IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図1
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図2
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図3
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図4
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図5
  • 特許-歯科用交換部品のモデル作成方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】歯科用交換部品のモデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20220118BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
A61C13/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017518347
(86)(22)【出願日】2015-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2015075090
(87)【国際公開番号】W WO2016066736
(87)【国際公開日】2016-05-06
【審査請求日】2018-10-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】102014222037.8
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オスカム,トーマス
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】栗山 卓也
【審判官】加藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/124260(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科補綴物と後部保護プレートを含む補綴物ベースとから成る歯科用交換部品のデジタルモデル(6)の作成方法であって、
-処置を行う顎または顎部分のデジタルモデル(1)およびその中に配置される作成済のデジタル歯科補綴物モデル(2)の中に、前記歯科補綴物モデル(2)の範囲内で境界面(3)が自動で作図されること、
-後部保護プレートモデル(4)が、前記境界面(3)、前記顎部分のデジタルモデル(1)の隣接する表面(1’)、および該表面(1’)と前記境界面(3)とを接続する前記歯科補綴物モデル(2)の表面(2’)部分から形成されること、
-修正した歯科補綴物モデル(5)が、前記境界面(3)を表面として引き継ぐことによって前記デジタル歯科補綴物モデル(2)から形成されること、
-前記後部保護プレートモデル(4)と前記修正した歯科補綴物モデル(5)とから、前記歯科用交換部品の前記デジタルモデル(6)が作成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記歯科補綴物モデル(2)および/または前記顎部分のデジタルモデル(1)の口腔表面(7)に自動でマークした出力面(8)をほぼ前庭方向に所定の深さ(T)だけ移動することにより、前記境界面(3)が作成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
外周線の作図によって前記出力面(8)がマークされることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記出力面(8)の移動が、前記歯科用交換部品の挿入方向を考慮した方向に沿って行われることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記境界面(3)が、前記顎のデジタルモデル(1)の前記表面(1’)に隣接する領域において強のために自動で形状変更されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記境界面(3)に重なり合うエレメント(9)が、自動で作図されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記重なり合うエレメント(9)の形状が、前記後部保護プレートモデル(4)および/または前記修正した歯科補綴物モデル(5)の中に統合されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記境界面(3)の1つ以上のコーナーが自動的に丸み付けられることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
凹部および/または隆起部が接続エレメント(10)として自動的に前記境界面(3)に組み込まれることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
歯科補綴物と後部保護プレートを含む補綴物ベースとから成る歯科用交換部品の製造方法であって、前記歯科用交換部品が、作成された前記歯科用交換部品のデジタルモデル(6)に基づいて製造されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の歯科用交換部品の製造方法。
【請求項11】
前記修正した歯科補綴物モデル(5)を使って、窪みを有するテンプレート(11)が作成され、前記窪みの形状は、前記境界面(3)まで達している、前記修正した歯科補綴物モデル(5)の前庭表面に一致していることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用交換部品の製造方法。
【請求項12】
前記テンプレート(11)が複数の部分から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の歯科用交換部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科補綴物と補綴物ベースとから成る歯科用交換部品のデジタルモデル作成方法に関し、補綴物ベースは少なくとも1つの後部保護プレートを含んでいる。さらに、本発明は、そのような種類の歯科用交換部品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
今日の歯科用交換部品は、主にデジタル手段の支援によって設計され、製造される。
【0003】
国際特許出願公開第2012/041329A1号および国際特許出願公開第2012/083959A1号では、例えば、歯科補綴物と既存の歯科用交換部品の補綴物ベースを製造するためにデジタルモデルを作成する方法を説明している。この場合、詳細には、処置を行う顎の三次元画像が使用される。
【0004】
米国特許第8,359,114B2号では、触覚によるインターフェースによって歯科修復物を設計している。
【0005】
例えばモデル鋳造補綴物などの多くの歯科用交換部品は、保持エレメントまたは支持エレメントといった追加の強化構造を必要とする。例えば、1つまたは複数の前歯をモデル鋳造補綴物と交換する場合、後部保護プレートによって強化するのが一般的である。困難であるのは、一方で十分な安定性を確保しつつ、他方では患者の口腔内の義歯が自然に感じられ、希望どおりの位置に収まるように、後部保護プレートを歯科用交換部品の中に組み込むことである。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の課題は、そのような後部保護プレートを含む歯科用交換部品のデジタルモデル作成方法とその製造方法を提供することであり、この方法は、高い安定性に加えて、位置と適合精度に関して高度な精密性を確保する。
【0007】
本発明の対象は、歯科補綴物と、後部保護プレートを含む補綴物ベースとから成る歯科用交換部品のデジタルモデルの作成方法である。本方法では、処置を行う顎または顎部分のデジタルモデルおよびその中に配置されるデジタル歯科補綴物モデルの中に、その歯科補綴物モデルの範囲内で境界面が自動および/または手動で作図されるようになっている。この境界面、デジタルモデルの境界表面、および顎モデル境界表面と境界面とを接続する歯科補綴物モデルの表面部分から、後部保護プレートモデルが形成される。さらに、境界面を表面として引き継ぐことによって、デジタル歯科補綴物モデルから修正した歯科補綴物モデルが形成される。次に、後部保護プレートモデルと修正した歯科補綴物モデルとから歯科用交換部品のデジタルモデルを作成する。
【0008】
本発明は、義歯とも呼ばれる歯科補綴物と、補綴物ベースと呼ばれる保持装置とから構成されている任意の歯科用交換部品に関し、この補綴物ベースは後部保護プレートを有している。
【0009】
後部保護プレートは歯科補綴物を強化する構造物であり、そのために少なくとも部分的に歯科補綴物の中に突出している。そのような後部保護プレートは、例えば、1つ以上の前歯を補綴物によって代替する場合に必要であるか、あるいは使用されている。
【0010】
高い装着快適性を達成するため、後部保護プレートはできるだけ歯科補綴物の表面を再現する必要がある。さらに、処置する顎の中に歯科用交換部品全体をはめ込んだ後に、後部保護プレートに取り付けた歯科補綴物が希望する場所に正確に位置していることが保証されなければならない。希望する安定性を保証できるようにするには、後部保護プレートがさらに十分な厚さを有しており、歯科補綴物の中に十分に突き出ている必要がある。この安定性は、隣接するエレメントの方向、例えば顎方向への後部保護プレートの強化によってさらに改善することができる。
【0011】
本方法の基礎は、処置する顎または顎部分のデジタルモデルであり、デジタルの歯科補綴物モデルがその中に配置される。顎のデジタルモデル(顎モデルとも言う)は、例えば処置する顎の三次元測定、すなわち口腔内測定を使って、または顎の物理的モデル、例えば石膏顎モデルの測定によって作成することができる。
【0012】
デジタル歯科補綴物モデルは、例えば、物理的顎モデルに取り付ける物理的歯科補綴物モデルの三次元測定によって作成することもできる。例えば、歯科補綴物モデルを、ワックスによって石膏顎モデルの上に配置し(ワックスアップ)、スキャンしてもよい。次に、歯科補綴物を配置していない石膏顎モデルのデータセットと歯科補綴物を配置した石膏顎モデルのデータセットを、一致する部分に基づいて相関させ、それによってデジタル歯科補綴物モデルを配置した本発明に基づくデジタルモデルを作成することができる。
【0013】
歯科補綴物を配置した本発明に基づくデジタルモデルにするため、仮想の歯科補綴物モデルをデジタルで作成し、処置する顎のデジタルモデルの中に配置することも可能である。
【0014】
後部保護プレートと歯科補綴物との間の境界面として使われる境界面の作図は完全にユーザーによって行うか、すべて自動で行うか、またはユーザーの作図と自動化された工程との組み合わせによって行うことができる。
【0015】
本方法により、後部保護プレートが、歯科補綴物の希望する口腔表面に正確に一致する口腔面を有していること、および歯科補綴物を後部保護プレートに固定し、顎の中に取り付けた後で、歯科補綴物が希望する場所に正確に位置していることが確実なものとなる。とくに境界面を作成する際の自動化工程によって、顎内への後部保護プレートのさらなるアンダーカットまたは突出を防ぐことができると考えられる。また、規定破断箇所も回避できるか、あるいは安定性に関して後部保護プレート形状を最適化することも可能である。
【0016】
有利には、歯科補綴物モデルおよび/または顎のデジタルモデルの口腔表面に自動および/または手動でマークした出力面をほぼ前庭方向に所定の深さだけ移動することにより、境界面が作成される。
【0017】
これにより、作成する後部保護プレートまたはデジタル後部保護プレートモデルが、その高さ全体にわたり十分な厚さを有し、希望する安定性を確保することが確実に可能になる。一般的な厚さまたは肉厚は、例えば約0.6mmである。これによりさらに、後部保護プレートまたは境界面をできるだけ簡単な形状にすることもできる。
【0018】
有利には、外周線の作図によって出力面がマークされるので、このことは、実施に関しても、適用に関しても、出力面を作成するとくに簡単なバリエーションになる。
【0019】
有利には、出力面の移動が、歯科用交換部品の挿入方向を考慮した方向に沿って行われる。これにより、アンダーカットまたは凹部を確実に回避することができる。
【0020】
有利には、作図後に境界面が手動および/または自動で変更される。これにより、ユーザーは、個々の条件により良く対応することができるか、または例えば隣接する顎方向への強化または後部保護プレートと歯科補綴物との間に固定エレメントを設けることなど、後部保護プレートのその他の標準化特性を実現できる。
【0021】
有利には、境界面が、顎のデジタルモデルの表面に隣接する領域において自動および/または手動で強化される。これにより、安定性を明らかに向上させられる。
【0022】
有利には、境界面に重なり合う固定エレメントが自動または手動で作図される。これにより、例えば保持プレートといった一般的な固定エレメントを後部保護プレートと歯科補綴物との間に簡単な仕方で設けるか、または歯科用交換部品のモデルに組み込むことができる。
【0023】
有利には、重なり合うエレメントの形状が、後部保護プレートモデルおよび/または修正された歯科補綴物モデルの中に統合される。後部保護プレートまたは修正した歯科補綴物モデルの形状は、重なり合うエレメントの形状の凹部または隆起部を適切に引き継ぐか、または設けることによって、簡単な仕方で保持プレートなどの重なり合うエレメントに適合させられる。
【0024】
有利には、境界面の1つ以上のコーナーが自動的に丸み付けられ、これにより安定性を顕著に向上させることができる。詳細には、例えば後部保護プレートと歯科補綴物との間など、異なる材料間の移行部を有利な形で丸み付けし、例えば面取り部として形成することで、規定破断箇所が回避される。
【0025】
有利には、凹部および/または隆起部が接続エレメントとして手動および/または自動的に境界面に組み込まれる。凹部または隆起部として形成されている接続エレメントは、歯科用交換部品の安定性を高めることができる。この接続エレメントは、例えばマウスなどの適合する入力手段を使って、あるいは接続エレメントの高さ、位置および/または方向に関する適切な規定に基づいて、境界面領域をマーキングおよび移動することにより自動的に境界面の中に組み込むことができる。接続エレメントは、例えば口腔方向への後部保護プレートの凹部およびそれに対応する口腔方向への歯科補綴物の隆起部として形成してもよい。凹部または隆起部は、境界面に関して湾曲構造の形で斜めに上昇するように形成されていてもよい。
【0026】
さらに、本発明は、歯科補綴物と後部保護プレートを含む補綴物ベースとから成る歯科用交換部品の製造方法にも関し、この歯科用交換部品は、前述したように作成された歯科用交換部品のデジタルモデルを使って製造される。
【0027】
本発明に基づく義歯モデルに基づいて、あらかじめ実施された要件に沿った、質的に優れた義歯を確実に製造することができる。補綴物ベースは、後部保護プレートモデルをベースにして生成されるデジタルモデルを使って作成することができる。この歯科補綴物は、修正された歯科補綴物モデルに基づいて製造できる。例えばデジタル歯科補綴物モデルのベースに使用した歯科補綴物がすでにある場合、この歯科補綴物を、修正した歯科補綴物モデルに適合させることができる。
【0028】
有利には、修正した歯科補綴物モデルを使って、窪みを有するテンプレートが作成され、この窪みの形状は、境界面まで達している、修正した歯科補綴物モデルの表面に一致している。
【0029】
このテンプレートは、既存の歯科補綴物を適合するように研磨する簡単なやり方である。とくに、この歯科補綴物をデジタル歯科補綴物モデルのベースに用いた場合、本発明に基づくテンプレートにより、正確な研磨を確実に実施することができる。
【0030】
有利には、このテンプレートが複数の部分から構成されている。これにより、研磨する歯科補綴物へのテンプレートの取付け、あるいは研磨する歯科補綴物の周辺へのテンプレートの取付けが容易になるか、または可能になる。さまざまなテンプレート部分は、例えばポジティブ結合で互いにかみ合うエレメントの明確なキー機構によって相互に接続できるため、取付けは非常に分かりやすい。1つまたは複数の補綴物はテンプレートによって取り囲まれ、後部保護プレートに当たる縁部分がちょうどテンプレート周縁部を通るようになっている。従って、ユーザーは、縁部分の補綴物を正確に研磨し、その後、補綴物を後部保護プレートに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の実施例が図に示されている。
図1】処置する顎のデジタルモデルとその中に配置されたデジタル歯科補綴物モデルの図である。
図2】配置したデジタル歯科補綴物モデル領域における、図1によるモデルの断面形状である。
図3図1に基づくモデルの出力面をマークした図である。
図4】変更した境界面および重なり合うエレメントを備える、図2の断面形状である。
図5】本発明に基づいて作成された歯科用交換部品モデルの図である。
図6】本発明に基づくテンプレートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、処置する顎のデジタルモデル1を示し、このモデルは、例えば口腔内カメラを使ったスキャンによって作成することができる。デジタルモデル1には、デジタル補綴物モデル2(分かりやすくするため斜線で表示)が、処置する顎の欠損箇所に配置されている。
【0033】
図2は、歯科補綴物モデル2の部分における、図1に示したデジタルモデル1の断面形状である。本発明に基づく方法に従って、歯科補綴物モデル2の中に、図2の断面形状で輪郭として認識できる境界面3を作図する。境界面3は、歯科補綴物モデル2の表面2’から顎のデジタルモデル1の表面1’まで延伸している。この境界面3は、作成する後部保護プレートモデル4と、作成する歯科用交換部品モデル6(図5に表示)のベースに用いる修正した歯科補綴モデル5との間の境界面となっている。
【0034】
後部保護プレートモデル4は、境界面3と、顎デジタルモデル1の表面1’の隣接部分と、口腔でデジタル顎モデル1の表面1’と境界面3との間に広がっている、歯科補綴物モデル2の表面2’の部分とから形成される。
【0035】
修正した歯科補綴物モデル5は、デジタル歯科補綴物モデル2と境界面3とから形成されるため、後部保護プレートモデル4によって占められている歯科補綴物モデル部分は、境界面3からいわば切り離されるか、または取り除かれる。
【0036】
境界面3は、例えばマウスなどの入力手段によって手動でマークすることができる。このことは、例えば面全体のマーキングまたは面を境界するラインのマーキングによって行うことができる。また、境界面3の自動マーキングも可能である。この場合、例えば歯科補綴物モデル2の口腔表面7の上に出力面8を自動で推測するか、または手動で作図してもよい(図3)。次に、出力面8を前庭方向にほぼ平行に移動することによって、境界面3が歯科補綴物モデル2の中に作成される。
【0037】
移動の経路として、深さTが設けられる(図2)。この深さは、例えば後部保護プレートの一般的な厚さ(0.6mmなど)に相当する。自動移動の場合は出力面8が例えばパラメータ化される。この場合、有利には、パラメータ化に関しても、移動方向に関しても、製造する歯科用交換部品の所定の挿入軸が考慮される。
【0038】
次に、そのようにして作成した境界面3を、さらに手動および/または自動で変更もしくは最適化することができる。安定性を向上させるため、一般的には重なり合う固定エレメントなどが歯科補綴物と後部保護プレートとの間に設けられる。このエレメントは、例えば図4に示されているように、まず重なり合う、すなわち両側の境界面3の上に突き出しているエレメント9として、デジタルモデル1の輪郭の中に作図し、配置することができる。続いて、重なり合うエレメント9の形状が、隣接する2つの構成部品のいずれか一方または後部保護プレートないし歯科補綴物のモデル4、5のいずれか一方の形状に完全に引き継がれ、もう一方の構成部品またはもう一方のモデル4、5が対応する凹部を有しているように、重なり合うエレメント9の形状が、作成する歯科用交換部品のデジタルモデル6の中に引き継がれる。
【0039】
安定性を向上させるもう1つのバリエーションは、顎モデル1の表面1’に隣接する領域内の境界面3を手動および/または自動でさらに前庭方向へもう少し移動させることであり、それによって、作成する後部保護プレートモデル4が顎のデジタルモデル1に隣接する領域で強化される(図4)。歯科用交換部品の作成モデル6を重なり合うエレメント9と一緒に実施する場合、重なり合うエレメント9によるそのような補強は、後部保護プレートモデル4が、少なくとも重なり合うエレメント9の領域ならびに重なり合うエレメント9と顎モデル1の表面1’との間にある領域において、所定の深さTに比べ強化された深さT’を有するように完成している場合はとくに有利である。
【0040】
コーナーの丸み付けは安定性向上にさらに貢献するので、これらは例えば面取り部として形成されている。この場合、境界面3のコーナーの丸み付けは手動および/または自動で行われ、例えば図4の境界面3の輪郭において重なり合うエレメント9の上部に見られるように設けられる。とくに、保持プレートなどの重なり合うエレメント9を備える歯科用交換部品の実施例では、境界面3の隣接するコーナーの丸み付けが有利である。というのも、異なる材料の直線的移行部をできる限り面取り部や湾曲構造として形成できるからである。
【0041】
作成する歯科用交換部品の安定性を向上させるもう1つの可能性は、少なくとも1つの接続エレメント10を設けることである。そのような接続エレメント10の実施例を、同じく図4で確認することができる。この接続エレメント10は、後部保護プレートモデル4の側面上の凹部と修正した歯科補綴物モデルの側面上の隆起部とから成り、凹部ならびに隆起部は、湾曲構造の形で、境界面3に関して切縁方向または咬合方向へ斜めに通っている。
【0042】
すでに説明したように、境界面3の固定が終了すると、後部保護プレートモデル4および修正した歯科補綴物モデル5が、境界面3、デジタル顎モデル1および/または歯科補綴物モデル2、および必要に応じて重なり合うエレメント9に基づいて作成され、図5に斜線で描かれているように、歯科用交換部品モデル6に接続および/または補足される。この後部保護プレートモデル4は、例えば周知のプロセス工程によって、隣接する歯に歯科補綴物を固定する固定装置を備える歯科補綴物ベースのための歯科補綴物ベースモデルに付け加えることができる。
【0043】
作成した歯科用交換部品モデル6は、後部保護プレートを備える歯科補綴物ベースと歯科補綴物から成る歯科用交換部品を製造するために引き続き使用できる。この場合、歯科補綴物と歯科補綴物ベースは、該当するモデルデータに従って、例えば鋳造法またはフライス加工によってセラミックまたは金属などの該当する一般的な材料から製造できる。
【0044】
歯科補綴物がすでにあり、これが例えば歯科補綴物モデル2を基礎にしている場合、修正した歯科補綴物モデル4に基づいてテンプレート11を作成するのがとくに有利であり、このテンプレートを使って修正した歯科補綴物モデル5に歯科補綴物を適合させることができる。テンプレート11は、図6に示されているように、有利には複数の部分から実施することができる。テンプレート11の個々の部分は、有利には、間違った取付けによる故障を回避するため、相互のかみ合いが明確に分かるキーによって接続できる。
【0045】
このテンプレート11は凹部12を有しており、その形状は修正した歯科補綴物モデル5のメス型に一致し、凹部12の周縁部13はちょうど境界面3の周縁部に一致する。これにより、既存の歯科補綴物(ここでは破線で示されている)を凹部の中に挿入し、突出した余分な部分は、例えば研削などによって取り除くことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 処置する顎のデジタルモデル
1’ デジタル顎モデル1の表面
2 デジタル歯科補綴物モデル
2’ 歯科補綴物モデル2の表面
3 境界面
4 後部保護プレートモデル
5 修正した歯科補綴物モデル
6 歯科用交換部品モデル
7 歯科補綴物モデル2の口腔表面
8 出力面
9 重なり合うエレメント
10 接続エレメント
11 テンプレート
12 凹部
13 周縁部
T 深さ
T’ 深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6