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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】光半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20210101AFI20220118BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01S5/12
H01L21/308 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018008214
(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公開番号】P2019087714
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017009601
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017234118
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊光
(72)【発明者】
【氏名】藤井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】石浦 正巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田口 利之
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-192247(JP,A)
【文献】特開2012-174938(JP,A)
【文献】特開平05-206581(JP,A)
【文献】特開2016-092416(JP,A)
【文献】特開2002-076515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体材料の第1半導体層上に、パターニングされた第1マスクを形成する工程と、
前記第1マスクでパターニングされた前記第1半導体層をエッチングする工程と、
前記エッチングする工程の後、前記第1半導体層の露出部分に、前記第1半導体材料とは異なる第2半導体材料の第2半導体層を形成する工程と、
前記第1マスクを除去した後、前記第1半導体層の露出部分および前記第2半導体層上に第3半導体材料の第3半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の一部を露出させ、前記第2半導体層の露出箇所を、前記第1半導体材料および前記第3半導体材料よりも早く前記第2半導体材料を取り除くエッチング液にさらす工程と、を含む光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1半導体層と前記第2半導体層とが接続する第1接続領域を少なくとも一部含むように、前記第3半導体層上に導波路を形成する工程を含む、請求項1記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1接続領域は、前記第1半導体層と前記第3半導体層とが前記第2半導体層を介さずに接続する第2接続領域で囲われ、
前記導波路は、前記第1接続領域の前記第3半導体層上に形成され、
前記エッチング液にさらす工程において、前記第1接続領域の前記第2半導体層を除去する、請求項2記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2半導体材料は、InGaAs,InGaAsP,InGaAlAs,InAlAs,InAlAsPsまたはInGaAlAsPであり、
前記第3半導体材料は、InPである、請求項1~3のいずれか一項に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第3半導体層を形成する工程の前に、前記第2半導体層上のみに第4半導体材料の第4半導体層を形成する工程をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2半導体層を形成する工程において、複数の前記第2半導体層を形成し、
回折格子パターンを有する第1領域と、前記第1領域の共振器長方向に連結するとともに前記回折格子パターンが設けられていない第2領域と、を備えた共振器パターンを形成する工程を有し、
前記共振器パターンを形成する工程は、前記複数の第2半導体層のそれぞれに重なり、前記第1領域の前記共振器長方向における長さが互いに異なる複数の前記共振器パターンを前記共振器長方向と交差する方向に複数隣接して設ける工程と、前記複数の共振器パターンのうち選択された共振器パターンを残し、他の共振器パターンを除去する工程と、を含み、
前記第2半導体層の露出箇所を前記エッチング液にさらす工程において、前記複数の第2半導体層のうち、前記選択された共振器パターンに重なる第2半導体層の露出箇所を前記エッチング液にさらす、請求項1~のいずれか一項に記載の光半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長可変半導体レーザなどの光半導体素子においては、内部に光導波層を備える導波路領域上に、ヒータが設置される。このヒータを発熱させることによって、光導波層の温度を変化させることができる。その結果、光導波層の屈折率を制御して、光導波層の波長特性を制御することができる。しかしながら、波長可変半導体レーザなどの光半導体素子は、低い消費電力で駆動できることが求められている。そこで、光導波層下に複数の空隙を所定の間隔で設けて、断熱性を高める技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-174938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光導波層下に複数の空隙を設けようとすると、犠牲層を設け、空隙と空隙との間の柱部分の犠牲層をエッチングによって除去し、当該柱部分を埋め込むことになる。この場合、埋込層を成長させる過程で、埋込層の表面に平坦性を得ることが困難である。
【0005】
そこで、犠牲層を埋め込む埋込層の表面を平坦にすることができる、光半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光半導体素子の製造方法は、第1半導体材料の第1半導体層上に、パターニングされた第1マスクを形成する工程と、前記第1半導体層の露出部分に、前記第1半導体材料とは異なる第2半導体材料の第2半導体層を形成する工程と、前記第1マスクを除去した後、前記第1半導体層の露出部分および前記第2半導体層上に第3半導体材料の第3半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の一部を露出させ、前記第2半導体層の露出箇所を、前記第1半導体材料および前記第3半導体材料よりも早く前記第2半導体材料を取り除くエッチング液にさらす工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、犠牲層を埋め込む埋込層の表面を平坦にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)~(c)は導波路下に所定の間隔を空けて複数の空隙を設ける製造方法を例示する図である。
図2】(a)~(d)は第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示するための模式的断面図である。
図3】(a)~(e)は第2実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示するための模式的断面図である。
図4】(a)~(d)は第3実施形態が対象とする光半導体素子について説明するための図である。
図5】(a)~(d)は第3実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する図である。
図6】(a)~(d)は第3実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する図である。
図7】(a)~(d)は第4実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する図である。
図8】(a)~(d)は第4実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する図である。
図9】(a)および(b)は誘電体マスクの形成位置を例示する図である。
図10】(a)から(c)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する断面図である。
図11】(a)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する平面図であり、(b)および(c)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する断面図である。
図12】(a)から(c)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する断面図である。
図13】(a)および(b)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する断面図である。
図14】(a)および(b)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本願発明は、(1)第1半導体材料の第1半導体層上に、パターニングされた第1マスクを形成する工程と、前記第1半導体層の露出部分に、前記第1半導体材料とは異なる第2半導体材料の第2半導体層を形成する工程と、前記第1マスクを除去した後、前記第1半導体層の露出部分および前記第2半導体層上に第3半導体材料の第3半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の一部を露出させ、前記第2半導体層の露出箇所を、前記第1半導体材料および前記第3半導体材料よりも早く前記第2半導体材料を取り除くエッチング液にさらす工程と、を含む、光半導体素子の製造方法である。
(2)前記第1半導体層と前記第2半導体層とが接続する第1接続領域を少なくとも一部含むように、前記第3半導体層上に導波路を形成する工程を含んでいてもよい。
(3)前記第1接続領域は、前記第1半導体層と前記第3半導体層とが前記第2半導体層を介さずに接続する第2接続領域で囲われ、前記導波路は、前記第1接続領域の前記第3半導体層上に形成され、前記エッチング液にさらす工程において、前記第1接続領域の前記第2半導体層を除去してもよい。
(4)前記第2半導体材料は、InGaAs,InGaAsP,InGaAlAs,InAlAs,InAlAsPまたはInGaAlAsPとし、前記第3半導体材料は、InPとしてもよい。
(5)前記第2半導体層を形成する工程の前に、前記第1マスクでパターニングされた前記第1半導体層をエッチングする工程をさらに含んでいてもよい。
(6)前記第3半導体層を形成する工程の前に、前記第2半導体層上のみに第4半導体材料の第4半導体層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
(7)前記第2半導体層を形成する工程において、複数の前記第2半導体層を形成し、回折格子パターンを有する第1領域と、前記第1領域の共振器長方向に連結するとともに前記回折格子パターンが設けられていない第2領域と、を備えた共振器パターンを形成する工程を有し、前記共振器パターンを形成する工程は、前記複数の第2半導体層のそれぞれに重なり、前記第1領域の前記共振器長方向における長さが互いに異なる複数の前記共振器パターンを前記共振器長方向と交差する方向に複数隣接して設ける工程と、前記複数の共振器パターンのうち選択された共振器パターンを残し、他の共振器パターンを除去する工程と、を含み、前記第2半導体層の露出箇所を前記エッチング液にさらす工程において、前記複数の第2半導体層のうち、前記選択された共振器パターンに重なる第2半導体層の露出箇所を前記エッチング液にさらしてもよい。
【0011】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光半導体素子の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
まず、実施形態の説明に先立って、比較例について説明する。図1(a)~図1(c)は、導波路下に所定の間隔を空けて複数の空隙を設ける製造方法を例示する図である。まず、図1(a)で例示するように、InP基板101上に、InGaAsなどの、InPよりもエッチングレートを高くすることができる犠牲層102を成長させる。次に、犠牲層102上に、SiOなどの誘電体膜103をパターニングする。次に、図1(b)で例示するように、誘電体膜103をマスクとして用いてエッチングを行うことで、InP基板101の露出部分に凹部を形成する。次に、誘電体膜103を除去した後に、InPの埋込層104によって犠牲層102を埋め込む。
【0013】
犠牲層102をパターニングする理由は、犠牲層102を含まない領域を作ることで、最終的にこの部分を導波路の支持構造(柱)とするためである。例えば硫酸過水などの酸液は、InPより10倍以上早く犠牲層102をエッチングする。この性質を利用すれば、導波路構造を作成した後に犠牲層102の一部をドライエッチなどで露出させて酸液に浸すことで、犠牲層102のみを除去し、結果的に柱のような構造を得ることができる。
【0014】
しかしながら、この方法には以下の問題点がある。第1の問題点は、埋込層104の表面を平坦にすることが困難である点である。犠牲層102は、ウェットエッチャントに対し早いエッチングレートを持つものでなければならない。これは、薄い犠牲層102を後段の空隙化工程で確実にエッチングするための必要要件である。したがって、図1(b)の工程は、犠牲層102をウェットエッチングでパターニングすることが難しく、ICP-RIEなどのドライプロセスで行う必要がある。ドライエッチは、サイドエッチを気にすることなく垂直性よくエッチングできるが、同時にInP-InGaAs間で有効な選択比もないため、エッチング時間で深さを制御することになる。形成するドライエッチ溝の深さは、犠牲層102を掘り残してしまうと空隙化エッチング工程で“柱”構造もろともエッチングしてしまうことになるため、図1(b)で例示するようにInP層に至る深いものになる。エッチングレートの面内分布を考慮すれば、このオーバーエッチはInGaAs層厚の30%~50%程度が必要である。したがって、必要以上の段差(凹凸)をInPで埋め込む必要があるため、埋込層104の表面を平坦にすることが困難であった。平坦性劣化は、導波路の光損失を増すだけで無く、その後のプロセスでレジスト塗布むら等の問題を引き起こすため、回避しておくことが好ましい。
【0015】
第2の問題点は、製造容易性についてである。図1(b)の工程には上記のような問題があるため、深さ管理が欠かせない。ここで行う深さ評価は、その後の再生工程を考えて誘電体マスクが付いた形態で行うため、そもそも測定精度の問題がある。また、もし規格に足りなければ追加エッチすればよいだけだが、必要以上に深く掘れてしまった場合は再生が困難であるため、ここで廃棄せざるを得ない。
【0016】
そこで、以下の実施形態においては、埋込層の表面を平坦にすることができる、光半導体素子の製造方法について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図2(a)~図2(d)は、第1実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示するための模式的断面図である。図2(a)で例示するように、InP基板101の上面に、パターニングした誘電体膜103を形成する。誘電体膜103は、後に柱部分となる箇所に形成しておく。次に、図2(b)で例示するように、InP基板101の露出部分に、InGaAsの犠牲層102を選択成長させる。次に、図2(c)で例示するように、誘電体膜103を除去した後に、InP基板101の露出部分および犠牲層102上に、n型InPのバッファ層101aを成長させることで、犠牲層102を埋め込む。誘電体膜103が除去された部分がInPの柱となる。その後、例えば、InP基板101と犠牲層102とが接続する第1接続領域を少なくとも一部含むように、埋込層上に導波路を成長させる。その後、犠牲層102の一部を露出させ、図2(d)で例示するように、犠牲層102の露出箇所を、InP基板101、バッファ層101aおよび埋込層よりも犠牲層102を早く取り除くエッチング液にさらすことで、犠牲層102を取り除く。それにより、犠牲層102の部分が空隙105となる。
【0018】
犠牲層102の形成を選択成長で行うと、犠牲層102に(111)Bの成長停止面が出現する。それにより、[0-11](または[01-1])方向の誘電体膜103の境界では、図2(b)のように、90°よりも小さい角度(例えば、45°程度)の順メサの傾斜面が形成される。この傾斜面は、断面が直線であっても曲線であってもよい。一方、InP基板101の表面に対する直角方向については成長停止面の出現は一般的ではないが、AsもしくはAlを含む材料を1μm/h程度の低い成長レートで形成することにより、(111)Bより浅い角度の面方位を含む順メサ形状を得ることができる。選択成長では、埋め込むべき高さが犠牲層102の高さそのものになるという利点と併せて、これら傾斜面の存在により、比較例と比較して容易に平坦な基板を得ることができる。基板の平坦性は、その後に形成する導波路の直線性だけではなく、これらを形成するためのプロセス精度に対して重要な要件である。なお、埋込層の表面が平坦になっていることは、埋込層の表面の段差が犠牲層102の厚みの半分以下となっていることと表現することもできる。
【0019】
本実施形態においては、InP基板101が第1半導体層に相当し、InPが第1半導体材料に相当し、誘電体膜103が第1マスクに相当する。犠牲層102が第2半導体層に相当し、InGaAsが第2半導体材料に相当する。埋込層が第3半導体層に相当し、InPが第3半導体材料に相当する。
【0020】
(第2実施形態)
図3(a)~図3(e)は、第2実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示するための模式的断面図である。図3(a)で例示するように、InP基板101の上面に、パターニングした誘電体膜103を形成する。誘電体膜103は、後に柱部分となる箇所に形成しておく。次に、図3(b)で例示するように、InP基板101の露出部分に対して、ドライエッチングを行う。例えば、InP基板101の露出部分の0.4μm程度を除去することでInP基板101に凹部を形成する。
【0021】
次に、図3(c)で例示するように、InP基板101の凹部に、InGaAsの犠牲層102を選択成長させる。この場合、犠牲層102がInP基板101の凹部から現れる箇所において、誘電体膜103との境界に90°よりも小さい確度の順メサの傾斜面が形成される。次に、図3(d)で例示するように、誘電体膜103を除去した後に、InP基板101の露出部分および犠牲層102上に、埋込層を成長させることで、犠牲層102を埋め込む。誘電体膜103が除去された部分がInPの柱となる。その後、例えば、InP基板101と犠牲層102とが接続する第1接続領域を少なくとも一部含むように、埋込層上に導波路を成長させる。その後、犠牲層102の一部を露出させ、図3(e)で例示するように、犠牲層102の露出部分を、InP基板101および埋込層よりも犠牲層102を早く取り除くエッチング液にさらすことで、犠牲層102を取り除く。それにより、犠牲層102の部分が空隙105となる。
【0022】
本実施形態によれば、埋込層による埋め込み高さを第1実施形態と同程度としつつ、犠牲層102を厚くすることができる。それにより、空隙105を大きくすることができる。その結果、断熱性を向上させることができる。なお、誘電体膜103を厚くすることで犠牲層102を厚くすることも考えられるが、埋込層104による埋込高さは、犠牲層102の厚み分だけ大きくなってしまう。この場合には、埋込層104の表面の平坦性が低下してしまう。
【0023】
(第3実施形態)
図4(a)~図4(d)は、第3実施形態が対象とする光半導体素子100について説明するための図である。光半導体素子100は、一例として、波長可変半導体レーザである。図4(a)は、光半導体素子100の上面図である。図4(b)は、導波路に沿った断面図であり、図4(a)の点線に沿った断面図である。図4(c)は、光半導体素子100の上面からの透過図である。図4(d)は、ウェハ200における光半導体素子100を説明するための図である。
【0024】
図4(a)および図4(b)で例示するように、光半導体素子100は、SG-DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)領域αとSG-DBR(Sampled Grating Distributed Reflector)領域βとを連結させた構造を有する。SG-DBR領域βの光導波層を含むメサの両側には、光進行方向に沿ってメサ溝9が形成されている。
【0025】
SG-DFB領域αは、光半導体素子100の利得領域として機能する。図4(b)に示すように、SG-DFB領域αは、半導体基板1上において、下クラッド層2、活性層3、上クラッド層4、および電極5が積層された構造を有する。
【0026】
SG-DBR領域βは、光半導体素子100の反射領域として機能する。SG-DBR領域βは、半導体基板1上において、下クラッド層2、光導波層6、および上クラッド層4が積層された構造を有する。SG-DBR領域β上には、ヒータ10が設けられている。ヒータ10には、電源電極11およびグランド電極12が設けられている。
【0027】
以上説明したように、SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βは、共通の半導体基板1上に一体的に形成されている。そして、活性層3および光導波層6は、互いに光結合している。
【0028】
SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βの下クラッド層2には、回折格子(コルゲーション)7が形成されている。このSG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βは、複数のセグメントにより構成される。ここでセグメントとは、回折格子7が設けられている領域と回折格子7が設けられていないスペース部とが連結された部分を指す。回折格子7は、下クラッド層2とは異なる屈折率の材料で構成されている。回折格子を構成する材料は、下クラッド層2がInPの場合、例えばGa0.22In0.78As0.470.53を用いることができる。
【0029】
回折格子7は、2光束干渉露光法を使用したパターンニングにより形成することができる。回折格子7に連結したスペース部は、回折格子7のパターンをレジストに露光した後、スペース部に相当する位置に再度露光を施すことで、回折格子7のパターンが転写されないようにすることで実現できる。
【0030】
SG-DFB領域αにおける各セグメントの光学的長さは同一に設計されている。SG-DBR領域βにおける各セグメントの光学的長さも同一に設計されている。ただし、SG-DFB領域αにおける各セグメントの光学的長さとSG-DBR領域βにおける各セグメントの光学的長さとは異なっている。SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βにおける回折格子7は、いずれも同一のピッチおよび同一の周期を有している。一例として、SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βのいずれにおいても、各セグメントに含まれる回折格子7は、1ピッチ240nm×20周期=4.8μmの長さを有する。そして、SG-DFB領域αの各セグメントにおけるスペース部の長さは、66.0μmの長さであることから、SG-DFB領域αの1つのセグメントの長さは70.8μmである。また、SG-DBR領域βの各セグメントにおけるスペース部の長さは、73.1μmの長さであることから、SG-DBR領域βの1つのセグメントの長さは77.9μmである。SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βの組み合わせにより、バーニア効果を利用して、所望の波長で安定してレーザ発振させることができる。
【0031】
半導体基板1は、例えば、n型InPからなる結晶基板である。下クラッド層2はn型、上クラッド層4はp型であり、それぞれ例えばInPによって構成される。下クラッド層2と上クラッド層4は、活性層3および光導波層6の光を上下で閉じ込めている。
【0032】
活性層3は、電流注入により利得を得ることのできる半導体により構成されている。活性層3は、例えば量子井戸構造を有しており、例えばGa0.32In0.68As0.920.08(厚さ5nm)からなる井戸層と、Ga0.22In0.78As0.470.53(厚さ10nm)からなる障壁層が交互に積層された構造を有する。光導波層6は、例えばバルク半導体層で構成することができ、例えばGa0.22In0.78As0.470.53によって構成することができる。
【0033】
ヒータ10は、NiCr等で構成された薄膜抵抗体である。ヒータ10は、SG-DBR領域βの複数のセグメントにまたがって形成されている。電極5、電源電極11およびグランド電極12は、金等の導電性材料からなる。上クラッド層4と電極5との間には、コンタクト層が形成されていてもよい。例えば、コンタクト層として、p型Ga0.47In0.53As結晶を用いることができる。半導体基板1の裏面には、裏面電極が形成されている。裏面電極は、SG-DFB領域αおよびSG-DBR領域βにまたがって形成されている。
【0034】
光導波層6の下部には、その光伝播方向に沿って所定の間隔を空けて複数の空隙8が形成されている。光導波層6を含む半導体領域は、空隙8の両端に位置する柱によって支持されている。当該半導体領域は、空隙8からヒータ10に至るまでの半導体積層体のことである。
【0035】
続いて、光半導体素子100の動作について説明する。まず、電極5に所定の駆動電流を供給するとともに、外部の温度制御装置によって、光半導体素子100の温度を所定の値に制御する。それにより、SG-DFB領域αの利得スペクトルが制御される。また、ヒータ10を所定の温度で発熱させる。これにより、SG-DBR領域βの光導波層6の屈折率が決定されて、SG-DBR領域βの反射スペクトルが制御される。利得スペクトルと反射スペクトルとの重ね合わせによって発振波長が選択される。
【0036】
ここで、光導波層6の屈折率を変化させる手段として、キャリア効果、熱光学効果、電圧効果などを用いることができる。本実施形態においては、熱光学効果を用いている。熱光学効果は屈折率変化で光学損失を引き起こさないため、本実施形態に係る光半導体素子100は、良好な特性を示す。しかしながら、温度による波長変化量は1℃あたり約0.1nm程度である。したがって、発振波長を3.6nmシフトさせるためには、36℃の温度変化が必要となる。このような大きい温度変化を実現するには、ヒータ10が発生する熱を効率よく光導波層6に伝える必要がある。本実施形態に係る光半導体素子100は、光導波層6の下部に空隙8を有している。空隙8は、半導体基板1と光導波層6との間を空間により熱的に分離する。これにより、ヒータ10が発生する熱が空隙8よりも下方へ伝わりにくくなる。また、光導波層6を含む半導体領域の両側にメサ溝9を設けられていることから、ヒータ10が発生する熱が当該半導体領域の両側へ伝わりにくくなる。以上により、本実施形態においては、ヒータ10が発生する熱が当該半導体領域に留まり易くなる。その結果、光導波層6の温度を効率よく制御することができる。
【0037】
なお、図示しないが、本実施形態に係るSG-DBR領域βのヒータ10の代わりに電流注入によるキャリア効果を利用して、光導波層6の屈折率を制御する場合であっても、本実施形態と同様の構成を採用することができる。外部の温度制御装置によって制御された半導体基板1の温度による熱光学効果により、上記キャリア効果以外の要因で、光導波層6が屈折率変動を受けてしまう。このような場合において、前記した如き空隙8を設ければ、その熱的分離の効果により、上記熱光学効果の影響を低減できる。
【0038】
なお、SG-DFB領域αにおいては空隙が設けられていない。これは基板側との電気的接続を確保するため必要な構造だが、同時に放熱性を確保し、ジャンクション温度の上昇を抑える役割にもなる。
【0039】
図5(a)~図6(d)は、光半導体素子100の製造方法を例示する図である。図5(a)~図6(d)は、図4(b)のA-A線断面に相当する。なお、以下の説明において、結晶成長は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)を用いて行われる。
【0040】
図5(a)で例示するように、半導体基板1上に、将来的に空隙8を形成する領域に窓空けした誘電体マスク31を形成する。誘電体マスク31は、例えば厚さ2μmのSiOをウェットエッチプロセスでパターニングすることで形成することができる。
【0041】
次に、図5(b)で例示するように、半導体基板1のInPと格子整合するInGaAsの犠牲層32を、誘電体マスク31上に形成されないように、例えば0.2μm/h程度の低い成長レートでそれぞれ100nmほど成長させる。なお、犠牲層32上に、InP層33を成長させてもよい。犠牲層32上にInP層33を成長させることでInGaAsがInPによって覆われるため、InGaAsからのAs抜けを抑制することができる。
【0042】
次に、図5(c)で例示するように、誘電体マスク31を除去した後、n型InPのバッファ層1aを1.5μmほど埋め込み成長する。このとき、InP層33はバッファ層1aに含まれる(図示しない)。これにより、犠牲層32が部分的に形成された平坦な表面の半導体基板1を得ることができる。なお、図4(c)で例示するように、空隙8にしたい領域は、位相調整ヒータが設置される導波路のみになるため、InGaAs選択成長領域は、図4(d)に示すようにウェハ200の面内の一部になる。
【0043】
次に、所望の導波路構造を作り込む。例えば、回折格子層(例えばPL波長1.3μmのInGaAsP)を成長させ、EB露光によるフォトリソグラフィー手段で部分的に回折格子7を形成する。この部分的な回折格子7は、例えば、図4(b)のように、利得領域に長さ10μmの回折格子領域が200μm周期間隔で5パターン配置されたいわゆるSG-DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)構造と、長さ10μmの回折格子領域が200μm周期間隔で5パターン形成されたいわゆるSG-DBR(Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)とが光の進行方向にカップリングした構造とにすることができる。
【0044】
続いて、図5(d)で例示するように、下クラッド層2を500nm成長させる。その後、図示しないn型InPスペース層を200nm、PL波長1.55μmの多重量子井戸の活性層3を成長させた後、SG-DBR領域を窓明けした誘電体マスクを用いて、非マスク領域の活性層3をウェットエッチングで除去し、その窪みにPL波長1.3μmの光導波層6を100nm成長させ、誘電体膜を除去した後、n型InPの上クラッド層4を1.0μm、InGaAsコンタクト層を100nm成長させる。
【0045】
続いて、図6(a)で例示するように、誘電体マスク34を用いてストライプ導波路を形成し、当該ストライプ導波路をInP埋込層35で埋め込むことで、SI-BH構造のInP-埋め込みメサを形成する。次に、図6(b)で例示するように、ヒータ10をSG-DBR導波路上に形成し、SiOの誘電体マスク36で保護する。誘電体マスク36については、続く半導体溝形成のため窓明けする。続いて、図6(c)で例示するように、誘電体マスク36をマスクとしてエッチングを行うことで、メサ溝9を形成する。それにより、光導波層6を含むメサが形成される。エッチングは、犠牲層32が露出するか、この犠牲層32を貫くまでエッチングによりメサ溝9を掘る。その後、図6(d)で例示するように、硫酸過水などInPと選択比の取れるエッチャントで犠牲層32をエッチングし、所望の半導体チップを得る。
【0046】
なお、犠牲層32の材料としてInGaAsを例に説明したが、InPと格子整合し、然るべきウェットエッチャントでエッチング選択比の取れる材料なら何でもよく、例えばInGaAsP、InGaAlAs、InAlAs、InAlAsP、InGaAlAsPなどの材料でももちろん構わない。
【0047】
本実施形態によれば、平坦性の高いInP基板1を得ることができるため、光導波層6の形成が容易となる。なお、本実施形態においては、第1半導体材料(InP)の第1半導体層(半導体基板1)上に、パターニングされた第1マスク(誘電体マスク31)が形成される。第1半導体層(半導体基板1)の露出部分に、第1半導体材料(InP)とは異なる第2半導体材料(InGaAs)の第2半導体層(犠牲層32)が形成される。第1マスク(誘電体マスク31)を除去した後、第1半導体層(InP)の露出部分および第2半導体層(犠牲層32)上に第3半導体材料(InP)の第3半導体層(半導体基板1の犠牲層32よりも上側の部分)が形成される。第1半導体層(半導体基板1)と第2半導体層(犠牲層32)とが接続する第1接続領域を少なくとも一部含むように、第3半導体層上に光導波層6が形成される。次に、第2半導体層(犠牲層32)の一部を露出させ、第2半導体層(犠牲層32)の露出箇所が、第1半導体材料(InP)および第3半導体材料(InP)よりも早く第2半導体材料(InGaAs)を取り除くエッチング液にさらされる。
【0048】
(第4実施形態)
図7(a)~図8(d)は、第4実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する図である。製造工程は第3実施形態と同じであるが、誘電体マスク31のパターンが異なる。誘電体マスク31は、図9(a)のように半導体基板1上において、複数の空隙8が形成される領域を囲む領域にのみ形成する。この領域は、光導波層6を含むメサからメサ溝9を挟んで両脇の半導体領域下に位置する。この場合、半導体基板1上のほぼ全面が犠牲層32の選択成長領域になる。それにより、誘電体マスク31の除去後に再成長で埋め込むべき段差領域は、第3実施形態と比べて小さくなる。
【0049】
図8(c)で例示するように、第3実施形態の図6(c)の工程と同様に、誘電体マスク36をマスクとして基板に犠牲層32が露出するか、この犠牲層32を貫くまでエッチングにより溝を掘る。その後、図8(d)で例示するように、硫酸加水などInPと選択比の取れるエッチャントで犠牲層32をエッチングし、所望の半導体チップを得る。この場合、犠牲層32の途切れ目のInPが堤防の働きをする。図9(b)で例示するように、犠牲層32の途切れ目は、図9(a)の誘電体マスク31が配置されていた箇所である。選択成長の場合、一般に誘電体マスク31の被マスク率が低いほど、マスク上の成長が抑制される犠牲層32の成長レートを高く設定でき、平坦性が得られ易い。この実施形態では誘電体マスクの比マスク率を1%程度まで低減させることが可能なため、異種材料が部分的に埋め込まれた平坦基板を得る方法としてより簡便な実施形態である。誘電体マスク31のマスク幅は、例えば20μmとすることができる。
【0050】
(第5実施形態)
回折格子7として機能する回折格子パターンの本数は、レーザの光学特性などに影響する。ストライプ状のレジストパターンを用いたEB露光における窓長の制御性および窓境界に生じるストライプ本数の増減により、回折格子パターン7aの本数にばらつきが生じることがある。1つの回折格子領域における回折格子パターンの本数は例えば10~20本などであり、1本の増減でもレーザの光学特性は大きく変化してしまう。そこで、長さの異なる複数の回折格子領域を形成し、それらの領域のうち所望の本数の回折格子パターンを含む領域に後続工程で光導波層6を形成していけばよい。
【0051】
ただし、第1~第4実施形態で説明したように、空隙8を形成するための犠牲層32が半導体基板1に埋め込まれ、光導波層6は犠牲層32の上に形成される。したがって光導波層6の位置は犠牲層32の位置によって制限される。そこで、複数の回折格子領域に対応して複数の犠牲層32を設けることで、光導波層6の位置を複数の回折格子領域から選択することができる。
【0052】
図10(a)から図10(c)、図11(b)および図11(c)、図12(a)から図13(b)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する断面図であり、図5(a)~図6(d)に対応する断面を図示している。図11(a)、図14(a)および図14(b)は第5実施形態に係る光半導体素子の製造方法を例示する平面図である。X方向は複数の犠牲層32が並ぶ方向である。Y方向は光の進行方向であり、例えばX方向に直交する。第1~第4実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0053】
図10(a)で例示するように、InPの半導体基板1上に誘電体マスク31を形成する。誘電体マスク31のパターンの幅は例えば20μm以下である。図10(b)で例示するように、複数の犠牲層32を例えば100nm程度成長させる。図14(a)で例示するように犠牲層32はウェハのほぼ全面に形成される。共振器パターンが形成される部分では、複数の犠牲層32は例えば格子状に並び、犠牲層32のそれぞれはY方向に延伸する。例えば誘電体マスク31はSiO、犠牲層32はInGaAsである。なお、図示していないが、図5(b)と同様に犠牲層32の上にInP層33を成長させてもよい。
【0054】
図10(c)で例示するように、誘電体マスク31を除去した後、n型InPのバッファ層を埋め込み成長する。これにより、複数の犠牲層32が部分的に形成された平坦な表面の半導体基板1を得ることができる。
【0055】
図11(a)で例示するように、例えばEB露光によるフォトリソグラフィー手段により部分的に回折格子パターン7aを形成する。複数の回折格子パターン7aが回折格子7(図4(b)参照)として機能する。図11(b)は図11(a)の線B-Bに沿った断面図であり、図11(b)で例示するように下クラッド層2を成長させる。
【0056】
半導体基板1には複数の共振器パターン40~42が形成される。図11(a)に示すように、共振器パターン40~42はX方向に沿って並び、かつそれぞれの共振器パターンはY方向に延伸する。共振器パターン40~42それぞれの下に、共振器パターンに沿う犠牲層32が位置する。共振器パターン40は、回折格子パターン7aを有する領域40a(第1領域、回折格子領域)と、領域40aと連結し回折格子パターン7aが設けられていない領域40b(第2領域)とを有する。共振器パターン41は、回折格子パターン7aを有する領域41a(第1領域、回折格子領域)と、領域41aと連結し回折格子パターン7aが設けられていない領域41b(第2領域)とを有する。共振器パターン42は、回折格子パターン7aを有する領域42a(第1領域、回折格子領域)と、領域42aと連結し回折格子パターン7aが設けられていない領域42b(第2領域)とを有する。共振器パターン40~42のそれぞれは、回折格子パターン7aが設けられた領域と、回折格子パターン7aが設けられていない領域とが交互に複数設けられた抽出回折格子である。
【0057】
共振器パターン40~42のY方向における長さは同一である。領域40a~42aのY方向における長さは互いに異なり、領域40b~42bのY方向における長さも互いに異なる。領域42aは領域41aより長く、領域41aは領域40aよりも長い。領域40a~42aに含まれる回折格子パターン7aの本数は互いに異なることが好ましい。例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)などを用いて、各共振器パターンにおける回折格子パターン7aの本数などを確認することができる。
【0058】
下クラッド層2の上であって共振器パターン42に、n型InPスペース層(不図示)、活性層3(図4(b)参照)を成長させる。図11(c)で例示するように、活性層3をウェットエッチングして形成した窪みに、光導波層6を成長させる。さらにn型InPの上クラッド層4およびInGaAsコンタクト層を成長させる。
【0059】
図12(a)で例示するように、誘電体マスク34を用いて、共振器パターン42の上にストライプ導波路を形成する。このとき、共振器パターン40および41をエッチングなどで除去し、共振器パターン42は残存させる。すなわち、共振器パターン40~42のうち、所望の本数の回折格子パターン7aを含む共振器パターン42にストライプ導波路を形成し、共振器パターン40および42は除去する。ストライプ導波路はY方向に延伸する。
【0060】
図12(b)で例示するように、当該ストライプ導波路をInP埋込層35で埋め込み、誘電体マスク34は除去する。図12(c)で例示するように、誘電体マスク36をマスクとしてエッチングを行い、メサ溝9を形成する。図14(a)で例示するように、メサ溝9はY方向に延伸する。図13(a)で例示するように、ヒータ10を形成する。
【0061】
図13(b)および図14(b)で例示するように、例えば硫酸加水などInPと選択比の取れるエッチャントで犠牲層32をエッチングし、空隙8を形成する。エッチャントは例えばメサ溝9から注入され共振器パターン42下の犠牲層32に到達するが、半導体基板1のInPに遮られて他の犠牲層32には到達しない。これにより図13(b)に示すように、共振器パターン42の下に空隙8が形成され、他の領域には空隙8が形成されない。図14(b)で例示するように、空隙8はY方向に沿って延伸する。
【0062】
本実施形態によれば、平坦性の高いInP基板1を得ることができるため、光導波層6の形成が容易となる。また、複数の共振器パターン40~42それぞれに対応して犠牲層32を設ける。このため、共振器パターン40~42から導波路構造を設ける共振器パターンを選択することができる。したがって導波路構造の位置の自由度が高い。例えば、共振器パターン40~42のうち、所望の本数の回折格子パターン7aを含むもの(ここでは共振器パターン42)に導波路構造を設け、かつ空隙8を形成する。この結果、所望の本数の回折格子パターン7aを有する光半導体素子を形成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 半導体基板、1a、101a バッファ層、2 下クラッド層、3 活性層、4 上クラッド層、5 電極、6 光導波層、7 回折格子、7a 回折格子パターン、8 空隙、9 メサ溝、10 ヒータ、11 電源電極、12 グランド電極、31 誘電体マスク、32 犠牲層、33 InP層、34 誘電体マスク、35 InP埋込層、36 誘電体マスク、40~42 共振器パターン、40a~42b 領域、100 光半導体素子、101 InP基板、102 犠牲層、103 誘電体膜、104 埋込層、105 空隙
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