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特許70077461,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4192 20060101AFI20220118BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/423 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/452 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20220118BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220118BHJP
   C07D 263/52 20060101ALI20220118BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20220118BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20220118BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20220118BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/4192
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/423
A61K31/428
A61K31/4439
A61K31/452
A61K31/454
A61K31/4745
A61P35/00
A61P35/02
C07D263/52 CSP
C07D401/04
C07D405/04
C07D413/04
C07D417/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019566065
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2019004001
(87)【国際公開番号】W WO2019198976
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2019-11-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040913
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040884
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040895
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519415443
【氏名又は名称】ヒュエン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUEN CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】#3301,136,Jiksan-ro,Jiksan-eup Seobuk-gu,Cheonan-si Chungcheongnam-do 31035,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ギ リャン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミン ジョン
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502976(JP,A)
【文献】特表2017-501204(JP,A)
【文献】国際公開第2015/102370(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0116211(KR,A)
【文献】Bioorg. Med. Chem.,2016年,Vol.24,P.1006-1013,特にFigure1, Abstract, Introduction, Table1, Scheme1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4192
A61K 9/02
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 9/12
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 31/423
A61K 31/428
A61K 31/4439
A61K 31/452
A61K 31/454
A61K 31/4745
A61P 35/00
A61P 35/02
C07D 263/52
C07D 401/04
C07D 405/04
C07D 413/04
C07D 417/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1-1乃至化学式1-4:
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】

(R及びRは各々独立的に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、-NO、-NR´R´、-NR´(CO(O)R´)、-NR´(C(O)NR´R´)、-NH-C-Cアルキレニル-ハロフェニル、-CN、この際、前記R´及びR´は各々独立的に水素またはC-Cアルキルであり;
は水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、N-tert-ブトキシカルボニルピぺリジニル、N-tert-ブトキシカルボニルアゼチジニル、または N-(C-C)アルキルピぺリジニルであり;
は水素、C-Cアルキル、フェニル、ハロフェニル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、ベンジル、ピリジニル、C-CアルキルレニルC-Cヘテロシクロアルキル、C-Cアルキルレニル-NH-フェニル、C-Cアルキルレニル-NH-ハロフェニル、ジ(C-C)アルキルアミノスルホニル、C-Cアルキルレニル-NH-(C-C)アルコキシフェニル)、C-Cアルキルレニル-オキシカルボニル-C-Cアルキル、(C-C)アルキルオキシ(C-C)アルキルレニル、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)ヘテロシクロアルキルカルボニル、 tert-ブトキシカルボニルC-Cアルキルレニル、N-tert-ブトキシカルボニルピぺリジニル、N-tert-ブトキシカルボニルアゼチジニル、またはN-(C-C)アルキルピぺリジニルであり;
は、水素、アミノ、C-Cアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、ベンジル、ハロベンジル、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル、(C-C)ヘテロシクロアルキルカルボニル、tert-ブトキシカルボニルC-Cアルキルレニル、 N-tert-ブトキシカルボニルピぺリジニル、N-tert-ブトキシカルボニルアゼチジニル、または N-(C-C)アルキルピぺリジニルであり;
ヘテロ原子はN、O、及びSより選択された1つ以上であり;
乃至Xは各々独立的に、C、CHまたはNであり;
で表示される
ことを特徴とする1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記化学式1-1乃至化学式1-4の化合物は下記で表現された化合物:
【化2-1】









【化2-2】




【化2-3】



【化2-4】


【化2-5】

のうちの1つである
請求項1に記載の1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記化合物は下記で表現された化合物:
【化3-1】
のうちの1つである
請求項2に記載の1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む固形癌または血液癌予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記血液癌は、急性白血病、慢性白血病、薬剤耐性慢性白血病、及び難治性急性白血病からなる群より選択される
請求項1に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記慢性白血病は、慢性骨髄性白血病または慢性リンパ性白血病のうちから選択される
請求項4に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記急性白血病は、急性骨髄性白血病または急性リンパ性白血病のうちから選択される
請求項4に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
前記固形癌は、肺癌、子宮癌、肝癌、及び乳癌からなる群より選択される
請求項1に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾール、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液からなる群より選択される1種の剤型を有する
請求項1に記載の固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
下記の化合物151、156、172乃至174、及び230乃至234からなる群より選択される化学式:
【化4-1】
を有する
ことを特徴とする1,2-ナフトキノン誘導体化合物、その光学異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、特許文献1~3に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む急性白血病、慢性白血病のような血液癌、及び固形癌のような癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
身体を構成する最も小さな単位である細胞(cell)は、正常条件の場合、細胞自体の調節機能により分裂及び成長し、寿命が尽きたり損傷されたりすると、自ら死滅して全般的な数の均衡を維持する。しかしながら、いろいろな原因により細胞自体の調節機能に問題が生じると、正常に死滅しなければならない非正常細胞が過剰増殖するようになり、場合によって周囲組織及び臓器に侵入して腫塊(塊り)を形成し、既存の構造を破壊または変形させるが、このような状態を癌(cancer)と定義することができる。
【0004】
癌は人類が解決しなければならない難病の1つであって、全世界的に癌を治癒するための開発に莫大な資本が投資されており、医学技術も革新的に発展しているが、それにも拘わらず癌による死亡は持続的に増加する趨勢である。統計庁の発表によれば、我が国の癌患者の場合には2012年基準に約22万余名の新規癌患者が発生したと報告しており、このような数値は2002年度に発生した新規癌患者数に比べて約2倍も増加したものであって、毎年早く癌患者数が増加していることが分かる。しかしながら、22万余名の癌患者のうち、7万余名が癌により死亡しているので、癌治療に対する治療剤開発が至急な実状である。
【0005】
現在、癌患者の治療法は、外科的手術、放射線治療、化学療法(40余種の強い細胞毒性を示す抗癌物質投与)に依存している状態であるが、これら治療法も大部分は早期癌患者や特定癌のみに限定しているので、癌による死亡は相変らず増加している趨勢である。
【0006】
一方、白血病は細胞の分化程度、即ち、悪化速度によって急性と慢性に分かれて、細胞の起源によって骨髄性とリンパ球性に分かれて、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、急性リンパ球性白血病(acute lymphoblastic leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia)形態に分類する。
【0007】
急性白血病(acute leukemia)は非正常的な白血球前駆細胞または血小板前駆細胞を過多に生産する疾病であって、骨髄系の細胞が増殖すれば急性骨髄性白血病(AML、acute myeloid leukemia)、リンパ系の細胞が増殖すれば急性リンパ性白血病(ALL、acute lymphocytic leukemia)という。以上、白血球が増加して造血する場所を占拠するので、正常白血球、赤血球、血小板などが形成できなくて感染症や出血などが容易に起こり、治療しない場合には数カ月以内に死亡するようになる。最近、化学療法の発達により乳児の急性白血病生存率は顕著に向上したが、成人の場合には相変らず生存率が低い。
【0008】
急性骨髄性白血病は非リンパ球性または骨髄で作られる骨髄性白血球の幹細胞で発生した悪性腫瘍であって、造血母細胞に遺伝子変異が生じて骨髄系前駆細胞がいろいろな段階で分化を停止して、未成熟な骨髄毛球が単細胞群(monoclonal)に増殖する造血器腫瘍である。貧血、発熱、感染性増加、出血傾向などの骨髄機能障害症状を表し、脾臓肥大、リンパ節腫脹など、腫瘍細胞の臓器浸潤症状が表れる場合もある。
【0009】
急性リンパ性白血病は血液及び骨髄内リンパ球系統細胞で発生する血液癌であって、リンパ球系統細胞の増殖、分化、成熟、及び破壊過程に関与するいろいろな遺伝子の変異により発病することと知られている。遺伝子変異の原因は現在明確に明らかになってはいないが、他の癌のように遺伝的素因、ウイルス、多数の発癌物質、電離放射線などが関与することと推定している。急性リンパ球性白血病で観察される症状は他の白血病と類似するように非正常白血病細胞により正常血液細胞が形成される過程が障害を受けるか、または非正常白血病細胞がリンパ節、脾臓、肝、脳、脊髄などの臓器に侵犯しながら症状が発生する。一方、慢性骨髄性白血病はヒトの9番染色体と22番染色体の一定部分が切断された後、2切れが互いに位置を変えて移動した現象である転位(transition)により生じたフィラデルフィア染色体(philadelphia chromosome)により発病するものであって、フィラデルフィア染色体を有する造血母細胞のクローンが非正常的に拡張しながら骨髄内に非正常的な細胞が過度に増殖して生じる疾患である。全体成人白血病の約25%を占めて、30~50歳及び老年層でよく発生するので、成人型白血病ともいうが、全ての年齢層で発病可能であり、小児や青少年でも発生する。
【0010】
フィラデルフィア染色体は染色体転位によって9番染色体のABL遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子の融合が起こるようになり、BCR-ABL融合遺伝子によって非正常的なチロシンキナーゼ(tyrosine kinase)の活性を有するBCR-ABL融合蛋白質を生産するようになる。非正常的なチロシンキナーゼ酵素の活性化は悪性細胞の非正常的な増幅をもたらすようになって血液癌が発生するようになる。
【0011】
グリーベック(Gleevec(登録商標)、imatinib)はBCR-ABL融合蛋白質にあるアデノシン3燐酸結合部位(ATP(adenosine triphosphate)-binding site)に競争的に結合して蛋白質の酵素活性を阻害する薬剤である。しかしながら、一部の患者でBCR-ABL遺伝子変異によって、グリーベックに耐性が生じるようになり、病気が悪化する。グリーベックの限界点と抵抗性を有する患者群が発生するにつれて、第2世代(nilotinib)、第3世代(dasatinib)チロシンキナーゼ抑制剤の開発がなされているが、この薬物やはり完全な治療がなされず、急性期患者での治療成功率が30%位増加した水準という短所がある。ここに、慢性骨髄性白血病治療のための研究が持続的に必要な実状である。
【0012】
慢性リンパ球性白血病は白血球の一種であるリンパ球が成長しながら腫瘍に変わり、それによって骨髄内に過度に増殖して正常な血液細胞の生産を妨害する疾患である。正常白血球が減れば感染が発生する危険が高まり、赤血球が減少しながら貧血が生じて、止血作用をする血小板が減るので、止血する時間も長くなる。慢性リンパ球性白血病は我が国では非常にまれだが、米国で最もありふれるように発生し、大抵50歳以後の男性にたくさん表れる。慢性リンパ球性白血病の発病原因はまだ明らかにされておらず、環境、職業だけでなく、ウイルスや放射線照射とも関連性がない。しかしながら、慢性リンパ球性白血病がある直系家族の場合、一般人に比べて慢性リンパ球性白血病や他のリンパ増殖疾患が発生する可能性が3倍以上増加し、家族歴がある場合にはそうでない場合に比べて約10年位若い年齢で発生する。
【0013】
白血病を治療する標準方法として、化学療法、造血母細胞移植、放射線療法などが含まれ、化学療法の場合、通常的に2またはその以上の抗癌剤を併用する方法が含まれる。理想的な化学療法は抗白血病剤が正常造血を抑制せず、更に他の有害な副作用を起こさない、かつ白血病細胞のみで選択的な効果を示さなければならないということである。しかしながら、大部分の抗白血病剤は理想的な状態にある程度近接して白血病細胞を殺すことはできるが、正常造血も抑制し、他の有害な副作用も起こすので、白血病の治療に限界がある。また、薬剤耐性がある白血病細胞では抗腫量効果が弱く、副作用の問題が発生することがあるので、充分の化学療法が実施できない場合もある。
【0014】
造血母細胞移植(HSCT、hematopoietic stem cell transplantation)とは、過去に骨髄を活用していた骨髄移植(BMT、bone marrow transplantation)の領域を超えて、現在は末梢血液(PB、peripheral blood)と臍帯血(CB、cord blood)内に存在する全ての形態の造血母細胞を移植源に活用して移植することを意味する。造血母細胞移植は血液腫瘍患者で抗癌化学療法及び放射線療法を用いて癌細胞と患者自身の造血母細胞を除去した後、新たな造血母細胞を移植してくれる治療法であって、初期の骨髄移植の限定された概念から外れて白血病に代表される白血病、再生不良性貧血、悪性リンパ種は勿論、不応性自己免疫疾患、固形癌など、多様な領域で効果的であり、希望的な治療手段として落ち着いている。しかしながら、現在までは高容量化学療法治療と同種移植後に発生する移植片対宿主病などのため、合併症の発生の高い治療方法である。
【0015】
したがって、効果的な癌の治療のためには、放射線療法、手術療法、化学療法などの多様な方法を用いて各々の癌患者に適合した治療計画を樹立して適用することが重要である。また、多様な形態の癌、例えば固形癌及び血液癌の治療のための新たな療法の薬物を開発することは当業界に与えられた重要な課題である。
【0016】
一方、1,2-ナフトキノン誘導体化合物と関連した先行文献として、特許文献4~6が開示されているが、代謝性疾患の治療用組成物に関するものであって、本発明の構造を有する1,2-ナフトキノン誘導体化合物が固形癌と急性白血病及び慢性白血病のような血液癌腫に治療効果があることに対しては開示されたことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】2018年4月9日付韓国特許出願第10-2018-0040913号
【文献】2018年4月9日付韓国特許出願第10-2018-0040884号
【文献】2018年4月9日付韓国特許出願第10-2018-0040895号
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080423号(1,2-ナフトキノン誘導体及びその製造方法、2015年07月09日、公開)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080425号(1,2-ナフトキノン誘導体及びその製造方法、2015年07月09日、公開)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0080426号(1,2-ナフトキノン誘導体及びその製造方法、2015年07月09日、公開)
【文献】韓国特許出願第10-2014-0193184号
【文献】韓国特許出願第10-2014-0193306号
【文献】韓国特許出願第10-2014-0193370号
【文献】韓国特許出願第10-2015-0043050号
【文献】韓国特許出願第10-2015-0043068号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は下記の化学式1で表示される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む固形癌または血液癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。好ましい態様において、前記血液癌は急性白血病、慢性白血病、薬剤耐性慢性白血病、または難治性急性白血病である。
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式1で、
【0022】
及びRは各々独立的に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-NO、-NR´R´、-NR´(CO(O)R´)、-NR´(C(O)NR´R´)、-CO(O)R´、-C(O)NR´R´、-CN、-SO(O)R´、-SO(O)NR´R´、-NR´(SO(O)R´)、-CSNR´R´、またはR及びRは相互結合によりC-C10アリールの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、この際、前記R´及びR´は各々独立的に水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、またはC-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR″R″-C-C10アリール、-(CR″R″-C-C10ヘテロアリールまたはNR″R″であり、前記R″及びR″は各々独立的に水素、C-Cアルキル、またはR″及びR″は相互結合によりC-C10アリールの環状構造をなすことができ;
【0023】
、R、及びRは各々独立的に水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-NR´R´、-(CR´R´-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR´R´-OR´、-(CR´R´(O)COR´、-CO(O)R´、-CONR´R´、-NR´R´、-NR´(C(O)R´)、-SO(O)R´、-SO(O)NR´R´、-NR´(SO(O)R´)、-CSNR´R´、化学式(1)の化合物が“A”の時、-CHA、または化学式(1)の化合物が“A”の時-Aであり、この際、前記R´及びR´は各々独立的に水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R″、または、R´及びR´は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R´及びR´は各々独立的に水素またはC-Cアルキルであり、前記R″はC-Cアルキルであり;
【0024】
とQは各々独立的にCO、COR、CORであり、
【0025】
がCOで、QがCOの時、QとQは単一結合をなして、
【0026】
がCORで、QがCORの時、QとQは二重結合をなして、
【0027】
前記R及びRは各々独立的に水素、C-C10アルコキシ、C-Cアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R´、-C(O)NR´R´、-SO(O)R´、-SO(O)NR´R´、-SOR´、-POR´、-CSNR´R´、またはR及びRは相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R´及びR´は各々独立的に水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR″R″´-C-C10アリールであり、前記R″及びR″は各々独立的に水素、C-Cアルキルであり;
【0028】
が置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造であり、QがCOであるか、または、QがCOであり、Qが置換または非置換のC-Cヘテロシクロアルキルの環状構造である時、QとQは単一結合をなして、
【0029】
mとm´は各々独立的に1乃至4の整数であり;
【0030】
ヘテロ原子はN、O、及びSより選択された1つ以上であり;
【0031】
乃至Xは各々独立的にCHまたはN(R″)であり、この際、R″は水素またはC-Cアルキルであり;
【0032】
、X、及びXは各々独立的にN、O、またはSであり、
【0033】
但し、X及びXが同時にNであるか、X及びXが同時にNであるか、またはX及びXが同時にNである場合を除いて;
【0034】
【0035】
前記の用語“アルキル”は単一結合の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいい、例えばC1-10アルキル、具体的にC1-6アルキル、より具体的にメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、1-メチルプロピルなどを挙げることができる。
【0036】
前記の用語“アルコキシ”は単一結合の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素が結合された酸素基をいい、例えばC1-10アルコキシ、具体的にC1-6アルコキシ、より具体的にメトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、1-メチルプロポキシなどを挙げることができる。
【0037】
前記の用語“シクロアルキル”は環形態の単一結合の飽和炭化水素基をいい、例えば炭素数によってC3-10シクロアルキル、具体的にC3-C8シクロアルキル、より具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどがある。
【0038】
前記用語“ヘテロシクロアルキル”は環構成原子として炭素原子の以外にN、O、またはSのようなヘテロ原子を1つ以上含む環形態の単一結合の飽和炭化水素基をいい、環に含まれたヘテロ原子の数及び種類、及び炭素数によって例えば、環に含まれたヘテロ原子の数及び種類、及び炭素数によってN、O、及びSからなる群より選択される1種以上、具体的には1種乃至3種のヘテロ原子を含むC2-C8ヘテロシクロアルキル、C2-C10ヘテロシクロアルキル、またはC2-C5ヘテロシクロアルキル、さらに具体的にはアジリジン、ピロリジン、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、またはテトラヒドロピラニルなどがある。
【0039】
前記の用語“アリール(aryl)”は共有パイ電磁界を有している少なくとも1つのリングを有している芳香族置換体を意味し、モノシクリックまたは融合リングポリシクリック(即ち、炭素原子の隣接した対を分け取りにするリング)グループを含む。例えば、このようなアリールは環に含まれた炭素数によって、具体的にC4-C10アリール、より具体的にはC6-C10アリール、さらに具体的にはフェニル、ナフチルなどがある。
【0040】
前記の用語“ヘテロアリール”は環構成原子として炭素原子の以外にN、O、またはSのようなヘテロ原子を1つ以上含む芳香族環化合物をいい、例えば、環に含まれたヘテロ原子の数及び種類、及び炭素数によってN、O、及びSからなる群より選択される1種以上、具体的には1種乃至3種のヘテロ原子を含むC1-C10ヘテロアリール、より具体的にはC1-C8ヘテロアリール、C2-C10ヘテロアリール、またはC2-C5ヘテロアリールでありうる。
【0041】
前記アリールまたはヘテロアリールの例には、フェニル、ナフチル、フラニル、ピラニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、トリアジルなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるのではない。
【0042】
前記の用語“アリールオキシ”は芳香族置換体をなすいずれか1つの炭素と酸素と結合されたグループを意味し、例えば、フェニル基に酸素が結合されている場合、-O-C、-C-O-と表示することができる。
【0043】
本明細書のうち、“置換基”はハロ、ヒドロキシ、シアノ基、ニトロ基、非置換または置換されたアルキル基、非置換または置換されたアルケニル基、非置換または置換されたアルキニル基、非置換または置換されたアルコキシ基、非置換または置換されたアルコキシカルボニル基、非置換または置換されたシクロアルキル基、非置換または置換されたヘテロシクロアルキル基、非置換または置換されたアリール基、非置換及び置換されたヘテロアリール基からなる群より選択される1種以上、好ましくは1種乃至3種でありうる。具体的に、前記置換基は、ヒドロキシ、ハロ、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10アルコキシ、C-C10アルコキシカルボニル、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、及びC-C10ヘテロアリールからなる群より選択された1種以上でありうる。
【0044】
また、本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物を含むプロドラッグは、前記化学式1でQがCOであり、QがCOである場合を除外した化合物の一種類と見る。
【0045】
前記化学式1において、好ましくは、
【0046】
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-OR´、-CO(O)R´、化学式(1)の化合物が“A”の時、-CHA、または化学式(1)の化合物が“A”の時、-Aであり、この際、R´は水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R″であり、前記R´及びR´は各々独立的に水素またはC-Cアルキルであり、前記R″はC-Cアルキルであり;
【0047】
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-NR´R´、-(CR´R´-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR´R´-OR´、-(CR´R´(O)COR´、-CO(O)R´、-CONR´R´、-NR´R´、-NR´(C(O)R´)、化学式(1)の化合物が“A”の時、-Aであり、この際、R´及びR´は各々独立的に水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R″、またはR´及びR´は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R´及びR´は各々独立的に水素またはC-Cアルキルであり、前記R″はC-Cアルキルであり;
【0048】
は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルキル、C-C10アルケン、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、C-C10アリールオキシ、C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-Cヘテロアリール、-(CR´R´-NR´R´、-(CR´R´-C-Cヘテロシクロアルキル、-(CR´R´-OR´、-(CR´R´(O)COR´、-CO(O)R´、-CONR´R´、-NR´R´、-NR´(C(O)R´)、化学式(1)の化合物が“A”の時、-CHAであり、この際、R´及びR´は各々独立的に水素、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリール、-(CR´R´-C-C10アリールオキシ、-(CR´R´-C-C10ヘテロアリール、-CO(O)R″、またはR´及びR´は相互結合によりC-C10ヘテロシクロアルキルの環状構造、またはC-C10ヘテロアリールの環状構造をなすことができ、前記R´及びR´は各々独立的に水素またはC-Cアルキルであり、前記R″はC-Cアルキルである化学式1で表示される1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む慢性白血病の予防または治療用薬学組成物でありうる。
【0049】
また、前記化学式1の化合物をより具体的に例示すれば、下記の通りである。
【0050】
【化2】
【0051】
【化3】
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
また、前記化合物は下記で表現された化合物のうちの1つであることを特徴とする1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む慢性白血病の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0059】
【化10】
【0060】
本発明で、前記固形癌は胃癌、肝癌、結腸癌、乳癌、肺癌、非小細胞性肺癌、膵贓癌、皮膚癌、頭頚部癌、子宮癌、卵巣癌、大腸癌、小腸癌、直腸癌、前立腺癌、食道癌、リンパ線癌、膀胱癌、胆嚢癌、腎臓癌、及び脳腫瘍などからなる群より選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、前記癌は肺癌、子宮癌、肝癌、及び乳癌からなる群より選択される1種以上の癌でありうる。
【0061】
前記血液癌のうち、急性白血病は急性骨髄性白血病及び急性リンパ性白血病からなる群より選択される1種以上の癌でありうる。
【0062】
前記血液癌のうち、慢性白血病は慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病からなる群より選択される1種以上の癌でありうる。
【0063】
また、前記血液癌は既存の抗癌剤に対する抵抗性を有する薬剤耐性または難治性白血病でありうる。具体的に、このような薬剤耐性または難治性白血病は急性白血病に対する治療剤であるイダルビシンまたはシタラビンに抵抗性を有する薬剤耐性難治性急性白血病であるか、または慢性白血病に対する治療剤であるイマチニブに抵抗性を有する薬剤耐性慢性白血病でありうる。
【0064】
本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物の薬学的に許容可能な塩には、塩酸塩、硫酸塩、燐酸塩、臭化水素酸塩、ヨード化水素酸塩、硝酸塩、ピロ硫酸塩、メタ燐酸塩などの無機酸により形成された付加塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、アセト酸塩、トリふるおろあせと酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、グルタル酸塩、スルホン酸塩などの有機酸により形成された付加塩またはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩を挙げることができるが、これに制限されるのではない。
【0065】
本発明に従う薬学組成物は一般的に使われる薬学的に許容可能な担体と共に適合した形態に剤型化できる。“薬学的に許容可能”とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常的に胃腸障害、めまいなどのアレルギー反応またはこれと類似な反応を起こさない組成物をいう。また、前記組成物は各々通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤型、外用剤、坐剤、及び滅菌注射溶液の形態に剤型化して使われることができる。
【0066】
前記組成物に含まれることができる担体、賦形剤、及び希釈剤には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アラビアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニールピロリドン、水、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアル酸マグネシウム、及び鉱物油を含むことができるが、これに限定されるのではない。製剤化する場合には普通使用する充填剤、安定化剤、結合剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれて、このような固形製剤は本発明の化合物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、微結晶セルロース、スクロースまたはラクトース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤の以外に、ステアル酸マグネシウム、タルクのような滑沢剤も使われる。経口のための液状製剤には、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当されるが、よく使われる単純希釈剤である水、流動パラフィンの以外にいろいろな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使われることができる。坐剤の基剤には、ウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが使われることができる。非経口投与用剤型に製剤化するために前記化学式1の1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容される塩を滅菌され/されるか、または防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/又は緩衝剤などの補助剤、及びその他の治療的に有用な物質と共に水に混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアル単位投与型に製造することができる。
【0067】
本発明に開示された化学式1の化合物を有効成分に含む薬学組成物は、固形癌または血液癌の予防または治療のためにネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に多様な経路で投与できる。投与の全ての方式は予想できるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与できる。投与量は治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与時間、投与経路、薬物の吸収、分布及び排泄率、使われる他の薬物の種類及び処方者の判断などによって変わる。このような因子に基づいた投与量の決定は当業者の水準内にあり、一般的に投与量は0.01mg/kg/日乃至略2000mg/kg/日の範囲である。より好ましい投与量は1mg/kg/日乃至500mg/kg/日である。投与は1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することができる。前記投与量は如何なる面でも本発明の範囲を限定するのではない。
【発明の効果】
【0068】
本発明は1,2-ナフトキノン誘導体化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分に含む固形癌、または急性白血病または慢性白血病のような血液癌の予防または治療用薬学組成物に関するものであって、前記1,2-ナフトキノン誘導体化合物を固形癌、急性白血病、及び慢性白血病、そして薬剤耐性/難治性白血病細胞株に処理する場合、細胞を死滅する効果が優れて前記癌腫に対する予防または治療用薬学組成物に有用に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の化合物を処理する場合、急性骨髄性白血病KG1細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図2】本発明の化合物を処理する場合、難治性急性骨髄性白血病KG1a細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図3】本発明の化合物を処理する場合、慢性骨髄性白血病K562細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図4】本発明の化合物を処理する場合、慢性骨髄性白血病イマチニブ抵抗性K562R細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図5】A549(肺癌腫)及びHela(子宮癌腫)に本発明の化合物99、163、191、及び192を処理して、A549(肺癌腫)及びHela(子宮癌腫)細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図6】本発明の化合物を処理する場合、肺癌腫A549細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図7】本発明の化合物を処理する場合、子宮癌腫Hela細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図8】本発明の化合物を処理する場合、乳癌腫MCF7細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
図9】本発明の化合物を処理する場合、肝癌腫HepG2細胞に対する細胞生存率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明はここで説明される実施形態に限定されず、他の形態に具体化されることもできる。むしろ、ここで紹介される内容が徹底し、完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0071】
<実施形態1.1,2-ナフトキノン誘導体化合物の合成>
急性白血病、慢性白血病、及び固形癌に対する治療効果を確認するために使われた本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物は、特許文献7~11に開示された化合物の合成方法を参考して化合物99乃至174及び191乃至234を合成した。また、前記過程を通じて製造した化合物のうち、化合物151~161、172~174、230~234に対する物理化学的特性は、下記表1乃至表3の通りである。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
<実施形態2.急性白血病細胞株の製造及びその細胞生存率測定>
実施形態2-1.急性白血病細胞株の製造
急性白血病は原因因子が非常に多様に明らかになっており、構築された細胞株も多様であるので、特定タイプの急性白血病の治療剤でない広範囲な治療剤への使用可能性を確認するために、本発明では急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)の59歳男性から得られた細胞株であるKG1細胞から幹細胞の表現型を有する細胞のみを選んで構築したKG1α細胞を用いた。
【0076】
KG1α細胞は20%FBS(fetal bovine serum)が含まれたIMDM培地で培養された。全ての細胞は37℃、5%CO条件のインキュベータで培養し、2日または3日に1回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0077】
実施形態2-2.KG1α細胞での細胞生存率測定WST assay
KG1α細胞は急性骨髄性白血病治療剤であるイダルビシンとシタラビンに抵抗性を有する細胞で、難治性急性白血病(refractory AML)細胞である。前記実施形態2-1で培養したKG1α細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%CO条件のインキュベータで16時間以上培養した。以後、前記実施形態1で合成した化合物のうち、以下の表4のように化合物99及び163を各々0.1~3μM濃度で処理した後、24時間の間培養し、この際、対照群(Control、以下“CTL”とも称する;図面参照)にはDMSOを使用した。24時間後、各細胞にWST溶液を10μlずつ処理し、2時間の間反応した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定して下記の表4のようにKG1α細胞の細胞生存率を確認した。
【0078】
【表4】
【0079】
前記表4は、KG1α細胞で、対照群対比本発明の化合物99及び163を処理する場合の細胞生存率を示したものであって、IC50値が0.5~1μMで表れて急性骨髄性細胞の死滅効果が優れたことを確認することができた。
【0080】
実施形態2-3.KG1α細胞での細胞生存率測定-CCK-8 assay
ミトコンドリア内で反応して細胞の数を定量する方法であるCCK-8 assayによるKG1α細胞での生存率を測定するために、急性骨髄性白血病細胞であるKG1細胞とその細胞で幹細胞の表現型を有する細胞のみを選んで構築したKG1α細胞を用いた。
【0081】
KG1α及びKG1細胞は20%のFBS(fetal bovine serum)が含まれたIMDM培地で培養された。全ての細胞は37℃、5%のCO条件のインキュベーターで培養し、2日または3日に1回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0082】
KG1細胞及びKG1α細胞の各々を96ウェルプレートに2×10/ウェルで培養した後、DMSOに溶かした本発明の化合物を1/2000の割合で最終濃度が5μMになるように12時間の間処理した。以後、CCK-8薬物(Dojindo Molecular Technologies, Inc., MD, USA)をウェル当たり10μlず入れた後、30分後、microreader器MultiSkan Ascent microplate spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific, Inc.)で450nm、595nmフィルタを用いて吸光度を測定した。
【0083】
DMSOのみ処理した群を対照群とし、この対照群の結果を100%にした時を基準に、本発明の化合物を処理することによる細胞の生存率を確認して、その結果を図1及び2に示した。
【0084】
図1及び図2で確認できるように、既存に知られたベータ-ラパコン(β-lapachone)に対比して本発明の化合物は急性骨髄性白血病細胞で卓越した抗癌効果を見せることを確認しており、特に難治性急性白血病(refractory AML)であるKG1α細胞でさらに卓越した効果を示すことを確認した。
【0085】
<実施形態3.慢性白血病細胞株の製造及びその細胞生存率測定>
実施形態3-1.慢性白血病細胞株の製造
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)の53歳女性から得られたK562細胞は10%のFBS(fetal bovine serum)が含まれたRPMI培地を使用して、37℃、5%のCO条件のインキュベーターで培養しており、2日に1回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0086】
実施形態3-2.慢性白血病細胞における細胞生存率測定-WST assay
前記実施形態3-1で培養したK562細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%のCO条件のインキュベーターで16時間以上培養した。以後、前記実施形態1-1で合成した化合物のうち、化合物99、163、191、及び192を0.1~5μM濃度で処理した後、4時間の間培養しており、この際、対照群にはDMSOを使用した。培養4時間後、各細胞に10μlのWST溶液を加えて2時間の間反応を実施した後、multi-scan機械で450nmで吸光度を測定してK562細胞の細胞生存率を下記の表5に示した。
【0087】
【表5】
【0088】
前記表5を参考すると、K562細胞で、対照群対比本発明の化合物99、163、191、及び192を処理する場合、IC50値が1~2μMに表れて慢性骨髄性白血病細胞の死滅効果が優れたことを確認した。
【0089】
実施形態3-3.K562及びK562R細胞での細胞生存率測定-CCK-8 assay
ミトコンドリア内で反応して細胞の数を定量する方法であるCCK-8 assayによる慢性骨髄性白血病細胞での生存率を測定するために、慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞と、イマチニブ(imatinib)1μMを添加した培地で育てイマチニブ抵抗性を有するように作った細胞株であるK562R細胞を用いた。K562細胞及びK562R細胞は10%のFBS(fetal bovine serum)が含まれたRPMI培地を使用して、37℃、5%のCO条件のインキュベーターで培養しており、2日に1回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0090】
各細胞を96ウェルプレートに2×10/ウェルに培養した後、DMSOに溶かした本発明に従う化合物を1/2000の割合で最終濃度が5μMになるように12時間の間処理した。
【0091】
以後、CCK-8薬物をウェル当たり10μlずつ入れた後、30分後、microreader器で450nm、595nmフィルタを用いて吸光度を測定した。
【0092】
DMSOのみ処理した群を対照群とし、この対照群の結果を100%にした時を基準に、本発明の化合物を処理することによる細胞の生存率を確認して、その結果を図3及び図4に示した。
【0093】
図3及び図4に示すように、既存に知られたβ-lapachoneに対比して見た結果、本発明に従う化合物は慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞だけでなく、1次慢性白血病治療剤であるイマチニブに抵抗性を有するK562R細胞株でも卓越した生存率抑制効果を示すところ、慢性白血病に対する卓越した抗癌効果を見せることを確認することができた。
【0094】
<実施形態4.固形癌細胞株の製造及びその細胞生存率測定>
実施形態4-1.固形癌細胞株の製造
固形癌の治療剤としての使用可能性を確認するために、肺癌腫(lung carcinoma)の58歳男性から得られたA549細胞株、子宮癌腫(cervix adenocarcinoma)の31歳女性から得られたHela細胞株、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)の15歳男児から得られたHepG2細胞株、乳癌腫(breast adenocarcinoma)の69歳女性から得られたMCF7細胞株、そして固形癌細胞株と比較のために定常状態の肺から得られたBeas-2B細胞株を使用した。
【0095】
前記A549(肺癌腫)、Hela(子宮癌腫)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌腫)、及びBeas-2B(正常肺)細胞株は10%のFBSが含まれたDMEM培地を使用しており、37℃、5%のCO条件のインキュベーターで2日に1回ずつ継代培養して実験に使用した。
【0096】
実施形態4-2.固形癌細胞で細胞生存率測定-WST assay
前記実施形態4-1で培養したA549(肺癌腫)、Hela(子宮癌腫)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌腫)、及びBeas-2B(正常肺)細胞を96-ウェルプレートに1×10細胞/ウェルで接種した後、細胞の安定化のために37℃、5%のCO条件のインキュベーターで16時間以上培養した。以後、前記実施形態1-1で合成した化合物のうち、化合物99、163、191、及び192を1~30μM濃度で処理した後、6時間の間培養しており、この際、対照群にはDMSO及びβ-lapachoneを使用した。培養4時間後、各細胞に10μlのWST溶液を加え、2時間の間反応を実施した後、 multi-scan機械で450nmで吸光度を測定してA549(肺癌腫)、Hela(子宮癌腫)、HepG2(肝細胞癌腫)、及びMCF7(乳癌腫)細胞の細胞生存率を下記の表6及び図5に示した。
【0097】
【表6】
【0098】
前記表6及び図5を参考すると、A549(肺癌腫)、Hela(子宮癌腫)、HepG2(肝細胞癌腫)、MCF7(乳癌腫)、及びBeas-2B(正常肺)細胞で、対照群対比本発明の化合物99、163、191、及び192を6時間の間処理する場合、β-lapachoneと類似の死滅効果を示して、本発明の化合物が固形癌に治療効果があることを確認することができた。
【0099】
また、前記表6には示してはいないが、本発明の化合物を正常肺細胞株であるBeas-2Bに処理する場合、平均的に80%以上の細胞生存率を示したが、肺癌腫であるA549に処理する場合には50%程度の細胞生存率を示した。ここに、本発明の1,2-ナフトキノン誘導体化合物は、正常細胞には細胞毒性を表さないが、癌細胞に特異的に細胞死滅効果を示すので、多様な固形癌の治療用組成物に有用に使用できることを確認することができる。
【0100】
実施形態4-3.固形癌細胞での細胞生存率測定-CCK-8 assay
ミトコンドリア内で反応して細胞の数を定量する方法であるCCK-8 assayによる多様な固形癌細胞での生存率を測定するために、肺癌細胞株であるA549、子宮頚部癌細胞株であるHeLa、乳癌細胞株であるMCF7、肝癌細胞株であるHepG2細胞を用いた。
【0101】
各細胞を96ウェルプレートに2×10/ウェルで培養した後、DMSOに溶かした本発明に従う化合物を1/2000の割合で最終濃度が5μMになるように12時間の間処理した。
【0102】
以後、CCK-8薬物をウェル当たり10μlずつ入れた後、30分後microreader器で450nm、595nmフィルタを用いて吸光度を測定した。
【0103】
DMSOのみ処理した群を対照群とし、この対照群の結果を100%にした時を基準に、本発明の化合物を処理することによる細胞の生存率を確認して、その結果を図6乃至図9に示した。
【0104】
図6乃至図9に示すように、既存に知られたβ-lapachoneに対比して見た結果、本発明に従う化合物は肺癌細胞株であるA549、子宮頚部癌細胞株であるHeLa、乳癌細胞株であるMCF7、肝癌細胞株であるHepG2細胞に対する卓越した生存率抑制効果を示すところ、多様な固形癌に対する卓越した抗癌効果を見せることを確認することができた。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9