(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】酸化タンパク質分解酵素活性増強剤、及び糖化ストレス抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20220118BHJP
A61K 36/235 20060101ALI20220118BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220118BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220118BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220118BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20220118BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220118BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220118BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K36/235
A61K36/185
A61K8/9789
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P9/10 101
A61P3/10
A61P25/28
A61P27/12
A23L2/00
A23L33/105
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2017100806
(22)【出願日】2017-05-22
【審査請求日】2020-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2016102702
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016102697
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】所司原 雅子
(72)【発明者】
【氏名】河合 博成
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1726952(CN,A)
【文献】特開2015-178489(JP,A)
【文献】特開2015-086168(JP,A)
【文献】特開2014-221739(JP,A)
【文献】特開2014-218476(JP,A)
【文献】特開平11-106336(JP,A)
【文献】J Ethnopharmacol,2004年,Vol.93,pp.289-294
【文献】Hypertension,2014年,Vol.63, No.6,pp. e166-e167,Abstract Number: A-013
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61K 8/00-8/99
A61P 43/00
A61P 9/00-9/14
A61P 3/00-3/14
A61P 25/00-25/36
A61P 27/00-27/16
A23L 2/00-2/84
A23L 33/00-33/29
A61Q 19/00-19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェヌグリークの種子の水抽出物の乾燥物と、フェネルの種子の水抽出物の乾燥物と、を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
【請求項2】
さらに、ハイビスカスの蕚の水抽出物の乾燥物及びハイビスカスの苞の水抽出物の乾燥物からなる群から選択される1種類または2種類を含む、請求項1記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
【請求項3】
前記水抽出物は、熱水抽出物である、請求項1又は2に記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
【請求項4】
フェヌグリークの種子の水抽出物の乾燥物と、フェネルの種子の水抽出物の乾燥物とを有効成分として含む、糖化ストレス抑制剤。
【請求項5】
さらに、ハイビスカスの蕚の水抽出物の乾燥物及びハイビスカスの苞の水抽出物の乾燥物からなる群から選択される1種類または2種類を含む、請求項4に記載の糖化ストレス抑制剤。
【請求項6】
前記水抽出物は、熱水抽出物である、請求項4又は5に記載の
糖化ストレス抑制剤。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤又は請求項4から
6のいずれかに記載の糖化ストレス抑制剤を有効成分とする、
酸化タンパク質分解酵素活性の増強及び糖化ストレスの抑制の少なくとも一方をさせるための飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、又は医薬部外品。
【請求項8】
フェヌグリークの種子の水抽出物の乾燥物と、フェネルの種子の水抽出物の乾燥物と、を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性の増強及び糖化ストレスの抑制の少なくとも一方をさせるための飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、又は医薬部外品。
【請求項9】
さらに、ハイビスカスの蕚の水抽出物の乾燥物及びハイビスカスの苞の水抽出物の乾燥物からなる群から選択される1種類または2種類の乾燥物を含む、請求項8記載の飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、又は医薬部外品。
【請求項10】
フェヌグリークの種子の水抽出物の乾燥物と、フェネルの種子の水抽出物の乾燥物とを混合することを含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤及び糖化ストレス抑制剤の少なくとも一方の製造方法。
【請求項11】
さらに、ハイビスカスの蕚の水抽出物の乾燥物及びハイビスカスの苞の水抽出物の乾燥物からなる群から選択される1種類または2種類の乾燥物を混合することを含む、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
酸化タンパク質分解酵素活性増強効果及び糖化ストレス抑制機能の少なくとも一方を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、又は医薬部外品に、フェヌグリークの種子の水抽出物の乾燥物と、フェネルの種子の水抽出物の乾燥物とを添加することを含む、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、又は医薬部外品の製造方法。
【請求項13】
さらに、ハイビスカスの蕚の水抽出物の乾燥物及びハイビスカスの苞の水抽出物の乾燥物からなる群から選択される1種類または2種類の乾燥物を添加することを含む、請求項12記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤、糖化ストレス抑制剤、及びそれらを含む飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における酸化反応及び糖化反応は、細胞及び組織に悪影響を及ぼすことが知られている。酸化タンパク質及び糖化タンパク質は、その生成及び蓄積が、糖尿病合併症、アルツハイマー病、白内障、動脈硬化等の疾病、及び皮膚等の組織の老化及び機能低下の原因となっている。通常、これらのタンパク質は、酸化タンパク質分解酵素(Oxidized Protein hydrolase:OPH)及びプロテアソーム等のタンパク質分解酵素により分解除去されるが、これらの酵素活性は、加齢と共に低下することが知られている。
OPH活性を増強する物質として、ローマカミツレ、ドクダミ、セイヨウサンザシ、ブドウ及びヒシ等の植物の抽出物が提案されている(特許文献1及び2)
【0003】
「糖化ストレス」とは、還元糖やアルデヒド負荷による生体へのストレス、及びその後の反応を総合的にとらえた概念である。糖化ストレスによって生成した異常蛋白質は、生活習慣病等の疾病及び老化に関係しているとして着目されている。
異常蛋白質は、一般的には加齢等により、酸化、糖化又はアルデヒド修飾等を受けた蛋白質である。これらが生体内に蓄積することにより、機能性タンパク質の機能低下や、炎症等を引き起こし、その結果、糖尿病合併症、アルツハイマー病、白内障、動脈硬化等の疾病、並びに皮膚等の組織の老化及び機能低下を引き起こすと考えられている。
異常蛋白質が生成される原因の一つとして、生体内におけるメイラード反応が考えられている。例えば、生体内における糖化反応(メイラード反応)によって、コラーゲン等のタンパク質が糖化されてタンパク質中のアミノ酸がAGEs(終末糖化産物)となったり、AGEsによるタンパク質間に架橋構造が形成されること等により、異常蛋白質となる。
【0004】
AGEsによるタンパク質間における架橋構造を分解する薬剤として、N-phenacylthiazolium bromide(PTB)及びN-phenacyl-4,5-dimethylthiazolium bromide(ALT-711)が知られている(非特許文献1及び2)。しかしながら、これらは安定性や副作用の点で利用されていない。その他には、ハス葉エキス及びアカショウマエキス等が検討されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2011/004733
【文献】WO2014/126199
【文献】特開2007-119373号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Sara Vasan et al. Nature, 382, p275-278 (1996)
【文献】Sara Vasan et al. Archives of Biochemistry and Biophysics, 419, p89-96(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AGEs及びALEs(脂質過酸化最終生成物)は、グルコース等の還元糖や脂質のβ酸化及び過酸化等によるアルデヒド基及びケトン基等の反応基と、生体中のタンパク質又は脂質とが反応(メイラード反応)することにより生成される。これらが生体内で生成され蓄積することにより、機能性タンパク質の機能障害、及びAGEs受容体の活性化等が生じることが明らかになってきている。そして、これらは、機能低下、炎症、生活習慣病及び老化等をもたらす要因の一つとして考えられ、これらの一連の現象及び症状を総合的にとらえた概念が糖化ストレスやカルボニルストレスと呼ばれている。
【0008】
また、メイラード反応により機能性タンパク質が糖化され機能障害を起こすと、活性酸素が過剰に発生したり、生体内における活性酸素の消去作用が十分に機能しなくなり、その結果、酸化ストレスを引き起こすと考えられている。糖化ストレスと同様、酸化ストレスも生活習慣病をはじめとする様々な疾病及び老化の要因の一つとして考えられている。
【0009】
アンチエイジング及び生活習慣病の予防等の観点から、上記の異常蛋白質の抑制、分解又は除去等を行い、糖化ストレス及び酸化ストレスを抑制又は低減可能な新たな物質及び方法が求められている。
【0010】
また、OPH等の酵素の活性を増強させることによる、前記疾病、前記組織の老化及び組織の機能低下の治療ならびに予防の可能性に期待が寄せられている。
【0011】
そこで、本開示は、一態様において、OPH活性を増強可能な新たな物質、及び糖化ストレスを抑制又は低減可能な新たな物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、一態様において、フェヌグリークの抽出物を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤に関する。
【0013】
本開示は、その他の態様において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤に関する。
【0014】
本開示は、その他の態様として、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む、糖化ストレス抑制剤に関する。
【0015】
本開示は、その他の態様として、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む、糖化ストレスを抑制するための飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に関する。
【0016】
本開示は、その他の態様において、本開示の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤及び本開示の糖化ストレス抑制剤の少なくとも一方を有効成分とする、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に関する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、一態様において、新たなOPH活性増強剤、及びOPH活性を増強可能な飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品を提供できる。
【0018】
本開示によれば、一態様において、新たな糖化ストレス抑制剤、及び糖化ストレスを抑制可能な飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[OPH活性増強剤]
本開示は、フェヌグリーク(学名Trigonella foenum-graecum)、フェネル(学名Foeniculum vulgare)及びハイビスカス(学名Hibiscus sabdariffa)の水抽出物、とりわけ熱水抽出物が、OPHとして知られているAcylamino-acid-releasing enzyme(AARE)の酵素活性を増強できるという新たな知見に基づく。
【0020】
OPHは、生体内に広く分布し、酸化タンパク質及び糖化タンパク質といった生体内における糖化ストレスや酸化ストレスに起因する物質を優先的に分解することが知られている。このため、OPHの酵素活性を増強させることによって、酸化タンパク質及び糖化タンパク質の分解効率を向上でき、それにより、糖化ストレスや酸化ストレスを抑制又は軽減できることが期待できる。本開示のOPH活性増強剤によれば、OPHの酵素活性を増強できることから、一又は複数の実施形態において、酸化タンパク質を分解除去したり、酸化タンパク質の蓄積を抑制することができる。本開示のOPH活性増強剤によれば、一又は複数の実施形態において、糖化ストレス及び/又は酸化ストレスを抑制又は軽減することができうる。本開示のOPH活性増強剤によれば、一又は複数の実施形態において、糖化ストレス又は酸化ストレスに起因する疾病、組織の老化及び組織の機能低下の予防、改善、又は治療を行うことができうる。本開示のOPH活性増強剤によれば、一又は複数の実施形態において、新陳代謝を向上させることができうる。
【0021】
本開示は、一態様において、フェヌグリークの抽出物を有効成分として含むOPH活性増強剤に関する。本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、フェネルの抽出物をさらに含んでいてもよい。本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、ハイビスカスの抽出物をさらに含んでいてもよい。本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物と、フェネル及びハイビスカスの少なくとも一方の抽出物とを有効成分として含む。また、本開示は、その他の態様において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を有効成分として含むOPH活性増強剤に関する。
【0022】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、糖化ストレスを抑制するために使用できる。本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、糖化ストレス又は酸化ストレスに起因する疾病、組織の老化及び組織の機能低下の予防、改善、又は治療のために使用できる。本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、アンチエイジング、又は新陳代謝の向上のために使用できる。
【0023】
本開示のOPH活性増強剤がフェヌグリーク以外の植物の抽出物を含む場合、それらは、同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対して1重量部)で配合されていてもよいし、異なる比率で配合されていてもよい。
【0024】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物及びフェネルの抽出物を含む。本態様において、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物との配合比(乾燥重量比)は、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.1~10重量部であり、OPH活性増強の点からは、フェネルの抽出物が0.2~5重量部である。
【0025】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物及びハイビスカスの抽出物を含む。本態様において、フェヌグリークの抽出物とハイビスカスの抽出物との配合比(乾燥重量比)は、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部であり、OPH活性増強の点からは、ハイビスカスの抽出物が0.2~5重量部である。
【0026】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物、フェネルの抽出物及びハイビスカスの抽出物を含む。本態様において、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物とハイビスカスの抽出物との配合比(乾燥重量比)は、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.05~20重量部、ハイビスカスの抽出物が0.05~20重量部であり、OPH活性増強の点からは、フェネルの抽出物が0.1~10重量部、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部である。
【0027】
抽出物は、どの部位から抽出したものであってもよい。使用部位としては、一又は複数の実施形態において、全草、花、葉、種子、果実、枝、茎、根、萼(がく)、及び苞(ほう)等が挙げられる。使用部位は1種類であってもよく、2種類以上の部位を組み合わせて使用してもよい。フェヌグリークは、一又は複数の実施形態において、種子が好ましい。フェネルは、一又は複数の実施形態において、種子が好ましい。ハイビスカスは、一又は複数の実施形態において、蕚及び苞が好ましい。
【0028】
抽出方法は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出等が挙げられる。抽出溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、エーテル等が挙げられる。抽出物は、一又は複数の実施形態において、水抽出物及び有機溶媒抽出物等が挙げられる。水抽出物としては、一又は複数の実施形態において、熱水抽出物等が挙げられる。溶媒抽出の温度は、一又は複数の実施形態において、60~100℃、70~90℃又は80℃等が挙げられる。溶媒抽出の時間は、一又は複数の実施形態において、30分~5時間、1~5時間、2~5時間、3~5時間又は1時間等が挙げられる。熱水抽出の温度は、一又は複数の実施形態において、60~100℃、70~90℃又は80℃等が挙げられる。熱水抽出の時間は、一又は複数の実施形態において、30分~5時間、1~5時間、2~5時間、3~5時間又は1時間等が挙げられる。抽出物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。乾燥は、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出によって得られた抽出物を加熱処理することにより行うことができる。加熱温度は、一又は複数の実施形態において、70~150℃又は110℃である。加熱時間は、一又は複数の実施形態において、1~10時間又は4時間である。
本開示のメイラード反応生成物分解剤の製造に適した方法としては、一又は複数の実施形態において、以下のとおりである。適量のフェヌグリーク粉末(例えば、2g)及びフェネル粉末(例えば、2g)を、適量の蒸留水(例えば、40mL)で80℃で1時間抽出し、ついで室温にまで冷却した後、得られたスラリーを濾過して、得られた濾過物は植物抽出物として使用される。乾燥植物抽出物を使用する場合、得られた植物抽出物は、アルミニウムトレイに配置し、例えば、110℃にセットしたインキュベータで4時間乾燥させる。
【0029】
本開示のOPH活性増強剤の形態は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、固形、顆粒、粉末、ペースト、及び液状等が挙げられる。
【0030】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、有効成分のOPH活性増強機能を阻害しない範囲で、その他の食品の抽出物及びその他成分を含んでいてもよい。
【0031】
本開示のOPH活性増強剤は、一又は複数の実施形態において、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、飼料、医薬部外品又は医薬品等の原料として使用できる。原料としての形態は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、固形、顆粒、粉末、ペースト、及び液状等が挙げられる。
本開示は、一又は複数の実施形態として、本開示のOPH活性増強剤を含む、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、飼料、医薬部外品又は医薬品に関する。
【0032】
本開示のOPH活性増強剤の一日当たりの摂取量は、特に限定されるものではなく、一又は複数の実施形態において、5mg以上であり、又は2000mg以下である。
【0033】
[OPH活性増強剤の製造方法]
本開示は、その他の態様において、OPH活性を増強させるためのOPH活性増強剤を製造する方法(本開示のOPH活性増強剤の製造方法)に関する。本開示のOPH活性増強剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークを溶媒抽出することを含む。本開示のOPH活性増強剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物を溶媒抽出することをさらに含んでいてもよい。
また、本開示のOPH活性増強剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物を溶媒抽出することを含む、OPH活性を増強させるためのOPH活性増強剤を製造する方法に関する。本開示のOPH活性増強剤の製造方法によれば、本開示のOPH活性増強剤を製造できる。
【0034】
溶媒抽出は、一又は複数の実施形態において、乾燥状態の植物を溶媒抽出することを含んでいてもよい。
【0035】
本開示のOPH活性増強剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出して得られた抽出物を、濾過又は遠心分離することを含んでいてもよい。
【0036】
本開示のOPH活性増強剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、得られた抽出物を乾燥させることを含んでいてもよい。
【0037】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物と、フェヌグリーク以外の植物の抽出物とを混合して抽出物の混合物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対して1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。
【0038】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.1~10重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよく、OPH活性をさらに増強可能なOPH活性増強剤を製造する点からは、フェネルの抽出物が0.2~5重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでいてもよい。
【0039】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよく、OPH活性をさらに増強可能なOPH活性増強剤を製造する点からは、ハイビスカスの抽出物が0.2~5重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでいてもよい。
【0040】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.05~20重量部、ハイビスカスの抽出物が0.05~20重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよく、OPH活性をさらに増強可能なOPH活性増強剤を製造する点からは、フェネルの抽出物が0.1~10重量部、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでいてもよい。
【0041】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークと、フェヌグリーク以外の植物とを混合し、得られた混合物を溶媒抽出して混合抽出物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、同じ比率(フェヌグリーク1重量部に対して1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。また、得られた混合抽出物における各植物の抽出物の比率が同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対して1重量部)となるように混合してもよいし、異なる比率となるように混合してもよい。
【0042】
[OPH活性増強方法]
本開示は、一態様において、フェヌグリークの抽出物を生体に投与することを含むOPH活性を増強する方法に関する。本開示は、一態様において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を生体に投与することを含むOPH活性を増強する方法に関する。本開示は、一態様において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物をヒト又はヒト以外の生物に摂取させることを含むOPH活性を増強する方法に関する。本開示のOPH活性増強方法は、一又は複数の実施形態において、上記抽出物に替えて、本開示のOPH活性増強剤、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品を使用してもよい。
【0043】
[OPH活性増強させるための、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法]
本開示は、その他の態様において、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法(本開示の飲料組成物等の製造方法)に関する。本開示の飲料組成物等の製造方法は、OPH活性増強効果を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に、フェヌグリークの抽出物を添加することを含む。本開示の飲料組成物等の製造方法は、OPH活性増強効果を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を添加することを含む。
【0044】
抽出物は、一又は複数の実施形態において、前記植物の水抽出物及び有機溶媒抽出物等が挙げられる。水抽出物としては、一又は複数の実施形態において、熱水抽出物等が挙げられる。抽出物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。
【0045】
[OPH活性増強させるための、抽出物組成物]
本開示は、その他の態様において、酸化タンパク質分解酵素活性を増強させるための、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出組成物に関する。本開示において「抽出組成物」とは、植物を抽出処理して得られる液状物又は固形物をいう。抽出組成物としては、一又は複数の実施形態において、植物を溶媒抽出して得られる上清及び濾液等が挙げられる。抽出溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、エーテル等が挙げられる。抽出組成物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。本開示の抽出物組成物は、一又は複数の実施形態において、食品原料として使用することができる。本開示において「食品原料」とは、加工食品及び健康食品等の食品やサプリメント等の製造に用いられる素材又は原料をいう。食品原料の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。
【0046】
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[A1] フェヌグリークの抽出物を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A2] さらに、フェネル及びハイビスカスの少なくとも一方の抽出物を含む、[A1]記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A3] フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A4] フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスの抽出物を有効成分として含む、[A1]から[A3]のいずれかに記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A5] 前記抽出物は、水抽出物及び有機溶媒抽出物の少なくとも一方である、[A1]から[A4]のいずれかに記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A6] 前記抽出物の乾燥物を有効成分として含む、[A1]から[A5]のいずれかに記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤。
[A7] [A1]から[A6]のいずれかに記載の酸化タンパク質分解酵素活性増強剤を有効成分とする、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品。
[A8] フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を有効成分として含む、酸化タンパク質分解酵素活性を増強させるための飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品。
[A9] フェヌグリークを溶媒抽出することを含む、酸化タンパク質分解酵素活性増強剤の製造方法。
[A10] 酸化タンパク質分解酵素活性増強効果を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスからなる群から選択される1種類又は2種類以上の植物の抽出物を添加することを含む、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法。
【0047】
[糖化ストレス抑制剤]
本開示は、フェヌグリーク(学名Trigonella foenum-graecum)及びフェネル(学名Foeniculum vulgare)の水抽出物、とりわけ熱水抽出物の混合物が、酸化タンパク質及び糖化タンパク質等の生体内における酸化ストレスや糖化ストレスに起因する物質を優先的に分解することが知られている酸化タンパク質分解酵素(Oxidized Protein hydrolase:OPH)を活性化する作用と、AGEs分解剤として公知のPTBよりも高いAGEs分解能とを有するという新たな知見に基づく。
本開示は、フェヌグリークの水抽出物、とりわけ熱水抽出物は、アミラーゼ及びα-グルコシダーゼ阻害活性を有するという新たな知見に基づく。
また、本開示は、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物とを組み合わせて使用することによって、一又は複数の実施形態において、異常蛋白質を低減できるという新たな知見に基づく。
本開示は、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物とを組み合わせて使用することによって、一又は複数の実施形態において、糖化ストレスを多面的に抑制できうるという新たな知見に基づく。
【0048】
糖化ストレスは、還元糖やアルデヒド負荷による生体へのストレスと、その後の反応を総合的にとらえた概念であるとされている。本開示において「糖化ストレスを抑制する」とは、異常蛋白質の生成を抑制すること、異常蛋白質を分解及び/又は除去すること、及び高血糖を抑制することを含む。また、糖化ストレスを抑制することとしては、一又は複数の実施形態において、異常蛋白質生成の原因となる酸化物質の生成を抑制すること若しくは酸化物質を分解又は消去することを含んでいてもよい。
【0049】
「異常蛋白質」とは、酸化、糖化又はアルデヒド修飾等を受けた蛋白質をいう。異常蛋白質は、一又は複数の実施形態において、メイラード反応による生成物(メイラード反応生成物)が挙げられる。メイラード反応生成物としては、一又は複数の実施形態において、メイラード反応によって生成される中間体、及びメイラード反応によって生成される最終産物を含む。メイラード反応生成物としては、一又は複数の実施形態において、AGEsを含むポリペプチド及びタンパク質、AGEsによる架橋構造を有するポリペプチド及びタンパク質、並びにメイラード反応によって生成される糖化タンパク質等が挙げられる。異常蛋白質としては、一又は複数の実施形態において、シッフ塩基を有する/シッフ塩基が形成されたポリペプチド及びタンパク質、アマドリ化合物(ケトアミン、糖化タンパク質)、αジカルボニル化合物を有するポリペプチド及びタンパク質、及びAGEsを有するポリペプチド及びタンパク質等が挙げられる。
【0050】
異常蛋白質の生成を抑制することとしては、一又は複数の実施形態において、異常蛋白質の生成に直接又は間接的に関与する物質の生成を抑制することを含む。該物質の生成を抑制することとしては、一又は複数の実施形態において、アミラーゼ阻害及びα-グルコシダーゼ阻害等が挙げられる。異常蛋白質の生成に直接又は間接的に関与する物質としては、一又は複数の実施形態において、還元糖、グリオキサール、メチルグリオキサール及びグリセルアルデヒド等のαジカルボニル化合物、シッフ塩基を有する化合物、アマドリ化合物、アルデヒド並びにAGEs等が挙げられる。AGEsとしては、一又は複数の実施形態において、メイラード反応によって糖化されたアミノ酸及びジペプチド等が挙げられ、限定されない例としては、ペントシジン、クロスリン、ピロピリジン、ピラリン、カルボキシメチルリジン(CML)、カルボキシエチルリジン、カルボキシメチルアルギニン(CMA)、アルグピリミジン、イミダゾロン化合物、glyoxal-lysine dimer(GOLD)及びmethyl glyoxal-lysine dimer(MOLD)等が挙げられる。
【0051】
異常蛋白質を分解及び/又は除去することとしては、一又は複数の実施形態において、メイラード反応生成物を分解することが挙げられる。メイラード反応生成物を分解することとしては、一又は複数の実施形態において、メイラード反応に伴い形成されたAGEsによるポリペプチド及び/又はタンパク質間の架橋構造を切断することを含む。メイラード反応生成物を分解することとしては、一又は複数の実施形態において、その他に、AGEsを含むポリペプチド及びタンパク質、AGEsによる架橋構造を有するポリペプチド及びタンパク質、又はメイラード反応によって生成される糖化タンパク質を分解することを含んでいてもよい。また、特に限定されない一又は複数の実施形態において、AGEsを含むポリペプチド及びタンパク質、AGEsによる架橋構造を有するポリペプチド及びタンパク質、又はメイラード反応によって生成される糖化タンパク質に含まれるジケトン構造のC-C結合を切断することを含んでいてもよい。
【0052】
血糖値の急激な上昇を抑制することとしては、一又は複数の実施形態において、アミラーゼを阻害すること、α-グルコシダーゼを阻害すること、及びこれらの阻害等によって還元糖の生成を抑制することが挙げられる。還元糖としては、一又は複数の実施形態において、グルコース及びフルクトース等の単糖、ラクトース及びマルトース等のマルトース型二糖・オリゴ糖等が挙げられる。
【0053】
高血糖を抑制することとしては、一又は複数の実施形態において、血糖値の急激な上昇を抑制することを含んでよい。
【0054】
酸化ストレスを抑制することとしては、抗酸化力の高い成分を有するものを用いること等が挙げられる。
【0055】
本開示は、一態様において、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む糖化ストレス抑制剤(本開示の糖化ストレス抑制剤)に関する。
【0056】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、少なくともメイラード反応生成物分解活性(AGEs分解活性ともいう)とOPH活性増強能とを有するものをいう。本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、さらなる機能として、アミラーゼ阻害作用、α-グルコシダーゼ阻害作用、及び抗酸化活性等の機能を一又は複数有していてもよい。また、本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、異常蛋白質生成の原因となる物質の生成抑制、分解若しくは除去、及び異常蛋白質の分解、除去若しくは生成抑制の少なくとも一つを行うことができる。
【0057】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む。このため、本開示の糖化ストレス抑制剤によれば、一又は複数の実施形態において、OPHの酵素活性を増強させることや架橋切断をすること等によって、酸化タンパク質及び糖化タンパク質の分解効率を向上できうる。本開示の糖化ストレス抑制剤によれば、一又は複数の実施形態において、生体内で生成されたAGEsに起因するポリペプチド及び/又はタンパク質間の架橋構造の分解を促進させることによって、AGEsの蓄積を抑制できる。本開示の糖化ストレス抑制剤によれば、一又は複数の実施形態において、アミラーゼ又はα-グルコシダーゼ阻害作用を有することから、血糖値の急激な上昇を抑制し、還元糖と蛋白質との非酵素的な反応、過剰なブドウ糖の存在に伴うTCA回路の反応不良等を抑制でき、その結果、異常蛋白質の生成を抑制することができる。また本開示の糖化ストレス抑制剤は抗酸化作用を有することから、糖化ストレス及び酸化ストレスに関係する様々な異常蛋白質の生成及び蓄積を多面的に抑制することができる。よって、本開示の糖化ストレス抑制剤によれば、一又は複数の実施形態において、糖化ストレス及び/又は酸化ストレスを多面的に抑制又は低減することができる。また、本開示の糖化ストレス抑制剤によれば、一又は複数の実施形態において、アンチエイジング、老化防止効果又は生活習慣病の予防効果が期待できる。したがって、本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、抗酸化ストレス剤、アンチエイジング剤、老化防止剤又は生活習慣病予防剤ということもできる。
【0058】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、フェヌグリーク及びフェネルといった植物由来の抽出物を有効成分として使用しているため、安全性に優れ、また生産性に優れるという効果を奏しうる。
【0059】
本開示の糖化ストレス抑制剤において、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物とは、同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対してフェネルの抽出物1重量部)で配合されていてもよいし、異なる比率で配合されていてもよい。
【0060】
本開示の糖化ストレス抑制剤におけるフェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物との配合比(乾燥重量比)は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.1~10重量部であり、糖化ストレス抑制効果をさらに向上させる点からは、フェネルの抽出物が0.2~5重量部である。
【0061】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、抗酸化力及びアミラーゼ阻害作用をさらに向上させる点から、さらなる有効成分としてハイビスカス(学名Hibiscus sabdariffa)の抽出物を含んでいてもよい。本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリーク、フェネル及びハイビスカスの抽出物を有効成分として含む。
【0062】
本開示の糖化ストレス抑制剤が、さらにハイビスカスの抽出物を含む場合、ハイビスカスの抽出物は、フェヌグリークの抽出物及び/又はフェネルの抽出物と同じ比率(フェヌグリークの抽出物又はフェネルの抽出物1重量部に対して1重量部)で配合されていてもよいし、異なる比率で配合されていてもよい。
【0063】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物、フェネルの抽出物及びハイビスカスの抽出物を含む。本態様において、フェヌグリークの抽出物とフェネルの抽出物とハイビスカスの抽出物との配合比(乾燥重量比)は、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.05~20重量部、ハイビスカスの抽出物が0.05~20重量部であり、抗酸化力及びアミラーゼ阻害作用をさらに向上させる点からは、フェネルの抽出物が0.1~10重量部、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部である。
【0064】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、AGEs分解能をさらに向上させる点から、更なる有効成分として、レモンバーム(学名Melissa officinalis)及びローズマリー(学名Rosmarinus officinalis)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0065】
抽出物は、どの部位から抽出したものであってもよい。使用部位としては、一又は複数の実施形態において、全草、花、葉、種子、果実、枝、茎、根、萼(がく)、及び苞(ほう)等が挙げられる。使用部位は1種類であってもよく、2種類以上の部位を組み合わせて使用してもよい。フェネルは、一又は複数の実施形態において、種子が好ましい。フェヌグリークは、一又は複数の実施形態において、種子が好ましい。ハイビスカスは、一又は複数の実施形態において、蕚及び苞が好ましい。ローズマリーは、一又は複数の実施形態において、葉が好ましい。レモンバームは、一又は複数の実施形態において、葉が好ましい。
【0066】
抽出方法は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出等が挙げられる。抽出溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、エーテル等が挙げられる。抽出物は、一又は複数の実施形態において、水抽出物及び有機溶媒抽出物等が挙げられる。水抽出物としては、一又は複数の実施形態において、熱水抽出物等が挙げられる。溶媒抽出の温度は、一又は複数の実施形態において、60~100℃、70~90℃又は80℃等が挙げられる。溶媒抽出の時間は、一又は複数の実施形態において、30分~5時間、1~5時間、2~5時間、3~5時間又は1時間等が挙げられる。熱水抽出の温度は、一又は複数の実施形態において、60~100℃、70~90℃又は80℃等が挙げられる。熱水抽出の時間は、一又は複数の実施形態において、30分~5時間、1~5時間、2~5時間、3~5時間又は1時間等が挙げられる。抽出物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。乾燥は、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出によって得られた抽出物を加熱処理することにより行うことができる。加熱温度は、一又は複数の実施形態において、70~150℃又は110℃である。加熱時間は、一又は複数の実施形態において、1~10時間又は4時間である。
本開示の糖化ストレス抑制剤の製造に適した方法としては、一又は複数の実施形態において、以下のとおりである。適量のフェヌグリーク粉末(例えば、2g)及びフェネル粉末(例えば、2g)を、適量の蒸留水(例えば、40mL)で80℃で1時間抽出し、ついで室温にまで冷却した後、得られたスラリーを濾過して、得られた濾過物は植物抽出物として使用される。乾燥植物抽出物を使用する場合、得られた植物抽出物は、アルミニウムトレイに配置し、例えば、110℃にセットしたインキュベータで4時間乾燥させる。
【0067】
本開示の糖化ストレス抑制剤の形態は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、固形、顆粒、粉末、ペースト、及び液状等が挙げられる。
【0068】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、有効成分の糖化ストレス抑制機能を阻害しない範囲で、その他の抽出物及びその他成分を含んでいてもよい。
【0069】
本開示の糖化ストレス抑制剤は、一又は複数の実施形態において、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、飼料、医薬部外品又は医薬品等の原料として使用できる。原料としての形態は、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、固形、顆粒、粉末、ペースト、及び液状等が挙げられる。
本開示は、一又は複数の実施形態として、本開示の糖化ストレス抑制剤を含む、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、飼料、医薬部外品又は医薬品に関する。
【0070】
本開示の糖化ストレス抑制剤の一日当たりの摂取量は、特に限定されるものではなく、一又は複数の実施形態において、5mg以上であり、又は2000mg以下である。
【0071】
[糖化ストレス抑制剤の製造方法]
本開示は、その他の態様において、フェヌグリーク及びフェネルを溶媒抽出することを含む、糖化ストレス抑制剤を製造する方法に関する。本開示の製造方法によれば、本開示の糖化ストレス抑制剤を製造できる。
【0072】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物と、フェネルの抽出物とを混合して抽出物の混合物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対してフェネルの抽出物1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。
【0073】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.1~10重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよく、糖化ストレス抑制効果をさらに向上可能な糖化ストレス抑制剤を製造する点からは、フェネルの抽出物が0.2~5重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよい。
【0074】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークと、フェネルとを混合し、得られた混合物を溶媒抽出して混合抽出物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、同じ比率(フェヌグリーク1重量部に対してフェネル1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。また、得られた混合抽出物における各植物の抽出物の比率が同じ比率(フェヌグリークの抽出物1重量部に対してフェネルの抽出物1重量部)となるように混合してもよいし、異なる比率となるように混合してもよい。
【0075】
本開示の糖化ストレス抑制剤の製造方法は、一又は複数の実施形態において、さらに、ハイビスカス、レモンバーム、及びローズマリーからなる群から選択される少なくとも一つの植物を溶媒抽出することを含んでいてもよい。
【0076】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、乾燥状態の植物を溶媒抽出することを含んでいてもよい。
【0077】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、溶媒抽出して得られた抽出物を、濾過又は遠心分離することを含んでいてもよい。
【0078】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、得られた抽出物を乾燥させることを含んでいてもよい。
【0079】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物と、フェネルの抽出物と、これら以外の植物の抽出物とを混合して抽出物の混合物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物及び/又はフェネルの抽出物と同じ比率(フェヌグリークの抽出物又はフェネルの抽出物1重量部に対して1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。
【0080】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークの抽出物1重量部当たり、フェネルの抽出物が0.05~20重量部、ハイビスカスの抽出物が0.05~20重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでもよく、抗酸化力及びアミラーゼ阻害作用をさらに向上可能な糖化ストレス抑制剤を製造する点からは、フェネルの抽出物が0.1~10重量部、ハイビスカスの抽出物が0.1~10重量部となるようにこれらの抽出物を混合することを含んでいてもよい。
【0081】
本開示の製造方法は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリークと、フェネルと、これら以外の植物とを混合し、得られた混合物を溶媒抽出して混合抽出物を得ることを含んでいてもよい。混合する比率は、一又は複数の実施形態において、フェヌグリーク及び/又はフェネル同じ比率(フェヌグリーク又はフェネル1重量部に対して1重量部)であってもよいし、異なる比率であってもよい。また、得られた混合抽出物における各植物の抽出物の比率が同じ比率(フェヌグリークの抽出物又はフェネルの抽出物1重量部に対して1重量部)となるように混合してもよいし、異なる比率となるように混合してもよい。
【0082】
[糖化ストレス抑制方法]
本開示は、一態様において、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を生体に投与することを含む糖化ストレスを抑制する方法に関する。本開示の糖化ストレス抑制方法は、一又は複数の実施形態において、さらに、ハイビスカス、レモンバーム、及びローズマリーからなる群から選択される少なくとも一つの植物の抽出物を生体に投与することを含んでいてもよい。本開示の糖化ストレス抑制方法は、一又は複数の実施形態において、上記抽出物に替えて、本開示の糖化ストレス抑制剤、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品を使用してもよい。
【0083】
[糖化ストレス抑制機能を付与するための、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法]
本開示は、その他の態様において、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法(本開示の第2の飲料組成物等の製造方法)に関する。本開示の第2の飲料組成物等の製造方法は、糖化ストレス抑制効果を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を添加することを含む。
【0084】
本開示の第2の飲料組成物等の製造方法は、一又は複数の実施形態において、さらに、ハイビスカス、レモンバーム、及びローズマリーからなる群から選択される少なくとも一つの植物の抽出物を、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に添加することを含んでいてもよい。
【0085】
抽出物は、一又は複数の実施形態において、前記植物の水抽出物及び有機溶媒抽出物等が挙げられる。水抽出物としては、一又は複数の実施形態において、熱水抽出物等が挙げられる。抽出物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。
【0086】
[糖化ストレス抑制機能を付与するための抽出物組成物]
本開示は、その他の態様において、糖化ストレス抑制機能を付与するための、フェヌグリーク及びフェネルの抽出組成物に関する。抽出組成物としては、一又は複数の実施形態において、植物を溶媒抽出して得られる上清及び濾液等が挙げられる。抽出溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、メタノール及びエタノール等のアルコール、エーテル等が挙げられる。抽出組成物の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。本開示の抽出物組成物は、一又は複数の実施形態において、食品原料として使用することができる。食品原料の形態は、一又は複数の実施形態において、水溶液、濃縮液及び乾燥物等が挙げられる。
【0087】
本開示の抽出物組成物は、一又は複数の実施形態において、ハイビスカス、レモンバーム、及びローズマリーからなる群から選択される少なくとも一つの植物の抽出物を含んでいてもよい。
【0088】
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[B1] フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む、糖化ストレス抑制剤。
[B2] さらに、有効成分としてハイビスカスの抽出物を含む、[B1]記載の糖化ストレス抑制剤。
[B3] 前記抽出物は、水抽出物及び有機溶媒抽出物の少なくとも一方である、[B1]又は[B2]に記載の糖化ストレス抑制剤。
[B4] 前記抽出物の乾燥物を有効成分として含む、[B1]から[B3]のいずれかに記載の糖化ストレス抑制剤。
[B5] [B1]から[B4]のいずれかに記載の糖化ストレス抑制剤を有効成分とする、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品。
[B6] フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を有効成分として含む、糖化ストレスを抑制するための飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品。
[B7] フェヌグリーク及びフェネルを溶媒抽出することを含む、糖化ストレス抑制剤の製造方法。
[B8] 糖化ストレス抑制機能を付与するために、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品に、フェヌグリーク及びフェネルの抽出物を添加することを含む、飲料組成物、食品組成物、機能性食品、化粧品、サプリメント、医薬部外品又は医薬品の製造方法。
【0089】
以下に、実施例を用いて本開示をさらに説明する。但し、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0090】
[植物抽出物の調製]
下記表1に示す植物の乾燥粉末2gを、80℃の蒸留水40mlで1時間抽出した後、常温まで冷却後、濾過を行い、得られた濾液を植物抽出物として用いた。
各サンプルの固形分濃度は、得られた濾液5mLをアルミトレイに入れ、110℃に設定したインキュベータ内で4時間乾燥させた後の残留量を測定して算出した。その結果を下記表1に示す。
【0091】
[OPH活性化確認試験(その1)]
OPHとしては、Acylamino-acid releasing enzyme(AARE)(タカラバイオ社製)を使用し、付属のリン酸ナトリウム緩衝液に溶解して0.5U/mlに調整した後、0.2mol/L Tris-HCl(pH7.4)で500倍に希釈して使用した。OPHの反応基質としては0.05mol/L N-acetyl-L-alanine p-nitroanilide(AAPA) 50% ethanol溶液を使用した。
下記表2に示す配合量となるように、下記表1の植物の抽出物、OPH溶液、AAPA溶液及びTris-HClを、96ウェルマイクロプレート(Perkin Elmer)に添加した。マイクロプレートを37℃に温調したマイクロプレートリーダー(SpectraMax Paradigm Multi-Mode Microplate Reader)(Molecular Devise製)内で48時間(2880分間)反応させ、継時的に波長405nmにおける吸光度を測定した。
【0092】
OPH活性は24時間反応の結果で評価した。OPHによるAAPAの分解活性(植物抽出物無添加)を100%とする相対値として、各反応液A,B、C及びDの吸光度を用いて下記式より各植物抽出物のOPH活性化率(%)を算出した。その結果を、レモンバームの活性化率を100とする相対値として下記表1に示す。
OPHの活性化率(%)=(A-B)/(C-D)×100
【0093】
【0094】
【0095】
表1に示すように、フェネル、ハイビスカス及びフェヌグリークは、レモンバームと比較して5倍以上のOPH活性増加作用を示した。
【0096】
[植物抽出粉末の調製]
下記表3の各植物に15倍量の加水、100℃達温で30分間抽出し、固液分離・濃縮した後、100℃以上30分以内で殺菌したものを噴霧乾燥して植物抽出粉末とした。
【0097】
[試料溶液の調製]
上記各植物抽出粉末を5mg/mlとなるように蒸留水で希釈し、試料溶液とした。
【0098】
[OPH活性化確認試験(その2)]
Acylamino-acid releasing enzyme(AARE)(タカラバイオ社製)を付属のリン酸ナトリウム緩衝液に溶解し、0.2mol/L Tris-HCl(pH7.4)で、0.01U/ml、0.005U/ml又は0.001U/mlのOPH溶液を調製した。OPHの反応基質としては0.05mol/L N-acetyl-L-alanine p-nitroanilide(AAPA) 50% ethanol溶液を使用した。
96ウエルマイクロプレートの各ウエルにOPH溶液、AAPA溶液、及び試料溶液(5mg/ml)を混合添加し、37℃に設定したインキュベータ内で24時間反応させた。反応液の405nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0099】
OPHの酵素活性は、1時間当たりの吸光度変化量(反応速度)として求めた(試料のOPH反応速度)。同時に、reference(Ref)として試料溶液を添加せずに同様の測定を行い、反応速度を求めた(RefのOPH反応速度)。試料のOPH反応速度とRefのOPH反応速度とを用いて下記式よりOPH活性化率(%)を算出した(n=3)。その結果を下記表3に示す。
OPH活性化率(%)=[(試料のOPH反応速度)/(RefのOPH反応速度)]×100
【0100】
ネガティブコントロールとして、エピガロカテキンガレート(EGCg)(5mg/ml)を使用し、同様の測定を行った。その結果を下記表3に示す。
【0101】
【0102】
表3に示すように、いずれも、170%を超えるOPH活性増加作用が確認できた。また、フェネル、ハイビスカス及びフェヌグリークを併用した場合であっても、単独と同程度又はそれ以上のOPH活性増加作用が確認できた。
【0103】
[AGEs架橋切断作用確認試験(その1)]
Sara Vasan et al.Nature,382,pp275-278(1996)の記載に準じて行った。
基質としては、αジケトン構造を有するAGEs架橋モデルの反応基質である1-Phenyl-1,2-propanedione(PPD)、ポジティブコントロールとしては、N-phenacylthiazolium bromide(PTB)を使用した。
植物抽出液、10mmol/L PPD、及び0.2mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)を5:1:4の割合で混合し、37℃で8時間反応させた(n=3)。反応終了後、塩酸を加えて反応停止させて反応液を得た。
反応液を20℃で3,000×gで10分間遠心分離し、上清中の安息香酸量を逆相HPLCで分析した。反応液中の安息香酸量は、別途測定した植物抽出液中の安息香酸量を差し引いて求めた。1molのPPDは1molの安息香酸を生成することから、下記式より架橋切断率を算出した。その結果を下記表4に示す。
架橋切断率(%)={(A-B)/C}×100
A:反応液中の安息香酸量
B:植物抽出液中の安息香酸量
C:反応に供したPPD量(基質量)
【0104】
コントロールとして、植物抽出液に替えて10mmol/L PTBを使用して行った。
【0105】
【0106】
表4に示すように、フェネル、レモンバーム及びローズマリーのいずれも、AGEsが関与する架橋構造を分解する化合物として報告されているPTBよりも高い架橋切断率を示した。特にフェネルは、PTBの2倍近い架橋切断率を示した。
【0107】
[AGEs架橋切断作用確認試験(その2)]
Sara Vasan et al.Nature,382,pp275-278(1996)の記載に準じて行った。
予めコラーゲンコートした市販の96穴マイクロプレートにSuperBlock T20 (PBS) Blocking Bufferを300μL/wellで添加し、37℃で1時間反応させた。反応後、0.05% Polyethylene (20) sorbitan monolaurate (Tween 20)/PBS(-)で洗浄し、その後、予めAGEs化した牛血清アルブミン(AGE-BSA)をマイクロプレートの各wellに添加し、37℃で4時間架橋反応させた。反応後、Tween 20/PBS(-)で洗浄し、その後、各wellに植物抽出液を添加し、37℃で18時間切断反応させた。その後、Tween 20/PBS(-)で洗浄し、一次抗体(anti-albumin bovine serum rabbit-polyclonal)を添加して30分間室温で反応させた。さらに、Tween 20/PBS(-)で洗浄後、二次抗体(goat anti-rabbit IgG horseradish peroxidase (HRP) conjugate)を添加して30分間室温で反応させた。その後、Tween 20/PBS(-)で洗浄し、TMB One Component HRP Microwell Substrateを加えた。さらにPEG6000溶液を添加し、20分間反応させた。反応停止液として1N HClを添加し、450nm(主波長)/630nm(副波長)の吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。AGE-BSAの残存量は、AGE-BSA量を変化させた検量線より求めた。また、AGE-BSA分解率(コラーゲン架橋分解率)は、下記式を用いて求めた。その結果を下記表5に示す。
AGE-BSAs分解率={(添加AGE-BSA量-残存AGE-BSA量)/添加AGE-BSA量}×100
【0108】
コントロールとして、植物抽出液に替えて、メイラード反応活性阻害効果を有することが知られている5mmol/L punicalaginを使用し同様の試験を行った。
【0109】
【0110】
表5に示すように、フェネル、レモンバーム及びフェヌグリークは、コラーゲン架橋分解活性を有することが確認できた。特に、レモンバームは、punicalaginと同等のコラーゲン架橋分解活性を有することが確認できた。
【0111】
[AGEs架橋切断作用確認試験(その3)]
下記表6に示す植物抽出液の混合液を使用した以外は、AGEs架橋切断作用確認試験(その1)と同様の測定を行った。その結果を下記表6に示す。
【0112】
【0113】
表6に示すように、フェネル、ハイビスカス及びフェヌグリークの混合液は、PTBの約2倍近いAGEs架橋切断率を示した。
【0114】
[アミラーゼ阻害作用確認試験]
Enzy Chrom α-Amylase Assay Kit(BioAssay System)及びα-Amylase from Porcine pancreas(シグマ)を使用した。
マイクロプレートの各ウエルにキット付属の酵素、Assay Buffer、Glucose Standardを10μLずつ分注した。その後、各ウエルに、下記表7に示す植物抽出液を含む反応液を40μLずつ分注し、撹拌後15分間反応させた。その後、各ウエルに発色試薬を150μL分注し、室温で20分間反応させた後、585nmの吸光度を測定し、阻害率及びIC50を求めた(n=3)。得られたIC50を下記表7に示す。
【0115】
【0116】
表7に示す通り、フェヌグリーク及びハイビスカスのIC50はいずれも0.1mg/mL未満であり、フェヌグリーク及びハイビスカスは、アミラーゼの高い阻害活性を有することが確認できた。これにより、フェヌグリーク及びハイビスカスは、血糖値の急激な上昇を抑制でき、その結果、異常蛋白質の生成の原因となりうるジカルボニル化合物及びAGEs等の生成を抑制可能であることが示唆された。
【0117】
[α-グルコシダーゼ阻害作用確認試験]
QuantiChrom α-Glucosidase Assay Kit DAGD-100(Bio Assay Sytem)、及びラット小腸アセトンパウダー(シグマ、α-Glucosidase)を使用した。
マイクロプレートリーダーの測定部温度を30℃に設定した後、マイクロプレートの各ウエルに下記表8に示す植物抽出液を含む試料溶液200μL(基質溶液8uLを含む)と及びα-グルコシダーゼ溶液20μLとを分注して撹拌して反応を開始させ、405nmの吸光度変化を30分間測定した。阻害作用のポジティブコントロールとしてはα-ルコシダーゼ阻害薬のアカルボース(acarbose)を使用し、α-グルコシダーゼ活性阻害率(%)は下記の式に従って算出し(n=3)、IC50を求めた。
α-グルコシダーゼ活性阻害率(%) = {1-(A /B)} × 100
A:サンプル、ポジティブコントロールの各濃度の値(ΔAbs 30min)
B:TOTAL(全発色)の値(ΔAbs 30min)
【0118】
【0119】
表8に示す通り、フェヌグリーク及びフェネルはα-グルコシダーゼ阻害活性を有することが確認できた。これにより、フェヌグリーク及びフェネルは、血糖値の急激な上昇を抑制でき、その結果、異常蛋白質の生成の原因となりうるジカルボニル化合物及びAGEs等の生成を抑制可能であることが示唆された。
【0120】
[抗酸化力確認試験]
アークレイ社のスポットケム(商標)i-Pack Oxystress Test(商標)を使用した。
チオシアン酸塩を含むスポットケム試薬r1 90μLと塩化鉄IIIを含むスポットケム試薬r2 36μLとを混合した。この混合液126μLに、下記表9の植物抽出液18μLを添加し、スポットケムを用いて465nmの吸光度を測定し、抗酸化力(μmol/L)を求めた。
他方、植物抽出液に替えて、標準試薬アスコルビン酸を使用し、同様に吸光度測定を行い、アスコルビン酸濃度と吸光度との相関関係を示す検量線を作成した。そして、植物抽出液の吸光度と検量線とから、抗酸化力をアスコルビン酸当量(mg/L)に換算した。その結果を下記表9に示す。
【0121】
【0122】
表9に示す通り、ハイビスカスが、高い抗酸化力を有することが確認できた。これにより、ハイビスカスは、異常蛋白質生成の原因となる酸化物質を消去可能であることが示唆された。