9の外周部分とに挟み込まれた状態において挿通孔93a及び連通孔84aに挿通したボルトB1を収容凹部83aに収容した状態のナットN1に螺合させると、内側プレート8と外側プレート9とが繋がって第2側壁4が組み立てられるようになっている。
【0073】
第2側壁4を組み立てると、当該第2側壁4下部の各隅部におけるベースフレーム4aと本体プレート4bとの間に上記隙間S1と上記隙間S2とが連続して形成され、当該隙間S1及び隙間S2が本発明のエア導入孔15を構成するようになっている。
【0074】
該エア導入孔15は、第2側壁4の正面側から見て当該第2側壁4下部の隅部に沿ってL字状に延びる形状をなしており、エア導入孔15の上側部分は、
図6に示すように、カバーケース2の内部に向かうにつれて次第にカバーケース2の内側面に近づくように傾斜する一方、エア導入孔15の下側部分は、
図5に示すように、カバーケース2の内部に向かうにつれて次第にカバーケース2の内底面に近づくように傾斜している。
【0075】
そして、エア吸引ツール7を作動させると、当該エア吸引ツール7のエア吸引動作によってカバーケース2の内部が負圧になって各エア導入孔15を介してカバーケース2の外側から内側にエアが導入されるようになっている。このとき、各エア導入孔15を通過するエアは、各エア導入孔15の上半部分がカバーケース2の内側面に向かうように傾斜するとともに下半部分がカバーケース2の内底面に向かうように傾斜しているので、エア導入孔15から導入されたエアがカバーケース2の内側面及び底側面のそれぞれで折り返されるとともに、カバーケース2内部において渦を巻くように移動して乱気流を発生させる(
図2矢印Z1参照)。すると、乱気流によって浮遊させられる切粉M1がエア吸引ツール7側に移動し、その後、エア吸引ツール7によってカバーケース2の外側に排出される。このように、カバーケース2内部に位置する切粉M1を内底面に溜めることなく確実にカバーケース2の外側に排出できる。
【0076】
以上より、本発明の実施形態によると、切粉M1の回収能力が高い切粉回収装置1にすることができる。また、特許文献1の如きエア導入ユニットをカバーケース2に取り付ける必要が無いので、カバーケース2を水平方向に短い形状にできる。したがって、装置全体がコンパクトになるので、設備を設置する周りのスペースを有効利用することができる。
【0077】
また、エア導入孔15は、第2側壁4下部の各隅部に対応して設けられているので、エア導入孔15を通過するエアが、カバーケース2内部における特に切粉M1が溜まり易い隅部に集中的に向かうようになる。したがって、カバーケース2内部の隅々に溜まる切粉M1を確実にカバーケース2の外側に排出することができる。
【0078】
また、ベースフレーム4aと本体プレート4bとを組み合わせることで本発明のエア導入孔15が形成されるので、エア導入孔15を形成するために複雑な孔加工を部品に施す必要が無く、製造し易い切粉回収装置1にできる。
【0079】
また、内側プレート8と外側プレート9とを繋いで一体にすると、内側プレート8及び外側プレート9がベースフレーム4aとも一体になるので、内側プレート8及び外側プレート9をベースフレーム4aに組み付けるための追加の部品が必要無く、部品点数の少ない低コストな切粉回収装置1にできる。
【0080】
尚、本発明の実施形態では、エア導入孔15が第2側壁4の表面側から見てL字状をなしているが、これに限らず、その他の形状をなしていてもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態では、エア導入孔15の上半部分がカバーケース2の内部に向かうにつれて次第にカバーケース2の内側面に近づくように傾斜するとともに、エア導入孔15の下半部分がカバーケース2の内部に向かうにつれて次第にカバーケース2の内底面に近づくように傾斜しているが、カバーケース2の内側面及び内底面の少なくとも一方に近づくように傾斜していればよい。
【0082】
また、本発明の実施形態では、エア導入孔15が第2側壁4下部の両隅部に一対形成されているが、一方の隅部にのみ形成されている構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端をチップドレッサーで切削する際、切削作業により発生した切粉を回収する切粉回収装置に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 切粉回収装置
2 カバーケース
3 第1側壁
4 第2側壁
4a ベースフレーム
4b 本体プレート
7 エア吸引ツール(エア吸引手段)
8 内側プレート
9 外側プレート
10 チップドレッサー
11 電極チップ
11a 先端
13b 切刃部
15 エア導入孔
75 切粉回収ボックス(切粉回収手段)
M1 切粉