(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ロータブレードとこれを備える横軸水車
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20220118BHJP
F03B 3/04 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F03B3/12
F03B3/04
(21)【出願番号】P 2017172448
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-02-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政彦
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020372(JP,A)
【文献】特開2017-150375(JP,A)
【文献】特開2008-196425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/12
B63H 1/26
F03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視で翼端を上向きにした揚力型ブレードにおいて、翼根から前記翼端方向へ次第に弦長を大とし、前記翼端から最大弦長の80%ほどの長さの位置に最大弦長部を設け、前記揚力型ブレードにおける側面視で、前記翼根から前記翼端へ向かって厚基部、主部、前向屈曲部を区画し、前記主部と前記前向屈曲部との境界部分を最大弦長部とし、前記厚基部は前記翼根の厚さを前記主部の1.5倍~2倍に設定し、前記翼根から前記主部へかけて厚さを次第に薄くして、これと連続する前記主部は前記厚基部の長さよりやや長くして厚さを側面視で全体に同じくし、前記前向屈曲部は前記主部との境界から前記翼端へかけて厚さを側面視で次第に薄く形成し、前記翼根の横断面は略鶏卵形で前記主部にかけて次第に揚力型とし、かつ弦長方向に平坦面である正面を前記主部においては
、その横断面における前縁から後縁
の部分で、前記後縁を、側面視における後面方向に次第に傾斜させ、前記前向屈曲部においては
、その横断面における前記前縁から前記後縁の部分で、前記後縁を、側面視における前記後面方向に次第に傾斜させてなることを特徴とするロータブレード。
【請求項2】
前記揚力型ブレードの後面は、横断面において前記前縁は厚く、前記後縁にかけて次第に薄くなる弦長方向に弧曲面を持ち、前記主部においては
、前記ブレードの弦長方向において前記厚さ中心線より前記後面寄りにある後半部
は、その前記後縁を、側面視における後面に接するよう弧曲させるとともに、前記前向屈曲部においては、
そのブレードの厚さ
の中央
寄りにある前記前縁から前記後縁へかけて
その後縁を、側面視における前記後面に接するようにしてなることを特徴とする請求項1に記載のロータブレード。
【請求項3】
前記最大弦長部は、ブレードの前記翼端から前記主部方向へ前記最大弦長部の弦長だけ寄った位置に設定してあり、正面視で前記前向屈曲部の面積は、前記厚基部、前記主部、前記前向屈曲部の中で最大としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータブレード。
【請求項4】
前記請求項1~3に記載のいずれかのロータブレードを備える横軸ロータをもって発電機を回転させるようにしたことを特徴とする横軸水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードの径方向の中間部に流体を寄せ集めて、合流した多量の流体を、高速で通過させるようにした厚基部ロータブレードと、これを備える横軸水車に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に前向傾斜部が形成されている水車用ロータブレードは、例えば特許文献1に開示されており公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明における前向傾斜部は、回転時に翼根方向から翼端方向へ移動する水流を前向傾斜部で抑止し、前向傾斜部の後縁先端部から、水流を遠心方向へ通過させるものである。
本発明は、遠心方向へ通過する水流を、ブレードの径方向の中間部分に寄せるとともに、翼根部分から効率良く水流を中間部分に集めて、合流する多量の水流を高速で通過させるようにしたロータブレードと、これを備える横軸水車を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じたものである。
【0006】
正面視で翼端を上向きにした揚力型ブレードにおいて、翼根から前記翼端方向へ次第に弦長を大とし、前記翼端から最大弦長の80%ほどの長さの位置に最大弦長部を設け、前記揚力型ブレードにおける側面視で、前記翼根から前記翼端へ向かって厚基部、主部、前向屈曲部を区画し、前記主部と前記前向屈曲部との境界部分を最大弦長部とし、前記厚基部は前記翼根の厚さを前記主部の1.5倍~2倍に設定し、前記翼根から前記主部へかけて厚さを次第に薄くして、これと連続する前記主部は前記厚基部の長さよりやや長くして厚さを側面視で全体に同じくし、前記前向屈曲部は前記主部との境界から前記翼端へかけて厚さを側面視で次第に薄く形成し、前記翼根の横断面は略鶏卵形で前記主部にかけて次第に揚力型とし、かつ弦長方向に平坦面である正面を前記主部においては、その横断面における前縁から後縁の部分で、前記後縁を、側面視における後面方向に次第に傾斜させ、前記前向屈曲部においては、その横断面における前記前縁から前記後縁の部分で、前記後縁を、側面視における前記後面方向に次第に傾斜させてなることを特徴とするロータブレード。
【0007】
前記揚力型ブレードの後面は、横断面において、前記前縁は厚く前記後縁にかけて次第に薄くなる弦長方向に弧曲面を持ち、前記主部においては、前記ブレードの弦長方向において前記厚さ中心線より前記後面寄りにある後半部は、その前記後縁を、側面視における後面に接するよう弧曲させるとともに、前記前向屈曲部においては、そのブレードの厚さの中央寄りにある前記前縁から前記後縁へかけてその後縁を、側面視における前記後面に接するようにしてなることを特徴とする前記(1)に記載のロータブレード。
【0008】
(3) 前記最大弦長部は、ブレードの前記翼端から前記主部方向へ前記最大弦長部の弦長だけ寄った位置に設定してあり、正面視で前記前向屈曲部の面積は、前記厚基部、前記主部、前記前向屈曲部の中で最大としてなる前記(1)又は(2)に記載のロータブレード。
【0009】
(4) 前記(1)~(3)に記載のいずれかのロータブレードを備える横軸ロータをもって発電機を回転させるようにした横軸水車。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0011】
前記(1)に記載の発明においては、翼端がブレードの長さのほぼ中間で前向きに屈曲しており、回転により、遠心方向へ移動しようとする水流は前向屈曲部で抑止されて最大弦長部へ集合し、また翼根の基端部は厚さが厚いため、翼根部分から主部の中間方向へ水流が移動し、ここで合流した多量の水流は、高速となって後縁へと通過するので、回転効率が高まる。
【0012】
前記(2)に記載の発明においてロータブレードの後面は、前縁部が厚く、後縁へかけて次第に薄くなる弧曲面としてあり、平面視の後縁は側面視の後面に接しているので、回転時に、後面に沿う流体は正面よりもコアンダ効果によって高速で通過し、反作用でロータブレードの回転効率を高める。
【0013】
前記(3)に記載の発明においてロータブレードの前記最大弦長部分は、前記翼端から前記最大弦長部の長さを前記主部寄りの位置としてあるので、ここを基点として屈曲する前向屈曲部の面積が大きく設定され、これによって後縁方向へ通過する水量は多く、回転効率を高める。
【0014】
前記(4)に記載の発明においては、横軸水車の横軸ロータのロータブレードとして前記(1)~(3)に記載のいずれかのロータブレードを配設したので、水流をよく集合させて、高いトルクを生みだして発電機を回転させるので、効率のよい発電をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】
図1におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】
図1におけるVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示す本発明のロータブレード1(以下単にブレードという)は、ロータのハブ9の周面に、例えば2~6枚を等間隔に固定して使用に供される。
【0017】
各ブレード1は、正面視で翼根2Aから翼端3へかけて、弦長を次第に大とし、最大弦長部4から翼端3へかけて、先尖り状とされている。
図2に示すようにブレード1は、側面視において、基部である翼根2Aは、主部5の厚さの少なくとも1.5倍、好ましくは2倍近い厚さを有し、かつ主部5の最大弦長部4と翼根2Aとの中間へ向けて、次第に薄くなるように前後面を傾斜させた厚基部2とされている。
【0018】
厚基部2の基部を厚くする理由は、この厚基部正面2Bに当たるWB矢示の水流を、主部正面5Aの方へ速く移動させるためであり、主部正面5Aに集めた水流を
図1における後縁8方向へ纏めて通過させることによって、ブレード1の回転効率を高めることができる。
【0019】
前記最大弦長部4は、翼端3から翼根2Aに向かって最大弦長の80%ほどの長さの位置に設定されている。その最大弦長部4を基点として、先端部分は、主部5の厚さ中心線Tに対し、45°±5°の範囲で前向きに屈曲されて、前向屈曲部6が形成されている。
【0020】
この角度より翼端3が、厚さ中心線Tの方向に開いている場合は、前向屈曲部6で流体を主部5の方へ囲い込むという本発明の目的に合わなくなり、また、この角度より狭く傾き過ぎると、最大弦長部4の方へ集めようとする流体の量が、減少することになる。
【0021】
図3は、ブレード1の平面図である。前向
屈曲部6は、主部5から大きく前方へ突出している。またハブ9に対する前向
屈曲部6の
水平方向の向きの傾斜角度は約9度で示してあるが、この角度は厚さによって適宜変化させる。
【0022】
図4は
図1におけるIV-IV線断面図で、前向
屈曲部6なので薄く形成されている。
図5は、
図1におけるV-V線断面図で、
前向屈曲部6の基部にあたるので、やや厚さが厚くなっている。
【0023】
図6は、
図1におけるVI-VI線断面図で、ここは最大弦長部4にあたっており厚さも厚くなっている。
図7は、
図1におけるVII-VII線断面図で、主部5の先方部なので弦長が狭くなってきている。
【0024】
図8は
図1におけるVIII-VIII線断面図で、厚さは厚くなり、弦長は狭くなってきている。
図9は
図1におけるIX-IX線断面図で、弦長が最大弦長部のほぼ3分の2になり、厚さは主部5の二倍近くになって略鶏卵のような形になって、堅固になっている。
図10は
図1におけるX-X線端面図で剛性を持たされている。
【0025】
図8に示すように、ブレード1の主部5は、
図1におけるVIII-VIII線部分から
主部正面5Aが、前縁7から後縁8へかけて後面方向へ傾斜し始めている。
またその傾斜角度は、翼根2Aの方から翼端3へ至るに従って、次第に傾斜度を高めている。そのことは、主部5の方から翼端3の方へ、流体が移動しにくいことを意味している。
【0026】
図2において、左の方向からブレード1の正面に流体が当たると、ブレード1は回転する。流体WA矢示が、前向
屈曲部6の
屈曲部正面6Aに当ると、ブレード1は前縁7方向へ回転する。
また、ブレード1の厚基部正面2Bに当った流体WB矢示は、最大弦長部4の方向に滑って移動し、前向
屈曲部6の方から移動するWA矢示の流体と合流する。
【0027】
その結果、主部正面5Aに集合した流体は、
図1に示す主部5の前縁7から後縁8方向へ通過し、その強い反作用によりブレード1は前縁7方向へ回転させられる。従ってこのブレード1を、例えば水力発電装置における横軸水車のロータブレードとして使用すると、効率のよい回転効果が得られ、発電効率は従来のものに比して著しく高められる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、ブレードの長さ方向の中間に多量の水流を集合させて回転するので、その反作用によりブレードは大きな回転トルクを得ることができる。
そのため、例えば水路などに配設される水力発電装置のロータに、効果的に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1.ロータブレード
2.厚基部
2A.翼根
2B.厚基部正面
2C.厚基部後面
3.翼端
4.最大弦長部
5.主部
5A.主部正面
5B.主部後面
6.前向屈曲部
6A.屈曲部正面
7.前縁
8.後縁
9.ハブ
S.正面中心線
T.厚さ中心線
WA.屈曲部に当る流体
WB.流体