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特許7007918等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置および鍛造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置および鍛造方法
(51)【国際特許分類】
   B21K 1/14 20060101AFI20220118BHJP
   B21J 5/12 20060101ALI20220118BHJP
   B21J 5/06 20060101ALI20220118BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20220118BHJP
   F16D 3/223 20110101ALI20220118BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B21K1/14 A
B21J5/12 Z
B21J5/06 Z
F16D3/20 J
F16D3/223
B21J13/02 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018001253
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019118937
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】沼本 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤田 拓也
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141647(WO,A1)
【文献】特開2002-346688(JP,A)
【文献】特開2005-349417(JP,A)
【文献】特開2004-154810(JP,A)
【文献】特開2017-51960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/14
B21J 5/02 - 13/02
F16D 3/20
F16D 3/223
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状内周面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の球状内周面と内側継手部材の球状外周面との間に介在してボールを保持する保持器とを備え、前記外側継手部材と内側継手部材の各トラック溝が、継手中心に対して軸方向にオフセットのない曲率中心をもつ円弧状のボール軌道中心線を有し、このボール軌道中心線と前記継手中心を含む平面を継手の軸線に対して周方向に傾斜させ、この傾斜方向を、対になる前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで相反させた等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置であって、
外側継手部材を構成する前素材は内周面に溝が形成された筒状部を有し、この筒状部に嵌入されて拡縮可能なパンチセットと、筒状部が圧入される孔を有するダイスとを有するしごき成形機構と、
前記前素材をパンチセットに嵌合させる前に、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相を合わせる位相合わせ機構とを備え、
前記位相合わせ機構は、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相が合っている状態で、前素材の周方向に隣り合う2つの溝にそれぞれ嵌入し、それらの位相が合っていない状態でそれぞれの嵌入が規制される一対の凸部を有する位相合わせ用治具を有し、
この位相合わせ用治具にて位相合わせされた状態の前素材をその軸心廻りに回転して、パンチセットの溝部成形面の位相に合わせる回転機構とを有することを特徴とする等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項2】
前記前素材の筒状部の内周面には、奥側の軸方向略半分に周方向に傾斜した円弧状の略仕上げ形状のトラック溝面と、開口側の軸方向略半分に周方向に傾斜しない直線状の予備形状のトラック溝面とが形成され、かつ、筒状部の内周面の入口部における、周方向に隣り合う溝間は、薄肉部又は厚肉部とされて、この薄肉部と厚肉部は周方向に沿って交互に配置され、
前記位相合わせ機構は、前素材の周方向に隣り合う溝に軸方向に沿って嵌合する一対の凸部と、この凸部間に設けられて前素材の薄肉部に軸方向に沿って内嵌可能であるとともに、前素材の厚肉部への軸方向に沿った内嵌が不能とされる連結部とを有する位相合わせ用治具を備え、
ことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項3】
前記位相合わせ機構の位相合わせ用治具は、少なくとも、軸心に関して180°反対に配設される2個用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項4】
前記パンチセットは、少なくとも複数のパンチと、このパンチを進退可能に案内するパンチベースを備え、前記各パンチには、隣り合うトラック溝を成形する一対の成形面が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項5】
前記パンチセットは、前記パンチと前記パンチベースに加えて傘パンチを備えていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項6】
前記パンチと前記パンチベースがパンチホルダに収容案内され、前記パンチの前進行程長さが、前記パンチベースの前進行程長さより長いことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項7】
前記前素材の筒状部の外周面に、部分的に突出する突状部が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置。
【請求項8】
球状内周面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の球状内周面と内側継手部材の球状外周面との間に介在してボールを保持する保持器とを備え、前記外側継手部材と内側継手部材の各トラック溝が、継手中心に対して軸方向にオフセットのない曲率中心をもつ円弧状のボール軌道中心線を有し、このボール軌道中心線と前記継手中心を含む平面を継手の軸線に対して周方向に傾斜させ、この傾斜方向を、対になる前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで相反させた等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法であって、
前記前素材をパンチセットに嵌入させる前に、前素材の筒状部の内周面に形成した溝とパンチセットの溝部成形面との位相を、位相合わせ機構を用いて合わせ、この位相があっている状態で、筒状部を有する外側継手部材の前素材の筒状部に拡縮可能なパンチセットを嵌入させて、前記筒状部をダイスの孔に圧入してしごき成形し、
前記位相合わせ機構は、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相が合っている状態で、前素材の周方向に隣り合う2つの溝にそれぞれ嵌入し、それらの位相が合っていない状態でそれぞれの嵌入が規制される一対の凸部を有する位相合わせ用治具を備えることを特徴とする等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法。
【請求項9】
記前素材の筒状部の内周面に、奥側の軸方向略半分に周方向に傾斜した円弧状の略仕上げ形状のトラック溝面と、開口側の軸方向略半分に周方向に傾斜しない直線状の予備形状のトラック溝面とを形成し、かつ、前記前素材の筒状部の内周面の入口部における、周方向に隣り合う溝間を、薄肉部又は厚肉部に形成して、この薄肉部と厚肉部を周方向に沿って交互に配置し、
前記位相合わせ機構には、前素材の周方向に隣り合う溝に軸方向に沿って嵌合する一対の凸部と、この凸部間に設けられて前素材の薄肉部に軸方向に沿って内嵌可能であるとともに、前素材の厚肉部への軸方向に沿った内嵌が不能とされる連結部とを備えた位相合わせ治具を用いることを特徴とする請求項8に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法。
【請求項10】
位相合わせ用治具の一対の凸部が前素材の一対の溝に嵌合するとともにこの位相合わせ用治具の外径面が薄肉部に内嵌した状態で、この位相合わせ用治具を回転させて所定の位相位置で前素材を停止して、パンチセットとダイスによるしごき成形を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法。
【請求項11】
前記しごき成形に際し、前記前素材の筒状部の開口部側からダイスの孔に圧入することを特徴とする請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置および鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手の外側継手部材は、一般に、図29に示すように、内周面に軸方向に延びるトラック溝131が形成されたマウス部132と、このマウス部132の底壁から突設する軸部133とを備えたものがある。この場合、マウス部132のトラック溝131は、周方向に傾斜していない円弧状に形成されたものであって、そのマウス部132の開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている。この構造をもつ等速自在継手の外側継手部材を成形する場合、冷間しごき加工で成形することが一般的である。
【0003】
冷間しごき加工は、図30に示すように、鍛造装置(冷間しごき加工工具)が用いられる。冷間しごき加工工具の主な構成は、軸方向で傾斜した方向に進退可能なパンチ120、このパンチ120を案内するパンチベース121、それぞれのパンチ120を継手中心の軸方向位置に拘束する傘パンチ122とからなるパンチセット142と、前素材140を押圧するダイス123からなる。なお、パンチ120には、トラック溝形成面147が形成されている。
【0004】
冷間しごき加工前に、前素材140が亜熱問鍛造にて成形され、表面潤滑処理(例えば、ボンデ処理)を施す。パンチ120に前素材140を被せ、ダイス123の内周面123aが前素材140の外周面を押圧し、しごき加工を行う。しごき加工後、鍛造完了品はスプリングパック によりダイス123に挟まれている。ダイス123の上昇に伴い、鍛造完了品はパンチ120を牽引しながら上昇する。図31(a)から図31(b)に示すように、パンチ120は、軸方向に傾斜したパンチベース121に案内されて縮径し、鍛造完了品とパンチ120の離型を実現する。
【0005】
ところで、図29に示すような外側継手部材を鍛造成形する場合、図31に示すような前素材140を用いる。この前素材140は、筒状部140aの内周面141にトラック形成溝148が形成されている。そして、鍛造加工(しごき加工)する場合、前素材140のトラック形成溝148の位相と、パンチ120のトラック溝形成面147の位相が合っている必要がある。
【0006】
この際、図32に示すような位置決め機構を用いて位相を合わせることができる。前素材140を支持するプレート151と、ピンホルダー152から立設される一対の位相合わせピン153,153と、ピンホルダー152および位相合わせピン153,153を弾性的に押圧して上昇させる押圧部材(バネ部材)154と、回転駆動するシャフト155とを備える。また、位相合わせピン153,153は、シャフト155の先端部に付設されるヘッド156に挿通されている。このため、シャフト155の回転に伴ってヘッド156が回転し、位相合わせピン153,153が、シャフトの軸心廻りに回転する。なお、押圧部材(バネ部材)154は、図示省略のストッパ機構(例えば、シリンダ機構)にてその付勢力を抑えている。
【0007】
次に、図32に示す位置決め機構を用いて前素材140の位置決め方法を説明する。まず、この位置決め機構を初期状態とする。初期状態とは、ストッパ機構にて押圧部材(バネ部材)154の付勢力を抑えた状態として、ヒンホルダー152から立設される一対の位相合わせピン153,153の先端をヘッド156の上面よりも下位となるようにセットする。
【0008】
そして、前素材140を移動させて、ヘッド156と同心の位置で保持する。この状態では、前素材140の筒状部140aの開口端面140a1をプレート151に載置した状態としている。この状態で、押圧部材(バネ部材)154の付勢力を開放して、ピンホルダー152および位相合わせピン153,153を上昇させる。この際、上昇する位相合わせピン153,153の位相が、前素材140の溝148,148の位相と一致していた場合、位相合わせピン153,153がその対応する前素材140の溝148,148に、図32に示すように嵌入(挿入)することができる。
【0009】
これに対して、位相合わせピン153,153の位相と、前素材140の溝148,148の位相とが一致していない場合、般入(挿入)することができない。そこで、位相合わせピン153,153と前素材140の溝148,148の位相とが一致するように、シャフト155を回転させる。これによって、図32に示すように位相合わせピン153,153と前素材140の溝148,148に椴入(挿入)することができる。
【0010】
その後は、ピン153,153の嵌入状態で、シャフト155を回転させて、前素材140を回転させ、パンチ120の位相と合う位置で停止する。この状態で、図30に示すように、前素材140の筒状部140aにパンチセット142を嵌入することができ、筒状部140aをダイス123の孔123aに圧入してしごき成形することができる。
【0011】
ところで、図33に示すように等速自在継手の外側継手部材は、そのトラック溝131A,131Bがマウス部132の内径面(内周面)の軸方向に対して傾斜した円弧状の溝とされ、そして、周方向に隣り合うトラック溝131A,131Bの傾斜方向を相反させ、かつ、マウス部132の開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている。
【0012】
このような外側継手部材132を成形する場合、従来には、特許文献1に記載のような図34(a)(b)に示すような前素材140を用いるものがある。この場合、「前素材の亜熱問鍛造において一体型パンチを用いて、鍛造コストの抑制とトラック溝の精度向上を図ることができる。」という作用効果を得るものである。この場合の前素材140は、図34(a)(b)に示すように、奥側の軸方向略半分に周方向に傾斜した円弧状の略仕上げ形状のトラック溝面148Aa,148Baと、開口側の軸方向略半分に周方向に傾斜しない直線状の予備形状のトラック溝面148Ab,148Bbとが形成されている。このような場合、前素材140の開口部における溝間隔は、均等に形成されている。
【0013】
この場合、図34(a)(b)に示すようなパンチセット142が用いられる。パンチセット142は、少なくとも複数のパンチ145と、このパンチ145を進退可能に案内するパンチベース146と、傘パンチ143とを備える。各パンチ145には、隣り合うトラック溝148A,148Bを成形する一対の溝部成形面147A,147Bが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2017-144452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図34(a)は、前素材140の溝148A(148Aa,148Ab),148B(148Ba,148Bb)とパンチ145の溝部成形面147A,147Bとの位相が合っている場合を示し、図34(b)は、前素材140の溝148とパンチ145の溝部成形面147との位相が合っていない場合を示している。しかしながら、図34(a)及び図34(b)に示す前素材140では、開口部における溝間隔は、均等に形成されている。このため、前素材140の溝148A(148Aa,148Ab),148B(148Ba,148Bb)とパンチ145の溝部成形面147A,147Bとの位相が合っていない場合でも、図32で示す位置決め用ピン153,153を嵌入することができる。
【0016】
このため、図32に示すような位置決め機構でもって位置決めしても、前素材140の溝148A,148Aとパンチ145の溝部成形面147A,147Aとの位相が合っていない場合があり、図33に示すように、トラック溝131A,131Bが、周方向に傾斜している円弧状に形成されたものであって、開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている外側継手部材132を安定して成形できなかった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラック溝が、周方向に傾斜している円弧状に形成されたものであって、開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている外側継手部材を安定して成形でき、しかも、既存のしごき加工装置をそのまま使用することができる外側継手部材の鍛造装置および鍛造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置は、球状内周面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の球状内周面と内側継手部材の球状外周面との間に介在してボールを保持する保持器とを備え、前記外側継手部材と内側継手部材の各トラック溝が、継手中心に対して軸方向にオフセットのない曲率中心をもつ円弧状のボール軌道中心線を有し、このボール軌道中心線と前記継手中心を含む平面を継手の軸線に対して周方向に傾斜させ、この傾斜方向を、対になる前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで相反させた等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置であって、外側継手部材を構成する前素材は内周面に溝が形成された筒状部を有し、この筒状部に嵌入されて拡縮可能なパンチセットと、筒状部が圧入される孔を有するダイスとを有するしごき成形機構と、前記前素材をパンチセットに嵌合させる前に、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相を合わせる位相合わせ機構とを備え、前記位相合わせ機構は、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相が合っている状態で、前素材の周方向に隣り合う溝に嵌入し、それらの位相が合っていない状態で嵌入が規制される一対の凸部を有する位相合わせ用治具を有し、位相合わせ用治具と、この位相合わせ用治具にて位相合わせされた状態の前素材をその軸心廻りに回転して、パンチセットの溝部成形面の位相に合わせる回転機構とを有するものである。
【0019】
本発明の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置によれば、位相合わせ機構にて、前素材をパンチセットに嵌合させる前に、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相を合わせることができるので、しごき成形機構において、前素材の溝の位相とパンチセットの溝部成形面との位相を合わせた状態で、筒状部にパンチセットを嵌入することができる。また、しごき成形機構として、前素材の筒状部に嵌入されて拡縮可能なパンチセットと、筒状部が圧入される孔を有するダイスとを有するものであり、既存のしごき成形機構(鍛造装置)をそのまま使用することができる。
【0020】
また、前記前素材は、筒状部の内周面の入口部における、周方向に隣り合う溝間は、薄肉部又は肉厚部とされて、この薄肉部と肉厚部は周方向に沿って交互に配置され、前記位相合わせ機構は、前素材の周方向に隣り合う溝に軸方向に沿って嵌合する一対の凸部と、この凸部間に設けられて前素材の薄肉部に軸方向に沿って内嵌可能であるとともに、前素材の肉厚部への軸方向に沿った内嵌が不能とされる連結部とを有する位相合わせ用治具を備えたものが好ましい。
【0021】
このように設定することによって、位相合わせ用治具の連結部が前素材に嵌合した状態では、前素材の溝の位相を所望の位相に設定することができる。このため、回転機構によって前素材を回転させることによって、前素材の溝の位相とパンチセットの溝部成形面の位相とを安定して合わせることができる。
【0022】
前記位相合わせ機構の位相合わせ用治具は、少なくとも、軸心に関して180°反対に配設される2個用いるのが好ましい。このように2個用いることによって、位相合わせが安定する。
【0023】
前記パンチセットは、少なくとも複数のパンチと、このパンチを進退可能に案内するパンチベースを備え、前記各パンチには、隣り合うトラック溝を成形する一対の成形面が形成されているものであってもよい。
【0024】
前記パンチセットは、前記パンチと前記パンチベースに加えて傘パンチを備えているものであってもよい。
【0025】
前記パンチと前記パンチベースがパンチホルダに収容案内され、前記パンチの前進行程長さが、前記パンチベースの前進行程長さより長いものであってもよい。
【0026】
前記前素材の筒状部の内周面には、奥側の軸方向略半分に周方向に傾斜した円弧状の略仕上げ形状のトラック溝面と、開口側の軸方向略半分に周方向に傾斜しない直線状の予備形状のトラック溝面とが形成されているものであってもよい。
【0027】
前記前素材の筒状部の外周面に、部分的に突出する突状部が形成されているものであってもよい。
【0028】
本発明の等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法は、球状内周面に複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、球状外周面に前記外側継手部材のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、前記外側継手部材の球状内周面と内側継手部材の球状外周面との間に介在してボールを保持する保持器とを備え、前記外側継手部材と内側継手部材の各トラック溝が、継手中心に対して軸方向にオフセットのない曲率中心をもつ円弧状のボール軌道中心線を有し、このボール軌道中心線と前記継手中心を含む平面を継手の軸線に対して周方向に傾斜させ、この傾斜方向を、対になる前記外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝とで相反させた等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法であって、前記前素材をパンチセットに嵌入させる前に、前素材の筒状部の内周面に形成した溝とパンチセットの溝部成形面との位相を、位相合わせ機構を用いて合わせ、この位相があっている状態で、筒状部を有する外側継手部材の前素材の筒状部に拡縮可能なパンチセットを嵌入させて、前記筒状部をダイスの孔に圧入してしごき成形し、前記位相合わせ機構は、前素材の内周面の溝とパンチセットの溝部成形面との位相が合っている状態で、前素材の周方向に隣り合う2つの溝にそれぞれ嵌入し、それらの位相が合っていない状態でそれぞれの嵌入が規制される一対の凸部を有する位相合わせ用治具を備えるものである。
【0029】
本発明の等速自在継手の外側継手部材の鍛造方法によれば、前素材(溝が周方向に傾斜している円弧状に形成され、かつ開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている前素材)の溝の位相とパンチセットの溝部成形面との位相を合わせた状態で、筒状部にパンチセットを嵌入することができる。このため、溝の位相とパンチセットの溝部成形面との位相とがあった状態で、前素材の筒状部をダイスの孔に圧入してしごき成形することができる。
【0030】
前記前素材の筒状部の内周面の入口部における、周方向に隣り合う溝間を、薄肉部又は肉厚部に形成して、この薄肉部と肉厚部を周方向に沿って交互に配置し、前記位相合わせ機構には、前素材の周方向に隣り合う溝に軸方向に沿って嵌合する一対の凸部と、この凸部間に設けられて前素材の薄肉部に軸方向に沿って内嵌可能であるとともに、前素材の肉厚部への軸方向に沿った内嵌が不能とされる連結部とを備えた位相合わせ治具を用いるのが好ましい。
【0031】
このように設定することによって、位相合わせ用治具の連結部が前素材に嵌合した状態では、前素材の溝の位相を所望の位相(パンチセットの溝部成形面)に設定することができる。
【0032】
位相合わせ用治具の一対の凸部が前素材の一対の溝に嵌合するとともにこの位相合わせ用治具の外径面が薄肉部に内嵌した状態で、この位相合わせ用治具を回転させて所定の位相位置で前素材を停止して、パンチセットとダイスによるしごき成形を行うのが好ましい。このように設定することによって前素材を回転させることによって、前素材の溝の位相とパンチセットの溝部成形面の位相とを安定して合わせることができる。
【0033】
前記しごき成形に際し、前記前素材の筒状部の開口部側からダイスの孔に圧入するように設定できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、前素材(溝が周方向に傾斜している円弧状に形成され、かつ開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている前素材)の位相とパンチセットの溝部成形面との位相とがあった状態で、前素材の筒状部をダイスの孔に圧入してしごき成形することができる。このため、成形不良や金型(ダイス)破損等を防止できる。しかも、金型装置(しごき成形機構)としては、既存の装置をそのまま用いることができ、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置における位相合わせ機構を用いて位相合わせしている状態の要部斜視図である。
図2図1に示す位相合わせ機構の要部斜視図である。
図3】前素材の端面図である。
図4】前素材の側面図である。
図5】位相合わせ用治具の斜視図である。
図6】位相合わせ用治具が前素材に嵌合できない状態の端面図である。
図7】位相合わせ用治具が前素材に嵌合している状態の端面図である。
図8】しごき成形機構のパンチセットを示す正面図である。
図9】しごき成形機構のパンチセットと前素材との関係を示し、(a)は位相が合っている状態の正面図であり、(b)は位相が合っていない状態の正面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る鍛造方法に基づいて製造された外側継手部材が組み込まれた等速自在継手を示し、(a)は部分縦断面図であり、(b)は側面図である。
図11】等速自在継手の外側継手部材を示し、(a)は部分縦断面図であり、(b)は側面図である。
図12】等速自在継手の内側継手部材を示し、(a)は左側面図であり、(b)は内外周面を示す図であり、(c)は右側面図である。
図13】外側継手部材のトラック溝の詳細を示す部分縦断面図である。
図14】内側継手部材のトラック溝の詳細を示す縦断面図である。
図15図10(a)の等速自在継手が最大作動角を取った状態を示す図である。
図16図11(b)のS1-S1線で矢視した外側継手部材の斜視図である。
図17】本発明の一実施形態に係る鍛造方法の外側継手部材の前素材を示し、(a)は前素材の縦断面図であり、(b)は側面図である。
図18図17(b)のS2-N-S2線で矢視した前素材の斜視図である。
図19図18の前素材の内周面を示す部分展開図である。
図20図18の前素材の外周面を示す部分斜視図である。
図21】鍛造金型を示し、(a)はパンチの斜視図であり、(b)はパンチベースの斜視図である。
図22図21の鍛造金型の先端の成形部分を示し、(a)はパンチの斜視図であり、(b)はパンチの展開図である。
図23】パンチベースの先端部の斜視図である。
図24】パンチベースにパンチを組合わせた状態を示し、(a)はパンチが拡径した状態を示す斜視図であり、(b)はパンチが縮径した状態を示す斜視図である。
図25】パンチホルダの縦断面で見た斜視図である。
図26】金型をセットした状態を示す斜視図である。
図27】成形工程を示し、(a)はブレス装置にワーク投入状態の断面図であり、(b)は成形開始状態の断面図であり、(c)は成形完了状態を示す断面図である。
図28】排出工程を示し、(a)はプレートからのワーク排出状態の断面図であり、(b)はダイスからのワーク排出状態の断面図であり、(c)はパンチからのワーク排出状態の断面図である。
図29】一般的な等速自在継手の外側継手部材の一部断面で示す斜視図である。
図30】従来の鍛造装置の一部断面で示す斜視図である。
図31】従来の鍛造装置のパンチセットを示し、(a)は拡径した状態の一部断面で示す斜視図であり、(b)は縮径した状態の一部断面で示す斜視図である。
図32】従来の位置決め機構を示す斜視図である。
図33】トラック溝が、周方向に傾斜している円弧状に形成されたものであって、そのマウス部の開口側のトラック溝底の径よりも中央部のトラック溝底の径が大きく設定されている外側継手部材の一部断面で示す斜視図である。
図34】前素材と鍛造装置のパンチセットとの関係を示し、(a)は前素材の溝の位相とパンチセットの溝部成形面の位相とが合っている状態の説明図であり、(b)は前素材の溝の位相とパンチセットの溝部成形面の位相とが合っていない状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明の実施の形態を図1図28に基づいて説明する。図10(a)は等速自在継手の部分縦断面図であり、図10(b)は図10(a)の右側面図である。等速自在継手1は、固定式等速自在継手であり、外側継手部材2、内側継手部材3、トルクを伝達するボール4および保持器5を主な構成とする。図10および図11図12に示すように、外側継手部材2および内側継手部材3のそれぞれ8本のトラック溝7、9は、継手の軸線N-Nに対して周方向に傾斜すると共にその傾斜方向が周方向に隣り合うトラック溝7A、7Bおよび9A、9Bで互いに反対方向に形成されている。そして、外側継手部材2および内側継手部材3の対となるトラック溝7A、9Aおよび7B、9Bはそれぞれ互いに反対方向(相反)に傾斜し、その各交差部に8個のボール4が配置されている。トラック溝7、9の詳細は後述する。
【0037】
継手の縦断面を図10(a)に示す。軸方向に延びるトラック溝の傾斜状態や湾曲状態などの形態、形状を的確に示すために、本明細書では、ボール軌道中心線という用語を用いて説明する。ここで、ボール軌道中心線とは、トラック溝に配置されたボールがトラック溝に沿って移動するときのボールの中心が描く軌跡を意味する。したがって、トラック溝の傾斜状態は、ボール軌道中心線の傾斜状態と同じであり、また、トラック溝の円弧状、あるいは直線状の状態は、ボール軌道中心線の円弧状、あるいは直線状の状態と同じである。
【0038】
図10(a)に示すように、外側継手部材2のトラック溝7はボール軌道中心線Xを有し、トラック溝7は、継手中心Oを曲率中心とする円弧状のボール軌道中心線Xaを有する第1のトラック溝部7aと、直線状のボール軌道中心線Xbを有する第2のトラック溝部7bとからなり、第1のトラック溝部7aのボール軌道中心線Xaに第2のトラック溝部7bのボール軌道中心線Xbが接線として滑らかに接続されている。一方、内側継手部材3のトラック溝9はボール軌道中心線Yを有し、トラック溝9は、継手中心Oを曲率中心とする円弧状のボール軌道中心線Yaを有する第1のトラック溝部9aと、直線状のボール軌道中心線Ybを有する第2のトラック溝部9bとからなり、第1のトラック溝部9aのボール軌道中心線Yaに第2のトラック溝部9bのボール軌道中心線Ybが接線として滑らかに接続されている。
【0039】
第1のトラック溝部7a、9aのボール軌道中心線Xa、Yaの各曲率中心を、継手中心O、すなわち継手の軸線N-N上に配置したことにより、トラック溝深さを均一にすることができ、かつ加工を容易にすることができる。トラック溝7、9の横断面形状は、楕円形状やゴシックアーチ形状に形成されており、トラック溝7、9とボール4は、接触角(30°~45°程度)をもって接触する、所謂、アンギュラコンタクトとなっている。したがって、ボール4は、トラック溝7、9の溝底より少し離れたトラック溝7、9の側面側で接触している。
【0040】
図11に基づき、外側継手部材2のトラック溝7が継手の軸線N-Nに対して周方向に傾斜している状態を詳細に説明する。図11(a)は外側継手部材2の部分縦断面を示し、図11(b)は外側継手部材2の右側面を示す。外側継手部材2のトラック溝7は、その傾斜方向の違いから、トラック溝7A、7Bの符号を付す。図11(a)に示すように、トラック溝7Aのボール軌道中心線Xと継手中心Oを含む平面Mは、継手の軸線N-Nに対して周方向に角度γだけ傾斜している。そして、トラック溝7Aに周方向に隣り合うトラック溝7Bは、図示は省略するが、トラック溝7Bのボール軌道中心線Xと継手中心Oを含む平面Mが、継手の軸線N-Nに対して、トラック溝7Aの傾斜方向とは反対方向に角度γだけ傾斜している。この例では、トラック溝7Aのボール軌道中心線Xの全域、すなわち、第1のトラック溝部7aのボール軌道中心線Xaおよび第2のトラック溝部7bのボール軌道中心線Xbの両方が平面M上に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、第1のトラック溝部7aのボール軌道中心線Xaのみが平面Mに含まれている形態も実施することができる。したがって、少なくとも第1のトラック溝部7aのボール軌道中心線Xaと継手中心Oを含む平面Mが継手の軸線N-Nに対して周方向に傾斜すると共にその傾斜方向が周方向に隣り合う第1のトラック溝部7aで互いに反対方向に形成されていればよい。
【0041】
ここで、トラック溝の符号について補足する。外側継手部材2のトラック溝全体を指す場合は符号7を付し、その第1のトラック溝部に符号7a、第2のトラック溝部に符号7bを付す。さらに、傾斜方向の違うトラック溝を区別する場合には符号7A、7Bを付し、それぞれの第1のトラック溝部に符号7Aa、7Ba、第2のトラック溝部に符号7Ab、7Bbを付す。後述する内側継手部材3のトラック溝についても、同様の要領で符号を付している。
【0042】
次に、図12に基づき、内側継手部材3のトラック溝9が継手の軸線N-Nに対して周方向に傾斜している状態を詳細に説明する。図12(b)は内側継手部材3の外周面を示し、図12(a)は内側継手部材3の左側面を、図12(c)は右側面を示す。内側継手部材3のトラック溝9は、その傾斜方向の違いから、トラック溝9A、9Bの符号を付す。図13(b)に示すように、トラック溝9Aのボール軌道中心線Yと継手中心Oを含む平面Qは、継手の軸線N-Nに対して周方向に角度γだけ傾斜している。そして、トラック溝9Aに周方向に隣り合うトラック溝9Bは、図示は省略するが、トラック溝9Bのボール軌道中心線Yと継手中心Oを含む平面Qが、継手の軸線N-Nに対して、トラック溝9Aの傾斜方向とは反対方向に角度γだけ傾斜している。傾斜角γは、等速自在継手1の作動性および内側継手部材3のトラック溝の最も接近した側の球面幅Fを考慮し、4°~12°にすることが好ましい。また、前述した外側継手部材と同様、この例では、トラック溝9Aのボール軌道中心線Yの全域、すなわち、第1のトラック溝部9aのボール軌道中心線Yaおよび第2のトラック溝部9bのボール軌道中心線Ybの両方が平面Q上に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、第1のトラック溝部9aのボール軌道中心線Yaのみが平面Qに含まれている形態も実施することができる。したがって、少なくとも第1のトラック溝部9aのボール軌道中心線Yaと継手中心Oを含む平面Qが継手の軸線N-Nに対して周方向に傾斜すると共にその傾斜方向が周方向に隣り合う第1のトラック溝部9aで互いに反対方向に形成されていればよい。内側継手部材3のトラック溝9のボール軌道中心線Yは、作動角0°の状態で継手中心Oを含み、継手の軸線N-Nに対して垂直な平面Pを基準として、外側継手部材2の対となるトラック溝7のボール軌道中心線Xと鏡像対称に形成されている。
【0043】
図13に基づいて、外側継手部材2の縦断面より見たトラック溝の詳細を説明する。図13の部分縦断面は、前述した図11(a)のトラック溝7Aのボール軌道中心線Xと継手中心Oを含む平面Mで見た断面図である。したがって、厳密には、継手の軸線N-Nを含む平面における縦断面図ではなく、角度γだけ傾斜した断面を示している。図13には、外側継手部材2のトラック溝7Aが示されているが、トラック溝7Bは、傾斜方向がトラック溝7Aとは反対方向であるだけで、その他の構成はトラック溝7Aと同じであるので、説明は省略する。外側継手部材2の球状内周面6にはトラック溝7Aが概ね軸方向に沿って形成されている。トラック溝7Aはボール軌道中心線Xを有し、トラック溝7Aは、継手中心Oを曲率中心(軸方向のオフセットがない)とする円弧状のボール軌道中心線Xaを有する第1のトラック溝部7Aaと、直線状のボール軌道中心線Xbを有する第2のトラック溝部7Abとからなる。そして、第1のトラック溝部7Aaのボール軌道中心線Xaの開口側の端部Aにおいて、第2のトラック溝部7Abの直線状のボール軌道中心線Xbが接線として滑らかに接続されている。すなわち、端部Aが第1のトラック溝部7Aaと第2のトラック溝部7Abとの接続点である。端部Aは継手中心Oよりも開口側に位置するので、第1のトラック溝部7Aaのボール軌道中心線Xaの開口側の端部Aにおいて接線として接続される第2のトラック溝部7Abの直線状のボール軌道中心線Xbは、開口側に行くにつれて継手の軸線N-N(図10(a)参照)に接近するように形成されている。これにより、最大作動角時の有効トラック長さを確保すると共にくさび角が過大になるのを抑制することができる。
【0044】
図13に示すように、端部Aと継手中心Oとを結ぶ直線をLとする。トラック溝7Aのボール軌道中心線Xと継手中心Oを含む平面M(図11(a)参照)上に投影された継手の軸線N'-N'は継手の軸線N-Nに対しγだけ傾斜し、軸線N'-N'の継手中心Oにおける垂線Kと直線Lとがなす角度をβ'とする。上記の垂線Kは作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面P上にある。したがって、直線Lが作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面Pに対してなす角度βは、sinβ=sinβ'×cosγの関係になる。
【0045】
同様に、図14に基づいて、内側継手部材3の縦断面よりトラック溝の詳細を説明する。図14の縦断面は、前述した図12(b)のトラック溝9Aのボール軌道中心線Yと継手中心Oを含む平面Qで見た断面図である。したがって、図13と同様に、厳密には、継手の軸線N-Nを含む平面における縦断面図ではなく、角度γだけ傾斜した断面を示している。図14には、内側継手部材3のトラック溝9Aが示されているが、トラック溝9Bは、傾斜方向がトラック溝9Aとは反対方向であるだけで、その他の構成はトラック溝9Aと同じであるので、説明は省略する。内側継手部材3の球状外周面8にはトラック溝9Aが概ね軸方向に沿って形成されている。トラック溝9Aはボール軌道中心線Yを有し、トラック溝9Aは、継手中心Oを曲率中心(軸方向のオフセットがない)とする円弧状のボール軌道中心線Yaを有する第1のトラック溝部9Aaと、直線状のボール軌道中心線Ybを有する第2のトラック溝部9Abとからなる。そして、第1のトラック溝部9Aaのボール軌道中心線Yaの奥側の端部Bにおいて、第2のトラック溝部9Abのボール軌道中心線Ybが接線として滑らかに接続されている。すなわち、端部Bが第1のトラック溝部9Aaと第2のトラック溝部9Abとの接続点である。端部Bは継手中心Oよりも奥側に位置するので、第1のトラック溝部9Aaのボール軌道中心線Yaの奥側の端部Bにおいて接線として接続される第2のトラック溝部9Abの直線状のボール軌道中心線Ybは、奥側に行くにつれて継手の軸線N-N(図10(a)参照)に接近するように形成されている。これにより、最大作動角時の有効トラック長さを確保すると共にくさび角が過大になるのを抑制することができる。
【0046】
図14に示すように、端部Bと継手中心Oとを結ぶ直線をRとする。トラック溝9Aのボール軌道中心線Yと継手中心Oを含む平面Q(図12(b)参照)上に投影された継手の軸線N'-N'は継手の軸線N-Nに対しγだけ傾斜し、軸線N'-N'の継手中心Oにおける垂線Kと直線Rとがなす角度をβ'とする。上記の垂線Kは作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面P上にある。したがって、直線Rが作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面Pに対してなす角度βは、sinβ=sinβ'×cosγの関係になる。
【0047】
次に、直線L、Rが作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面Pに対してなす角度βについて説明する。作動角θを取ったとき、外側継手部材2および内側継手部材3の継手中心Oを含む平面Pに対して、ボール4がθ/2だけ移動する。使用頻度が多い作動角の1/2より角度βを決め、使用頻度が多い作動角の範囲においてボール4が接触するトラック溝の範囲を決める。ここで、使用頻度が多い作動角について定義する。まず、継手の常用角とは、水平で平坦な路面上で1名乗車時の自動車において、ステアリングを直進状態にした時にフロント用ドライブシャフトの固定式等速自在継手に生じる作動角をいう。常用角は、通常、2°~15°の間で車種ごとの設計条件に応じて選択・決定される。そして、使用頻度の多い作動角とは、上記の自動車が、例えば、交差点の右折・左折時などに生じる高作動角ではなく、連続走行する曲線道路などで固定式等速自在継手に生じる作動角をいい、これも車種ごとの設計条件に応じて決定される。使用頻度の多い作動角は最大20°を目処とする。これにより、直線L、Rが作動角0°の状態の継手中心Oを含む平面Pに対してなす角度βを3°~10°と設定する。ただし、角度βは3°~10°に限定されるものではなく、車種の設計条件に応じて適宜設定することができる。角度βを3°~10°に設定することで種々の車種に汎用することができる。
【0048】
上記の角度βにより、図13において、第1のトラック溝部7Aaのボール軌道中心線Xaの端部Aは、使用頻度が多い作動角時に軸方向に沿って最も開口側に移動したときのボールの中心位置となる。同様に、内側継手部材3では、図14において、第1のトラック溝部9Aaのボール軌道中心線Yaの端部Bは、使用頻度が多い作動角時に軸方向に沿って最も奥側に移動したときのボールの中心位置となる。このように設定されているので、使用頻度が多い作動角の範囲では、ボール4は、外側継手部材2および内側継手部材3の第1のトラック溝部7Aa、9Aaと、傾斜方向が反対の7Ba、9Ba〔図11(a)、図12(b)参照〕に位置するので、保持器5の周方向に隣り合うポケット部5aにボール4から相反する方向の力が作用し、保持器5は継手中心Oの位置で安定する〔図10(a)参照〕。このため、保持器5の球状外周面12と外側継手部材2の球状内周面6との接触力、および保持器5の球状内周面13と内側継手部材3の球状外周面8との接触力が抑制され、高負荷時や高速回転時に継手が円滑に作動し、トルク損失や発熱が抑えられ、耐久性が向上する。
【0049】
等速自在継手1においては、保持器5のポケット部5aとボール4との嵌め合いをすきま設定にしてもよい。この場合、前記すきまは0~40μm程度に設定することが好ましい。すきま設定にすることにより、保持器5のポケット部5aに保持されたボール4をスムーズに作動させることができ、更なるトルク損失の低減を図ることができる。
【0050】
等速自在継手1が最大作動角を取った状態を図15に示す。外側継手部材2のトラック溝7Aは、直線状のボール軌道中心線Xbを有する第2のトラック溝部7Abが開口側に形成されている。コンパクト設計の中で、この第2のトラック溝部7Abの存在により、最大作動角時における有効トラック長さを確保すると共にくさび角が過大になるのを抑制することができる。そのため、図示のように、最大作動角θmaxを47°程度の高角にしても、必要十分な入口チャンファ10を設けた状態でボール4がトラック溝部7Abと接触状態を確保することができ、かつ、くさび角が大きくならないように抑えることができる。
【0051】
尚、高作動角の範囲では、周方向に配置されたボール4が第1のトラック溝部7Aa、9Aa〔7Ba、9Ba、図11(a)および図12(b)参照〕と第2のトラック溝部7Ab、9Ab〔7Bb、9Bb、図11(a)および図12(b)参照〕に一時的に分かれて位置する。これに伴い、保持器5の各ポケット部5aにボール4から作用する力が釣り合わず、保持器5と外側継手部材2との球面接触部12、6および保持器5と内側継手部材3との球面接触部13、8の接触力が発生するが、高作動角の範囲は使用頻度が少ないため、この等速自在継手1は、総合的にみるとトルク損失や発熱を抑制できる。したがって、トルク損失および発熱が少なく高効率で、高作動角を取ることができ、高作動角時の強度や耐久性にも優れたコンパクトな固定式等速自在継手を実現することができる。
【0052】
前述した等速自在継手の一例では、第2のトラック溝部7b、9bのボール軌道中心線Xb、Ybが直線状に形成されたものを例示したが、これに限られず、第2のトラック溝部のボール軌道中心線を比較的大きな曲率半径を有する凹円弧状あるいは凸円弧状に形成したものでもよい。この場合でも、最大作動角時における有効トラック長さを確保すると共に、くさび角が過大になるのを抑制することができる。
【0053】
本発明の実施形態に係る鍛造方法に基づいて製造された外側継手部材が組み込まれた等速自在継手の一例およびその構成部材は、以上説明したとおりである。次に本発明の実施形態に係る外側継手部材の鍛造方法を図16図28に基づいて説明する。
【0054】
図16は、外側継手部材2の単体完成品を図11(b)のS1-S1線で矢視した斜視図である。外側継手部材2の詳細は、前述したとおりである。外側継手部材2は、機械構造用炭素鋼(例えば、S53C)等からなり、表面には高周波焼入れによる硬化層が形成されている。外側継手部材2は、奥側に第1のトラック溝部7a(7Aa、7Ba)が形成され、開口側に第2のトラック溝部7b(7Ab、7Bb)が形成され、両トラック溝部が滑らかに接続されている。トラック溝7(7A、7B)間には球状内周面6が形成されている。後述する成形工程後の鍛造完了品に旋削加工、スプライン加工、熱処理、研削加工などを経て図11に示す完成品となる。
【0055】
本実施形態は、前述した外側継手部材2の鍛造方法を特徴とするものである。本実施形態の鍛造方法における前素材を図17図20に基づいて説明する。図17(a)は前素材の縦断面図で、図17(b)は側面図である。図18は、図17(b)のS2-N-S2線で矢視した前素材の斜視図で、図19は、図18の前素材の内周面を示す展開図で、図20は、図18の前素材の外周面を示す斜視図である。
【0056】
本実施形態の鍛造方法における冷間しごき加工前の図17(a)および図17(b)に示す前素材は、亜熱間鍛造により成形され、表面潤滑処理(例えば、ボンデ処理)が施される。前素材W1は、筒状部W1bと軸部W1cを有し、筒状部W1bの内周面に、第1のトラック溝部7a(7Aa、7Ba)(図16参照)に対応する略仕上げ形状の面7a'(7Aa'、7Ba')〔以下、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')と略称する。〕が図17(a)の継手中心Oから奥側略半分に形成されている。第1のトラック溝部7a(7Aa、7Ba)の残部と直線状の第2のトラック溝部7b(7Ab、7Bb)に対応する予備形状の面7b'(7Ab'、7Bb')〔以下、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')と略称する。〕が図17(a)の継手中心Oから開口側略半分に形成されている。略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')は、周方向に傾斜し、かつ継手中心Oを曲率中心とする円弧状に形成されている。一方、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')は、周方向の傾斜のない直線状に形成されている。
【0057】
前素材W1の略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')は、継手中心Oから奥側略半分に形成する形態にしたので、トラック溝面の傾斜角γが比較的に小さいことと、継手中心Oを曲率中心とする奥側略半分が円弧状であるので、亜熱間鍛造において一体型パンチによって、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')の肩部との間の干渉なく成形することができる。これにより、鍛造コストの抑制とトラック溝の精度向上を図ることができる。
【0058】
球状内周面6(図16参照)に対応する略仕上げ形状の内周面6'a(以下、略仕上げ形状の球状内周面6'aと略称する。)が、図17(a)の継手中心Oから奥側略半分に形成され、図17(a)の継手中心Oから開口側略半分は略円筒状の予備形状の内周面6'b(以下、予備形状の略円筒状内周面6'bと略称する。)が形成されている。
【0059】
斜視図である図18に、前素材W1の略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')、略仕上げ形状の球状内周面6'aおよび予備形状の略円筒状内周面6'bをより分かりやすく示す。予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')および予備形状の略円筒状内周面6'bは、金型の抜け勾配として、開口側に向けて若干拡径するテーパ状に形成されている。
【0060】
また、展開図である図19に、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')および予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')の周方向の傾斜状態をより分かりやすく示す。略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')のボール軌道中心線Xa'は継手の軸線N-Nに対してγだけ周方向に傾斜している〔図11(a)参照〕。これに対して、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')のボール軌道中心線Xb'は周方向の傾斜のない直線状に形成されている。
【0061】
図20に示すように、前素材W1の外周面には、周方向の4箇所に部分的に外径を大きくして肉厚を増加させた突状部W1aが形成されている。突状部W1aは、図18の予備形状の第2のトラック溝面7Ab'と7Bb'を周方向で反対方向に傾斜させる成形の際、材料が十分充足するように設けられている。換言すると、予備形状の第2のトラック溝面7Ab'と7Bb'の周方向の間隔を開口側で広げる成形の際、材料が十分充足するように設けられている。このため、突状部W1aは、図17(b)、図18および図20に示すG1、G2の範囲で部分的に形成されている。突状部W1aの具体的な形状は、材料の充足状態を考慮して設定する。
【0062】
ところで、本発明に係る鍛造装置は、前素材W1を冷間しごき加工するしごき成形機構M1(図26等参照)と、位相位置合わせ機構M2(図1等参照)とを備える。しごき成形機構M1を図21図26に基づいて説明する。図21(a)はパンチを示す斜視図で、図21(b)はパンチベースを示す斜視図である。図22(a)はパンチの先端部を拡大した斜視図で、図22(b)は、図22(a)のパンチの外周面をさらに拡大した展開図である。図21(a)および図22(a)に示すように、パンチ20は4個に分割されている。各パンチ20の先端外周部には、第1のトラック溝部7Aa、7Ba(図16参照)を成形する第1のトラック溝部成形面27Aa、27Baと、第2のトラック溝部7Ab、7Bb(図16参照)を成形する第2のトラック溝部成形面27Ab、27Bbが形成されている。図22(b)に示すように、第1のトラック溝部成形面27Aa、27Baと第2のトラック溝部成形面27Ab、27Bbは、継手の軸線N-N〔図11(a)参照〕に対してγだけ周方向に傾斜しており、両トラック溝部成形面27Aa、27Abと27Ba、27Bbは、それぞれ、第1のトラック溝部7Aa、7Baの開口側端部A〔図13参照〕に対応する位置で接続している。
【0063】
第1のトラック溝部成形面27Aa、27Baの間に球状内周面6を成形する球状成形面28が継手中心O〔図11(a)参照〕の軸方向位置からパンチ20の先端(継手の奥側)まで形成され、球状成形面28からパンチ20の軸方向中央側〔図21(a)、図22(b)の上側〕には円筒状成形面29が形成されている。
【0064】
第1のトラック溝部成形面27Aaと第2のトラック溝部成形面27Abを合わせてトラック溝成形面27Aと呼び、第1のトラック溝部成形面27Baと第2のトラック溝部成形面2Bbを合わせてトラック溝成形面27Bと呼ぶ。
【0065】
図21(a)に示すように、パンチ20の周方向の端面は、後述するパンチ20の拡径時にパンチベース21の鍔面36a〔図21(b)参照〕に当接する当接面30と、この当接面30からテーパ状段部31を介して、パンチ20の縮径空間を形成する段差面32から形成されている。各パンチ20の当接面30には、面取り部33が形成され、成形時の材料の挟み込みを抑制している。
【0066】
パンチ20の半径方向内側には、パンチベース21に案内される内側当接面34が形成されている。4個のパンチ20が縮径して、周方向の当接面30同士を当接させた時、4個の内側当接面34で形成される横断面の輪郭は正方形となる。パンチ20の他端部〔図21(a)の上側〕には、突出部35が形成され、その軸方向の面が位置決め用テーパ状段部44となっている。
【0067】
従来では、冷間加工する1本のトラック溝に1つのパンチを配置した構造であった。これに対して、本実施形態では、隣り合う一対のトラック溝成形面27A、27Bを1つのパンチ20に配置した構造となっている。すなわち、従来のパンチ配置とは異なり、隣り合う一対のトラック溝成形面27A、27Bのパンチ間の隙間をなくして、一対のトラック溝成形面27A、27Bが1つのパンチ20に一体に形成されている。そのため、従来のパンチの断面積に対して、本実施形態におけるパンチ20の断面積は約3~4.5倍となる。トラック溝成形面1本当たりの断面積に換算すると、1.5~2.25倍に増加し、曲げ剛性は4.2倍以上に向上する。すなわち、構造強度と剛性の向上により、高精度の成形が可能になる。また、パンチ肩部の肉厚の薄い領域をなくしたため、応力の集中が緩和され、金型の寿命を向上させることができる。
【0068】
次に、パンチ20を進退可能に案内するパンチベース21を図21(b)および図23に基づいて説明する。図23は、パンチベース21の先端部を図21(b)とは異なる方向から見た斜視図である。パンチベース21は、概ね4角柱形状をなし、パンチ20の内側当接面34を案内する4個の底面37と、4個の底面37の角部からパンチ20の周方向の当接面30を案内する鍔部36が形成されている。鍔部36の両側には、鍔面36aが形成されている。鍔部36の先端部〔図21(b)の下側〕には、前述したパンチ20の面取り部33と輪郭が一致するテーパ状面38が形成されている。鍔部36の他端部〔図21(b)の上側〕には、突出部39が形成され、その軸方向の面が位置決め用テーパ状段部42となっている。パンチベース21の中心には、傘パンチ22〔図24(b)参照〕の軸部が進退可能に挿入される貫通孔40が形成されている。
【0069】
従来の冷間加工の場合に、パンチの先端側に接近するトラック溝の領域のパンチベースが薄く、パンチの縮径量が制限される。本実施形態では、隣り合う一対のトラック溝成形面27A、27Bが1つのパンチ20に配置されているため、従来のパンチベースより肉厚を増加させることが可能である。これにより、トラック溝数が多くかつ高作動角が取れる等速自在継手の外側継手部材の場合でも、必要なトラック長さを有するトラック溝交差タイプの外側継手部材を成形することが可能である。
【0070】
また、パンチ20を案内する底面37と鍔面36aからなる溝数を半減したパンチベース21では、溝の断面形状を鋭い角形から平らな底面37の形状にしたために、応力の集中が緩和され、パンチベース21の長寿命化を図ることができる。さらに、上記溝数の半減により、一体になったパンチベース21の剛性が向上し、鍛造品の高精度化に効果がある。
【0071】
次に、パンチ20とパンチベース21の拡縮作動と相対的な進退作動を図24(a)、図24(b)に基づいて説明する。図24(a)はパンチ20の拡径状態を示す斜視図で、図24(b)はパンチ20の縮径状態を示す斜視図である。ここで、本明細書および特許請求の範囲におけるパンチセットとは、図24(a)および図24(b)に示すパンチ20とパンチベース21のセット、さらに好ましくは、パンチ20、パンチベース21および傘パンチ22のセットを意味する。パンチセットに符号Tを付す。図24(a)に示すように、各パンチ20の当接面30〔図24(b)参照〕の間にパンチベース21の鍔部36が挿入され、当接面30と鍔面36aが当接すると共に各パンチ20の先端面およびパンチベース21の先端面が傘パンチ22の背面22aに当接して整列され、これにより、各パンチ20が継手中心O〔図10(a)参照〕に拘束される。この状態が、パンチ20の拡径状態である。
【0072】
図24(a)の拡径状態から、各パンチ20がパンチベース21の底面37と鍔面36aに案内されて下方へ前進する。そして、パンチベース21の鍔面36aの先端がパンチ20のテーパ状段部31を過ぎると、パンチ20の段差面32(図22(a)参照)とパンチベース21の鍔面36aとの間に隙間が生じ、パンチ20の縮径空間ができる。これにより、図24(b)に示すように、パンチ20は縮径状態になる。
【0073】
パンチ20とパンチベース21の拡縮作動と相対的な進退作動は以上のとおりであるが、パンチ20とパンチベース21は、図25に示すパンチホルダ24の内周孔41に収容案内され、前述した相対的な進退作動を行う。具体的には、パンチホルダ24の内周孔41に、パンチベース21の鍔部36の突出部39〔図21(b)参照〕が摺動自在に嵌合する軸方向溝43が設けられ、この軸方向溝43の下方側端部にテーパ状ストッパ面43aが設けられている。このテーパ状ストッパ面43aにパンチベース21の鍔部36の突出部39の位置決め用テーパ状段部42が係止されてパンチベース21の下方側への前進行程が決められる。パンチベース21の鍔部36の外周面はパンチホルダ24の内周孔41に案内される。
【0074】
パンチホルダ24の内周孔41には、さらに、パンチ20の突出部35〔図21(a)参照〕が摺動自在に嵌合する軸方向溝45が設けられ、この軸方向溝45の下方側端部にテーパ状ストッパ面45aが設けられている。このテーパ状ストッパ面45aにパンチ20の突出部35の位置決め用テーパ状段部44が係止されてパンチ20の下方側への前進行程が決められる。パンチ20の外周面20aはパンチホルダ24の内周孔41に案内される。
【0075】
パンチホルダ24に設けられたテーパ状ストッパ面43aおよびテーパ状ストッパ面45aにより、パンチベース21の前進行程長さが短く、パンチ20の前進行程長さが長くなる。これにより、パンチベース21が停止した後にも、パンチ20の当接面30とパンチベース21の鍔面36aとの案内によりパンチ20の前進が続き、パンチ20のテーパ状段部31がパンチベース21の鍔面36aの先端を過ぎると、パンチ20の段差面32とパンチベース21の鍔面36aとの間に隙間が生じ、パンチ20の縮径空間ができる。このように、簡素な機構でパンチ20の縮径動作が可能になる。
【0076】
図26の斜視図は、本実施形態の鍛造方法に用いる金型をセットにした状態を示す。パンチ20、パンチベース21がパンチホルダ24内に収容され、パンチベース21に傘パンチ22挿入されている。ダイス23はパンチホルダ24と合わせて後述するプレス装置のスライドに取付け固定される。図26は、前素材W1の内周部に傘パンチ22、パンチ20およびパンチベース21が挿入され、ダイス23によって、前素材W1の外周部をしごき加工する成形開始時〔図27(b)参照〕の金型の配置状態を示す。
【0077】
次に、具体的な成形工程を図27図28に基づいて説明する。図27(a)~図27(c)は、前素材の投入から成形完了までの行程を示し、図28(a)~図28(c)は成形完了後、鍛造完成品の排出までの行程を示す。
【0078】
図27(a)を参照して、プレス装置に装着された金型や加圧装置の概要を説明する。プレス装置の例えば、油圧駆動源により昇降するスライド50に、パンチ20、パンチベース21、傘パンチ22等を収容したパンチホルダ24やダイス23からなる金型セット、加圧シリンダ51およびノックアウトシリンダ52が取付け固定されている。パンチホルダ24の内部には、パンチ20、パンチベース21、傘パンチ22および押圧部材53が摺動自在に収容されている。押圧部材53の中心に設けられた貫通孔53aに傘パンチ22の軸部22bが摺動自在に嵌合している。傘パンチ22の軸部22bは、ばね受け部材54を介してノックアウトシリンダ52のロッド52aに連結されている。押圧部材53の上面には、ばね受け部53aが設けられ、このばね受け部53bと、ばね受け部材54との間に圧縮コイルばね55が組み込まれている。この圧縮コイルばね55の付勢力により、パンチ20とパンチベース21が、傘パンチ22の背面22aと押圧部材53の下面53cとの間で拘束されて整列する。加圧シリンダ51は連結部材56を介して押圧部材53を押圧する。プレス装置の下方にプレート57が取付け固定され、このプレート57上に前素材W1がセットされる。
【0079】
成形工程を具体的に説明する。図27(a)に示すように、ワーク投入状態は、スライド50が上死点に位置し、加圧シリンダ51には一定の圧力が負荷され、ノックアウトシリンダ52には圧力が負荷されていない。加圧シリンダ51およびノックアウトシリンダ52の圧力状態は成形完了まで維持される。この状態で、パンチ20の位相に合わせて、プレート57上に前素材W1がセットされる。
【0080】
ワーク投入後、図27(b)に示すように、成形開始状態は、加圧シリンダ51が一定の圧力負荷状態でスライド50が下降し、傘パンチ22が前素材W1のカップ底面に定圧を保って当接すると共にダイス23のダイス孔23aに前素材W1の開口端部が臨む位置までスライド50が下降する。
【0081】
傘パンチ22が前素材W1のカップ底面に定圧を保って当接し、パンチ20のトラック溝成形面27A、27Bの軸方向位置を安定させた状態で、図27(c)に示すように、ダイス23が下降し前素材W1の開口部側から外周面を押圧し、スライド50が下死点まで達し、前素材W1の内周部がパンチ20のトラック溝成形面27A、27Bおよび球状成形面28、円筒状成形面29に押し付けられて、軸方向全域のトラック溝面7a'、7b'および奥側の球状内周面6'aと開口側の円筒状内周面6'bの仕上げ成形が完了す
る。
【0082】
具体的には、前素材W1の奥側におけて、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')が仕上げ形状の第1のトラック溝面7a"(7Aa"、7Ba")となり、略仕上げ形状の球状内周面6'aが仕上げ形状の球状内周面6"aとなる。また、前素材W1の開口側において、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')が仕上げ形状の第2のトラック溝面7b"(7Ab"、7Bb")となり、予備形状の略円筒状内周面6'bが仕上げ形状の略円筒状内周面6"bとなる。ここで、本明細書において仕上げ形状とは、鍛造完了品に残る形状を意味する。
【0083】
上記成形において、前素材W1に突状部W1aを設けたことにより、予備形状の第2のトラック溝面7Ab'と7Bb'の周方向の間隔を開口側で広げる成形の際、材料が十分充足する。
【0084】
成形完了後のスプリンバック現象により、鍛造完了品W2はダイス23に挟持されて状態になる。上記のように、ダイス23が前素材W1の開口部側から外周面を押圧し、押し込むしごき成形であるので、前素材W1の内周部の材料充足性を向上させることができる。前述した一対のトラック溝成形面27A、27Bが1つのパンチ20に一体に形成されている構成と前素材W1の筒状部W1bの開口部側から押し込むしごき成形が相俟って、高精度の成形や金型寿命の向上等を一層促進させることができる。
【0085】
成形完了後、鍛造完了品W2の排出工程となる。加圧シリンダ51の圧力を抜くことにより鍛造完了品W2のカップ底面への傘パンチ22の圧力が消失する。そして、図28(a)に示すように、スライド50が上昇し、ダイス23の中に挟持された鍛造完了品W2とパンチ20、パンチベース21、傘パンチ22が上昇し、鍛造完了品W2がプレート57から排出され、スライド50が上死点に達する。
【0086】
その後、図28(b)に示すように、加圧シリンダ51に圧力が負荷され、パンチ20、パンチベース21を介して傘パンチ22が鍛造完了品W2のカップ底面を押圧し、鍛造完了品W2がダイス23から離脱する。この状態までパンチベース21が下降すると、パンチベース21のテーパ状段部42がパンチホルダ24のテーパ状ストッパ面43aに係止され、パンチベース21の下降動作は停止する。
【0087】
その後、図28(c)に示すように、ノックアウトシリンダ52に圧力が負荷され、パンチベース21の行程長さより長い工程長さに設計されているパンチ20がさらに下降する。そして、パンチ20の位置決め用テーパ状段部44がパンチホルダ24のテーパ状ストッパ面45aに係止すると共に、パンチ20の段差面32がパンチベース21の鍔部36の先端部に達する。これにより、パンチ20の段差面32(図22(a)参照)とパンチベース21の鍔面36a(図21(b)参照)との間に隙間が生じ、パンチ20が縮径し、鍛造完了品W2が排出される。鍛造完了品W2は、その後、旋削加工、スプライン加工、熱処理、研削加工などを経て図12に示す完成品となる
【0088】
本実施形態の鍛造方法は、以上の図27(a)~図27(c)および図28(a)~図28(c)の行程を経て完了する。本実施形態の鍛造方法により、円弧状のトラック溝を有し、かつ、トラック溝が周方向に傾斜した等速自在継手の外側継手部材を、鍛造成形工具の低コスト化、長寿命化を図ると共に、高精度のトラック溝の成形を可能できる。
【0089】
ところで、本鍛造装置は、図1に示すような位相合わせ機構M2を備えている。位相合わせ機構M2は、前素材W1を支持するプレート201と、ピンホルダー202から立設される一対の位相合わせ治具203,203と、ピンホルダー202および位相合わせ治具203,203を弾性的に押圧して上昇させる押圧部材(バネ部材)204と、回転駆動するシャフト205等を有する回転機構Mを備える。また、位相合わせ治具203,203は、シャフト205の先端部に付設されるヘッド206に挿通されている。このため、シャフト205の回転に伴ってヘッド206が回転し、位相合わせ治具203,203が、シャフト軸心廻りに回転する。なお、押圧部材(バネ部材)204は、図示省略のストッパ機構(例えば、シリンダ機構)にてその付勢力を抑えている。
【0090】
この場合の素材W1は、前記したように、筒状部W1bの内周面に、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')が図10(a)の継手中心Oから奥側略半分に形成される。予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')が図10(a)の継手中心Oから開口側略半分に形成されている。また、略仕上げ形状の第1のトラック溝面7a'(7Aa'、7Ba')は、周方向に傾斜し、かつ継手中心Oを曲率中心とする円弧状に形成されている。一方、予備形状の第2のトラック溝面7b'(7Ab'、7Bb')は、周方向の傾斜のない直線状に形成されている。
【0091】
このため、前素材W1の溝の開口部(第2のトラック溝面7b'の開口部)は、周方向に沿って等ピッチで配設される。そして、図3に示すように、筒状部W1bの内周面の入口部における、周方向に隣り合うトラック溝面7Ab'、7Bb'間は、薄肉部Ta又は厚肉部Tbとされて、この薄肉部Taと厚肉部Tbは周方向に沿って交互に配置されている。
【0092】
位相合わせ治具203、203は、ピンホルダー202の軸心に関して180°反対方向に配設され、各位相合わせ治具203は、図5に示すように、軸部材207と、この軸部材207に立設される本体部208とを備える。本体部208は、表面が扁平凸曲面とされた平板形状体と、この平板形状体の表面の端部に設けられる凸隆部とからなる。この場合、各凸隆部が第2のトラック溝面7Ab'、7Bb'の開口部に嵌合する凸部210,210を構成し、本体部208の平板形状体にて凸部210,210を連結する連結部211を構成する。なお、軸部材207は軸本体207aと、この軸本体207aの下端に設けられる鍔部207bとからなる。
【0093】
ところで、ピンホルダー202は、図1に示すように、円盤部202aと、この円盤部202aの中心部から垂下される軸部202bとを備え、円盤部202aは、円盤部本体215と、この円盤部本体215に固定される蓋部材216とからなる。この場合、ピンホルダー202は、押圧部材(バネ部材)204の弾性力によって上昇が可能とされているが、図示省略のストッパ機構(例えば、シリンダ機構)にてその付勢力を抑えている。
【0094】
ヘッド206は、短円柱体からなるヘッド本体206aを備え、このヘッド本体206aに、180°反対方向に配設される貫通孔212,212が設けられている。この貫通孔212,212に一対の位相合わせ治具203、203が嵌入されている。また、ヘッド206のヘッド本体206aが、ベースプレート201の貫孔201aに嵌合されている。
【0095】
図1及び図2に示す位置決め機構M2を用いて前素材W1の位置決め方法を説明する。まず、この位置決め機構M2を初期状態とする。初期状態とは、ストッパ機構にて押圧部材(バネ部材)204の付勢力を抑えた状態として、ピンホルダー202から立設される一対の位相合わせ治具203,203の先端をヘッド206の上面よりも下位となるようにセットする。
【0096】
そして、前素材W1を移動させて、ヘッド206と同心の位置で保持する。この状態では、前素材W1の筒状部W1bの開口端面をプレート201に載置した状態としている。この状態で、押圧部材(バネ部材)204の付勢力を開放して、ピンホルダー202および位相合わせピン153,153を上昇させる。
【0097】
この際、位相合わせ治具203,203の凸部210,210に嵌合しようとする周方向に隣り合う溝間が、図6に示すように、厚肉部Tbに対応する場合、各位相合わせ治具203,203をこの前素材W1の筒状部W1bの開口部に嵌合させることができない。これに対して、位相合わせ治具203,203の凸部210,210に嵌合しようとする周方向に隣り合う溝間が、図7に示すように、薄肉部Taに対応する場合、各位相合わせ治具203,203をこの前素材W1の筒状部W1bの開口部に嵌合させることができる。
【0098】
そこで、図7に示すように、各位相合わせ治具203,203をこの前素材W1の筒状部W1bの開口部に嵌合させることができる場合、位相合わせ治具203,203の凸部210,210は、周方向に隣合う溝(7Ab´、7Bb´)に嵌合するとともに、凸部210,210間の連結部211が薄肉部Taに内嵌される。この状態では、シャフト205を回転させることによって、前素材W1をその軸心廻りに回転させ、パンチ20の位相と合う位置で停止する。すなわち、素材のトラック溝7A´、7B´の位相をパンチ20の溝部成形面27A,27Bの位相に合わせる。
【0099】
また、図6に示すように、位置合わせ治具203,203の凸部210,210に嵌合しようとする周方向に隣り合う溝間が、図6に示すように、厚肉部Tbに対応する場合、各位相合わせ治具203,203をこの前素材W1の筒状部W1bの開口部に嵌合させることができないので、シャフト205(図1参照)を回転させることによって、前素材W1をその軸心廻りに回転させ、凸部210,210間の連結部211が薄肉部Taに内嵌されるようにする。その後は、シャフト205を回転させることによって、前素材W1をその軸心廻りに回転させ、パンチ20の位相と合う位置で停止する。すなわち、前素材W1の溝7Ab´、7Bb´の位相をパンチ20の溝部成形面27A,27Bの位相に合わせる。
【0100】
そして、前素材W1の溝7Ab´、7Bb´の位相をパンチ20の溝部成形面27A,27Bの位相に合わせた状態で、その状態を維持しつつ、図示省略の搬送手段(例えば、XYZロボットアーム等)にて、しごき機構M1にセットする。これによって、前素材W1の溝7Ab´7Bb´の位相とパンチ20の溝部成形面27A,27Bの位相が合っている状態で、しごき機構M1にセットすることができる。セットできれば、前記したしごき加工を行うことができる。
【0101】
図9(a)は、前素材W1の溝7Ab´、7Bb´の位相とパンチ20の溝部成形面27A,27Bの位相とが合っている状態を示し、図9(b)は、前素材W1の溝7a´、7b´の位相とパンチ120の溝部成形面27A,27Bの位相とが合っていない状態を示している。
【0102】
図8に示すパンチセットTは、基台225に、パンチ20の溝部成形面27A,27B以下が埋設されている。このため、このパンチセットTは、図12図17に示すものと同様、パンチ20とパンチベース21に加えて傘パンチ22を備えものである。このため、図26に示すように、このパンチ20、ダイス23を用いることによって、しごき加工を行うことができる。このため、パンチセットTには基台225が含まれない。
【0103】
このように、位相合わせ機構M2は、前素材W1の内周面の溝7Ab´、7Bb´とパンチ20の溝部成形面27A,28Bとの位相が合っている状態で前素材の周方向に隣り合う2つの溝にそれぞれ嵌入し、それらの位相が合っていない状態でそれぞれの嵌入が規制される一対の凸部210,210を有する位置合わせ用治具203,203を備えることになる。
【0104】
本発明の等速自在継手の外側継手部材の鍛造装置によれば、位相合わせ機構M2にて、前素材W1をパンチ20に嵌合させる前に、前素材W1の内周面の溝7Ab´、7Bb´とパンチ20の溝部成形面27A,28Bとの位相を合わせることができるので、しごき成形機構M1において、前素材W1の溝7Ab´、7Bb´の位相とパンチ20の溝部成形面27A,28Bとの位相を合わせた状態で、筒状部W1bにパンチ20を嵌入することができる。このため、成形不良や金型(ダイス)破損等を防止できる。また、しごき成形機構M1として、前素材W1の筒状部W1bに嵌入されて拡縮可能なパンチ20と、筒状部W1bが圧入される孔23aを有するダイス23とを有するものであり、既存のしごき成形機構(鍛造装置)M1をそのまま使用することができる。このため、低コストを図ることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、位置決め用治具203として、2個に限るものではなく、少なくとも1個あればよい。また、外側継手部材として、実施形態では、トラック溝の数を8本として、等速自在継手のトルク伝達部材としてのボール数を8個としていたが、6個であっても10個以上であってもよい。
【0106】
位置合わせ機構M2として、前記実施形態では、前素材W1の筒状部W1bの内周面(溝7Ab´、7Bb´を省く部位)の内径を大径部と小径部とを有するものとするとともに、位置決め用治具203を、大径部に対応する際に嵌入可能で、小径部に対応する際に嵌入不可能とした形状とすることによって形成したが、これに限るものではない。すなわち、凹凸嵌合構造のようなものであってもよい。この場合、前素材W1側に凸部を設けるとともに、位置決め用治具203側に凹部を設けたり、逆に、前素材W1側に凹部を設けるとともに、位置決め用治具203側に凸部を設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 等速自在継手
2 外側継手部材
3 内側継手部材
4 ボール
5 保持器
6 球状内周面
7 トラック溝
7a' 略仕上げ形状の第1のトラック溝面
7b' 予備形状の第2のトラック溝面
8 球状外周面
9 トラック溝
12 球状外周面
13 球状内周面
20 パンチ
21 パンチベース
22 傘パンチ
23 ダイス
23a ダイス孔
24 パンチホルダ
27A、27B トラック溝成形面
27Aa、27Ba 第1のトラック溝部成形面
27Ab、27Bb 第2のトラック溝部成形面
203 位相合わせ治具
M1 しごき成形機構
M2 位相合わせ機構
M 回転機構
T パンチセット
Ta 薄肉部
Tb 厚肉部
W1 前素材
W1a 突状部
W1b 筒状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34