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特許7007940水素ガス分析キット及び水素ガス分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】水素ガス分析キット及び水素ガス分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20220203BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALN20220203BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
G01N1/00 101Q
G01N1/22 B
G01N1/00 101R
H01M8/0612
H01M8/0668
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018016147
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019132747
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-10-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 水素利用技術研究開発事業/燃料電池自動車及び水素供給インフラの国内規制適正化、国際基準調和・国際標準化に関する研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】長谷 郁枝
(72)【発明者】
【氏名】内原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 知信
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-130860(JP,A)
【文献】特開2006-275801(JP,A)
【文献】特開2016-114463(JP,A)
【文献】特開2003-207448(JP,A)
【文献】特表2009-513947(JP,A)
【文献】特開平03-165259(JP,A)
【文献】特開平04-291151(JP,A)
【文献】特開2013-095273(JP,A)
【文献】特開2009-204040(JP,A)
【文献】特開2018-128313(JP,A)
【文献】特開2005-214897(JP,A)
【文献】特開2016-186426(JP,A)
【文献】特開2004-226088(JP,A)
【文献】特開2001-013120(JP,A)
【文献】特開2001-033362(JP,A)
【文献】特公平06-019311(JP,B2)
【文献】特表2016-530460(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026763(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169449(US,A1)
【文献】坂本 保子,燃料電池車用水素燃料の品質評価 ~オンサイト分析サービスを開始~,住化分析センター SCAS NEWS 2016 -II,2016年,Page.20
【文献】燃料自動車などで注目される水素燃料の微量不純物分析,SHIMADZU Application News,2015年03月,Page.No.G283
【文献】三木雄輔,半導体ガスセンサ式微量水素分析計の開発,大陽日酸技法,2012年,No.12,Page.41-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 1/22
H01M 8/0612
H01M 8/0668
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニットを用いて、水素ガスを分岐させる分岐工程と、
水素ガス中の複数の成分について、測定及び測定のための捕集のうち少なくとも一つを行なうために、各々の成分を測定又は捕集するための測定機器又は捕集機器に、分岐させた水素ガスを導入して、水素ガスの測定及び捕集のうち少なくとも一つを行なう、分析工程と、
各々の前記測定機器又は捕集機器に接続された配管を通る水素ガスを合流させる合流ユニットを用いて、測定又は捕集に供された後に、各々の前記測定機器又は捕集機器から排出された水素ガスを合流させる合流工程と、を含み、
前記分岐ユニットと、前記合流ユニットと、を備える水素ガス分析キットを、水素ガスの測定又は捕集を行なう現場に持ち運び、前記測定機器又は捕集機器に連結することで、水素ガス分析システムを組み立てるか、又は前記水素ガス分析キットを組み立ててから前記現場に持ち運び、
前記現場は、水素分析システムを備えていない水素ステーションであり、
前記捕集機器は、水素ガス中の不純物を捕集する、少なくとも1つの固体捕集サンプラーを備え、
前記固体捕集サンプラーは、前記分岐ユニット及び前記合流ユニットから着脱可能に連結され、
前記合流工程では、前記合流ユニットに連結した水素ガス分析システム外の水素ステーション設備に、前記測定機器又は捕集機器から排出された水素ガスを格納する、水素ガス分析方法。
【請求項2】
前記注入口から注入する水素ガスの圧力が大気圧以上、1MPa未満である、請求項1に記載の水素ガス分析方法。
【請求項3】
前記合流工程によって合流した水素ガスの圧力が大気圧以上、前記合流ユニットに注入
する水素ガスの圧力未満である、請求項1又は2に記載の水素ガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素ガス分析キット及び水素ガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車に供給される水素ガスは、燃料電池性能の低下を最小限に抑えるため、その水素ガス中の各種不純物の最大濃度がISO等によって規定されている。
【0003】
このため、水素ステーションに貯蔵されている水素ガスの品質を管理することが必要であり、水素ガス中の各種不純物の濃度を測定する必要がある。
【0004】
水素ガスをサンプリングする方法として、特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1には、水素ステーションから燃料電池自動車等に供給される水素ガスを高圧ガスボンベ内にサンプリングする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-114463号公報(2016年6月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で水素ステーションの水素ガスを分析する場合は、水素ステーションから水素ガスを高圧ガスボンベ内にサンプリングし、ボンベを分析装置が設置されている研究施設等に持ち帰って分析をする必要があった。近年、燃料電池車の普及に伴い、水素ステーションの設置箇所も増加している中、現場で水素ガス中の複数成分を測定及び/又は捕集する方法が求められている。
【0007】
本願発明は、上記の課題を鑑みてなされた発明であり、その目的は、現場で水素ガスの測定及び/又は捕集ができる、水素ガス分析キット及び水素ガス分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水素分析キットは、注入口から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニットと、複数の配管を通る水素ガスを合流させる合流ユニットと、を備える。
【0009】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水素分析方法は、注入口から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニットを用いて、水素ガスを分岐させる分岐工程と、水素ガス中の複数の成分について、測定及び測定のための捕集のうち少なくとも一つを行なうために、各々の成分を測定又は捕集するための測定機器又は捕集機器に、分岐させた水素ガスを導入して、水素ガスの測定及び捕集のうち少なくとも一つを行なう、分析工程と、各々の前記測定機器又は捕集機器に接続された配管を通る水素ガスを合流させる合流ユニットを用いて、測定又は捕集に供された後に、各々の前記測定機器又は捕集機器から排出された水素ガスを合流させる合流工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、現場で水素ガスの測定及び/又は捕集ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る水素ガス分析キットの構成の説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る水素ガス分析キットが備える分岐ユニットの斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る水素ガス分析キットが備える合流ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0013】
<水素ガス分析システム>
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットを用いた水素ガス分析システムの一実施形態について図1を用いて説明する。
【0014】
水素ガス分析システム100は、本発明の一態様に係る水素ガス分析キットの一つである。水素ガス分析システム100は、注入口1、分岐ユニット14、40、合流ユニット36、42、酸素濃度計及び露点計16、固体捕集サンプラー18、ガスクロマトグラフ22、二酸化炭素濃度測定装置26、一酸化炭素濃度測定装置28、逆止弁43、44を備える。これらのうち、分岐ユニット14、40、合流ユニット36、42が、本発明に係る水素ガス分析キットが備える分岐ユニット及び合流ユニットの一態様である。
【0015】
また、本実施形態では、水素ガス分析システム100は、水素ステーション10が保有する水素ガスを分析する形態について説明する。水素ステーション10は水素自動車に水素ガスを供給するための設備である。
【0016】
〔分岐ユニット〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットが備える分岐ユニットの一態様について図1図2を用いて説明する。図2は分岐ユニット40の構造を模式的に示す図である。分岐ユニット14の構造は、以下に説明する事項以外について分岐ユニット40の構造と同様であるので説明は繰り返さない。
【0017】
図1に示すように、分岐ユニット14は、注入口1と、注入口1に接続された配管50と、当該配管を3つに分岐した配管51を備える。これにより、注入口1から導入された水素ガスを3つに分岐させることができる。注入口1は、水素ステーション10から分岐ユニット14に供給される水素ガスの入口であり、分析対象の水素ガスの受け口である。注入口1の形状は、注入口1に接続する配管における水素ガスの出口の形状に応じて適宜設計すればよい。分岐ユニット14の分岐した3つの配管のうち一つは分岐ユニット40の注入口3に接続されている。図1及び図2に示すように、分岐ユニット40は、注入口3に接続された配管54と、配管54を3つに分岐した配管55を備える。これにより、注入口3から導入された水素ガスを3つに分岐することができる。
【0018】
本発明の一態様において、分岐ユニットの分岐させる数は特に限定されず、分析する成分の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、分岐の数は、2~14であることが好ましく、3~6がより好ましい。分岐させる数が2~14であれば、好適に水素ガスを分岐することができる。また、デッドボリュームを減らし、水素ガス測定及び/又は捕集前の分岐ユニット内のガス置換を容易に行い、水素ガスの測定及び/又は捕集を短時間で行うことができる。また、水素分析用キットの大きさをコンパクトに収めることができ、容易に持ち運びができる。
【0019】
また、水素ガス分析システム100は2つの分岐ユニットを備えているが、本発明の一態様において、水素ガス分析キット内の分岐ユニットの数は特に限定されない。分岐ユニットを2つ以上備えている場合、分岐ユニットは、一つ前の分岐ユニットで分岐された水素ガスをさらに分岐するように設けてもよい。
【0020】
図1及び図2に示すように、分岐ユニット40は配管54、55を備える。配管54、55は、枠体60に取り付けられている。配管は、水素ガスの流路であり、各ユニット及び各機器を連結するように配置される。これにより、水素ガスが各ユニット及び各機器へ供給される。配管の種類は、分析対象である水素ガスに影響を与えない材質の配管であればよく、また、接続するユニット及び機器の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えばステンレス鋼、PTFE、PFA等から出来た配管が挙げられる。また、配管は、配管容積が小さいもの、フレキシブル配管等がより好ましい。水素ガス分析キットの小型化の観点から、フレキシブル配管が好ましい。また、配管の数、組み合わせ及び配置は、接続する各種ユニット及び各種機器の数及び種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
また、分岐ユニット内の各配管の長さは、適宜設定すればよく、例えば、配管が取り付けられている枠体の大きさに応じて設定されればよい。また、本実施の形態では各配管等を枠体に固定した形態について説明したが、このような形態には限定されず、筐体内に格納されていてもよく、枠体や筐体を用いなくともよい。
【0022】
また、分岐ユニットの全体の寸法は、特に限定されないが、現場で水素ガスの測定及び/又は捕集を容易に行うため、使用者が持ち運べる程度の大きさが好ましい。よって、配管の寸法もユニットの全体の寸法に合わせて設定されることが好ましい。
【0023】
合流ユニット等、水素ガス分析システム100において他の箇所に用いられる配管も配管54、55と同様であるため、それぞれについての説明は繰り返さない。また、ユニットの全体の寸法についても、同様である。
【0024】
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、分岐ユニット内に圧力計、圧力調整器、流量計等を備えていてもよい。これにより、使用者は、適宜、圧力を確認することができる。圧力計、圧力調整器、流量計の種類、数、及び設置箇所は、特に限定されず、分析の目的等に応じて、適宜設置すればよい。
【0025】
〔測定機器、捕集機器〕
水素ガス分析システム100において、分岐ユニットで分岐された配管それぞれには測定機器又は捕集機器が接続されている。分岐ユニット14で分岐された配管51には、測定機器として、酸素濃度計及び露点計16が接続されている。捕集機器として、固体捕集サンプラー18が接続されている。
【0026】
また、分岐ユニット40で分岐された配管55には、ガスクロマトグラフ22、二酸化炭素濃度測定装置26、一酸化炭素濃度測定装置28が接続されている。これらの機器は、分岐された水素ガス中の複数の成分を測定するため、また、測定のための捕集を行うため設置されている。
【0027】
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットが備える分岐ユニット、合流ユニットに接続する測定機器の種類は特に限定されず、上述した測定機器、捕集機器以外に、例えば、粒子捕集用機器、硫黄成分分析計などを備えていてもよい。分析対象の成分に応じて適宜選択すればよい。
【0028】
また、捕集機器の種類は特に限定されない。例えば、固体捕集サンプラー、液体捕集サンプラー、フィルター型サンプラー、ガス捕集用容器が挙げられる。固体捕集サンプラーとしては、例えば、酸成分用固体捕集サンプラー、塩基成分用固体捕集サンプラー、アルデヒド成分用固体捕集サンプラー等の固体捕集サンプラーが挙げられる。より具体的には、酸成分用固体捕集サンプラーとしては、BremS(登録商標)-A(住化分析センター製)、塩基成分用固体捕集サンプラーとしては、Brems(登録商標)-B(住化分析センター製)が挙げられる。また、アルデヒド成分用固体捕集サンプラーとしては、スミキャッチ(登録商標)CNET-A(住化分析センター製)が挙げられる。本発明の一態様において、水素ガス分析キットが備える捕集機器の数、及び組み合わせは限定されず、分析対象の成分に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
また、本発明の一態様において、捕集機器は分岐ユニット及び合流ユニットから簡易に着脱可能である。捕集機器のみを水素ガス分析キットから取り外し、測定機器等を備える研究施設等へ持ち運び、精密な分析を行うことができる。分析のため捕集機器を取り外した後の水素ガス分析キットには、新たに捕集機器を接続し、別の現場での水素ガスの分析に対応することができる。
【0030】
水素ガス分析システム100では、分岐ユニット14、40によって分岐された配管1つに対し1つの測定機器又は捕集機器を備えているが、本発明の一態様において、測定機器及び捕集機器の配置は特に限定されない。分岐ユニットによって分岐された配管1つに対して1つの測定機器又は捕集機器を備え、複数の測定機器又は捕集機器を並列させてもよく、また、分岐された配管1つに対して複数の測定機器又は捕集機器を直列させてもよい。中でも、複数の測定機器又は捕集機器を並列させることが好ましい。これにより、異なる種類の測定又は捕集を同時に行うことができ、水素ガスの中の複数の成分の測定又は捕集を短時間で完了することができる。また、複数の測定機器又は捕集機器を分岐された異なる配管それぞれに備えることで、一部の測定機器又は捕集機器の不具合等によるトラブルに際しても、不具合のないその他の測定機器及び捕集機器への影響が少ない。また、分岐ユニット14、40の分岐された配管51、55の出口は密閉できる構造でもよい。密閉するための構成としては例えばバルブ等が挙げられる。これにより、分岐ユニット内部が外気に触れることを防ぐことができるので、分岐ユニットの分岐された配管の全てを測定機器等に接続せずに使用することが可能である。
【0031】
(濃縮装置)
また、本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、各種測定機器の前に濃縮装置を備えていてもよい。濃縮装置とは、水素ガス中の成分を濃縮する装置である。水素ガス中の成分は、一般的な測定機器では感度不足で測定できない場合もあるため、濃縮装置を測定機器の前に備え、成分を濃縮した後に測定機器へ導入することで、より好適に対象成分の測定を行うことが可能である。水素ガス分析キット内に備える濃縮装置の種類、数は特に限定されない。濃縮装置の種類としては冷却濃縮や、固体捕集サンプラーや、ガス捕集剤などやシリカ膜を用いることが好ましい。
【0032】
〔合流ユニット〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットが備える合流ユニットの一態様について図1図3を用いて説明する。図3は合流ユニット42の構造を模式的に示す図である。合流ユニット36の構造は、以下に説明する事項以外について合流ユニット42の構造と同様であるので説明は繰り返さない。
【0033】
合流ユニット42は、分岐ユニット40によって3つに分岐される配管56を1つに合流する配管57を備える。配管56、57は、枠体70に取り付けられている。配管は、水素ガスの流路であり、各ユニット及び各機器を連結するように配置される。これにより、分岐ユニット40により分岐され、測定機器を通った水素ガスを合流させ、排出口7から排出することができる。排出口7は、合流ユニット36に接続されている。合流ユニット36は、3つの配管52を合流する配管53を備える。1つに合流する配管53は、排出口5と接続しており、排出口5は外部の水素ステーション設備46と接続する。これにより、各測定機器及び捕集機器を通り、分析が終わった後の水素ガスを、排出口5を介して外部へと速やかに排出することができる。
【0034】
本発明の一態様において、合流する対象となる配管の数は特に限定されず、2~14の配管を合流することが好ましく、3~6がより好ましい。合流する配管の数が2~14であれば、好適に水素ガスを合流することができる。
【0035】
また、水素ガス分析システム100は2つの合流ユニット36、42を備えているが、本発明の一態様において、水素ガス分析キット内の合流ユニットの数は特に限定されない。合流ユニットは、分岐ユニットに対応するように分岐ユニットと同じ数を設けてもよく、また複数の分岐ユニットによって分岐された水素ガスを1つの合流ユニットで合流するように設けてもよい。
【0036】
また、合流ユニット42は逆止弁44を備える。逆止弁44は、水素ガス分析システム100内を流れる水素が逆流することを防ぐ。本発明の一態様において、水素ガス分析キットは、特に、水素ステーションのある現場での分析に好適に用いることができる。現場で用いる際には、水素ガス分析キットと、外部の機器、設備等とを繋ぐ配管の長さが長くなる場合がある。分析後の水素ガスを排出する配管が長くなると、配管内の圧力は高くなり、水素ガスが逆流するおそれがある。合流ユニットの分岐された配管それぞれに逆止弁を備えていると、水素ガスの逆流を防ぎ、安全に水素ガスの測定及び/又は捕集を行うことができる。また、逆止弁44は、3つの配管56のそれぞれに備えられているが、逆止弁の配置、数については特に限定されない。また、各測定機器が逆止弁を備えている場合は、逆止弁を設けない配管があってもよい。なお、前記外部の機器、設備とは、使用者が用意する各種の分析機器、捕集機器、水素ステーション、合流ユニットから排出される水素ガスの排気設備等である。
【0037】
〔パージライン〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットにおいて、分岐したラインをパージラインとして使用してもよい。また、水素ステーションから供給される水素ガスを図示しない別の配管を通して水素ガス分析システム100に導入して、パージラインとして使用してもよい。パージラインは、分析前に水素ガス分析システム内に残留している水素以外のガスを外部へ排出し、装置内を清掃するため、また、システム内の圧力が高くなった場合に、水素ガスを逃すためのラインである。パージラインの長さ、数、及び配置は、水素ガス分析キットのユニット及び機器の数、種類、組み合わせ等に応じて適宜設定すればよい。パージラインを用いることで、水素ガスの分析工程を好適に行うことができる。また、水素ガス分析装置内のガスの圧力を好適に調節することができる。
【0038】
〔酸素濃度計及び露点計16〕
酸素濃度計及び露点計16は、配管51を通る水素ガスに含まれる酸素濃度及び水分量を測定する。酸素濃度計及び露点計は、酸素濃度及び水分量を測定できるものであればよく、種類は限定されないが、水素に対して防爆構造を有しているものがより好ましい。図1において、酸素濃度計及び露点計16は、まとめて一つの測定装置として図示しているが、配管51をさらに分岐し、分岐した配管それぞれに酸素濃度計、露点計を接続してもよい。
【0039】
〔ガスクロマトグラフ22〕
ガスクロマトグラフ22は、配管55を通る水素ガスに含まれるヘリウム、窒素、アルゴン、全炭化水素成分等の濃度を測定する。ガスクロマトグラフの測定対象とする気体の種類はこれらに限定されない。また、ガスクロマトグラフの装置の種類は特に限定されず、目的等に応じて適宜選択すればよい。
【0040】
〔二酸化炭素濃度測定装置26〕
二酸化炭素濃度測定装置26は、配管55を通る水素ガスに含まれる二酸化炭素の濃度を測定する。二酸化炭素濃度測定装置の種類は、水素ガス中の二酸化炭素の濃度を測定できればよく、目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、二酸化炭素濃度測定装置の検出器は光学式センサーのものでもよく、検出器のセンサー感度が十分でない場合は、水素ガス中の対象成分の濃度を高くするために、測定装置の前に冷却濃縮及び加熱脱離を行う濃縮装置を設けてもよい。
【0041】
〔一酸化炭素濃度測定装置28〕
一酸化炭素濃度測定装置28は、配管55を通る水素ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を測定する。一酸化炭素濃度測定装置の種類は、水素ガス中の一酸化炭素の濃度を測定できばよく、目的等に応じて、適宜選択すればよい。
【0042】
〔配管〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、キットに含まれる各ユニットと、前述した外部の機器、設備とを接続するための配管を備えていてもよい。配管の種類については、分岐ユニット、合流ユニットで用いた配管と同様である。配管の長さについては、水素ガス分析キットを用いる現場の状態によって適宜選択すればよい。また、外部の機器、設備とを接続するための配管は使用者が適宜用意してもよい。
【0043】
〔継手〕
図1に示す配管同士、配管と各ユニット、配管と各機器とは、継手(図示せず)で接続されている。これにより、水素ガス分析キットを一体化することができる。継手の種類は、分析対象である水素ガスに影響を与えない材質の継手であればよく、また、接続する各種ユニット及び各種機器の種類に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、ステンレス鋼、PTFE、PFA等から出来た継手が挙げられる。また、継手の数及び組み合わせは、接続する配管、各ユニット、各機器の数及び種類に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
〔その他の機器〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、その他の機器を備えていてもよい。その他の機器としては、特に限定されないが、例えば、圧力調整器、圧力計、及び流量計等が挙げられる。これら機器の配置、数、及び組み合わせは、特に限定されない。
【0045】
本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、他の器具を含んでいてもよい。例えば、各種ユニット及び各種機器を連結具に接続するための工具を含んでも良い。また、本発明の一態様に係る水素ガス分析キットには、水素ガス分析装置を製造するための手順及び/又は水素ガス分析方法の手順等を記載した指示書を含んでもよい。指示書は、紙又はその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピュータ読み取り可能なディスク又はCD-ROM等のような電子媒体に付されていてもよい。
【0046】
なお、本発明に係る水素ガス分析キットの態様としては、組み立てられた水素ガス分析システムでもよく、組み立てるための部品を備え、使用者が水素ガス分析システムを組み立てる態様でもよい。合流ユニット及び分岐ユニット以外の各種測定機器は、水素ガス分析キットに同梱されていてもよく、使用者が任意の装置を別途用意してもよい。
【0047】
各種機器及び各種ユニット同士の接続の形態は、図1に限定されず、どの機器とユニットとの間を接続するかは、目的及び装置の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0048】
〔水素ガス分析方法〕
本発明の一態様に係る水素ガス分析方法は、分岐工程と、分析工程と、合流工程と、を含む方法である。これらの方法により、対象の水素ガスを分岐させて、同時に複数の測定に用いることができ、分岐された測定後のガスを一か所から速やかに排出することができる。各工程について図1図3を用いて以下に説明する。
【0049】
(分岐工程)
本発明の一態様において、分岐工程は、注入口1から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニット14を用いて、水素ガスを分岐する工程である。
【0050】
水素ステーション10に設置のディスペンサーノズルから供給される水素ガスは、注入口1を経由し、水素ガス分析システム100内に導入される。水素ステーション10から注入口1に供給される水素ガスは減圧弁を用いる方法等の従来公知の方法を適宜利用して減圧されていてもよい。水素ガスは、分岐ユニット14によって分岐された3つの配管51のうち2つの配管51を通る水素ガスは分析工程へ供される。また、分岐された3つの配管51のうち1つを通る水素ガスは別の分岐ユニット40へ向かう。
【0051】
また、本発明の一態様において、分岐工程は、注入口3から注入される水素ガスを、分岐ユニット40を用いて分岐する工程である。分岐ユニット40によって分岐された3つの配管55を通る水素ガスは分析工程へ供される。
【0052】
分析工程において、注入口3から注入される水素ガスの圧力は大気圧以上1MPa未満であることが好ましい。圧力がこの範囲の水素ガスを用いることで、分析キット内へ速やかに水素ガスを導入することができ、水素ガスを好適に分岐させることができる。また、各測定装置、各捕集機器の耐圧に合わせて、適宜圧力を調整することが好ましい。
【0053】
(分析工程)
本発明の一態様において、分析工程は、水素ガス中の複数の成分について、測定機器又は捕集機器に、分岐ユニット14及び40によって分岐させた水素ガスを導入して、水素ガスの測定及び捕集のうち少なくとも一つを行なう工程である。分岐ユニット14によって分岐された水素ガスは酸素濃度計及び露点計16による酸素濃度及び水分の測定、固体捕集サンプラー18による成分の捕集に供される。これらの測定及び捕集は並行して行われる。また、分岐ユニット14によって分岐された1つの配管を通る水素ガスは、分岐ユニット40によってさらに分岐される。分岐ユニット40によって3つに分岐されたうちの1つの配管を通る水素ガスはガスクロマトグラフ22によってヘリウム濃度、窒素濃度、及びアルゴン濃度が測定される。また、その他の2つの配管を通る水素ガスも、それぞれ測定機器に供される。二酸化炭素濃度測定装置26により二酸化炭素成分濃度、一酸化炭素濃度測定装置28により一酸化炭素濃度が測定される。これらの測定は並行して行われる。本発明の一態様において、測定及び捕集の方法は特に限定されず、分析対象によって適宜選択すればよい。
【0054】
また、各測定及び/又は捕集は、分岐させた水素ガスそれぞれに対して1つの測定を行い、複数の測定を並行してもよく、分岐させた水素ガスに対して1つの測定又は捕集が完了した後に別の測定又は捕集を行ってもよい。時間効率の観点より、複数の測定を並行して行うことが好ましい。
【0055】
水素ガスの流量は、測定機器、捕集機器等の種類等に応じて、所望の流量となるように適宜調整すればよく、各種測定機器、各種捕集機器等毎に流量は異なっていてもよい。
【0056】
(合流工程)
本発明の一態様において、合流工程は、各々の測定機器又は捕集機器に接続された配管52又は56を通る水素ガスを合流させる合流ユニット36又は42を用いて、各々の測定機器又は捕集機器から排出された水素ガスを合流させる工程である。合流ユニット42において、分岐された3つの配管56を通る水素ガスが合流した後、排出口7から排出され、合流ユニット36へ向かう。合流ユニット36において、分岐された3つの配管52を通る水素ガスが合流し、排出口5から排出される。排出された水素ガスは、水素ガス分析システム外の水素ステーション設備46へ格納される。
【0057】
合流工程において注入される水素ガスの圧力は、大気圧以上、当該合流ユニットに注入する水素ガスの圧力未満であることがより好ましい。これにより、出口圧が入り口圧より低くなることで、排気を円滑に行なうことができる。
【0058】
〔付記事項〕
以上のように、本発明の一態様に係る水素ガス分析方法は、注入口から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニットを用いて、水素ガスを分岐させる分岐工程と、水素ガス中の複数の成分について、測定及び測定のための捕集のうち少なくとも一つを行なうために、各々の成分を測定又は捕集するための測定機器又は捕集機器に、分岐させた水素ガスを導入して、水素ガスの測定及び捕集のうち少なくとも一つを行なう、分析工程と、各々の前記測定機器又は捕集機器に接続された配管を通る水素ガスを合流させる合流ユニットを用いて、測定又は捕集に供された後に、各々の前記測定機器又は捕集機器から排出された水素ガスを合流させる合流工程と、を含むことがより好ましい。
【0059】
また、本発明の一態様に係る水素ガス分析方法は、分析工程では少なくとも固体捕集サンプラーによる水素ガスの捕集を行なうことがより好ましい。
【0060】
また、本発明の一態様に係る水素ガス分析方法は、注入口から注入する水素ガスの圧力が大気圧以上1MPa未満であることがより好ましい。
【0061】
また、本発明の一態様に係る水素ガス分析方法は、合流工程によって合流した水素ガスの圧力が大気圧以上、前記合流ユニットに注入する水素ガスの圧力未満であることがより好ましい。
【0062】
また、本発明の一態様に係る水素ガス分析キットは、入口から注入される水素ガスを複数の配管に分岐する分岐ユニットと、複数の配管を通る水素ガスを合流させる合流ユニットと、を備えることが好ましい。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、水素ステーションの水素ガスを現場で分析することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、3 注入口
50、51、52、53、54、55、56、57 配管
5、7 排出口
10 水素ステーション
14、40 分岐ユニット
36、42 合流ユニット
46 水素ステーション設備
100 水素ガス分析システム
図1
図2
図3