IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アークレイ株式会社の特許一覧

特許7007862化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キット
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/532 20060101AFI20220118BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20220118BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01N33/532 B
G01N21/76
G01N21/78 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017210602
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082428
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 美咲
(72)【発明者】
【氏名】北浦 千枝子
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-031499(JP,A)
【文献】特開平03-072489(JP,A)
【文献】特開平05-140146(JP,A)
【文献】特開2014-141642(JP,A)
【文献】特開2015-007652(JP,A)
【文献】特開2010-256250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0073150(US,A1)
【文献】特表2003-520017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 21/76
G01N 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジオキセタン誘導体と、
金属塩と
イオン性界面活性剤と
を含む、化学発光試薬組成物。
【請求項2】
更に、化学発光増強剤を含む、請求項1に記載の化学発光試薬組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の化学発光試薬組成物。
【請求項4】
前記1,2-ジオキセタン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の化学発光試薬組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子若しくはハロゲン原子を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、RはOPO 2-・2Mで表わされる基を表す。前記Mは、ナトリウム原子、カリウム原子又はNHを表す。]
【請求項5】
前記金属塩は、マグネシウム塩である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の化学発光試薬組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の化学発光試薬組成物と、
酵素と、
を含む化学発光試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
酵素免疫測定法(Enzyme Immunoassay;EIA)は、標識物である酵素と基質との反応によって起こる発色量、蛍光量又は発光量を測定して、測定対象物を定量する測定法である。
EIAの中でも、酵素と化学発光基質との反応による発光量を測定する化学発光酵素免疫測定法(Chemiluminescent Enzyme Immunoassay;CLEIAという)は、測定時間が短く、かつ、高感度であることから、HIV、HCV等のウイルス、その他生体内微量成分等を測定するために広く用いられている。
【0003】
化学発光基質である1,2-ジオキセタン誘導体は、発光時間が長く、高感度な測定が可能であるため、近年注目されており、更なる感度の向上、測定操作の改善等が行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、1,2-ジオキセタン誘導体を安定化させてCLEIAの測定感度を維持するために、1,2-ジオキセタン誘導体に糖を添加することにより安定化する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
熱安定性に優れた化学発光用材料として、1,2-ジオキセタン誘導体の溶液、並びに、カチオン性界面活性剤および蛍光性物質を含有する溶液、を有することを特徴とする、化学発光用材料が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
抗原等の検体中の測定対象成分を測定するに際して、反応温度等の影響を受けずに正確な測定を可能とする、検体中の測定対象成分の測定方法として、検体中の測定対象成分と、該測定対象成分に結合する第1抗体とを、脂肪酸アルカノールアミド存在下に反応させる測定方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-72489号公報
【文献】特開平5-140146号公報
【文献】特開2014-141642号公報
【文献】特開2015-7652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、1,2-ジオキセタン誘導体の安定性についての評価はなされていない。また、特許文献4にはアルカリフォスファターゼの基質と、2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)緩衝剤、3-(N-シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸(CAPS)緩衝剤が記載されているが、保存安定性について何ら示唆されていない。
【0006】
特許文献2~特許文献4において、ジエタノールアミン緩衝剤で希釈調製した1,2-ジオキセタン誘導体の溶液では、最大14日間までの安定性が得られているものの、更に長期間保管した場合の安定性の評価はなされていない。
この点について発明者らが検討したところ、1,2-ジオキセタン誘導体をジエタノールアミン緩衝剤で希釈調製すると、1,2-ジオキセタン誘導体の分解が進むため、酵素と反応による発光量が保存日数に依存して急激に減少し、CLEIAの感度が低下する傾向がある。
そのため、1,2-ジオキセタン誘導体を含む溶液の長期保存した場合の更なる安定性の向上が求められている。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、長期保存安定性に優れる化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、金属塩と、特定の化合物及び非イオン性界面活性剤の少なくとも1種と、を含有することで、1,2-ジオキセタン誘導体中のジオキセタン構造部分の分解が抑制され、長期間保存安定性に優れることを見出した。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 1,2-ジオキセタン誘導体と、
金属塩と、
N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、
を含む、化学発光試薬組成物。
<2> 更に、化学発光増強剤を含む、<1>に記載の化学発光試薬組成物。
<3> 前記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の化学発光試薬組成物。
<4> 前記1,2-ジオキセタン誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の化学発光試薬組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子若しくはハロゲン原子を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、RはOPO 2-・2Mで表わされる基を表す。前記Mは、ナトリウム原子、カリウム原子又はNHを表す。
【0012】
<5> 前記金属塩は、マグネシウム塩である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の化学発光試薬組成物
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の化学発光試薬組成物と、
酵素と、
を含む化学発光試薬キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、長期保存安定性に優れる化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の化学発光試薬組成物及び化学発光試薬キットについて説明する。
なお、本明細書において、数値範囲における「~」は、「~」の前後の数値を含むことを意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
《化学発光試薬組成物》
本発明の化学発光試薬組成物(以下、単に「試薬組成物」ともいう。)は、1,2-ジオキセタン誘導体と、金属塩と、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)(以下、「特定化合物」ともいう。)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を少なくとも含む。
本発明の化学発光試薬組成物は、上記構成を有することで1,2-ジオキセタン誘導体の分解を抑制するので、長期保存安定性に優れる。そのため、長期保存後の本発明の試薬組成物を用いて化学発光酵素免疫測定法を行った場合であっても、測定対象成分を高感度に検出可能な程度の発光量が得られる。
以下、本発明の試薬組成物が含有する各成分の詳細について説明する。
【0016】
<1,2-ジオキセタン誘導体>
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体を含む。
1,2-ジオキセタン誘導体は化学発光基質であるので、酵素と反応(すなわち、酵素反応)して発光する。例えば、酵素標識物質等と結合した検出対象成分と、試薬組成物中の1,2-ジオキセタン誘導体と、を反応させて、1,2-ジオキセタン誘導体の分解により得られる発光量を測定することで、検出対象成分を定量又は検出することができる。
【0017】
1,2-ジオキセタン誘導体としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子若しくはハロゲン原子を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、RはOPO 2-・2Mで表わされる基を表す。前記Mは、ナトリウム原子、カリウム原子又はNHを表す。
【0020】
一般式(1)中、R及びRにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましく、塩素原子又は臭素原子であることがより好ましく、塩素原子であることが更に好ましい。
【0021】
反応性の観点から、R及びRとしては、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子であることが好ましく、水素原子、塩素原子若しくは臭素原子であることがより好ましく、水素原子若しくは塩素原子であることが更に好ましい。
【0022】
一般式(1)中、Rで表される炭素数1~4のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はイソプロピル基が挙げられる。
標識酵素との反応性の観点から、Rとしては、直鎖の炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、直鎖の炭素数1又は2のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0023】
としては、OPO 2-・2Na又はOPO 2-・2Kで表される基であることが好ましく、OPO 2-・2Naで表される基であることがより好ましい。
【0024】
一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子であり(より好ましくは水素原子、塩素原子若しくは臭素原子であり、更に好ましくは水素原子若しくは塩素原子である。)、Rは炭素数1~3の直鎖のアルキル基であり(より好ましくは炭素数1又は2の直鎖のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。)、Rは水素原子又は塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子であり(より好ましくは水素原子又は塩素原子若しくは臭素原子であり、更に好ましくは水素原子又は塩素原子である。)、Rは、OPO 2-・2Na又はOPO 2-・2Kで表される基であることが好ましい(より好ましくはOPO 2-・2Naで表される基である。)。
【0025】
以下、一般式(1)で表される1,2-ジオキセタン誘導体の具体例を示す。但し、1,2-ジオキセタン誘導体は以下の具体例によって限定されることはない。下記具体例において、一般式(1)中のMは、ナトリウム原子又はカリウム原子を表す。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(1)で表される1,2-ジオキセタン誘導体は、合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。製造コスト及び入手のしやすさから、1,2-ジオキセタン誘導体としては、市販品を用いることが好ましい。
【0028】
1,2-ジオキセタン誘導体の具体例としては、3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・二ナトリウム塩(AMPPD(登録商標)、MedChemExpress社製)、2-クロロ-5-{4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CDP-Star(登録商標)、ロシュ・ライフサイエンス社製)、3-{4-メトキシスピロ[1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]-4-イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CSPD(登録商標)、ロシュ・ライフサイエンス社製)、[10-メチル-9(10H)-アクリジニルイデン]フェノキシメチルリン酸・二ナトリウム塩(Lumigen(登録商標)APS-5、ルミガン社製)及び9-(4-クロロフェニルチオホスホリルオキシメチリデン)-10-メチルアクリダン・二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、標識酵素との反応性の観点から、1,2-ジオキセタン誘導体は、AMPPD(登録商標)、CDP-Star(登録商標)及びCSPD(登録商標)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、CDP-Star(登録商標)及びCSPD(登録商標)の少なくとも一方を用いることがより好ましく、CDP-Star(登録商標)であることが更に好ましい。
【0030】
1,2-ジオキセタン誘導体の含有量は、目的に応じて適宜選択することができる。1,2-ジオキセタン誘導体の含有量としては、0.01mM~0.5mMであることが好ましく、より好ましくは0.03mM~0.3mMである。
【0031】
<金属塩>
本発明の試薬組成物は、金属塩を含む。酵素活性は、金属塩の存在下で高まるため、1,2-ジオキセタン誘導体と酵素との反応効率も高めることができる。
【0032】
酵素活性の観点から、金属塩としては、2価の金属塩であることが好ましい。
2価の金属元素としては、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、鉄、バリウム等が挙げられる。
2価の金属塩としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化鉄等が挙げられる。
これらの中でも、測定感度の観点から、金属塩としては、マグネシウム塩であることが好ましく、塩化亜鉛及び塩化マグネシウムの少なくとも一方であることがより好ましく、塩化マグネシウムであることが更に好ましい。
金属塩は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
金属塩の含有量としては、通常用いる範囲であれば特に制限はない。酵素反応速度の観点から、0.5mM~2mMであることが好ましく、0.5mM~1mMであることがより好ましい。
【0034】
<特定化合物>
本発明の試薬組成物は、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)及び2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)(特定化合物)、並びに、非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を含む。
特定化合物は、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン構造部分に作用し、ジオキセタン構造の分解(ジオキセタン環の開環)の抑制に寄与すると推察される。
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体と特定化合物とを含むことで、長期保存安定性に優れる。
【0035】
長期保存安定性の観点から、特定化合物としては、CHES及びCAPSOの少なくとも一方であることが好ましく、CHESであることがより好ましい。
特定化合物が、例えば、環構造などの疎水性を示す構造を有する場合、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン環の開環を更に抑制することが可能となる。
【0036】
特定化合物のpHは、特に制限されず、目的により適宜調整することができる。
特定化合物のpHとしては、例えば、7~12の範囲であることが好ましく、8~11の範囲であることがより好ましい。
【0037】
長期保存安定性の観点から、特定化合物の含有量としては、0.05M~3Mであることが好ましく、0.1M~2Mであることがより好ましい。
【0038】
<非イオン性界面活性剤>
本発明の試薬組成物は、特定化合物及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方を含む。非イオン性界面活性剤は、構造中に疎水性領域と親水性領域とを有するので、1,2-ジオキセタン誘導体に作用し、1,2-ジオキセタン誘導体のジオキセタン構造部分の分解を抑制すると推察される。
本発明の試薬組成物は、1,2-ジオキセタン誘導体と非イオン性界面活性剤とを含むことで、長期保存安定性に優れる。
【0039】
非イオン性界面活性剤としては、1,2-ジオキセタン誘導体の分解を抑制できるものであれば特に制限されない。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルイミダゾリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0040】
ポリオキシエチレンアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンパラクミルフェニルエーテルが挙げられる。
これらの中でも、長期保存安定性の観点から、ポリオキシエチレンアリールエーテルとしては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルの少なくとも一方であることが好ましい。
【0041】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテルが挙げられる。
これらの中でも、長期保存安定性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が12~14であるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
【0042】
これらの中でも、長期保存安定性の観点から、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの少なくとも一方であることが好ましく、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0043】
非イオン性界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、商品名「Triton(登録商標) X-100」、「Triton(登録商標) X-405」(以上、ダウ・ケミカル社製)、「ニューコール703」、「ニューコール704」、「ニューコール706」、「ニューコール707」、「ニューコール708」、「ニューコール709」、「ニューコール710」、「ニューコール711」、「ニューコール712」(以上、日本乳化剤株式会社製)、「ノイゲンEA-87」、「ノイゲンEA-137」、「ノイゲンEA-157」、「ノイゲンEA-167」、「ノイゲンEA-177」、「ノイゲンEA-197D」、「ノイゲンEA-207D」(以上、第一工業製薬株式会社製)、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」(以上、花王株式会社製)が挙げられる。
【0044】
非イオン性界面活性剤の分子量は特に制限されない。非イオン性界面活性剤の分子量は、例えば、数平均分子量で40~10000であることが好ましく、50~1000であることがより好ましい。
【0045】
長期保存安定性の観点から、非イオン性界面活性剤の含有量としては、組成物の全質量に対して、0.05M~3Mであることが好ましく、0.1M~2Mであることがより好ましい。
【0046】
<化学発光増強剤>
本発明の試薬組成物は、更に化学発光増強剤(以下、「エンハンサー」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。
本明細書において化学発光増強剤とは、1,2-ジオキセタン誘導体の化学発光を増強する作用をもつ化合物を示す。
1,2-ジオキセタン誘導体の化学発光の増強作用の有無は、例えば、化学発光増強剤を用いずに化学発光させた場合の発光強度と、化学発光増強剤を用いて化学発光させた場合の発光強度とを、それぞれ検出装置(発光光度計)で測定し、それぞれの発光強度の値を比較して確認することができる。
【0047】
化学発光増強剤としては、例えば、ポリ(ビニルベンジルトリブチルアンモニウムクロライド)(TBQ)、ポリ[ビニル(ベンジルジメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド)(TEQ)、ポリ(ベンジルトリブチル)アンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩ポリマー、フルオレセイン等が挙げられる。
これらの中でも、化学発光増強剤としては、発光強度の観点から、4級アンモニウム塩ポリマーであることがより好ましく、検出感度の点から、ポリ(ベンジルトリブチル)アンモニウムクロリドを含む市販品である、Emerald-IITM(TROPIX社製)であることが好ましい。
【0048】
化学発光増強剤の含有量としては、通常用いる範囲であれば特に制限はなく、所望する発光強度に応じて適宜調整することが可能である。
【0049】
<その他の添加剤>
本発明の試薬組成物は、必要に応じて、前記化合物以外のpH調整剤、保存安定性を確保するためにアジ化ナトリウム等の保存剤などの添加剤を適宜含有していてもよい。
【0050】
pH調整剤としては、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
本発明の試薬組成物は、AMPPD(登録商標)、CDP-Star(登録商標)及びCSPD(登録商標)からなる群より選択される少なくとも1種の1,2-ジオキセタン誘導体と(より好ましくはCDP-Star(登録商標)及びCSPD(登録商標)の少なくとも一方であり、更に好ましくはCDP-Star(登録商標)である。)、2価の金属塩と(より好ましくは塩化亜鉛及び塩化マグネシウムの少なくとも一方であり、更に好ましくは塩化マグネシウムである。)、CHES及びCAPSO、並びに、ポリオキシエチレンアリールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種と(より好ましくはCHES及びオクチルフェノールエトキシレートの少なくとも一方である。)、を含有することが好ましい。
【0052】
本発明の試薬組成物は、検体又は試料中に含まれる検出対象成分の検出及び定量を目的とする測定法に適用することができる。中でも、本発明の試薬組成物は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)に好適に用いることができる。
【0053】
化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)における検出対象成分としては、特に制限されず、例えば、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺ホルモン(TSH)等のホルモン、AFP、CEA等の癌関連物質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)等のウイルス抗原並びにその抗体及び核酸(DNA及びRNA)等を挙げられる。
【0054】
本発明の試薬組成物を用いて化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)により、検出対象成分を検出又は測定する方法としては、例えば以下の工程を含む方法が挙げられる。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
上記検出対象成分を検出する方法としては、例えば、検出対象成分が抗原である場合、抗原に対して特異的に結合する抗体を予め固相化(固相化抗体)させておき、この固相化抗体と、検出対象成分である抗原を含む試料と、抗原に対して特異的に結合する抗体を酵素標識した抗体(酵素標識抗体)と、を混合する工程と、未反応の酵素標識抗体を洗浄分離した後に、本発明の試薬組成物を加える工程と、1,2-ジオキセタン誘導体の分解による発光量を測定する工程と、を経ることで検出対象成分を検出することができる。
1,2-ジオキセタン誘導体の分解による発光量は、酵素量、すなわち、検出対象成分と結合した酵素標識抗体の量に比例して増加するため、発光量を測定することにより、検出対象成分を定量することができる。
【0056】
化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)における検体又は試料として、特に制限はなく、例えば、ヒト及び動物の血液、尿、唾液、血清、血漿、糞便等が挙げられる。
【0057】
抗原と固相化抗体との反応時間は、抗原と固相化抗体とが反応できれば特に制限はなく、例えば、1分間~30分間であってもよい。
このときの反応温度としては、抗原と固相化抗体とが反応可能であれば特に制限はなく、例えば4℃~40℃であり、反応効率の観点から、好ましくは25℃~38℃である。
【0058】
固相化抗体及び酵素標識酵素に用いる抗体は、例えば、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。
抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、ニワトリ等の鳥類、ヒト等の動物種由来のものでもよく、特に制限されない。また、抗体としては、例えば、動物種由来の血清から、従来公知の方法により作製してもよく、あるいは市販の各種抗体を利用してもよく、特に制限されない
【0059】
固相化抗体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
固相としては、例えば、磁性粒子、ビーズ、プレート等が挙げられる。後述のB/F分離を行いやすい観点から、固相化抗体としては、磁性粒子に固相化された抗体であることが好ましい。
固相化抗体は、従来公知の方法により固相化した固相化抗体を用いてもよく、又は、市販の固相化抗体を利用してもよい。
【0060】
酵素標識抗体における酵素としては、特に制限されず、例えば、パーオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリフォスファターゼ(AP)が挙げられる。
取り扱い易さ、入手し易さ等の観点から、酵素としては、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリフォスファターゼ(AP)であることが好ましい。
酵素標識する方法は、特に制限されず、例えば、従来公知の方法を用いて酵素標識してもよい。
【0061】
未反応の酵素標識抗体を洗浄する方法としては、抗体と結合している抗原(Bond)と、抗体と結合していない抗原(Free)とが分離(B/F分離)できれば特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
B/F分離の方法としては、比重差を利用した遠心分離、溶解度差を利用して沈降法、磁気を利用した分離法等が挙げられる。
【0062】
B/F分離の回数としては、特に制限はなく、例えば、1回~5回、より好ましくは3回~4回程度である。
【0063】
固相化抗体と抗原と酵素標識抗体とを混合する時間としては、固相化抗体と抗原と酵素標識抗体とを含む複合体が形成可能であれば特に制限はなく、例えば1分~30分間程度であり、好ましくは1分~5分間程度である。
【0064】
固相化抗体と抗原と酵素標識抗体とを混合する温度としては、固相化抗体と抗原と酵素標識抗体とを含む複合体が形成可能であれば特に制限はなく、例えば4℃~40℃であり、好ましくは25℃~38℃である。
【0065】
1,2-ジオキセタン誘導体の分解による発光量の測定は、検出装置(発光光度計)を用いて測定することができる。
その際に、発光量の測定の開始点及び積算時間は任意であるが、発光量が安定し且つ発光量の濃度依存性の高い時間を選択することが好ましい。
例えば、測定開始点は、上記複合体と試薬組成物又は特定試薬とを混合した後、0~1時間、好ましくは0~30分、特に好ましくは0~15分であり、測定の積算時間は1秒~1分、好ましくは1秒~30秒、特に好ましくは1秒~10秒である。
【0066】
《化学発光試薬キット》
本発明の化学発光試薬キットは、本発明の試薬組成物と、酵素と、を含む。
化学発光試薬キットは、本発明の試薬組成物を含むので、1,2-ジオキセタン誘導体の分解が抑制される。そのため、化学発光試薬キットは長期保存安定性に優れ、化学発光試薬キットを用いて化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を行った場合、検出対象成分を高感度に検出することができる。
【0067】
なお、本発明の化学発光試薬キットに含まれる試薬組成物は、既述の試薬組成物の各成分と同様であり、好ましい例、好ましい量、及び、好ましい組合せも同様である。
【0068】
本発明の化学発光試薬キットに含まれる酵素としては、1,2-ジオキセタン誘導体と反応して、化学発光に寄与する酵素であれば特に制限されない。このような酵素としては、例えば、パーオキシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリフォスファターゼ(AP)が挙げられる。
【0069】
本発明の試薬組成物又は化学発光試薬キットは、1,2-ジオキセタン誘導体が分解されにくいので、長期保存安定性に優れる。そのため、測定対象成分を高感度に検出することが可能であり、臨床検査分野等に好適に適用することが可能である。
【実施例
【0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
<化学発光試薬溶液の調製>
最終濃度が10質量%となるように、化学発光基質溶液(商品名;CDP-StarTM Substrate(0.4mM Ready-To-Use) with Emerald-IITM Enhancer、 Size A、Tropix社製、製品番号:T2216)2mLを、0.1MのCHES緩衝剤(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)及び1mMの塩化マグネシウムを含む緩衝剤(pH9.5)18mLに混合し、化学発光試薬溶液を調製した。
【0072】
上記で調製した化学発光試薬溶液を25℃に設定した恒温槽で28日間保存した。
保存開始を0日目とし、0日目並びに保存開始後14日目及び28日目の化学発光試薬溶液をそれぞれ評価用試験液とした。この評価用試験液を化学発光基質として用いて、下記測定方法により甲状腺ホルモン(TSH)を測定し、長期保存安定性の評価を行った。
【0073】
[評価]
<CLEIAによる甲状腺ホルモン(TSH)の測定>
反応容器にTSH抗体を感作させた磁性微粒子を含む溶液(固相化抗体)50uLを移し、アルカリフォスファターゼ(ALP)で標識したTSH抗体(標識酵素抗体)を含む溶液を50μL添加した。
次いで、30μIU/mLのTSH抗原を含む標準液を50μL添加し、37℃で5分間反応させて、酵素標識抗体とTSH抗原と固相化抗体とを含む複合体を形成させた。
反応後、反応容器にTBST(Tris Buffered Saline with Tween 20;50mM Tris-HCl、150mM NaCl pH7.4、0.05% Tween20)を加えて洗浄した。洗浄を3回繰り返して、未反応の酵素標識抗体をB/F分離したのち、反応容器に化学発光基質として評価用試験液を155μL添加して、上記複合体と化学発光反応させた。
化学発光反応より得られる発光量を、プレートリーダー(製品名;マルチモードプレートリーダDTXシリーズ DTX 800、日本モレキュラーデバイス株式会社製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
なお、保存開始0日目の化学発光試薬溶液を用いてTSHを測定したときの発光量を100%とした。
【0074】
(実施例2又は実施例3並びに比較例1~比較例4)
実施例1において、CHES緩衝剤を、表1に示す希釈液に変更した以外は実施例1と同様にして化学発光試薬溶液を調製し、同様の条件で28日間保存した。所定期間保存した化学発光試薬溶液を評価用試験液とし、この評価用試験液を化学発光基質として用いて、実施例1と同様の測定方法でTSHを測定し、長期保存安定性の評価を行った。結果を表1又は表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1における略号は以下の通りである。
・CHES緩衝剤(0.1M N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)
・AMPD緩衝剤(0.1M 2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールpH9.5)
・CAPSO緩衝剤(0.1M N-シクロヘキシル-2-ヒドロキシル-3-アミノプロパンスルホン酸ナトリウム、pH9.5)
【0077】
【表2】
【0078】
表2における略号は以下の通りである。なお、表2中の「-」は、測定結果がないことを意味する。
・DEA緩衝剤(ジエタノールアミン、pH9.5)
・Bicine緩衝剤(0.1M N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンナトリウム、pH9.5)
・Tris緩衝剤(0.1M トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸、pH9.5)
・AMPSO緩衝剤(0.1M 3-[(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、pH9.5)
【0079】
(実施例4)
<化学発光試薬溶液の調製>
化学発光基質溶液(商品名;CDP-StarTM Substrate (0.4 mM Ready-To-Use) with Emerald-IITM Enhancer Size A、Tropix社製、製品番号:T2216)2mLを0.25mMのTriton-X405(非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル)及び1mMの塩化マグネシウムを含む0.1M ジエタノールアミン緩衝剤(pH9.5)18mLを混合した溶液に溶解し、化学発光試薬溶液を調製した。
【0080】
上記で調製した化学発光試薬溶液を25℃条件下で28日間保存した。保存開始を0日目とし、0日目並びに保存開始後7日目、14日目及び28日目の化学発光試薬溶液をそれぞれ評価用試験液とした。この評価用試験液を化学発光基質として用いて、実施例1と同様の測定方法で、TSHを測定し、長期保存安定性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0081】
(実施例5~実施例8並びに比較例5及び比較例6)
実施例4において、Triton-X405を、表2に示す希釈液に変更した以外は実施例4と同様にして化学発光試薬溶液を調製し、この評価用試験液を化学発光基質として用いて、実施例4と同様の測定方法でTSHを測定し、長期保存安定性の評価を行った。
なお、比較例5では、希釈液を添加せずに、1mMの塩化マグネシウムを含む0.1M ジエタノールアミン緩衝剤(pH9.5)に化学発光基質溶液を溶解させて、化学発光試薬溶液を調製した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3における略号は以下の通りである。なお、表3中の「-」は、測定結果がないことを意味する。
・Triton-X405(ポリオキシエチレン(40)オクチルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)、0.25mM)
・Triton-X100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)、0.25mM)
・ニューコール710(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(ポリオキシエチレンアリールエーテル)、0.25mM、日本乳化剤株式会社製)
・エマルゲン705(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、0.25mM、花王株式会社製)
・PEG2000(ポリエチレングリコール、0.05質量%、平均重量分子量2000、商品名;ポリエチレングリコール#20,000、ナカライテスク株式会社製)
【0084】
表1~表3に示されるように、1,2-ジオキセタン誘導体と、金属塩と、特定化合物及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方と、を含む実施例1~実施例7の試薬組成物は、長期保存した場合であっても、特定化合物又は非イオン性界面活性剤を含有しない比較例1~比較例6の試薬組成物と比べて、発光量が維持されていることが分かる。
従って、本発明の試薬組成物は、長期保存安定性に優れることがわかる。