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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】車両用白線認識装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20220118BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220118BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20220118BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G06T7/60 200J
G06T7/00 650A
B60R21/00 991
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017208240
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019079470
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 礁太
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-092970(JP,A)
【文献】特開2014-127027(JP,A)
【文献】特開2017-090955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00- 7/90
B60R 21/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、
前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との輝度差、及び、前記白線推定区間と前記路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え
前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価することを特徴とする車両用白線認識装置。
【請求項2】
自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、
前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との輝度差に基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え
前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価することを特徴とする車両用白線認識装置。
【請求項3】
自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、
前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え
前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価することを特徴とする車両用白線認識装置。
【請求項4】
前記エッジ点検証手段は、前記白線推定区間と前記路面との前記輝度差が小さいほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が低いと評価することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用白線認識装置。
【請求項5】
前記エッジ点検証手段は、前記白線推定区間と前記路面との前記遷移区間が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が低いと評価することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の車両用白線認識装置。
【請求項6】
前記エッジ点検証手段は、前記白線推定区間の輝度値が高いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車両用白線認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラ等の撮像手段で撮像した画像に基づいて白線を認識する車両用白線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性向上や利便性向上等を図るため、積極的にドライバの運転操作を支援する運転支援装置が開発されている。この種の運転支援装置としては、例えば、車載カメラによって車外環境を撮像し、撮像した画像から、路面に敷設された白線や路面上の先行車等の立体物を認識し、これらの認識情報に基づいて、車速制御や操舵支援制御、さらには、自動運転等の各種運転支援制御を行うものが知られている。
【0003】
このような運転支援装置に用いられる車両用白線認識装置として、例えば、特許文献1には、撮像画像上に設定された検索領域に対し、水平方向に延在する複数の検索ライン毎に、車幅方向内側から外側に向けて輝度変化を調べることにより、輝度が暗から明へと所定以上変化するエッジ点を白線候補点として検出し、検出した白線候補点群に対し最小二乗法等を用いて二次曲線等を算出することにより、白線を認識する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】2012-22574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、輝度が暗から明へと所定以上変化するエッジ点を白線候補点として検出するだけの処理では、路面に投射された光の像のエッジ点を白線候補点として誤検出する場合がある。
【0006】
例えば、道路脇に沿ってガードレールや柵等の構造物が設けられている場合、当該構造物の隙間から路面に投射された太陽光が高輝度な帯状の像を形成する場合がある。そして、このような光の像が白線に沿って検索領域内に延在した場合、当該像のエッジ点が白線候補点として誤認識される虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、路面に投射された光の像の影響を排除して適切な白線認識を行うことができる車両用白線認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による車両用白線認識装置は、自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との輝度差、及び、前記白線推定区間と前記路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え、前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価するものである。
【0009】
また、本発明の他の態様による車両用白線認識装置は、自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との輝度差に基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え、前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価するものである。
【0010】
また、本発明の他の態様による車両用白線認識装置は、自車前方の車外環境を撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像した画像の水平方向に延在する検索ライン上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化する前記エッジ点を白線開始点として抽出すると共に、前記輝度が明から暗に変化する前記エッジ点を白線終了点として抽出するエッジ点検出手段と、前記白線開始点と前記白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と前記白線推定区間以外の路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うエッジ点検証手段と、を備え、前記エッジ点検証手段は、自車両から前記白線開始点までの距離が長いほど、前記白線開始点及び前記白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点である可能性が高いと評価するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用白線認識装置によれば、路面に投射された光の像の影響を排除して適切な白線認識を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用運転支援装置の概略構成図
図2】車外環境を撮像した基準画像の一例を模式的に示す説明図
図3図2から検出される白線候補点を示す説明図
図4】画像検索方向における輝度の分布と輝度の微分値との関係を示す説明図
図5】自車両の近方及び遠方における白線及び光の像の輝度特性を示す説明図
図6】実空間に投影される白線候補点を示す説明図
図7】(a)は走行による自車の移動量を示す説明図であって(b)は前フレームで検出した白線候補点の自車に対する相対的な移動量を示す説明図
図8】白線候補点を用いて演算された白線近似線及び白線検索領域を示す説明図
図9】白線認識ルーチンを示すフローチャート
図10】白線開始点検証サブルーチンを示すフローチャート
図11】白線候補点までの距離と評価点数との関係を示すマップ
図12】対象領域と路面との輝度差と評価点数との関係を示すマップ
図13】内側遷移領域の長さと評価点数との関係を示すマップ
図14】外側繊維領域の長さと評価点数との関係を示すマップ
図15】内側遷移領域の最大輝度と最小輝度の輝度差と評価点数との関係を示すマップ
図16】外側繊維領域の最大輝度と最小器との輝度差と評価点数との関係を示すマップ
図17】対象領域の輝度値と評価点数との関係を示すマップ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、図1は車両用運転支援装置の概略構成図、図2は車外環境を撮像した基準画像の一例を模式的に示す説明図、図3図2から検出される白線候補点を示す説明図、図4は画像検索方向における輝度の分布と輝度の微分値との関係を示す説明図、図5は自車両の近方及び遠方における白線及び光の像の輝度特性を示す説明図、図6は実空間に投影される白線候補点を示す説明図、図7(a)は走行による自車の移動量を示す説明図であって(b)は前フレームで検出した白線候補点の自車に対する相対的な移動量を示す説明図、図8は白線候補点を用いて演算された白線近似線及び白線検索領域を示す説明図、図9は白線認識ルーチンを示すフローチャート、図10は白線開始点検証サブルーチンを示すフローチャート、図11は白線候補点までの距離と評価点数との関係を示すマップ、図12は対象領域と路面との輝度差と評価点数との関係を示すマップ、図13は内側遷移領域の長さと評価点数との関係を示すマップ、図14は外側繊維領域の長さと評価点数との関係を示すマップ、図15は内側遷移領域の最大輝度と最小輝度の輝度差と評価点数との関係を示すマップ、図16は外側繊維領域の最大輝度と最小器との輝度差と評価点数との関係を示すマップ、図17は対象領域の輝度値と評価点数との関係を示すマップである。
【0014】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この車両1には運転支援装置2が搭載されている。この運転支援装置2は、例えば、撮像手段としてのステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制御ユニット5等を有して構成されている。なお、これらの構成のうち、本実施形態においては、主としてステレオカメラ3及びステレオ画像認識装置4により、自車前方の車外環境を認識する車外監視装置が構成されている。
【0015】
また、自車両1には、自車速Vを検出する車速センサ11、ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ12、運転支援制御の各機能のON-OFF切換等を行うメインスイッチ13、ステアリングホイールに連結するステアリング軸に対設されて舵角θstを検出する舵角センサ14、ドライバによるアクセルペダル踏込量(アクセル開度)θaccを検出するアクセル開度センサ15等が設けられている。
【0016】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として、例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組のCCDカメラで構成されている。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像認識装置4に出力する。なお、以下の説明において、ステレオ撮像された画像のうち一方の画像(例えば、右側の画像)を基準画像と称し、他方の画像(例えば、左側の画像)を比較画像と称す。
【0017】
ステレオ画像認識装置4は、撮像された基準画像及び比較画像に対し、例えば、以下に示す各種画像処理等を行う。すなわち、ステレオ画像認識装置は、先ず、基準画像から例えば4×4画素の小領域を順次抽出し、それぞれの小領域の輝度或いは色のパターンを比較画像と比較して対応する領域を見つけ出し、基準画像全体に渡る距離分布を求める。さらに、ステレオ画像認識装置4は、基準画像上の各画素について隣接する画素との輝度差を調べ、これらの輝度差が閾値を超えているものをエッジ点として抽出するとともに、抽出した画素(エッジ点)に距離情報を付与することで、距離画像(距離情報を備えたエッジ点の分布画像)を生成する。そして、ステレオ画像認識装置4は、生成した距離画像に対して既知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な枠(ウインドウ)と比較することで、自車前方の白線、側壁、立体物等を認識する。
【0018】
ここで、本実施形態において認識対象となる白線とは、例えば、単一の車線区画線や車線区画線の内側に視線誘導線等が併設された多重線(二重線等)のように、道路上に延在して自車走行レーンを区画するレーンマーカを総称するものであり、各線の形態としては、実線、破線等を問わず、さらに、黄色線等をも含む。また、本実施形態の白線認識においては、道路上に実在する白線が二重白線等であっても、左右それぞれ単一の近似式(1次以上の直線或いは曲線近似式)によって近似して認識するものとする。
【0019】
ところで、実際の道路上に敷設された白線には上述のように各種バリエーションが存在する他、白線の形態は走行路の分岐や合流等に伴って変化する。加えて、道路上には路面補修跡や、水溜まり、雪、光の像等の各種ノイズが存在する。従って、画一的な処理によって、全ての場面で精度良く白線を認識することは困難となる。そこで、ステレオ画像認識装置4は、上述のような距離画像に基づくパターンマッチングを用いた白線認識のみに頼ることなく、各種方式を用いた白線認識を行い、これらの認識結果を総合的に判断して最終的な白線を認識する。
【0020】
このような白線認識の一つとして、ステレオ画像認識装置4は、自車前方を撮像した一方の画像(例えば、図2に示す基準画像)上の水平方向の輝度変化に基づいて左右の白線認識を行う。
【0021】
具体的に説明すると、例えば、図3に示すように、ステレオ画像認識装置4は、画像上に左右の白線検索領域Ad(Adl,Adr)を設定し、各白線検索領域Ad内で水平方向に延在する複数の画素列からなる検索ラインl値列ごとに、車幅方向内側から外側に向けて輝度変化を調べる。そして、ステレオ画像認識装置4は、例えば、車幅方向外側の画素の輝度が内側の画素の輝度に対して相対的に高く、且つ、その変化量を示す輝度の微分値が+側の設定閾値(dBth)以上となるエッジ点と、車幅方向外側の画素の輝度が内側の画素の輝度に対して相対的に低く、且つ、その変化量を示し輝度の微分値が-側の設定閾値(-dBth)以下となるエッジ点とのペアを、白線開始点及び白線終了点として抽出する(図4(a),(b)参照)。
【0022】
そして、ステレオ画像認識装置4は、各白線検索領域Ad内の各検索ラインl上において、例えば、車幅方向最も外側に位置する白線開始点を白線候補点Pd(左側の白線候補点Pdl、右側の白線候補点Pdr)としてそれぞれ検出し、実空間上に投影する(図6参照)。
【0023】
そして、ステレオ画像認識装置4は、左右の白線候補点Pdl,Pdrの各点列に基づき、左右の白線を表す白線近似線Ll,Lrを求める(図8参照)。
【0024】
ここで、上述のような白線認識において、路面に投影された光等のエッジ点を白線候補点Pdとして誤検出することを防止するため、ステレオ画像認識装置4は、検出した白線開始点及び白線終了点が実際の白線に対応するものであるか否かの検証を行う。
【0025】
具体的には、ステレオ画像認識装置4は、検索領域Ad内において、検索ラインl上の白線開始点と白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と白線推定区間以外の路面との輝度差、及び、白線推定区間と路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて白線開始点及び白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行う。
【0026】
より具体的には、ステレオ画像認識装置4は、例えば、自車両1から白線開始点までの距離、白線推定区間の平均輝度と白線推定区間以外の平均輝度との差、白線開始点の前後において輝度が暗から明に遷移する第1遷移区間の長さ、白線終了点の前後において輝度が明から暗に遷移する第2遷移区間の長さ、第1遷移区間における最大輝度と最小輝度との差、第2遷移区間における最大輝度と最小輝度との差、及び、白線推定区間の輝度値をパラメータとする評価値S1~S7をそれぞれ算出し、これら評価値S1~S7から算出された評価値S0が設定閾値Sth未満であるとき当該白線開始点及び白線終了点に対応する白線は実在する可能性が高いと判定し、評価値S0が設定閾値Sth以上であるとき当該白線開始点及び白線終了点に対応する白線は実在しない可能性が高い(光の像等である可能性が高い)と判断する。
【0027】
本実施形態において、評価値S1~S7、例えば、以下の(1)式~(7)式により算出される。すなわち、
S1=(自車両1から白線開始点までの距離)×k1 …(1)
S2=(白線推定区間の平均輝度と白線推定区間以外の平均輝度との差)×k2 …(2)
S3=(第1遷移区間の長さ)×k3 …(3)
S4=(第2遷移区間の長さ)×k4 …(4)
S5=(第1遷移区間における最大輝度と最小輝度との差)×k5 …(5)
S6=(第2遷移区間における最大輝度と最小輝度との差)×k6 …(6)
S7=(白線推定区間の輝度値)×k7 …(7)
【0028】
また、評価値S0は、例えば、以下の(8)式により算出される。すなわち、
S0=S1+S2+S3+S4+S5+S6+S7 …(8)
【0029】
ここで、(1)式~(7)式において、k1~k7は予め設定された係数であり、例えば、「t検定」等の統計学手法を用いて設定されている。これらの係数k1~k8は、各シーンで撮像された白線、及び、光の像の特徴量等に基づく統計によって設定されることにより、白線推定領域が実際の白線に対応しているとき評価値S0を「0」に収束させ、白線推定領域が光の像等に対応しているとき評価値S0を「1」に収束させる値に設定されている。
【0030】
すなわち、例えば、図5に示すように、白線と光の像とを比較した場合、白線の方が、白線推定区間の平均輝度と白線推定区間以外の平均輝度との差が大きくなる傾向にある。そこで、例えば、白線推定区間の平均輝度と白線推定区間以外の平均輝度との差が大きくなるほど評価値S2が小さくなるよう(例えば、図12参照)、係数k2は設定されている。
【0031】
また、例えば、図5に示すように、白線と光の像とを比較した場合、白線の方が、遷移領域の長さ(第1,第2遷移領域の長さ)が短くなる傾向にある。そこで、例えば、遷移領域の長さが短くなるほど評価値S3,S4が小さくなるよう(例えば、図13,14参照)、係数k3,k4は設定されている。
【0032】
また、例えば、図5に示すように、白線と光の像とを比較した場合、白線の方が、遷移領域の最大輝度と最小輝度の輝度差が大きくなる傾向にある。そこで、例えば、遷移領域の最大輝度と最小輝度の差が大きくなるほど、評価値S5,S6が小さくなるよう(例えば、図15,16参照)、係数k5,k6は設定されている。
【0033】
また、例えば、図5に示すように、白線と光の像とを比較した場合、白線の方が、白線推定領域の輝度が大きくなる傾向にある。そこで、例えば、白線推定領域の輝度が大きくなるほど、評価値S7が小さくなるよう(例えば、図17参照)、係数k7は設定されている。
【0034】
なお、自車両1の遠方においては、光の像を白線と誤認識しても、走行制御等にさほど影響を与えないとの思想に基づき、自車両1から白線開始点までの距離が大きくなるほど、評価値S1が小さくなるよう(例えば、図11参照)、係数k1は設定されている。
【0035】
このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、エッジ点検出手段、及び、エッジ点検証手段としての各機能を実現する。
【0036】
制御ユニット5には、ステレオ画像認識装置4で認識された自車両1前方の走行環境情報が入力される。さらに、制御ユニット5には、自車両1の走行情報として、車速センサ11からの車速V、ヨーレートセンサ12からのヨーレートγ等が入力されると共に、ドライバによる操作入力情報として、メインスイッチ13からの操作信号、舵角センサ14からの舵角θst、アクセル開度センサ15からのアクセル開度θacc等が入力される。
【0037】
そして、例えば、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つであるACC(Adaptive Cruise Control)機能の実行が指示されると、制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で認識した先行車方向を読み込み、自車走行路上に追従対象の先行車が走行しているか否かを識別する。
【0038】
その結果、追従対象の先行車が検出されていない場合は、スロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、ドライバが設定したセット車速に自車両1の車速Vを維持させる定速走行制御を実行する。
【0039】
一方、追従対象車両である先行車が検出され、且つ、当該先行車の車速がセット車速以下の場合は、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させた状態で追従する追従走行制御が実行される。この追従走行制御時において、制御ユニット5は、基本的にはスロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させる。さらに、先行車の急な減速等によりスロットル弁16の制御のみでは十分な減速度が得られないと判断した場合、制御ユニット5は、アクティブブースタ17からの出力液圧の制御(ブレーキの自動介入制御)を併用し、車間距離を目標車間距離に収束させる。
【0040】
また、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つである車線逸脱防止機能の実行が指示されると、制御ユニット5は、例えば、自車走行レーンを規定する左右の白線(ステレオ画像認識装置4で認識した白線の近似線)に基づいて警報判定用ラインを設定するとともに、自車両1の車速Vとヨーレートγとに基づいて自車進行経路を推定する。そして、制御ユニット5は、例えば、自車前方の設定距離(例えば、10~16[m])内において、自車進行経路が左右何れかの警報判定用ラインを横切っていると判定した場合、自車両1が現在の自車走行車線を逸脱する可能性が高いと判定し、車線逸脱警報を行う。
【0041】
次に、上述のステレオ画像認識装置4において行われる白線認識処理について、図10に示す白線認識ルーチンのフローチャートに従って説明する。
【0042】
このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるものであり、ルーチンがスタートすると、ステレオ画像認識装置4は、先ず、ステップS101において、基準画像上に、左右の白線検索領域Adl,Adrを設定する。これらの白線検索領域Adl,Adrは、例えば、前フレームで認識した左右の白線近似線Ll,Lrを、実空間上において車幅方向内側及び外側にそれぞれ予め設定されたオフセット量ΔEずつオフセットさせることにより形成される領域を(図8参照)、基準画像上の座標に変換することにより設定されるものである。
【0043】
続くステップS102において、ステレオ画像認識装置4は、各白線検索領域Adl,Adr内の全ての検索ラインlについて、白線開始点(及び、白線終了点)の検索処置が行われたか否かを調べる。
【0044】
そして、ステップS102において、全ての検索ラインlについて白線開始点の検索処理が行われたと判断した場合、ステレオ画像認識装置4は、ステップS106に進む。
【0045】
一方、ステップS102において、全ての検索ラインlについて白線開始点の検索処理が行われていないと判断した場合、ステレオ画像認識装置4は、ステップS103に進み、白線検索領域Adl,Adr内における未処理の新たな検索ラインlを抽出する。
【0046】
そして、ステップS103からステップS104に進むと、ステレオ画像認識装置4は、抽出した検索ラインlに対し、白線開始点(及び、白線終了点)の検索処理を行う。
【0047】
すなわち、ステレオ画像認識装置4は、検索ラインl上の画素について車幅方向内側から外側に向けて順次探索を行い、車幅方向外側の画素の輝度が内側の画素の輝度に対して相対的に高く、且つ、その変化量を示す輝度の微分値が+側の設定閾値(dBth)以上となるエッジ点と、車幅方向外側の画素の輝度が内側の画素の輝度に対して相対的に低く、且つ、その変化量を示す輝度の微分値が-側の設定閾値(-dBth)以下となるエッジ点とのペアを、白線開始点及び白線終了点として抽出する。
【0048】
そして、ステップS104からステップS105に進むと、ステレオ画像認識装置4は、検出した白線開始点(及び、白線終了点)の検証を行う。
【0049】
この白線開始点の検証は、例えば、図10に示す白線開始点検証サブルーチンのフローチャートに従って実行されるものであり、サブルーチンがスタートすると、ステレオ画像認識装置4は、先ず、ステップS201において、未検証の白線開始点(及び、白線終了点)があるか否かを調べる。
【0050】
そして、ステップS201において、未検証の白線開始点がないと判断した場合、ステレオ画像認識装置4は、サブルーチンを抜ける。
【0051】
一方、ステップS201において、未検証の白線開始点があると判断した場合、ステレオ画像認識装置4は、ステップS202に進み、未検証の新たな白線開始点(より具体的には、白線開始点と白線終了点とのペア)を抽出する。
【0052】
そして、ステップS202からステップS203に進むと、ステレオ画像認識装置4は、上述の(1)式~(8)式に基づいて、白線開始点の評価値S0を算出する。
【0053】
そして、ステップS204に進むと、ステレオ画像認識装置4は、ステップS203で算出した評価値S0が、予め設定された閾値Sth(例えば、Sth=0.5)未満であるか否かを調べる。
【0054】
そして、ステップS204において、評価値S0が閾値Sth未満であると判定した場合、ステレオ画像認識装置4は、そのままステップS201に戻る。
【0055】
一方、ステップS204において、評価値S0が閾値Sth以上であると判定した場合、ステレオ画像認識装置4は、現在選択されている白線開始点(及び、白線終了点)は、光の像等に起因して検出されたものである可能性が高いと判断し、当該白線開始点(及び、白線終了点)を除外した後、ステップS201に戻る。
【0056】
このような白線開始点検索サブルーチンが終了すると、ステレオ画像認識装置4は、図9のメインルーチンにおいて、ステップS105からステップS102に戻る。
【0057】
また、ステップS102からステップS106に進むと、ステレオ画像認識装置4は、各検索ラインlで検出した白線開始点(検証済みの白線開始点)に基づき白線近似線を算出した後、ルーチンを抜ける。
【0058】
この白線近似線の算出処理において、ステレオ画像認識装置4は、先ず、各検索ラインl上において検出された所定の白線開始点を白線候補点Pdとして抽出する。すなわち、ステレオ画像認識装置4は、例えば、検索ラインl上に1の白線開始点が検出されている場合には当該白線開始点を白線候補点Pdとして抽出し、同一の検索ラインl上に2以上の白線開始点が検出されている場合には最も車幅方向外側に位置する白線開始点を白線候補点Pdとして抽出する。
【0059】
また、ステレオ画像認識装置4は、前フレーム以前に検出した白線候補点Poldを用いて自車両1の後方についても白線認識を行うべく、例えば、以下の処理を行う。
【0060】
すなわち、ステレオ画像認識装置4は、例えば、図7(a)に示す関係から、自車1の車速Vと、ヨーレートγから求まるヨー角θとに基づき、撮像画像の1フレームあたり(撮像画像が1フレーム更新されるまでの間t)の自車1の移動量Δx,Δzを、以下の(9)式及び(10)式を用いて演算する。
Δx=V×sinθ …(9)
Δz=V×cosθ …(10)
【0061】
そして、ステレオ画像認識装置4は、以下の(11)式及び(12)式に示すように、前フレーム以前に検出した白線候補点Pold(Xold,Yold)に対し、自車移動量Δx,Δzを減算した後、現在のフレームにおける車両固定座標系(X,Z)への座標変換を行うことにより、自車1の後方所定距離以内に存在する白線候補点Ppreの座標を演算する(図7(b)参照)。
Xpre=(Xold・Δx)×cosθ-(Zold・Δz)×sinθ …(11)
Zpre=(Xold・Δx)×sinθ+(Zold・Δz)×cosθ …(12)
【0062】
そして、ステレオ画像認識装置4は、現フレームにおいて検出した白線候補点Pdと、前フレーム以前の白線候補点Poldを座標変換して求めた白線候補点Ppreと、からなる点列に基づき、左右の白線近似線Ll,Lrを、最小二乗法を用いて、以下の(13)式及び(14)式に示す近似式で定義する(図8参照)。
Xl=Al・Z+Bl・Z+Cl …(13)
Xr=Ar・Z+Br・Z+Cr …(14)
【0063】
なお、(13)、(14)式において、2次係数A(Al,Ar)は白線の曲率成分を示すパラメータであり、1次係数B(Bl,Br)は車線ヨー角成分(自車1に対する白線の傾き成分)を示すパラメータであり、C(Cl,Cr)は車線位置(自車1に対する白線の横位置)を示すパラメータである。
【0064】
このような実施形態によれば、検索ラインl上において輝度が所定に変化するエッジ点を検出し、輝度が暗から明に変化するエッジ点を白線開始点として抽出すると共に、輝度が明から暗に変化するエッジ点を白線終了点として抽出し、白線開始点と白線終了点とに基づいて推定される白線推定区間と白線推定区間以外の路面との輝度差、及び、白線推定区間と路面との間で輝度が遷移する遷移区間の長さに基づいて白線開始点及び白線終了点が実際の白線に対応するエッジ点であるか否かの検証を行うことにより、路面に投射された光の像の影響を排除して適切な白線認識を行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、評価値S1~S7の全てを用いて評価値S0を算出する一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、評価値S1~S7のうちの何れか1または2以上を用いて評価値S0を算出することも可能である。すなわち、例えば、白線推定区間と白線推定区間以外の路面との輝度差に関する評価値S2,S5,S6のみを用いて評価値S0の算出を行うことも可能であり、或いは、白線推定区間と路面との遷移区間の長さに関する評価値S3,S4を用いて評価値S0の算出を行うことも可能である。さらに、その他の評価値S1~S7の組合せをもちいて評価値S0を算出することも可能である。なお、この場合、各評価値S1~S7の係数k1~k7は、採用される評価値に応じ、「t検定」等の統計学手法を用いて設定されることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 … 車両(自車両)
2 … 運転支援装置
3 … ステレオカメラ(撮像手段)
4 … ステレオ画像認識装置(エッジ点検出手段、エッジ点検証手段)
5 … 制御ユニット
11 … 車速センサ
12 … ヨーレートセンサ
13 … メインスイッチ
14 … 舵角センサ
15 … アクセル開度センサ
16 … スロットル弁
17 … アクティブブースタ
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