IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図1A
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図1B
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図2A
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図2B
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図3
  • 特許-ユニバーサルジョイント 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ユニバーサルジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/41 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
F16D3/41 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017219710
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2019090481
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】重野 友
(72)【発明者】
【氏名】高梨 靖史
(72)【発明者】
【氏名】新田 宙輝
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-191973(JP,A)
【文献】特開2013-221577(JP,A)
【文献】特開2009-216220(JP,A)
【文献】実開平6-73461(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/38- 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字状に突出する4つの軸部を有する十字軸部材と、
前記軸部に揺動可能に連結される一対のヨークと、
を備えたユニバーサルジョイントであって、
前記ヨークは、
駆動シャフト又は従動シャフトの端面に対し、締結部材により固定されるヨーク基部と、
前記ヨーク基部の一面側から二股状に突出する部位であって、前記軸部を挿入可能に貫通形成された軸受孔を有する一対のアームと、
を備え、
前記ヨーク基部は、前記軸受孔の中心軸線方向から見た前記アームの幅方向両側に設けられ、前記締結部材の座面となる平坦面状の座面部を備え、
前記アームは、
前記軸受孔のうち前記アームの突出方向先端側を形成するアーム先端部と、
前記軸受孔のうち前記アームの突出方向基端側を形成するアーム基端部と、
を備え、
前記アーム基端部は、
前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅寸法が、前記軸受孔の中心軸線方向から見たアーム先端部の最大幅寸法よりも小さい逃がし部と、
前記ヨーク基部と前記逃がし部とを接続する部位であって、前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅方向両側の側面に形成された円弧状の第一R面を有する第一接続部と、
前記アーム先端部と前記逃がし部とを接続する部位であって、前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅方向両側の側面に形成された円弧状の第二R面を有する第二接続部と、
を備え、
前記逃がし部の幅寸法に対する前記第一R面の曲率半径の比は、0.14以上であり、
前記アームを挟んだ幅方向両側に形成される前記座面部の間隔は、前記アーム先端部の最大幅寸法よりも大きい、ユニバーサルジョイント。
【請求項2】
前記逃がし部の横幅寸法に対する前記第一接続部の曲率半径の比は、0.35以下である、請求項1に記載のユニバーサルジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニバーサルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トランスミッションの出力軸に連結された第1ヨークと、プロペラシャフトに固定された第2ヨークと、第1ヨーク又は第2ヨークを揺動可能に支持する十字軸部材とを備えたユニバーサルジョイント(第1自在継手)が開示されている。第1ヨークは、四隅に4つのボルト挿通孔が形成された取付フランジと、取付フランジから突出した二股状のヨーク部とを備える。取付フランジは、トランスミッションの出力軸に対し、スタッドボルト及びナットにより固定され、取付フランジの一面側には、ボルト挿通孔の周囲に、ナットが着座する平坦な4つのナット着座部が形成される。また、十字軸部材には、十字状に突出する4つの軸部が形成され、ヨーク部には、軸部が挿入される軸受孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-208919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、部品を小型化したいとの要請がある。ユニバーサルジョイントの小型化を図るにあたり、取付フランジを小さくするには、4つのナット着座部の間隔を狭くする必要がある。そして、ナット着座部の間隔を狭くするには、ヨーク部の幅寸法を小さくし、ナット着座部に着座するナットとヨーク部との干渉を回避する必要がある。
【0005】
しかしながら、ヨーク部と取付フランジとの接続部位は、トランスミッションの出力軸の回転を十字軸部材に伝達する際に発生する応力が最大となる部位であるのに対し、ヨーク部の幅寸法を小さくすると、ヨーク部の剛性が低下し、ヨークは、十分な強度を確保できない。このように、従来のユニバーサルジョイントは、強度の確保と小型化との両立を図ることが困難であった。
【0006】
本発明は、強度を維持しつつ、小型化を図ることができるユニバーサルジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のユニバーサルジョイントは、十字状に突出する4つの軸部を有する十字軸部材と、前記軸部に揺動可能に連結される一対のヨークと、を備える。前記ヨークは、駆動シャフト又は従動シャフトの端面に対し、締結部材により固定されるヨーク基部と、前記ヨーク基部の一面側から二股状に突出する部位であって、前記軸部を挿入可能に貫通形成された軸受孔を有する一対のアームと、を備える。前記ヨーク基部は、前記軸受孔の中心軸線方向から見た前記アームの幅方向両側に設けられ、前記締結部材の座面となる平坦面状の座面部を備え、前記アームは、前記軸受孔のうち前記アームの突出方向先端側を形成するアーム先端部と、前記軸受孔のうち前記アームの突出方向基端側を形成するアーム基端部と、を備える。前記アーム基端部は、前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅寸法が、前記軸受孔の中心軸線方向から見たアーム先端部の最大幅寸法よりも小さい逃がし部と、前記ヨーク基部と前記逃がし部とを接続する部位であって、前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅方向両側の側面に形成された円弧状の第一R面を有する第一接続部と、前記アーム先端部と前記逃がし部とを接続する部位であって、前記軸受孔の中心軸線方向から見た幅方向両側の側面に形成された円弧状の第二R面を有する第二接続部と、を備え、前記逃がし部の幅寸法に対する前記第一R面の曲率半径の比は、0.14以上であり、前記アームを挟んだ幅方向両側に形成される前記座面部の間隔は、前記アーム先端部の最大幅寸法よりも大きい
【0008】
本発明のユニバーサルジョイントによれば、アーム基端部は、第一R面と第二R面とを備えているので、ヨークは、逃がし部に発生する応力を第一R面と第二R面とに分散することができる。従って、ヨークは、逃がし部の幅寸法を小さくしたとしても、第一R面に発生する応力の増大を抑制できる。さらに、ヨークは、逃がし部の幅寸法に対する第一R面の曲率半径の比が0.14以上となるようにアーム基端部を形成する。これにより、ヨークは、逃がし部に発生した応力を、第一R面と第二R面とに対して均等に分散することができる。よって、ユニバーサルジョイントは、ヨークの強度を維持しつつ、ヨークの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の一実施形態におけるユニバーサルジョイントの部分拡大図である。
図1B図1AのIB-IB線におけるユニバーサルジョイントの部分拡大断面図である。
図2A】ヨークを軸受孔の中心軸線方向から見た図である。
図2B】ヨークの平面図である。
図3】第一R面の曲率半径と第一R面及び第二R面に発生する応力との関係を示すグラフである。
図4】第一R面の曲率半径と第一R面及び第二R面に発生する応力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るユニバーサルジョイントを適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、図1A及び図1Bを参照して、本発明の一実施形態であるユニバーサルジョイント1の概略を説明する。ユニバーサルジョイント1は、駆動シャフト2と従動シャフト(図示せず)との間に連結され、駆動シャフト2の回転を従動シャフトに伝達する。
【0011】
(1.ユニバーサルジョイント1の概略)
図1及び図2に示すように、ユニバーサルジョイント1は、十字軸部材10と、一対のヨーク20と、4つの軸受カップ30とを主に備える。十字軸部材10は、胴部11と、4つの軸部12とを備える。4つの軸部12は、胴部11から十字状に突出する部位である。各々の軸部12は、円柱状の部位に形成される。
【0012】
一対のヨーク20は、駆動シャフト2又は従動シャフト(図示せず)に固定される。具体的に、一対のヨーク20のうち、一方のヨーク20は、駆動シャフト2の端面2aに対し、他方のヨーク20は、従動シャフトの端面(図示せず)に対し、それぞれ締結部材としてのボルト3及びナット4により固定される。また、各々のヨーク20には、軸部12を挿入可能な2つの軸受孔21が貫通形成される。なお、ヨーク20の詳細については、図2A及び図2Bを参照しながら後述する。
【0013】
軸受カップ30は、軸受孔21に圧入可能な有底筒状に形成される。4つの軸受カップ30は、4つの軸部12の各々に被せられる。そして、軸受カップ30の内周面と軸部12の外周面との間には、ニードルベアリング40が設けられる。これにより、一対のヨーク20は、十字軸部材10の各々の軸部12に対し、軸受カップ30及びニードルベアリング40を介して揺動可能に連結される。
【0014】
(2.ヨーク20の形状について)
次に、ヨーク20の形状について詳細に説明する。図2A及び図2Bに示すように、ヨーク20は、ヨーク基部60と、一対のアーム70とを備える。ヨーク基部60は、駆動シャフト2の端面2a(図1A参照)又は従動シャフトの端面(図示せず)に固定される板状の部位である。
【0015】
ヨーク基部60は、ヨーク基部60の一面側(図3A上面側)に形成される4つの座面部61と、平面視において各々の座面部61の中心部分に貫通形成される4つのボルト孔62とを備える。座面部61は、駆動シャフト2の端面2a又は従動シャフトの端面にヨーク基部60を固定する際に、ナット4の座面となる平坦面状の部位であり、4つの座面部61は、平面視におけるヨーク基部60の四隅に設けられる。また、座面部61は、軸受孔21の中心軸線O方向から見た場合に、アーム70を挟んだ幅方向(図3A左右方向)両側に位置する。
【0016】
ヨーク基部60は、ヨーク基部60の他面側(図3A下面側)を駆動シャフト2の端面2a(図1A参照)又は従動シャフトの端面に当接させた状態で、駆動シャフト2の端面2a又は従動シャフトの端面からボルト孔62にボルト3を挿入する。そして、ヨーク基部60の一面側からナット4をボルト3に螺合させることにより、ヨーク基部60は、駆動シャフト2の端面2a又は従動シャフトの端面に締付固定される。
【0017】
一対のアーム70は、ヨーク基部60の一面側から二股状に突出する部位である。各々のアーム70は、アーム先端部71と、アーム基端部72とを備える。アーム先端部71は、軸受孔21のうちアーム70の突出方向先端側部分(図3A上側部分)を形成するC形状の部位である。アーム基端部72は、ヨーク基部60とアーム先端部71との間に形成される部位であって、軸受孔21のうちアーム70の突出方向基端側部分(図3A下側部分)を形成する。
【0018】
そして、アーム基端部72は、逃がし部73と、第一接続部74と、第二接続部75とを備える。第一接続部74は、ヨーク基部60と逃がし部73とを接続し、第二接続部75は、アーム先端部71と逃がし部73とを接続する。また、軸受孔21の中心軸線O方向から見た逃がし部73の幅寸法W1は、アーム先端部71の最大幅寸法W2よりも小さな寸法に設定される。さらに、軸受孔21の中心軸線O方向から見た第一接続部74の幅方向両側の側面には、円弧状の第一R面76が形成され、軸受孔21の中心軸線O方向から見た第二接続部75の幅方向両側の側面には、円弧状の第二R面77が形成される。
【0019】
ここで、軸受孔21の中心軸線O方向から見てアーム70を挟んだ幅方向両側に設けられた2つの座面部61の間隔Iは、逃がし部73の幅寸法W1と第一R面76の曲率半径R1の2倍とを合わせた寸法となる(I=W1+R1×2)。従って、アーム基端部72は、第一R面76の曲率半径R1を大きな寸法にするほど逃がし部73の幅寸法W1が小さくなる一方、逃がし部73の幅寸法W1を大きな寸法に設定するほど第一R面76の曲率半径R1が小さくなる。
【0020】
この点に関し、図3に示すグラフを参照しながら、第一R面76の曲率半径R1と第一R面76及び第二R面77に発生する応力との関係について説明する。図3に示すグラフは、ヨーク基部60の一面側から軸受孔21の中心軸線Oまでの高さHが29mmであるヨーク20において、第一R面76の曲率半径R1を1mm、2.5mm、4mm、5.5mm及び7mmのそれぞれに設定した場合に、第一R面76及び第二R面77に発生した応力の測定結果を示す。なお、第二R面77の曲率半径は、いずれも一定である。図3に示すグラフの横軸は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比(R1/W1)であり、数値が大きいほど第一R面76の曲率半径R1が大きくなることを示す。
【0021】
図3に示すグラフによれば、R1/W1の値が0.03(R1が1mm)のとき、第一R面76に発生した応力は689MPa、第二R面77に発生した応力は146MPaであった。これに対し、R1/W1の値が0.09(R1が2mm)のとき、第一R面76に発生した応力は534MPa、第二R面77に発生した応力は313MPaであった。このように、R1/W1の値が0.09であるヨーク20は、R1/W1の値が0.03であるヨーク20と比べて、逃がし部73に発生する応力が第一R面76と第二R面77とに対し、均等に分散されたことがわかる。
【0022】
また、R1/W1の値が0.09であるヨーク20は、R1/W1の値が0.03であるヨーク20と比べて、逃がし部73の幅寸法を小さくしたにも関わらず、第一R面76に発生する応力が低下したことがわかる。この点において、ヨーク20は、逃がし部73の幅寸法を小さくしたとしても、第一R面76の曲率半径R1が確保されることにより、第一R面76に発生する応力を低下させることができると推測できる。
【0023】
R1/W1の値が0.14(R1が4mm)のとき、第一R面76に発生した応力は552MPa、第二R面77に発生した応力は483MPaであった。R1/W1の値が024(R1が5.5mm)のとき、第一R面76に発生した応力は552MPa、第二R面77に発生した応力は528MPaであった。R1/W1の値が0.35(R1が7mm)のとき、第一R面76に発生した応力は615MPa、第二R面77に発生した応力は606MPaであった。このように、R1/W1の値が0.14,0.24又は0.35であるヨーク20は、R1/W1の値が0.09であるヨーク20と比べて、逃がし部73に発生する応力が第一R面76と第二R面77とに対し、より均等に分散されたことがわかる。
【0024】
なお、第一R面76及び第二R面77に発生する応力は、R1/W1の値の上昇に伴って上昇する。これは、逃がし部73の幅寸法W1が小さくなることにより、逃がし部73の剛性が低下したことが原因であると推測される。しかしながら、R1/W1の値が0.14又は0.24であるヨーク20とR1/W1の値が0.09であるヨーク20との比較において、R1/W1の値の上昇に伴って第一R面76に発生する応力の上昇幅は、第二R面77に発生する応力の上昇幅と比べて小さい。これは、第一R面76の曲率半径R1が大きくなることで、第一R面77への応力集中が軽減された分、第二R面77に発生する応力が増大したことが要因であると考えられる。このように、ヨーク20は、逃がし部73の幅寸法を小さくしたとしても、第一R面76の曲率半径R1が確保されることにより、第一R面76に発生する応力の増加を抑制できると推測できる。
【0025】
その一方、R1/W1の値を0.24から0.35に変更した場合に第一R面76に発生する応力の差は、R1/W1の値を0.14から0.24に変更した場合に第一R面76に発生する応力の差と比べて、かなり大きくなる。これは、逃がし部73に発生する応力が第一R面76と第二R面77とに均等に分散させることができる一方で、逃がし部73の幅寸法W1が小さくなったことで、逃がし部73の全体に発生する応力が増大したことが原因であると推測される。即ち、逃がし部73の幅寸法W1を過度に小さくすると、第一R面76及び第二R面77のそれぞれに発生する応力の絶対値が大きくなり、アーム20は、強度を十分に確保することが困難になると考えられる。
【0026】
このように、ヨーク20は、アーム基端部72に第二R面77を形成することにより、逃がし部73の幅寸法W1を小さくしたとしても、第一R面76に発生する応力の増大を抑制することができる。その結果、ヨーク20は、アーム70を挟んだ両側に形成する2つの座面部61の間隔Iを小さくしたとしても、ヨーク20の強度を維持でき、ユニバーサルジョイント1は、強度を維持しつつ、小型化を図ることができる。
【0027】
続いて、図4に示すグラフを参照しながら、第一R面76の曲率半径と第一R面76及び第二R面77に発生する応力との関係について説明する。図4に示すグラフは、ヨーク基部60の一面側から軸受孔21の中心軸線Oまでの高さHが異なるヨーク20を用いて、第一R面76の曲率半径R1を1mm、2.5mm、4mm、5.5mm及び7mmのそれぞれに設定した場合に、第一R面76及び第二R面77に発生した応力の測定結果を示す。図4に示すグラフの縦軸は、第二R面77に発生する応力に対する第一R面76に発生する応力の比(以下、単に「応力比」と称す)であり、縦軸の値が1に近いほど、逃がし部73に発生した応力が第一R面76と第二R面77とに均等に分散されたことを示す。
【0028】
図4に示す4つのグラフのうち、左上に示すグラフは、ヨーク基部60の一面側から軸受孔21の中心軸線Oまでの高さHを23mmに設定して測定した結果を示す。また、右上に示すグラフは、高さHを25mmに、左下に示すグラフは、高さHを27mmに、右下に示すグラフは、高さHを29mmに、それぞれ設定して測定した結果を示す。また、4つのグラフには、第二R面77の曲率半径R2を3mmとするヨーク20を用いた測定結果が、R1/W1の値ごとに示されている。これに加えて、左上に示すグラフ及び右下に示すグラフには、第一R面76の曲率半径R1を2.5mm(R1/W1=0.09)及び7mm(R1/W1=0.35)、第二R面77の曲率半径R2を2mm及び5mmに設定したヨーク20を用いた測定結果も併せて示されている。
【0029】
図4に示すように、R1/W1の値の0.03であるヨーク20の応力比は、高さHが何れの値をとる場合であっても、3を超える。即ち、R1/W1の値の0.03であるヨーク20は、逃がし部73に発生した応力が第一R面76に集中し、第二R面77への分散が十分に行われなかったことを示す。これは、第一R面76の曲率半径R1の絶対値が小さいこと、及び、第一R面76の曲率半径R1が第二R面77の曲率半径R2よりも小さいことが要因として考えられる。
【0030】
R1/W1の値の0.09であるヨーク20の応力比は、高さHが何れの値をとる場合であっても、R1/W1の値の0.03であるヨーク20の応力比よりも小さくなった。これは、R1/W1の値の0.03であるヨーク20との比較において、第一R面76の曲率半径R1が大きくなり、第一R面76への応力集中が軽減されたことが原因として挙げられる。
【0031】
また、R1/W1の値の0.09であるヨーク20の応力比は、H=23mm,25mm及び27mmの何れかの値をとる場合に、2を下回る一方、高さHがH=29mmのときの応力比は、2を大きく上回る。これは、高さHが大きくなるほど、第一R面76に応力が集中しやすくなる傾向があると考えられる。よって、R1/W1の値の0.09であるヨーク20は、R1/W1の値の0.03であるヨーク20との比較において、高さHが27mm以下であれば、逃がし部73に発生する応力を第一R面76と第二R面77とに分散させる効果があると考えられる。
【0032】
高さHが29mm、R1/W1の値の0.09であるヨーク20において、第二R面77の曲率半径R2が5mmであるヨーク20は、第二R面77の曲率半径R2が2mm又は3mmであるヨーク20と比べて、応力比が大きくなった。これに対し、高さHが23mm、R1/W1の値の0.09であるヨーク20において、第二R面77の曲率半径R2の違いが応力比に及ぼす影響は、ほとんど見られなかった。これは、高さHが大きくなるほど、第一R面76に応力が集中しやすくなることに加え、第二R面77の曲率半径R2を大きくしたことにより、逃がし部73に発生した応力が第二R面77に分散されにくくなった結果、第一R面76への応力集中度合が大きくなったと考えられる。
【0033】
R1/W1の値の0.14,0.24又は0.35であるヨーク20の応力比は、高さHが何れの値をとる場合であっても、R1/W1の値の0.09であるヨーク20の応力比よりも1に近い値をとった。この点において、第一R面76の曲率半径R1が一定以上の寸法になると、概ね1に近くなると推測される。具体的に、ヨーク20は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比が0.14以上である場合に、逃がし部73に発生する応力を第一R面76と第二R面77とにほぼ均等に分散できると推測できる。
【0034】
なお、R1/W1の値の0.35であるヨーク20は、高さHが23mm及び29mmである場合においても、第二R面77の曲率半径R2の違いが応力比に及ぼす影響は、ほとんど見られなかった。これは、第一R面76の曲率半径R1の絶対値が大きく、第一R面76の曲率半径R1が第二R面77の曲率半径R2よりも大きいことにより、逃がし部73に発生する応力が第二R面77に分散されやすくなったと考えられる。
【0035】
このように、ユニバーサルジョイント1は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比が0.09以上となるようにアーム基端部72を形成する。これにより、アーム70は、逃がし部73の幅寸法を小さくしたとしても、逃がし部73に発生する応力が第二R面77に分散されるので、第一R面76に発生する応力の増大を抑制できる。そして、ユニバーサルジョイント1は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比を0.14以上とすることで、逃がし部73に発生する応力を第一R面76と第二R面77とに対し、より均等に分散できる。その結果、ユニバーサルジョイント1は、ヨーク20の強度維持と小型化との両立を図ることができる。
【0036】
また、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比は、0.35以下に設定することが望ましい。即ち、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比が0.35を超えると、逃がし部73の幅寸法W1が過度に小さくなり、アーム基端部72の剛性を十分に確保することができなくなる。従って、アーム70は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比を0.35にすることにより、アーム70の強度を維持できる。
【0037】
また、アーム70は、逃がし部73の幅寸法W1が、軸受孔21の中心軸線O方向から見たアーム先端部71の最大幅寸法W2よりも小さな寸法に設定されるので、ナット4(図1A参照)と逃がし部73との間に隙間を設けることができる。従って、ユニバーサルジョイント1は、ヨーク20を駆動シャフト2の端面2a又は従動シャフトの端面(図示せず)に固定する際の作業効率を向上させることができる。
【0038】
これに加え、軸受孔21の中心軸線O方向から見てアーム70の幅方向両側に形成される座面部61の間隔Iは、アーム先端部71の最大幅寸法W2よりも大きな寸法にすることが望ましい。これにより、ヨーク20は、ヨーク基部60の一面側からボルトにナットを締め付ける際に用いる工具とヨーク20との干渉を回避しやすくすることができる。よって、ユニバーサルジョイント1は、駆動シャフト2の端面2aにヨーク20を固定する際の作業効率を向上させることができる。
【0039】
以上説明したように、アーム基端部72は、第一R面76と第二R面77とを備えているので、ヨーク20は、逃がし部73に発生する応力を第一R面76と第二R面77とに分散することができる。従って、ヨーク20は、逃がし部73の幅寸法W1を小さくしたとしても、第一R面76に発生する応力の増大を抑制できる。
【0040】
さらに、ヨーク20は、逃がし部73の幅寸法W1に対する第一R面76の曲率半径R1の比が0.14以上となるようにアーム基端部72を形成する。この場合、ヨーク20は、逃がし部73に発生する応力を、第一R面76と第二R面77とに対して均等に分散することができるので、ユニバーサルジョイント1は、ヨーク20の強度を維持しつつ、ヨーク20の小型化を図ることができる。
【0041】
(3.その他)
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0042】
例えば、上記実施形態では、ヨーク20を駆動シャフト2の端面2aに固定する際に、駆動シャフト2側からボルト3をボルト孔62に挿入し、ヨーク20側からナット4をボルト3に螺合させる場合について説明したが、これに限られるものではない。即ち、ヨーク20を駆動シャフト2の端面2aに固定する際に、ヨーク20側からボルト3をボルト孔62に挿入し、駆動シャフト2側からナット4をボルト3に螺合させてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:ユニバーサルジョイント、 2:駆動シャフト、 3:ボルト(締結部材の一部)、 4:ナット(締結部材の一部)、 10:十字軸部材、 12:軸部、 20:ヨーク、 21:軸受孔、 軸受カップ、 60:ヨーク基部、 61:座面部、 70:アーム、 71:アーム先端部、 72:アーム基端部、 73:逃がし部、 74:第一接続部、 75:第二接続部、 76:第一R面、 77:第二R面、 I:アームを挟んだ幅方向両側に形成される座面部の間隔、 O:軸受孔の中心軸線、 R1:第一R面の曲率半径、 W1:逃がし部の幅寸法、 W2:アーム先端部の最大幅寸法
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4