(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20220118BHJP
【FI】
B60L3/00 J
(21)【出願番号】P 2017185283
(22)【出願日】2017-09-26
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 崇人
(72)【発明者】
【氏名】星 良平
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207926(JP,A)
【文献】特開2008-030682(JP,A)
【文献】特開2013-183495(JP,A)
【文献】特開2013-187941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するための動力を出力するモータジェネレータと、
前記モータジェネレータとインバータを介して接続され、前記モータジェネレータへ供給される電力を蓄電するバッテリと、
前記バッテリと前記インバータとの間に接続されるメインリレーと、
前記メインリレーと並列に接続され、互いに直列に接続されるプリチャージ抵抗及びプリチャージリレーと、
を備える電動車両の制御装置であって、
前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、
前記電動車両が停車した場合、前記バッテリと前記インバータとの間におけるリレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替え、
前記電動車両が停車した後に、前記電動車両のずり下がりが発生する場合に、前
記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える制御部を備える、
電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電動車両が停車した後に前記リレーの開閉状態が前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替える、
請求項
1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記リレーの開閉状態が前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替える、
請求項1
又は2に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記リレーの開閉状態が前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替えた後に、前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替える、
請求項
3に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記電動車両のずり下がりが発生しており、かつ、前記モータジェネレータによる回生発電が行われている場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記モータジェネレータのトルクの方向と前記モータジェネレータの回転の方向とが互いに逆向きであると判定された場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える、
請求項
5に記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記プリチャージ抵抗の温度が温度基準値以上である場合に、前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態への前記リレーの開閉状態の切り替えを禁止する、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項8】
車輪を駆動するための動力を出力するモータジェネレータと、
前記モータジェネレータとインバータを介して接続され、前記モータジェネレータへ供給される電力を蓄電するバッテリと、
前記バッテリと前記インバータとの間に接続されるメインリレーと、
前記メインリレーと並列に接続され、互いに直列に接続されるプリチャージ抵抗及びプリチャージリレーと、
を備える電動車両の制御方法であって、
前記バッテリの
充電許容量が低下状態である時において、
前記電動車両が停車した場合、前記バッテリと前記インバータとの間におけるリレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替え、
前記電動車両が停車した後に、前記電動車両のずり下がりが発生する場合に、前
記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える、
電動車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリに蓄電される電力を用いて駆動されるモータジェネレータを駆動源として走行する電動車両が開発されている。電動車両では、例えば、減速時に、車輪の運動エネルギを用いてモータジェネレータに回生発電を行わせることができる。モータジェネレータにより発電された回生電力はバッテリへ充電される。
【0003】
ところで、上り坂で停車している状態から再発進する際において、上り坂の勾配が比較的大きい場合に車体が自重により後退するずり下がりが発生し得る。電動車両の再発進時にずり下がりが発生した場合、モータジェネレータのトルクの方向とモータジェネレータの回転の方向とが互いに逆向きになることによって、モータジェネレータが回生発電を行う状態になる。ここで、バッテリの充電許容量が低下状態(例えば、満充電時等)である場合、ずり下がりに起因して発電された回生電力がバッテリの充電許容量を超えることによって、バッテリとモータジェネレータとの間のインバータに過電圧が生じるおそれがある。そこで、ずり下がりに起因してインバータに過電圧が生じることを抑制するための技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、駆動源としてモータジェネレータを有する電動車両において、検出された車輪の回転状態とモータジェネレータのトルク指令値とに基づき車輪の回転方向とモータジェネレータのトルクの方向とが逆方向であると判定した場合、モータジェネレータへのトルク指令値を0としてモータジェネレータを制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータに過電圧が生じることを抑制することが困難である。例えば、特許文献1に開示されている技術では、電動車両のずり下がりが発生した場合に、運転者がアクセル操作を行っているにもかかわらず、モータジェネレータからトルクが出力されない状態が生じ得る。このように運転者が要求するトルクが出力されないことによって、運転者の意図と異なる発進挙動が生じ、運転者に違和感が与えられる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータに過電圧が生じることを抑制することが可能な、新規かつ改良された電動車両の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車輪を駆動するための動力を出力するモータジェネレータと、前記モータジェネレータとインバータを介して接続され、前記モータジェネレータへ供給される電力を蓄電するバッテリと、前記バッテリと前記インバータとの間に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続され、互いに直列に接続されるプリチャージ抵抗及びプリチャージリレーと、を備える電動車両の制御装置であって、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記電動車両が停車した場合、前記バッテリと前記インバータとの間におけるリレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替え、前記電動車両が停車した後に、前記電動車両のずり下がりが発生する場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える制御部を備える、電動車両の制御装置が提供される。
【0010】
前記制御部は、前記電動車両が停車した後に前記リレーの開閉状態が前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替えてもよい。
【0011】
前記制御部は、前記リレーの開閉状態が前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替えてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記リレーの開閉状態が前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態となっている時において、前記電動車両が前進を開始した場合に、前記リレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替えた後に、前記メインリレーが閉じられ前記プリチャージリレーが開かれた状態へ切り替えてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記電動車両のずり下がりが発生しており、かつ、前記モータジェネレータによる回生発電が行われている場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替えてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記モータジェネレータのトルクの方向と前記モータジェネレータの回転の方向とが互いに逆向きであると判定された場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替えてもよい。
【0015】
前記制御部は、前記プリチャージ抵抗の温度が温度基準値以上である場合に、前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態への前記リレーの開閉状態の切り替えを禁止してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車輪を駆動するための動力を出力するモータジェネレータと、前記モータジェネレータとインバータを介して接続され、前記モータジェネレータへ供給される電力を蓄電するバッテリと、前記バッテリと前記インバータとの間に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続され、互いに直列に接続されるプリチャージ抵抗及びプリチャージリレーと、を備える電動車両の制御方法であって、前記バッテリの充電許容量が低下状態である時において、前記電動車両が停車した場合、前記バッテリと前記インバータとの間におけるリレーの開閉状態を、前記メインリレー及び前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替え、前記電動車両が停車した後に、前記電動車両のずり下がりが発生する場合に、前記リレーの開閉状態を前記メインリレーが開かれ前記プリチャージリレーが閉じられた状態へ切り替える、電動車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータに過電圧が生じることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御装置が搭載される電動車両の概略構成の一例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る電動車両において、プラス側メインリレー、プリチャージリレー及びマイナス側メインリレーが開かれた状態の一例を示す説明図である。
【
図4】同実施形態に係る電動車両において、プラス側メインリレー及びマイナス側メインリレーが閉じられプリチャージリレーが開かれた状態の一例を示す説明図である。
【
図5】同実施形態に係る制御装置が行う電源システムの起動時における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る制御装置が行う電源システムの起動後における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態に係る電動車両において、プラス側メインリレー、プリチャージリレー及びマイナス側メインリレーが閉じられた状態の一例を示す説明図である。
【
図8】同実施形態に係る電動車両において、プラス側メインリレーが開かれプリチャージリレー及びマイナス側メインリレーが閉じられた状態の一例を示す説明図である。
【
図9】同実施形態に係る制御装置が行う電源システムの停止時における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
<1.電動車両の概略構成>
まず、
図1~
図4を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100が搭載される電動車両1の概略構成について説明する。なお、電動車両1はあくまでも本実施形態に係る制御装置100が搭載される電動車両の一例であり、制御装置100が搭載される電動車両の構成はこのような例に特に限定されない。
【0021】
図1は、本実施形態に係る制御装置100が搭載される電動車両1の概略構成の一例を示す模式図である。
図1では、電動車両1の進行方向を前方向とし、進行方向に対して逆方向を後方向とし、進行方向を向いた状態における左側及び右側をそれぞれ左方向及び右方向として、電動車両1が示されている。
【0022】
電動車両1は、例えば、
図1に示されるように、フロントディファレンシャル装置21と、センターディファレンシャル装置23と、リヤディファレンシャル装置25と、モータジェネレータ30と、インバータ40と、バッテリ50と、アクセル開度センサ201と、ブレーキセンサ203と、イグニッションスイッチ205と、車速センサ207と、モータトルクセンサ209と、モータ回転数センサ211と、バッテリセンサ213と、抵抗温度センサ215と、制御装置100とを備える。
【0023】
モータジェネレータ30は、車輪を駆動するための動力を出力する駆動源である。具体的には、モータジェネレータ30は、バッテリ50に蓄電される電力を用いて、左前輪11、右前輪12、左後輪13及び右後輪14へ伝達される動力を出力可能である。
【0024】
具体的には、モータジェネレータ30は、多相交流式であり、インバータ40を介してバッテリ50と接続されている。バッテリ50から放電される直流電力は、インバータ40によって交流電力に変換されてモータジェネレータ30へ供給される。モータジェネレータ30は、このようにインバータ40を介してバッテリ50から供給される電力を用いて動力を生成する。モータジェネレータ30の出力軸はセンターディファレンシャル装置23と接続されており、モータジェネレータ30から出力された動力はセンターディファレンシャル装置23へ伝達される。
【0025】
センターディファレンシャル装置23は、フロントディファレンシャル装置21及びリヤディファレンシャル装置25と駆動軸を介してそれぞれ接続されている。センターディファレンシャル装置23へ伝達された動力は、センターディファレンシャル装置23によってフロントディファレンシャル装置21及びリヤディファレンシャル装置25へ分配されて伝達される。
【0026】
フロントディファレンシャル装置21は、左前輪11及び右前輪12と、車軸を介してそれぞれ接続されている。フロントディファレンシャル装置21へ伝達された動力は、フロントディファレンシャル装置21によって左前輪11a及び右前輪11bへ分配されて伝達される。
【0027】
リヤディファレンシャル装置25は、左後輪13及び右後輪14と、車軸を介してそれぞれ接続されている。リヤディファレンシャル装置25へ伝達された動力は、リヤディファレンシャル装置25によって左後輪13及び右後輪14へ分配されて伝達される。
【0028】
また、モータジェネレータ30は、電動車両1の減速時等に車輪の運動エネルギを用いて回生発電を実行可能である。モータジェネレータ30が回生発電を行う場合、モータジェネレータ30により発電された交流電力は、インバータ40によって直流電力に変換されてバッテリ50へ充電される。
【0029】
インバータ40は、上述したように、モータジェネレータ30とバッテリ50との間での双方向の電力変換を実行可能である。インバータ40は、例えば、三相ブリッジ回路を含んで構成される。
【0030】
バッテリ50は、モータジェネレータ30とインバータ40を介して接続され、モータジェネレータ30へ供給される電力を蓄電する。具体的には、バッテリ50は、高電圧(例えば、350V)の電力供給源である。バッテリ50としては、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池又は鉛蓄電池等の二次電池が用いられる。
【0031】
電動車両1において、バッテリ50とインバータ40との間には、バッテリ50とインバータ40との間の電気的な接続状態を切り替えるためのリレーが設けられる。例えば、そのようなリレーとして、バッテリ50とインバータ40との間に、プラス側メインリレー61、マイナス側メインリレー63及びプリチャージリレー65が設けられる。
【0032】
また、インバータ40と各リレーとの間において、インバータ40と並列に平滑用コンデンサ69が接続される。平滑用コンデンサ69によって、バッテリ50からインバータ40へ供給される電力の電圧が平滑化される。
【0033】
電動車両1では、インバータ40、バッテリ50、各リレー及び平滑用コンデンサ69を含んで、モータジェネレータ30へ電力を供給するための電源システム90が構成される。
【0034】
各リレーは、図示しない駆動装置により駆動されることによって開閉する。以下では、リレーが閉じられてリレーの設置部分が通電可能となる状態をリレーがONである場合とも呼び、リレーが開かれてリレーの設置部分が通電不可能となる状態をリレーがOFFである場合とも呼ぶ。
【0035】
プラス側メインリレー61は、バッテリ50の正極側とインバータ40の正極側との間に接続される。また、バッテリ50の正極側とインバータ40の正極側との間において、互いに直列に接続されるプリチャージ抵抗67及びプリチャージリレー65がプラス側メインリレー61と並列に接続される。プラス側メインリレー61は、プリチャージ抵抗67及びプリチャージリレー65と並列に接続される本発明に係るメインリレーの一例に相当する。
【0036】
プリチャージリレー65は、電源システム90の起動時においてプラス側メインリレー61をONにする前に平滑用コンデンサ69を予め充電(プリチャージ)するためのリレーである。平滑用コンデンサ69が予め充電された後にプラス側メインリレー61がONとなることによって、バッテリ50からの突入電流の発生が抑制される。
【0037】
マイナス側メインリレー63は、バッテリ50の負極側とインバータ40の負極側との間に接続される。
【0038】
アクセル開度センサ201は、運転者によるアクセルペダルの操作量に相当するアクセル開度を検出し、検出結果を出力する。
【0039】
ブレーキセンサ203は、運転者によるブレーキペダルの操作量に基づいてブレーキ操作の有無を検出し、検出結果を出力する。
【0040】
イグニッションスイッチ205は、電源システム90の状態の切り替えに関する運転者による操作を受け付け、当該操作を示す情報を制御装置100へ出力する。
【0041】
車速センサ207は、電動車両1の車速を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0042】
モータトルクセンサ209は、モータジェネレータ30のトルクを検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0043】
モータ回転数センサ211は、モータジェネレータ30の回転数を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0044】
バッテリセンサ213は、バッテリ50に関する情報を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。具体的には、バッテリセンサ213は、バッテリ50の温度及び残存容量(SOC:State Of Charge)をバッテリ50に関する情報として検出する。
【0045】
抵抗温度センサ215は、プリチャージ抵抗67の温度である抵抗温度を検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。
【0046】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0047】
また、制御装置100は、電動車両1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、バッテリ50とインバータ40との間のリレーを駆動する駆動装置、インバータ40、各センサ及びイグニッションスイッチ205と通信を行う。本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。例えば、制御装置100が有するリレーの制御に関する機能と、モータジェネレータ30の制御に関する機能及びモータジェネレータ30についての判定に関する機能と、バッテリ50についての判定に関する機能とは互いに異なる制御装置に分割されてもよい。
【0048】
図2は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
制御装置100は、例えば、
図2に示されるように、取得部110と、制御部120とを備える。
【0050】
取得部110は、制御装置100が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部110は、取得した情報を制御部120へ出力する。
【0051】
例えば、取得部110は、電動車両1における各センサ及びイグニッションスイッチ205と通信することによって、各センサ及びイグニッションスイッチ205から出力される検出結果を取得する。
【0052】
制御部120は、取得部110により取得された情報を用いて各処理を実行する。制御部120は、具体的には、バッテリ50とインバータ40との間のリレー及びモータジェネレータ30の動作をそれぞれ制御する。
【0053】
制御部120は、例えば、リレー制御部121と、モータ制御部122と、判定部123とを備える。
【0054】
リレー制御部121は、バッテリ50とインバータ40との間のリレーの動作を制御する。具体的には、リレー制御部121は、各リレーを駆動する図示しない駆動装置の動作を制御することによって、各リレーの開閉動作を制御する。それにより、リレー制御部121は、バッテリ50とインバータ40との間におけるリレーの開閉状態を制御し得る。なお、以下では、バッテリ50とインバータ40との間におけるリレーの開閉状態を、単にリレーの開閉状態とも呼ぶ。
【0055】
リレー制御部121は、基本的には、運転者によるイグニッションスイッチ205を用いた操作に応じて、リレーの開閉状態を制御する。それにより、電源システム90の起動及び停止が実現される。電源システム90が停止している状態(以下、READY-OFF状態とも呼ぶ)は、バッテリ50からインバータ40へ電力が供給され得ない状態に相当する。一方、電源システム90が起動している状態(以下、READY-ON状態とも呼ぶ)は、バッテリ50からインバータ40へ電力が供給され得る状態に相当する。
【0056】
具体的には、電源システム90がREADY-OFF状態の時に、リレーの開閉状態は、
図3に示されるように、プラス側メインリレー61、プリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がOFFである状態になっている。リレー制御部121は、電源システム90がREADY-OFF状態の時に運転者により電源システム90の起動操作が行われた場合に、リレーの開閉状態を、
図4に示されるように、プラス側メインリレー61及びマイナス側メインリレー63がONでありプリチャージリレー65がOFFである状態へ切り替える。それにより、電源システム90が起動されてREADY-ON状態になる。また、リレー制御部121は、電源システム90がREADY-ON状態の時に運転者により電源システム90の停止操作が行われた場合に、リレーの開閉状態を
図3に示される状態へ切り替える。それにより、電源システム90が停止してREADY-OFF状態になる。
【0057】
電源システム90の起動操作は、具体的には、電源システム90がREADY-OFF状態の時にイグニッションスイッチ205を押す操作である。また、電源システム90の停止操作は、具体的には、電源システム90がREADY-ON状態の時にイグニッションスイッチ205を押す操作である。なお、READY-OFF状態とREADY-ON状態との間の状態として、バッテリ50からインバータ40へ電力が供給され得ないものの電動車両1内の照明装置、音響装置又は空調装置等の補機へ電力が供給され得る状態(例えば、IG-ON状態)が設けられてもよい。補機への電力の供給は、具体的には、バッテリ50より低電圧のバッテリであり電動車両1に設けられ得る補機用バッテリによって行われる。電源システム90の起動操作及び停止操作は、具体的には、切り替え可能な電源システム90の状態の数や種類に応じて適宜設定され得る。
【0058】
モータ制御部122は、モータジェネレータ30の動作を制御する。具体的には、モータ制御部122は、インバータ40の動作を制御することによって、モータジェネレータ30とバッテリ50との間の電力の供給を制御する。それにより、モータ制御部122は、モータジェネレータ30による動力の生成及び発電を制御し得る。
【0059】
モータ制御部122は、具体的には、加速要求に応じて、モータジェネレータ30の出力を制御する。加速要求は、例えば、アクセル開度の検出結果に基づいて算出され得る。例えば、モータ制御部122は、加速要求に応じてモータジェネレータ30のトルクの目標値であるトルク目標値を算出し、モータジェネレータ30のトルクがトルク目標値と一致するように、モータジェネレータ30の動作を制御する。
【0060】
判定部123は、取得部110によって取得された情報を用いて各判定処理を行う。各判定処理による判定結果はリレー制御部121及びモータ制御部122が行う制御に用いられる。
【0061】
本実施形態によれば、バッテリ50とインバータ40との間におけるリレーの開閉状態の切り替えについて制御装置100が行う制御によって、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータに過電圧が生じることを抑制することが実現される。特に、電源システム90の起動後において制御装置100が行うリレーの開閉状態の切り替えの制御によって、そのような効果が奏される。ゆえに、以下では、制御装置100が行う制御のうち、リレーの開閉状態の切り替えの制御について詳細に説明する。
【0062】
<2.制御装置の動作>
続いて、
図5~
図9を参照して、本実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
【0063】
(電源システムの起動時)
まず、
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の起動時における処理について説明する。
【0064】
図5は、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の起動時における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示される制御フローは、具体的には、電源システム90がREADY-OFF状態の時に運転者により電源システム90の起動操作が行われた場合(例えば、駐車している状態から発車する際)に実行される。なお、
図5に示される制御フローが開始される時点において、リレーの開閉状態は、上述したように、プラス側メインリレー61、プリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がOFFである状態(
図3に示される状態)になっている。
【0065】
図5に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS511において、リレー制御部121は、マイナス側メインリレー63をONにする。
【0066】
次に、ステップS513において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をONにする。
【0067】
ゆえに、リレーの開閉状態は、プラス側メインリレー61がOFFでありプリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がONである状態(後述される
図8に示される状態)へ切り替えられる。プリチャージリレー65にはプリチャージ抵抗67が直列に接続されているため、平滑用コンデンサ69を緩やかに充電することができる。ゆえに、プラス側メインリレー61をONにする前に平滑用コンデンサ69を予め充電された状態にすることができるので、プラス側メインリレー61をONにした際にバッテリ50からの突入電流が発生することを抑制することができる。
【0068】
次に、ステップS515において、リレー制御部121は、プラス側メインリレー61をONにする。
【0069】
次に、ステップS517において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をOFFにする。
【0070】
ゆえに、リレーの開閉状態は、プラス側メインリレー61及びマイナス側メインリレー63がONでありプリチャージリレー65がOFFである状態(
図4に示される状態)へ切り替えられる。それにより、電源システム90が起動されてREADY-ON状態になる。
【0071】
【0072】
(電源システムの起動後)
続いて、
図6~
図8を参照して、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の起動後における処理について説明する。
【0073】
図6は、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の起動後における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示される制御フローは、例えば、電源システム90がREADY-ON状態となった後、運転者により電源システム90の停止操作が行われるまでの間において、繰り返し実行される。なお、
図6に示される制御フローが開始される時点において、リレーの開閉状態は、上述したように、プラス側メインリレー61及びマイナス側メインリレー63がONでありプリチャージリレー65がOFFである状態(
図4に示される状態)になっている。
【0074】
図6に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS701において、判定部123は、プリチャージ抵抗67の温度である抵抗温度が温度基準値より低いか否かを判定する。抵抗温度が温度基準値より低いと判定された場合(ステップS701/YES)、ステップS703へ進む。一方、抵抗温度が温度基準値以上であると判定された場合(ステップS701/NO)、
図6に示される制御フローは終了する。
【0075】
温度基準値は、具体的には、プリチャージ抵抗67へ電流が流れた場合に、プリチャージ抵抗67が発熱することによって損傷する可能性が比較的高いか否かを判定し得る値に適宜設定される。例えば、温度基準値は、プリチャージ抵抗67の材質等に応じた耐熱性に基づいて設定される。
【0076】
ステップS703において、判定部123は、バッテリ50の充電許容量が低下状態であるか否かを判定する。充電許容量が低下状態であると判定された場合(ステップS703/YES)、ステップS705へ進む。一方、充電許容量が低下状態であると判定されなかった場合(ステップS703/NO)、
図6に示される制御フローは終了する。
【0077】
バッテリ50の充電許容量が低下状態である場合は、バッテリ50へ充電可能な電力が過剰に少ない場合に相当する。例えば、判定部123は、バッテリ50の温度又は残存容量等のバッテリ50に関する情報の少なくとも1つに基づいて、バッテリ50の充電許容量が低下状態であるか否かを判定する。具体的には、判定部123は、バッテリ50の温度が過剰に低い又は過剰に高い場合に、充電許容量が低下状態であると判定し得る。また、判定部123は、バッテリ50が満充電である場合に、充電許容量が低下状態であると判定し得る。
【0078】
ステップS705において、判定部123は、電動車両1が停車したか否かを判定する。電動車両1が停車したと判定された場合(ステップS705/YES)、ステップS707へ進む。一方、電動車両1が停車したと判定されなかった場合(ステップS705/NO)、
図6に示される制御フローは終了する。
【0079】
例えば、判定部123は、電動車両1の車速が車速基準値より低い場合に、電動車両1が停車したと判定する。車速基準値は、車両が停車しているか否かを適切に判定し得る値に設定され、例えば、車速センサ207における分解能やノイズの大きさ等に基づいて適宜設定される。
【0080】
ステップS707において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をONにする。
【0081】
ゆえに、リレーの開閉状態は、
図7に示されるように、プラス側メインリレー61、プリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がONである状態へ切り替えられる。
【0082】
次に、ステップS709において、判定部123は、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであるか否かを判定する。モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであると判定された場合(ステップS709/YES)、ステップS713へ進む。一方、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであると判定されなかった場合(ステップS709/NO)、ステップS711へ進む。
【0083】
例えば、判定部123は、モータジェネレータ30のトルクの方向が電動車両1を前進させる方向であり、かつ、モータジェネレータ30の回転の方向が電動車両1の後退方向である場合に、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであると判定する。
【0084】
モータジェネレータ30のトルクの方向は、例えば、モータトルクセンサ209による検出結果に基づいて判断され得る。また、モータジェネレータ30の回転の方向は、例えば、モータ回転数センサ211による検出結果に基づいて判断され得る。なお、判定部123は、モータ制御部122により算出されるモータジェネレータ30のトルク目標値に基づいて、モータジェネレータ30のトルクの方向を判断してもよい。
【0085】
モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きになる状況は、電動車両1の再発進時にずり下がりが発生した場合に生じる。具体的には、比較的大きな勾配を有する上り坂での停車時に再発進する際において、ブレーキ操作が解除されることに伴い、車体が自重により後退するずり下がりが発生し得る。それにより、モータジェネレータ30の回転の方向は電動車両1の後退方向になる。その後、アクセル操作が行われることに伴い、モータジェネレータ30のトルクが電動車両1を前進させる方向に生じる。ゆえに、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きになる。それにより、モータジェネレータ30が回生発電を行う状態になる。このように、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きである場合には、電動車両1のずり下がりが発生しており、かつ、モータジェネレータ30による回生発電が行われている。
【0086】
ステップS711において、判定部123は、電動車両1が前進を開始したか否かを判定する。電動車両1が前進を開始したと判定された場合(ステップS711/YES)、ステップS719へ進む。一方、電動車両1が前進を開始したと判定されなかった場合(ステップS711/NO)、ステップS709へ戻る。
【0087】
例えば、判定部123は、電動車両1の車速が上述した車速基準値を上回った場合に、電動車両1が前進を開始したと判定する。
【0088】
ステップS713において、リレー制御部121は、プラス側メインリレー61をOFFにする。
【0089】
ゆえに、リレーの開閉状態は、
図8に示されるように、プラス側メインリレー61がOFFでありプリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がONである状態へ切り替えられる。それにより、モータジェネレータ30により発電される回生電力は、
図8において矢印C10により示されるように、プリチャージ抵抗67を流れるので、プリチャージ抵抗67が発熱することによって消費される。
【0090】
次に、ステップS715において、判定部123は、電動車両1が前進を開始したか否かを判定する。電動車両1が前進を開始したと判定された場合(ステップS715/YES)、ステップS717へ進む。一方、電動車両1が前進を開始したと判定されなかった場合(ステップS715/NO)、ステップS715の判定処理が繰り返される。
【0091】
ステップS717において、リレー制御部121は、プラス側メインリレー61をONにする。
【0092】
ゆえに、リレーの開閉状態は、プラス側メインリレー61、プリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がONである状態(
図7に示される状態)へ切り替えられる。
【0093】
次に、ステップS719において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をOFFにする。
【0094】
ゆえに、リレーの開閉状態は、プラス側メインリレー61及びマイナス側メインリレー63がONでありプリチャージリレー65がOFFである状態(
図4に示される状態)へ切り替えられる。
【0095】
【0096】
上記の制御フローの例では、制御部120は、充電許容量が低下状態であると判定され(ステップS703/YES)、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであると判定された場合(ステップS709/YES)、ステップS713においてリレーの開閉状態を
図8に示される状態へ切り替える。ここで、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きになる状況は、上述したように、電動車両1の再発進時にずり下がりが発生した場合に生じる。
【0097】
このように、制御部120は、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生する場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替える。具体的には、制御部120は、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生しており、かつ、モータジェネレータ30による回生発電が行われている場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替える。
【0098】
なお、上記では、電動車両1のずり下がりが実際に発生しており、かつ、モータジェネレータ30による回生発電が実際に行われている場合に、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられる例を説明したが、当該状態へのリレーの開閉状態の切り替えのトリガはこのような例に限定されない。具体的には、電動車両1のずり下がりが発生する場合は、モータジェネレータ30による回生発電が行われているか否かにかかわらず電動車両1のずり下がりが実際に発生している場合と、電動車両1のずり下がりが発生することが予想される場合とを含む。
【0099】
例えば、制御部120は、モータジェネレータ30による回生発電が実際に行われているか否かにかかわらず電動車両1のずり下がりが実際に発生している場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。具体的には、制御部120は、モータジェネレータ30の回転の方向が電動車両1の後退方向である場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。あるいは、制御部120は、車速に基づいて電動車両1が後退していると判定される場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。
【0100】
また、例えば、制御部120は、電動車両1のずり下がりが将来的に発生することが予想される場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。具体的には、制御部120は、電動車両1の停車中にブレーキ操作が解除された場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。さらに、制御部120は、比較的大きな勾配を有する上り坂での停車中にブレーキ操作が解除された場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えてもよい。制御部120は、例えば、電動車両1の加速度を検出する加速度センサによる検出結果に基づいて、電動車両1の停車地点が比較的大きな勾配を有する上り坂であるか否かを判定し得る。その場合、電動車両1に加速度センサが設けられる。
【0101】
また、上記の制御フローの例では、制御部120は、充電許容量が低下状態であると判定され(ステップS703/YES)、電動車両1が停車したと判定された場合(ステップS705/YES)、リレーの開閉状態を、ステップS713において
図8に示される状態へ切り替える前に、
図7に示される状態へ切り替える。
【0102】
このように、制御部120は、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1が停車した場合、リレーの開閉状態を、プラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替える前に、プラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替え得る。
【0103】
また、上記の制御フローの例では、制御部120は、ステップS707においてリレーの開閉状態を
図7に示される状態へ切り替えた後において、電動車両1が前進を開始したと判定された場合(ステップS711/YES)、ステップS719においてリレーの開閉状態を
図4に示される状態へ切り替える。
【0104】
このように、制御部120は、電動車両1が停車した後にリレーの開閉状態がプラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替え得る。
【0105】
また、上記の制御フローの例では、制御部120は、ステップS713においてリレーの開閉状態を
図8に示される状態へ切り替えた後において、電動車両1が前進を開始したと判定された場合(ステップS715/YES)、ステップS717においてリレーの開閉状態を
図7に示される状態へ切り替え、ステップS719においてリレーの開閉状態を
図4に示される状態へ切り替える。
【0106】
このように、制御部120は、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替え得る。具体的には、制御部120は、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態を、プラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えた後に、プラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替え得る。
【0107】
また、上記の制御フローの例では、プリチャージ抵抗67の温度である抵抗温度が温度基準値以上であると判定された場合(ステップS701/NO)、リレーの開閉状態が
図4に示される状態のまま、
図6に示される制御フローは終了する。
【0108】
このように、制御部120は、プリチャージ抵抗67の温度が温度基準値以上である場合に、プラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へのリレーの開閉状態の切り替えを禁止し得る。
【0109】
(電源システムの停止時)
続いて、
図9を参照して、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の停止時における処理について説明する。
【0110】
図9は、本実施形態に係る制御装置100が行う電源システム90の停止時における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9に示される制御フローは、具体的には、電源システム90がREADY-ON状態の時に運転者により電源システム90の停止操作が行われた場合(例えば、停車した後において駐車する際)に実行される。なお、
図9に示される制御フローが開始される時点において、バッテリ50とインバータ40との間におけるリレーの開閉状態は、上述したように、プラス側メインリレー61及びマイナス側メインリレー63がONでありプリチャージリレー65がOFFである状態(
図4に示される状態)になっている。
【0111】
図9に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS531において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をONにする。
【0112】
次に、ステップS533において、リレー制御部121は、プラス側メインリレー61をOFFにする。
【0113】
次に、ステップS535において、リレー制御部121は、プリチャージリレー65をOFFにする。
【0114】
次に、ステップS537において、リレー制御部121は、マイナス側メインリレー63をOFFにする。
【0115】
それにより、バッテリ50とインバータ40との間におけるリレーの開閉状態は、プラス側メインリレー61、プリチャージリレー65及びマイナス側メインリレー63がOFFである状態(
図3に示される状態)へ切り替えられる。それにより、電源システム90が停止してREADY-OFF状態になる。
【0116】
【0117】
<3.制御装置の効果>
続いて、本実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
【0118】
本実施形態に係る制御装置100では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生する場合に、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられる。電動車両1のずり下がりは、上り坂で停車している状態から再発進する際において生じる。ゆえに、電動車両1のずり下がりが発生した場合、アクセル操作が行われることに伴い、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きになることによって、モータジェネレータ30が回生発電を行う状態になる。
【0119】
ここで、本実施形態では、上記のようにリレーの開閉状態の切り替えが制御されるので、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりに起因して発電される回生電力をプリチャージ抵抗67へ流すことができる。それにより、回生電力によりプリチャージ抵抗67を発熱させることによって、回生電力を消費させることができる。ゆえに、バッテリ50の充電許容量を超える回生電力がずり下がりに起因して発電された場合に、インバータ40に過電圧が生じることを抑制することができる。また、本実施形態では、ずり下がりが発生した場合であっても、ずり下がりが発生していない場合と同様にモータジェネレータ30が運転者のアクセル操作に応じて制御されるので、運転者が要求するトルクとモータジェネレータ30のトルクとが相違することを抑制することができる。よって、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータ40に過電圧が生じることを抑制することができる。
【0120】
さらに、本実施形態では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、ずり下がりが発生した場合に回生電力がプリチャージ抵抗67において消費される。ゆえに、このような場合に回生電力が電動車両1内の補機等の各装置へ供給されて消費される場合と異なり、電動車両1内の各装置の動作に影響を与えることなく、回生電力を消費することができる。また、プリチャージ抵抗67の抵抗値は比較的大きいので、回生電力を電動車両1内の各装置へ供給して消費させる場合と比較して、回生電力をより効果的に消費させることができる。
【0121】
また、本実施形態に係る制御装置100では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1が停車した場合、リレーの開閉状態が、プラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられる前に、プラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられ得る。それにより、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態からプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ直接切り替える場合と比較して、電力の供給経路を円滑に切り替えることができる。また、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替える条件(例えば、
図6のステップS709でYESと判定されること)が満たされた際に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ迅速に切り替えることができる。
【0122】
また、本実施形態に係る制御装置100では、電動車両1が停車した後にリレーの開閉状態がプラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替えられ得る。それにより、ずり下がりが生じずに電動車両1が再発進し、モータジェネレータ30が動力の生成を行う状態となった場合に、バッテリ50からインバータ40へプリチャージ抵抗67を介さずに電力が供給される状態を適切に実現することができる。
【0123】
また、本実施形態に係る制御装置100では、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替えられ得る。それにより、ずり下がりが終了し、モータジェネレータ30が動力の生成を行う状態となった場合に、バッテリ50からインバータ40へプリチャージ抵抗67を介さずに電力が供給される状態を適切に実現することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る制御装置100では、リレーの開閉状態がプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態となっている時において、電動車両1が前進を開始した場合に、リレーの開閉状態が、プラス側メインリレー61及びプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられた後に、プラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ切り替えられ得る。それにより、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれてプリチャージリレー65が閉じられた状態からプラス側メインリレー61が閉じられプリチャージリレー65が開かれた状態へ直接切り替える場合と比較して、電力の供給経路を円滑に切り替えることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る制御装置100では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生しており、かつ、モータジェネレータ30による回生発電が行われている場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられ得る。それにより、電動車両1のずり下がりに起因してモータジェネレータ30が実際に回生発電を行う状態になった場合に、適切に回生発電をプリチャージ抵抗67において消費させることができる。
【0126】
また、本実施形態に係る制御装置100では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、モータジェネレータ30のトルクの方向とモータジェネレータ30の回転の方向とが互いに逆向きであると判定された場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替えられ得る。それにより、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生しており、かつ、モータジェネレータ30による回生発電が行われている場合に、リレーの開閉状態を上記のように切り替えることを効果的に実現することができる。
【0127】
また、本実施形態に係る制御装置100では、プリチャージ抵抗67の温度が温度基準値以上である場合に、プラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へのリレーの開閉状態の切り替えが禁止され得る。それにより、電動車両1のずり下がりに起因して発電された回生電力がプリチャージ抵抗67へ流れ、プリチャージ抵抗67が発熱して過剰に高温になることにより損傷することを抑制することができる。
【0128】
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100は、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、電動車両1のずり下がりが発生する場合に、リレーの開閉状態をプラス側メインリレー61が開かれプリチャージリレー65が閉じられた状態へ切り替える制御部120を備える。ゆえに、電動車両1のずり下がりに起因してモータジェネレータ30により発電される回生電力をプリチャージ抵抗67へ流すことができる。それにより、回生電力によりプリチャージ抵抗67を発熱させることによって、回生電力を消費させることができる。ゆえに、バッテリ50の充電許容量を超える回生電力がずり下がりに起因して発電された場合に、インバータ40に過電圧が生じることを抑制することができる。また、本実施形態では、ずり下がりが発生した場合であっても、ずり下がりが発生していない場合と同様にモータジェネレータ30が運転者のアクセル操作に応じて制御されるので、運転者が要求するトルクとモータジェネレータ30のトルクとが相違することを抑制することができる。よって、運転者の意図に沿った発進挙動を実現しつつ、ずり下がりに起因してインバータ40に過電圧が生じることを抑制することができる。
【0129】
さらに、本実施形態では、バッテリ50の充電許容量が低下状態である時において、ずり下がりが発生した場合に回生電力がプリチャージ抵抗67において消費されるので、電動車両1内の各装置の動作に影響を与えることなく、回生電力を消費することができる。また、プリチャージ抵抗67の抵抗値は比較的大きいので、回生電力を電動車両1内の各装置へ供給して消費させる場合と比較して、回生電力をより効果的に消費させることができる。
【0130】
上記では、制御装置100が搭載される電動車両の例として電動車両1について説明したが、制御装置100が搭載される電動車両の構成はこのような例に限定されない。例えば、制御装置100が搭載される電動車両において、各車輪について互いに異なるモータジェネレータ(合計4個のモータジェネレータ)が駆動源として設けられてもよい。また、例えば、制御装置100が搭載される電動車両において、前輪及び後輪の各々について互いに異なるモータジェネレータ(合計2個のモータジェネレータ)が駆動源として設けられてもよい。なお、このようにモータジェネレータの数が複数である場合、バッテリの数が複数であってもよい。また、例えば、制御装置100が搭載される電動車両において、エンジンが設けられてもよい。その場合、エンジンは、例えば、バッテリ50に充電される電力を発電するための動力源として用いられ得る。
【0131】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。例えば、
図6に示したフローチャートについて、ステップS701、ステップS703及びステップS705の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0132】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0133】
1 電動車両
21 フロントディファレンシャル装置
23 センターディファレンシャル装置
25 リヤディファレンシャル装置
30 モータジェネレータ
40 インバータ
50 バッテリ
61 プラス側メインリレー
63 マイナス側メインリレー
65 プリチャージリレー
67 プリチャージ抵抗
69 平滑用コンデンサ
90 電源システム
100 制御装置
110 取得部
120 制御部
121 リレー制御部
122 モータ制御部
123 判定部
201 アクセル開度センサ
203 ブレーキセンサ
205 イグニッションスイッチ
207 車速センサ
209 モータトルクセンサ
211 モータ回転数センサ
213 バッテリセンサ
215 抵抗温度センサ