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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019544211
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2017046127
(87)【国際公開番号】W WO2019064615
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017191575
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一也
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240041(JP,A)
【文献】特開2014-080285(JP,A)
【文献】登録実用新案第3075335(JP,U)
【文献】特開平6-127774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43M 11/06
B65H 18/10
B65H 23/06
B65H 35/07
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材テープの一方の面上に塗膜を設けた転写テープが巻かれ、前記転写テープを繰り出す繰出コアと、
前記塗膜を被転写体に押圧して転写する転写ヘッドと、
前記塗膜転写後の前記基材テープを巻取る巻取コアと、
前記繰出コアから繰出された前記転写テープの前記塗膜を有しない側の面である第1面と接触しつつ前記転写テープの走行に伴い回転する中間ローラと、
前記中間ローラと、前記巻き取りコアとの間に掛けたベルトと
を備え、
前記中間ローラの前記転写テープと接触する面である第2面は、前記第1面に対して粘着性を有し、
前記ベルトにより、前記中間ローラと前記巻取コアとが連動回転して、前記塗膜転写後の前記基材テープが前記巻取コアに巻き取られる、
塗膜転写具。
【請求項2】
前記第1面と前記第2面の180°剥離力が、2mN/18mm以上である、請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
前記ベルトはさらに前記繰出コアと接触し、前記ベルトは、前記繰出コアと接触する位置において、前記転写ヘッドで前記塗膜が前記被転写体に転写されることによって前記繰出コアが動く方向の逆方向に動く請求項に記載の塗膜転写具。
【請求項4】
前記ベルトはさらに前記繰出コアと接触し、前記ベルトは、前記繰出コアと接触する位置において、前記転写ヘッドで前記塗膜が前記被転写体に転写されることによって前記繰出コアが動く方向の逆方向に動く請求項に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字修正用塗膜、接着用粘着膜、装飾用塗膜等を被転写体に押圧転写するための塗膜転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の塗膜転写具1の構成を説明するための概略図である。この塗膜転写具1は、ケース5と、ケース5の開口部を覆うカバー(図示せず)とを備える。ケース5は、内部に支軸12,14を具え、各支軸12,14には繰出コア2及び巻取コア3がそれぞれ回転可能に保持されている。また、ケース5からは、転写ヘッド4が外部に突出している。塗膜転写具1は、基材テープ表面に塗膜が塗工された転写テープTをさらに備える。転写テープTは繰出コア2に巻回されている。繰出コア2から引出された転写テープTは、転写ヘッド4において塗膜と基材テープとに別れ、塗膜が被転写体に転写される一方、基材テープだけが巻取コア3に巻取られるようになっている。繰出コア2と巻取コア3が互いに連動して回転するように、両コア2,3にはベルト7が掛けられている。
【0003】
この塗膜転写具1は、塗膜の転写時に基材テープの巻取り速度が転写テープTの繰出し速度より速くなるように両コア2,3を回転させ、その速度差を各部材間のスリップで吸収することによって、転写テープTに適度な張力がかかるように構成されている。塗膜転写具1では、このようにして、転写テープTに適度な張力をかけることによって、転写テープTが弛まないようにしている。転写テープの使用終期には、繰出コアに巻かれた転写テープのパンケーキの外径が小さくなる。このため、繰出コアに巻かれた転写テープのパンケーキ外径が大きな使用初期に比べて、転写テープTに大きな張力がかかるようになる。使用終期において、転写テープTにかかる張力が大きくなり過ぎると、使用者は、塗膜を被転写体に転写する際、転写ヘッドを被転写体に強く押して転写作業をする必要がある。従って、非力な使用者は、転写ヘッドを被転写体に押す力が不足して、転写ヘッドで転写テープTが引き出せず、塗膜転写ができないことがある。また、非力な使用者では、塗膜が転写できた場合でも、転写ヘッドで被転写面を押圧する力が偏って、転写テープTの幅方向の一部で塗膜が転写されない箇所が発生するなどの転写不良が発生していた。このような使用終期での転写不良は、使用終期での転写テープTにかかる張力を小さくすることで改善できるが、使用初期で転写テープTにかかる張力が小さくなりすぎるという問題があった。
【0004】
使用初期で転写テープTにかかる張力が小さくなりすぎると、使用初期に転写テープが弛むという問題が発生する。転写ヘッド部分で転写テープが弛むと、転写終了直後の塗膜の切れが悪くなるといった問題が発生する。
【0005】
一方、繰出コアの外径を十分に大きくしておけば、使用初期における繰出コアのパンケーキ外径と、使用終期におけるパンケーキ外径との比を小さくすることができる。このため、使用初期から大きな張力が転写テープTにかかるようにしても、使用初期から終期にかけての転写テープTの張力の変化を抑えることができ、使用終期の転写テープの張力が大きくなり過ぎることはない。しかし、繰出コアの外径を大きくすると、塗膜転写具が大型化してしまうという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、転写ヘッドに加えられた押圧力により、繰出コアと巻取コアの軸間距離が短くなるように構成された塗膜転写具が特許文献1と特許文献2により提案されている。両コアの軸間距離が短くなると、両コアを連動回転させているベルトの張力が低下する。これらの塗膜転写具では、塗膜を転写する際に転写ヘッドを押圧することによって、転写テープの張力を緩和するため、使用者は軽い押圧で転写することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1と特許文献2の塗膜転写具では、繰出コアと巻取コアの軸間距離を短くするために、複雑な機構を設ける必要があった。特許文献3は、このような複雑な機構を設けなくても、使用初期から使用終期にかけての転写テープTの張力変化を抑えることができるように構成された塗膜転写具(以下、塗膜転写具Zと言う)を提案している。塗膜転写具Zでは、テープ供給リール(繰出コアに転写テープが巻き付けられ、パンケーキ状となったもの)から転写ヘッドへ伸びるテープ(転写テープ)の途中に回転可能に支承されたテープローラを備える。テープは、テープローラの外周の少なくとも一部に巻き回されて、テープローラはテープの移動と共に摩擦力によってテープと一体的に回転する。また、塗膜転写具Zでは、巻取りリール(巻取コア)とテープローラとの間に回転力伝達機構が設けられ、この回転力伝達機構によって設定された値以下の回転力を伝達できるようになっている。
【0008】
このように、塗膜転写具Zでは、テープ供給リールとは別にテープローラを設け、テープの移動によってそのテープローラを回転させ、テープローラの回転を巻取りリール(巻取コア)へ伝達して、テープを巻き取る構成としている。テープローラの径はテープの使用によって変化しないので、塗膜転写具Zでは、テープが引き出される力(転写テープの張力)は使用初期から使用終期まで略一定に保たれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特許文献1:特開2002-283795公報
特許文献2:特開2009-285883公報
特許文献3:特開2006-240041公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献3に記載されているように、塗膜転写具Zでは、テープが引出されるときにテープ供給リールの回転に対する抵抗をきわめて小さく設定する必要がある。テープ供給リールの回転に対する抵抗が大きいと、テープ供給リールから引き出される転写テープの張力が大きくなる。転写テープの張力は、テープ供給リールの回転に対する抵抗をテープ供給リールの半径で割った値であるから、テープ供給リールの回転に対する抵抗が大きいほど、テープ供給リールからテープが引き出されるテープの張力が大きくなる。また、使用初期のテープの張力に比べて、使用終期のテープの張力が大きくなるから、テープ供給リールの回転に対する抵抗が大きければ、塗膜転写具Zでもやはり使用終期のテープの張力は非常に大きな値となる。
【0011】
しかしながら、テープ供給リールの回転に対する抵抗をきわめて小さくすると、テープ供給リールが外力によって簡単に回転して、テープ供給リールとテープローラ間のテープに弛みが生じることがある。テープに弛みが生じた状態では、テープがテープローラに接触していない。この状態で塗膜転写具を使用すると、使用者がテープを転写ヘッドで押圧して転写作業をしても、当初はテープローラが回転しない。塗膜転写具Zでは、巻取りリール(巻取コア)はテープローラと連動して回転するようになっているので、テープローラが回転しない結果、巻取リール(巻取コア)も回転しない。この結果、転写ヘッドでテープから塗膜が転写された残りの基材テープは、巻取リール(巻取コア)に巻き取られず、転写ヘッドの周囲で弛んだ状態となる。転写ヘッドの周囲でテープが弛んだ状態になると、テープが捩じれることや、折れ曲がることがあり、この結果、テープが走行不能となることがある。
【0012】
本発明は、複雑な構造を用いることなく、塗膜転写具の使用初期から使用終期に至る転写テープ張力の変化を緩和することができ、さらには、転写テープの弛みによる転写テープの走行不良が生じない塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1観点に係る塗膜転写具は、基材テープの一方の面上に塗膜を設けた転写テープが巻かれ、前記転写テープを繰り出す繰出コアと、前記塗膜を被転写体に押圧して転写する転写ヘッドと、前記塗膜転写後の前記基材テープを巻取る巻取コアと、前記繰出コアから繰出された前記転写テープの前記塗膜を有しない側の面である第1面と接触しつつ前記転写テープの走行に伴い回転する中間ローラとを備える。前記中間ローラの前記転写テープと接触する面である第2面は、前記第1面に対して粘着性を有する。
【0014】
本発明の第2観点に係る塗膜転写具は、第1観点に係る塗膜転写具であって、前記中間ローラと、前記巻き取りコアとの間に掛けたベルトをさらに備える。前記ベルトにより、前記中間ローラと前記巻取コアとが連動回転して、前記塗膜転写後の前記基材テープが前記巻取コアに巻き取られる。
【0015】
本発明の第3観点に係る塗膜転写具は、第1観点に係る塗膜転写具であって、前記第1面と前記第2面の180°剥離力が、2mN/18mm以上である。
【0016】
本発明の第4観点に係る塗膜転写具は、第2観点に係る塗膜転写具であって、前記第1面と前記第2面の180°剥離力が、2mN/18mm以上である。
【0017】
本発明の第5観点に係る塗膜転写具は、第2観点に係る塗膜転写具であって、前記ベルトはさらに前記繰出コアと接触し、前記ベルトは、前記繰出コアと接触する位置において、前記転写ヘッドで前記塗膜が前記被転写体に転写されることによって前記繰出コアが動く方向の逆方向に動く。
【0018】
本発明の第6観点に係る塗膜転写具は、第4観点に係る塗膜転写具であって、前記ベルトはさらに前記繰出コアと接触し、前記ベルトは、前記繰出コアと接触する位置において、前記転写ヘッドで前記塗膜が前記被転写体に転写されることによって前記繰出コアが動く方向の逆方向に動く。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明の塗膜転写具では、複雑な構造を用いなくとも、塗膜転写具の使用初期から使用終期に至る転写テープの張力の変化を緩和することができ、さらには、転写テープの弛みによる転写テープの走行不良が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の塗膜転写具を示す。
図2】本発明の第2実施形態の塗膜転写具を示す。
図3】従来の塗膜転写具を示す。
図4】転写塗膜の切れを示す模式図を示す。
図5】転写押圧力の測定での塗膜転写具の使用状態(角度)を示す図である。
図6】転写テープTの張力の測定方法を示す図である。
図7】転写ヘッド先端から飛び出した転写テープを示す図である。
図8】繰出コア(パンケーキ)のフリーテンションの測定方法を示す図である。
図9】中間ローラからの転写テープの剥離状態の確認方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、本発明の第1実施形態の塗膜転写具Aを示す。図1(a)はカバーを取外した状態の正面図である。図1(a)は繰出コア2に巻き回された転写テープTが未使用で、繰出パンケーキの外径が大きな使用初期の状態を示している。図1(b)は図1(a)のY-Y断面図である。ただし、図1(b)はカバーを取り付けた状態を示している。
【0022】
塗膜転写具Aは、ケース5、カバー6、塗膜を基材テープ上に塗工した転写テ-プTを備える。さらに、転写テープTを巻き回す繰出コア2、転写テープTに塗工された塗膜を紙等の被転写体に転写する転写ヘッド4、塗膜を転写した後の基材テ-プを巻取る巻取コア3を備える。さらに、繰出コア2から繰出された転写テープTと接触して転写テープTの走行に伴い回転する中間ローラ8、中間ローラ8と巻取コア3に設けられたプーリーに掛け回され、中間ローラ8の回転を巻取コア3に伝えるベルト7を備える。
【0023】
塗膜転写具Aでは、転写ヘッド4によって塗膜が転写されると、繰出コア2から繰出された転写テープTの塗膜が設けられていない側の面(以下、背面と言う。)が中間ローラ8と接触して、転写テープTの走行に伴い中間ローラ8が回転する。転写テープTと中間ローラ8が滑って、転写テープTが走行した長さよりも中間ローラ8の外周が回転する周長が短くなると、ベルト7によって中間ローラ8と連動回転する巻取コア3が十分に回転しない。巻取コア3が十分に回転しないと、転写ヘッド4で塗膜を転写した後の基材テープが巻取コア3に巻き取られず、基材テープが転写ヘッド4と巻取コア3間で弛んで、転写テープT及び塗膜転写後の基材テープが走行不良となる。
【0024】
したがって、中間ローラ8は転写テープTの背面に対して滑らずに、転写テープTが走行した長さと同じだけ、中間ローラ8の外周が回転することが好ましい。中間ローラ8が転写テープTの背面に対して滑らないようにするためには、中間ローラの転写テープと接する面(以下、中間ローラの外周面と言う。)は前記転写テープの背面に対して粘着性を有することが好ましい。転写テープTの背面に対して粘着性を有する材料としては、任意のものが使用可能であり、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、各種ゴム系等が使用可能である。
【0025】
中間ローラ8の外周面の転写テープTの背面に対する粘着性は、転写テープTの背面に対する密着性、軽剥離性、及び、粘着剤の非移行性を同時に満足するものであることが好ましい。すなわち、転写テープTの背面と接した状態では、中間ローラ8の外周面が転写テープTの背面上を滑らず、転写テープTの走行に伴って、転写テープTとともに移動することによって中間ローラ8が確実に回転するよう、中間ローラ8の外周面には、転写テープTとの密着性が求められる。これに対して、転写テープTが中間ローラ8の外周面から剥がれる際には、中間ローラ8の外周面には、転写テープTが容易に引き剥がれる軽剥離性と、長時間貼りついた後に引き剥がされても粘着剤成分が転写テープの背面に移行しない性質が要求される。このような性能を同時に満足する粘着剤の材料としては、前記で列記したなかでも、シリコーン系が好ましく、特に、付加硬化型シリコーン成分が好ましい。
【0026】
中間ローラ8の外周面に使用される付加硬化型シリコーン成分としては、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有するシリコーン組成物を白金触媒の存在下で付加反応により硬化したシリコーンを主成分とするものが、前記の密着性、軽剥離性及び粘着剤の非移行性の点で好ましい。また、粘着性が不足する場合には、付加硬化型シリコーン成分にMQレジンを加えてもよい。MQレジンは、M単位[R3SiO1/2(式中Rは1価の炭化水素基)]で示されるシロキサン単位およびQ単位[SiO41/2]で示されるシロキサン単位を含むシリコーンレジンである。MQレジンは単独または2種以上組み合わされて用いられてもよく、D単位[R2SiO21/2(式中、Rは1価の炭化水素)]やT単位[RSiO31/2(式中、Rは1価の炭化水素)]を含んでいてもよい。また、分子中にアルケニル基などの官能基を有していてもよい。
【0027】
中間ローラ8の外周面を、転写テープTの背面に対して粘着性を有する材質とする方法は任意の方法が使用可能である。中間ローラ8の塗膜転写具内での摺動性に問題が無ければ中間ローラ8全体を粘着性のある材質で作製してもよいし、中間ローラ8のうち外周面だけを粘着性を有する材料で形成してもよい。中間ローラ8のうち外周面だけを粘着性の有る材料で形成する方法としては、中間ローラ8の外周に直接粘着性を有する材料をコーティングするか、又は粘着性を有する材料をコーティングした基材を中間ローラ8の外周に貼り付ける方法がある。
【0028】
中間ローラ8の外周面の転写テープTの背面に対する粘着性は、転写テープTの背面と中間ローラ8の外周面を180°方向に剥離させた際の剥離力として測定することができ、この剥離力が2mN/18mm以上であることが好ましい。剥離力が2mN/18mmを下回ると、中間ローラ8の外周面と転写テープTの背面の密着力(密着性)が不足し、中間ローラ8の外周面に対して転写テープTの背面が滑り易くなる可能性がある。また、転写テープTが弛むと、転写テープTが中間ローラ8の外周面から剥がれ易くなる可能性がある。
【0029】
一方、中間ローラ8の外周面の転写テープTの背面に対する180°剥離力の上限値は、剥離力が大きくなり過ぎるために塗膜転写具Aを使用することにより、転写テープTが中間ローラ8に巻き付かない範囲であれば良い。一般的な塗膜転写具の転写テープTの張力は、5mm幅の転写テープで294mN(30gf)であり、これを18mm幅に換算すると、1058mN/18mm(108gf/18mm)である。本発明者が、自動車部品等の固定に使用している粘着力が大きい粘着テープを使用し、この粘着テープの転写テープTの背面に対する180°剥離力を測定した結果、180°剥離力は127.4mN/18mmであった。したがって、一般に流通している粘着力の大きな粘着テープを中間ローラ8の外周面に使用しても、剥離力が大きくなり過ぎるために転写テープTが中間ローラ8に巻き付くことはない。ただし、180°剥離力が100mN/18mmを超えると、転写テープTが、通常中間ローラから剥離する位置よりも遅れた位置で剥離することがある。このため、180°剥離力は100mN/18mm以下が、好ましい。また、粘着力の大きな粘着テープでは、粘着剤は被着物に移行し易いものが多い。粘着剤が本発明における被着物である転写テープTの背面に移行すると、転写テープTが塗膜転写具A内を走行することにより、移行した粘着剤は転写ヘッド4に到達する。粘着剤が転写ヘッド4に到達すると、粘着剤が転写ヘッド4の先端部分に溜まるなどして、転写テープTの走行不良の原因となり得る。粘着剤として、前記の付加硬化型シリコーン成分を使用すれば、粘着剤が転写テープTの背面に移行することはない。このような点からも、粘着剤として、前記の付加硬化型シリコーン成分を使用することが好ましい。
【0030】
中間ローラ8の外周面の転写テープTの背面に対する180°剥離力は、次に示す方法で測定することができる。以下、本発明における中間ローラ8の外周面の粘着性は、次に示す方法で測定した値を示すものとする。
【0031】
[180°剥離力測定方法]
厚み12μmのPETシートの片面に転写テープ(修正テープ)背面用の離型剤を所定の厚みに塗工して形成した離型シートと、中間ローラの外周面に粘着性を付与するために中間ローラの外周に貼り付ける粘着テープとを準備する。JIS Z0237に規定する180°引きはがし粘着力の測定方法から、試験片の大きさ、被着面、及び引きはがし速度のみを変更して、粘着テープの粘着面(中間ローラ8の外周面)から離型シートの離型面(転写テープTの背面)を引きはがす際の180°剥離力を測定する。すなわち、18mm幅、長さ200mmにカットした離型シートの背面と、粘着テープの粘着面とをJIS Z0237所定の方法で貼り合せ、圧着した後、粘着テープが固定側となるようして、剥離速度51.1mm/秒にて、180°剥離力を測定する。
【0032】
図2に、本発明の第2実施形態の塗膜転写具Bを示す。図2(a)はカバーを取外した状態の正面図である。図2(a)は繰出コア2に巻き回された転写テープTが未使用で、繰出パンケーキの外径が大きな使用初期の状態を示している。図2(b)は図2(a)のY-Y断面図である。ただし、図2(b)はカバーを取り付けた状態を示している。
【0033】
塗膜転写具Bは、繰出コア2に設けられたプーリーがベルト7と接触している以外は、塗膜転写具Aと同様である。塗膜転写具Bでは、繰出コア2のプーリーとベルト7が接触しているため、繰出コア2の回転にブレーキを掛けるブレーキ部材を別途設けなくても、塗膜転写具Aに比べ、繰出コア2は回転し難い。よって、不使用時に塗膜転写具Bに加えられた振動などによって繰出コア2から転写テープTが繰出され難く、転写テープTに弛みが生じ難い。
【0034】
塗膜転写具Bでは、ベルト7が、中間ローラ8のプーリーと巻取コア3のプーリー間に掛け回された周回軌道を移動する。ベルト7の移動によって中間ローラ8の回転が巻取コア3に伝達されて巻取コア3が回転し、転写テープTから転写ヘッド4にて塗膜が転写された残りの基材テープが巻取コア3に巻き取られる。ベルト7はこの周回軌道を移動中に、繰出コア2と接触する。繰出コア2との接触位置におけるベルト7の進行方向は、繰出コア2が転写テープTを巻き戻す方向である。
【0035】
したがって、塗膜転写具Bでは、転写ヘッド4にて転写テープTから塗膜が転写されるとき、繰出コア2は転写テープTを繰り出す方向に回転しつつ、繰出コア2が転写テープTを巻き戻す方向へ進行するベルト7と接触している。塗膜転写具Bでは、使用初期から使用終期に至るまで、ベルト7が接触することによって繰出コア2へ作用するモーメントが、転写ヘッド4により転写テープTが引き出されることによって繰出コア2へ作用するモーメントよりも十分に小さくなるように設定されている。このため転写テープTの張力が大きくなって、塗膜転写が困難になることはない。
【0036】
前記のように、塗膜転写具Bでは、塗膜転写時の繰出コア2には、転写テープTによる転写テープTを繰出す方向への外力と、ベルト7による転写テープTを巻き戻す方向への外力が作用している。繰出コア2から繰出された転写テープTに弛みがなければ、転写テープTを繰出す方向のモーメントが、転写テープTを巻き戻す方向へのモーメントに対して、十分に大きく設定されているので、繰出コア2が転写テープTを巻き戻す方向へ回転することはない。
【0037】
塗膜転写具Aと同様、塗膜転写具Bでも、中間ローラ8の外周面が転写テープTの背面に対して粘着性を有している。従って、仮に繰出コア2と中間ローラ8との間で転写テープTの弛みが生じたとしても、中間ローラ8の外周面と転写テープTの背面が接触した状態が維持され、転写テープTの弛みが、中間ローラ8を越えて転写ヘッド4付近へは影響しない。塗膜転写具Aでも、転写テープTの背面は中間ローラ8の外周面に貼りついているので、転写ヘッド4で塗膜転写を開始すると、即座に中間ローラ8が回転を始め、繰出コア2と中間ローラ8間の転写テープTの弛みは解消される。塗膜転写具Bでは、転写ヘッド4で塗膜を転写し始めると、繰出コア2と中間ローラ8間の転写テープTが弛んでいるので、ベルト7によって繰出コア2が転写テープTを巻き戻す方向へ回転し始める。したがって、塗膜転写具Bでは、仮に繰出コア2と中間ローラ8の間で、転写テープTの弛みが生じたとしても、その転写テープTの弛みは、塗膜転写による繰出コア2と中間ローラ8の両方の回転によって解消されるので、塗膜転写具Aよりも早く転写テープTの弛みが解消される。このため、塗膜転写具Bでは、転写テープTの弛みによる転写テープTの走行不良が、塗膜転写具Aよりも確実に防止できる。
【0038】
上記のように、塗膜転写具Bでは、繰出コア2もベルト7と接触しているため、繰出コア2の回転にブレーキを掛けるブレーキ部材を特別に設けなくても、繰出コア2は回転し難く、転写テープTに弛みが生じ難い。しかしながら、特に繰出コア2に巻き付けられる転写テープTの長さが長かったり、又は幅が広かったりして、繰出パンケーキ(繰出コア2に転写テープTが巻き付けられたもの)が重い場合には、補助的に繰出コア2の回転にブレーキをかけるブレーキ部材を設けてもよい。但し、ブレーキとしての繰出コア2に掛ける負荷は、必要最小限のものであることが好ましい。ブレーキが繰出コア2を押圧する力が大きくなると、転写テープTの張力が大きくなる。転写テープTの張力が大きくなりすぎると、塗膜を被転写面に転写するために、転写ヘッド4を被転写面に押圧する押圧力を大きくしなければ塗膜を転写することができなくなり、塗膜転写具Bを使用する使用者の使用感が悪くなる。このため、ブレーキが繰出コア2を押圧する押圧力は、出来る限り小さくすることが好ましい。
【0039】
ブレーキ部材としては、カバー、又はケースに一体に設けた樹脂バネの他、金属製の皿バネやコイルスプリングなどが使用可能である。
【0040】
以上の塗膜転写具A及びBでは、転写テープの走行に伴い回転する中間ローラを設け、中間ローラと巻取コアが連動回転するようにした。このため、塗膜転写具A及びBでは、転写テープの張力に対する、繰出パンケーキ(転写テープを繰出コアに巻きつけたもの)の外径変化の影響が小さくなり、使用初期と使用終期間での転写テープの張力の差を小さくすることができる。また、塗膜転写具A及びBでは、前記中間ローラの前記転写テープと接する面は前記転写テープの塗膜を有しない側の面に対して、これらを貼り合せた後に剥離させる際の剥離力が特定の値(2mN/18mm)以上の粘着性を有するものとした。このため、転写テープの塗膜を有しない側の面は中間ローラに貼りついており、仮に、繰出コアと中間ロール間の転写テープに弛みが生じたとしても、この弛みが中間ローラを越えて、転写ヘッド付近の転写テープに波及することはない。よって、転写ヘッド付近で転写テープが弛んで、走行不良となることはない。したがって、繰出パンケーキの回転抵抗を小さくして、さらに、使用初期と使用終期間での転写テープの張力変化を小さくしても、転写テープが走行不良になることはない。
【0041】
以上の塗膜転写具A及びBによれば、複雑な構造を用いなくても、繰出パンケーキの回転抵抗を非常に小さくすることによって、使用初期から使用終期に至る使用者の使用感、すなわち使い心地の変化を小さくすることができる。また、使用終期で転写テープの張力が大きくなることによる転写不良の発生を防止できる。しかも、転写テープの塗膜を有しない側の面は中間ローラに貼りついた状態で維持されるので、繰出パンケーキの回転抵抗を非常に小さくすることによる転写テープの走行不良のおそれもない。
【0042】
つまり、複雑な構造を用いることなく、塗膜転写具の使用初期から使用終期に至る転写テープ張力の変化を緩和することができる。それにより、使用初期から使用終期に至るまで使用者の使い心地に変化が小さく、使用終期で転写テープの張力が大きくなることによる転写不良の発生を防止することができる。さらには、転写テープの弛みによる転写テープの走行不良が生じない。
【実施例
【0043】
本発明の実施例1として、図1に示す本発明の第1実施形態の塗膜転写具Aを準備した。塗膜転写具Aでは、粘着シートA11を中間ローラ8の外周面に貼り付けることで、中間ローラ8の外周面に粘着性を付与した。粘着シートA11は厚み50μmのPETシートの一方の面に付加硬化型シリコーンを主成分とする厚み20μmのシリコーン粘着層が積層され、もう一方の面に厚み20μmのアクリル系粘着剤が積層されて形成された粘着シートである。塗膜転写具Aでは、粘着シートA11のアクリル系粘着剤側を中間ローラ8の外周面に貼り付けることで、粘着シートA11のシリコーン粘着層側が中間ローラ8の外周面となるように貼り付けられている。このため、中間ローラ8が塗膜転写具Aに組み込まれると、転写テープTと接する箇所全面に亘って、シリコーン粘着層が露出する。塗膜転写具Aの中間ローラ8の外周面と転写テープ背面との180°の剥離力は、表1と表2に示す通りであった。
【0044】
実施例2、3、4として、塗膜転写具A2、A3、A4を準備した。塗膜転写具A2、A3、A4の構成は、塗膜転写具Aの粘着シートA11をそれぞれ粘着シートA21とA31、A41に変更した以外は塗膜転写具Aと同様である。粘着シートA21、A31、及びA41の構成は、粘着シートA11のシリコーン粘着層のシリコーン粘着剤にMQレジンを加えることで、転写テープ背面との180°の剥離力を粘着シートA11よりも大きくしたこと以外は、粘着シートA11と同様である。塗膜転写具A2、A3、A4の中間ローラ8の外周面と転写テープ背面との180°剥離力は、表1と表2に示す通りであった。
【0045】
実施例5、6として、塗膜転写具A5、A6を準備した。塗膜転写具A5、A6は、市販されている両面テープであるトーヨーケム株式会社製両面テープダブルフェース(登録商標)DT-831204と日立マクセル株式会社製NO.5320 布両面テープを、それぞれ粘着テープA51、A61として中間ローラ8の外周に貼り付けた以外は、塗膜転写具Aと同様に構成されている。塗膜転写具A6では、両面テープを貼り付ける前の中間ローラ8の外周面の直径を事前に加工して、両面テープ貼付け後の中間ローラ8の外周面の直径が、塗膜転写具Aの中間ローラ8の外周面の直径と同じになるように調整した。塗膜転写具A5、A6の中間ローラ8の外周面と転写テープ背面の180°剥離力は、表1と表2に示す通りであった。
【0046】
実施例7~12として、塗膜転写具B、B2~B6を準備した。塗膜転写具B、B2~B6は、ベルト7が繰出コア2のプーリーと接触した本発明の第2実施形態のように構成される以外は、実施例1~6とそれぞれ同様である。
【0047】
実施例13として、塗膜転写具Cを準備した。塗膜転写具Cは、実施例1の塗膜転写具Aの繰出コアとカバーの間に金属製の皿バネを装着して、繰出コアに0.3N・cmのブレーキトルクを負荷した以外は、塗膜転写具Aと同様に構成されている。
【0048】
比較例1として、塗膜転写具aを準備した。塗膜転写具aは、中間ローラの外周面に粘着シートを貼り付けず、中間ローラの材質(ポリアセタール:POM)のままとした以外は、塗膜転写具Aと同様に構成されている。
【0049】
比較例2としては、塗膜転写具bを準備した。塗膜転写具bは、塗膜転写具Aから中間ローラを取り外し、中間ローラと同じ位置に繰出コアを装着し、繰出コアと巻取コアを塗膜転写具Aに使用したベルトと同様のベルトで連動回転させるように構成されている。それ以外の構成は、塗膜転写具Aと同様である。なお、塗膜転写具Aの中間ローラのプーリーと塗膜転写具bの繰出コアのプーリー部は、同一材質、同一形状のものである。
【0050】
比較例3として、塗膜転写具cを準備した。塗膜転写具cは、比較例1の塗膜転写具aの繰出コアとカバーの間に金属製の皿バネを装着して、繰出コアに0.3N・cmのブレーキトルクを負荷した以外は、塗膜転写具aと同様に構成されている。
【0051】
実施例1~13、比較例1~3の塗膜転写具を使用して下記の評価をした。
【0052】
(1)転写テープTの使用初期における張力
図6に示すように、転写テープTを塗膜転写具から引き出し、巻取コアと連結された転写テープTが十分に弛んだ状態で、転写テープTとダイヤルテンションゲージとを糸とWクリップ(小)で連結し、巻取コア3が回転しないように固定した状態で、ダイヤルテンションゲージを20mm/secで移動させて、繰出コアから転写テープTが繰出される際の転写テープTの張力を測定した。ダイヤルテンションゲージとしては、株式会社テクロック製DTN-50を使用した。評価結果を表1に示す。
【0053】
(2)繰出コアと中間ローラ間の転写テープ弛みの塗膜転写への影響
図7(a)に示すように、繰出コアと中間ローラ間の転写テープに1cmの弛みを加えた後、水平面に置いた被転写体(PPC用紙)に塗膜を転写し、転写テープTの弛みが、転写ヘッド先端から図7(c)に示すように飛び出すか否かを目視確認した。評価は各塗膜転写具につき5回実施した。表1に、転写テープTが弛んで、転写ヘッド先端から転写テープが飛び出した回数を示す。
【0054】
(3)繰出コアと中間ローラ間の転写テープ弛みの解消
項目(2)と同様に、繰出コアと中間ローラ間の転写テープに1cmの弛みを加えた後、水平面に置いた被転写体(PPC用紙)に長さ5mmの塗膜を転写する。転写後に、繰出コアと中間ローラ間の転写テープの弛みの有無を目視確認し、弛みが残っている場合には、さらに長さ1cmの塗膜を転写した。評価は、実施例1~13と比較例1、3の塗膜転写具を使用して実施した。評価結果を表1に示す。
I:長さ5mmの塗膜の転写後、転写テープの弛みが解消していた。
II:長さ5mmの塗膜の転写後、転写テープの弛みは解消しなかったが、さらに1cmの塗膜を転写することにより、転写テープの弛みが解消していた。
IV:長さ5mmの塗膜の転写後、さらに1cmの塗膜を転写しても、転写テープの弛みが解消しなかった。
【0055】
(4)中間ローラからの転写テープの剥離状態
繰出コアに巻きつけられた転写テープTのパンケーキ外径が最も大きな使用初期(パンケーキ外径:22.5mm)の塗膜転写具を使用した。使用者が塗膜転写具を手で持った状態で、転写速度300mm/secにて、転写テープを長さ30cm転写させて、中間ローラ8からの転写テープの剥離位置を目視確認した。転写テープが通常の位置で中間ローラから剥離するよりも遅れて剥離していることが目視確認されたものについては、株式会社ニコン製測定顕微鏡MM-800を使用して、図9(c)に示すように、通常の位置と剥離位置とがなす中間ローラの中心角(剥離が遅れた角度)を測定した。評価はそれぞれの塗膜転写具について10回実施し、1回の転写が終わるごとに転写テープの剥離位置を目視確認した。評価は、実施例1~13と比較例1、3の塗膜転写具を使用して実施した。評価結果を表1に示す。
I:10回すべてで、転写テープは中間ローラから通常の位置で剥離していた。
II:剥離が遅れたことがあったが、通常の位置と剥離位置との中心角(剥離が遅れた角度)がすべて0.52ラジアン(30度)以下であった。
IV:剥離位置が遅れたことがあり、通常の位置と剥離位置との中心角(剥離が遅れた角度)が0.52ラジアン(30度)を超えることがあった。
【0056】
(5)使用初期の塗膜の切れ性
図4の角度で被転写体(PPC用紙)に塗膜を転写し、塗膜転写具を被転写体から引き上げた時の塗膜の切れ性を下記の判断基準で目視評価した。評価結果を表1に示す。
II:図4(a)のように、塗膜の切れが良好であった。
IV:図4(b)のように、塗膜の切れが悪く、転写テープから剥離した塗膜が飛び出していた。
【0057】
(6)転写押圧力の測定
図5の角度で被転写体(PPC用紙)に塗膜を転写させた際の転写ヘッドの転写押圧力を台座付きの秤で測定した。測定結果を表2に示す。測定は使用初期と使用終期の2点とした。ここで、転写押圧力とは、転写テープを引き出すために転写ヘッドを被転写体に押圧する必要最低荷重を示す。なお、転写ヘッドで押圧する部分の転写テープの塗膜(長さ2mm程度)を剥離し、転写開始時には塗膜が無い部分の転写テープを被転写面に押圧して、転写押圧力を測定した。
【0058】
(7)転写テープの転写走行性
使用者が塗膜転写具を手で持った状態で、転写速度50mm/secにて、転写テープ全長(5m)を転写させて、転写テープの転写走行性を評価した。評価結果を表2に示す。
II:全長において、転写テープの走行性は安定していた。
III:使用初期での転写テープの弛み、使用終期で転写テープが繰出し難いなどの、一部で転写テープの走行が不安定であった。
IV:全長において、転写テープの走行性が不安定であった。
【0059】
(8)繰出コア(パンケーキ)のフリーテンション(張力)
実施例1と実施例7~12の塗膜転写具を使用し、図8に示すようにして、繰出コアから直接転写テープを引き出すのに必要な張力を測定した。転写テープTを塗膜転写具から図に示す方向に引き出し、転写テープTとダイヤルテンションゲージを糸とWクリップ(小)で連結し、ダイヤルテンションゲージを20mm/secで移動させて、繰出コアから転写テープTが繰出される際の転写テープTの張力を測定した。ダイヤルテンションゲージとしては、株式会社テクロック製DTN-50を使用した。評価結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
評価結果は表1及び表2の通りであった。実施例1~12の塗膜転写具は、従来の塗膜転写具である比較例2の塗膜転写具に比べて、使用初期から使用終期に至るまでの転写押圧力の変化が小さい。その結果、使用初期から使用終期に至るまで使い心地が変化せず非常に、塗膜転写し易かった。実施例13の塗膜転写具は、実施例1~12の塗膜転写具と比較すると、転写押圧力が大きいが、比較例2の塗膜転写具と比較すると、使用初期から使用終期に至る転写押圧力の変化が小さく、塗膜転写し易かった。また、実施例1~13の塗膜転写具では、仮に繰出コア付近の転写テープを弛ませたとしても、その弛みが転写ヘッドから外部に飛び出すことはなく、転写によって弛みはすぐに解消された。特に実施例7~12の塗膜転写具では、より早く弛みを解消することができた。これに対して、比較例1と3の塗膜転写具では、繰出コア付近の転写テープを弛ませると、その弛みが塗膜転写によって、転写ヘッドから外部に飛び出し転写不良となった。また、比較例1と比較例3の塗膜転写具では、転写によってテープ弛みが解消されることはなかった。
【符号の説明】
【0063】
1、Z、A、B、A2~A6、B2~B6、C、a、b、c:塗膜転写具
2:繰出コア
3:巻取コア
4:転写ヘッド
5:ケース
6:カバー
7:ベルト
8:中間ローラ
12、14:支軸
T:転写テープ
A11、A21、A31、A41、A51、A61:粘着シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9