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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】多関節ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/08 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B25J9/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017167714
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019042855
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗藤 康治
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸二
(72)【発明者】
【氏名】亀山 篤
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-034282(JP,A)
【文献】特開昭63-150180(JP,A)
【文献】特開平04-217478(JP,A)
【文献】特開平11-123676(JP,A)
【文献】特開2003-103063(JP,A)
【文献】特開2004-148433(JP,A)
【文献】特開2007-276067(JP,A)
【文献】特開2013-056419(JP,A)
【文献】特表2016-538150(JP,A)
【文献】特開2017-042853(JP,A)
【文献】米国特許第04518308(US,A)
【文献】米国特許第06084373(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0340560(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0290817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/00
B66C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側から先端側に向かって複数のユニットが連結した多関節ロボットであって、
前記複数のユニットは、
固定体と、前記固定体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための固定体側機械接続部と、前記固定体に連結部により連結された変位体と、前記変位体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための変位体側機械接続部と、前記固定体に対して前記変位体を変位させる駆動部と、を有する、複数種類の関節ユニットと、
前記駆動部を制御する制御部と、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための制御ユニット用機械接続部を有する、制御ユニットと、を含み、
前記固定体に対して前記変位体を変位させることによる、前記固定体側機械接続部に対する前記変位体側機械接続部の変位は、前記関節ユニットの種類に応じて異なり、
前記固定体側機械接続部は、第1の接続構造を有し、前記変位体側機械接続部および前記制御ユニット用機械接続部は、それぞれ第2の接続構造を有し、前記第1の接続構造と前記第2の接続構造とが互いに接続可能であり、
前記複数種類の関節ユニット及び前記制御ユニットの各ユニットは、各前記ユニットについての正常状態と異常状態とを識別可能に報知する報知部を有する、多関節ロボット。
【請求項2】
前記複数種類の関節ユニットは、前記固定体側機械接続部から前記連結部に向かう方向に沿った軸まわりに前記固定体に対して前記変位体を回転させるねじり関節ユニットと、前記固定体側機械接続部から前記連結部に向かう方向に直交する軸まわりに前記固定体に対して前記変位体を回転させる曲げ関節ユニットと、を少なくとも含む、請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項3】
前記複数のユニットは、特定の作業を行うためのエンドエフェクタを有するエンドエフェクタユニットを含み、
前記エンドエフェクタユニットは、前記第1の接続構造を有する、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するためのエンドエフェクタユニット用機械接続部を有する、請求項1または2に記載の多関節ロボット。
【請求項4】
前記関節ユニットは、前記固定体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための固定体側電気接続部と、前記変位体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための変位体側電気接続部と、前記固定体側電気接続部と変位体側電気接続部を電気的に接続する配線部と、を有し、
前記制御ユニットは、前記制御部から前記駆動部を制御するための制御信号を出力する、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための制御ユニット用電気接続部を有し、
前記固定体側電気接続部は、第3の接続構造を有し、前記変位体側電気接続部および前記制御ユニット用電気接続部は、それぞれ第4の接続構造を有し、前記第3の接続構造と前記第4の接続構造とが互いに接続可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項5】
前記駆動部は、モータを含み、
前記関節ユニットは、前記制御ユニットから送られる制御信号に基づいて、前記モータに送るモータ電流を生成するモータドライバを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項6】
前記関節ユニットは、当該関節ユニットの種類を識別するための種類情報を記憶する記憶部を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の多関節ロボット。
【請求項7】
前記記憶部には、前記固定体に対する前記変位体の所定の位置を示す位置情報が記憶される、請求項6に記載の多関節ロボット。
【請求項8】
前記制御ユニットは、外部の携帯端末と無線で通信する無線通信部を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の多関節ロボット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な自由度の多関節ロボットが開発されている。作業内容に応じて適切な自由度、すなわち適切な関節数の多関節ロボットが用意される。例えば多関節ロボットの作業内容を変更することになった場合などには、これまで使用していた多関節ロボットとは別の自由度の多関節ロボットを用意する必要が生じ得るが、特許文献1には、これまで使用していた多関節ロボットの関節数を変更することにより自由度の変更を容易に行える多関節ロボットが開示されている。
【0003】
特許文献1の図6には、同じ構成である3つのアクチュエータ装置を接続ブロックにより直列に接続して構成される3自由度の多関節ロボットが開示されている。この多関節ロボットでは、関節となるアクチュエータ装置とそれらを接続する接続ブロックの数を増やすことにより、自由度を変更することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4543469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の多関節ロボットでは、関節となるアクチュエータ装置を連結するために接続ブロックが必要になる。このため、連結する構成部材の数が多くなり、多関節ロボットの自由度の変更作業が煩雑になる。
【0006】
そこで、本発明は、より容易に自由度を変更できる多関節ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る多関節ロボットは、基端側から先端側に向かって複数のユニットが連結した多関節ロボットであって、前記複数のユニットは、固定体と、前記固定体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための固定体側機械接続部と、前記固定体に連結部により連結された変位体と、前記変位体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための変位体側機械接続部と、前記固定体に対して前記変位体を変位させる駆動部と、を有する、複数種類の関節ユニットと、前記駆動部を制御する制御部と、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するための制御ユニット用機械接続部を有する、制御ユニットと、を含み、前記固定体に対して前記変位体を変位させることによる、前記固定体側機械接続部に対する前記変位体側機械接続部の変位は、前記関節ユニットの種類に応じて異なり、前記固定体側機械接続部は、第1の接続構造を有し、前記変位体側機械接続部および前記制御ユニット用機械接続部は、それぞれ第2の接続構造を有し、前記第1の接続構造と前記第2の接続構造とが互いに接続可能である。
【0008】
上記の構成によれば、複数種類の関節ユニットの各固定体側機械接続部が、第1の接続構造を共通に有しており、複数種類の関節ユニットの各変位体側機械接続部並びに制御ユニット用機械接続部が、第1の接続構造に接続可能な第2の接続構造を共通に有している。このため、多関節ロボットの作業内容を変更する場合などに、その作業に応じて、多関節ロボットが有する関節ユニットの数を容易に増やしたり減らしたりでき、また、種類の異なる関節ユニットの位置を容易に入れ替えることもできる。このため、より容易に自由度を変更できる多関節ロボットを提供することができる。
【0009】
上記の多関節ロボットにおいて、例えば、前記複数種類の関節ユニットは、前記固定体側機械接続部から前記連結部に向かう方向に沿った軸まわりに前記固定体に対して前記変位体を回転させるねじり関節ユニットと、前記固定体側機械接続部から前記連結部に向かう方向に直交する軸まわりに前記固定体に対して前記変位体を回転させる曲げ関節ユニットと、を少なくとも含む。
【0010】
上記の多関節ロボットにおいて、前記複数のユニットは、特定の作業を行うためのエンドエフェクタを有するエンドエフェクタユニットを含み、前記エンドエフェクタユニットは、前記第1の接続構造を有する、前記複数のユニットにおける別のユニットと機械的に接続するためのエンドエフェクタユニット用機械接続部を有してもよい。この構成によれば、第1の接続構造を有するエンドエフェクタユニット用機械接続部が、第2の接続構造を有する変位体側機械接続部に接続可能であるため、エンドエフェクタユニットをいずれの種類の関節ユニットにも容易に接続できる。
【0011】
上記の多関節ロボットにおいて、前記関節ユニットは、前記固定体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための固定体側電気接続部と、前記変位体に設けられた、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための変位体側電気接続部と、前記固定体側電気接続部と変位体側電気接続部を電気的に接続する配線部と、を有し、前記制御ユニットは、前記制御部から前記駆動部を制御するための制御信号を出力する、前記複数のユニットにおける別のユニットと電気的に接続するための制御ユニット用電気接続部を有し、前記固定体側電気接続部は、第3の接続構造を有し、前記変位体側電気接続部および前記制御ユニット用電気接続部は、それぞれ第4の接続構造を有し、前記第3の接続構造と前記第4の接続構造とが互いに接続可能であってもよい。この構成によれば、互いに機械的に接続される2つのユニットが電気的にも接続可能である。このため、制御ユニットから出力した制御信号を、連結された各関節ユニットが有する配線部を介して、多関節ロボットの基端側から先端側に送ることができる。
【0012】
上記の多関節ロボットにおいて、前記駆動部は、モータを含み、前記関節ユニットは、前記制御ユニットから送られる制御信号に基づいて、前記モータに送るモータ電流を生成するモータドライバを有してもよい。この構成によれば、各関節ユニットがモータドライバを有するため、各関節ユニットを駆動するためのモータドライバを制御ユニットに設けなくて済み、制御ユニットをコンパクトにできる。また、連結する関節ユニットの数は、制御ユニットが有するモータドライバの数に制限されない。
【0013】
上記の多関節ロボットにおいて、前記関節ユニットは、当該関節ユニットの種類を識別するための種類情報を記憶する記憶部を有してもよい。この構成によれば、制御ユニットが関節ユニットの記憶部から種類情報を読み込むことにより、当該関節ユニットをその種類に応じて適切に制御することができる。
【0014】
上記の記憶部には、前記固定体に対する前記変位体の所定の位置を示す位置情報が記憶されてもよい。この構成によれば、例えば多関節ロボットが所定の姿勢をとるための各関節ユニットの姿勢を、関節ユニット自体に記憶させることができる。
【0015】
上記の多関節ロボットにおいて、前記制御ユニットは、外部の携帯端末と無線で通信する無線通信部を有してもよい。この構成によれば、ユーザが外部の携帯端末に対して行う操作によって、多関節ロボットに対して動作指令を送ることができる。
【0016】
上記の多関節ロボットにおいて、前記関節ユニットは、当該関節ユニットについての正常状態と異常状態とを識別可能に報知する報知部を有してもよい。この構成によれば、各関節ユニットが異常かどうか当該関節ユニットの報知部から確認でき、異常状態にある関節ユニットの交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の多関節ロボットによれば、より容易に自由度を変更できる多関節ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る多関節ロボットの斜視図である。
図2図1に示す多関節ロボットにおける制御ユニットの斜視図である。
図3図2のIII-III矢視概略断面図である。
図4図1に示す多関節ロボットにおけるねじり関節ユニットの斜視図である。
図5図4のV-V矢視概略断面図である。
図6図1に示す多関節ロボットにおける曲げ関節ユニットの斜視図である。
図7】(A)は、図6のVIIA-VIIA矢視概略断面図であり、(B)は、(A)のVIIB-VIIB矢視断面図である。
図8図1に示す多関節ロボットにおけるエンドエフェクタユニットの斜視図である。
図9図8に示すIX-IX矢視概略断面図である。
図10図1に示す多関節ロボットの制御系統を示すブロック図である。
図11】多関節ロボットの適用例を示す図である。
図12】多関節ロボットの別の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
〔多関節ロボット1の構成〕
図1は、本実施形態に係る多関節ロボット1の斜視図である。図1に示すように、多関節ロボット1は、基端側から先端側に向かって複数のユニットが連結して構成される。具体的には、多関節ロボット1は、制御ユニット2と、複数種類の関節ユニット3と、エンドエフェクタユニット4とが連結して構成される。制御ユニット2は、多関節ロボット1における基端側端部に配置され、エンドエフェクタユニット4は、多関節ロボット1における先端側端部に配置される。複数種類の関節ユニット3は、制御ユニット2とエンドエフェクタユニット4の間で直列に連結される。
【0021】
本実施形態では、複数種類の関節ユニット3は、2つのねじり関節ユニット3Aおよび3つの曲げ関節ユニット3Bを含む。すなわち、多関節ロボット1は、5つの関節を有する5軸ロボットである。多関節ロボット1は、壁掛け用ベース、天井吊り用ベース、床置き用ベース、台取付用クリップベースなどの、制御ユニット2を保持するベース(図示略)と共に利用される。以下、各ユニット2,3,4について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、各ユニット2,3,4に関して、それらが連結されて多関節ロボット1を構成する場合の多関節ロボット1における基端側と先端側を、それぞれ、各ユニット2,3,4の「基端側」および「先端側」と呼ぶこととする。
【0022】
〔制御ユニット2の構成〕
まず、制御ユニット2について、図2および図3を参照して説明する。図2は、制御ユニット2の斜視図であり、図3は、図2のIII-III矢視概略断面図である。制御ユニット2は、円柱状のケーシング11と、当該ケーシング11に内装された制御部12を有する。制御部12は、多関節ロボット1の動作を制御する。制御部12は、例えばCPUやROMおよびRAM等を含む回路モジュールである。ケーシング11の側面には、電力供給口13が設けられている。制御部に12には、外部電源から電力供給口13を介して電力が供給される。
【0023】
また、ケーシング11内には、無線通信部14が設けられている。無線通信部14は、制御部12とバスで接続される。無線通信部14は、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信により、制御ユニット2の外部の携帯端末17(図10参照)と通信を行う。ただし、制御ユニット2の制御部12が、外部のコンピュータなどと有線で通信可能に接続されていてもよい。
【0024】
円柱状のケーシング11の一方側(先端側)端部には、円形状の制御ユニット用機械接続部15が設けられている。制御ユニット用機械接続部15は、関節ユニット3と機械的に接続するためのものである。制御ユニット用機械接続部15は、後述するように第2の接続構造5Bを有する。
【0025】
また、円柱状のケーシング11の一方側(先端側)端部には、制御ユニット用電気接続部16が設けられている。制御ユニット用電気接続部16は、上述の制御ユニット用機械接続部15により機械的に接続された関節ユニット3と電気的に接続するためのコネクタである。制御ユニット用電気接続部16は、後述するように第4の接続構造5Dを有する。
【0026】
また、図2に示すように、円柱状のケーシング11の側面には、当該制御ユニット2についての正常状態と異常状態とを識別可能に発光する発光部18が設けられている。発光部18は、例えば1つまたは複数のLEDである。
【0027】
〔関節ユニット3の構成〕
次に、関節ユニット3について説明する。本実施形態では、いずれの種類の関節ユニット3も、即ち、ねじり関節ユニット3Aと曲げ関節ユニット3Bの双方とも、固定体と、当該固定体に対して回転変位する変位体(以下、「回転体」と称する。)を有する。固定体には、別のユニットと機械的に接続するための固定体側機械接続部が設けられている。また、回転体には、別のユニットと機械的に接続するための回転体側機械接続部が設けられている。関節ユニット3は、その種類に応じて、固定体に対して回転体が変位したときに生じる固定体側機械接続部に対する回転体側機械接続部の変位が異なる。以下、ねじり関節ユニット3Aと曲げ関節ユニット3Bについて、それぞれ詳しく説明する。
【0028】
〔ねじり関節ユニット3Aの構成〕
まず、ねじり関節ユニット3Aについて、図4および図5を参照して説明する。図4は、ねじり関節ユニット3Aの斜視図であり、図5は、図4のV-V矢視概略断面図である。ねじり関節ユニット3Aは、円柱状の固定体21と、円盤状または短円柱状の回転体22とを有し、これら固定体21と回転体22とが重なって全体として円柱状を呈している。固定体21と回転体22とは、それらの中心線C1を回動中心として回動可能に連結される。固定体21は多関節ロボット1における基端側に位置し、回転体22は多関節ロボット1における先端側に位置する。
【0029】
固定体21は、固定体側ケーシング部23を有し、回転体22は、回転体側ケーシング部24を有する。これら固定体側ケーシング部23と回転体側ケーシング部24とにより内部空間S1が形成されている。固定体側ケーシング部23は、円筒状の側壁部23aと、当該円筒状の側壁部23aの基端側の開口を覆う基端側壁部23bを有する。回転体側ケーシング部24は、円筒状の側壁部23aの先端側の開口を覆う先端側壁部24aを有する。
【0030】
固定体21は、駆動部25を有する。駆動部25は、中心線C1を回動中心として固定体21に対して回転体22を回転駆動させる。駆動部25は、内部空間S1に配置されており、固定体側ケーシング部23に支持される。駆動部25は、モータ26と、モータ26の図略の出力軸の回転速度を減じて出力する減速機27とを含む。
【0031】
減速機27には、その出力軸と一体回転可能な筒状部28が設けられている。筒状部28は、減速機27から回転体22に向かって中心線C1に沿って延び、その先端側端部は回転体22の回転体側ケーシング部24に固定される。すなわち、固定体21と回転体22とは、筒状部28により互いに連結するものであり、ねじり関節ユニット3Aにおいて筒状部28は、本発明における連結部に相当する。
【0032】
また、固定体21は、モータ26の駆動を制御するモータドライバ29と、モータ26の回転位置を検出するための位置検出部26a(図10参照)とを有する。モータドライバ29は、アンプを含み、制御ユニット2から送られる制御信号に基づいて、モータ26に送るモータ電流を生成する。位置検出部26aは、モータ軸の回転位置(回転角度)を検出してモータドライバ29にフィードバックする。位置検出部26aは、例えばレゾルバまたはエンコーダ等である。
【0033】
固定体21の基端側端部には、固定体側機械接続部30が設けられている。固定体側機械接続部30は、基端側で別のユニットと機械的に接続するためのものである。固定体側機械接続部30は、後述するように第1の接続構造5Aを有する。回転体22の先端側端部には、回転体側機械接続部31が設けられている。回転体側機械接続部31は、先端側で別のユニットと機械的に接続するためのものである。回転体側機械接続部31は、後述するように第2の接続構造5Bを有する。
【0034】
固定体21の基端側端部には、固定体側電気接続部32が設けられている。固定体側電気接続部32は、基端側で別のユニットと電気的に接続するためのものである。固定体側機械接続部30は、固定体側ケーシング部23に支持されている。固定体側電気接続部32は、後述するように第3の接続構造5Cを有する。回転体22の先端側端部には、回転体側電気接続部33が設けられている。回転体側電気接続部33は、先端側で別のユニットと電気的に接続するためのものである。回転体側電気接続部33は、回転体側ケーシング部24に支持されている。回転体側電気接続部33は、後述するように第4の接続構造5Dを有する。
【0035】
固定体21は、固定体側電気接続部32と回転体側電気接続部33とを電気的に接続する配線部34を有する。配線部34は、内部空間S1に配置される。配線部34は、固定体側電気接続部32と回転体側電気接続部33に向かって順番に、第1配線部34a、第2配線部34b、第3配線部34c、第4配線部34dを有する。
【0036】
第1配線部34aは、固定体側ケーシング部23に固定されており、固定体側電気接続部32からモータドライバ29につながる。第2配線部34bは、固定体側ケーシング部23に固定されており、モータドライバ29から先端側に向かって中心線C1に沿って延び、筒状部28の径方向外方の位置まで延びる。
【0037】
第3配線部34cは、帯状に形成されており、固定体21に対する回転体22の回動変位を吸収するように構成される。具体的には、第3配線部34cの一方側端部は、第2配線部34bに接続しており、固定体側ケーシング部23に固定されている。第3配線部34cの他方側端部は、筒状部28に固定されている。第3配線部34cは、一方側端部から筒状部28の外周における一方向に延びており、途中で湾曲しながら筒状部28側に折り返して反対方向に延び、他方側端部に至る。このように、固定体21に対して回転体22が回動すると、第3配線部34cは、折り返しの湾曲位置を変えながら変形する。
【0038】
第4配線部34dは、第3配線部34cの先端側端部から筒状部28を貫通して回転体22の中央に配置された回転体側電気接続部33につながる。
【0039】
また、モータドライバ29には、当該モータドライバ29を含む関節ユニット3の種類、すなわち当該関節ユニット3がねじり関節ユニット3Aであることを識別するための種類情報を記憶する記憶部35が設けられている。記憶部35は、例えばフラッシュメモリである。また、記憶部35には、固定体21に対する回転体22の所定の回転位置を示す回転位置情報も記憶される。また、記憶部35には、当該記憶部35を含むねじり関節ユニット3Aの製造番号などの製造情報も記憶される。
【0040】
固定体21の筒状の固定体側ケーシング部23の外周面には、当該ねじり関節ユニット3Aについての正常状態と異常状態とを識別可能に発光する発光部36(本発明における報知部に相当)が設けられている。発光部36は、例えば1つまたは複数のLEDである。
【0041】
〔曲げ関節ユニット3Bの構成〕
次に、曲げ関節ユニット3Bについて、図6図7(A)および図7(B)を参照して説明する。図6は、曲げ関節ユニット3Bの斜視図であり、図7(A)は、図6のVIIA-VIIA矢視概略断面図であり、図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB矢視断面図である。曲げ関節ユニット3Bは、円柱状の固定体41と、円柱状の回転体42とを有し、これら固定体41の長手方向における端部と回転体42の長手方向における端部とがそれらの長手方向と直交する回動軸C2を中心として回動可能に連結されたものである。
【0042】
固定体41は、固定体側ケーシング部43を有し、回転体42は、回転体側ケーシング部44を有する。これら固定体側ケーシング部43と回転体側ケーシング部44とにより内部空間S2が形成されている。固定体側ケーシング部43と回転体側ケーシング部44とは類似した形状を有する。固定体側ケーシング部43および回転体側ケーシング部44は、それぞれ略円柱状であり、長手方向における一方側端部において長手方向に直交する方向に開口した開口部を有する。そして、固定体側ケーシング部43と回転体側ケーシング部44とは、それぞれの開口部を合わせるように配置される。
【0043】
固定体41は、駆動部45を有する。駆動部45は、回転軸C2を回動中心として固定体41に対して回転体42を回転駆動させる。駆動部45は、内部空間S2に配置されており、固定体側ケーシング部43に支持される。駆動部45は、モータ46と、モータ46の図略の出力軸の回転速度を減じて出力する減速機47とを含む。
【0044】
減速機47は、固定体21の先端側端部に配置される。減速機47には、その出力軸と一体回転可能な円柱部48が設けられている。円柱部48は、減速機47から回転体42に向かって回動軸C2に沿って延び、その先端側端部は回転体42の回転体側ケーシング部44に固定される。すなわち、固定体41と回転体42とは、円柱部48により互いに連結するものであり、曲げ関節ユニット3Bにおいて円柱部48は、本発明における連結部に相当する。
【0045】
また、固定体41は、モータ46の駆動を制御するモータドライバ49と、モータ46の回転位置を検出するための位置検出部46a(図10参照)とを有する。モータドライバ49は、アンプを含み、制御ユニット2から送られる制御信号に基づいて、モータ46に送るモータ電流を生成する。位置検出部46aは、モータ軸の回転位置(回転角度)を検出してモータドライバ49にフィードバックする。位置検出部46aは、例えばレゾルバまたはエンコーダ等である。
【0046】
固定体41の基端側端部には、固定体側機械接続部50が設けられている。固定体側機械接続部50は、基端側で別のユニットと機械的に接続するためのものである。固定体側機械接続部50は、後述するように第1の接続構造5Aを有する。回転体42の先端側端部には、回転体側機械接続部51が設けられている。回転体側機械接続部51は、先端側で別のユニットと機械的に接続するためのものである。回転体側機械接続部51は、後述するように第2の接続構造5Bを有する。
【0047】
固定体41の基端側端部には、固定体側電気接続部52が設けられている。固定体側電気接続部52は、基端側で別のユニットと電気的に接続するためのものである。固定体側機械接続部50は、固定体側ケーシング部43に支持されている。固定体側電気接続部52は、後述するように第3の接続構造5Cを有する。回転体42の先端側端部には、回転体側電気接続部53が設けられている。回転体側電気接続部53は、先端側で別のユニットと電気的に接続するためのものである。回転体側電気接続部53は、回転体側ケーシング部44に支持されている。回転体側電気接続部53は、後述するように第4の接続構造5Dを有する。
【0048】
固定体41は、固定体側電気接続部52と回転体側電気接続部53とを電気的に接続する配線部54を有する。配線部54は、内部空間S2に配置される。配線部54は、固定体側電気接続部52と回転体側電気接続部53に向かって順番に、第1配線部54a、第2配線部54b、第3配線部54c、第4配線部54dを有する。
【0049】
第1配線部54aは、固定体側ケーシング部43に固定されており、固定体側電気接続部52からモータドライバ49につながる。
【0050】
第2配線部54bは、帯状に形成されており、固定体41に対する回転体42の回動変位を吸収するように構成される。具体的には、第2配線部54bの一方側端部は、モータドライバ49に接続しており、第2配線部54bの他方側端部は、円柱部48に固定されている。第2配線部54bは、一方側端部から円柱部48に向かって延び、円柱部48の外周における一方向に延びており、途中で湾曲しながら円柱部48側に折り返して反対方向に延び、他方側端部に至る。このように、固定体41に対して回転体42が回動すると、第2配線部54bは、折り返しの湾曲位置を変えながら変形する。
【0051】
第3配線部54cは、円柱部48に固定されている。第3配線部54cは、第2配線部54bの先端側端部から円柱部48の長手方向に沿って回転体42側に延びる。第4配線部54dは、第3配線部54cの先端側端部から回転体42の長手方向に沿って延び、回転体側電気接続部53につながる。
【0052】
また、モータドライバ49には、当該モータドライバ49を含む関節ユニット3の種類、すなわち当該関節ユニット3が曲げ関節ユニット3Bであることを識別するための種類情報を記憶する記憶部55が設けられている。記憶部55は、例えばフラッシュメモリである。また、記憶部55には、固定体41に対する回転体42の所定の回転位置を示す回転位置情報も記憶される。また、記憶部55には、当該記憶部55を含む曲げ関節ユニット3Bの製造番号などの製造情報も記憶される。
【0053】
固定体41の筒状の固定体側ケーシング部43の外周面には、当該曲げ関節ユニット3Bについての正常状態と異常状態とを識別可能に発光する発光部56(本発明における報知部に相当)が設けられている。発光部56は、例えば1つまたは複数のLEDである。
【0054】
〔エンドエフェクタユニット4の構成〕
次に、エンドエフェクタユニット4について、図8および図9を参照して説明する。図8は、エンドエフェクタユニット4の斜視図であり、図9は、図8のIX-IX矢視概略断面図である。エンドエフェクタユニット4は、基部61とエンドエフェクタ62とを有する。
【0055】
エンドエフェクタ62は、多関節ロボット1が特定の作業を行うためのものであり、本実施形態では、ワークを把持するチャックである。ただし、エンドエフェクタユニット4のエンドエフェクタの態様はこれに限定されない。基部61には、エンドエフェクタ62を動作させるための駆動部63が内装されている。駆動部63は、モータ64、減速機65を含む。
【0056】
また、基部61には、モータ64の駆動を制御するモータドライバ66が内装されている。また、基部61には、モータ64の回転位置を検出するための位置検出部66a(図10参照)も内装される。モータドライバ66は、アンプを含み、制御ユニット2から送られる制御信号に基づいて、モータ64に送るモータ電流を生成する。位置検出部66aは、モータ軸の回転位置(回転角度)を検出してモータドライバ66にフィードバックする。位置検出部66aは、例えばレゾルバまたはエンコーダ等である。
【0057】
また、基部61には、関節ユニット3と機械的に接続するためのエンドエフェクタユニット用機械接続部67が設けられている。エンドエフェクタユニット用機械接続部67は、後述するように第1の接続構造5Aを有する。
【0058】
また、基部61には、関節ユニット3と電気的に接続するためのエンドエフェクタユニット用電気接続部68が設けられている。エンドエフェクタユニット用電気接続部68は、後述するように第3の接続構造5Cを有する。
【0059】
また、モータドライバ66には、当該エンドエフェクタユニット4の種類を識別するための種類情報を記憶する記憶部69が設けられている。記憶部69は、例えばフラッシュメモリである。また、記憶部69には、当該記憶部69を含むエンドエフェクタユニット4の製造番号などの製造情報も記憶される。
【0060】
基部61の外周面には、当該エンドエフェクタユニット4についての正常状態と異常状態とを識別可能に発光する発光部70が設けられている。発光部70は、例えば1つまたは複数のLEDである。
【0061】
〔ユニット同士の接続構造〕
(機械的接続)
多関節ロボット1は、ユーザの要望に応じて適宜構成を変えることのできる、カスタマイズ可能ロボットである。すなわち、各ユニット2,3,4が有する接続部同士を自由に連結することができる。
【0062】
具体的には、ねじり関節ユニット3Aの固定体側機械接続部30、曲げ関節ユニット3Bの固定体側機械接続部50、およびエンドエフェクタユニット4のエンドエフェクタユニット用機械接続部67は、共通の第1の接続構造5Aを有する。また、制御ユニット2の制御ユニット用機械接続部15は、ねじり関節ユニット3Aの回転体側機械接続部31、および曲げ関節ユニット3Bの回転体側機械接続部51は、共通の第2の接続構造5Bを有する。そして、これら第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bとが、互いに接続可能となっている。
【0063】
このため、例えば、ねじり関節ユニット3Aには、制御ユニット2、他のねじり関節ユニット3A、曲げ関節ユニット3B、及びエンドエフェクタユニット4を選択的に連結することができる。また、例えば、曲げ関節ユニット3Bには、制御ユニット2、ねじり関節ユニット3A、他の曲げ関節ユニット3B、及びエンドエフェクタユニット4を選択的に連結することができる。従って、多関節ロボット1において、関節ユニット3の数を変更したり、関節ユニット3を組み替えたりすることによって、多関節ロボット1の自由度や動作範囲などを変更することができる。
【0064】
本実施形態では、第1の接続構造5Aは、円筒状を呈しており、第2の接続構造5Bは、第1の接続構造5Aの円筒部の内周壁に嵌合可能に円筒状(または円柱状)を呈している。そして、第1の接続構造5Aの円筒部には、外周に沿って貫通孔が形成されており、第2の接続構造5Bの円筒部外周には、第1の接続構造5Aに嵌合したときに貫通孔の位置に合うようにネジ穴が形成されている。貫通孔とネジ穴の位置が一致するように第1の接続構造5Aの円筒部に第2の接続構造5Bの円筒部を嵌合させた状態で、第1の接続構造5Aの円筒部から貫通孔にボルト6(図3図5図7及び図9参照)を挿入して固定する。こうして、第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bとが互いに接続される。
【0065】
ただし、第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bとは、互いに接続可能な構成であれば、いかなる態様であってもよい。例えば、第1の接続構造5Aに対して第2の接続構造5Bを嵌合する代わりに、第2の接続構造5Bに対して第1の接続構造5Aを嵌合する逆の構成であってもよい。なお、第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bとは、互いに接続することにより、当該第1の接続構造5Aを有するユニットと、それに隣接する第2の接続構造5Bを有するユニットとの相対位置が一意に決まる接続構造であることが望ましい。
【0066】
(電気的接続)
また、本実施形態では、互いに機械的に接続されたユニット同士が電気的にも接続できるように構成されている。
【0067】
具体的には、ねじり関節ユニット3Aの固定体側電気接続部32、曲げ関節ユニット3Bの固定体側電気接続部52、およびエンドエフェクタユニット4のエンドエフェクタユニット用電気接続部68は、共通の第3の接続構造5Cを有する。また、制御ユニット2の制御ユニット用電気接続部16は、ねじり関節ユニット3Aの回転体側電気接続部33、および曲げ関節ユニット3Bの回転体側電気接続部53は、共通の第4の接続構造5Dを有する。そして、これら第3の接続構造5Cと第4の接続構造5Dとが、互いに接続可能となっている。
【0068】
各関節ユニット3において、固定体側電気接続部32,52は、当該各関節ユニット3内の内部空間S1,S2を通って、それぞれ回転体側電気接続部33,53に電気的につながる。このため、自由にユニットを機械接続して多関節ロボット1を構成した場合でも、別途電気配線を用意することなく、制御ユニット2から多関節ロボット1の各関節ユニット3およびエンドエフェクタユニット4に制御信号を送ることができる。
【0069】
第3の接続構造5Cと第4の接続構造5Dとは、互いに接続可能な構成であれば、いかなる態様であってもよい。例えば、第3の接続構造5Cは、芯線の接続部が凸となっている雄型コネクタであり、第4の接続構造5Dは、当該雄型コネクタに対応する雌型コネクタであってもよい。また、第3の接続構造5Cが雌型コネクタであり、第4の接続構造5Dが雄型コネクタであってもよい。
【0070】
本実施形態では、ユニット同士を機械的に接続する際に、第3の接続構造5Cと第4の接続構造5Dが互いに接続されるように、第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bの一方に対して他方を嵌合させる。ただし、第3の接続構造5Cと第4の接続構造5Dの一方又は双方が各ユニットのケーシングに固定されず、配線部のみにより支持される場合には、第3の接続構造5Cと第4の接続構造5Dとを互いに接続してから、第1の接続構造5Aと第2の接続構造5Bの一方に対して他方を嵌合させてもよい。
【0071】
〔制御系統〕
次に、多関節ロボット1の制御系統について、図10を参照して説明する。図10は、多関節ロボット1の制御系統を示すブロック図である。なお、図10では、多関節ロボット1が有する関節ユニット3のうち、制御ユニット2から1番目の関節ユニット3(ねじり関節ユニット3A)と2番目の関節ユニット3(曲げ関節ユニット3B)のみ示し、3番目以降の関節ユニット3については省略する。
【0072】
関節ユニット3およびエンドエフェクタユニット4の動作は、制御ユニット2の制御部12によって制御される。図10に示すように、制御ユニット2における制御部12から各ユニットのモータドライバ29,49,66(より詳細には、モータドライバ29,49,66におけるCPU)が直列につながっている。制御部12から送られる制御信号は、基端側から先端側に向かって、順次各関節ユニット3のモータドライバ29,49を経由してエンドエフェクタユニット4のモータドライバ66へと送られる。制御部12から送られる制御信号には、各ユニットに対する指令値が含まれており、各ユニットのモータドライバ29,49,66は、制御信号に含まれるデータのうち、各ユニットに対応するデータ(指令値)を取得して、各ユニットの駆動部の動作を制御する。
【0073】
制御部12が多関節ロボット1の動作を制御するためには、制御部12が多関節ロボット1の構成、すなわち多関節ロボット1がいくつの関節ユニット3を有するか、制御ユニット2から何番目にどのような種類の関節ユニット3が配置されているのかなどを認識する必要がある。以下では、多関節ロボット1の構成を制御部12が認識するためのセットアップについて、具体的に説明する。
【0074】
多関節ロボット1の所有者であるユーザが、各ユニットを連結して図1に示すような多関節ロボット1を構築したとする。その後、ユーザは、携帯端末17に対して操作して、多関節ロボット1のセットアップを行う。セットアップでは、制御部12から各モータドライバに対して、多関節ロボット1の構成情報を要求する信号(以下、「構成情報要求信号」と称する。)を送る。
【0075】
具体的には、エンドエフェクタユニット4のモータドライバ66には、例えば終端プラグなどのターミネータが設けられている。そして、制御部12は、各関節ユニット3のモータドライバ29,49を経由して、多関節ロボット1における先端側端部に位置するモータドライバ66に構成情報要求信号を送る。エンドエフェクタユニット4のモータドライバ66が構成情報要求信号を受信すると、当該モータドライバ66は、自身がターミネータを備えることから、エンドエフェクタユニット4が、連結されたユニットの終端であること(すなわち、先端から1番目であること)ことを検知し、その情報を記憶部69に記憶する。そして、エンドエフェクタユニット4のモータドライバ66は、記憶部69に記憶された種類情報に基づき、基端側で隣接するねじり関節ユニット3Aのモータドライバ29に、先端側から数えて1番目がエンドエフェクタユニット4であることを示す情報(第1ユニット情報)を送る。
【0076】
エンドエフェクタユニット4に隣接するねじり関節ユニット3Aのモータドライバ29は、第1ユニット情報を受信する。これにより、当該モータドライバ29は、自身が位置するユニットが多関節ロボット1における先端側から2番目のユニットであることを検知し、その情報を記憶部35に記憶する。そして、当該モータドライバ29は、記憶部35に記憶された種類情報に基づき、基端側で隣接する曲げ関節ユニット3Bのモータドライバ49に、第1ユニット情報に加えて、多関節ロボット1における先端側から2番目がねじり関節ユニット3Aであることを示す情報(第2ユニット情報)を送る。
【0077】
このように、多関節ロボット1における先端側から基端側に向かって順次ユニット情報が送られる。最終的には、制御ユニット2に隣接するねじり関節ユニット3Aのモータドライバ29が、先端側から送られるユニット情報(詳細には、第1~第5ユニット情報)に基づき、自身が位置するユニットが多関節ロボット1における先端側から6番目であることを検知し、その情報を記憶部35に記憶する。そして、当該モータドライバ29は、記憶部35に記憶された種類情報に基づき、制御ユニット2の制御部12に、多関節ロボット1における先端側から1番目から5番目までのユニットの情報(第1~第5ユニット情報)に加えて、多関節ロボット1における先端側から6番目がねじり関節ユニット3Aであることを示す情報(第6ユニット情報)を送る。
【0078】
こうして、各関節ユニット3およびエンドエフェクタユニット4の記憶部には、多関節ロボット1における先端側から何番目のユニットであるかの情報が記憶される。そして、制御部12は、多関節ロボット1の構成、すなわち多関節ロボット1における先端側から何番目にどのような種類の関節ユニット3が配置されているかを認識する。制御部12が認識した結果は、制御部12から無線通信部14を介して携帯端末17に送られる。
【0079】
こうして、セットアップが完了すると、多関節ロボット1は制御部12からの制御信号により動作可能となる。具体的には、ユーザが携帯端末17に対して多関節ロボット1の動作を開始させるよう操作すると、携帯端末17から無線通信部14を介して動作開始指令が制御部12に送られる。制御部12は、予め記憶した、または携帯端末17から送られた動作プログラムに基づき、各ユニットに制御信号を送る。動作プログラムは、例えば、ユーザが公知のダイレクトティーチなどにより生成したものであってもよいし、多関節ロボット1の構成ユニットの販売先(ロボットメーカなど)が運営する管理サーバからダウンロードしたものであってもよい。制御部12は、多関節ロボット1における先端側から何番目のユニットに対する動作指令情報であるかが識別できる制御信号を、直列に接続された各モータドライバに送る。各ユニットでは、モータドライバは、記憶部に記憶された先端側から何番目のユニットであるかの情報に基づき、対応する動作指令情報を取得し、駆動部を動作させる。
【0080】
なお、上述したように、各関節ユニット3の記憶部35,55には、固定体21,41に対する回転体22,42の所定の回転位置を示す回転位置情報が記憶される。具体的には、例えば関節ユニット3の種類に応じて、固定体21,41に対する回転体22,42の基準位置が設定されており、回転体22,42が当該基準位置にあるときの位置検出部26a,46aが検出する値が、それぞれ記憶部35,55に記憶される。関節ユニット3ごとに、当該関節ユニット3の種類に応じた基準位置が記憶部35,55に記憶されるため、例えばある関節ユニット3に異常があった場合にそれと同じ種類の別の関節ユニット3に交換しても、制御部12は交換前と同じ指令値で交換後の関節ユニット3を動作させることができる。
【0081】
また、各関節ユニット3の記憶部35,55には、多関節ロボット1における基準となる姿勢(以下、「基準姿勢」と称する。)をとる際の回転位置情報が記憶されてもよい。多関節ロボット1における基準姿勢は、制御部12から、直接または各ユニットのモータドライバを介して、各ユニットの記憶部に対して回転位置情報を書き換えることにより変更可能である。
【0082】
多関節ロボット1を構成するユニットの一部に異常がある場合、多関節ロボット1が正常に動作しないことが考えられる。この場合、ユーザは、多関節ロボット1のどのユニットに異常があるかを特定する必要がある。本実施形態では、制御ユニット2、ねじり関節ユニット3A、曲げ関節ユニット3B、およびエンドエフェクタユニット4が、それぞれ発光部18,36,56,70を有しており、当該発光部18,36,56,70の発光態様(発光色および点滅周期などを含む)により、各ユニットの正常状態と異常状態とを識別可能となっている。
【0083】
制御ユニット2が正常状態であるか異常状態であるかは、当該制御ユニット2が含む制御部12が判定する。また、ねじり関節ユニット3Aが正常状態であるか異常状態であるかは、当該ねじり関節ユニット3Aが含むモータドライバ29が判定する。また、曲げ関節ユニット3Bが正常状態であるか異常状態であるかは、当該曲げ関節ユニット3Bが含むモータドライバ49が判定する。また、エンドエフェクタユニット4が正常状態であるか異常状態であるかは、当該エンドエフェクタユニット4が含むモータドライバ66が判定する。すなわち、ユニットごとに正常か否かの判定が行われるとともに、その判定結果が、ユニットごとに発光部を介してユーザに報知される。
【0084】
例えば、ねじり関節ユニット3Aにおいて、モータドライバ29は、当該ねじり関節ユニット3Aが正常に動作しているか否かを判定し、正常に動作していると判定したときは発光部36を点灯させ、異常があると判定したときは発光部36を点滅させる。モータドライバ29が異常と判定する場合の例としては、当該ねじり関節ユニット3Aのモータドライバ29が、所望の電流を出力できなかったり、位置検出部26aとの通信できなかったりする場合である。このように、ユニットごとに、正常か異常かを発光部から識別できるため、ユーザは多関節ロボット1のどのユニットに異常があるかを即時に特定することができる。
【0085】
なお、各ユニットに発光部を設ける代わりに、または加えて、どのユニットが異常であるかを示す情報を、制御部12から携帯端末17に送って、当該携帯端末17にて表示させてもよい。また、ユニットごとの異常ではなく、多関節ロボット1の全体としての動作速度など、多関節ロボット1の総合的な異常に関しては、制御部12が多関節ロボット1の正常か異常かを判定してもよい。この場合、制御ユニット2の個別の異常状態と、多関節ロボット1の総合的な異常状態とを識別できるように、それぞれの場合で互いに異なる態様で発光部18を発光させてもよい。例えば、制御部12は、制御ユニット2に異常があると判定した場合に、発光部18をある色で点滅させ、多関節ロボット1の総合的な異常であると判定した場合、発光部18を別の色で点滅させてもよい。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態に係る多関節ロボット1は、ねじり関節ユニット3Aおよび曲げ関節ユニット3Bの各固定体側機械接続部30,50が、共通に第1の接続構造5Aを有しており、ねじり関節ユニット3Aおよび曲げ関節ユニット3Bの各回転体側機械接続部31,51並びに制御ユニット用機械接続部15が、共通に第2の接続構造5Bを有している。このため、多関節ロボット1の作業内容を変更する場合などに、その作業に応じて、多関節ロボット1が有する関節ユニット3の数を容易に増やしたり減らしたりでき、また、ねじり関節ユニット3Aと曲げ関節ユニット3Bとの位置を容易に入れ替えることもできる。このため、より容易に自由度を変更できる多関節ロボット1を提供することができる。
【0087】
また、本実施形態では、多関節ロボット1を構成するユニットとして、各ユニットの駆動部25,45,63を制御する制御ユニット2が含まれる。このため、別途ロボットコントローラを用意する必要がなく、全体としてコンパクトな多関節ロボットを実現することができ、幅広い分野に適用しやすくなる。
【0088】
また、本実施形態では、第1の接続構造5Aを有するエンドエフェクタユニット用機械接続部67が、第2の接続構造5Bを有する回転体側機械接続部31,51に接続可能であるため、エンドエフェクタユニット4をねじり関節ユニット3Aおよび曲げ関節ユニット3Bのいずれにも容易に接続できる。
【0089】
また、本実施形態では、ねじり関節ユニット3Aおよび曲げ関節ユニット3Bの各固定体側電気接続部32,52が、共通に第3の接続構造5Cを有しており、ねじり関節ユニット3Aおよび曲げ関節ユニット3Bの各回転体側電気接続部33,53並びに制御ユニット用電気接続部16が、共通に第4の接続構造5Dを有している。このため、互いに機械的に接続される2つのユニットが電気的にも接続できる。このため、制御ユニット2から出力した制御信号を、連結された各関節ユニット3が有する配線部34,54を介して、多関節ロボット1の基端側から先端側に送ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、各関節ユニット3がモータドライバを有するため、各関節ユニット3を駆動するためのモータドライバを制御ユニット2に設けなくて済み、制御ユニット2をコンパクトにできる。また、連結する関節ユニット3の数を制御ユニット2が有するモータドライバの数に制限されることもない。
【0091】
また、本実施形態では、関節ユニット3が、当該関節ユニット3の種類を識別するための種類情報を記憶する記憶部35,55を有しているため、制御ユニット2が関節ユニット3の記憶部35,55から種類情報を読み込むことにより、当該関節ユニット3をその種類に応じて適切に制御することができる。
【0092】
また、本実施形態では、各関節ユニット3の記憶部35,55に、固定体21,41に対する回転体22,42の所定の回転位置を示す回転位置情報が記憶される。このため、例えば多関節ロボット1が所定の姿勢をとるための各関節ユニット3の姿勢(固定体に対する回転体の回転位置)を、関節ユニット3自体に記憶させることができる。
【0093】
また、本実施形態では、制御ユニット2が、外部の携帯端末17と無線で通信する無線通信部14を有しているため、ユーザが外部の携帯端末17に対して行う操作によって、多関節ロボット1に対して動作指令を送ることができる。
【0094】
また、本実施形態では、関節ユニット3が、当該関節ユニット3についての正常状態と異常状態とを識別可能に発光する発光部36,56を有するため、各関節ユニット3が異常かどうか当該関節ユニット3の発光部36,56から確認でき、異常状態にある関節ユニット3の交換を容易に行うことができる。
【0095】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0096】
例えば、本発明の多関節ロボットの構成要素である各ユニットの構成や形状は、上記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態の多関節ロボット1は、5つの関節を有する5軸ロボットであったが、例えば、本発明の多関節ロボットの関節ユニットの数は、5つ以外の数(例えば2つ)であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、関節ユニット3として、ねじり関節ユニット3Aと曲げ関節ユニット3Bとを示したが、これら以外の種類の関節ユニットを多関節ロボット1に用いてもよい。例えば、関節ユニット3は、固定体に対して変位体を直進往復動させる直進関節ユニットであってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、エンドエフェクタユニット用機械接続部67が、第1の接続構造5Aを有していたが、これに限らず、例えばエンドエフェクタユニットと関節ユニットとは、それらの間に別途設けた接続用インターフェースを介して接続してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、互いに機械的に接続されたユニット同士が電気的にも接続できるように構成されていたが、これに限らず、例えば、制御ユニット2から、当該制御ユニット2に隣接しない関節ユニット3やエンドエフェクタユニット4に直接信号が送られる配線を配してもよい。また、各ユニットがモータドライバを有する代わりに、各ユニットの駆動部を制御するモータドライバが全て制御ユニットに設けられてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、図10に示すように、複数の関節ユニット3とエンドエフェクタユニット4の各モータドライバが直列に電気的に接続されていたが、これに限定されない。例えば、制御部12からの制御信号が各モータドライバに並列に送られるように電気的に接続されてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、制御ユニット2が有する無線通信部14を介して携帯端末17から多関節ロボット1が操作されたが、多関節ロボット1の操作は、制御ユニット2に有線で接続されたコンピュータから行ってもよい。また、制御部に12には、外部電源から電力供給口13を介して電力が供給されたが、制御ユニットに接続可能なバッテリーユニットを用意して、制御ユニットに接続させて制御部に電力を供給してもよい。また、多関節ロボット1の防水性を高めるために、各ユニットを覆う防水ジャケットを用意してもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、多関節ロボット1が動作プログラムに基づき動作したが、例えばジョイスティックや携帯端末などの外部装置から送られる操作信号に基づき動作してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、各ユニットが、当該ユニットの正常状態と異常状態とを識別可能に報知する報知部として、発光部を有していたが、報知部は、発光部に限定されない。例えば、報知部は、例えばモータドライバ29または49または66、あるいは制御部12がユニットに異常があると判定した場合に、当該ユニットの異常を報知するための音を出力するように構成されてもよい。
【0104】
なお、本発明の多関節ロボットは、様々な分野に適用可能である。例えば、本発明の多関節ロボットを無人走行する無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)に取り付けて、所定の作業を行うように適用してもよい。例えば図11には、無人搬送車101が進行するルート上のごみを2つの多関節ロボット1に拾わせて、無人搬送車101上に配置したかご102に入れるゴミ拾いロボットとして適用した例が示される。
【0105】
また、本発明の多関節ロボットをコンテナ搬送ロボットとして適用することも可能である。図12には、本発明の別の実施形態に係る多関節ロボット1’をコンテナ搬送ロボットとして適用した場合の例が示される。多関節ロボット1’は、上記実施形態の多関節ロボット1とは異なり、固定体側機械接続部に対する鉛直軸回りの変位体側機械接続部の変位が異なる曲げ関節ユニット3B,3B’を備えた水平多関節ロボットである。具体的には、曲げ関節ユニット3B,3B’は、それぞれの固定体側機械接続部から鉛直軸までの長さが互いに異なる。また、多関節ロボット1’におけるエンドエフェクタ62’は、コンテナ201を下方から支持するように構成される。多関節ロボット1’は、その制御ユニット2に接続され、上下方向に延びるポール203に沿って直動する直動部204に支持されている。そして、多関節ロボット1’は、直動部204と連動して、図略の収容物を収容したコンテナ201を棚202から取り出したり、棚202にコンテナ201を置いたりする作業を行う。
【0106】
また、本発明の多関節ロボットを車いすや介護ベッド等に取り付けることも可能である。これらの多関節ロボットは、例えばジョイスティックなどの操作部に対するユーザの操作によって動作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 :多関節ロボット
2 :制御ユニット
3 :関節ユニット
3A :ねじり関節ユニット
3B :曲げ関節ユニット
4 :エンドエフェクタユニット
5A :第1の接続構造
5B :第2の接続構造
5C :第3の接続構造
5D :第4の接続構造
12 :制御部
14 :無線通信部
15 :制御ユニット用機械接続部
16 :制御ユニット用電気接続部
17 :無線通信部
21 :固定体
22 :回転体(変位体)
25 :駆動部
26 :モータ
27 :減速機
28 :筒状部(連結部)
29 :モータドライバ
30 :固定体側機械接続部
31 :回転体側機械接続部(変位体側機械接続部)
32 :固定体側電気接続部
33 :回転体側電気接続部(変位体側電気接続部)
34 :配線部
35 :記憶部
36 :発光部(報知部)
41 :固定体
42 :回転体(変位体)
43 :固定体側ケーシング部
44 :回転体側ケーシング部
45 :駆動部
46 :モータ
47 :減速機
48 :円柱部(連結部)
49 :モータドライバ
50 :固定体側機械接続部
51 :回転体側機械接続部(変位体側機械接続部)
52 :固定体側電気接続部
53 :回転体側電気接続部(変位体側電気接続部)
54 :配線部
55 :記憶部
62 :エンドエフェクタ
67 :エンドエフェクタユニット用機械接続部
68 :エンドエフェクタユニット用電気接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12