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特許7007722鋼構造物の保全工法用車両、及び被覆シートセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】鋼構造物の保全工法用車両、及び被覆シートセット
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20220117BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20220117BHJP
   B24C 3/06 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B60P3/00 K
B24C9/00 H
B24C3/06 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018070651
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2019181974
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065443(JP,A)
【文献】特開2008-272565(JP,A)
【文献】登録実用新案第3063427(JP,U)
【文献】実開昭62-011045(JP,U)
【文献】特開平11-207624(JP,A)
【文献】米国特許第05212911(US,A)
【文献】独国実用新案第202017104479(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00- 3/42
B24C 9/00
B24C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物の保全工法に用いられる荷台付きの車両であって、
前記鋼構造物の塗膜を剥離させるブラスト手段を含み、前記剥離した塗膜を回収して前記塗膜に含まれる特定有害物質が循環する特定有害物質循環部と、
前記特定有害物質循環部を制御する制御部と、
を備え、
前記車両の荷台は、
少なくとも制御部が配置された開放領域と、
少なくとも前記特定有害物質循環部が配置された閉塞領域と、
に分割されており、
かつ、前記荷台には、
前記閉塞領域の全周を被覆する全周被覆部と、
前記開放領域の少なくとも側周部を被覆し、かつ上方が外部に開放された部分被覆部と、
を構成する、防音機能と特定有害物質飛散防止機能とを有する被覆シート及び、前記被覆シートを支持する支柱を具備する被覆シート構造が設けられている
ことを特徴とする鋼構造物の保全工法用車両。
【請求項2】
前記制御部は、
前記特定有害物質循環部に電気を供給する電源制御部と、
前記特定有害物質循環部の空気の流動を制御する空気制御部と、
を含む
請求項1に記載の鋼構造物の保全工法用車両
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記被覆シート構造に用いられる前記被覆シート及び前記支柱を具備する
ことを特徴とする被覆シートセット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼構造物の保全工法に用いられるブラスト手段を搭載した車両、及び当該ブラスト手段を被覆する被覆シートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼橋等の鋼構造物はサビ等の発生を防ぐ目的や、経年劣化によって変色してしまった塗装の塗り替えのために、定期的に再塗装(保全工法)が施されている。再塗装を施すためには古い塗装やサビ等を取り除く必要があり、近年ではブラスト処理(1種ケレン)によって除去し、その後、新規の塗装を施すことが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、研掃後の研掃材と粉塵等を回収タンクに回収した後、回収タンク内で研掃材と粉塵等とを分離、及び分級して粉塵等を捕集し、一方、分離された研掃材を再利用する構造物表面の研掃システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-207624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば高速道路の上を横切る複数の鋼橋に予防保全を施そうとした場合に、複数の鋼橋において一箇所ずつブラスト装置を現場近くに設置する必要がある。このため、ブラスト装置を設置する場所の確保が困難であったり、ブラスト装置の移設に時間や手間がかかったりするという問題があった。また、高速道路に沿って設けられた柵等の鋼構造物においても同様の問題があった。
【0006】
そこで本発明は、ブラスト装置の移設の手間を省くことのできる鋼構造物の保全工法用車両を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、鋼構造物の保全工法用車両に積載されたブラスト手段を被覆して防音効果を得たり、有害物質が外部に飛散することを防止したりすることのできる被覆シートセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鋼構造物の保全工法に用いられる荷台付きの車両であって、前記鋼構造物の塗膜を剥離させるブラスト手段を含み、前記剥離した塗膜を回収して前記塗膜に含まれる特定有害物質が循環する特定有害物質循環部と、前記特定有害物質循環部を制御する制御部と、を備え、前記車両の荷台は、少なくとも制御部が配置された開放領域と、少なくとも前記特定有害物質循環部が配置された閉塞領域と、に分割されており、かつ、前記荷台には、前記閉塞領域の全周を被覆する全周被覆部と、前記開放領域の少なくとも側周部を被覆し、かつ上方が外部に開放された部分被覆部と、を構成する、防音機能と特定有害物質飛散防止機能とを有する被覆シート及び、前記被覆シートを支持する支柱を具備する被覆シート構造が設けられていることを特徴とする鋼構造物の保全工法用車両である。
【0009】
かかる構成にあっては、前記ブラスト手段を含む特定有害物質循環部の全周が被覆シートによって被覆されるため、有害物質が外部に飛散することがない。また、前記全周被覆部及び部分被覆部は、側周部が被覆されているため、車両から工具等が落下してしまうことを防止できる。さらに、前記部分被覆部における上方開口部を介して適切に制御部の排気・排熱等が可能である。そして、前記被覆シート構造によって防音効果も得られる。またさらに、前記ブラスト手段の移送が容易となり、前記ブラスト手段等を搭載したまま次の作業現場に迅速に移動してすぐに作業を開始することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記特定有害物質循環部に電気を供給する電源制御部と、前記特定有害物質循環部の空気の流動を制御する空気制御部と、を含む構成が提案される。
【0011】
また本発明は、前記被覆シート構造に用いられる前記被覆シート及び前記支柱を具備することを特徴とする被覆シートセットである。
【0012】
かかる構成にあっては、上述した効果が得られるとともに、前記被覆シート構造を持たない車両に対しても当該被覆シート構造を簡単に適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鋼構造物の保全工法用車両は、有害物質が外部に飛散しない効果、防音効果、工具等の落下を防止する効果、適切に排気・排熱が行われる効果、及び、ブラスト手段の移送が容易となる効果が得られる。
【0014】
また本発明の被覆シートセットは、上述の効果に加えて、前記被覆シート構造を持たない車両に対しても簡単に当該被覆シートを装着することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】鋼橋の保全工法の手順を示すフロー図である。
図2】保全装置を説明する概要説明図である。
図3】鋼構造物の保全工法用車両を示し、(a)は右側面図であり、(b)は平面図である。
図4】鋼構造物の保全工法用車両を用いて保全を行う態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる鋼構造物の保全工法用車両及び被覆シート構造を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0017】
既存の鋼橋における保全の手順の一例を図1に示す。
【0018】
まず保全の対象となる鋼橋に対して、塗装作業における1種ケレンの要件を満たす足場等や外部に粉塵が漏出しないようにする防塵シート等の仮設養生設備を仮設する。また、ブラスト処理を行うための装置を設置する事前準備(S101)を行う。
【0019】
その後、前記鋼橋に塗布されている旧塗料の種類や厚さ、あるいは該鋼橋の状況等を調査(S102)する。そして、調査結果に基づき、使用予定のグリット及びショットの種類や噴射速度等を決定する。ここで、選定するグリット(非球形)及びショット(球形)は、共にJIS Z 0310:2004に規定されている。
【0020】
そして前記S102において決定したグリットを用いて、まずブラスト処理を行う(S103)。具体的には、前記仮設養生設備内において、作業者は、前記鋼橋における剥離対象の塗膜等の剥離と素地調整対象の部分の素地調整を行う。なお、該ブラスト処理によって剥離した塗膜やサビ等、及び使用済みグリットが粉塵として発生するが、前記S101において防塵シートを張設しているため、外部に粉塵が漏出することはなく、該粉塵が作業現場に堆積していく。
【0021】
続いて、グリットを噴射した噴射装置に対して、グリットに代えて前記S102によって決定したショットを装填して該ショットを噴射可能に入れ替える。ここで、仮設した足場や防塵シートの仮設養生設備は撤去することなく継続して使用する。
【0022】
そして、前記ブラスト処理によって形成された素地面からなるブラスト処理済部分(すなわち素地調整部分)に対して、前記ショットに入れ替えた噴射装置を用いて無数のショット(投射材)を所定速度で打ち当てる(S104)。かかるショットピーニング処理により、素地面の疲労強度及び耐応力腐食割れ性が向上する。なお、該ショットピーニング処理によって発生した使用済みショットは、そのまま作業現場に、S103における使用済みグリットと混在しつつ粉塵として堆積していく。ところで、該ショットピーニング処理は前記ブラスト処理を行った全ての素地面に対して行ってもよいし、溶接箇所周辺や強度に不安のある箇所等に対して適宜部分的に行ってもよい。
【0023】
前記ショットは、球形の粒子で構成されており、その直径Dは、50μm≦D≦2mmであることが望ましい。直径Dが50μm未満であると、鋼橋に対して十分な圧縮残留応力を与えることができない。一方、直径Dが2mmを超えると、鋼橋表面の塑性変形量が過剰となって疲労や応力腐食割れ等に対する抵抗力の向上が不十分となる。
【0024】
その後、前記ブラスト処理、及びショットピーニング処理を行った素地面の確認を行う(S105)。かかる確認は目視確認のみならず、例えばISO8501ブラスト写真帳による比較、あるいは表面粗さ測定器による粗さ確認等も含まれる。これによって未剥離の塗膜が残っていないか、あるいは素地面の粗さが規格内であるか、等の確認がなされ、不十分な箇所に対して的確な処理がなされることとなる。例えばブラスト処理を行うことのできない箇所は手工具等を用いて素地調整がなされる。
【0025】
こうして素地面の確認が済んだ部分に対して最終塗膜を形成するための最終仕上げ塗装を行う(S106)。なお、かかる塗装は、例えば防錆塗装として下塗り塗装、該防錆塗装を保護する中塗り塗装、及び最終仕上げ塗装となる上塗り塗装のように複数回にわたって層状に塗装されることが一般的である。
【0026】
前記塗装が済むと、その確認(S107)が行われる。かかる確認は塗装が乾燥した後の膜厚確認だけでなく、例えば塗装作業中にウェットネスゲージを用いてウェット膜厚の確認等も含まれる。また、このような確認は前記最終仕上げ塗装となる上塗り塗装後のみならず、前記下塗り塗装、及び中塗り塗装時にも行われる。
【0027】
前記確認によって塗装作業が完了すると、現場の片付けを行う(S108)。具体的には、足場や防塵シート等の回収、及びブラスト-ショットピーニング噴射装置の撤収を行って予防保全の完了となる。
【0028】
また、上記手順と共に、粉塵の回収工程を実行する(S110)。具体的には、前記ブラスト処理(S103)で発生した使用済みグリット、前記ショットピーニング処理(S104)で発生した使用済みショット、及び、各工程で生じた剥離物やサビ等を含む粉塵を分別しつつ回収していく。
【0029】
なお、本実施例で使用し、回収される使用済みグリット、及び使用済みショットは共にJIS Z 0310:2004に規定する鉄製(金属系)研削材であることが好ましい。グリット及びショットが鉄製研削材であると、使用時に鋼橋と衝突してもアルマンダイトガーネットや製鉄スラグのように破砕することがなく、再利用可能である。中でも高炭素鋳鋼のものは600回程度再利用することができ、非常に経済的であると共に、剥離した塗膜やその他を含む異物と分別することで廃棄物の量を大幅に減少させることができる。
【0030】
以下、グリットとショットとを共通の装置で噴射することが可能であり、しかも使用済みグリット、使用済みショット、及び剥離した塗膜等を回収してそれぞれ分別することができる保全装置1を一例として説明する。
【0031】
図2に示すように、前記保全装置1は、特定有害物質を含む塗膜が循環する特定有害物質循環部2を備えている。さらに該特定有害物質循環部2は、圧送ホース4を具備し、該圧送ホース4の先端に噴射器3が接続されている。
【0032】
前記噴射器3からはグリットgやショットsが噴射される。また、前記特定有害物質循環部2は、吸引ホース5を具備し、該吸引ホース5の先端が作業現場αに配置されている。これにより、該吸引ホース5を介して、作業現場αで発生した使用済みグリットg’、使用済みショットs’、及び剥離した塗膜やサビ等を含む異物Dからなる粉塵Xを吸引することができる。なお、粉塵Xが外部に漏出しないように、図示しない防塵シートが作業現場αには張設され、送風機や集塵装置等も適宜設置される。
【0033】
また、図2に示すように、前記保全装置1の特定有害物質循環部2は、互いに隣接して配設されたグリットホッパータンク10とショットホッパータンク20とを備えている。さらに詳述すると、該グリットホッパータンク10は、グリットg及び使用済みグリットg’(以下、これらの混合物をグリットGという)を貯留しておく機能を有している。また、前記ショットホッパータンク20は、ショットs及び使用済みショットs’(以下、これらの混合物をショットSという)を貯留しておく機能を有している。さらに、前記グリットホッパータンク10には、該グリットホッパータンク10内に貯留されたグリットGを作業現場αまで圧送するためのグリット加圧タンク11が接続されている。また、同様に、前記ショットホッパータンク20には、該ショットホッパータンク20内に貯留されたショットSを作業現場αまで圧送するためのショット加圧タンク21が接続されている。
【0034】
さらに、前記グリット加圧タンク11及び前記ショット加圧タンク21には、乾燥圧縮空気配管31を介して乾燥圧縮空気供給手段30が接続されている。かかる乾燥圧縮空気供給手段30は、乾燥した圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサーとエアドライヤーとで構成されており、本発明にかかる空気制御部(制御部)を構成する。また、前記乾燥圧縮空気配管31には切換弁32が備えられており、乾燥圧縮空気を前記グリット加圧タンク11又はショット加圧タンク21に選択的に送給可能とされ、グリットに代えてショットを噴射可能に装填自在としている。
【0035】
また、前記グリット加圧タンク11及び前記ショット加圧タンク21には、前記圧送ホース4が接続されている。そして、かかる構成により、前記乾燥圧縮空気供給手段30から供給された乾燥圧縮空気による空気圧よってグリットG又はショットSが該圧送ホース4を介して噴射器3から噴射され、作業対象となる鋼橋Kにブラスト処理、あるいはショットピーニング処理が実行可能となっている。
【0036】
また、特定有害物質循環部2及び乾燥圧縮空気供給手段30は、電源制御部(制御部)としての発電機70から駆動源としての電気の供給を受けている。
【0037】
次に、特定有害物質循環部2における剥離塗膜の流れを説明する。
【0038】
前記作業現場αに堆積した使用済みグリットg’、使用済みショットs’、及び剥離した塗膜等の異物Dを含む粉塵Xは、前記吸引ホース5の一端からまとめて吸引される。そして、該吸引ホース5によって吸引された粉塵Xは、グリットホッパータンク10とショットホッパータンク20との上方に配された分別室40内に到達する。
【0039】
また、前記分別室40には、ダストホース51が取り付けられており、該ダストホース51には、剥離塗膜回収部としてのダスト回収部50が接続されている。さらに、該ダスト回収部50には、粉塵吸引手段としての空気吸引装置60が接続されている。したがって、該空気吸引装置60の空気吸引力によって、前記粉塵Xが吸引可能となっている。
【0040】
粉塵Xを使用済みグリットg’、使用済みショットs’、及び剥離した塗膜等の異物Dに分別する分別室40の構成は公知の技術が好適に適用可能である。
【0041】
排出された異物Dは、前記ダストホース51を介してダスト回収部50に導入されてダスト回収部50内で堆積され、所望のタイミングで廃棄物袋52に排出されて産業廃棄物として処理される。
【0042】
なお、保全装置1におけるブラスト機能により、本発明にかかるブラスト手段が構成される。
【0043】
次に、鋼構造物の保全工法用車両80を、図3に従って説明する。
【0044】
鋼構造物の保全工法用車両80は、荷台81を備えたトラックを主体とし、図3(a),図3(b)に示すように、前記荷台81には上述の特定有害物質循環部2、乾燥圧縮空気供給手段30、及び発電機70が搭載されている。
【0045】
詳述すると、荷台81は、前側の開放領域82と後側の閉塞領域83とに分割されて二区分に区分されている。そして、開放領域82には乾燥圧縮空気供給手段30及び発電機70が配置されている。一方、閉塞領域83には特定有害物質循環部2が配置されている。
【0046】
また、荷台81には複数の支柱91が立設されており、支柱91の上端部には支柱91同士を繋ぐように横架材92が架け渡されている。そして、支柱91及び横架材92に被覆シート93が張り渡されて、荷台81上に内部空間が確保されている。なお、被覆シート93は、少なくとも防音機能と特定有害物質飛散防止機能とを有するシートが採用される。
【0047】
ここで、開放領域82は、被覆シート93によって側周部のみが所定高さで被覆されており、上部(天井部)は上方に開放されて外部と連通して部分被覆部96が構成されている。
【0048】
一方、閉塞領域83は、被覆シート93によって天井部を含む全周が被覆されており、閉塞された内部空間を有する全周被覆部95が構成されている。なお、全周被覆部95の側面部には貫通孔が気密状に設けられており、当該貫通孔を介して圧送ホース4、及び吸引ホース5が外方へ差し出されている。
【0049】
かかる構成にあっては、乾燥圧縮空気供給手段30及び発電機70は、部分被覆部96に配置されているため、上部に形成された開口部を介して排気や排熱が適切に行われる。
【0050】
これに対して特定有害物質循環部2は、全周被覆部95に配置されているため、吸引ホース5で吸引した異物D中に鉛、PCB、又はアスベスト等の特定有害物質が含まれていたとしても外部に飛散することがない。
【0051】
また、全周被覆部95及び部分被覆部96はいずれも、少なくとも側周部が被覆されているため、鋼構造物の保全工法用車両80から工具等が落下してしまうことを防止する効果がある。
【0052】
また、鋼構造物の保全工法用車両80は、保全装置1を稼働させた際の音対策として、被覆シート93によって防音効果が得られる。
【0053】
また、鋼構造物の保全工法用車両80は、保全装置1が荷台81に搭載されているため、当該保全装置1の移送が容易となって次の作業現場に迅速に移動が可能であり、しかも新しい現場ですぐに作業を開始することができる。
【0054】
なお、上述した支柱91、横架材92、及び被覆シート93によって被覆シート構造90が構成されている。また、被覆シート構造90によって本発明の被覆シートセットが構成されている。かかる被覆シートセットを用いることにより、被覆シート構造をもたない従来の一般的な車両に対しても簡単に被覆シート構造90を構築することができる。
【0055】
次に、鋼構造物の保全工法用車両80の使用態様について図4に従って説明する。
【0056】
鋼構造物の保全工法用車両80は、例えば高速道路100を横切る複数の鋼橋(鋼構造物)101,102を連続して予防保全する作業の際に、保全装置1を各鋼橋101,102ごとに地面に敷設することなく荷台81に搭載したまま当該高速道路100を移動して連続的に施工することができる。また、別の使用態様(図示省略)として、高速道路100に沿って構築されている柵などの鋼構造物に対して、荷台81に保全装置1を搭載したまま当該高速道路100を移動して連続的に施工することができる。
【0057】
上記した構成以外にも、本発明は、適宜設計変更可能である。例えば、被覆シート構造90に用いられる被覆シート93は、防音機能と特定有害物質飛散防止機能を有していれば他の特性については適宜選択可能である。また、被覆シート93は、層状に複数重ねて使用しても構わない。また、開放領域82には、無害化された廃棄物を回収する機器(ダスト回収部50)が適宜配置されてもよい。また、全周被覆部95については、作業者が出入りできる密閉式の出入り口が設けられていてもよい。また、被覆シート構造90は、折り畳み式の骨組み構造であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 保全装置
2 特定有害物質循環部
3 噴射器
4 圧送ホース
30 乾燥圧縮空気供給手段(空気制御部)
70 発電機(電源制御部)
80 鋼構造物の保全工法用車両
81 荷台
82 開放領域
83 閉塞領域
90 被覆シート構造(被覆シートセット)
91 支柱
92 横架材
93 被覆シート
95 全周被覆部
96 部分被覆部
図1
図2
図3
図4