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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20220118BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20220118BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H02K33/18 B
B06B1/04 S
H02K33/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017541394
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2017028220
(87)【国際公開番号】W WO2018030265
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2016156894
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-140785(JP,A)
【文献】特開2004-057958(JP,A)
【文献】特公昭39-021405(JP,B1)
【文献】特開2016-101075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
B06B 1/04
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体と、
固定体と、
前記固定体に対して前記可動体を第1方向に直動させる磁気駆動機構と、
前記可動体と前記固定体との間に設けられたダンパー部材と、
を有し、
前記磁気駆動機構は、前記可動体および前記固定体のうちの一方側に設けられたコイルホルダと、前記コイルホルダのコイル支持部に支持されたコイルと、前記可動体および前記固定体のうちの他方側に設けられた第1ヨークと、前記第1ヨークに保持され、前記コイルと前記第1方向に対して交差する第2方向で対向する第1永久磁石と、を有し、
前記コイルホルダは、前記コイル支持部によって前記コイルを前記第1ヨークとは反対側から支持するホルダ本体と、前記コイルを前記第1ヨークの側から覆うコイルプレートと、を備え、
前記ダンパー部材は、前記第1ヨークと前記コイルホルダとの間において前記コイルプレートと前記第1ヨークとが前記第2方向で対向する部分に設けられていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記磁気駆動機構は、前記可動体および前記固定体のうちの他方側で前記コイルホルダに対して前記第1ヨークと反対側に設けられた第2ヨークと、前記第2ヨークに保持され、前記コイルに対して前記第1永久磁石とは反対側で前記コイルに前記第2方向で対向する第2永久磁石と、を有し、
前記ダンパー部材は、さらに、前記コイルホルダと前記第2ヨークとが前記第2方向で対向する部分に設けられていることを特徴とする請求項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルは、前記第1方向で並列して前記第1方向および前記第2方向に対して交差する第3方向に延在する2つの長辺部と、前記長辺部の前記第3方向の両端を繋ぐ2つの短辺部と、を備え、
前記ダンパー部材は、前記コイルの前記短辺部側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ダンパー部材は、ゲル状ダンパー部材であることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記コイルホルダおよび前記コイルは、前記固定体側に設けられ、
前記第1ヨークおよび前記第1永久磁石は、前記可動体側に設けられていることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記固定体は、前記可動体、前記ダンパー部材、および前記磁気駆動機構を内部に収容するケースを有していることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を直線駆動して振動させるリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして、永久磁石を備えた可動体と、永久磁石と対向するコイルを有する固定体とを備えたリニアアクチュエータが提案されており、固定体は、可動体を収容したケースを備えている(特許文献1参照)。また、特許文献1に記載のリニアアクチュエータでは、可動体の共振を抑制するために、ケースと可動体との間にエアダンパーが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-7161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ケースを用いてエアダンパーを構成しているため、リニアアクチュエータを組み立てた後でなければ、ダンパー性能を含めた振動特性を検査することができないという問題点がある。また、エアダンパーに代えて、シリコーンゲル等のダンパー部材を可動体とケースとの間に配置して可動体の共振を抑制した場合も、リニアアクチュエータを組み立てた後でなければ、ダンパー性能を含めた振動特性を検査することができないという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁気駆動機構によって可動体を固定体に対して直線駆動して振動させるにあたって、ケースを用いなくても、固定体と可動体との間にダンパー部材を設けることのできるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のリニアアクチュエータは、固定体と、可動体と、前記固定体に対して前記可動体を第1方向に直動させる磁気駆動機構と、前記可動体と前記固定体との間に設けられたダンパー部材と、を有し、前記磁気駆動機構は、前記可動体および前記固定体のうちの一方側に設けられたコイルホルダと、前記コイルホルダのコイル支持部に支持されたコイルと、前記可動体および前記固定体のうちの他方側に設けられた第1ヨークと、前記第1ヨークに保持され、前記コイルと前記第1方向に対して交差する第2方向で対向する第1永久磁石と、を有し、前記コイルホルダは、前記コイル支持部によって前記コイルを前記第1ヨークとは反対側から支持するホルダ本体と、前記コイルを前記第1ヨークの側から覆うコイルプレートと、を備え、前記ダンパー部材は、前記第1ヨークと前記コイルホルダとの間において前記コイルプレートと前記第1ヨークとが前記第2方向で対向する部分に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、磁気駆動機構によって可動体を直動させて振動させると、振動が利用者に伝わる。従って、伝達すべき情報に対応して振動の形態を切り換えることによって、情報を振動によって伝達することができる。その際、固定体と、可動体と、の間にダンパー部材が設けられているため、可動体が共振することを抑制することができる。ここで、ダンパー部材は、コイルを保持するコイルホルダと、永久磁石を保持するヨークとの間に設けられており、ダンパー部材を設けるのにケースが用いられていない。従って、ケースを用いなくても、固定体と可動体との間にダンパー部材を設けることができる。それ故、ケースを有しないリニアアクチュエータにダンパー部材を設けることができる。また、ケースを設けていない組み立て途中の段階でダンパー部材を設けることができる。
【0008】
また、本発明において、前記ダンパー部材は、前記コイルホルダと前記第1ヨークとが前記第2方向で対向する部分に設けられている。このため、コイルホルダおよび第1ヨークを複雑な形状にしなくても、コイルホルダと第1ヨークとの間にダンパー部材を設けることができる。
【0009】
また、本発明において、前記コイルホルダは、前記コイル支持部によって前記コイルを前記第1ヨークとは反対側から支持するホルダ本体と、前記コイルを前記第1ヨークの側から覆うコイルプレートと、を備え、前記ダンパー部材は、前記コイルプレートと前記第1ヨークとの間に設けられている。このため、コイルと重なる位置にダンパー部材を設けることができる。
【0010】
本発明において、前記磁気駆動機構は、前記可動体および前記固定体のうちの他方側で前記コイルホルダに対して前記第1ヨークと反対側に設けられた第2ヨークと、前記第2ヨークに保持され、前記コイルに対して前記第1永久磁石とは反対側で前記コイルに前記第2方向で対向する第2永久磁石と、を有し、前記ダンパー部材は、さらに、前記コイルホルダと前記第2ヨークとが前記第2方向で対向する部分に設けられている態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記コイルは、前記第1方向で並列して前記第1方向および前記第2方向に対して交差する第3方向に延在する2つの長辺部と、前記長辺部の前記第3方向の両端を繋ぐ2つの短辺部と、を備え、前記ダンパー部材は、前記コイルの前記短辺部側に設けられている態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記ダンパー部材は、ゲル状ダンパー部材である態様を採用することができ。
【0013】
本発明において、前記コイルホルダおよび前記コイルは、前記固定体側に設けられ、前記第1ヨークおよび前記第1永久磁石は、前記可動体側に設けられている態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記固定体は、前記可動体、前記ダンパー部材、および前記磁気駆動機構を内部に収容するケースを有している態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、磁気駆動機構によって可動体を直動させて振動させると、振動が利用者に伝わる。従って、伝達すべき情報に対応して振動の形態を切り換えることによって、情報を振動によって伝達することができる。その際、固定体と、可動体と、の間にダンパー部材が設けられているため、可動体が共振することを抑制することができる。ここで、ダンパー部材は、コイルを保持するコイルホルダと、永久磁石を保持するヨークとの間に設けられており、ダンパー部材を設けるのにケースが用いられていない。従って、ケースを用いなくても、固定体と可動体との間にダンパー部材を設けることができる。それ故、ケースを有しないリニアアクチュエータにダンパー部材を設けることができる。また、ケースを設けていない組み立て途中の段階でダンパー部材を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用したリニアアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すリニアアクチュエータのYZ断面図である。
図3図1に示すリニアアクチュエータの分解斜視図である。
図4図1に示すリニアアクチュエータに用いた磁気駆動機構等の分解斜視図である。
図5図1に示すリニアアクチュエータに用いたコイルホルダ等の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明において、可動体6の直動方向(第1方向、振動方向)にXを付し、第1方向Xと交差する第2方向にYを付し、第1方向Xおよび第2方向Yに対して交差する第3方向にZを付して説明する。なお、第1方向Xの一方側にX1を付し、第1方向Xの他方側にX2を付し、第2方向Yの一方側にY1を付し、第2方向Yの他方側にY2を付し、第3方向Zの一方側にZ1を付し、第3方向Zの他方側にZ2を付して説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したリニアアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すリニアアクチュエータ1のYZ断面図である。図3は、図1に示すリニアアクチュエータ1の分解斜視図である。図4は、図1に示すリニアアクチュエータ1に用いた磁気駆動機構等の分解斜視図である。図5は、図1に示すリニアアクチュエータ1に用いたコイルホルダ等の説明図である。
【0019】
図1に示すリニアアクチュエータ1は、第3方向Zに長手方向を向けた直方体形状を有しており、リニアアクチュエータ1を手にした利用者に対して第1方向Xの振動によって情報を報知する。従って、リニアアクチュエータ1は、ゲーム機の操作部材等として利用することができ、振動等によって新たな感覚を実感することができる。
【0020】
図2および図3に示すように、リニアアクチュエータ1は、リニアアクチュエータ1の外形を規定する角形のケース3等を含む固定体2と、ケース3の内部で固定体2に対して第1方向Xに移動可能に支持された可動体6とを有しており、可動体6は、第1方向Xに振動することによって情報を出力する。
【0021】
本形態においては、図2図5を参照して以下に説明するように、固定体2は、ケース3、コイルホルダ4、コイル5、配線基板59を有しており、可動体6は、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)、およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を有している。また、コイルホルダ4、コイル5、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)、およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)によって磁気駆動機構10が構成されている。また、可動体6は、可動体6と固定体2との間に設けられたダンパー部材91、92を介して固定体2に支持されている。
【0022】
(固定体2の構成)
図1図2および図3に示すように、固定体2において、ケース3は、第2方向Yの一方側Y1に位置する第1ケース部材31と、第2方向Yの他方側Y2で第1ケース部材31と重なる第2ケース部材32とを有しており、第1ケース部材31の側板部311と第2ケース部材32の側板部321とが結合されてケース3を構成する。その際、第1ケース部材31と第2ケース部材32との間には、コイルホルダ4、コイル5および可動体6が収容される。
【0023】
図2図4および図5に示すように、磁気駆動機構10は、コイル5と、コイル5を支持するコイルホルダ4とを有している。コイル5は、長円状に巻回された環状の平面形状を有する空芯コイルであり、第1方向Xで並列して第3方向Zに延在する2つの長辺部51と、2つの長辺部51の第3方向Zの両端を繋ぐ円弧状の2つの短辺部52とを備えている。
【0024】
図2図4および図5に示すように、コイルホルダ4は、コイル支持部40によってコイル5を第2方向Yの他方側Y2(第1ヨーク81とは反対側)から支持するホルダ本体41と、第3方向Zで離間する2か所でコイル5を第2方向Yの一方側Y1(第1ヨーク81の側)から覆う2つのコイルプレート45とを備えている。ホルダ本体41は、第3方向Zに延在した第1板部411と、第1板部411の第3方向Zの両側で第1方向Xの両側に突出した第2板部412とを有しており、図1に示すように、第1ケース部材31と第2ケース部材32とを重ねた際、2つの第2板部412の各々の外周部が側板部311、321との間に挟まれる。
【0025】
図2図4および図5に示すように、コイルホルダ4の第1板部411には、コイル支持部40が設けられている。コイル支持部40は、コイル5が収容される長円状の貫通穴からなるコイル収容穴401と、コイル収容穴401の第3方向Zの両端部において、第2方向Yの他方側Y2でコイル収容穴401に向けて突出した支持板部402とを有している。従って、コイル収容穴401にコイル5を収容すると、支持板部402がコイル5を第2方向Yの他方側Y2から支持する。
【0026】
この状態で、コイル5の第3方向Zの両側の短辺部52には、コイルプレート45が第2方向Yの一方側Y1から覆われる。その際、支持板部402およびコイルプレート45のコイル5側の面に接着剤を塗布しておくことにより、コイル5は、コイルプレート45によってホルダ本体41に固定される。本形態では、コイルプレート45のコイル5側の面には、接着剤の溜まり部としての凹部450が環状に形成されている(図5参照)。
【0027】
コイルホルダ4の第3方向Zの他方側Z2の端部には、コイル5に対する給電用の配線基板59が固定され、配線基板59には、コイル5に用いた巻線の端部56、57が接続される。
【0028】
(可動体6の構成)
図2図3および図4に示すように、磁気駆動機構10は、コイル5に対して第2方向Yの一方側Y1に配置された磁性板からなる第1ヨーク81と、コイル5に第2方向Yの一方側Y1で対向するように第1ヨーク81の第2方向Yの他方側Y2の面に保持された平板状の第1永久磁石71とを有している。また、磁気駆動機構10は、コイル5に対して第2方向Yの他方側Y2に配置された磁性板からなる第2ヨーク82と、コイル5に第2方向Yの他方側Y2で対向するように第2ヨーク82の第2方向Yの一方側Y1の面に保持された平板状の第2永久磁石72とを有している。本形態において、可動体6は、第1ヨーク81、第1永久磁石71、第2ヨーク82、および第2永久磁石72によって構成されている。
【0029】
第1ヨーク81は、第1永久磁石71と重なる第1平板部811と、第1平板部811の第3方向Zの両側の端部から第3方向Zの一方側Z1および他方側Z2に突出した2つの第2平板部812と、第1平板部811の第1方向Xの両側の端部から第2方向Yの他方側Y2に折れ曲がった2つの第3平板部813とを有している。2つの第3平板部813は、第1永久磁石71を第1方向Xの両側から覆っている。2つの第2平板部812は、コイルホルダ4のコイルプレート45に第2方向Yの一方側Y1で対向している。
【0030】
第2ヨーク82は、第1ヨーク81と同様な構造を有している。すなわち、第2ヨーク82は、第2永久磁石72と重なる第1平板部821と、第1平板部821の第3方向Zの両側の端部から第3方向Zの一方側Z1および他方側Z2に突出した2つの第2平板部822と、第1平板部821の第1方向Xの両側の端部から第2方向Yの一方側Y1に折れ曲がった2つの第3平板部823とを有している。2つの第3平板部823は、第2永久磁石72を第1方向Xの両側から覆っている。2つの第2平板部812は、コイルホルダ4のコイルプレート45に第2方向Yの一方側Y1で対向している。
【0031】
第1永久磁石71および第2永久磁石72は各々、コイル5の2つの長辺部51と第2方向Yの一方側Y1および他方側Y2で対向している。第1永久磁石71は、例えば、第1方向の一方側X1がN極に着磁され、第1方向の他方側X2がS極に着磁されている。第2永久磁石72は、第1永久磁石71とは逆に、第1方向Xの一方側X1がS極に着磁され、第1方向Xの他方側X2がN極に着磁されている。
【0032】
(ゲル状ダンパー部材10の構成)
図2図3図4および図5に示すように、可動体6は、可動体6と固定体2との間に設けられたダンパー部材91、92によって第1方向Xに直線往復移動可能に支持されている。従って、本形態では、可動体6と固定体2との間は、可動体6を第1方向Xに直線往復移動可能に支持する板バネ等が配置されていない。
【0033】
本形態において、ダンパー部材91は、第1ヨーク81とコイルホルダ4との間において、コイルホルダ4と第1ヨーク81とが第2方向Yで対向する部分に設けられている。ダンパー部材92は、第2ヨーク82とコイルホルダ4との間において、コイルホルダ4と第2ヨーク82とが第2方向Yで対向する部分に設けられている。より具体的には、ダンパー部材91は、コイルホルダ4の2つコイルプレート45と第1ヨーク81の2つの第2平板部812とに挟まれた2か所に設けられ、ダンパー部材92は、コイルホルダ4の2つ第2板部412と第2ヨーク82の2つの第2平板部822とに挟まれた2か所に設けられている。従って、ダンパー部材91、92は、コイル5の短辺部52側に設けられている。
【0034】
本形態において、ダンパー部材91、92は粘弾性体である。ここで、粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、ダンパー部材91、92(粘弾性体)として、各種ゲル状部材を用いることができる。また、ダンパー部材91、92(粘弾性体)として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。より具体的には、ダンパー部材91、92(粘弾性体)は、シリコーンゲル等からなるゲル状ダンパー部材である。本形態において、ダンパー部材91、92は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。ダンパー部材91、92は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、ダンパー部材91、92は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これにより、ダンパー部材91、92が可動体3と支持体2との間で厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、ダンパー部材91、92が大きく変形することを抑制できるので、可動体3と支持体2とのギャップが大きく変化することを抑制できる。一方、ダンパー部材91、92が厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。従って、ダンパー部材91、92では、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、ダンパー部材91、92のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。なお、ダンパー部材91、92と第1ヨーク81や第2ヨーク82との固定、およびダンパー部材91、92とコイルホルダ4との固定は、接着剤、粘着剤、あるいはシリコーンゲルの粘着性を利用して行われる。
【0035】
(動作)
本形態のリニアアクチュエータ1において、配線基板59を介して外部(上位の機器)からコイル5に給電すると、コイル5、第1永久磁石71および第2永久磁石72を備えた磁気駆動機構10によって、可動体6が第1方向Xに往復移動する。従って、リニアアクチュエータ1を手に持っていた利用者は、リニアアクチュエータ1からの振動によって情報を得ることができる。その際、コイル5に印加される信号波形については、伝達すべき情報によって、周波数を変化させる。また、コイル5に印加される信号波形については極性を反転させるが、その際、駆動信号の極性が負の期間と正の期間とにおいて電圧の変化に対して緩急の差を設ける。その結果、可動体6が第1方向Xの一方側X1に移動する際の加速度と可動体6が第1方向Xの他方側X2に移動する際の加速度との間に差が発生する。従って、利用者に対して、リニアアクチュエータ1が第1方向Xの一方側X1あるいは他方側X2に移動するような錯覚を感じさせることができる。
また、本形態では、支持体は、コイル5または磁石71,72を保持するホルダを備え、ダンパー部材91、92は、ホルダと可動体6とが第1方向で対向する個所に配置される構成を採用することができる。このようにすると、可動体6とカバーとの間にダンパー部材91、92を配置するための隙間を確保する必要がない。従って、アクチュエータの薄型化を図ることができる。また、カバーを取り付ける前の状態でダンパー部材91、92を取り付けることができるため、カバーを取り付ける前の状態でダンパー性能を含めた振動特性を検査することができる。
【0036】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のリニアアクチュエータ1においては、可動体6と固定体2との間にダンパー部材91、92が設けられているため、可動体6が共振することを抑制することができる。ここで、ダンパー部材91は、コイルホルダ4と第1ヨーク81との間に設けられており、ダンパー部材92は、コイルホルダ4と第2ヨーク82との間に設けられている。従って、ダンパー部材91、92を設けるのにケース3が用いられていない。従って、ケース3を用いなくても、固定体2と可動体6との間にダンパー部材91、92を設けることができる。それ故、ケース3を設けていない組み立て途中の段階でダンパー部材91、92を設けることができるので、製造途中にダンパー特性を含む振動特性を測定することができる。また、ダンパー部材91、92を設けるのにケース3が用いられていないので、ケース3を有しないリニアアクチュエータにダンパー部材91、92を設けることができる。
【0037】
また、可動体6の共振を抑制するためのダンパー部材91、92は、第1方向Xおよび第3方向Zで離間する計4個所に設けられているため、板状バネ等を用いずに、可動体6を第1方向Xに移動可能に支持することができる。
また、ダンパー部材91、92は、固定体2と可動体6とにおいて第1方向X(振動方向)に対して交差する第2方向Yで対向する位置に設けられているため、可動体6が第1方向Xに振動した際、そのせん断方向に変形して共振を防止する。このため、可動体6が第1方向Xに振動しても、ダンパー部材91、92の弾性率の変化が小さいので、可動体6の共振を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、ダンパー部材91は、コイルホルダ4と第1ヨーク81とが第2方向Yで対向する部分に設けられ、ダンパー部材92は、コイルホルダ4と第2ヨーク82とが第2方向Yで対向する部分に設けられている。このため、ダンパー部材91がコイルホルダ4と第1ヨーク81とが第1方向Xあるいは第3方向Zで対向する態様と違って、コイルホルダ4、第1ヨーク81および第2ヨーク82を複雑な形状にしなくても、コイルホルダ4と第1ヨーク81との間、およびコイルホルダ4と第2ヨーク82との間にダンパー部材91、92を設けることができる。
【0039】
また、コイルホルダ4は、コイル支持部40によってコイル5を第1ヨーク81とは反対側から支持するホルダ本体41と、コイル5を第1ヨーク81の側から覆うコイルプレート45とを備えているため、コイル5と重なる位置にダンパー部材91を設けることができる。
【0040】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、コイル5に対する第2方向Yの他方側Y1に第2永久磁石72および第2ヨーク82を設けたが、コイル5に対する第2方向Yの他方側Y1に第2ヨーク82のみを設け、第2永久磁石72を設けないリニアアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0041】
上記実施の形態では、コイルホルダ4およびコイル5を固定体2に設け、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を可動体6に設けたが、コイルホルダ4およびコイル5を可動体6に設け、永久磁石(第1永久磁石71および第2永久磁石72)およびヨーク(第1ヨーク81および第2ヨーク82)を固定体2に設けたリニアアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0042】
上記実施の形態では、固定体2と可動体6とにおいて第2方向Yで対向する部分にダンパー部材91、92を設けたが、固定体2と可動体6とにおいて第1方向Xあるいは第3方向Zで対向する部分にダンパー部材91、92を設けたリニアアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…リニアアクチュエータ、2…固定体、3…ケース、4…コイルホルダ、5…コイル、6…可動体、10…磁気駆動機構、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、40…コイル支持部、41…ホルダ本体、45…コイルプレート、51…長辺部、52…短辺部、71…第1永久磁石、72…第2永久磁石、81…第1ヨーク、82…第2ヨーク、91、92…ダンパー部材、311、321…側板部、401…コイル収容穴、402…支持板部、411…第1板部、412…第2板部、811、821…第1平板部、812、822…第2平板部、813、823…第3平板部、X…第1方向、Y…第2方向、Z…第3方向
図1
図2
図3
図4
図5