(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】軒天板の見切構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/30 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
E04B9/30 E
(21)【出願番号】P 2017229371
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸子
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-047996(JP,U)
【文献】特開2013-147819(JP,A)
【文献】特開平11-182013(JP,A)
【文献】特開2000-204709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根において外壁よりも屋外側に張り出した軒部には前記外壁と軒先とに跨がるようにして軒天板が設けられ、
その軒天板の前記外壁側の端部に沿って延び、当該端部である外壁側端部を前記外壁側から覆う見切り材を備える軒天板の見切構造であって、
前記見切り材は、前記軒先側に向けて開放された溝部を有し、その溝部に前記外壁側端部を挿入させることで前記軒天板に取り付けられ、
前記溝部は、溝部開放側の第1部分と、その第1部分よりも溝部奥側であってかつ当該第1部分よりも溝幅が小さい第2部分とを有して
おり、
前記見切り材は、前記溝部を挟んで上下に対向する一対の対向板部を有し、
前記各対向板部のうちいずれか一方には、前記第2部分の前記溝幅を前記第1部分の前記溝幅よりも小さくさせる段差部が形成され、他方には前記段差部が形成されていないことを特徴とする軒天板の見切構造。
【請求項2】
前記各対向板部のうち、上側の対向板部に前記段差部が形成され、下側の対向板部には前記段差部が形成されていないことを特徴とする請求項
1に記載の軒天板の見切構造。
【請求項3】
前記外壁には、前記軒天板の前記外壁側端部に沿って所定間隔で設けられるとともに、当該外壁側端部を支持する複数の支持部材が固定され、
前記各支持部材は、前記外壁の外面に固定された固定板部と、その固定板部の下端部から前記軒先側に延びる延出板部とを有するL字状をなしており、
前記見切り材は、前記溝部としての第1溝部に加え、その第1溝部の下方に前記外壁側に開放された第2溝部を有しており、その第2溝部に前記各支持部材の前記延出板部を挿入させることでそれら各支持部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の軒天板の見切構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒天板の見切構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、屋根において外壁から屋外側に張り出した軒部の底部に軒天板が設けられている場合がある。軒天板は、外壁と屋根の軒先とに跨がるようにして設けられ、その両端部がそれぞれ外壁側及び軒先側において支持されるようになっている。
【0003】
軒天板は、その外壁側端部を外壁から離間させた状態で設けられる場合がある。この場合、軒天板の外壁側端部と外壁との間には所定の隙間が形成される。このため、その隙間を利用して軒天裏空間(軒天板の上方空間)の換気等を行うことが可能となる。
【0004】
このように、軒天板が外壁から離間した状態で設けられる場合、軒天板の外壁側端部には見切り材が取り付けられることがある。見切り材は、軒天板の外壁側端部に沿って延びる長尺状とされ、外壁側から上記外壁側端部を覆うようにして設けられる。
【0005】
見切り材は、例えば特許文献1に示されているように、軒先側に開放された溝部を有しており、その溝部に軒天板の外壁側端部を挿入させることで軒天板に取り付けられるようになっている。詳しくは、かかる見切り材では、溝部の溝幅(上下幅)が軒天板の厚みに対応して設定されており、溝部に軒天板の外壁側端部を挿入させると、溝部と外壁側端部とが嵌合し、それにより見切り材が軒天板に取り付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、軒天板には、厚みの異なる複数種類のものが存在する。このため、溝部を有する上述の見切り材を用いる場合、軒天板の厚みごとに溝部の溝幅を設定する必要が生じて、厚みの異なる軒天板ごとに見切り材を用意しなければならなくなってしまう。ただ、そうすると、見切り材の種類が増大し、見切り材について製造コストの増大や部材管理の煩雑さ等を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、見切り材を厚みの異なる複数種類の軒天板に取付可能とすることで、見切り材の種類が増大するのを抑制することができる軒天板の見切構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の軒天板の見切構造は、建物の屋根において外壁よりも屋外側に張り出した軒部には前記外壁と軒先とに跨がるようにして軒天板が設けられ、その軒天板の前記外壁側の端部に沿って延び、当該端部である外壁側端部を前記外壁側から覆う見切り材を備える軒天板の見切構造であって、前記見切り材は、前記軒先側に向けて開放された溝部を有し、その溝部に前記外壁側端部を挿入させることで前記軒天板に取り付けられ、前記溝部は、溝部開放側の第1部分と、その第1部分よりも溝部奥側であってかつ当該第1部分よりも溝幅が小さい第2部分とを有していることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、見切り材に軒先側に開放された溝部が形成されており、その溝部に軒天板の外壁側端部を挿入させることで、見切り材が当該軒天板に取り付けられるようになっている。そして、このような構成にあって、見切り材の溝部が、溝部開放側の第1部分と、その第1部分よりも溝部奥側であってかつ溝幅が第1部分よりも小さい第2部分とを有している。この場合、見切り材を、厚みの比較的大きい軒天板(例えば第1部分の溝幅と同じ大きさの厚みを有する軒天板)と、厚みの比較的小さい軒天板(例えば第2部分の溝幅と同じ大きさの厚みを有する軒天板)とにそれぞれ取り付けることが可能となる。すなわち、見切り材を厚みの大きい軒天板に取り付ける場合には、溝部の第1部分に軒天板の外壁側端部を挿入させることで、見切り材を当該軒天板に取り付けることが可能となる。また、見切り材を厚みの小さい軒天板に取り付ける場合には、溝部の第2部分に軒天板の外壁側端部を挿入させることで、見切り材を当該軒天板に取り付けることが可能となる。これにより、見切り材を厚みの異なる複数種類の軒天板に取付可能となり、その結果、見切り材の種類が増大するのを抑制することが可能となる。
【0011】
第2の発明の軒天板の見切構造は、第1の発明において、前記見切り材は、前記溝部を挟んで上下に対向する一対の対向板部を有し、前記各対向板部のうちいずれか一方には、前記第2部分の前記溝幅を前記第1部分の前記溝幅よりも小さくさせる段差部が形成され、他方には前記段差部が形成されていないことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、見切り材において溝部を挟んで対向する各対向板部のうちいずれか一方に、第2部分の溝幅を第1部分の溝幅よりも小さくさせる段差部が形成されている。これに対して、各対向板部のうちの他方には、かかる段差部が形成されていない。ここで、見切り材を軒天板の外壁側端部に取り付ける場合には、まず見切り材を外壁側に取り付け、その後、その見切り材の溝部に軒天板の外壁側端部を挿入して取り付けることが考えられる。このようにして、厚みの小さい軒天板を溝部の第2部分に挿入して取り付ける場合、上記の構成では、段差部が形成されていない側の対向板部に軒天板の外壁側端部を沿わせながら挿入することができるため、かかる軒天板を段差部に引っ掛けることなく比較的容易に第2部分まで挿入することが可能となる。
【0013】
第3の発明の軒天板の見切構造は、第2の発明において、前記各対向板部のうち、上側の対向板部に前記段差部が形成され、下側の対向板部には前記段差部が形成されていないことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、各対向板部のうち、上側の対向板部に段差部が形成されている一方、下側の対向板部には段差部が形成されていない。この場合、厚みの小さい軒天板を溝部の第2部分に挿入する際、まず軒天板の外壁側端部を下側の対向板部の上に載せ、その状態で外壁側端部を第2部分まで挿入することが可能となる。これにより、かかる軒天板の溝部(第2部分)への挿入作業をより一層容易に行うことが可能となる。
【0015】
第4の発明の軒天板の見切構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記外壁には、前記軒天板の前記外壁側端部に沿って所定間隔で設けられるとともに、当該外壁側端部を支持する複数の支持部材が固定され、前記各支持部材は、前記外壁の外面に固定された固定板部と、その固定板部の下端部から前記軒先側に延びる延出板部とを有するL字状をなしており、前記見切り材は、前記溝部としての第1溝部に加え、その第1溝部の下方に前記外壁側に開放された第2溝部を有しており、その第2溝部に前記各支持部材の前記延出板部を挿入させることでそれら各支持部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、外壁に、軒天板の外壁側端部を支持する複数の支持部材が固定されている。このような構成にあって、各支持部材は、固定板部と延出板部とを有してL字状に形成され、また、見切り材は、軒先側に開放された第2溝部を有している。そして、見切り材は、その第2溝部に各支持部材の延出板部を挿入させることで、それら各支持部材に取り付けられている。この場合、第2溝部は第1溝部の下方に位置しているため、第2溝部に挿入された各支持部材の延出板部により、第1溝部に挿入された軒天板の外壁側端部が下方から支持される状態となる。そのため、軒天板の外壁側端部を見切り材を介して各支持部材により安定した状態で支持することが可能となる。また、この場合、支持部材がL字状という簡単な形状で形成されているとともに、支持部材の延出板部が第2溝部に挿入され見切り材(詳しくは、第2溝部の下側部分)により覆われるため、支持部材により軒天板を支持するようにした構成にあって、コスト低減等の効果を得つつ、支持部材により外観が損なわれるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】外壁に対する軒天板の支持構造を示す分解斜視図。
【
図3】外壁に対する軒天板の支持構造を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、建物が、複数の建物ユニットが互いに組み合わされて構築されたユニット式建物となっている。
図1は、その建物における軒部周辺を示す縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、住宅等の建物10は、外壁11と、外壁11の上方に設けられた屋根部12とを有している。外壁11は、建物ユニットの躯体に取り付けられている。建物ユニットは、四隅に立設された柱と、柱の上端部同士を連結する天井大梁と、柱の下端部同士を連結する床大梁とを有し、それら柱、天井大梁及び床大梁により形成された躯体は略直方体状をなしている。ここでは、天井大梁15を図示しており、天井大梁15には外壁11の上端部が取り付けられている。
【0020】
外壁11は、外壁面を形成する外壁面材17と、外壁面材17の裏面(屋内側面)に取り付けられた下地フレーム18とを有している。外壁面材17は、例えば窯業系サイディングボードよりなる。下地フレーム18は、上下に延びる縦フレーム材18aと、左右に延びる横フレーム材18bとを有し、それら各フレーム材18a,18bが矩形枠状に連結されることで構成されている。下地フレーム18は、その上側の横フレーム材18bが天井大梁15に固定され、その下側の横フレーム材18bが床大梁(図示略)に固定されている。
【0021】
屋根部12は、寄棟屋根や切妻屋根などの傾斜屋根を構成するものであり、棟から軒先に向けて斜め下方に傾斜している。屋根部12は、棟から軒先に向けて延びる垂木21と、垂木21の上に設けられた屋根下地材としての野地板22と、野地板22の上に設けられた屋根仕上材としての瓦23とを有している。垂木21は、その垂木21を下方から支持する支持金物24を挟んで天井大梁15の上に載置されており、棟及び軒先が延びる方向に所定間隔で複数並べて配置されている。また、屋根部12には、垂木21と直交する方向に延びる母屋材26が設けられている。
【0022】
屋根部12において垂木21の軒先側端部には、垂木21の軒先側端面等を隠す鼻隠し部31が取り付けられている。鼻隠し部31は、軒先に沿って延びる長尺状の鼻先木32と、鼻隠し部31の露出面を形成する鼻先化粧板33とを有している。鼻先木32は、複数の垂木21に架け渡された状態で設けられ、それら各垂木21にそれぞれ連結されている。鼻先化粧板33は、鼻先木32の外側面に対向する部分と、鼻先木32の下面に対向する部分とを有しており、鼻先木32の外側面に対向する部分が鼻先木32に対して固定されている。また、鼻隠し部31を挟んで垂木21とは反対側には雨樋34が設けられている。
【0023】
屋根部12において外壁11よりも屋外側(側方)に張り出した部分は軒部35とされている。軒部35の底部には、軒天井を形成する軒天板36が設けられている。軒天板36は所定の耐火性能を有する板状の不燃材からなる。軒天板36は、外壁11の上部と屋根部12の軒先(鼻隠し部31)とに架け渡された状態で設けられ、軒先及び外壁11に沿って延びている。軒天板36は、その軒先側端部が鼻隠し部31(軒先)によって支持されているとともに、その外壁側端部が支持金物41等を介して外壁11に支持されている。
【0024】
鼻隠し部31に対する軒天板36の支持構成について説明すると、鼻隠し部31の鼻先化粧板33においては、鼻先木32の下面に対向する部分が鼻先木32から下方に離間しており、その隙間に軒天板36の軒先側端部が入り込んでいる。軒天板36の軒先側端部は鼻先木32の下面に対してビス等により固定されており、軒天板36の端面が鼻先木32の外側面とともに鼻先化粧板33により覆い隠されている。
【0025】
続いて、外壁11に対する軒天板36の支持構成について
図2及び
図3に基づいて説明する。
図2は、外壁11に対する軒天板36の支持構造を示す分解斜視図である。
図3は、外壁11に対する軒天板36の支持構造を拡大して示す縦断面図である。
【0026】
図2及び
図3に示すように、外壁11には、軒天板36を支持する支持金物41が取り付けられている。支持金物41は、鋼板によりL字状に形成され、外壁面材17の外面にビス43により固定された固定板部41aと、その固定板部41aの下端部から軒先側(外壁11とは反対側)に向けて延びる延出板部41bとを有している。延出板部41bは、その延出長さ(外壁11の厚み方向の長さ)が固定板部41aの上下長さよりも長くされている。但し、延出板部41bの延出長さは固定板部41aの上下長さと同じ長さであってもよい。なお、ビス43は、固定板部41aと外壁面材17とを貫通して下地フレーム18に打ち込まれている。また、この場合、支持金物41が支持部材に相当する。
【0027】
支持金物41は、外壁11の壁幅方向に沿って(換言すると軒天板36の外壁側端部36aに沿って)所定の間隔で複数配置されている。これら支持金物41には、見切り材42が取り付けられている。見切り材42は、外壁11の壁幅方向に延びる長尺状とされ、例えば合成樹脂材料により形成されている。見切り材42は、各支持金物41に跨がって設けられており、それら各支持金物41に対してそれぞれ取り付けられている。なお、見切り材42は、必ずしも合成樹脂材料により形成する必要はなく、金属材料(例えば鋼板)等、他の材料により形成してもよい。
【0028】
見切り材42は、軒天板36の外壁側端部36aを外壁11側から覆うための化粧材であり、軒天板36の外壁側端部36aに取り付けられている。この場合、軒天板36は、見切り材42を介して各支持金物41に取り付けられた状態にあり、ひいては見切り材42及び各支持金物41を介して外壁11に取り付けられた状態にある。また、軒天板36は、かかる取付状態において、その外壁側端部36aが外壁11から離間している。
【0029】
見切り材42は、軒先側(反外壁11側)に開放された第1溝部45と、外壁11側に開放された第2溝部46とを有する。第1溝部45には、軒先側から軒天板36の外壁側端部36aが挿入されている。この挿入状態において、見切り材42が外壁側端部36aに取り付けられている。
【0030】
第2溝部46には、各支持金物41の延出板部41bが外壁11側から挿入されている。これら各支持金物41の延出板部41bは、第2溝部46の最奥部まで挿入されている。この場合、かかる挿入状態において、見切り材42が各支持金物41の延出板部41bに取り付けられている。また、かかる見切り材42の取付状態において、見切り材42は外壁11から離間している。このため、外壁11と見切り材42との間には所定の隙間Sが形成されている。この隙間Sは、軒天板36の上方空間(軒天裏空間)の換気を行うための通気用隙間等として用いられる。
【0031】
第2溝部46は第1溝部45の下方に位置している。このため、第2溝部46に挿入された各支持金物41の延出板部41bにより、第1溝部45に挿入された軒天板36の外壁側端部36aが下方から支持された状態になっている。つまり、この場合、軒天板36の外壁側端部36aは、見切り材42を介して各支持金物41により支持された状態となっている。
【0032】
続いて、見切り材42の構成について詳しく説明する。
【0033】
見切り材42は、樹脂材料の押し出し成形によって長尺状でかつ板状に形成されている。この場合、見切り材42は、その横断面(長手方向と直交する方向の断面)が長手方向の全域に亘って同じ形状とされている。見切り材42は、第2溝部46を形成する複数の板部51~53を有している。これら各板部51~53には、第2溝部46を挟んで上下に対向する一対の対向板部51,52と、これら各対向板部51,52の軒先側の端部同士を上下に繋ぐ繋ぎ板部53とが含まれている。各対向板部51,52の間の間隔、つまり、第2溝部46の溝幅は支持金物41(延出板部41b)の厚みと同じ大きさに設定されている。このため、第2溝部46に支持金物41の延出板部41bが挿入された状態では、延出板部41bが第2溝部46と嵌合された状態となる。なお、第2溝部46の溝幅は、支持金物41の厚みと必ずしも同じである必要はなく、支持金物41の厚みより若干小さくしてもよいし、若干大きくしてもよい。また、各対向板部51,52のうち、対向板部51が下側、対向板部52が上側に位置している。
【0034】
本見切り材42では、第1溝部45に厚みの異なる複数種類(具体的には2種類)の軒天板36を挿入可能となっており、それにより、見切り材42をそれら各軒天板36にそれぞれ取り付けることが可能となっている。そこで、以下においては、その点に関する構成について説明する。
【0035】
見切り材42は、上述した各板部51~53に加え、さらに、対向板部52とともに第1溝部45を形成する複数の板部54,55を有している。これら各板部54,55には、対向板部52と第1溝部45を挟んで上下に対向する対向板部54と、各対向板部52,54の外壁11側の端部同士を上下に繋ぐ繋ぎ板部55とが含まれている。
【0036】
第1溝部45を形成する各板部52,54,55のうち、対向板部52は、外壁11の厚み方向に水平に延びる水平板部となっており、第1溝部45の下側に配置されている。この対向板部52は、第1溝部45と第2溝部46との間に配置され、これら各溝部45,46を上下に仕切っている。
【0037】
対向板部54は、外壁11の厚み方向に延びており、第1溝部45の上側に配置されている。対向板部54は、上記厚み方向の長さが対向板部52の同方向の長さと同じとされている。なお、この場合、各対向板部52,54がそれぞれ特許請求の範囲に記載された「溝部を挟んで上下に対向する一対の対向板部」に相当する。また、対向板部52が「下側の対向板部」に相当し、対向板部54が「上側の対向板部」に相当する。
【0038】
対向板部54は、繋ぎ板部55の上端部から軒先側に向けて延びる奥側板部54aと、その奥側板部54aの軒先側端部から上方に向けて短く延びる段差板部54bと、その段差板部54bの上端部から軒先側に向けて延びる手前側板部54cとを有する。奥側板部54aと手前側板部54cとはいずれも対向板部52と平行な水平板部となっている。
【0039】
第1溝部45は、対向板部52と手前側板部54cとの間の手前側部分61と、対向板部52と奥側板部54aとの間の奥側部分62とを有している。この場合、第1溝部45の溝幅(各対向板部52,54の間の間隔)は、手前側部分61よりも奥側部分62の方が小さくなっている。つまり、手前側部分61の溝幅L1(対向板部52と手前側板部54cとの間隔)よりも、奥側部分62の溝幅L2(対向板部52と奥側板部54aとの間隔)の方が小さくなっている(L1>L2)。なお、この場合、手前側部分61が「第1部分」に相当し、奥側部分62が「第2部分」に相当する。
【0040】
段差板部54bは、外壁11の厚み方向における対向板部54の中央部に位置している。そのため、段差板部54bを介して接続される手前側板部54c及び奥側板部54aは上記厚み方向の長さがいずれも同じとされている。また、この段差板部54bが設けられていることで、奥側部分62の溝幅L2が手前側部分61の溝幅L1よりも小さくされている。詳しくは、この段差板部54bが設けられていることで、手前側板部54cと奥側板部54aとの間に寸法(L1-L2)の段差が生じている。なお、段差板部54bが段差部に相当する。
【0041】
次に、上記の見切り材42が軒天板36に取り付けられた取付状態の構成について説明する。以下では、見切り材42が、厚みの大きい軒天板36(以下、その符号にAを付す)に取り付けられる場合と、厚みの小さい軒天板36(以下、その符号にBを付す)に取り付けられる場合とについてそれぞれ説明する。なお、
図3では、(a)に見切り材42が厚みの大きい軒天板36Aに取り付けられた状態を示しており、(b)に見切り材42が厚みの小さい軒天板36Bに取り付けられた状態を示している。また、ここでは、軒天板36Aの厚みt1が、見切り材42の第1溝部45の手前側部分61の溝幅L1と同じ大きさに設定され(t1=L1)、軒天板36Bの厚みt2が、第1溝部45の奥側部分62の溝幅L2と同じ大きさに設定されているものとする(t2=L2)。
【0042】
なお、軒天板36Aの厚みt1は必ずしも手前側部分61の溝幅L1と同じである必要はなく、手前側部分61の溝幅L1よりも若干小さく又は若干大きく設定してもよい。また、同様に、軒天板36Bの厚みt2についても、奥側部分62の溝幅L2よりも若干小さく又は若干大きく設定してもよい。
【0043】
まず、見切り材42が厚みの大きい軒天板36Aに取り付けられる場合について説明する。
図3(a)では、見切り材42の第1溝部45に、軒天板36Aの外壁側端部36aが挿入されている。この場合、軒天板36Aの外壁側端部36aは、第1溝部45の手前側部分61に挿入され、その挿入状態において見切り材42の段差板部54bに当接している。また、軒天板36Aの外壁側端部36aは、この挿入状態において手前側部分61と嵌合している。これにより、見切り材42が軒天板36Aの外壁側端部36aに対して取り付けられている。
【0044】
続いて、見切り材42が厚みの小さい軒天板36Bに取り付けられる場合について説明する。
図3(b)では、見切り材42の第1溝部45に、軒天板36Bの外壁側端部36aが挿入されている。この場合、軒天板36Bの外壁側端部36aは、第1溝部45の手前側部分61を通じて奥側部分62に挿入され、その挿入状態において繋ぎ板部55に当接している。また、軒天板36Bの外壁側端部36aは、この挿入状態において奥側部分62と嵌合している。これにより、見切り材42が軒天板36Bの外壁側端部36aに対し取り付けられている。
【0045】
ここで、上述した軒天板36の見切り構造を構築する際の作業手順について簡単に説明する。
【0046】
見切り構造を構築するに際しては、まず外壁11に各支持金物41をビス43により固定する作業を行う。その後、それら各支持金物41に見切り材42を取り付ける作業を行う。この取付作業は、見切り材42の第2溝部46に各支持金物41の延出板部41bを挿入させることにより行う。
【0047】
次に、軒天板36を見切り材42に取り付ける作業を行う。この取付作業は、軒天板36の外壁側端部36aを見切り材42の第1溝部45に挿入することにより行う。この際、軒天板36が厚みの大きい軒天板36Aである場合には、軒天板36Aを段差板部54bに当接するまで挿入する。それに対し、軒天板36が厚みの小さい軒天板36Bである場合には、軒天板36Bを繋ぎ板部55に当接するまで挿入する。詳しくは、この際、まず軒天板36Bの外壁側端部36aを対向板部52の上に載置し、その載置状態で軒天板36Bを第1溝部45の奥側に向けて挿入していく。以上により、軒天板36の見切り構造が構築される。なお、上記の作業の後、軒天板36の軒先側端部を鼻先木32の下面に取り付ける等することで、軒天板36の設置作業が完了する。
【0048】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0049】
見切り材42の第1溝部45を、溝部開放側の手前側部分61と、その手前側部分61よりも奥側であってかつ手前側部分61よりも溝幅の小さい奥側部分62とを有する構成とした。このため、上述したように、第1溝部45の手前側部分61に厚みの大きい軒天板36A(詳しくはその外壁側端部36a)を挿入させることで、見切り材42を当該軒天板36Aに取り付けることが可能となっている。また、第1溝部45の奥側部分62に厚みの小さい軒天板36B(詳しくはその外壁側端部36a)を挿入させることで、見切り材42を当該軒天板36Bに取り付けることが可能となっている。これにより、見切り材42を厚みの異なる2種類の軒天板36A,36Bに取り付けることが可能となり、その結果、見切り材の種類が増大するのを抑制することが可能となる。
【0050】
見切り材42において第1溝部45を挟んで上下に対向する各対向板部52,54のうち、対向板部54に、奥側部分62の溝幅L2を手前側部分61の溝幅L1よりも小さくさせる段差板部54bを設ける一方、対向板部52には、かかる段差板部を設けないようにした。これにより、厚みの小さい軒天板36Bの外壁側端部36aを第1溝部45の奥側部分62に挿入する作業を行う際に、その外壁側端部36aを対向板部52の上面に沿わせながら挿入することができる。そのため、その挿入に際し、外壁側端部36aを段差板部に引っ掛けることなく比較的容易に奥側部分62まで挿入することが可能となる。
【0051】
具体的には、各対向板部52,54のうち、上側の対向板部54に段差板部54bを設け、下側の対向板部52には段差板部を設けないようにした。この場合、厚みの小さい軒天板36Bを第1溝部45の奥側部分62に挿入する際、まず軒天板36Bの外壁側端部36aを対向板部52の上に載せ、その状態で外壁側端部36aを奥側部分62まで挿入することが可能となる。これにより、軒天板36Bの奥側部分62への挿入作業をより一層容易に行うことが可能となる。
【0052】
見切り材42に、第1溝部45に加え、その第1溝部45の下方に外壁11側に開放された第2溝部46を設けた。そして、外壁11に固定された各支持金物41を固定板部41aと延出板部41bとを有するL字状とし、これら各支持金物41の延出板部41bをそれぞれ第2溝部46に挿入させた。そして、その挿入によって、見切り材42を各支持金物41に取り付ける構成とした。この場合、支持金物41がL字状という簡単な形状で形成されているとともに、支持金物41の延出板部41bが見切り材42の対向板部51)により下方から覆われるため、支持金物41により軒天板36を支持するようにした構成にあって、コスト低減等の効果を得つつ、支持金物41により外観が損なわれるのを抑制することができる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、見切り材42を厚みの異なる2種類の軒天板36A,36Bに取付可能としたが、厚みの異なる3種類以上の軒天板36に取付可能としてもよい。例えば、見切り材42を厚みの異なる3種類の軒天板36に取付可能とする場合、見切り材42の第1溝部45を、溝部開放側の第1部分と、その第1部分よりも溝部奥側の第2部分と、その第2部分よりも溝部奥側の第3部分とを有する構成とし、それら第1部分~第3部分の溝幅を第1部分の溝幅>第2部分の溝幅>第3部分の溝幅となるように形成すればよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1溝部45を挟んで上下に対向する各対向板部52,54のうち、上側の対向板部54に段差板部54bを設け、下側の対向板部52にかかる段差板部を設けないようにしたが、これを逆にしてもよい。つまり、下側の対向板部52に段差板部を設け、上側の対向板部54に段差板部を設けないようにしてもよい。具体的には、下側の対向板部52を、繋ぎ板部55の下端部から軒先側に延びる奥側板部と、その奥側板部の軒先側端部から下方に延びる段差板部と、その段差板部の下端部から軒先側に延びる手前側板部とを有する構成とする。また、上側の対向板部54を、外壁11の厚み方向に水平に延びる水平板部とする。かかる構成では、対向板部52の手前側板部と対向板部54との間が手前側部分(第1部分に相当)となり、対向板部52の奥側板部と対向板部54との間が奥側部分(第2部分に相当)となる。そして、奥側部分の溝幅が手前側部分の溝幅よりも小さくなる。したがって、この場合にも、見切り材42を厚みの異なる各軒天板36A,36Bにそれぞれ取り付けることが可能となる。また、上側の対向板部54には段差板部が設けられていないため、厚みの小さい軒天板36Bを第1溝部45の奥側部分に挿入する際は、軒天板36Bの外壁側端部36aを対向板部54の下面に沿わせながら挿入することが可能となる。そのため、軒天板36Bを段差板部に引っ掛けることなく、奥側部分まで比較的容易に挿入することが可能となる。
【0056】
なお、各対向板部52,54の両方にそれぞれ段差板部を設けるようにしてもよい。その場合、各対向板部52,54の段差板部を外壁11の厚み方向において同じ位置に設定すればよい。ただし、この場合、厚みの小さい軒天板36Bを奥側部分に挿入する際には、軒天板36Bが各対向板部52,54の段差部に引っ掛かって挿入しづらくなるおそれがある。そのため、この点を鑑みると、各対向板部52,54のうちいずれか一方にのみ段差板部を設けることが望ましい。
【0057】
・上記実施形態では、支持金物41の形状をL字状としたが、支持金物41の形状は必ずしもこれに限らない。例えば、支持金物を、外壁11の上端部に引っ掛け可能な引掛部と、その引掛部から外壁11の外面に沿って垂れ下がる垂下部と、その垂下部から軒先側に延びる延出板部とを有する構成とすることが考えられる。その場合にも、その延出板部を、見切り材42の第2溝部46に挿入するようにすれば、支持金物に見切り材を取り付けることが可能となる。
【0058】
・上記実施形態では、見切り材42に第2溝部46を設け、その第2溝部46に支持金物41の延出板部41bを挿入させることで見切り材42を支持金物41に取り付ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、見切り材42に、支持金物41の一部にビス等で固定される固定板部を設け、その固定板部を上記一部に固定することで見切り材42を支持金物41に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…建物、11…外壁、12…屋根部、35…軒部、36…軒天板、36a…外壁側端部、41…支持部材としての支持金物、41a…固定板部、41b…延出板部、42…見切り材、45…第1溝部、46…第2溝部、52…下側の対向板部としての対向板部、54…上側の対向板部としての対向板部、54b…段差部としての段差板部、61…第1部分としての手前側部分、62…第2部分としての奥側部分。