IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒロホー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図1
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図2
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図3
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図4
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図5
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図6
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図7
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図8
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図9
  • 特許-板材連結具及び板材連結システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】板材連結具及び板材連結システム
(51)【国際特許分類】
   F16B 21/06 20060101AFI20220203BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20220203BHJP
   F16B 21/08 20060101ALI20220203BHJP
   F16B 5/07 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
F16B21/06 A
B65D77/26 D
F16B21/08
F16B5/07 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021068078
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2021-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009644(JP,A)
【文献】実開平06-001820(JP,U)
【文献】実開昭63-017315(JP,U)
【文献】実開昭55-126013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 21/06
F16B 21/08
F16B 5/00
B65D 67/00- 79/02
B65D 81/18- 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部を有する第1の板材と第2の開口部を有する第2の板材を前記第1の開口部及び前記第2の開口部の位置を合わせるようにして重ねた状態で連結する板材連結具であって、
治具挿通口が設けられ、内面及び外面の面積が前記第1の開口部よりも広い第1のベース板と、
この第1のベース板の前記内面に立設され、前記第1の板材に対して垂直に前記第1の開口部へ挿通されるガイド板と、
前記ガイド板の一方の面に設けられ、前記ガイド板とともに前記第1の開口部に挿通される係合部と、を有する第1の部材と、
弾性材からなる第2の部材と、を備え、
前記第2の部材は、
平面視矩形状をなす平板材からなり、前記第2の板材に対して垂直に前記第2の開口部へ挿通される係合爪と、
この係合爪が内面に立設され、この内面及び外面の面積が前記第2の開口部よりも広い第2のベース板と、からなり、
前記係合爪は、前記第2のベース板が前記第1のベース板と平行をなし、かつ、それらの前記内面同士が対向するように配置された状態で前記係合部に対して係合可能に形成された凸部を有し、
前記凸部は、前記係合部に係合している状態において、前記第1のベース板の前記外面を垂直に見た場合に前記治具挿通口を通して視認可能であり、
前記凸部と前記係合部の係合状態は、前記係合爪の弾性変形によって解消され、
前記ガイド板及び前記係合爪の少なくともいずれか一方は、前記第1の開口部及び前記第2の開口部に対して連通可能に形成され
前記ガイド板は、互いに平行をなすとともに、前記治具挿通口を挟んで対をなすように設けられ、
前記係合爪は、対をなすように設けられて、互いに平行をなすように配置され、
前記係合部は、一対の前記ガイド板の対向面に対をなすようにそれぞれ設けられており、
前記凸部は、一対の前記係合爪が一対の前記ガイド板の間に配置された状態で一対の前記係合部に対して両側から係合可能に一対の前記係合爪の対向面にそれぞれ設けられており、
一対の前記ガイド板は、前記第1のベース板及び前記ガイド板の双方に平行な方向の幅が前記係合部よりも狭い棒状体によって、先端同士が接続されていることを特徴とする板材連結具。
【請求項2】
前記係合爪は、前記凸部から先端にかけて先細りの形状をなすように形成された傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記凸部が前記係合部に係合している状態で前記第1のベース板の前記外面側から前記治具挿通口を通して視認可能であることを特徴とする請求項1に記載の板材連結具。
【請求項3】
前記凸部が前記係合部に係合している状態において、前記第1のベース板の前記外面を垂直に見た場合に前記治具挿通口を通して前記傾斜部は視認されるのに対し、前記係合部は視認されないことを特徴とする請求項2に記載の板材連結具。
【請求項4】
前記治具挿通口は、内周面の輪郭線が円形をなすことを特徴とする請求項3に記載の板材連結具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の板材連結具と、
この板材連結具において前記係合部に対する前記凸部の係合状態を解消する際に用いられる取外し治具と、を備えた板材連結システムであって、
前記取外し治具は、
前記治具挿通口に挿通可能な大きさを有する棒状の突起部と、
この突起部が内面に立設された第3のベース板と、を備え、
前記係合部に対する前記凸部の係合状態は、前記治具挿通口に挿通された前記突起部の先端で前記凸部が押圧されることにより前記係合爪が押し広げられるようにして解消されることを特徴とする板材連結システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部に板状部分を有する部材同士の連結に用いられる板材連結システムに係り、特に、連結される対象物に対する取り付け作業が容易であり、しかも繰り返して使用することが可能な板材連結具及び取外し治具並びにそれらによって構成される板材連結システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送容器に収容された状態で物品を搬送する際に、物品が振動等によって搬送容器内で勝手に移動してしまうと物品が破損してしまうおそれがある。そのため、搬送容器の内部には、物品の移動を防ぐ目的で仕切板や緩衝材などのような内装材が設置されている。図10(a)は内装材の一例を示した外観斜視図であり、図10(b)及び図10(c)はそれぞれ図10(a)に示した内装材を構成する上材及び下材の外観斜視図である。なお、図10(a)及び図10(b)では図が煩雑になるのを避けるため、複数の物品収容部と開口部について、それらの一部についてのみ符号を付している。また、以下の説明では、実際に内装材が搬送容器内に設置された状態を想定して「上板」や「下板」あるいは「上面」や「下面」という表現を用いている。
図10(a)乃至図10(c)に示すように、複数の物品収容部50a、50bが上面50cに設けられた内装材50は、複数の開口部51a、51bが設けられた上板51と、その下面51dに両面テープ等を用いて上面52aが接着される下材52からなる。すなわち、内装材50の物品収容部50a、50bは、上板51の開口部51a、51bの下面51d側が下板52によって閉塞された構造となっている。なお、上板51及び下板52は形状及び大きさが同一であって、いずれも平面視略矩形状をなすプラスチック製の板材からなり、直方体状の搬送容器(図示せず)の内部に、その底面と平行をなした状態で設置可能な大きさに形成されている。
【0003】
このような構造の内装材50においては、上板51を下板52に貼り合わせる際に作業者の熟練度の違いによって位置決め精度が異なるため、作業工数に差が生じる可能性が高い。また、内装材50は、粉砕時に両面テープが粉砕機の刃に付着して不具合を招く場合があるため、リサイクルが困難であり、埋め立て処理の対象になる場合が多い。さらに、内装材に取り付けられた両面テープは再利用が不可能であることに加え、両面テープから放出されるガス成分(アウトガス)は環境物質評価に抵触するおそれがある。これらの問題は内装材がシート状であるかブロック状であるかといった形状の違いに関わりなく、両面テープなどの粘着品や接着剤を用いて内装材が搬送容器に固定される場合には常に発生する。そのため、近年では、内装材を接着以外の方法によって搬送容器に固定する技術が求められており、それに関して既にいくつかの発明や考案が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には「プラスチック製段ボール箱の間仕切用部品」という名称で、プラスチック製段ボールのシートが周壁板又は底板に用いられた容器(プラダン容器)及びそれを含むプラスチック製容器の内部に設けられるプラスチック製の間仕切と、この間仕切を上記容器内の所定の位置に導いて保持するプラスチック製の保持具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された間仕切用部品は、平板状部分及び仕切板嵌合端部からなる仕切板と、この仕切板の仕切板嵌合端部を挿入可能な溝が設けられた仕切板保持具からなる。
このような構造の間仕切用部品は、仕切板保持具の溝に仕切板嵌合端部を挿入することによって仕切板が仕切板保持具によって保持される構造であることから、仕切板を仕切板保持具に固定するために接着剤を用いる必要がない。
【0005】
また、特許文献2には「フランジを有する製品の梱包箱」という名称で、段ボールを折り曲げるようにして形成され、フランジ付きモータやパルスレーダなどのフランジを有する製品を収納する梱包箱に関する考案が開示されている。
特許文献2に開示された梱包箱は、製品のフランジ部を上下から挟む第1、第2の内装材が、その両側に外装箱の左右内側面に当接する間隔調整片が設けられた底板部と、外装箱の前後内側面に当接して立設された前後方向位置決め部と、この前後方向位置決め部の前後方向途中にフランジ部を挟むように形成された第1、第2の切欠き位置に装着されるとともにフランジ部の形状に対応した凹部が形成されたフランジ固定材を備えた構造となっている。
このような構造の梱包箱においては、第1、第2の内装材が外装箱に対し、底板に設けられた間隔調整片によって左右方向の位置決めがなされるとともに、前後方向調整位置決め部によって前後方向の位置決めがなされる構造となっていることから、第1、第2の内装材を外装箱に位置決めするために接着剤を用いる必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-56628号公報
【文献】実用新案登録第3143905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明では、接着剤を用いずに仕切板が仕切板保持具に固定されるものの、仕切板保持具をプラスチック容器内に固定する際に両面テープが用いられる可能性がある。したがって、当該発明では、内装材50の場合に比べると両面テープの使用割合が低いため、両面テープを用いることによる問題が内装材50の場合に比べて程度は低いとしても、同様に発生する可能性がある。なお、両面テープ等の粘着品を用いて仕切板保持具をプラスチック容器に固定すると、仕切板保持具のプラスチック容器からの取外し作業が困難になることに加え、プラスチック容器から取り外された仕切板保持具は再利用に適さない可能性が高い。
また、特許文献2に開示された考案では、接着剤を用いずに第1、第2の内装材が外装箱に固定される構造となっているが、前後方向位置決め部の一部を構成する補強板部を底板部に固定する際に接着剤が用いられることから、内装材50の場合よりは程度は低いとしても、内装材50において両面テープを使用することによる問題が同様に発生するものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、搬送容器の内装材のように少なくとも一部に板状部分を有する部材同士を連結する際に粘着品や接着剤を必要とせず、かつ、連結対象物への取り付け作業が容易であって、しかも連結対象物を繰り返して使用することが可能な板材連結具及び取外し治具並びにそれらによって構成される板材連結システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、第1の開口部を有する第1の板材と第2の開口部を有する第2の板材を第1の開口部及び第2の開口部の位置を合わせるようにして重ねた状態で連結する板材連結具であって、治具挿通口が設けられ、内面及び外面の面積が第1の開口部よりも広い第1のベース板と、この第1のベース板の内面に立設され、第1の板材に対して垂直に第1の開口部へ挿通されるガイド板と、ガイド板の一方の面に設けられ、ガイド板とともに第1の開口部に挿通される係合部と、を有する第1の部材と、弾性材からなる第2の部材と、を備え、第2の部材は、平面視矩形状をなす平板材からなり、第2の板材に対して垂直に第2の開口部へ挿通される係合爪と、この係合爪が内面に立設され、この内面及び外面の面積が第2の開口部よりも広い第2のベース板と、からなり、係合爪は、第2のベース板が第1のベース板と平行をなし、かつ、それらの内面同士が対向するように配置された状態で係合部に対して係合可能に形成された凸部を有し、凸部は、係合部に係合している状態において、第1のベース板の外面を垂直に見た場合に治具挿通口を通して視認可能であり、凸部と係合部の係合状態は、係合爪の弾性変形によって解消され、ガイド板及び係合爪の少なくともいずれか一方は、第1の開口部及び第2の開口部に対して連通可能に形成されていることを特徴とするものである。
なお、本発明において、係合爪を構成する平板材には平面視略矩形状をなす平板材も含まれるものとする。また、本発明の第1のベース板及び第2のベース板において、「内面」とは第1の板材や第2の板材に接触する側の面のことであり、「外面」とは「内面」の反対側の面のことである。さらに、「ガイド板や係合爪が第1の開口部及び第2の開口部に対して連通可能に形成されている」とは、ガイド板や係合爪が第1の開口部及び第2の開口部に挿通可能な幅を有するとともに、第1の開口部及び第2の開口部に対して連通可能な長さを有していることを意味している。
【0010】
このような構造の第1の発明においては、第1の部材と第2のベース板が互いに平行をなし、かつ、それらの内面同士が対向した状態で係合爪の凸部をガイド板の係合部に係合させると、第1の部材と第2の部材が連結されて第1のベース板と第2のベース板の間隔が一定に保たれるという作用を有する。
また、第1のベース板の他方の面側から治具挿通口に挿通された棒状の工具等を操作して、係合部と凸部の係合状態が解消されるような変形を係合爪に加えると、第1の部材に対する第2の部材の連結状態が解消されて、第2の部材の第1の部材からの取り外しが可能になるという作用を有する。
さらに、第1のベース板の内面及び外面が第1の開口部よりも広いため、ガイド板を第1の開口部に挿通することはできるが、第1のベース板を第1の開口部に挿通することはできない。また、第2のベース板の内面及び外面が第2の開口部よりも広いため、係合爪を第2の開口部に挿通することはできるが、第2のベース板を第2の開口部に挿通することはできない。
したがって、第1の板材と第2の板材を重ねたときの厚さが第1の部材と第2の部材が連結された状態における第1のベース板と第2のベース板の内面間の距離以下である場合、第1の開口部と第2の開口部の位置を合わせるようにして第1の板材と第2の板材が重ねられた状態で、第1の開口部に連通させたガイド板の係合部に第2の開口部に挿通させた係合爪を係合させて第1の部材と第2の部材を連結させると、第1の板材と第2の板材は第1のベース板と第2のベース板の間に挟まれた箇所において厚さ方向への移動が拘束される結果、第1の板材と第2の板材は分離不能となる。すなわち、第1の板材と第2の板材は第1の発明に係る板材連結具を介して連結された状態となる。
この状態で、治具挿通口に挿通された棒状の工具等を操作し、係合部に対する凸部の係合状態を解消すると、第1の部材と第2の部材の連結状態が解消されるため、第1の板材と第2の板材は分離可能となる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、係合爪は、凸部から先端にかけて先細りの形状をなすように形成された傾斜部を有し、傾斜部は、凸部が係合部に係合している状態で第1のベース板の外面側から治具挿通口を通して視認可能であることを特徴とするものである。
このような構造の第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、凸部が係合部に係合している場合に、治具挿通口に挿通された棒状の工具等の先端で第1のベース板に対して垂直な方向へ傾斜部を押すと、係合部に対する凸部の係合状態が解消される方向へ係合爪が弾性変形するという作用を有する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、凸部が係合部に係合している状態において、第1のベース板の外面を垂直に見た場合に治具挿通口を通して傾斜部は視認されるのに対し、係合部は視認されないことを特徴とするものである。
このような構造の第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、第1のベース板に対して垂直に治具挿通口に挿通された棒状の工具等に対して係合部が干渉しないという作用を有する。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、治具挿通口は、内周面の輪郭線が円形をなすことを特徴とするものである。
このような構造の第4の発明においては、治具挿通口の内径よりも外径が小さいボルトを前述の棒状の工具等の代わりに用いることができ、この場合にも第3の発明の作用が同様に発揮される。
【0014】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、ガイド板は、互いに平行をなすとともに、治具挿通口を挟んで対をなすように設けられ、係合爪は、対をなすように設けられて、互いに平行をなすように配置され、係合部は、一対のガイド板の対向面に対をなすようにそれぞれ設けられており、凸部は、一対の係合爪が一対のガイド板の間に配置された状態で一対の係合部に対して両側から係合可能に一対の係合爪の対向面にそれぞれ設けられていることを特徴とするものである。
このような構造の第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、一対の係合爪の凸部が一対の係合部に対して両側からそれぞれ係合している場合に、一対の係合爪によって第2の部材の一対のガイド板の幅方向(第1の部材及びガイド板の双方に平行な方向)への移動が制限されるとともに、一対のガイド板によって一対の係合爪のガイド板に垂直な方向への移動が制限されるという作用を有する。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、一対のガイド板は、第1のベース板及びガイド板の双方に平行な方向の幅が係合部よりも狭い棒状体によって、先端同士が接続されていることを特徴とするものである。
このような構造の第6の発明においては、第5の発明の作用に加え、一対のガイド板が棒状体を介して一体化することによって曲げ強度が高まるという作用を有する。
【0016】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに係る板材連結具において係合部に対する凸部の係合状態を解消する際に用いられる取外し治具であって、治具挿通口に挿通可能な大きさを有する棒状の突起部と、この突起部が内面に立設された第3のベース板と、を備え、係合部に対する凸部の係合状態は、治具挿通口に挿通された突起部の先端で凸部が押圧されることにより係合爪が押し広げられるようにして解消されることを特徴とするものである。
このような構造の第7の発明においては、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに記載の板材連結具において治具挿通口に挿通した突起部を操作して係合部に対する凸部の係合状態を解消する際に、第3のベース板を持った状態で当該操作を行うことにより、突起部の姿勢の調整が容易になるという作用を有する。
【0017】
第8の発明に係る板材連結システムは、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに係る板材連結具と、第7の発明に係る取外し治具と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の第8の発明においては、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに係る板材連結具及び第7の発明に係る取外し治具と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
第1の開口部に第1の部材の係合部を挿通することにより第1の部材が第1の板材に取り付けられるとともに、第2の開口部に第2の部材の係合爪を挿通することにより第2の部材が第2の板材に取り付けられるため、第1の発明によれば、連結対象物(第1の板材及び第2の板材)に対する取り付け作業を容易に行うことができる。また、第1の開口部と第2の開口部の位置を合わせるようにして第1の板材と第2の板材が重ねられた状態で、第1の開口部に連通させたガイド板の係合部に第2の開口部に挿通させた係合爪を係合させることにより、第1の部材及び第2の部材を介して第1の板材と第2の板材が連結されるため、第1の発明によれば、第1の板材と第2の板材を容易に連結することができる。
さらに、第1の発明では、係合部に対する係合爪の凸部の係合状態を治具挿通口に挿通された棒状の工具等を用いて解消できることに加え、その係合状態を解消することで、第1の板材及び第2の板材から第1の部材及び第2の部材を取り外すとともに第1の板材と第2の板材を分離することが可能となる。すなわち、第1の発明によれば、連結対象物(第1の板材及び第2の板材)からの取り外し作業及び連結対象物を分離可能な状態にする作業を容易に行うことができる。
また、第1の発明によれば、第1の部材及び第2の部材を取り外して分離した第1の板材及び第2の板材に粘着品や接着剤が付着していないため、使用済みの第1の板材や第2の板材を繰り返して使用することが可能である。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、治具挿通口に挿通された棒状の工具等を用いて係合部に対する凸部の係合状態を解消する操作を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0020】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、第1のベース板に対して垂直に治具挿通口に挿通された棒状の工具に対して係合部が干渉しないため、当該工具を用いて係合部に対する係合爪の凸部の係合状態を解消する操作を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0021】
第4の発明によれば、治具挿通口の内径よりも外径が小さいボルトを前述の棒状の工具等の代わりに用いることができ、この場合にも第3の発明の効果が同様に発揮される。
【0022】
第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、一対の係合爪の凸部が一対の係合部に対して両側からそれぞれ係合している場合に、ガイド板の幅方向やガイド板に垂直な方向に対する一対の係合爪の移動が制限されているため、係合爪の凸部が係合部から外れ難く、両者の係合状態が不用意に解消されてしまうおそれがないという効果を奏する。
【0023】
第6の発明によれば、第5の発明の効果に加えて、一対のガイド板が変形したり、破損したりし難いため、第1の部材を何度も繰り返し使用できるという効果を奏する。
【0024】
第7の発明によれば、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに係る板材連結具において治具挿通口に挿通した突起部によって係合部に対する凸部の係合状態を解消する操作を安定した状態で効率よく行うことができる。
【0025】
第8の発明によれば、第1の発明乃至第6の発明のいずれかに係る板材連結具及び第7の発明に係る取外し治具と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)乃至(c)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る板材連結システムを構成する第1の部材及び第2の部材からなる板連結具並びに取外し治具の外観斜視図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ図1(a)に示した第1の部材の正面図及び側面図であり、(c)は同図(a)におけるA方向矢視図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ図1(b)に示した第2の部材の正面図及び側面図であり、(c)は図1(c)に示した取外し治具の正面図である。
図4】(a)は本発明の板材連結具が取り付けられた内装材の外観を示した斜視図であり、(b)は同図(a)に示したB部の拡大図であり、(c)及び(d)はそれぞれ同図(b)に示した上板及び下板の外観斜視図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ図4(b)におけるC-C線矢視断面図及びD-D線矢視断面図である。
図6】(a)及び(b)はそれぞれ図5(a)において上板及び下板を厚さの異なるものに変更した状態を示した図である。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ第1の部材の上方に第2の部材が配置された状態を示した板材連結具の正面図及び側面図であり、(c)及び(d)は第1の部材の係合部に第2の部材の係合爪の凸部が係合した状態を示した板材連結具の正面図及び側面図である。
図8】(a)及び(b)は板材連結システムの側面図である。
図9】(a)及び(b)は第2の部材の係合爪が取外し治具から受ける力を模式的に示した図である。
図10】(a)は従来の板状の内装材について外観の一例を示した斜視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)に示した内装材を構成する上材及び下材の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の板材連結システムについて図1乃至図9を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明では搬送容器に用いられる板状の内装材を例に挙げているが、本発明の板材連結具は、搬送容器の内装材以外の板材同士を連結する場合やそのような板材を搬送容器に固定する場合に用いることができる。また、少なくとも一部に板状部分を有し、その部分に開口部を設けることが可能であれば、全体が平坦な形状をしていなくとも本発明の板材連結システムは適用可能である。すなわち、本発明の適用対象である「板材」には、全体が平坦な形状をした平板材だけでなく、少なくとも一部に板状部分を有する部材も含まれるのである。そして、このような部材同士を連結する場合においても、以下に説明する板材連結システムに係る本発明の作用及び効果は同様に発揮される。さらに、本願明細書では、第1のベース板の第1のベース部材、第2の部材の第2のベース板及び取外し治具の第3のベース板において、連結しようとしている部材に接触する側の面及びその反対側の面をそれぞれ「内面」及び「外面」と表現している。
【実施例
【0028】
図1(a)乃至図1(c)はそれぞれ本発明の板材連結システムを構成する第1の部材及び第2の部材からなる板連結具並びに取外し治具の外観を示している。また、図2(a)及び図2(b)はそれぞれ第1の部材の正面図及び側面図であり、図2(c)は図2(a)におけるA方向矢視図である。そして、図3(a)及び図3(b)はそれぞれ第2の部材の正面図及び側面図であり、図3(c)は取外し治具の正面図である。
第1の部材1は、図1(a)及び図2(a)乃至図2(c)に示すように内周面の輪郭線が円形をなす治具挿通口2aが設けられた第1のベース板2と、互いに平行をなし、治具挿通口2aを挟んで対称をなすように第1のベース板2の内面2bに立設された一対のガイド板3、3と、第1のベース板2と平行な方向へ突出するように一対のガイド板3、3の対向面3d、3dに対をなすようにそれぞれ設けられた係合部3a~3cを有している。
また、一対のガイド板3、3の先端同士は図1(a)に示す幅w(第1のベース板2及びガイド板3の双方に平行な方向の幅)が図2(c)に示す係合部3a~3cの幅w(第1のベース板2及びガイド板3の双方に平行な方向の幅)よりも狭い棒状体4を介して接続されている。この場合、一対のガイド板3、3が棒状体4を介して一体化されることで曲げ強度が高まる結果、ガイド板3が変形したり、破損したりし難くなるため、第1の部材1を何度も繰り返し使用することが可能になる。
なお、係合部3a~3cの幅w図2(c)参照)はガイド板3の幅w図2(b)参照)よりも短い。そして、図2(c)に示すように係合部3a~3cは第1のベース板2の外面2cを垂直に見た場合に治具挿通口2aを通して視認されない箇所に設けられている。
【0029】
第2の部材5は、図1(b)及び図3(a)に示すように平面視略矩形状をなす平板材からなり、互いに平行をなすように配置された一対の係合爪6、6と、この係合爪6、6が内面7aに立設された第2のベース板7を有している。また、係合爪6は図3(b)に示すように第1の部材1の係合部3a~3cに対して係合可能に形成された凸部6aと、この凸部6aから先端6cにかけて先細りの形状をなすように形成された傾斜部6bを有するとともに、弾性変形によって係合部3a~3cに対する凸部6aの係合状態が解消される構造となっている。
なお、一対の係合爪6、6は弾性変形していない状態において、対向面6d、6dの間の距離L図3(b)参照)が第1の部材1の係合部3a~3cの幅w図2(c)参照)よりも長く、背面6e、6eの間の距離L図3(b)参照)が図2(b)に示すガイド板3の幅w(第1のベース板2に平行な長さ)よりも短い。また、図3(a)に示す係合爪6の幅w(第2のベース板7に平行な長さ)は、ガイド板3、3の対向面3d、3dの間の距離L図2(c)参照)よりも短い。そして、凸部6aは、第2のベース板7が第1のベース板2と平行をなすとともに、一対の係合爪6、6が係合部3a~3cを両側から挟むように一対のガイド板3、3の間に配置された状態で係合部3a~3cに対して係合可能に内側へ向けて突設されている。すなわち、係合爪6、6が弾性変形していない状態における凸部6a、6aの間の距離L図3(b)参照)は係合部3a~3cの幅w図2(c)参照)よりも短い。
図1(c)及び図3(c)に示すように、取外し治具8は中空又は中実の円柱体からなる突起部9と、この突起部9が内面10aに立設された第3のベース板10を備えている。また、突起部9は外径D図3(c)参照)が治具挿通口2aの内径D図2(c)参照)よりも小さくなっている。すなわち、突起部9は第1の部材1の治具挿通口2aに挿通可能な構造となっている。なお、突起部9は先端9aの近傍の側面9bが側面視円弧状をなすように加工されているが、以下の説明では、その部分も含めて突起部9の先端9aと表現している。
【0030】
図4(a)は図10(a)に示した内装材に本発明の板材連結具が取り付けられた状態の一例を示した外観斜視図であり、図4(b)は図4(a)に示したB部の拡大図である。また、図4(c)及び図4(d)はそれぞれ図4(b)に示した上板及び下板の外観斜視図である。図5(a)及び図5(b)はそれぞれ図4(b)におけるC-C線矢視断面図及びD-D線矢視断面図であり、図6(a)及び(b)はそれぞれ図5(a)において上板及び下板を厚さの異なるものに変更した状態を示した図である。なお、図1乃至図3及び図10に示した構成要素については同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
板材連結具11によって連結される内装材50の上板51と下板52には、図4(a)乃至図4(d)に示すように開口部51c、52cがそれぞれ設けられている。開口部51c、52cは、縦の長さL図4(c)参照)及びL図4(d)参照)が図2(c)に示した一対のガイド板3、3の背面3e、3eの間の距離L(第1のベース板2に平行な長さ)よりも長く、横の長さL図4(c)参照)及びL図4(d)参照)がガイド板3の幅w図2(b)参照)よりも長い矩形状をなしている。
また、開口部51c、52cにおける上記矩形の面積(開口面積)はそれぞれ第1のベース板2及び第2のベース板7の面積(輪郭線によって形成される矩形の面積)よりも狭い。すなわち、開口部51c、52cは一対のガイド板3、3及び一対の係合爪6、6を挿通可能であるが、一対のガイド板3、3や一対の係合爪6、6が挿通された状態においては第1のベース板2及び第2のベース板7を挿通不能な構造となっている。
さらに、前述したように一対の係合爪6、6は、背面6e、6eの間の距離L図3(b)参照)がガイド板3の幅w図2(b)参照)よりも短く、幅w図3(a)参照)がガイド板3、3の対向面3d、3dの間の距離L図2(c)参照)よりも短い。そして、係合部3a~3cの幅w図2(c)参照)はガイド板3の幅w図2(b)参照)よりも短い。すなわち、係合部3a~3cは一対のガイド板3、3とともに開口部51c、52cへ挿通可能な構造となっており、一対の係合爪6、6は、上板51及び下板52に対して垂直をなした状態で、一対のガイド板3、3が挿通された状態の開口部51c、52cにそれぞれ挿通可能な構造となっている。
【0031】
本実施例では、矩形の縦横の長さが開口部51cと開口部52cで同一となっているが、これらの長さは開口部51cと開口部52cで異なった構造とすることもできる。ただし、開口部51cと開口部52cにおける矩形の形状及び大きさが同一であれば、開口部51cと開口部52cをそれらの内面が一対のガイド板3、3の背面3e、3e及び側面3f、3f(図2(b)参照)に接触するような大きさに形成することで、開口部51c、52cに挿通された一対のガイド板3、3によって上板51及び下板52の第1のベース板2に平行な方向の移動が拘束される結果、上板51及び下板52の横方向(厚さ方向に垂直な方向)への相対的なズレが抑制されるというメリットがある。
【0032】
図5(a)及び図5(b)に示すように、下板52の下面52bの側から開口部52c(図4(d)参照)及び開口部51c(図4(c)参照)に一対のガイド板3、3が挿通された第1の部材1に対し、上板51の上面51eの側から開口部51c(図4(c)参照)及び開口部52c(図4(d)参照)に一対の係合爪6、6が挿通された第2の部材5は、第1のベース板2の内面2b及び第2のベース板7の内面7aが上板51の上面51e及び下板52の下面52bにそれぞれ接するとともに、一対の係合部3c、3cに一対の凸部6a、6aが係合することによって連結されている。
このとき、第1のベース板2と第2のベース板7は平行関係を保ったまま、互いの間隔が一定に保たれるため、上板51及び下板52の第1のベース板2と第2のベース板7の間に挟まれた部分は厚さ方向への移動が拘束される。すなわち、第1の部材1に第2の部材5が係合している場合、第1のベース板2及び第2のベース板7によって上板51及び下板52は厚さ方向への移動が阻止される。すなわち、第2の部材5と第1の部材1が連結されると、上板51と下板52は第1の部材1及び第2の部材5を介して連結されることになる。
【0033】
板材連結具11は、第1のベース板2と第2のベース板7の間隔が内装材50の厚さ(上板51の厚さと下板52の厚さを合計した厚さ)と略等しくなるように形成されているが、その間隔は第1の部材1に対する第2の部材5の係合状態を変えることによって変化する。例えば、図6(a)に示すように一対の係合部3b、3bに一対の凸部6a、6aが係合している場合、第1のベース板2と第2のベース板7の間隔は一対の係合部3c、3cに一対の凸部6a、6aが係合している場合に比べて広くなる。また、図6(b)に示すように一対の係合部3a、3aに一対の凸部6a、6aが係合している場合には、一対の係合部3b、3bに一対の凸部6a、6aが係合している場合よりも第1のベース板2と第2のベース板7の間隔がさらに広くなる。このように、板材連結具11は、第1の部材1に対する第2の部材5の係合状態を変えることによって、厚さの異なる3種類の内装材50に対応可能な構造となっている。
【0034】
図7(a)及び図7(b)はそれぞれ第1の部材の上方に第2の部材が配置された状態を示した板材連結具の正面図及び側面図であり、図7(c)及び図7(d)は第1の部材の係合部に第2の部材の係合爪の凸部が係合した状態を示した板材連結具の正面図及び側面図である。また、図8(a)及び図8(b)はそれぞれ図7(d)において第1の部材の下方に取外し治具が配置された状態及び第1の部材の治具挿通口に取外し治具の突起部が挿通された状態を示した板材連結システムの側面図である。さらに、図9(a)及び図9(b)は第2の部材の係合爪が取外し治具から受ける力を模式的に示した図である。なお、図9(a)及び図9(b)では第1の部材を破線で示している。また、図7乃至図9には内装材50、上板51及び下板52を図示していないが、以下、図4乃至図6に示した内装材50を例にとって、板材連結具11の取り付け作業及び取り外し作業について図7乃至図9を参照しながら具体的に説明する。
図7(b)に示すように、係合部3a~3cは、ガイド板3の対向面3dに対して垂直な方向に見た場合に長方形の上辺側の2つの角部に相当する箇所に下方へ向かって拡開するような傾斜部12aがそれぞれ設けられるとともに、第1のベース板2の内面2bに対して垂直な方向に見た場合に前面12bの輪郭線が円弧状をなしている。そして、係合部3a~3cは、上記長方形の下辺を形成する平坦部12cに係合爪6の凸部6aが係合可能な構造となっている。
【0035】
まず、板材連結具11において、第1の部材1の一対のガイド板3、3を下板52の下面52bの側から開口部52c(図4(d)参照)及び開口部51c(図4(c)参照)に挿通した後、図7(a)及び図7(b)に示すように第2のベース板7が第1のベース板2と平行をなし、かつ、下方へ移動した際に一対のガイド板3、3の間に一対の係合爪6、6が配置されるとともに、棒状体4が一対の係合爪6、6の間に配置されるように第2の部材5を第1の部材1の上方に設置する。
つぎに、第2のベース板7と第1のベース板2の平行状態を維持したまま、第2の部材5を下方へ移動させて、一対の係合部3a、3aの傾斜部12a、12aに一対の係合爪6、6の傾斜部6b、6bを押し付けると、一対の係合爪6、6は先端6c、6cが互いに離れる方向へ弾性変形して凸部6a、6aの間隔が大きくなる。そして、凸部6a、6aが一対の係合部3a、3aの幅が最大となる箇所を通過すると、一対の係合爪6、6は弾性変形が回復して元の形状に戻る。その結果、凸部6a、6aが一対の係合部3a、3aの平坦部12c、12cに係合する(図7(c)及び図7(d)参照)。これにより、第2の部材5は第1の部材1に連結され、上板51と下板52は第1の部材1及び第2の部材5を介して連結される。すなわち、板材連結具11によれば、内装材50を構成する上板51と下板52を容易に連結することができる。
なお、図7(c)及び図7(d)の状態から第2の部材5を下方へ移動させると、凸部6a、6aは一対の係合部3b、3bに係合する。そして、この状態から第2の部材5をさらに下方へ移動させると、凸部6a、6aは一対の係合部3c、3cに係合する。
【0036】
板材連結システム13において、図7(a)及び図7(b)に示した板材連結具11に対し、図8(a)に示すように第3のベース板10が第1のベース板2と平行をなし、かつ、上方へ移動した際に突起部9が第1のベース板2の治具挿通口2aに挿通される箇所に取外し治具8を設置する。つぎに、第3のベース板10と第1のベース板2の平行状態を維持したまま、取外し治具8を上方へ移動させて、図8(b)に示すように一対の係合爪6、6の傾斜部6b、6bに突起部9の先端9aを押し付ける。
このとき、一対の係合爪6、6の傾斜部6b、6bは、図9(a)に示すように突起部9からその接触面に垂直な力Fを受ける。この力Fの横方向(第1のベース板2に平行な方向)の成分fの作用により、一対の係合爪6、6は背面6e、6eの側へ折れ曲がるようにそれぞれ弾性変形し、先端6c、6cはそれぞれ矢印Eで示す方向へ移動する。そして、一対の係合部3a、3aの平坦部12c、12cに係合していた凸部6a、6aも平坦部12c、12cから外れる方向へそれぞれ移動する。このようにして、係合部3aの平坦部12cに対する凸部6aの係合状態が解消された一対の係合爪6、6は、上述の力Fの上方向(第1のベース板2から垂直に離れる方向)の成分fの作用により、第1のベース板2から垂直に離れる方向へ移動する。
以上説明したように、板材連結具11では、係合爪6に傾斜部6bが設けられており、傾斜部6bを第2のベース板7に対して垂直な方向に押すことで係合爪6が容易に弾性変形することから、傾斜部6bが設けられていない場合に比べて係合部3a~3cに対する凸部6aの係合状態を解消する操作を容易に行うことができる。また、板材連結具11では、治具挿通口2aに取外し治具8の突起部9を挿通した際に係合部3a~3cが突起部9に干渉しない構造であり、取外し治具8の突起部9を第1のベース板2に対して垂直に移動させるだけで良いため、係合部3a~3cに対する凸部6aの係合状態を解消する上記操作がさらに容易となる。なお、係合部3a~3cに対する凸部6aの係合状態を解消する操作は、取外し治具8の代わりに、棒状の工具等を用いても行うことができる。
さらに、取外し治具8では第3のベース板10を持つことで、突起部9の姿勢の調整が容易となるため、治具挿通口2aに挿通した突起部9によって、係合部3a~3cに対する凸部6aの係合状態を解消する操作を安定した状態で効率よく行うことができる。
なお、本発明の板材連結具及び取外し治具は、上述の構造に限定されるものではない。例えば、板材連結具11を構成する第1の部材1の治具挿通口2aは円形をなす代わりに、略正多角形状をなしていても良い。ただし、治具挿通口2aが円形をなしている場合には、治具挿通口2aの内径よりも外径が小さいボルトを上述の棒状の工具等の代わりに用いることができる。
また、取外し治具8の突起部9は円柱体に限らず、例えば、第3のベース板10に平行な断面が略正多角形状をなす構造であっても良い。ただし、治具挿通口2aが円形をなしている場合には、突起部9も円柱体であることが望ましい。この場合、突起部9を治具挿通口2aに挿通する際に、側面9bを治具挿通口2aの内周面に沿わせるようにすることにより、突起部9を第1のベース板2に対して垂直な状態に保ち易いというメリットがある。
【0037】
背面6e、6eの側へ折れ曲がるように弾性変形した一対の係合爪6、6は矢印Eで示すように変形を回復して元の形状に戻ろうとする。その結果、突起部9の先端9aは、図9(b)に破線の矢印で示すように一対の係合爪6、6の傾斜部6b、6bからその接触面に垂直なFを受ける。このとき、一対の係合爪6、6の傾斜部6b、6bは突起部9から力Fの反作用として力Fを受ける。そして、この力Fの上方向(第1のベース板2から垂直に離れる方向)の成分f2Vは、前述の力Fの上方向の成分fとともに一対の係合爪6、6を第1のベース板2から垂直に離れる方向へ移動させるように作用する。これにより、第2の部材5が第1のベース板2から離れる方向へ移動し、第1の部材1からの取り外しが可能となる。
なお、係合爪6が係合部3b、3cに係合している場合にも取外し治具8を用いることにより同様にして第1の部材1から第2の部材5を容易に取り外すことができる。すなわち、板材連結具11では第2の部材5を第1の部材1から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0038】
このように、板材連結具11では、係合部3a~3cに対する係合爪6の凸部6aの係合状態を治具挿通口2aに挿通された取外し治具8の突起部9によって解消できることに加え、その係合状態を解消することで、上板51及び下板52から第1の部材1及び第2の部材5を取り外すとともに上板51と下板52を分離することが可能となる。すなわち、板材連結具11によれば、内装材50に対する取り付け作業や内装材50からの取り外し作業及び内装材50を構成する上板51と下板52を分離可能な状態にする作業を容易に行うことができる。また、板材連結具11によれば、第1の部材1及び第2の部材5を取り外して分離した上板51及び下板52に粘着品や接着剤が付着していないため、使用済みの内装材50を繰り返して使用することが可能である。
【0039】
本発明の板材連結具は、本実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、ガイド板3や係合爪6が一つずつ設けられた構造とすることもできる。ただし、本実施例に示したように一対のガイド板3、3と一対の係合爪6、6を備えた構造であれば、一対の係合爪6、6の凸部6a、6aが一対の係合部3a、3aに対して両側からそれぞれ係合している場合に、一対の係合爪6、6によって第2の部材5の一対のガイド板3、3の幅方向(第1の部材1及びガイド板3の双方に平行な方向)への移動が制限されるとともに、一対のガイド板3、3によって一対の係合爪6、6のガイド板3に垂直な方向への移動が制限されることから、係合爪6の凸部6aが係合部3a~3cから外れ難く、両者の係合状態が不用意に解消されてしまうおそれがないというメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の板材連結具及び取外し治具並びにそれらによって構成される板材連結システムは、搬送容器の内装材に限らず、少なくとも一部に板状部分を有する部材同士を連結する際に使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…第1の部材 2…第1のベース板 2a…治具挿通口 2b…内面 2c…外面 3…ガイド板 3a~3c…係合部 3d…対向面 3e…背面 3f…側面 4…棒状体 5…第2の部材 6…係合爪 6a…凸部 6b…傾斜部 6c…先端 6d…対向面 6e…背面 7…第2のベース板 7a…内面 8…取外し治具 9…突起部 9a…先端 9b…側面 10…第3のベース板 10a…内面 11…板材連結具 12a…傾斜部 12b…前面 12c…平坦部 13…板材連結システム 50…内装材 50a、50b…物品収容部 50c…上面 51…上板 51a~51c…開口部 51d…下面 51e…上面 52…下材 52a…上面 52b…下面 52c…開口部
【要約】
【課題】搬送容器の内装材のように少なくとも一部に板状部分を有する部材同士を連結する際に粘着品や接着剤を必要とせず、かつ、連結対象物への取り付け作業が容易であって、しかも連結対象物を繰り返して使用することが可能な板材連結具及び取外し治具並びにそれらによって構成される板材連結システムを提供する。
【解決手段】本発明の板材連結システムは、円形の治具挿通口2aを有する第1のベース板2の内面2bに立設されるとともに先端が棒状体4を介して接続された一対のガイド板3、3の対向面3d、3dに係合部3a~3cが設けられた第1の部材1と、第2のベース板7の内面7aに一対の係合爪6、6が立設された第2の部材5と、円柱体からなる突起部9が第3のベース板10の内面10aに立設された取外し治具8を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10