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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ガス栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/02 20060101AFI20220117BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F16K5/02 G
F16K31/44 A
F16K31/44 F
F16K31/44 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018042808
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019157940
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】高田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】河原 裕佑
(72)【発明者】
【氏名】玉城 康年
(72)【発明者】
【氏名】西川 忠良
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-213261(JP,A)
【文献】特開2014-160424(JP,A)
【文献】特開2008-39170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/02
F16K 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に開放し且つガス流路に連通するせん収容部を有するガス栓本体と、前記せん収容部内に回動自在に収容されて前記ガス流路を開閉するせんと、前記せん収容部の開放端から延設される筒状部と、前記筒状部内に収容されて前記せんに対して相対回動阻止状態に装着されるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトに嵌め込みにより装着され且つ前記筒状部に対して回動自在に外嵌する操作つまみと、前記筒状部の直径線上に貫通させた一対の透孔に架設させて前記ドライブシャフトの回動範囲を規制するスプリングピンとを有するガス栓において、
前記操作つまみは、前記ドライブシャフトの頂部を覆う扁平円板状の蓋部と、前記蓋部の周縁から延設されて前記透孔を含む前記筒状部に微小な環状空間部を介して外嵌する環状周壁とからなる円筒形状とし、
前記蓋部の内面には、弾性係合片と蓋側係合部が突設され、
前記ドライブシャフトの所定位置には、前記弾性係合片が軸線方向に抜け止め状態に弾性的に係合可能な第1被係合部と、前記弾性係合片が前記第1被係合部に係合した状態にて、前記蓋側係合部が回転方向に回り止め状態に係合する第2被係合部とが設けられ、
前記蓋部のうち前記弾性係合片の基端部近傍の所定個所は穿孔工具で穿孔可能な薄肉部に形成され、
前記穿孔工具による穿孔作業で形成された孔部を介して、前記第1被係合部に係合状態にある前記弾性係合片を、係合解除方向に弾性変形可能としたことを特徴とするガス栓。
【請求項2】
請求項1に記載のガス栓において、
前記操作つまみの環状周壁の内周面に周方向に沿って環状に又は部分的に段部が内方へ突設され、
前記操作つまみを前記ドライブシャフトに抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着させたとき、前記段部は前記筒状部の頂部に当接し、前記蓋部の内面中央域は前記ドライブシャフトの頂部に当接し、前記蓋部の薄肉部のうち前記穿孔工具による穿孔予定箇所はドライブシャフトの頂部に設けた切欠部に対応するように設定されていることを特徴とするガス栓。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガス栓において、
前記操作つまみの蓋部の外面のうち、前記穿孔工具による穿孔予定箇所に目印部を設けたことを特徴とするガス栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓、特に、操作つまみとせんとの間に、せんの回動角度を規制するためのドライブシャフトを介在させた形式のガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガス栓として、特開2000-283304号に開示のものを提案した。この先行例のガス栓は、図7に示すように、せん収容部(50)を有するガス栓本体(5)と、せん収容部(50)内に回動自在に収容されてガス栓本体(5)内の流路(51)を開閉するせん(52)と、せん収容部(50)から上方へ延設された筒状部(53)と、筒状部(53)に回動可能に取り付けられる操作つまみ(4)とからなるもので、操作つまみ(4)は、筒状部(53)内に収容される回動規制部(41)とその上方に突設させるつまみ部(42)とから構成されている。回動規制部(41)の胴部の対向位置には、90度の角度を有する横孔部(40)が相互に連通するように開放しており、この横孔部(40)に挿通させる筒状又は軸状のストッパピン(44)を貫通させる一対の透孔(54)が、筒状部(53)の直径線上の両端に形成されている。
そして、透孔(54)及びストッパピン(44)の両端部が外部に露出しないように、筒状部(53)の外表面及びそれに続く操作つまみ(4)の回動規制部(41)の外表面に、被覆カバー(55)を被覆させている
【0003】
上記した従来の構成のものでは、ビス等の部材を使用することなく、操作つまみ(4)の回動角度が規制されたガス栓が組み付けられると共に、透孔(54)は被覆カバー(55)で覆われているから、透孔(54)とストッパピン(44)との隙間から、水滴や洗剤、又は埃等がガス栓本体(5)の内部に浸入する不都合がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-283304号公報
【文献】特開2006-52784号公報
【文献】特開2008-39170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被覆カバー(55)は、薄肉の樹脂シートからなり、つまみ部(42)を突出させるために中央部が抜けた環状筒体に構成されているから、操作つまみ(4)を回動操作する際に、つまみ部(42)ではなく、被覆カバー(55)の装着部分をつかんで回動方向に力を加えてしまうと、被覆カバー(55)が変形して外れてしまうことがあり、操作つまみ(4)の操作性に支障を来すといった不都合がある。
【0006】
そこで、被覆カバー(55)に代えて、筒状部(53)の表面に、透孔(54)を隠蔽可能な隠蔽シールを貼着するものがある(特許文献2参照)。このものでは、操作つまみの外観におけるデザイン性が向上し、また、指の掛かりに違和感なくハンドル操作できるが、いたずらによって、または、設置環境や長期の使用によって隠蔽シールが剥がれてしまう不都合がある。
さらに、回動規制部としてのドライブシャフトを別途設け、ストッパピンの両端を露出させる透孔は、操作つまみの外周壁で被覆する構成としたものがある(特許文献3参照)。このものでは、被覆カバー(55)も隠蔽シールも必要ないが、操作つまみはドライブシャフトにビス止めされているため、組み付けが面倒である上に、当該ビスは通常の工具で取外し可能であるから、いたずら等によってビスが緩められ、操作つまみが取り外される問題がある。
【0007】
本発明は、『一方に開放し且つガス流路に連通するせん収容部を有するガス栓本体と、前記せん収容部内に回動自在に収容されて前記ガス流路を開閉するせんと、前記せん収容部の開放端から延設される筒状部と、前記筒状部内に収容されて前記せんに対して相対回動阻止状態に装着されるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトに嵌め込みにより装着され且つ前記筒状部に対して回動自在に外嵌する操作つまみと、前記筒状部の直径線上に貫通させた一対の透孔に架設させて前記ドライブシャフトの回動範囲を規制するスプリングピンとを有するガス栓』において、前記筒状部に設けた一対の透孔とそれに挿通させる前記スプリングピンとの隙間から水滴や埃等がガス栓本体内に浸入する不都合を防止することが出来ると共に、装着状態にある操作つまみは、いたずら等によって不用意に取外すことが出来ないが、必要に応じて意図的に容易に取外すことが出来るガス栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、『前記操作つまみは、前記ドライブシャフトの頂部を覆う扁平円板状の蓋部と、前記蓋部の周縁から延設されて前記透孔を含む前記筒状部に微小な環状空間部を介して外嵌する環状周壁とからなる円筒形状とし、
前記蓋部の内面には、弾性係合片と蓋側係合部が突設され、
前記ドライブシャフトの所定位置には、前記弾性係合片が軸線方向に抜け止め状態に弾性的に係合可能な第1被係合部と、前記弾性係合片が前記第1被係合部に係合した状態にて、前記蓋側係合部が回転方向に回り止め状態に係合する第2被係合部とが設けられ、
前記蓋部のうち前記弾性係合片の基端部近傍の所定個所は穿孔工具で穿孔可能な薄肉部に形成され、
前記穿孔工具による穿孔作業で形成された孔部を介して、前記第1被係合部に係合状態にある前記弾性係合片を、係合解除方向に弾性変形可能とした』ことである。
【0009】
上記技術的手段は次のように作用する。
ガス栓本体のせん収容部内にせんを収容し、せん収容部に続く筒状部にドライブシャフトを収容すると共にせんに相対回動阻止状態に取り付ける。筒状部に形成された一方の透孔からスプリングピンを挿通し、ドライブシャフト内を介して他方の透孔に挿通させることにより、ドライブシャフトは、筒状部に対して抜け止め状態に取り付けられると共に、回動規制部として機能する。
ドライブシャフトの第1被係合部に弾性係合片が対応すると同時に、第2被係合部に蓋側係合部が対応するように、操作つまみをドライブシャフトに被せて軸線方向に押し付けると、弾性係合片が第1被係合部に軸線方向に弾性的に係合すると同時に、蓋側係合部が第2被係合部に回転方向に係合する。これにより、操作つまみはドライブシャフトに対して、抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着される。
【0010】
このとき、筒状部に貫通している透孔は操作つまみの環状周壁によって被覆され、筒状部と環状周壁との間の環状空間部は微小であるから、この環状空間部から水滴や埃等は浸入し難い。なお、この環状空間部にグリスを塗布しておけば防水性や防塵性やさらに高まる。
【0011】
点検等の理由により、操作つまみを意図的に取り外すには、操作つまみの蓋部に設けた薄肉部に穿孔工具で孔を開け、この孔部から、前記穿孔工具の先端又は場合によっては他のピン等を差し入れて、弾性係合片を係合解除方向に強制的に弾性変形させる。弾性係合片の第1被係合部への係合を解除した上で、操作つまみを軸線方向に引き上げれば、操作つまみはドライブシャフトから取り外すことが出来る。
ガス栓本体内の修理や部品交換等の作業終了後には、新しい操作つまみを用意し、上記要領にてドライブシャフトに嵌め込んで取り付ける。
【0012】
上記ガスにおいて、好ましくは、『前記操作つまみの環状周壁の内周面に周方向に沿って環状に又は部分的に段部が内方へ突設され、
前記操作つまみを前記ドライブシャフトに抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着させたとき、前記段部は前記筒状部の頂部に当接し、前記蓋部の内面中央域は前記ドライブシャフトの頂部に当接し、前記蓋部の薄肉部のうち前記穿孔工具による穿孔予定箇所はドライブシャフトの頂部に設けた切欠部に対応するように設定されている』ことである。
操作つまみをガス栓本体の筒状部に被せるように装着させると、操作つまみの環状周壁に設けた段部が筒状部の頂部に当接し、蓋部の中央域がドライブシャフトの頂部に当接した状態で、操作つまみはドライブシャフトに抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着される。これにより、操作つまみのがたつきは防止でき、操作つまみを、ドライブシャフトと共に、所定角度確実に回動させることが出来る。なお、ドライブシャフトの頂部には切欠部が設けられており、蓋部に設けた薄肉部のうち、穿孔工具で穿孔させる箇所には前記切欠部が対応するように設定されているものとする。これにより、穿孔工具で形成される孔部から、切欠部を介して、弾性係合片の係合を解除することが出来る。
【0013】
上記ガスにおいて、好ましくは、『前記操作つまみの蓋部の外面のうち、前記穿孔工具による穿孔予定箇所に目印部を設けた』ことである。
目印部に穿孔工具を当てて穿孔させれば、蓋部のうち、前記第1被係合部に係合状態にある弾性係合片を係合解除方向に弾性変形させることが可能となる適切な個所に孔部を形成することが出来る。よって、第1被係合部への弾性係合片の係合を一層容易に且つ確実に解除することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、せん収容部にせんを収容し、せん収容部の開放端に延設された筒状部にせんに相対回動阻止状態に装着させたドライブシャフトを収容した後、操作つまみを前記筒状部に被せて軸線方向に押し付けるだけで、操作つまみを、ドライブシャフトに抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着させることが出来るから、操作つまみの取付けにビス等を用いる必要がなく、ガス栓の組み付け作業が容易に且つ迅速に行うことが出来る。そして、装着された後の操作つまみは、専用の穿孔工具がないと取り外すことが出来ないから、いたずら等によって操作つまみが不用意に外れることがなく安全である。
【0015】
ドライブシャフトの回動を規制するスプリングピンの両端を挿通させるために筒状部に貫通させた透孔は、微小な環状空間部を介して操作つまみの環状周壁で覆われる構成としたから、透孔形成位置に環状の被覆カバーを外嵌させたり、透孔に隠蔽シールを貼着したりして、透孔を隠蔽するものに比べて、透孔を長期にわたって確実に保護でき、透孔から水滴や埃等がガス栓本体内に浸入する不都合を確実に防止することが出来る上に、操作つまみの操作にも違和感を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態におけるガス栓の組立て状態の断面図である。
図2】本発明の実施の形態のガス栓のドライブシャフトを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態のガス栓のドライブシャフトと筒状部とスプリングピンを示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態のガス栓の操作つまみの下方からの斜視図である。
図5】本発明の実施の形態のガス栓の操作つまみの上方からの斜視図である。
図6】本発明の実施の形態のガス栓の操作つまみとドライブシャフトとを組み付けた状態を示す断面図である。
図7】従来のガス栓の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、ガス栓本体(1)にはせん収容部(11)が上方に開放するように設けられていると共に、せん収容部(11)の左右に、ガス流路(10a)が同軸上に連通している。せん収容部(11)内にはガス流路(10a)を連通或は遮断する逆円錐台形状のせん(13)が回動自在に収容される。
せん収容部(11)の上方開放端には筒状部(12)が上方へ延設されており、筒状部(12)の直径の両端に対応する各位置には、筒状のスプリングピン(10)の両端を挿通させる透孔(1a)(1b)が貫通している。なお、スプリングピン(10)がガス流路(10a)に平行に透孔(1a)(1b)に架設されるように、透孔(1a)(1b)の形成位置は設定されている。
【0018】
せん(13)には、ガス流路(10a)に連通するガス通過孔(13a)が貫通していると共に、せん(13)の上面中央には、略直方体状の操作軸部(14)がその長辺が通過孔(13a)と平行となるように突設されている。そして、その基端部を囲むように、コイルバネ(16)を受ける下環状溝部(15)が形成されている。
操作軸部(14)は、後述するドライブシャフト(2)の下面に開放している長孔(24)にちょうど嵌合可能な大きさ形状を有しており、操作軸部(14)を長孔(24)に嵌め込むことにより、せん(13)とドライブシャフト(2)とは相対回動阻止状態に連結される。
【0019】
ドライブシャフト(2)は、上記した要領にてせん(13)に連結された状態で、筒状部(12)内に収容される略円柱体であり、図2及び図3に示すように、胴部の中心に対して対称な位置に、断面略扇形の第1、第2柱部(2a)(2b)が形成されており、これら第1、第2柱部(2a)(2b)の間に、スプリングピン(10)が挿通する横孔部(20)が、前記胴部の両側方に開放するように形成されている。ドライブシャフト(2)の横孔部(20)に挿通させたスプリングピン(10)を筒状部(12)の透孔(1a)(1b)に架設させることにより、ドライブシャフト(2)は筒状部(12)内にて上方へ抜け止め状態に固定される。
【0020】
また、ドライブシャフト(2)は、第1、第2柱部(2a)(2b)各々の一方の回動阻止面(20a)がスプリングピン(10)に当接する第1の姿勢(図3の姿勢)と、同図の矢印の方向に回動させられて、他方の回動阻止面(20b)がスプリングピン(10)に当接する第2の姿勢との間の90度の範囲内で回動可能となる。このように、ドライブシャフト(2)は、後述する操作つまみ(3)及びせん(13)の回動を90度の範囲に規制する回動規制部として機能することとなる。
【0021】
ドライブシャフト(2)の上面(2c)には、図2に示すように、横長凸部(21)が突設されており、この横長凸部(21)は、図4に示す操作つまみ(3)の下面に設けられる横長空間部(30)にちょうど収容可能となっている。横長凸部(21)を横長空間部(30)に嵌め込むことにより、操作つまみ(3)とドライブシャフト(2)とは相対回動阻止状態に連結される。
【0022】
なお、横長凸部(21)の長手方向両端部は、それぞれ、上下及び両端に開放する切欠部(23)が設けられており、この切欠部(23)の両側に一対の係合凸部(22)が並列する形状を呈している。各係合凸部(22)の先端下端部は、ドライブシャフト(2)の上面(2c)から所定高さ上方に浮き上がらせて、係合段部(22a)として機能させている。また、係合凸部(22)の先端上端部は、外方に向かって降下する斜面(22b)が形成されている。
【0023】
図1に示すように、せん(13)の下環状溝部(15)に対向するドライブシャフト(2)の下面には、上環状溝部(25)が形成されており、上下環状溝部(15)(25)間に、コイルバネ(16)を圧縮状態で収容させる。
コイルバネ(16)の付勢力によって、せん(13)とドライブシャフト(2)とは相互に離反する方向に付勢されるが、ドライブシャフト(2)はスプリングピン(10)によってガス栓本体(1)の筒状部(12)に上方へ抜け止め状態に固定されているから、せん(13)は、コイルバネ(16)の付勢力によって、せん収容部(11)の底側に押圧状態に収容され、せん(13)の収容姿勢は安定する。
【0024】
操作つまみ(3)は、図4及び図5に示すように、ドライブシャフト(2)の横長凸部(21)の頂部を覆う扁平円板状の蓋部(31)と、蓋部(31)の周縁から下方に延設されて筒状部(21)の外周面を覆う環状周壁(32)とから浅い有底の円筒形状に形成されている。蓋部(31)の下面には、上記したように、ドライブシャフト(2)の横長凸部(21)を収容するための横長空間部(30)が設けられている。
横長空間部(30)にドライブシャフト(2)の横長凸部(21)を収容させた状態にて、横長凸部(21)の長手方向両端部のわずか外側に対応する蓋部(31)の下面の各位置に、一対の弾性係合片(33)を各々垂下させていると共に、横長凸部(21)の短手方向の両側には、蓋側係合部(35)がそれぞれ向かい合うように突設されている。
【0025】
弾性係合片(33)は、蓋側係合部(35)間の距離よりやや短い幅を有し且つ厚み方向に弾性変形可能な弾性板体(33a)と、その下端全域から横長空間部(30)側へ突設する爪部(33b)とからなり、自然状態では、爪部(33b)の先端は、係合凸部(22)の先端下端部の係合段部(22a)の下方に位置する寸法関係に設定されている。
蓋側係合部(35)は、横長空間部(30)の長手方向に沿った係合壁(35a)と、環状周壁(32)に沿った円弧状壁(35b)を有しており、係合壁(35a)の中央にはそれぞれ凹部(34)が設けられている。
【0026】
蓋部(31)のうち、横長空間部(30)の形成域を含む中央部域は、周縁部に比べて薄肉に形成されており、蓋部(31)の外面には、図5に示すように、「O」「S」の文字や矢印と共に、長円形の目印部(36)が記されている。
なお、目印部(36)は、その長辺が、横長空間部(30)の長手方向に沿った中心線上の一端近傍に位置しており、操作つまみ(3)を、上記要領にて、ドライブシャフト(2)に装着させた状態においては、目印部(36)の下方には、ドライブシャフト(2)の上面 (2c)の横長凸部(21)に形成された切欠部(23)が対応する構成となっている。そして、図5の二点鎖線で示すように、目印部(36)の一端を穿孔予定箇所(36a)とする。
【0027】
また、環状周壁(32)は、表面に滑り止め用の多数の凸条と凹溝が交互に設けられた上半部(32a)と、その下方の下半部(32b)とからなり、上半部(32a)の内周面には、複数の凸部(38)が等間隔に突設されている。なお、凸部(38)の下端部は、上半部(32a)と下半部(32b)との境界線上に位置するように設定されている。
【0028】
次に、ガス栓の組立てについて説明する。
まず、ガス栓本体(1)のせん収容部(11)にせん(13)を収容し、せん(13)とせん収容部(11)との間に、潤滑・シール用のグリスを塗布する。
そして、せん(13)の下環状溝部(15)内にコイルバネ(16)を配設した後、コイルバネ(16)の上端部を、ドライブシャフト(2)の下面の上環状溝部(25)に対応させながら、せん(13)の操作軸部(14)をドライブシャフト(2)の長孔(24)に嵌合させて、ドライブシャフト(2)を筒状部(12)内に収容する。
【0029】
この状態にて、コイルバネ(16)の付勢力に抗して、ドライブシャフト(2)を下方に押え付けながら、筒状部(12)の透孔(1a)(1b)に、ドライブシャフト(2)の横孔部(20)が対応するように、横長凸部(21)を持って回動させ、一方の透孔(2a)から、スプリングピン(10)を差し込み、ドライブシャフト(2)の横孔部(20)を通過させて、他方の透孔(2b)に挿通させる。
これにより、ドライブシャフト(2)は、筒状部(12)に固定させたスプリングピン(10)によって、ガス栓本体(1)の筒状部(12)内にて、上方へ抜止め状態に収容されると共に、ドライブシャフト(2)の横孔部(20)の第1、第2柱部(2a)(2b)の回動阻止面(20a)(20b)がスプリングピン(10)に当接する90度の範囲でその回動が規制される。
【0030】
そして、ドライブシャフト(2)の上面の横長凸部(21)が操作つまみ(3)の横長空間部(30)に嵌合するように操作つまみ(3)をドライブシャフト(2)に被せる。すると、操作つまみ(3)の蓋部(31)の内面から垂下させた一対の弾性係合片(33)の爪部(33b)が、ドライブシャフト(2)の上面(2c)の横長凸部(21)の長手方向両端部の各々を構成している一対の係合凸部(22)にそれぞれ当接して、押込み方向の抵抗となる。この状態から、操作つまみ(3)をさらに押し込むと、所定幅を有する爪部(33b)の両端寄りの各部が一対の係合凸部(22)の先端上端部の斜面(22b)に沿って外側に押され、これにより、弾性板体(33a)は外方へ弾性変形させられながら押し込まれていく。そして、爪部(33b)が係合段部(22a)の下方に位置した時点で、弾性板体(33a)は弾性復帰し、爪部(33b)の前記両端寄りの各部が、一対の係合凸部(22)の係合段部(22a)にワンウェイ係合する。このとき、爪部(33b)の中央部分には切欠部(23)が対応している。
【0031】
上記したように、操作つまみ(3)の横長空間部(30)内に、ドライブシャフト(2)の横長凸部(21)が収容された状態にて、横長凸部(21)の長手方向に沿った両側方には、蓋側係合部(35)の係合壁(35a)がそれぞれ位置するように設定されているから、操作つまみ(3)は、ドライブシャフト(2)に対して、上方へ抜け止め状態に且つ回転方向に回り止め状態に係合することとなる。
すなわち、ドライブシャフト(2)の係合凸部(22)の係合段部(22a)が、弾性係合片(33)を上方へ抜け止め状態にワンウェイ係合させる第1被係合部として機能すると共に、係合凸部(22)の両外側面部(22c)が、蓋側係合部(35)を回転方向に回り止め状態に係合させる第2被係合部として機能することとなる。
なお、蓋側係合部(35)の中央部に形成されている凹部(34)は、ドライブシャフト(2)の横長凸部(21)の両側面中央に突設させた係合凸部(27)がちょうど嵌め込み可能な大きさに形成されている。
【0032】
このように、操作つまみ(3)の横長空間部(30)をドライブシャフト(2)の横長凸部(21)に対応させて、操作つまみ(3)をドライブシャフト(2)の上方から嵌め込んで押えるだけで、操作つまみ(3)をドライブシャフト(2)に対して、相対回動阻止状態で且つ上方へ抜け止め状態に装着することが出来るから、操作つまみ(3)のドライブシャフト(2)への装着作業が容易となる。
そして、この装着状態にて、操作つまみ(3)の蓋部(31)の内面がドライブシャフト(2)の横長凸部(21)の頂面に当接すると同時に、操作つまみ(3)の環状周壁(32)の凸部(38)が筒状部(12)の頂部に当接することで、ドライブシャフト(2)に対する操作つまみ(3)のがたつきを防止している。さらに、環状周壁(32)の下半部(32b)で、筒状部(12)の透孔(1a)(1b)を被覆可能に設定されている。
【0033】
この操作つまみ(3)の装着態様では、どの係合箇所も外部に露出しないので、ドライブシャフト(2)に対する操作つまみ(3)の上方への抜け止め状態及び回転方向への回り止め状態は確実に保持され、いたずら等によって操作つまみ(3)が不用意に外れることはない。 また、筒状部(12)の透孔(1a)(1b)は、操作つまみ(3)の環状周壁(32)で被覆されており、筒状部(12)の外周面と環状周壁(32)の下半部(32b)の内周面との間には微小な環状空間部(S)が介在されているだけであるから、透孔(1a)(1b)とスプリングピン(10)との隙間から水滴や洗剤や埃等は浸入し難い。特に、環状空間部(S)内に防水用グリスを充填させておけば、環状周壁(32)内の気密は確保され、ガス栓本体(1)の内部に、水滴や洗剤等の浸入は確実に防止出来ることとなり、環状の被覆カバーを装着させたり、隠蔽シールを貼着したりしなくても、ガス栓本体(1)内における防水・防錆が確実となる。よって、操作つまみ(3)の操作時に被覆カバーがずれて、操作に違和感が生じたり、長期の使用によって隠蔽シールが剥がれて透孔(1a)(1b)から水滴や埃等が浸入したり、いたずらにより、スプリングピン(10)が透孔(1a)(1b)から押し出されて操作つまみ(3)が取り外されたりする不都合はない。
【0034】
組み付け完了後のガス栓に気密性や操作性などの性能上の問題があり、操作つまみ(3)を取り外す必要が生じたときには、図5の二点鎖線で示した穿孔予定箇所(36a)を穿孔工具(6)で穿孔させて、孔部(37)を開口させる。穿孔予定箇所(36a)の形成域は薄肉部であると共に、その下方には、ドライブシャフト(2)の切欠部(23)が対応する構成となっているから、穿孔工具(6)での穿孔作業により、蓋部(31)には容易に孔部(37)を形成することができる。そして、この孔部(37)から、穿孔工具(6)の先細部を切欠部(23)内に挿入し、弾性係合片(33)の爪部(33b)のうち、係合段部(22a)に非係合状態にあって切欠部(23)に対応している中央部を外側に押す。すると、図6の二点鎖線に示すように、弾性係合片(33)が外側へ弾性変形し、爪部(33b)と係合段部(22a)との係合を解除することが出来る。爪部(33b)の係合段部(22a)へのワンウェイ係合を解除させた状態で、操作つまみ(3)を持ち上げれば、操作つまみ(3)をドライブシャフト(2)から取り外すことが出来る。
【0035】
操作つまみ(3)をドライブシャフト(2)から取り外し、さらにスプリングピン(10)を専用工具で取り外すと、ドライブシャフト(2) 、コイルバネ(16)、せん(13)を取り外すことが出来るので、ガス栓本体(1)の点検や修理、また部品交換等の作業を行うことが出来る。これら作業の終了後には、ガス栓本体(1)に、せん(13)、コイルバネ(16)、ドライブシャフト(2)をセットして、スプリングピン(10)を筒状部(12)の透孔(1a)(1b)に挿通し、さらに、新しい操作つまみ(3)を別途用意すると共に、上記した要領にて、ドライブシャフト(2)に対して、抜け止め状態に且つ回り止め状態に装着することが出来る。
このように、操作つまみ(3)の取り外しには、専用の穿孔工具(6)で操作つまみ(3)の蓋部(31)の所定位置に穿孔させる必要があるから、いたずら等による操作つまみ(3)の取り外しは確実に防止することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
(1) ・・・・・・・ガス栓本体
(10)・・・・・・・スプリングピン
(10a) ・・・・・・ガス流路
(11)・・・・・・・せん収容部
(12)・・・・・・・筒状部
(13)・・・・・・・せん
(1a)(1b)・・・・・透孔
(2) ・・・・・・・ドライブシャフト
(22a) ・・・・・・係合段部(第1被係合部)
(22c) ・・・・・・両外側面部(第2被係合部)
(3) ・・・・・・・操作つまみ
(31)・・・・・・・蓋部
(32)・・・・・・・環状周壁
(33)・・・・・・・弾性係合片
(35)・・・・・・・蓋側係合部
(6) ・・・・・・・穿孔工具
(S) ・・・・・・・環状空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7