(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】バルブ用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
G09F 13/20 20060101AFI20220118BHJP
G09F 13/04 20060101ALI20220118BHJP
H01H 13/02 20060101ALI20220118BHJP
H01H 9/16 20060101ALI20220118BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220118BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220118BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20220118BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G09F13/20 G
G09F13/04 K
H01H13/02 A
H01H9/16 A
H01L33/00 L
H05K13/04 B
F16K37/00 M
G09F9/33
(21)【出願番号】P 2016193327
(22)【出願日】2016-09-30
【審査請求日】2019-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 仁
(72)【発明者】
【氏名】大野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃央
【審査官】渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-153970(JP,A)
【文献】特開2012-247068(JP,A)
【文献】特開平11-223273(JP,A)
【文献】実開昭61-137987(JP,U)
【文献】特開2000-257736(JP,A)
【文献】特開2006-308643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30 - 9/46
G09F 13/00 - 13/46
H01H 13/02
H01H 9/16
H01L 33/00
H05K 13/04
F16K 31/00 - 31/05
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部側の円板状の平面部と、略円筒状の円筒部とを有する略円筒状のカバーを備え、このカバーの前記平面部にLED照射視認用の窓部が開口形成され、前記平面部の上面に円板状の操作パネルが固着され、前記カバーの前記操作パネルの裏面側には基板が固定されて前記カバーと前記基板とが一体に着脱可能なユニットとして構成され、前記基板には、前記操作パネルの上方から点灯或は消灯状態を視認可能な複数のLEDと、操作スイッチとがIC等の他の部品と共に表面実装され、前記基板と前記カバーとの間には、前記カバーへの基板の固定により、前記カバーに垂下形成された遮光壁が、前記基板上に隣接する前記LED同士の間に対向状態に配置されると共に、前記遮光壁が、隣接する一方の前記LEDの照射領域が他方の前記LED用の前記窓部を透過することを防ぐ高さに設けられ、かつ、前記遮光壁と前記基板との間にこれら遮光壁と基板及び前記LEDとの物理的な干渉を回避する空間距離が設けられ、加えて前記基板が、前記操作スイッチを前記操作パネルの上から操作可能なカバー内の位置に配置された状態で、前記カバーが、駆動用モータやこのモータの回転を減速する減速機を含む内部部品が収容されたアクチュエータ本体のベース体の一面に装着されたことを特徴とするバルブ用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する複数のLEDにより機器の状態を表示するためのLED表示構造と、このLED表示構造により動作状態を外部から視認可能に設けたバルブ用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品、計測機器等の機器において、LED(light emitting diode:発光ダイオード)による光源を用いて動作状態を表示する場合が一般的になっている。この場合、動作状態を判別するためには、2箇所以上に複数の発光点を設けることも多い。その際、これらの発光点が離れていると、視認性が低下したり製作も複雑になる等の理由から、通常は隣接した集積状態に配置される。これら発光点が隣接している場合には、一方の点灯(点滅)状態のLEDの光が、近接した他方の発光箇所から漏れて、消灯状態であるにもかかわらず、これを点灯(点滅)状態に誤認識する可能性が生じる。隣接するLED光源の発光色が異なる場合、これらの発光色が混合した状態で発色し、本来の色を識別できなくなる可能性もある。
【0003】
この対策として、隣接する各LED光源の周りを専用の遮蔽部材で取り囲み、この遮蔽部材で隣接するLED同士の影響を抑えようとするものが知られている。
例えば、特許文献1のLED表示装置では、遮光カバーが機器本体と別体に設けられ、この遮光カバーの遮光筒部を介して、制御基板の複数のLEDを前面パネルの表示窓から個別に視認するようになっている。
一方、特許文献2のLED表示装置では、LED光源からの光が、導光ユニットを介して操作パネル面に導かれ、操作パネル面の直下裏面に設けられた遮光リブにより、光の漏れを防ごうとしている。
【0004】
ところで、この種のLED表示構造が用いられる機器として、例えば、バルブ用アクチュエータが知られ、このうち、コンパクト型の電動アクチュエータで利用されることも多い。小型の電動アクチュエータは、一般に、外部がカバーで覆われ、その内部にはモータや歯車減速機構、外部への動作表示用基板、動作制御用基板等の部品が収納され、カバーの上面側には、動作状態等を示す表示部が設けられている。表示用基板は、アクチュエータのコンパクト化に対応して集積化され、カバー内部の表示部の背面側に近接して取付けられている。表示用基板には、複数のLEDが配設され、これらLEDの点灯或は消灯により、バルブの動作状態の有無や、動作不能のエラーの状態等がカバー外部より視認可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4214622号公報
【文献】特許第5035046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1や特許文献2のLED表示装置の場合、隣接する発光点であるLEDの互いの干渉を避けるために、遮光カバーや、遮光リブを有する導光ユニットが別途必要になる。このことから、部品点数が多くなって構造も複雑化し、操作パネル面やその周囲にこれらの部品をあらたに取付ける必要も生じるため、組立工数も増加するという問題も有している。
しかも、最近では、LEDを搭載した機器全般について小型化が要求されることが多く、例えば、バルブ用電動アクチュエータにおいても、小型化の要求に伴って、内装される部品のコンパクト化や高密度化による搭載が推進されている。この場合、特許文献1の遮光カバーや、特許文献2の導光ユニット等の遮光用部品は、基板上のLEDやその他の電子部品に物理的に干渉するため、配置することが難しい。さらには、プリント基板も高密度化することで、これら新規の遮光用部品の取付けが一層難しくなる。
【0007】
仮に、遮光用部品を取付け可能な空間がアクチュエータ内に存在する場合でも、アクチュエータの小型化に伴って、遮光用部品とLEDを含む実装部品との空間を十分に確保することができなくなる。このために、仮に、遮光用部品が樹脂であったとしても絶縁が不十分になりやすく、遮光用部品やその周辺の部品が結露や周囲の汚染物質で汚染されて、電気的絶縁性能の低下が著しくなり、誤作動や故障、感電の原因になる。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、遮光用の別部品を設けることなく、高集積化された基板の隣接するLEDに対して適切な空間を設けつつ遮蔽し、点灯或は消灯状態の誤認識や隣接するLEDの発光色の混合を防いでLEDの状態を外部から容易に識別可能にしたバルブ用アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、上部側の円板状の平面部と、略円筒状の円筒部とを有する略円筒状のカバーを備え、このカバーの平面部にLED照射視認用の窓部が開口形成され、平面部の上面に円板状の操作パネルが固着され、カバーの操作パネルの裏面側には基板が固定されてカバーと基板とが一体に着脱可能なユニットとして構成され、基板には、操作パネルの上方から点灯或は消灯状態を視認可能な複数のLEDと、操作スイッチとがIC等の他の部品と共に表面実装され、基板とカバーとの間には、カバーへの基板の固定により、カバーに垂下形成された遮光壁が、基板上に隣接するLED同士の間に対向状態に配置されると共に、遮光壁が、隣接する一方のLEDの照射領域が他方のLED用の窓部を透過することを防ぐ高さに設けられ、かつ、遮光壁と基板との間にこれら遮光壁と基板及びLEDとの物理的な干渉を回避する空間距離が設けられ、加えて基板が、操作スイッチを操作パネルの上から操作可能なカバー内の位置に配置された状態で、カバーが、駆動用モータやこのモータの回転を減速する減速機を含む内部部品が収容されたアクチュエータ本体のベース体の一面に装着されたバルブ用アクチュエータである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によると、遮光用の別部品を設けることなくこの遮光壁をカバーと一体に形成できるため、部品点数が増加したり構造が複雑化して組立工数が増加することもなく遮光壁により遮光可能になる。LEDを基板の所定位置に集積配置して基板パターンを簡略化しつつ、これら集積化されたLED同士の照射領域が交わる位置を遮光壁により遮光し、LEDの指向特性が広い場合でも光の漏洩や相互の干渉を確実に阻止し、LEDの点灯或は消灯状態を誤認識したり、隣接するLEDの発光色が合わさることを防ぎ、外部から点灯や点滅、消灯状態や光色を容易に識別可能になる。この場合、遮光壁を、基板との間に所定の空間距離を有した状態で配置することで、LEDに干渉することがないため、LEDの距離を確保でき、小型機器の内部にLEDを配設する場合でも、電子部品との間を十分に絶縁して結露や汚染物質による汚染を防いで確実に絶縁することで、機器の動作に悪影響を及ぼすこともない。基板に、複数のLEDと操作パネルの上から操作可能な操作スイッチとを表面実装しつつ、基板をカバーの所定位置に配置してこのカバーと一体にベース体に着脱することが可能となる。
【0015】
基板を覆うカバーに各LEDに対向する窓部を設け、これら窓部の間に遮光壁を設けた構成であるため、この遮光壁をカバーの上面側から所望の長さで一体形成できる。これにより、遮光壁を、一方のLEDの照射領域が他方のLED用の窓部を透過することを防止できる長さに調整し、このカバーに基板を取付けることで、基板上に集積配置されたLEDの間の適切な位置に遮光壁を配置でき、遮光壁の位置調整を必要とすることなく、隣接するLED同士の互いの照射領域への悪影響を確実に防止する。
【0017】
LEDを表面実装により基板に配設していることにより、電子部品を高密度に配置しながら、基板全体の高さを低く抑えてこの基板を機器内の狭い空間に配設可能になり、全体をコンパクト化しながら隣接するLEDの光を確実に遮蔽して視認性を向上できる。このとき、LEDをより表示側に近接させた状態で配置できるため、LED照射時の光度を高めることができる。
【0018】
全体のコンパクト性を維持しながら操作パネル面にLED表示構造を設けたバルブ用アクチュエータを提供でき、出力軸にステムを介してボール弁やニードル弁などの各種のバルブを接続し、これらバルブの開閉状態や動作の状況をLEDで確認できる。この場合、隣接するLEDの照射領域を遮光壁で確実に遮光していることで、操作パネル面を斜めの方向から見た場合にもLEDの点灯或は消灯状態の誤認識を防止し、上方から視認したときには、隣接するLEDの発光色の混合を防いで光色を容易に識別できる。しかも、上面側の操作パネル面にLEDを集積した状態で設けることで、視線を動かすことなくバルブの状態を確認できるため視認性も高い。部品点数を増加したり、構造の複雑化を防止して簡易な構造によりカバーに対して予め遮光壁を形成できるため、組立の手間が増えることもない。
遮光用の別部品を設けることなく、カバーと一体形の遮光壁により省スペース化を図りつつ、内部部品の潤滑油の蒸発などの汚染物質による基板への影響を低減して、誤作動や故障、感電などを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】バルブ用アクチュエータの一例を示す斜視図である。
【
図2】カバーの上部付近を示した一部切欠き拡大斜視図である。
【
図5】
図4におけるA-B-C-D-E-F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明におけるLED表示構造とバルブ用アクチュエータを図面に基づいて説明する。本発明のLED表示構造は、各種の機器等に用いることが可能であり、その一例として、バルブ用アクチュエータに搭載された場合を述べる。
図1においては、バルブ用アクチュエータの斜視図、
図2は、アクチュエータのカバー上部付近の一部切欠き拡大斜視図、
図3は、アクチュエータの縦断面図を示している。
【0021】
図1~
図3において、バルブ用アクチュエータ(以下、アクチュエータ本体1という)は、ボデー2を有し、このボデー2は、カバー3、ベース体4を備え、これらカバー3とベース体4とが着脱可能に設けられている。ボデー2内には、LED10が搭載された表示制御用の基板11、駆動制御用の基板12、駆動用モータ13、減速歯車列からなる減速機14を含む内部部品15が収容される。
【0022】
カバー3は、アルミを材料とするダイキャスト成形により、略円筒状の円筒部20と、上面側の円板状の平面部21とを有する形状に形成され、少なくとも基板11を外部から覆うことが可能な形状に設けられる。
図2又は
図3において、カバー3の平面部21には、LED10、後述する7セグメントディスプレイ31の表示用、及び操作スイッチ32を操作するための
図8に示す開口穴21aが形成される。平面部21には、円板状の操作パネル22が固着され、平面部21の外周側には、操作パネル22よりもやや大径の環状の外周嵌合部23が、その内側に操作パネル22を嵌合可能に段部状に形成される。外周嵌合部23の高さは、操作パネル22の厚さと略同じ寸法に設けられ、外周嵌合部23の上部には、環状段部24が外周嵌合部23よりも拡径して形成される。このように、平面部21は、2段の外周嵌合部23、環状段部24を介して形成される。
【0023】
図3に示すように、カバー3の表面には塗装部25が施される。ここで、カバー3に塗装部25を設ける場合、先ず、環状段部24の内方を覆うように図示しないテープ等によりマスキングをおこない、次いで、カバー3全体に塗装部25を施した後に、マスキングを取り外すようにする。これによって、外周嵌合部23の内面への塗料の付着が防止される。
【0024】
図4、
図5において、平面部21(操作パネル22)の裏面には、ねじ26の固定により基板11が所定位置に配置され、このような構成によって、基板11は、
図3のベース体4に対してカバー3と一体に着脱可能になっている。
図3において、基板11上には、本発明のLED表示構造により、複数のLED10が隣接した状態で、IC等の他の部品とともに実装部品30として表面実装で配設され、さらに、基板11上には、7セグメントディスプレイ31、操作スイッチ32などの実装部品30も実装される。基板11は、LED10等の実装部品30の実装面が上部に向けられた状態で配置される。
【0025】
図1~
図6において、カバー3のLED10に対向する位置には、窓部40が開口して形成され、この窓部40を覆うように、前記操作パネル22が平面部21に取付けられ、操作パネル22上面のLED10の位置には、このLED10の光を上面より放射可能な表示部41、42が設けられる。窓部40は、LED10が発光したときの光軸と同軸の位置になるように貫通形成され、窓部40同士の間の操作パネル22の裏面側には、遮光壁50がLED10、10同士の間に垂下された状態で一体に形成されている。
【0026】
遮光壁50は、
図6の一点鎖線に示した隣接するLED10、10同士の照射領域Rが交わる位置に必要最小限の高さHで配置され、この遮光壁50により、隣接する一方のLED10の照射領域Rが他方のLED10用の窓部40を透過することが防がれ、相互のLED10、10の光線の干渉が回避される。この場合、遮光壁50は、直列方向に配置された複数のLED10、10に対して交差方向に設けられる。窓部は、カバー3の7セグメントディスプレイ31、操作スイッチ32が対向する位置にも、それぞれ形成されている。
【0027】
遮光壁50と基板11との間には、所定の空間距離Dが備えられ、この空間距離Dにより、基板11と遮光壁50とが接することの無い状態で、基板11が取付けられている。
ここで、「所定の空間距離」とは、遮光壁50と基板11及びLED10との物理的な干渉を回避すると共に、電気的絶縁性能も確保できる空間距離をいう。
【0028】
図3において、カバー3の円筒部20の下部開口部3aは、ベース体4の上部外周に嵌合可能な内径に形成される。これにより、カバー3は、開口部3aがベース体4の上部に嵌合され、開口部3aの下端3bがベース体4に環状に形成された段状部51に当接された状態で、ベース体4に仮着される。この状態で、
図1に示すように、カバー3とベース体4とが、ビス52により一体に固着される。
【0029】
図1~
図3において、LED10は、操作パネル22の上方から点灯(点滅)或は消灯状態を視認可能に、点灯時の光を透過可能に基板11上に設けられ、本実施形態では、緑色に点灯する緑色LED10aと、赤色に点灯する赤色LED10bとが、隣接状態で配設される。緑色LED10aは、操作パネル22の「RUN」を示す表示部41の裏側に配置され、例えば、制御入力信号4~20mAにおいて、4.8mA以上の電流が入力されたときに点灯し、この「RUN」の位置の表示部41の点灯により、正常な信号入力を確認可能になっている。赤色LED10bは、操作パネル22の「ERROR」を示す表示部42の裏側に配置され、例えば、減速機14の出力側に設けられ、バルブに接続される出力軸53がロックしたときなどに点灯し、この「ERROR」の位置の表示部42の点灯により、動作不良の発生を確認可能になっている。
【0030】
図7においては、表面実装型のLED10の指向特性を示している。ここで、「LEDの指向特性」とは、基板11に搭載されたLED10の表面から発光する放射角度毎の光の強さを示すものであり、LED10の仕様ごとにこの特性は異なる。本実施形態で使用するLED10では、図に示すように、このLED10の正面である0°の角度で光の強さの割合が1.0(100%)であるとき、正面から40°では約0.9(90%)、50°では約0.8(80%)、80°でも約0.3(30%)の光の強さを有する指向特性となっている。前述した遮光壁50を設ける場合、LED10の指向特性を考慮した上でその高さHを設定する必要がある。
【0031】
図6の遮光壁50にLED10の指向特性を組合わせた状態において、LED10表面・基板11表面と操作パネル22とは、
非接触状態でかつ一定の距離Lが確保されているが、遮光壁50が所定の高さHに設定されていることで、この遮光壁50を介して、隣接するLED10の指向特性の影響を受けることがないようになっている。
【0032】
仮に、遮光壁50を設けていない場合、窓部40と基板11との間の距離Lを介して、一方のLED10の光がその指向特性により隣接するLED10の窓部40から進入することになる。具体的には、
図6において、遮光壁50が無いときには、約54°付近から約65°の放射角度のLED10の光が隣接するLED10の窓部40から進入し、この光が悪影響を及ぼすことになる。この場合、
図7において、約54°の放射角度では約0.75の割合、約65°の放射角度では約0.6の割合の光の強さであるため、隣接する表示部に与える影響は甚大となる。
【0033】
これに対して、
図6に示した長さ(高さH)の遮光壁50を設けた場合、この遮光壁50を介して、隣接するLED10の0°から約70°程度までの放射角度の光を遮光できるため、この隣接するLED10の光が窓部40から進入するおそれがない。
このように、遮光壁50は、LED10表面・基板11表面と操作パネル22との寸法、LED10の指向特性、及びLED10同士の間隔や、各LED10の光の強さに応じてその高さHを設定すればよく、この所定の高さHにより隣接する窓部40を確実に遮光可能になる。この場合、遮光壁50が高すぎると、LED10や基板11に接触する可能性が生じるため、隣接する窓部40を遮光可能な程度の高さHに留めつつ、前述した空間距離Dを設ければよい。
【0034】
図1、
図2において、操作パネル22は、カバー3上面に装着可能な円形のシート状に設けられ、
図8に示すように、アルミ板60、透明シリコンゴム61、操作パネルシート62による3層構造からなっている。アルミ板60と透明シリコンゴム61とは、焼き付けにより一体化され、これらによりパネル地板63が構成される。アルミ板60の窓部40との対向位置には図示しない連通部位が形成され、この連通部位を介して、透明シリコンゴム61、操作パネルシート62を通して、操作パネルシート62のLED10の表示部41、42、7セグメントディスプレイ31の表示部位31aからの光を透過可能になり、操作パネル22面に本発明のLED表示構造によりLED10が設けられる。この場合、特に、表示部41、42は、LED10、10の光軸と同軸部分において、光を透過させて外部から発光の認識が容易になるように、透明に設けられている。さらに、アルミ板60の操作スイッチ32との対向位置には、連通部60aが設けられ、この連通部60aを介して透明シリコンゴム61、操作パネルシート62の上から操作スイッチ32を操作可能に設けられている。
【0035】
図8において、操作パネルシート62は、防水機能を有する透明樹脂からなり、透明シリコンゴム61の上に接着により固定される。この構成により、操作パネル22は、窓部40を介してLED10や7セグメントディスプレイ31の光を透過可能になっている。
【0036】
操作パネル22をカバー3に取付ける場合には、塗装部25を設けたカバー3の外周嵌合部23に操作パネル22外周を嵌合させつつ、その底面を平面部21に接着する。このとき、前述したように、外周嵌合部23には塗装が施されていないため、硬質のパネル地板63の外周を外周嵌合部23に対して正確に位置決めしながら固着できる。
【0037】
その後、図に示すように、環状段部24と、操作パネル22の外周縁の各上面にかかるように、接着剤によるコーキング材64でコーキングして防水加工を施す。このように、環状段部24を設けていることにより、カバー塗装時の外周嵌合部23のマスキングと、カバー3と操作パネル22とのコーキングとを容易におこなうことができ、これにより、環状段部24を設けない場合に比して、操作パネルシート62の外周縁の内外周にまたがるようにコーキング材64を配置できるため、防水機能を高めることが可能になる。
【0038】
図3に示した内部部品15のうち、モータ13、減速機14、駆動制御用の基板12は、取付板65を介してベース体4に固定される。モータ13は、図示しない電源を介して回転軸が回動可能に設けられ、このモータの回転が減速機14により減速され、その減速回転が出力軸53を介してバルブステム66に伝達可能に設けられている。
【0039】
なお、上記実施形態において、遮光壁50をアルミダイキャスト成形でカバー3に一体成形しているが、カバーの材料をアルミ以外の各種材料としてもよく、例えば、樹脂成型により遮光壁をカバーに一体成形するようにしてもよい。遮光壁をカバーと別体に形成してもよく、この遮光壁を溶着や接着等の固着手段により、カバーに一体化することも可能である。なお、遮光壁50を樹脂等の絶縁材料で成形した場合は、基板11に対して空間距離Dを確保する他、アクチュエータの導電部分との沿面距離も確保することにより、電気的絶縁性を確保する。
【0040】
また、2つのLED10、10により各表示部を設けているが、このLED10の指向特性や光の強さ、色の種類などを適宜選択しながら、3つ以上のLED10による表示部を隣接状態に配置することもできる。
【0041】
次いで、本発明のLED表示構造とバルブ用アクチュエータの上記実施形態における作用を説明する。
本発明のLED表示構造は、
図1~
図6において、基板11上に複数のLED10を隣接状態で配置し、基板11を覆うカバー3に各LED10に対向する窓部40、40を設け、これら窓部40、40の間に遮光壁50を配置し、この遮光壁50で遮光した構造であることにより、一方のLED10の光が、その照射領域Rにより他方のLED10用の窓部40を透過することを防いでいる。このことから、隣接するLED10、10同士のうち、一方のLED10の光が他方のLED10と対向する窓部40から進入してその表示部から漏れることを防止できる。
【0042】
図6において、緑色LED10aと赤色LED10bとからなる異なる発光色を用いた場合にも、これらの光の漏洩や相互の干渉を確実に阻止する。すなわち、一方のLED10のみが点灯している場合には、このLED10の指向特性と、遮光壁50の高さHとの関係を利用して、約54°付近から約65°の放射角度の光を遮光することで、他方のLED10の窓部40への光の漏れを防止してこの他方側の消灯状態を維持し、誤認識を確実に防止可能になる。
【0043】
一方、緑色LED10aと赤色LED10bとの両方が同時に点灯した場合にも、同様にLED10の指向特性と遮光壁50の高さHとの関係を利用して、隣接するLED10の窓部40への光の漏れを防止し、双方のLED10、10の光の混合干渉による変色を阻止して誤認識を防止できる。
【0044】
遮光壁50と基板11との間に所定の空間距離Dを設けつつ、カバー3に遮光壁50を形成しているため、遮光壁50と基板11との物理的な干渉を回避しながらLED10を配設でき、LED10の強度を確保して故障等を防止できる。空間距離Dにより電気的絶縁性能も確保できるため、アクチュエータ本体1内に結露が生じた場合であっても、基板11の回路のショート等による故障を防止できる。
【0045】
このように、空間距離Dを確保しながらカバー3と内部部品15とを非接触状態に配置していることで、高い安全性を発揮し、特に、アクチュエータ本体1が、高湿度環境、結露環境での使用が想定されている場合にも、優れた機能性を発揮可能となる。すなわち、別体の遮光パーツを取付けた場合のように、取付け不良や脱落等によって空間を確保できずにLEDや基板上のパターン、基板上の電子部品等に接触することがないため、遮光壁50の汚損や、結露水の付着による基板11、12の絶縁低下を防止できる。さらに、カバー3を導電性或いは非導電性の何れの材料で形成した場合にも、漏電や感電等の事故を防止可能となる。
【0046】
LED10の点灯時には、空間距離Dを設けていることで、窓部40に対してLED10の光の向きが直線に近づき、LED10の指向特性により隣接する窓部40にも強い光が照射されることになるが、遮光壁50をLED10、10同士の照射領域Rが交わる位置の高さHまで形成しているため、指向性の広いLED10を用いる場合にも優れた遮光性を発揮する。
【0047】
遮光壁50をカバー3に一体に設け、このカバー3に表示制御用の基板11を取付けた構造としていることにより、基板11をアクチュエータ本体1内の減速機14から離した位置に配置できる。このため、減速機14のギアに塗付されている潤滑油の蒸発が基板11に与える影響を低減することができる。
【0048】
しかも、窓部40、40の間から遮光壁50を垂下させて形成したことで、カバー3に基板11を取付けるだけで窓部40と対向する適切な位置にLED10を配置でき、遮光壁50を位置調整することなく隣接するLED10、10に悪影響を及ぼす照射領域Rを遮光できる。このように、遮光壁50をカバー3に一体成形していることで、遮光用の部品を別途必要とすることがなく、部品点数や組立工数が増加することもない。集積化した基板11に対してカバー3を大型化することなく遮光壁50を形成できるため、アクチュエータ本体1のコンパクト化にもつながる。
【0049】
遮光壁50をカバー3側に設けていることで、アクチュエータ本体1の小型化に伴って、基板11の図示しないパターン幅やクリアランス幅が縮小化され、表面実装により高密度化されている場合にも、遮光壁50の取付スペースをあらたに必要とすることがないことで、基板11の実装に制約を及ぼすこともない。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 アクチュエータ本体
2 ボデー
3 カバー
10 LED
11、12 基板
13 モータ
14 減速機
15 内部部品
22 操作パネル
40 窓部
50 遮光壁
53 出力軸
66 バルブステム
D 空間距離
R 照射領域