(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】マンモグラフィ撮像用クッション
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20220203BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G01T1/161 A
A61B6/04 303
A61B6/04 301
(21)【出願番号】P 2019146964
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】394012935
【氏名又は名称】株式会社中部メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】駒口 伸司
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-121100(JP,A)
【文献】特開2019-105539(JP,A)
【文献】特開2013-185855(JP,A)
【文献】特開2008-220638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0198960(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161-1/166
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
別体に
構成された本体クッションと顔クッションとを備え、前記本体クッションには左右の乳房を収用可能な間隔で二つの開口部が備えられ、前記顔クッションとの間に顔を落とし込むことのできる空所を形成する様に診断用画像撮像装置のベッド上に設置して用いるものであって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とするマンモグラフィ撮像用クッション。
(1A)前記本体クッションは、上面、底面、前面、側面及び背面を覆うカバー材の内部に、最上段がそれより下の段よりも柔らかい複数段のクッション材を重ね合わせた状態で収用してなること。
(1B)前記クッション材及び前記上面及び底面を覆うカバー材には、前記二つの開口部のそれぞれに対応する貫通穴が形成されると共に、上面を覆うカバー材と底面を覆うカバー材の貫通穴同士を接続する筒状の側壁カバーをも備えていること。
(1C)前記二つの開口部は、前記本体クッションの長手方向に縦長の長孔状に構成されていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項1に記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(2)前記長孔状の開口部は、クッションの外側の辺の前端が飛び出し、平面視においてチューリップの花びらの様な孔形状を呈していること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(3A)前記顔クッションは、平面視馬蹄形状の顔クッション上と、前記顔クッション上の前側部分及び後側部分に対応する複数個の顔クッション下とを備え、前記顔クッション下の前側部分と後側分の間で側方に開放する隙間を形成する様に前記顔クッション上と顔クッション下とを重ね合わせる様に組み立てられていること。
(3B)前記顔クッション上は、クッション材の周囲がカバー材で覆われていること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項3に記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(4A)前記顔クッション上は、前記カバー材の内部に、最上段がそれより下の段よりも柔らかい複数段のクッション材を重ね合わせた状態で収用してなること。
(4B)前記顔クッション下は、前記前側部分及び後側部分のそれぞれが周囲を覆うカバー材の内部に前記顔クッション上の下側の段のクッション材と同じ硬さのクッション材を収用してなること。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(5)前記顔クッションの前端部に対応する凹入部を後端側に備え、下り傾斜で前端に向かう上面を備えた腕置きクッションをも備えていること。
【請求項6】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(6)前記本体クッションの適宜位置の下に挿入可能であって、前記本体クッションの幅よりも広い板状の腕支えクッションをも備えていること。
【請求項7】
さらに、以下の構成をも備えることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のマンモグラフィ撮像用クッション。
(7A)前記本体クッションは、上面カバー、底面カバー、前面カバー、左側面カバー、背面カバー、右側面カバー及び開口側壁カバーによって全体を包み込む様にして前記クッション材を収納したものとなっていること。
(7B)前記開口側壁カバーは、側壁パーツと穴あき底パーツとで構成され、筒状にした前記側壁パーツに前記穴あき底パーツを取り付けた構造とされ、前記穴あき底パーツが底面側となる様に前記上面カバーの開口部の下面に取り付けられると共に、前記複数段のクッション材を貫通する穴を抜け出して底面側に前記穴あき底パーツが露出する様に装着され、該穴あき底パーツを覆う様に前記底面カバーが固着されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンモグラフィ撮像用クッションに係り、特に、PET、PET-CT、CT、MRIなどの汎用の診断用画像撮像装置によるマンモグラフィの撮像に適するクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳ガンの検査において、俯せに横たわった診断対象者を支持するガントリに当該対象者の乳房を収納する左右二つの開口部を設け、ガントリの下方に左右及び上下に移動可能なPET検出器を設置し、左右いずれかの開口部をPET検出器で取り囲んで診断画像を取得する動作を繰り返すことにより、対象者を動かさずに両方の乳房の核医学診断が可能な装置の提案がある(特許文献1)。
【0003】
また、3次元マンモグラフィ像を生成するための核磁気共鳴断層撮影システムにおいて、MR走査中に乳房を位置決めするための内部スペースを有する乳房ホルダの内側スペースに、磁気共鳴領域において局所コイルシステムの個別コイルと電磁結合を生成するクッションを備えさせた装置の提案もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-131112(要約,
図2~
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、左右の乳房の診断画像を得るために2回の画像取得動作を要し時間がかかるという問題に加え、乳房を収納する左右の開口部の間にはPET検出器の一部を侵入させる隙間を要するため、極めて大柄な対象者にしか適用できないという問題がある。
【0006】
特許文献2の装置では、診断対象者の乳房がクッションに直接接触する上に、当該クッションにはコイルを内蔵させる必要もあり、衛生面、コスト面の問題は否めない。
【0007】
加えて、特許文献1の装置の開口部はリング状のPET検出器で取り囲むために円形孔とする必要があり、特許文献2の装置では乳房をクッションに当接させる必要があり、取得した診断画像中の病巣の位置関係が不正確になる場合があるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、衛生面、コスト面の問題を解決しつつ病巣の位置関係が不正確にならない診断画像を、汎用の診断用画像撮像装置で取得することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、別体に構成された本体クッションと顔クッションとを備え、前記本体クッションには左右の乳房を収用可能な間隔で二つの開口部が備えられ、前記顔クッションとの間に顔を落とし込むことのできる空所を形成する様に診断用画像撮像装置のベッド上に設置して用いるものであって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記本体クッションは、上面、底面、前面、側面及び背面を覆うカバー材の内部に、最上段がそれより下の段よりも柔らかい複数段のクッション材を重ね合わせた状態で収用してなること。
(1B)前記クッション材及び前記上面及び底面を覆うカバー材には、前記二つの開口部のそれぞれに対応する貫通穴が形成されると共に、上面を覆うカバー材と底面を覆うカバー材の貫通穴同士を接続する筒状の側壁カバーをも備えていること。
(1C)前記二つの開口部は、前記本体クッションの長手方向に縦長の長孔状に構成されていること。
【0010】
本発明のマンモグラフィ撮像用クッションによれば、クッション材の全体がカバー材で覆われると共に開口部についても側壁カバーで覆われているから、クッション材に対して診断対象者の体が接触することがない。この結果、汗やリンパ液などがクッション材に染み込み難く、カバー材に付着したとしてもこれをアルコールや洗浄液などで拭けば清潔な状態とすることができる。なお、カバー材としては、耐久性等を考慮し、合成皮革素材を用いるとよい。また、本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、本体クッションと顔クッションとが別体とされ、左右の乳房を収用可能な間隔で二つの開口部が備えられているので、診断対象者の体格に合わせて両クッションの間隔を調整すればよく、汎用の診断用画像撮像装置の撮像部へと診断対象者を侵入させるベッドの上に設置して様々な体格の対象者に対して用いることができる。加えて、一度に左右の乳房のマンモグラフィを撮像することができる。この様に、体格に応じて設置可能として汎用の診断用画像撮像装置に用いられるものとしたことにより、PET検出器などを内蔵させる必要もない。また、本体クッション内のクッション材を複数段を重ね合わせた構成とし、最上段を他の段よりも柔らかいものとしたので対象者が俯せに寝たときに体型に合わせて無理なく沈み込むと共に、他の段は比較的硬いクッション材としたことで全体として沈み込み過ぎない。そして、開口部を縦長の長孔状としたので乳房が開口部内に自然に垂れ下がる。この結果、乳房の病巣の位置を正確に把握できる診断用画像を取得することができる。
【0011】
ここで、本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(2)前記長孔状の開口部は、クッションの外側の辺の前端が飛び出し、平面視においてチューリップの花びらの様な孔形状を呈していること。
【0012】
かかる構成をも備えることにより、診断対象者が俯きに寝たときに乳房と共に腋窩部も開口部に自然に落とし込むことができる。この結果、診断用画像中のリンパ部における病巣の位置関係も正確に撮像することができる。
【0013】
これら本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(3A)前記顔クッションは、平面視馬蹄形状の顔クッション上と、前記顔クッション上の前側部分及び後側部分に対応する複数個の顔クッション下とを備え、前記顔クッション下の前側部分と後側分の間で側方に開放する隙間を形成する様に前記顔クッション上と顔クッション下とを重ね合わせる様に組み立てられていること。
(3B)前記顔クッション上は、クッション材の周囲がカバー材で覆われていること。
【0014】
かかる構成をも備えることにより、診断対象者が俯きに寝たときに顔クッション下の隙間から光が入り、顔クッションによる暗闇の恐怖を感じさせることがない。また、顔クッション上はカバー材で覆われることにより、対象者の顔の汗などがクッション材に染み込み難く、使用に際してはアルコール等による拭き取りで衛生面の問題も生じさせない。
【0015】
この場合、さらに以下の構成をも備えるとよい。
(4A)前記顔クッション上は、前記カバー材の内部に、最上段がそれより下の段よりも柔らかい複数段のクッション材を重ね合わせた状態で収用してなること。
(4B)前記顔クッション下は、前記前側部分及び後側部分のそれぞれが周囲を覆うカバー材の内部に前記顔クッション上の下側の段のクッション材と同じ硬さのクッション材を収用してなること。
【0016】
かかる構成をも備えることにより、顔クッションに載せた対象者の顔がソフトに受け止められ、違和感を感じさせないと共に、支えとしてもしっかりとしたものになる。
【0017】
これら本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(5)前記顔クッションの前端部に対応する凹入部を後端側に備え、下り傾斜で前端に向かう上面を備えた腕置きクッションをも備えていること。
【0018】
かかる構成をも備えることにより、腕置きクッションに腕を置くように対象者に寝てもらうことで腋窩部が開口部にスムーズに入り込み易く、リンパ部の病巣の位置を正確に把握可能な診断用画像を取得する効果が高まる。特に、(2)の構成をも備える場合は、より一層、その効果が高まる。
【0019】
これら本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(6)前記本体クッションの適宜位置の下に挿入可能であって、前記本体クッションの幅よりも広い板状の腕支えクッションをも備えていること。
【0020】
かかる構成をも備えることにより、腕を上げることが困難な対象者の場合に、体側に沿って下げた腕を本体クッションからはみ出した腕支えクッションに載せることでベルト等による固定までの間の腕の支えとすることができる。
【0021】
これら本発明のマンモグラフィ撮像用クッションは、さらに、以下の構成をも備えることができる。
(7A)前記本体クッションは、上面カバー、底面カバー、前面カバー、左側面カバー、背面カバー、右側面カバー及び開口側壁カバーによって全体を包み込む様にして前記クッション材を収納したものとなっていること。
(7B)前記開口側壁カバーは、側壁パーツと穴あき底パーツとで構成され、筒状にした前記側壁パーツに前記穴あき底パーツを取り付けた構造とされ、前記穴あき底パーツが底面側となる様に前記上面カバーの開口部の下面に取り付けられると共に、前記複数段のクッション材を貫通する穴を抜け出して底面側に前記穴あき底パーツが露出する様に装着され、該穴あき底パーツを覆う様に前記底面カバーが固着されていること。
【0022】
かかる構成をも備えることにより、本体クッションの開口部を開口側壁カバーで覆った状態とするに当たり、内部のクッション材を長さ方向に分割するなどの必要がない。この結果、診断対象者の支えとしてのクッション材の性能を低下することなく衛生面に優れたクッションを提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、衛生面、コスト面の問題を解決しつつ病巣の位置関係が不正確にならない診断画像を、汎用の診断用画像撮像装置で取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1のマンモグラフィ診断用クッションを示し、(A)は平面図、(B)は使用状態の斜視図、(C),(D)は取得されるPET診断画像の一例を示す説明図である。
【
図2】実施例1における本体クッションの六面図及び断面図である。
【
図3】実施例1における本体クッションのカバーを構成する各パーツの平面図である。
【
図4】実施例1における本体クッションのカバーの製造工程の一部を示す説明図である。
【
図5】実施例1における本体クッションのカバーの製造工程の一部を示す説明図である。
【
図6】実施例1における本体クッションの製造工程の一部を示す斜視図である。
【
図7】実施例1における顔クッションを示し、(A)は底面から見た分解斜視図、(B)は底面から見た斜視図、(C)は顔クッション上の六面図及び断面図、(D)は顔クッション下の六面図及び断面図である。
【
図8】実施例1を示し、(A)は腕置きクッションの六面図及び断面図、(B)は腕支えクッションの六面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
実施例のマンモグラフィ撮像用クッション1は、
図1(A)に示す様に、それぞれ別体に構成された本体クッション10、顔クッション40、腕置きクッション70、及び腕支えクッション80を備えている。本体クッション10にはその長手方向に縦長の長孔状開口部H1,H2が左右の乳房を収用可能な間隔で備えられている。この長孔状開口部H1,H2は、クッションの外側の辺の前端が飛び出し、平面視においてチューリップの花びらの様な孔形状を呈し、診断対象者が俯きに寝たときに乳房と共に腋窩部をも自然に落とし込むことができる形状となっている。また、本体クッション10と顔クッション40は診断対象者の体格に応じて間隔を調整可能であって、両クッションの間に顔面を落とし込むことのできる長孔状空所H3を形成することができる様に構成されている。
【0027】
本実施例のクッション1は、
図1(B)に示す様に、汎用のPET画像撮像装置PETのベッドBEDの上に設置し、上面にシーツSTを掛けて診断対象者を俯きに寝かせ、保持ベルト等によって対象者の体をベッドBEDに固定した状態で撮像部へと診断対象者を侵入させてPET画像を撮像する際に用いる。
【0028】
本実施例のクッション1を用いた乳ガン診断においては、
図1(C)に示す様に、診断対象者の乳房が下方に自然な状態で垂れ下がり、乳ガンの病巣BCL1が乳房のどの位置に存在するかが正確に判別できるPET画像を取得することができる。また、
図1(D)に示す様に、乳房の病巣BCL2に加え、腋窩部も自然に垂れ下がり、リンパ部の病巣BCL3,BCL4についても正確な位置関係にて撮像することができる。
【0029】
本体クッション10は、
図2に示す様に、上面カバー21、底面カバー22、前面カバー23、左側面カバー24、背面カバー25、右側面カバー26及び開口側壁カバー27,28によって全体を包み込む様にしてクッション材31~34を収納したものとなっている。上面カバー21及び底面カバー22には、長孔状開口部H1,H2に対応する貫通穴が形成されている。また、開口側壁カバー27,28はそれぞれ、長孔状開口部H1,H2に対応して設けられた上面カバー21及び底面カバー22のチューリップの花びらの様な貫通穴同士の間を連接する筒体とされている。そして、側面カバー24,26は長さ方向において前端から4割程度の位置までが高い平行部、後端から1割弱までの位置が低い平行部、とされると共に、これら平行部間を斜めにつなぐ傾斜部を備えた形状とされている。また、上面カバー21及び底面カバー22の前端中央は顔クッション40との間の長孔状空所H3の一部を構成する円弧状窪みU1を構成する様に円弧状に切り欠かれており、前面カバー23は、この円弧状の切り欠きに沿って前面を覆うことができる長さと高さとを有している。背面カバー25は、上面カバー21,底面カバー22と同じ幅で、側面カバー24,26の後端と同じ高さの帯状のものとされている。なお、側面カバー24,26の上縁形状との関係から、上面カバー21は底面カバー22よりも長さが若干長いものとなっている。
【0030】
また、側面カバー24,26の形状に対応し、一番上のクッション材34は上面カバー21の下面全体に渡って収納される長さを有し、一番下のクッション材31は底面カバー22の上面全体に渡って収納される長さを有している。これらの間のクッション材32,33は、それぞれ後端側に傾斜面を有する側面視台形状で、一番下のクッション材31よりも順次短いものとなっている。ここで、下側3層のクッション材31~33と最上層のクッション材34とは発泡率の異なるウレタンスポンジが用いられ、最上層のクッション材34はそれ以外のクッション材31~33よりも柔らかく変形し易いものとされている。これは、診断対象者が俯せに寝たときに、当該対象者の体型に合わせて上部が変形して無理なく対象者を受け止めることができる様にするためである。下側3層のクッション材31~33が最上層のクッション材34に比べて硬めのウレタンスポンジとされているのは、診断対象者の体重をしっかりと受け止めて沈み込み過ぎない様にするためである。なお、各クッション材31~34には、長孔状開口部H1,H2に対応するチューリップの花びら状の貫通穴が形成されている。
【0031】
次に、カバー21~28を構成するパーツを
図3に基づいて説明する。図において「p」の前に記載した数字が各パーツが対応するカバーを表している。図示の様に、上面カバー21は1枚のパーツ21pで構成されるのに対し、底面カバー22は2枚のパーツ22p1,22p2で構成される。また、開口側壁カバー27,28は、それぞれ側壁パーツ27p1,28p1と穴あき底パーツ27p2,28p2とで構成される。
【0032】
製造に当たっては、
図4に示す様に、側壁パーツ27p1,28p1を筒状に縫製し、次に穴あき底パーツ27p2,28p2を縫い付ける。そして、穴あき底が付いた筒状の側壁パーツ27p1,27p2を上面カバー用パーツ21pの裏面側に突出する開口側壁カバー27,28が形成される様に縫い付ける。
【0033】
その後、
図5に示す様に、各パーツ21p,23p等を縫い付ける。このとき、側壁パーツ24p,26pと底面パーツ22p1は、ハッチングで示す範囲のみ縫い合わせ、前端側の所定範囲(開口のやや後ろ)は縫い合わせない状態とする。また、底面パーツ22p1と22p2も縫い合わせない状態とする。この結果、底面の一部が開放された状態のカバーが完成する。そして、
図6(A)に示す様に、この開放部分からクッション材34,33,32,31を収納したら上面カバー21の裏面に突出させておいた開口側壁カバー27,28の穴あき底パーツ27p2,28p2を底面に露出させる様に抜き出し、
図6(B)に示す様に、開放部分を閉じる。このとき、
図6(A)に示す様な面ファスナMFを用いてもよいし、接着剤で接着してもよい。
【0034】
次に、顔クッション40について説明する。顔クッション40は、
図7(A),(B)に示す様に、顔クッション上50と顔クッション下60とから構成され、面ファスナMFで上下に貼り合わせることにより、
図7(A)に示す様な形態に組み立てて使用する。図示の様に、顔クッション40は、底面側に側方隙間S1,S2を備える状態に組み立てられる。
【0035】
顔クッション上50は、
図7(C)に示す様に、平面視馬蹄形状を呈し、同形状のクッション材52~54を重ねた状態で全体をカバー材55で包み込む様に縫製して製造される。ここで、最上層のクッション材54は、本体クッション10の最上層のクッション材34と同一素材で、他のクッション材52,53は本体クッション10の下側3段のクッション材31~33と同一素材で製造されている。
【0036】
また、顔クッション下60は、
図7(D)に示す様に、平面視C字状の前側クッション61と、平面視台形状の後側クッション62,63の3点から構成されている。各クッション61~63は、本体クッション10の下側3段のクッション材31~33と同一素材で製造されたクッション材61a~63aを全体をカバー材61b~63bで包み込む様に縫製して製造される。
【0037】
次に、腕置きクッション70について説明する。腕置きクッション70は、
図8(A)に示す様に、平面視において、顔クッション40の前端の円弧に対応する円弧状の凹入部を有する矩形状を呈し、側面視において後端から前端に向かって下り傾斜の上面を有するものとなっている。そして、平面視の通りの形状のクッション材71と、側面視に対応する上面傾斜を有するクッション材72とを重ねた状態で全体をカバー材73で包み込む様に縫製して製造される。ここで、クッション材71,72は、本体クッション10の下側3段のクッション材31~33と同一素材で製造されている。
【0038】
なお、本体クッション10、顔クッション50、腕置きクッション70のカバー材はいずれも合成皮革製である。
【0039】
次に、腕支えクッション80について説明する。腕支えクッション80は、
図8(B)に示す様に、平面視矩形状のクッション材製平板で構成されている。
【0040】
本実施例のマンモグラフィ撮像用クッション1によれば、クッション材の全体がカバー材で覆われると共に開口部についても側壁カバーで覆われているから、クッション材に対して診断対象者の体が接触することがないから、汗やリンパ液などがクッション材に染む込み難い。また、カバー材が合成皮革製であるから、耐久性が良く、汗等がカバー材に付着したとしてもこれをアルコールや洗浄液などで拭けば清潔な状態とすることができる。
【0041】
また、本実施例のマンモグラフィ撮像用クッション1は、本体クッション10と顔クッション50が別体とされ、左右の乳房を収用可能な間隔で二つの開口部H1,H2が備えられているので、診断対象者の体格に合わせて両クッションの間隔を調整すればよく、汎用の診断用画像撮像装置の撮像部へと診断対象者を侵入させるベッドの上に設置して様々な体格の対象者に対して用いることができる。加えて、一度に左右の乳房のマンモグラフィを撮像することができる。この様に、体格に応じて設置可能として汎用の診断用画像撮像装置に用いられるものとしたことにより、PET検出器などを内蔵させる必要もない。また、本体クッション10内のクッション材を複数段を重ね合わせた構成とし、最上段を他の段よりも柔らかいものとしたので対象者が俯せに寝たときに体型に合わせて無理なく沈み込むと共に、他の段は比較的硬いクッション材としたことで全体として沈み込み過ぎない。そして、開口部を縦長の長孔状としたので乳房が開口部内に自然に垂れ下がる。この結果、乳房の病巣の位置を正確に把握できる診断用画像を取得することができる。
【0042】
さらに、長孔状の開口部H1,H2を、それぞれ外側の辺の前端が飛び出し、平面視においてチューリップの花びらの様な孔形状を呈するものとしたことにより、診断対象者が俯きに寝たときに乳房を落とし込むと共に腋窩部をも開口部に自然に落とし込むことができる。この結果、診断用画像中のリンパ部における病巣の位置関係も正確正に撮像することができる。
【0043】
また、顔クッション40が、顔クッション上50と、3点構成の顔クッション下60とからなり、顔クッション下60は側方に開放する隙間を形成する様に組み立てる構造としたから、診断対象者が俯きに寝たときに顔クッション下の隙間から光が入ることで、顔クッションによる暗闇の恐怖を感じさせることがない。また、顔クッション上50はカバー材で覆われることにより、対象者の顔の汗などがクッション材に染み込み難く、使用に際してはアルコール等による拭き取りで衛生面の問題も生じさせない。
【0044】
加えて、顔クッション上50の最上段がそれより下の段よりも柔らかい複数段のクッション材を重ね合わせた状態で収用してなり、顔クッション下60は、顔クッション上50の最上段よりも下側の段のクッションと同じ硬さのクッション材を収用してなるから、顔クッション40に載せた対象者の顔がソフトに受け止められ、違和感を感じさせないと共に、支えとしてもしっかりとしたものになる。
【0045】
また、顔クッション40の前端部に対応する凹入部を後端側に備え、下り傾斜で前端に向かう上面を備えた腕置きクッション70をも備えたことにより、腕を上げた状態で対象者に寝てもらい易く、乳房だけでなく腋窩部も開口部H1,H2にスムーズに入り込ませることができ、リンパ部の病巣の位置を正確に把握可能な診断用画像を取得し易い。これは、開口部H1,H2を平面視においてチューリップの花びら状にしたことにより、一層、その効果が高まる。
【0046】
加えて、本体クッション10の適宜位置の下に挿入可能であって、本体クッション10の幅よりも広い板状の腕支えクッション80をも備えたから、腕を上げることが困難な対象者の場合に、体側に沿って下げた腕を本体クッション10からはみ出した腕支えクッション80に載せることでベルト等による固定までの間の腕の支えとすることができる。
【0047】
そして、本体クッション10を、上面カバー21、底面カバー22、前面カバー23、左側面カバー24、背面カバー25、右側面カバー26及び開口側壁カバー27,28によって全体を包み込む様にしてクッション材31~34を収納したものとし、開口側壁カバー27,28は、側壁パーツ27p1,28p1と穴あき底パーツ27p2,28p2とで構成し、筒状にした側壁パーツ27p128p1に穴あき底パーツ27p2,28p2を取り付けた構造とし、穴あき底パーツ27p2,28p2が底面側となる様に上面カバー21の開口部の下面に取り付け、複数段のクッション材31~34を貫通する穴を抜け出して底面側に穴あき底パーツ27p2,28p2が露出する様に装着し、穴あき底パーツ27p2,28p2を覆う様に底面カバー22を固着する構成としたから、本体クッション10の開口部を開口側壁カバー27,28で覆った状態とするに当たり、内部のクッション材31~34を長さ方向に分割するなどの必要がない。この結果、診断対象者の支えとしてのクッション材の性能を低下することなく衛生面に優れたクッションを提供することができる。
【0048】
以上説明した様に、本実施例によれば、衛生面、コスト面の問題を解決しつつ病巣の位置関係が不正確にならない診断画像を、汎用の診断用画像撮像装置で取得することができる。
【0049】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、PET、PET-CT、CT、MRIなどの汎用の診断用画像撮像装置によるマンモグラフィの撮像に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・マンモグラフィ撮像用クッション、10・・・本体クッション、21・・・上面カバー、22・・・底面カバー、23・・・前面カバー、24・・・左側面カバー、25・・・背面カバー、26・・・右側面カバー、27,28・・・開口側壁カバー、21p・・・上面カバー用のパーツ、22p1,22p2・・・底面カバー用のパーツ、23p・・・前面カバー用のパーツ、24p・・・左側面カバー用のパーツ、25p・・・背面カバー用のパーツ、26p・・・右側面カバー用のパーツ、27p1,28p1・・・開口側壁カバー用の側壁パーツ、27p2,28p2・・・開口側壁カバー用の穴あき底パーツ、31~34・・・クッション材、40・・・顔クッション、50・・・顔クッション上、52~54・・・クッション材、55・・・カバー材、60・・・顔クッション下、61・・・前側クッション、62,63・・・後側クッション、61a~63a・・・クッション材、61b~63b・・・カバー材、70・・・腕置きクッション、71,72・・・クッション材、73・・・カバー材、80・・・腕支えクッション、BCL1~BCL4・・・病巣、BED・・・ベッド、H1,H2・・・長孔状開口部、H3・・・長孔状空所、MF・・・面ファスナ、PET・・・PET画像撮像装置、S1,S2・・・側方隙間、ST・・・シーツ、U1・・・円弧状窪み。