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特許7007768泥土の改質材及び泥土の改質方法、泥土の改質材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】泥土の改質材及び泥土の改質方法、泥土の改質材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/40 20060101AFI20220118BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C09K17/40 P
C02F11/00 101Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021079462
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2021-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309016854
【氏名又は名称】株式会社ワールド・リンク
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】笠羽 豊大
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕之
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190436(JP,A)
【文献】特開2019-081876(JP,A)
【文献】特開2001-104998(JP,A)
【文献】特開2000-034482(JP,A)
【文献】特開平08-003554(JP,A)
【文献】特開平07-188659(JP,A)
【文献】特開昭51-124570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00-17/52
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪砂および珪藻土を含む無機粉体と、
アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含み、
前記無機粉体における前記珪砂の含有率が20質量%以上であり、
前記水溶性ポリマーが、少なくともアニオン水溶性ポリマーを含む、建設汚泥および/または浚渫土の泥土の改質材。
【請求項2】
前記無機粉体100質量部に対して、前記水溶性ポリマーを、3~50質量部含む、請求項1に記載の改質材。
【請求項3】
前記珪砂が、7号以下の小ささの粒度区分のものである、請求項1または2に記載の改質材。
【請求項4】
さらに、固化材を含む、請求項1~3のいずれかに記載の改質材。
【請求項5】
建設汚泥および/または浚渫土の泥土100質量部に対して、
珪砂および珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含み、前記無機粉体における前記珪砂の含有率が20質量%以上であり、前記水溶性ポリマーが、少なくともアニオン水溶性ポリマーを含む泥土の改質材を1~10質量部、を混合することで、前記泥土を造粒する泥土の改質方法。
【請求項6】
珪砂および珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の粉体状の水溶性ポリマーと、を混合するものであり、
前記無機粉体における前記珪砂の含有率が20質量%以上であり、前記水溶性ポリマーが、少なくともアニオン水溶性ポリマーを含む、建設汚泥および/または浚渫土の泥土の改質材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土の改質材やその製造方法に関する。また、泥土の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場における排出土のうち、コーン指数200kN/m2以下のものは「泥土(建設汚泥)」と呼ばれ、廃棄物処理法に基づき産業廃棄物の汚泥として取り扱われる。その大部分は、収集、運搬、中間処理費に要する割高なコストをかけて処理されているのが現状である。
【0003】
一方、資源の有効活用および処理コストの低減等を目的とする泥土のリサイクル技術が検討されている。現在、主流となっている泥土のリサイクル法はフィルタープレス等を用いる物理的脱水法や、高分子、古紙等の有機系処理材を用いた吸水・脱水固化処理技術である。しかし、これらの処理技術は、含水量の高い泥土、湖床堆積土、ヘドロ等には適用困難である。
【0004】
また、セメント、石灰等の固化材を添加することによる安定化処理技術が汎用されている。これらの固化材は、水和反応、ポゾラン反応、エトリンガイト反応等の複雑な化学反応を同時に起こし、強固な自硬性を発現することがよく知られているが、そのときに必要な水分は、最大値で約65%とされている。
【0005】
このうち、結晶水の取り込み量は、ポルトランドセメントの場合で、水和反応水の量は25%程度、土壌固化用セメント系の場合で35%程度とされている。このことは、土壌含水比35%まではフロー値110mm以下を保つことができるが、35%以上ではスラリー状になることを示している。フロー値110mm以下とは、ダンプトラックで運搬可能値の目安である。また、強度においても35%以上になると低下するので、補正するために水分調整および添加量の増大を行う必要がある。
【0006】
また、泥土の水分調整には安価で入手が容易な生石灰が広く用いられている。生石灰を用いる水分調整法では、泥土に含まれる水分と生石灰との反応熱を利用して過剰な水分を急激に蒸発させるため、短時間で処理が完了する利点を有しているが、その反面、激しい発熱に伴い、泥土の核がしばしば200~300℃の高温に達することが作業環境の悪化を招く一因となっている。しかし、現場レベルで施工可能な他の固化方法には、数時間の攪拌処理を要するため、作業性に問題がある。このように、セメント系および石灰系の安定化処理材を用いる従来の高含水泥土の処理には、作業性などの大きな問題がある。
【0007】
また、フミン酸やフルボ酸等の有機質を多く含む湖沼底土や含油泥土については、セメントの表面にこれらの有機質が吸着され、セメントの水和反応を阻害するため、セメント系の安定処理材を固化処理に用いることが困難である。そのため、石灰系高炉セメント等との併用や、前処理した泥土と高分子との併用による固化性能の改善が試みられている。しかし、最適な組成比の決定には多くの試行錯誤を必要とするとともに、固化処理に要するコスト上昇を招く要因ともなっている。
【0008】
また、例えば特許文献1には、大量に廃棄物として発生するフライアッシュ灰やペーパースラッジ灰などの焼却灰を再利用し、含水量の多い軟弱土やヘドロ状汚泥を植物の植生に好ましい粒状化の土壌に改良するとともに、植物生態系に有害なセメントの使用量を極力抑制して、これまで以上に土壌強度を高めることができる高含水軟弱土壌改良用固化材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-363560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の高含水軟弱土壌改良用固化材は、泥土に対して5~10質量%の割合で添加する必要がある。すなわち、1トンの泥土に対して50~100kgの固化材を使用することになり、この量はセメント系の固化材程度となり、使用量が非常に多い。また、含水比が高い場合は水分調整ができずに、スラリー状になる。
【0011】
また、セメント系や石灰系の固化材を用いて固化した場合、アルカリ性になるため、植栽土として再利用できず、また、添加量の多さはコストパフォーマンスにおいても問題がある。
【0012】
そこで、本発明においては、泥土を安定固化処理することが可能な新たな泥土の改質材や泥土の改質方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1> 珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、
アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材。
<2> 前記無機粉体100質量部に対して、前記水溶性ポリマーを、3~50質量部含む、前記<1>に記載の改質材。
<3> 前記無機粉体が、前記珪砂および前記珪藻土をいずれも含み、前記無機粉体における前記珪砂の含有率(珪砂/無機粉体)が、20質量%以上である、前記<1>または<2>に記載の改質材。
<4> 前記珪砂が、7号以下(日本産業規格 JIS G5901:2016)の小ささの粒度区分のものである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の改質材。
<5> さらに、固化材を含む、前記<1>~<4>のいずれかに記載の改質材。
<6> 泥土100質量部に対して、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材を1~10質量部と、を混合することで、前記泥土を造粒する泥土の改質方法。
<7> 珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の粉体状の水溶性ポリマーと、を混合する泥土の改質材の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改質材や改質方法によれば、泥土を安定固化処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願の実施例にかかる泥土の調整を説明するための像である。
図2】本願の実施例にかかる泥土と混合した改質材を並べた像である。
図3】本願の実施例にかかる改質材を混合した直後の泥土と、攪拌後の団粒化した改質土を示す像である。
図4】本願の実施例にかかる泥土と混合した改質材を並べた像である。
図5】本願の実施例にかかる改質材を混合した直後の泥土と、攪拌後の団粒化した改質土を示す像である。
図6】本願の実施例に用いた改質材の成分や改質材にかかる像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0018】
[本発明の改質材]
本発明の改質材は、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材である。
【0019】
[本発明の改質方法]
本発明の改質方法は、泥土100質量部に対して、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材を1~10質量部と、を混合することで、前記泥土を造粒する泥土の改質方法である。
【0020】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の粉体状の水溶性ポリマーと、を混合する泥土の改質材の製造方法である。
【0021】
本発明の改質材や、改質方法によれば、泥土を安定固化処理することができる。なお、本願において本発明の製造方法により本発明の改良材を製造でき、本発明の改良剤により本発明の改質方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0022】
本発明の改良剤等は、水溶性ポリマーを用いる。水溶性ポリマーは、水を吸水することで、泥土に含まれている水の流動性などを低減し、泥土を固化する安定化に寄与する。一方で、吸水しやすい状態の水溶性ポリマーは、未使用時にも空気中の水分を吸水して、吸水性ポリマー同士が吸着固化したりして、取り扱い性が下がる場合がある。
【0023】
このような水溶性ポリマー同士の吸着を防止するために、乾燥状態で数mm程度の粒径の球状の粒などに加工して利用される場合がある。しかし、このような水溶性ポリマーを大きな粒径のまま泥土と混合すると、水溶性ポリマー単独で過剰に大きくなり、泥土の土砂の粒間に分散されないことも懸念される。
【0024】
水溶性ポリマーは粉体状のものとしても提供されている。粉体状の水溶性ポリマーは、粒状の水溶性ポリマーの製造工程などで規格外のものなどとしても得られたりし、おおきな粒状への成長などを行わないでよいため、製造コストが低い。また、粉体状の水溶性ポリマーは、粒径が小さくなり、相対的に比表面積が大きくなり、周囲の水とも接触しやすい。一方で、水溶性ポリマーは前述のようにそのままだと取り扱い性が低下する。
【0025】
本発明者らは、このような水溶性ポリマーの使用にあたって、水溶性ポリマーを、珪砂や珪藻土と混合した混合物は、これらが均一に分散し、静電気力で接着することを見出した。また、この混合物は、保管時も粉状を維持して水溶性ポリマーが湿気を吸って固化したりしにくい。また、この混合物は泥土にも混合しやすいものとなる。また特に珪砂は入手しやすく低廉な場合が多い。よって、これらの水溶性ポリマーや珪砂などを主成分とすることで、泥土の改質のために多量に必要とされる改質材を使用しやすい価格で提供することもできる。本発明はかかる知見に基づく。
【0026】
[無機粉体]
本発明の改質材は、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体を含む。無機粉体は、改質材において、泥土の水を分散させて安定化や、水溶性ポリマーの担体様に機能する。
【0027】
[珪砂]
本発明の改質材に用いる無機粉体は、珪砂を含む。珪砂は、石英とも呼ばれる二酸化ケイ素を主成分とした鉱物であり、鋳物用やモルタル用、人工芝の目砂などに用いられている。珪砂は、堆積砂を用いる天然砂や、岩石を破砕する人造珪砂などがあるが、本発明においては、天然砂も人造珪砂もいずれも用いることができる。珪砂は、単独では吸水性が低く吸湿等が起こりにくく、水溶性ポリマーと静電気力で接着する担体様のものとして寄与する。
【0028】
[粒度区分]
本発明に用いる珪砂は、粒度区分が、7号以下の小ささのものであることが好ましい。珪砂の粒度が小さいものは、珪砂7号や、珪砂7.5号、珪砂8号などとして販売されている。この珪砂の粒度区分は、日本産業規格 JIS G5901:2016に基づいて分類することができる。粒度が小さい珪砂を用いることで、比表面積が多くなり、混合する水溶性ポリマーの粉体と均一に分散されやすくなる。また、泥土にも広く分散して、混合しやすくなる。また、このような粒度区分の珪砂は、篩下などとも呼ばれて、他の用途が限られ、比較的低コストで入手しやすい。
【0029】
[珪藻土]
本発明の改質材に用いる無機粉体は、珪藻土を含む。珪藻土(ダイアトマイト)は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積岩で、二酸化ケイ素を主成分とする鉱物である。この珪藻土は、珪砂と同様に、水溶性ポリマーと静電気力で接着し、水溶性ポリマーの担体様のものとなる。また、珪藻土は多孔質であることから、保管時に吸湿して水溶性ポリマーが吸水しすぎることを防止したり、泥土の水分の吸水にも寄与する。珪藻土は、焼成した珪藻土を用いることがより好ましい。
【0030】
本発明に用いる珪藻土は、水溶性ポリマーや、珪砂と混合したときの分散性を考慮して、粒径が小さいものを用いることが好ましい。例えば、珪藻土は、レーザー法による算術平均径が、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。100μm以下の粒径のものが主たるものとなるような粒度分布のものを用いることが好ましい。
【0031】
[無機粉体の混合比]
無機粉体は、珪砂および珪藻土をいずれも含み、無機粉体における珪砂の含有率(珪砂/無機粉体)が、20質量%以上であることが好ましい。珪砂と、珪藻土を含むことで、双方の効果を奏することができる。珪砂の含有率が、20質量%以上含まれることで、分散性に優れ、保管時の吸湿などを防止することができる。珪砂の含有率は30質量%以上や、40質量%以上とすることが好ましい。珪砂の含有率は80質量%以下や、70質量%以下が好ましい。相対的に珪藻土の含有率が低くなりすぎると、珪藻土の多孔質を活かした効果が得られにくくなる場合がある。
【0032】
[水溶性ポリマー]
本発明の改質材に用いる水溶性ポリマーは、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーを用いる。水溶性ポリマーは、粉体状のものを用いる。粉状とすることで、泥土との分散性に優れたものとなる。また、比表面積が大きくなることで、泥土の含まれる水分との接触しやすくなり吸水しやすくなる。
【0033】
水溶性ポリマーが、泥土に含まれる水に溶解したときに、カチオン部とアニオン部が反応しないようpHが3以下(アニオン基の解離が抑えられる)になるように粉末酸を添加してもよい。分子内に相反するイオン性を持つため、汚泥との反応は複雑なものと考えられる。無機凝集剤が添加された汚泥に対しては、ノニオン部が、無機物あるいは金属水酸化物に反応すると考えられる。また、カチオン部は、汚泥の負荷電あるいは他の凝集剤のアニオン部に、アニオン部は、金属イオンあるいは他の凝集剤のカチオン部に反応すると考えられる。この様な反応により、凝集力が高くなり、脱水効果を向上することができる。
【0034】
これらは、アニオン性の高い汚泥(余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥)に対しても有効であり、まず汚泥を無機凝集剤で荷電中和してから、両性高分子凝集剤を添加し脱水機に供給する。アニオン性の低いオキシデーションディッチ汚泥等では、無機凝集剤を併用せず両性高分子凝集剤単独で効果を示す場合もある。
【0035】
[アニオン水溶性ポリマー]
アニオン水溶性ポリマーは、アクリル酸およびアクリルアミドのコポリマーを用いることができる。例えば、株式会社エス・エヌ・エフ アニオン性水溶性ポリマー「Flopam(商標)」の、「AN934SH」などを用いることができる。これらは、水に分散させたとき、pH:6~8(5g/L)程度となる。
【0036】
[カチオン水溶性ポリマー]
カチオン水溶性ポリマーは、ジメチルアミノエチル・メタクリレート酸およびアクリルアミドのコポリマーや、スルファミン酸系ポリマーなどを用いることができる。例えば、株式会社エス・エヌ・エフ「Flopam(商標)」の「FO8000」などを用いることができる。これらは、水に分散させたとき、pH:3.5±1.0(5g/L)程度となる。
【0037】
水溶性ポリマーは、粉体状のものを用いることが好ましい。粉体状の水溶性ポリマーは、平均粒径が150μm以下のものが好ましく、120μm以下や、100μm以下、80μm以下がより好ましい。また水溶性ポリマーは、ふるい分けにより粒径が小さいものとすることができる。例えば、100メッシュよりも大きいメッシュで、ふるい分けすることができる。100メッシュの目開きは約154μmであり、このふるいにより、154μm以下の水溶性ポリマーを選択的に使用することができる。メッシュは、120メッシュ(目開き132μm)、150メッシュ(目開き109μm)、180メッシュ(目開き91μm)、200メッシュ(目開き77μm)などを用いてもよい。
【0038】
[改質材]
本発明の改質材は、これらの成分を含む泥土の改質材である。本発明の改質材は、泥土と混合して、泥土の流動性を低下させて団粒状にすることができる。また、pHも中性付近とすることができ、過剰に硬化することもなく、取り扱いやすい。
【0039】
[改質材の混合比]
本発明の改質材は、無機粉体100質量部に対して、水溶性ポリマーを、3~50質量部含むものであることが好ましい。水溶性ポリマーが少なすぎる場合、水溶性ポリマーによる吸水力が不足し、泥土の改質効果が不足する場合がある。また、水溶性ポリマーが過剰な場合、吸湿等しやすくなり取り扱いにくい場合がある。
【0040】
本発明の製造方法は、このような本発明の改質材をなす成分を混合するものである。無機粉体や、粉体状の水溶性ポリマーを、それぞれが吸湿しないように乾燥した状態で混合することで改質材を得ることができる。この混合にあたっては、珪砂は7号以下相当のものを用いて、珪藻土や水溶性ポリマーは、それぞれ140メッシュ程度の篩によりふるい分けされた、いわゆる篩下と呼ばれる篩を通過した粒径が小さいものを用いることができる。
【0041】
[固化材]
本発明の改質材は、さらに、固化材を用いることができる。固化材は、土壌や泥土の改質材や安定固化材などとして用いられている各種のものを用いることができる。セメント、石灰、マグネシウム成分、およびカルシウム成分からなる群から選択される1以上の固化材を含むものとすることができる。これらの固化材は、主材となる無機粉体と水溶性ポリマーを分散させて、泥土に広く分散させやすくするための体積の調整などに用いたり、副次的に吸水したり、反応を活性化したり、pHの調整などに寄与する。マグネシウム成分は、酸化マグネシウムや酸化マグネシウムが反応したものである。例えば、軽焼マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、などを用いることができる。
【0042】
これらの固化材を用いる場合、無機粉体および水溶性ポリマーの合計量(主材X)との質量比として、主材X:固化材が、1:0.5~1:20とすることができる。さらに、1:1~1:10程度としてもよい。
【0043】
[改質方法]
本発明の改質方法は、泥土と、改質材を混合することで、泥土を造粒する泥土の改質方法である。本発明の改質方法は、泥土100質量部に対して、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材を1~10質量部と、を混合する。また、混合したものを養生等することで、泥土を団粒状に造粒する。このようにして、取り扱いしやすい改質された処理土とすることができる。
【実施例
【0044】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[試料]
・珪砂:熊本珪砂鉱業製の珪砂7号以下(篩下微粉を含む)
・珪藻土:ラヂオライト(登録商標)100番
・アニオンポリマー(A):株式会社エス・エヌ・エフ アニオン性水溶性ポリマー「Flopam(商標)AN934SH」 アクリル酸およびアクリルアミドのコポリマー
・カチオンポリマー(B):株式会社エス・エヌ・エフ「Flopam(商標)FO8000」 ジメチルアミノエチル・メタクリレート酸およびアクリルアミドのコポリマー
【0046】
[試験例1]
前述の試料を、下記表1に示す質量比率で、混合し、改質材を調製した。
【0047】
【表1】
【0048】
・試験用の泥土(1)の調製
試験土(含水比33.6%、土質分類シルト)300gと、水道水100gとを混合し、含水比:約77.8%の試験用の泥土(1)400gを製作した。調整を図1、2に示した。
(含水比の算出:ms=300g ÷(1+33.6/100)=225g(土の乾燥質量)、mw=300g-225g=75g(水の質量)、w=(75g+100g:水)/225g:土*100=77.8%)
【0049】
[混合試験]
泥土の改質時の使用量の目安として、3kg/m3程度が想定される。この想定使用量に準じて、泥土400gに対して、改質材1.2gを混合して、実験を行うものとした。
試験用の泥土(1)400gに、改質材(A1)または改質材(A2)を、1.2g添加し、約3分間、混合した。
改質材(A1)を混合後の状態を、図3に示す。混合直後は図3左に示すように粘土状だが、静置したり混合することで、図3右に示すように、団粒構造を形成するものに改質することができた。なお、改質材(A2)も改質材(A1)と同様の団粒構造を形成するものに改質することができた。
【0050】
[試験例2]
・改質材主材:珪砂40%、焼成珪藻土40%・ポリマー20%(比重0.48)(120メッシュ(目開き132μm)でふるい分け相当の粒径)
・軽焼マグネシウム(平均粒径:44μm)
改質材主材10重量部+軽焼マグネシウム90質量部を混合して、改質材(B)とした。
【0051】
試験土は、採取時の含水比33.6%であった。水の揮発を考慮して含水比を33%として試算し、調整含水比60%の試料土を得た。改質材(B)で改良し7日間養生後のpHを測定した。
・試験土(含水比約33%):100g
・加水:20g
Ms=100g÷(1+(33/100))=75g(75.187)(土の量)
Mw=100g-75g=25g(水の量)
W=(25g+20g)/75g=調整含水比60%
添加材)
・改質材:1.6g/120gwt(添加率1.33%:13.3kg/m3
【0052】
図4図5に、試験例2にかかる試験状態の像を示す。図4左は、調整した泥土である。図4右は、混合する改質材(B)である。図5左は、混合後の状態であり、図5右は、混合して養生した後の団粒化した状態である
【0053】
図6は、本願の実施例にかかる各成分や、改質材の例を示す像である。(a)は、珪砂である。(b)は、焼成珪藻土である。(c)は、水溶性ポリマーである。(d)は、これらを混合した改質材である。いずれも、原料単独でも粉体である。これらの粉体は、ピーク粒径が100μm以下程度となるようなものを適宜篩下などとして用いている。また、水溶性ポリマーは、単独では開封した湿度でも吸湿してダマになる場合があるため、単独では防湿して用いる必要がある。一方、改質材として混合した状態では、ダマなどにはならず、保管や取り扱いしやすいものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の固化材は、建設汚泥や浚渫土等の泥土の安定固化処理に有用である。
【要約】
【課題】泥土を安定固化処理することが可能な新たな泥土の改質材や、泥土の改質方法を提供する。
【解決手段】珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材。泥土100質量部に対して、珪砂および/または珪藻土を含む無機粉体と、アニオン水溶性ポリマー、およびカチオン水溶性ポリマーからなる群から選択される1以上の水溶性ポリマーと、を含む泥土の改質材を1~10質量部と、を混合することで、前記泥土を造粒する泥土の改質方法。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6