(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】癌の予後と診断における放射性標識抗PD-L1ナノボディの応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220118BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220118BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K51/10 200
A61K51/10 100
A61K47/68
A61P35/00
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2020515063
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2018105524
(87)【国際公開番号】W WO2019052508
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】201710822409.5
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519454936
【氏名又は名称】ナノマブ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOMAB TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】9/F Tung Ning Bld,249-253 Des Voeux Road,Centra,Hong Kong,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ティン,ホン ホイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チュン リム
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/020802(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/071447(WO,A2)
【文献】Cell Discovery (2017) Vol.3, No.17004, pp.1-12
【文献】Oncotarget (2017) Vol.8, No.26, pp.41932-41946
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫複合体であって、
(a)
VHH鎖を含む抗PD-L1ナノボディであって、VHH鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.:1-3のいずれかの一つに示される、
前記抗PD-L1ナノボディ、および
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、
抗体Fcフラグメント、抗体scFvフラグメント、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、および細胞からなる群から選択されるカップリング部分
を含む、前記免疫複合体。
【請求項2】
前記放射性核種が、
(i)Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される診断用同位体、および/または
(ii)Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra
-223、Ru-106、Na
-24、Sr
-89、Tb-149、Th-227、Xe-133、Yb-169、Yb-177およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療用同位体
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項3】
前記薬物が、細胞毒性薬物であり、
前記細胞毒性薬物が、抗チューブリン薬物、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、
およびビンカアルカロイド
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項4】
前記毒素が、オーリスタチン系(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAEとMMAF)、オーレオマイシン、メタンソール(methanesol)、リシン、リシンA-鎖、コンブレタスタチン、ズオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クルシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤および糖質コルチコイド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の免疫複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の免疫複合体および
検出のための許容される担体を含む、PD-L1
検出試薬
であって、検出のための許容される担体は、非毒性の不活性水性担体媒体である、前記検出試薬。
【請求項6】
同位体トレーサー、造影剤、
フローサイトメトリー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子およびイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬であることを特徴とする、請求項5に記載の検出試薬。
【請求項7】
請求項1に記載の免疫複合体および薬学的に許容される担体を含む、薬物組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の免疫複合体および取扱説明書を含む、PD
-L1
発現を検出するためのキット。
【請求項9】
請求項1に記載の免疫複合体の
使用であって、
(a)生体内でPD-L1
を検出するための検出試薬、検出キットまたは検出プレート、および/または
(b)PD-L1
を発現する腫瘍を治療または予防するための薬物組成物
の調製
のための、前記
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学またはバイオイメージングの技術分野に関し、より具体的には、癌の予後と診断における放射性標識抗ナノボディの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
PD-1及びそのリガンドPD-L1は、腫瘍免疫の重要な標的であり、モノクローナル抗体を使用してPD-1、PD-L1経路を遮断することが近年注目を集めている。PD-1、PD-L1は、一対の免疫抑制分子であり、自己免疫疾患を防ぐための免疫系の重要な組成部分であり、その経路の活性化は、腫瘍免疫応答を阻害し、腫瘍特異的T細胞アポトーシスを誘発する作用を有し、腫瘍の発達と密接に関係する。PD-1(CD279)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するI型膜貫通タンパク質であり、主に活性化CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞などに発現する。そのリガンドPD-L1(B7-H1、CD274とも呼ばれる)は、B7ファミリーに属し、腫瘍浸潤免疫細胞(TIC)、及び悪性黒色腫、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮癌などのさまざまな悪性細胞で高く発現する。臨床試験では、PD-1、PD-L1モノクローナル抗体は良好な有効性と安全性を示した。米国FDAは、黒色腫、非小細胞肺がん、進行腎細胞癌の治療のための抗PD-1、PD-L1モノクローナル抗体を承認しており、さまざまな抗PD-1、PD-L1モノクローナル抗体の臨床試験が進行中である。
【0003】
PD-L1の発現をアップレギュレートすることにより、腫瘍は体の免疫系の認識と殺害を回避し、臨床検体は、さまざまな悪性腫瘍組織及びTICでのPD-L1の高発現が、がん患者の予後不良と高度に相関していることを実証している。PD-1、PD-L1モノクローナル抗体は、さまざまな悪性腫瘍の臨床試験で良好な治療効果を示しましたが、全体的な反応率は約20%に過ぎず、臨床反応のある患者のほとんどは治療前のTICまたは腫瘍細胞PD-L1高発現患者である。したがって、さまざまなPD-1、PD-L1モノクローナル抗体は、患者をスクリーニングし、治療の臨床的効果を改善するために、腫瘍患者のブロッキング治療を受ける前に、生検腫瘍組織のPD-L1発現レベルを検出する必要があり、現在、患者の組織におけるPD-L1発現の検出は、依然として組織穿刺IHC法に依拠している。PD-L1は動的バイオマーカーであり、その発現レベルは治療中に時間とともに変化するため、従来の組織穿刺法には実際に多くの欠点がある。したがって、より効果的な診断方法を開発し、原発腫瘍と転移腫瘍を同時に検出し、動的バイオマーカーであるPD-L1をリアルタイムで非侵襲的に検出及び定量化し、治療に適した患者を選択し、治療効果を監視し、治療計画を最適化することが急務である。
【0004】
ナノボディは現在、分子量が通常の抗体の約1/10の既知の最小の抗体分子であり、最初はベルギーの科学者Hamers、Rがラクダの血液で発見され、非常に興味深い工程化抗体製品である。ナノ抗体は、モノクローナル抗体の抗原反応性に加えて、低分子量、強力な安定性、良好な溶解性、簡単な発現、弱い免疫原性(ヒトタンパク質配列と70%以上類似)、強力な浸透性、強力なターゲティング、単純な人間化、および低い準備コストなどのいくつかのユニークな機能特性を持つ。ナノボディはその特別な構造により、放射性同位元素を標的とする担体として、腫瘍組織に迅速かつ特異的に浸透して標的に結合することができるが、非結合抗体は血液から迅速に除去され、身体の放射線量を減らし、トレーサーとしての従来の抗体よりも多くの明らかな利点がある。
【0005】
しかし、現在、当該技術分野におけるPD-L1の臨床的検出のための満足できるナノボディの欠如がある。したがって、当技術分野では、PD-L1に対して有効な新しい特定のナノボディを開発することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、PD-L1に対して有効な特異的ナノボディを提供することである。
より具体的に、本発明の目的は、PD-L1のナノボディ結合同位体標識に対するPD-L1発現を非侵襲的に検出するための応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、
(a)VHH鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.:1-3のいずれかの一つに示される抗PD-L1ナノボディのVHH鎖または前記VHH鎖を有する抗PD-L1ナノボディと、及び
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素抗体、抗体Fcフラグメント、抗体scFvフラグメント、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、または細胞からなる群から選択されるカップリング部分とを含む免疫複合体を提供する。
【0008】
別の好ましい例において、前記VHH鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:2に示された通りである。
別の好ましい例において、前記抗PD-L1ナノボディとPD-L1の結合は、PD-1とPD-L1の結合を遮断しない。
別の好ましい例において、前記抗PD-L1ナノボディは、PD-L1上のPD-1結合領域以外の領域に結合する。
別の好ましい例において、前記カップリング部分は、放射性核種である。
【0009】
別の好ましい例において、前記放射性核種は、
(i)Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される診断用同位体、および/または
(ii)Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra223、Ru-106、Na24、Sr89、Tb-149、Th-227、Xe-133、Yb-169、Yb-177またはそれらの組み合わせからなる群から選択される治療用同位体を含む。
【0010】
別の好ましい例において、前記薬物は、細胞毒性薬物である。
別の好ましい例において、前記細胞毒性薬物は、
抗チューブリン薬物、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどからなる群から選択される。
【0011】
特に有用な細胞毒性薬物系の例は、例えば、DNA小溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、例えば、オーリスタチン(auristatins)、カンプトテシン(camptothecins)、デュオカルマイシン(duocarmycins)、エトポシド(etoposides)、メイタンシン(maytansines)及びメイタンシノイド(maytansinoids)(例えば、DM1及びDM4)、タキサン(taxanes)、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)またはベンゾジアゼピンを含有する薬物(benzodiazepine containing drugs)(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBDs)、インドリノベンゾジアゼピン(indolinobenzodiazepines)及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン(oxazolidinobenzodiazepines))、ビンカアルカロイド(vinca alkaloids)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0012】
別の好ましい例において、前記毒素は、
オーリスタチン系(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAE和MMAF)、オーレオマイシン、メタンソール(methanesol)、リシン毒素、リシン毒素A-鎖、コンブレタスタチン、ズオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クルシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイド、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
別の好ましい例において、前記免疫複合体は、多価(例えば、二価)の前記VHH鎖または前記VHH鎖を有する抗PD-L1ナノボディを含む。前記多価とは、前記免疫複合体のアミノ酸配列が複数の重複の前記VHHまたは前記抗PD-L1ナノボディを含むことを意味する。
別の好ましい例において、前記免疫複合体は、癌の予後、診断におけるPD-L1の発現レベルを検出するために使用される。
別の好ましい例において、前記検出は生体内検出である。
別の好ましい例において、前記免疫複合体は、PD-L1タンパク質を発現する(即ち、PD-L1陽性)腫瘍を治療または予防するために使用される。
【0014】
本発明の第2の態様では、PD-L1タンパク質検出試薬を提供し、前記検出試薬は、本発明の第1の態様に記載の免疫複合体及び検出学的許容される担体を含む。
別の好ましい例において、前記免疫複合体のカップリング部分は、診断用同位体である。
別の好ましい例において、前記検出学的許容される担体は、非毒性の不活性水性担体媒体である。
別の好ましい例において、前記検出試薬は、同位体トレーサー、造影剤、フローサイトメトリー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子およびイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬である。
【0015】
別の好ましい例において、前記検出試薬は、造影剤であり、前記造影剤は、イメージング用の他の製剤をさらに含む。
別の好ましい例において、前記造影剤は、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピュータ断層撮影技術)に使用される造影剤である。
別の好ましい例において、前記イメージング剤は、Ga-68およびGdなどの2つまたは複数の信号を同時にキレートし、PET/CTおよびMRIに使用され、またはTc-99mおよび蛍光剤は、同時にSPECT/CTおよび蛍光検出に同時に使用される。
別の好ましい例において、前記検出試薬は、生体内検出に使用される。
別の好ましい例において、前記検出試薬の剤形は、液体または粉末状(例えば、水剤、注射剤、凍結乾燥粉末、錠剤、バッカル剤、エアロゾル剤)である。
【0016】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様に記載の免疫複合体及び薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。
別の好ましい例において、前記免疫複合体のカップリング部分は、薬物、毒素、および/または治療用同位体である。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、細胞毒性薬物などの腫瘍を治療する他の薬物をさらに含む。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、PD-L1タンパク質(即ち、PD-L1陽性)を発現する腫瘍を治療または予防するために使用される。
別の好ましい例において、前記腫瘍は、胃がん、リンパ腫、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、または副腎腫瘍を含む。
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、注射剤である。
【0017】
本発明の第4の態様では、本発明第1の態様に記載の免疫複合体と取扱説明書を含むPD-L1分子を検出するためのキットを提供する。
別の好ましい例において、前記取扱説明書には、前記キットは、検出対象のPD-L1の発現を非侵襲的に検出するために使用されることが記載されている。
別の好ましい例において、前記キットは、PD-L1タンパク質(即ち、PD-L1陽性)を発現する腫瘍を検出するために使用される。
【0018】
本発明の第5の態様では、(a)生体内でPD-L1分子を検出するための検出試薬、検出キットまたは検出プレートと、(b)PD-L1タンパク質(即ち、PD-L1陽性)を発現する腫瘍を治療または予防するための薬物組成物とを調製する本発明の第1の態様に記載の免疫複合体を提供する。
本発明の別の態様において、生体内でPD-L1分子を検出するための造影剤を調製する本発明の第1の態様に記載の免疫複合体の用途を提供する。
【0019】
本発明の第6の態様では、抗PD-L1ナノボディのVHH鎖を提供し、前記VHH鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:1-3のいずれかの一つに示されるとおりである。
別の好ましい例において、前記PD-L1は、ヒトPD-L1である。
なお、フレーム領域FRと相補性決定領域CDRを含み、ここで、前記CDRは、SEQ ID NO.:1-3のいずれか1つの配列のうち対応するCDR1、CDR2及びCDR3と、および前記CDR1-3により分離されたFR1、FR2、FR3及びFR4とを含む抗PD-L1ナノボディのVHH鎖をさらに提供する。
【0020】
なお、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、3つのCDRは、SEQ ID NO.:1-3のいずれか1つの配列のうち対応するCDR1、CDR2及びCDR3を含む抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域をさらに提供する。
別の好ましい例において、前記3つのCDRは、表2に示されたCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0021】
本発明の第7の態様では、PD-L1エピトープに対するナノボディであり、SEQ ID NO.:1-3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列のVHH鎖を有する抗PD-L1ナノボディを提供する。
【0022】
本発明の第8の態様では、第6の態様に記載の抗PD-L1ナノボディのVHH鎖、または第7の態様に記載の抗PD-L1ナノボディからなる群から選択されるタンパク質をコードするポリヌクレオチド(polynucleotide)を提供する。
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含む。
【0023】
本発明の第9の態様では、第8の態様に記載のポリヌクレオチドを含む発現担体を提供する。
【0024】
本発明の第10の態様では、第9の態様に記載の発現担体を含むか、第8の態様に記載のポリヌクレオチドがそのゲノムに組み込まれる宿主細胞を提供する。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞を含む。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌、酵母細胞からなる群から選択される。
【0025】
本発明の第11の態様では、
ナノボディの生成に適した条件の下で、第10の態様に記載の宿主細胞を培養して、前記抗PD-L1ナノボディを含む培養物を獲得するステップ(a)と、及び
前記培養物から前記抗PD-L1ナノボディを分離または回収するステップ(b)とを含む抗PD-L1ナノボディの生成方法を提供する。
別の好ましい例において、前記抗PD-L1ナノボディは、SEQ ID NO.:1-3に示されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
本発明の第12の態様では、本発明のナノボディまたは免疫複合体を必要とする対象に投与する疾患を治療する方法を提供する。
別の好ましい例において、前記対象は、ヒトのような哺乳動物を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術的特徴および以下(例えば、実施例)に具体的に説明する各技術的特徴を互いに組み合わせて、新規または好ましい技術的解決手段を形成することができることを理解されたい。スペースの制限のため、ここでは繰り返しない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】抗PD-L1ナノボディの精製図を示した。レーンMは分子量標準であり、レーン1-2はそれぞれSEQ ID NO.:1-2に示されるアミノ酸配列のナノボディに対応する。
【
図2】異なる抗原に対する抗PD-L1ナノボディのELISA結果の棒グラフを示した。ロッド1-2はそれぞれSEQ ID NO.:1-2に示されるアミノ酸配列のナノボディに対応する。
【
図3】PD-L1過剰発現腫瘍を有するマウスにおけるI-125マーカーPD-L1ナノボディのSPECT-CTイメージングの結果を示した。EQ ID NO.:1-2ナノボディは、PD-L1過剰発現腫瘍の効果的な蓄積に効果的であり、同時に非結合抗体は腎臓及び膀胱を介して血液から迅速に除去できる。
【0029】
【
図4】抗PD-L1ナノボディのHPLCスペクトルを示した。マウス血清とヒト血清をそれぞれ異なる時間インキュベートした後の抗PD-L1ナノボディの含有量と組成に対応して測定し、抗PD-L1ナノボディの安定性を示した。
【
図5】PD-L1を過剰発現している担癌マウスにおける99m-TcマーカーPD-L1ナノボディのSPECT-CTイメージングの結果を示した。ナノボディは腫瘍のPD-L1発現を明確に識別でき、非結合抗体は腎臓及び膀胱を介して血液から迅速に除去できる。
【
図6】SEQ ID NO.:1-3のアミノ酸配列の比較図を示し、ここで赤でマークされた領域はCDR領域である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
注:図面中のSEQ NO.とSEQ ID NO.は同じ意味を有し、両方とも配列リストの配列番号を表す。
本発明者は、広範囲にわたる綿密な研究により、PD-L1分子を検出するための免疫複合体を初めて発見し、前記免疫複合体は、特定の抗PD-L1ナノボディのVHH鎖と放射性核種を含み、また本発明の抗PD-L1ナノボディとPD-L1の結合は、PD-1とPD-L1の結合を遮断せず、試験対象のPD-L1発現の非侵襲的検出に使用できる。本発明の免疫複合体は、小さいサイズおよび高い特異性を有し、原発性腫瘍および転移性腫瘍を同時に標的化する全身検出に適し、精度が高く、放射線量が少ない。本発明はこれに基づいて完成された。
【0031】
用語
本明細書で使用される用語「本発明のナノボディ」、「本発明の抗PD-L1ナノボディ」、「本発明PD-L1ナノボディ」は互換的に使用されることができ、すべてPD-L1(ヒトPD-L1を含む)を特異的に認識して結合するナノボディを指し、また本発明の抗PD-L1ナノボディとPD-L1の結合は、PD-1とPD-L1の結合を遮断しない。特に好ましいのは、VHH鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:1-3のいずれかの一つに示されるナノボディである。
本発明の各VHH鎖のアミノ酸配列は以下に示したとおりであり、ここで、下線が引かれた領域はCDR領域を表す。
【0032】
SEQ ID NO.1:
QVQLQESGGGSVQTGGSLRLSCAASTSIYSNNYMAWFSQAPGKGREGVAAVYIDDGRPYYADSVKGRFTISLDSAKNTVYLQMNRLKPEDTAMYYCAAAPGPLSHNYWYTSANYDYWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO.2:
QVQLQESGGGSVQAGGSLRLSCAASGYTYSSDGMGWFRQTPGKEREGVAAISPTGRRTEYADSVKGRFTISRDNNKNMLSLQMNSLKPEDTGMYYCAREGSWSFSLANSAVRSWGQGTQVTVSS
SEQ ID NO.3:
QVQLQESGGGSVQTGGSLRLSCTASTSIYSNNYMAWFSQSPGKGREGVAAVYMDDGRPYYADSVKGRFTISLDSAKNTMYLQMNSLKPEDTAMYYCAAAPGPLSRNYWYTSANYDYWGQGTQVTVSS
【0033】
本発明のナノボディのアミノ酸に対して配列アラインメントを実行し、結果は
図6に示したように、本発明のナノボディ間の違いは主にCDR領域にある。ここで、SEQ ID NO.:1に示されるナノボディおよびSEQ ID NO.:3に示されるナノボディは、>95%の相同性を有する。
【0034】
本明細書で使用される用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、2つの同じ軽鎖(L)および2つの同じ重鎖(H)からなる、同じ構造特性を有する約150000ダルトンのヘテロテトラグリカンタンパク質である。各軽鎖は共有ジスルフィド結合を介して重鎖に接続され、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は異なる。各重鎖と軽鎖にも、一定の間隔で鎖内ジスルフィド結合がある。各重鎖の一端に可変領域(VH)があり、その後に複数の定常領域が続く。各軽鎖の一端に可変領域(VL)があり、他端に定常領域があり、軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域の反対側にあり、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域の反対側にある。特別なアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変領域間に界面を形成する。
【0035】
本明細書で使用される用語「単一ドメイン抗体(VHH)」、「ナノボディ」(nanobody)は、同じ意味を有し、抗体重鎖の可変領域をクローンすることを指し、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築し、これは完全な機能を持つ最小の抗原結合フラグメントを有する。通常、軽鎖および重鎖の定常領域1(CH1)を自然欠缺の抗体を最初に取得した後、抗体の重鎖の可変領域をクローニングして、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体(VHH)を構築する。
【0036】
本明細書で使用される用語「可変」は、抗体の可変領域のある部分が配列で異なり、その特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合および特異性を形成することを意味する。しかし、可変性は抗体の可変領域全体に均等に分布されていない。相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる軽鎖および重鎖の可変領域の3つのフラグメントに集中している。可変領域のより保存された部分は、フレーム領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ4つのFR領域を含み、それらは一般に-折り畳まれた構成で、3つのCDRで連結されて連結ループを形成し、場合によっては部分的な折り畳まれた構造を形成する。各鎖のCDRはFR領域によって密接に結合され、他の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位を形成する(Kabatら、NIH Publ. No. 91-3242、巻I、647-669ページ(1991)を参照)。定常領域は、抗体と抗原の結合には直接関与しないが、抗体に関与する抗体依存性細胞毒性などの異なるエフェクター機能を示す。
【0037】
当業者に知られているように、免疫複合体および融合発現産物は、薬物、毒素、サイトカイン(cytokine)、放射性核種、酵素、および他の診断または治療分子と本発明の抗体またはそのフラグメントが結合することにより形成すされる複合体を含む。本発明はまた、前記抗PD-L1タンパク質抗体またはそのフラグメントに結合した細胞表面マーカーまたは抗原を含む。
本明細書で使用される用語「重鎖可変領域」と「VH」は、互換的に使用されることができる。
【0038】
本明細書で使用される用語「可変領域」と「相補性決定領域(complementarity determining region,CDR)」は、互換的に使用されることができる。
本発明の一好ましい実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。
本発明の一好ましい実施形態において、前記抗体の重鎖は、前記重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。
【0039】
本発明において、用語「本発明の抗体」、「本発明のタンパク質」、または「本発明のポリペプチド」は、互換的に使用されることができ、重鎖可変領域を有するタンパク質またはポリペプチドなどのPD-L1タンパク質に特異的に結合するポリペプチドを指す。それらは出発メチオニンを含んでも含まなくてもよい。
本発明は、本発明の抗体を有する他のタンパク質または融合発現産物をさらに提供する。具体的に、本発明は、可変領域を含む重鎖を有する任意のタンパク質複合体及び融合発現産物(即ち、免疫複合体および融合発現産物)を含み、前記可変領域と本発明の抗体の重鎖可変領域が同一であるか、少なくとも90%相同であり、好ましくは、少なくとも95%相同である。
【0040】
一般に、抗体の抗原結合特性は、可変領域(CDR)と呼ばれる重鎖の可変領域にある3つの特定の領域によって説明することができる。前記セグメントを、4つのフレーム領域(FR)に分け、4つのFRのアミノ酸配列は、比較的保存的で、結合反応に直接関与しない。これらのCDRはループ構造を形成し、それらの間のFRによって形成されるβ折り畳みは、空間構造において互いに近接し、重鎖のCDRと対応する軽鎖の対応するCDRは抗体の抗原結合部位を構成する。同じタイプの抗体のアミノ酸配列を比較して、どのアミノ酸がFRまたはCDR領域を構成するかを決定することができる。
【0041】
本発明の抗体の重鎖の可変領域は、それらの少なくとも一部が抗原の結合に関与しているため、特に興味深い。従って、本発明は、そのCDRが本明細書で同定されたCDRと90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)相同である限り、CDRを持つ抗体重鎖可変領域を有する分子を含む。
本発明は、完全な抗体だけでなく、免疫活性を有する抗体のフラグメントまたは抗体と他の配列によって形成された融合タンパク質をさらに含む。したがって、本発明は、前記抗体のフラグメント、誘導体、および類似体をさらに含む。
【0042】
本明細書で使用される用語「フラグメント」、「誘導体」および「類似体」は、本発明の抗体と同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチドフラグメント、誘導体または類似体は、(i)1つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド、ここで、そのような置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされていてもいなくてもよい、または(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(iii)成熟ポリペプチドと、別の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどのポリペプチドの半減期を延長する化合物)との融合によって形成されるポリペプチド、または(iv)追加のアミノ酸配列をこのポリペプチド配列に融合することにより形成されたポリペプチド(例えば、リーダー配列または分泌配列、またはこのポリペプチドまたはタンパク質を精製するために使用される配列、または6Hisタグと形成された融合タンパク質)であることができる。本明細書の教示によれば、これらのフラグメント、誘導体、および類似体は、当業者に知られている範囲内にある。
【0043】
本発明の抗体は、PD-L1タンパク質結合活性を有し、前記CDR領域を含むポリペプチドを指す。この用語は、本発明の抗体と同じ機能を有する前記CDR領域を含むポリペプチドのバリアントをさらに含む。これらのバリアントは、以下を含む(ただし、これらに限定されない)。1つまたは複数(通常は1個-50個、好ましくは1個-30個、より好ましくは1個-20個、最も好ましくは1個-10個)のアミノ酸欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端に1つまたは複数(通常20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸を付加。例えば、当該技術分野において、近接または類似の特性を有するアミノ酸で置換する場合、一般にタンパク質の機能を変化させない。別の例として、C末端および/またはN末端に1つまたは複数のアミノ酸を追加しても、通常、タンパク質の機能は変わらない。当該用語は、本発明の抗体の活性フラグメントおよび活性誘導体をさらに含む。
【0044】
前記ポリペプチドのバリアントは、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然変異体、誘導変異体、および高または低ストリンジェンシー条件下で本発明の抗体のコードDNAとハイブリダイズできるDNAにコードされたタンパク質、および本発明の抗体に対する抗血清を使用して得られたポリペプチドまたはタンパク質を含む。
本発明は、ナノボディまたはそのフラグメントを含む融合タンパク質などの他のポリペプチドをさらに提供する。ほぼ全長のポリペプチドに加えて、本発明は、本発明のナノボディのフラグメントをさらに含む。一般に、前記フラグメントは、本発明の抗体の少なくとも約50個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも約50個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも約80個の連続したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約100個の連続したアミノ酸を有する。
【0045】
本発明において、「本発明の抗体の保存的変異体」とは、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較して、最大10個、好ましくは最大8個、より好ましくは最大5個、最も好ましくは最大3個のアミノ酸を、近接または類似の特性を有するアミノ酸で置換することにより形成されるポリペプチドを指す。これらの保存的変異体ポリペプチドは、好ましくは表1によるアミノ酸置換により生成される。
【0046】
【0047】
本発明は、上記抗体またはそのフラグメントまたはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子をさらに提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態またはRNA形態であることができる。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAを含む。DNAは、一本鎖または二本鎖であることができる。DNAは、コーディング鎖または非コーディング鎖であることができる。
本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、成熟ポリペプチドのみをコードするコード配列と、成熟ポリペプチドのコード配列および様々な追加コード配列と、成熟ポリペプチドのコード配列(および任意の追加コード配列)および非コード配列を含む。
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、前記ポリペプチドをコートするポリヌクレオチドであることができ、追加コードおよび/または非コード配列をさらに含むポリヌクレオチドであることもできる。
【0048】
本発明はまた、上記配列にハイブリダイズし、2つの配列の間で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、厳密な条件下で本発明のポリヌクレオチドにハイブリダイズできるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「厳密な条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDS、60 ℃などの低イオン強度および高温でのハイブリダイゼーションおよび溶出、または(2)ハイブリダイゼーション中に50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清/0.1%Ficoll、42 ℃などの変性剤の添加、または(3)2つの配列の間の同一性が少なくとも90%以上、より好ましくは95%が以上である場合のみハイブリダイズが発生することを指す。また、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0049】
本発明の抗体のヌクレオチド全長配列またはそのフラグメントは、通常、PCR増幅法、組換え法、または人工合成法により獲得することができる。実行可能な方法は、特にフラグメントの長さが短い場合に、人工的な合成方法によって関連する配列を合成することである。通常、最初に複数の小さなフラグメントを合成し、次にそれらを連結することにより配列の長いフラグメントを獲得することができる。なお、重鎖のコード配列と発現タグ(例えば、6His)を融合して融合タンパク質を形成することもできる。
【0050】
一旦関連配列を獲得すると、組換え法を使用して関連配列を大量に獲得することができる。これは通常、担体にクローニングし、細胞に移し、その後、従来の方法で増殖した宿主細胞から分離して関連配列を獲得する。本発明による生体分子(核酸、タンパク質など)は、分離された形態で存在する生体分子が含む。
現在、本発明のタンパク質(またはそのフラグメント、またはその誘導体)をコードするDNA配列は、化学合成により完全に獲得することができる。次いで、前記DNA配列を、当該分野で公知のさまざまな既存のDNA分子(または担体など)および細胞に導入することができる。なお、化学合成により、本発明のタンパク質配列に突然変異を導入することもできる。
【0051】
本発明はまた、上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含む担体に関する。これらの担体を使用して適切な宿主細胞を形質転換して、タンパク質を発現させることができる。
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、または酵母細胞などの下等真核細胞、または哺乳動物細胞などの高等真核細胞であることができる。代表的な例は、大腸菌、ストレプトマイセスと、ネズミチフス菌の細菌細胞と、酵母などの真菌細胞と、ショウジョウバエS2またはSf9の昆虫細胞と、CHO、COS7、293細胞などの動物細胞がある。
【0052】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術を使用して実施することができる。宿主が大腸菌などの原核生物である場合、指数関数的増殖期の後にDNAを吸収できるコンピテント細胞を獲得し、CaCl2法で処理し、使用されるステップは、当技術分野で周知である。別の方法は、MgCl2を使用することである。必要に応じて、エレクトロポレーションにより形質転換を行うこともできる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームパッケージングなどの従来の機械的方法などのDNAトランスフェクション法を使用することができる。
【0053】
得られた形質転換体は、常法により培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。使用される宿主細胞に応じて、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択されることができる。宿主細胞の増殖に適した条件下で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度まで成長した後、適切な方法(例えば、温度変換または化学的誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、細胞を一定期間培養する。
【0054】
上記の方法における組換えポリペプチドは、細胞内で、または細胞膜上で発現されるか、細胞外で分泌されることができる。必要に応じて、組換えタンパク質は、その物理的、化学的、およびその他の特性を使用したさまざまな分離方法によって分離および精製することができる。これらの方法は、当業者に周知である。これらの方法の例は、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧破壊、超処理、超遠心分離、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびその他のさまざまな液体クロマトグラフィー技術、およびこれらの方法の組み合わせの結合を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の抗体は、単独で使用することができ、または検出可能なマーカー(診断目的のため)、治療薬、PK(プロテインキナーゼ)修飾部分、またはこれらのいずれかの組み合わせまたは複合体することができる。
診断目的の検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピューター断層撮影技術)造影剤、または検出可能な産物を生成できる酵素を含むが、これらに限定されない。好ましい検出可能なマーカーは放射性核種である。
【0056】
本発明の抗体と組み合わせまたは複合体することができる治療薬は、1、放射性核種、2、生物毒性、3、IL-2などのサイトカイン、4、金ナノ粒子/ナノロッド、5、ウイルス粒子、6、リポソーム、7、ナノ磁性粒子、8、薬物活性化酵素(例えば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様タンパク質(BPHL))、10、治療薬(例えば、シスプラチン)または任意の種類のナノ粒子などを含むが、これらに限定されない。
【0057】
免疫複合体
本発明は、免疫複合体をさらに提供し、前記免疫複合体は、以下を含む。
(a)VHH鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO.:1-3のいずれかの一つに示される抗PD-L1ナノボディのVHH鎖または前記VHH鎖を有する抗PD-L1ナノボディと、及び
(b)放射性核種、酵素抗体、細胞、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるカップリング部分とを含む。
【0058】
別の好ましい例において、前記カップリング部分は、放射性核種である。
別の好ましい例において、前記カップリング部分は、薬物または毒素である。
別の好ましい例において、前記カップリング部分は、検出可能なマーカーである。
【0059】
別の好ましい例において、前記複合体は、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(電子コンピュータ断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成できる酵素、放射性核種、生体毒素、サイトカイン(例えば、IL-2など)、抗体、抗体Fcフラグメント、抗体scFvフラグメント、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、ナノ磁性粒子、プロドラッグ活性化酵素(例えば、DT-心筋細胞(DTD)またはビフェニル加水分解酵素様タンパク質(BPHL))、化学療法剤(例えば、シスプラチン)、または任意の形態のナノ粒子などから選択される。
本発明の免疫複合体は、試験対象のPD-L1発現を非侵襲的に検出するために使用することができ、サイズが小さく、特異性が高く、原発性および転移性腫瘍を同時に標的とする全身検出に適し、精度が高く、放射線量が少ない。
【0060】
キット
本発明は、本発明の免疫複合体を含むキットをさらに提供し、本発明の一好ましい例において、前記キットは、容器、取扱説明書、同位体トレーサー及び造影剤、フローサイトメトリー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、ナノ磁性粒子とイメージング剤からなる群から選択される1つまたは複数の試薬をさらに含む。
好ましくは、本発明のキットは、被験者のPD-L1発現を非侵襲的に検出するための生体内診断キットである。
【0061】
細胞毒剤
本発明の抗体複合体構成する結合部分は、細菌、真菌、植物または動物由来の小分子毒素などの毒素を含み、そのフラグメントおよび/または変異体を含む。細胞毒性の例は、オーリスタチン系(例えば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAEとMMAF)、オーレオマイシン、メタンソール(methanesol)、リシン毒素、リシン毒素A-鎖、コンブレタスタチン、ズオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、パクリタキセル、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クルシン(curicin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤及び糖質コルチコイドと他の化学療法薬、およびAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212または213、P32とLu177を含むLuの放射性同位体などの放射性同位体を含むが、これらに限定されない。抗体は、プロドラッグをその活性型に変換することができる抗癌プロドラッグ活性化酵素に複合体させることもできる。
【0062】
好ましい小分子薬物は、高い細胞毒性を有する化合物であり、好ましくは、モノメチルオーリスタチン(monomethylauristatin)、カリケアマイシン、メイタンシノイド、またはそれらの組み合わせであり、より好ましくは、モノメチルオーリスタチン-E(MMAE)、モノメチルオーリスタチン-D(MMAD)、モノメチルオーリスタチン-F(MMAF)、またはそれらの組み合わせである。
【0063】
薬物組成物
本発明は、組成物をさらに提供する。好ましくは、前記組成物は、薬物組成物であり、上記抗体またはその活性フラグメントまたはその融合タンパク質または免疫複合体、及び薬学的許容される担体を含む。通常、これらの物質を非毒性、不活性、および薬理学的に許容される水性担体媒体で製剤することができ、ここで、pHは通常約5~8、好ましくは約6~8であり、pHは、製剤化される物質の性質と治療する病気によって異なる場合がある。製剤化された薬物組成物は、腫瘍内、腹腔内、静脈内、または局所投与を含む(しかし、これらに限定されない)従来の経路により投与することができる。
【0064】
本発明の薬物組成物は、PD-L1タンパク質分子の結合に直接に使用することができるため、腫瘍を治療に使用することができる。なお、他の治療薬を同時に使用することもできる。
本発明の薬物組成物は、安全かつ有効な量(例えば、0.001-99 wt%、好ましくは、0.01-90 wt%、より好ましくは、0.1-80 wt%)の本発明の上記ナノボディ(またはその複合体)及び薬学的許容される担体または賦形剤を含む。このタイプの担体は、塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含む(しかし、これらに限定されない)。薬物製剤は、投与方法と合わせる必要がある。本発明の薬物組成物は、例えば、生理食塩水またはグルコースおよび他のアジュバントを含む水溶液を用いた従来の方法により、注射剤の形態で調製することができる。注射剤および液剤などの薬物組成物は、無菌条件下で製造されることが好ましい。活性成分の投与量は、治療有効量であり、例えば、1日当たり約10 μg/kg体重-約50 mg/kg体重である。なお、本発明のポリペプチドは、他の治療薬とともに使用することもできる。
【0065】
薬物組成物を使用する場合、安全かつ有効な量の免疫複合体を哺乳動物に投与し、安全かつ有効な量は通常少なくとも約10 μg/kg体重であり、ほとんどの場合、約50 mg/kg体重を超えず、好ましくは、投与量は約10 μg/kg体重-約10 mg/kg体重である。もちろん、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康などの他の要因などの要因も考慮する必要があり、これらはすべて熟練した医師のスキルの範囲内である。
【0066】
本発明の主な利点は、以下を含む。
(a)本発明の免疫複合体は、原発性および転移性腫瘍、全身画像化、局在化、定性的、定量的、およびステージングを同時に標的とする。
(b)本発明の免疫複合体は、サイズが小さく、特異性が高いという特徴を有し、腫瘍組織をより効果的に貫通し、身体により容易に除去され、それにより非標的組織への放射線量を減らす。
(c)本発明の免疫複合体は、半減期が短く、診断時間がさらに短いため、結果を迅速に観察することができる。
(d)本発明の免疫複合体は、高い特異性、正確な検出、および局所的な偽陰性を回避する。
(e)本発明の抗PD-L1ナノボディとPD-L1の結合は、PD-1とPD-L1の結合を遮断しない。
【0067】
以下、具体的な実施例に結び付けて、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例にある具体的な条件のない実験方法は、通常、従来の条件またはメーカーが推奨する条件に基づく。特に明記しない限り、パーセンテージと部は重量による。
【0068】
実施例1 宿主細菌大腸菌におけるナノボディの発現および精製
(1)ナノボディ(
図6に示された配列SEQ ID NO.:1-3)の対応するプラスミドを大腸菌WK6に電気形質転換し、LA +グルコース(glucose)、即ち、アンピシリンとグルコースを含む培養プレートにコーティングし、37 ℃で一晩インキュベートした。
(2)単一のコロニーを選び、アンピシリンを含むLB培地5 mLに接種し、37 ℃でシェーカーで一晩培養した。
(3)1 mLのオーバーナイト菌種を330 mLのTB培養液に接種し、37 ℃でシェーカーで培養し、OD値が0.6-1に達した時に、IPTGを加え、28 ℃でシェーカーで一晩培養した。
(4)遠心分離して菌を収集し、浸透法により粗抗体抽出液を得た。
(5)浸透法により粗抗体抽出液を得た。
(6)ニッケルカラムイオンアフィニティークロマトグラフィーによる純度90%以上のナノボディを調製した。
【0069】
配列SEQ ID No.:1-3のナノボディは、それぞれナノボディNo.1、ナノボディNo.2、ナノボディNo.3と命名された。
ナノボディNo.1、ナノボディNo.2の精製結果は
図1に示した通り、調整されたナノボディの純度は95%以上に達する。
【0070】
実施例2 酵素免疫測定法(ELISA)によるナノボディの親和性の同定
(1)コーティングされた抗原タンパク質PD-L1、IgG、およびNaHCO3(100 mM、Ph8.2)をブランクコントロールとして使用し、4 ℃で一晩培養した。
(2)翌日PBSTで3回洗浄し、1%BSAを加えて室温で2時間ブロックした。
(3)精製したナノボディを希釈し、コーティングされたPD-L1、IgG、およびNaHCO3と室温で1時間反応させた。
(4)結合していない抗体をPBSTで洗浄し、マウス抗HA抗体を加えて室温で1時間放置した。
(5)結合していない抗体をPBSTで洗浄し、ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ標識抗体を加え、室温で1時間放置した。
(6)結合していない抗体をPBSTで洗浄し、アルカリホスファターゼ発色溶液を加え、ELISA装置で405 nmの波長で吸収値を読み取った。吸収値に基づいてナノボディの特異性を判断した。
【0071】
検出結果は、
図2に示したとおりであり、ナノボディNo.1とナノボディNo.2はPD-L1にのみ結合する。ナノボディNo.3の検出結果は、ナノボディNo.1と類似し、図には具体的に示されていない。
ナノボディの勾配希釈により親和性をさらに測定した。
結果は、表1に示したように、本発明のナノボディの親和性が1×10
-9以上であることを示している。
【0072】
【0073】
実施例3 フローサイトメトリーによりナノボディがPD-1とPD-L1の結合を遮断する効果を有するかどうかを検出
(1)ヒトPD-L1全長タンパク質を一時的に発現する1×106 HEK293F細胞を0.5 %BSA-PBSバッファーに再懸濁し、10μgの抗PD-L1ナノボディを加え、陽性対照、陰性対照、ブランクグループ(PBS)を設定し、すべてのサンプルに5 μg hPD-1-Fc-Biotinを添加し、4 ℃で20 分間インキュベートした。
(2)PBSで細胞を2回洗浄し、eBioscienceのSA-PEを加え、4 ℃で20 分間インキュベートし、細胞をPBSで2 回洗浄した後、フローサイトメトリーで検出した。
結果は表1に示したとおりであり、本発明のナノボディがPD-1とPD-L1の結合の効果を遮断できないことを示している。
【0074】
実施例4 フローサイトメトリーによるナノボディの特異性の検出
(1)細胞タイプ:HCC827およびA549。細胞をPBSで2回洗浄した。
(2)ナノボディをPBSで希釈し、陽性対照、陰性対照、およびブランクグループ(PBS)を同時に設定した。
(3)洗浄した細胞を96ウェルプレートに分注し、各サンプルの細胞数は3×105であり、希釈したナノボディを各ウェルに加え、4 ℃で20 分間均一に混合した。
(4)PBSで細胞を2回洗浄し、マウス抗HA Alexa Fluor488を加え、4 ℃で20 分間放置した。
(5)PBSで細胞を2 回洗浄し、機械(BD FACS Calibur)でテストした。
【0075】
結果は表1に示したとおりであり、PD-L1過剰発現(HCC827)細胞株では、ナノボディの陽性率は67-93 %であり、PD-L1過少発現(A549)細胞株では、ナノボディの陽性率は12-33 %であり、2つの間の差は少なくとも約2倍であり、これはさらに、本発明のナノボディがPD-L1に対して非常に良好な特異性を有することを示唆している。
【0076】
実施例5 ナノボディI-125標識、分離および精製、およびSPECTイメージングスキャン
(1)150 μLの抗体原液を取り、100 μLの0.02 mol/L pH7.4リン酸緩衝液と50 μLのNa125I溶液を加え、均一に混合し、20 μLの5 mg/ mLクロラミンT溶液を加え、室温で70 秒間反応させ、200 μLのメタ重亜硫酸ナトリウム溶液(5 mg/mL)を加えて5 分間作用させた。
(2)PD10カラムで分離し、溶出液は0.02 mol/LのpH 7.4リン酸緩衝液であり、チューブあたり10滴を収集し、ペーパークロマトグラフィーによりI-125標識ナノボディの放射純度を同定した。
(3)ヌードマウスの右脇の下に5×105個のPD-L1過剰発現(HCC827)細胞を接種し、正式な実験研究のために腫瘍が150-200 mm3に成長するまで待つ。
(4)担癌マウスをイソフルランで麻酔し、I-125標識ナノボディ(~50 ug、5 MBq)を尾静脈に注射した。
(5)投与0.5 時間後にスキャンを実施し、取得方法は静的15 分SPECTおよび中解像度全身CTである。
【0077】
図3と表2は、担癌マウスの30 分のSPECTスキャン写真と体分布データを示し、結果は、ナノボディNo.1とナノボディNo.2がPD-L1過剰発現腫瘍モデルに効果的に蓄積し、PD-L発現を非侵襲的に検出することができ、癌の予後と診断に使用されることを示している。同時に、非結合抗体は、腎臓と膀胱を介して血液から迅速に除去され、身体の放射線量を減らし、待ち時間を短縮する。ナノボディNo.3の検出結果は、ナノボディNo.1に類似しているため、ここでは具体的に示さない。
【0078】
【0079】
実施例5 ナノボディ99mTcの標識、分離及び精製、血清安定性試験およびSPECTイメージングスキャン
(1)5.5 mLのNa2CO3、15.2 mgの酒石酸カリウムナトリウム、及び20.5 mgのNaBH4を10 mL滅菌ボトルに加え、20分間のCOを通過させ、1 mL(35mCi)Na [99mTcO4]を加え、反応ボトルを密閉し、80 ℃で30分間加熱する。
(2)50 μlの抗体原液を取り、500 μlの99mTc(CO)3(H2O)3反応溶液(6.56mCi)を加え、45~50 ℃で90分間反応させた。
(3)PD10カラムで分離し、溶離液は0.02 mol/LのpH 7.4リン酸緩衝液であり、薄層クロマトグラフィーにより99mTc標識ナノボディは放射純度を同定した。
(4)100 μlの99mTc標識ナノボディを取り、500 μlのマウスまたはヒトの血清を加え、37 ℃で30分、90分および180分間インキュベートした。
(5)分子排除HPLCにより99mTc標識ナノボディを分析した。
(6)ヌードマウスの右脇の下に5×105 個のPD-L1過剰発現(HCC827)またはPD-L1過少発現(A549)細胞を接種し、正式な実験研究のために腫瘍が150-200 mm3に成長するまで待つ。
(7)Tc-99m標識ナノボディ(~10 ug、5 MBq)を尾静脈に注射するか、20x非標識ナノボディと同時に混合するか、アテゾリズマブを尾静脈に72 時間前に投与した。投与0.5 時間後にスキャンを実施し、取得方法は静的15分SPECTおよび中解像度全身CTである。
【0080】
結果は
図4に示したとおりであり、HPLCスペクトルは、ナノボディNo.2が生体外で180 分間インキュベートされても分解することなく安定であることを示した。ナノボディNo.1およびナノボディNo.3の検出結果は、ナノボディNo.1と類似し、図には具体的に示されていない。
図5と表3は、担癌マウスの30 分間のSPECTスキャン写真と体内分布データを示している。結果は、ナノボディNo.2が腫瘍モデルでPD-L1の発現を特異的かつ非侵襲的に検出でき、癌の予後と診断に使用されることを示している。ナノボディNo.1およびナノボディNo.3の検出結果は、ナノボディNo.1と類似し、図には具体的に示されていない。
【0081】
【0082】
本発明で言及されるすべての文書は、あたかも各文書が個々に参照により組み込まれたかのように、本出願に参照により組み込まれる。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内に入ることを理解されたい。
【配列表】