(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】放熱フィン、放熱器及び放熱器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20220118BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20220118BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220118BHJP
F28F 19/06 20060101ALI20220118BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/46 Z
H05K7/20 D
H05K7/20 N
F28F19/06 A
F28F21/08 B
(21)【出願番号】P 2018065037
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】南 和彦
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277768(JP,A)
【文献】特開2017-220539(JP,A)
【文献】特開2017-007172(JP,A)
【文献】特開2005-179729(JP,A)
【文献】特開2012-016095(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035796(WO,A1)
【文献】特開平05-102356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
H01L 23/473
H05K 7/20
F28F 19/06
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム-炭素粒子複合材からなる心材部と、皮材層としての犠牲腐食材層とを有
し、
前記犠牲腐食材層は、前記心材部に対して電位的に卑なアルミニウム-炭素粒子複合材からなる放熱フィン。
【請求項2】
請求項
1記載の放熱フィンを備えた放熱器。
【請求項3】
ベースプレートを更に備え、
前記放熱フィンの数が複数であり、
前記複数の放熱フィンが前記ベースプレートに突出状に設けられている請求項
2記載の放熱器。
【請求項4】
棒状の連結部材を更に備え、
前記放熱フィンの数が複数であり、
前記各放熱フィンが板状であり、
前記複数の放熱フィンは並列状に配置された状態で前記連結部材を介して連結一体化されている請求項
2記載の放熱器。
【請求項5】
アルミニウム-炭素粒子複合材からなる心材部と、皮材層としての犠牲腐食材層とを有する放熱フィン
と、
棒状の連結部材とを備え、
前記放熱フィンの数が複数であり、
前記各放熱フィンが板状であり、
前記複数の放熱フィンは並列状に配置された状態で前記連結部材を介して連結一体化されている放熱器。
【請求項6】
前記犠牲腐食材層は、前記心材部に対して電位的に卑な金属材料からなり、
前記金属材料としてAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金が用いられている請求項
5記載の
放熱器。
【請求項7】
請求項
3記載の放熱器と、底壁及び周壁を有するとともに上方に開口した容器状に形成され且つ内部に冷却流体流路が設けられるケーシングとを備え、
前記放熱器のベースプレートの外周縁部が前記ケーシングの前記周壁の上縁部に、前記放熱器の複数の放熱フィンが前記ケーシングの内部に配置された状態で接合されている冷却装置。
【請求項8】
塑性加工素材を塑性加工することにより、ベースプレートと前記ベースプレートに突出状に一体に形成された複数のフィンとを備えた放熱器を形成する、放熱器の製造方法であって、
アルミニウム-炭素粒子複合材からなる板状の心材部と前記心材部に接合された皮材層としての犠牲腐食材層とを有する塑性加工素材を準備し、
前記塑性加工素材の前記心材部は、焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記焼結素材に前記犠牲腐食材層を接触させた状態で前記焼結素材を焼結することにより、前記心材部を形成すると同時に前記心材部に前記犠牲腐食材層を焼結接合し、これにより前記塑性加工素材を得、
前記塑性加工素材を、前記塑性加工素材の前記心材部側の材料がベースプレートの形状になるように且つ前記塑性加工素材の前記犠牲腐食材層側の材料が複数箇所で突出するように塑性加工することにより、ベースプレートを形成すると同時に前記ベースプレートに複数の放熱フィンを突出状に一体に形成する放熱器の製造方法。
【請求項9】
塑性加工素材を塑性加工することにより、ベースプレートと前記ベースプレートに突出状に一体に形成された複数のフィンとを備えた放熱器を形成する、放熱器の製造方法であって、
アルミニウム-炭素粒子複合材からなる板状の心材部と前記心材部に接合された皮材層としての犠牲腐食材層とを有する塑性加工素材を準備し、
前記塑性加工素材の前記心材部は、第1焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記犠牲腐食材層は、第2焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記第1焼結素材に前記第2焼結素材を接触させた状態で両者を一緒に焼結することにより、前記心材部と前記犠牲腐食材層を形成すると同時に前記心材部に前記犠牲腐食材層を焼結接合し、これにより前記塑性加工素材を得、
前記塑性加工素材を、前記塑性加工素材の前記心材部側の材料がベースプレートの形状になるように且つ前記塑性加工素材の前記犠牲腐食材層側の材料が複数箇所で突出するように塑性加工することにより、ベースプレートを形成すると同時に前記ベースプレートに複数の放熱フィンを突出状に一体に形成する放熱器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の発熱体の熱を放散する放熱フィン、放熱器及び冷却装置、並びに、放熱器の製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、特に文中に示した場合を除いて、「アルミニウム」の語は純アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む意味で用いられる。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム-炭素粒子複合材として、アルミニウムマトリックスと当該アルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子とを含むものが知られている。このような複合材を開示した文献として、特許第5150905号公報(特許文献1)、特開2015-25158号公報(特許文献2)、特開2015-217655号公報(特許文献3)、特開2017-88913号公報(特許文献4)等がある。
【0004】
このような複合材は高い熱伝導性を有しており、したがって高い熱伝導性が要求される部材の材料としての利用が期待されている。
【0005】
ところで、発熱性素子等の発熱体の熱を放散する放熱器は一般に放熱フィンを備えている。放熱フィンにはその放熱性能を高めるために高い熱伝導性が要求される。そこで、放熱フィンの材料としてアルミニウム-炭素粒子複合材を用いることが考えられる。例えば、特開2017-220539号公報(特許文献5)は、放熱フィンがベースプレートに一体に設けられてなるアルミニウム-炭素粒子複合材製ヒートシンクを放熱器として開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5150905号公報
【文献】特開2015-25158号公報
【文献】特開2015-217655号公報
【文献】特開2017-88913号公報
【文献】特開2017-220539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放熱器においてその耐用寿命を長くするためには、冷却流体に対する放熱フィンの耐食性はなるべく高い方が望ましい。
【0008】
そこで本発明は、高い放熱性と高い耐食性を有する放熱フィン、放熱器及び冷却装置、並びに、高い放熱性と高い耐食性を有する放熱器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
1) アルミニウム-炭素粒子複合材からなる心材部と、皮材層としての犠牲腐食材層とを有する放熱フィン。
【0011】
2) 前記犠牲腐食材層は、前記心材部に対して電位的に卑な金属材料からなり、
前記金属材料としてAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金が用いられている前項1記載の放熱フィン。
【0012】
3) 前記犠牲腐食材層は、前記心材部に対して電位的に卑なアルミニウム-炭素粒子複合材からなる前項1記載の放熱フィン。
【0013】
4) 前項1~3のいずれかに記載の放熱フィンを備えた放熱器。
【0014】
5) ベースプレートを更に備え、
前記放熱フィンの数が複数であり、
前記複数の放熱フィンが前記ベースプレートに突出状に設けられている前項4記載の放熱器。
【0015】
6) 棒状の連結部材を更に備え、
前記放熱フィンの数が複数であり、
前記各放熱フィンが板状であり、
前記複数の放熱フィンは並列状に配置された状態で前記連結部材を介して連結一体化されている前項4記載の放熱器。
【0016】
7) 前項5記載の放熱器と、底壁及び周壁を有するとともに上方に開口した容器状に形成され且つ内部に冷却流体流路が設けられるケーシングとを備え、
前記放熱器のベースプレートの外周縁部が前記ケーシングの前記周壁の上縁部に、前記放熱器の複数の放熱フィンが前記ケーシングの内部に配置された状態で接合されている冷却装置。
【0017】
8) 塑性加工素材を塑性加工することにより、ベースプレートと前記ベースプレートに突出状に一体に形成された複数のフィンとを備えた放熱器を形成する、放熱器の製造方法であって、
アルミニウム-炭素粒子複合材からなる板状の心材部と前記心材部に接合された皮材層としての犠牲腐食材層とを有する塑性加工素材を準備し、
前記塑性加工素材を、前記塑性加工素材の前記心材部側の材料がベースプレートの形状になるように且つ前記塑性加工素材の前記犠牲腐食材層側の材料が複数箇所で突出するように塑性加工することにより、ベースプレートを形成すると同時に前記ベースプレートに複数の放熱フィンを突出状に一体に形成する、放熱器の製造方法。
【0018】
9) 前記塑性加工素材の前記心材部は、焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記焼結素材に前記犠牲腐食材層を接触させた状態で前記焼結素材を焼結することにより、前記心材部を形成すると同時に前記心材部に前記犠牲腐食材層を焼結接合し、これにより前記塑性加工素材を得る前項8記載の放熱器の製造方法。
【0019】
10) 前記塑性加工素材の前記心材部は、第1焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記犠牲腐食材層は、第2焼結素材を焼結することにより形成されるものであり、
前記第1焼結素材と前記第2焼結素材を接触させた状態で両者を一緒に焼結することにより、前記心材部と前記犠牲腐食材層を形成すると同時に前記心材部に前記犠牲腐食材層を焼結接合し、これにより前記塑性加工素材を得る前項8記載の放熱器の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
前項1では、放熱フィンはアルミニウム-炭素粒子複合材からなる心材部を有しているので、高い放熱性を有する。さらに、放熱フィンは犠牲腐食材層を有しているので、高い耐食性を有する。
【0022】
前項2では、犠牲腐食材層としてAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金が用いられていることにより、放熱フィンの耐食性を確実に高くすることができる。
【0023】
前項3では、犠牲腐食材層が心材部に対して電位的に卑なアルミニウム-炭素粒子複合材からなることにより、放熱フィンの放熱性及び耐食性を更に高めることができる。
【0024】
前項4~6では、高い放熱性と高い耐食性を有する放熱器を提供できる。
【0025】
前項7では、高い放熱性と高い耐食性を有する冷却装置を提供できる。
【0026】
前項8では、高い放熱性と高い耐食性を有する放熱器を容易に製造することができる。
【0027】
前項9及び10では、塑性加工素材の製造工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷却装置を具備する、発熱性素子用モジュール基板の概略断面図である。
【
図2】
図2は、同冷却装置の放熱器を鍛造加工(塑性加工)により形成するための鍛造加工素材(塑性加工素材)の概略断面図である。
【
図3】
図3は、同鍛造加工素材の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図4】
図4は、同鍛造加工素材を鍛造加工装置の押圧パンチで押圧する前の状態で示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、同鍛造加工素材を同押圧パンチで押圧した状態で示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置の放熱器を鍛造加工(塑性加工)により形成するための鍛造加工素材(塑性加工素材)の概略断面図である。
【
図7】
図7は、同鍛造加工素材の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係る放熱器の概略斜視図である。
【
図9】
図9は、同放熱器の放熱フィンの概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0030】
図1~5は、本発明の第1実施形態を説明する図である。
【0031】
図1に示すように、本第1実施形態に係る冷却装置10は、発熱性素子(二点鎖線で示す)55用モジュール基板50に設けられたものである。発熱性素子55は、例えば、パワー半導体素子等の半導体素子である。
【0032】
ここで、モジュール基板50及び冷却装置10の上下方向は限定されるものではないが、本明細書及び特許請求の範囲では、これらの構成を理解し易くするため、
図1に示すように、発熱性素子55が搭載される側をモジュール基板50及び冷却装置10の上側、及び、その反対側をモジュール基板50及び冷却装置10の下側と定義する。
【0033】
モジュール基板50は、配線層51と絶縁層52と第1緩衝層53と第2緩衝層54と上述の冷却装置10とを具備しており、これらが上から下へこの記載の順に積層された状態で所定の接合手段(例:ろう付け、焼結)により接合一体化されており、これによりモジュール基板50が形成されている。
【0034】
発熱性素子55は、配線層51の上面からなる搭載面51aにはんだ層(図示せず)で接合されて搭載される。発熱性素子55が半導体素子である場合、半導体素子が搭載面51aに搭載されることにより、半導体素子モジュール57が形成される。
【0035】
配線層51は例えば金属製である。絶縁層52は電気絶縁性を有するものであり、例えばセラミック製である。第1緩衝層53及び第2緩衝層54はモジュール基板50に発生する熱応力等の応力を緩和するための層である。第1緩衝層53は例えば金属製である。第2緩衝層54は例えば金属製であり詳述すると例えば両面アルミニウムブレージングシートからなる。
【0036】
冷却装置10は、本発明の第1実施形態に係る放熱器1と、金属製ケーシング11とを備えている。
【0037】
放熱器1はいわゆるヒートシンク形状のものであり、詳述するとベースプレート3と本発明の第1実施形態に係る複数の放熱フィン2とを備えている。
【0038】
放熱フィン2は、ベースプレート3の所定面にベースプレート3に対して突出状に一体に形成されている。ベースプレート3の所定面は、例えば、ベースプレート3の厚さ方向の両面のうち少なくとも一方の片面である。本第1実施形態では、ベースプレート3の所定面は、ベースプレート3の厚さ方向の両面のうちの一方の片面であり、当該一方の片面はケーシング11側に向いている。
【0039】
ベースプレート3の他方の片面は平坦状に形成されている。第2緩衝層54はベースプレート3の当該他方の片面に接合されている。
【0040】
各放熱フィン2はピン状であり、その横断面形状は円形状、多角形状(例:四角形状)などである。
【0041】
ケーシング11は、平面視略四角形状の底壁11aと底壁11aの外周縁に底壁11aに対して起立状に形成された周壁11bとを有するとともに上方に開口した容器状のものである。詳述すると、ケーシング11は、片面アルミニウムブレージングシートが容器状に屈曲形成されたものであり、片面アルミニウムブレージングシートのろう材層11cはケーシング11の内側に向いている。
【0042】
ケーシング11の内部には冷却流体流路12が設けられている。冷却流体流路12には冷却流体(図示せず)が流通される。冷却流体として、冷却液(例:冷却水)、冷却ガス(例:冷却空気)などが用いられ、本第1実施形態では例えば冷却液が用いられる。
【0043】
そして、放熱器1のベースプレート3の外周縁部がケーシング11の周壁11bの上縁部に、放熱器1の放熱フィン2がケーシング11の内部に配置された状態でケーシング11に対して密閉状にろう材層11cでろう付け接合されている。これにより、ケーシング11の上側の開口がベースプレート3で閉塞されている。さらに、放熱フィン2の先端がケーシング11の底壁11aの内面にろう材層11cでろう付け接合されている。
【0044】
放熱器1の製造方法について以下に説明する。
【0045】
図2~5に示すように、放熱器1は、板状の塑性加工素材20を塑性加工することにより形成されるものである。本第1実施形態では、塑性加工素材20への塑性加工は鍛造加工であり、したがって塑性加工素材20は詳述すると鍛造加工素材21である。
【0046】
図2に示すように、鍛造加工素材21(塑性加工素材20)は、アルミニウム-炭素粒子複合材25からなる板状の心材部22と、心材部22に接合された皮材層としての犠牲腐食材層23とを鍛造加工素材21の材料として有している。
【0047】
犠牲腐食材層23は、心材部22の所定面にその全体に亘って焼結接合されている。本第1実施形態では、心材部22の所定面は、心材部22における放熱フィン2が形成される側の面である。
【0048】
心材部22のアルミニウム-炭素粒子複合材25は、アルミニウムマトリックス(ドットハッチングで示す)25aと、多数の炭素粒子25bとを含むものであり、アルミニウム基炭素粒子複合材とも呼ばれているものである。本第1実施形態では、炭素粒子25bはアルミニウムマトリックス25a中に分散している。
【0049】
炭素粒子25bの種類は限定されるものではなく、特に、炭素繊維(例:PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維)、天然黒鉛粒子(例:鱗片状黒鉛粒子)、グラフェン(例:単層グラフェン、多層グラフェン)及びカーボンナノチューブ(例:単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維)からなる群より選択される一種又は二種以上のものを炭素粒子25bとして用いることが望ましい。その理由は、このような炭素粒子25bは熱伝導性が高く且つアルミニウムとの複合化をし易いからである。
【0050】
炭素粒子25bの大きさは限定されるものではなく、通常、炭素粒子25bの最長軸方向の平均長さは1μm~1mmの範囲である。
【0051】
犠牲腐食材層23は、心材部22(詳述すると、心材部22のアルミニウム-炭素粒子複合材25のアルミニウムマトリックス25a)に対して電位的に卑な金属材料からなる。当該金属材料として、特にAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金を用いることが望ましい。この場合、犠牲腐食材層23の犠牲腐食作用を確実に発揮できる。
【0052】
Al-Zn系合金のZn含有量は限定されるものではなく、特に0.3~5質量%の範囲であることが望ましい。Zn含有量が0.3質量%以上であることにより、犠牲腐食作用を更に確実に発揮できる。Zn含有量が5質量%以下であることにより、犠牲腐食作用を確実に長期間に亘って維持できる。
【0053】
Al-In系合金のIn含有量は限定されるものではなく、特に0.01~0.5質量%の範囲であることが望ましい。Zn含有量が0.01質量%以上であることにより、犠牲腐食作用を更に確実に発揮できる。Zn含有量が0.5質量%以下であることにより、犠牲腐食作用を確実に長期間に亘って維持できる。
【0054】
Al-Sn系合金のSn含有量は限定されるものではなく、特に0.01~1質量%の範囲であることが望ましい。Sn含有量が0.01質量%以上であることにより、犠牲腐食作用を更に確実に発揮できる。Sn含有量が1質量%以下であることにより、犠牲腐食作用を確実に長期間に亘って維持できる。
【0055】
心材部22のアルミニウム-炭素粒子複合材25のアルミニウムマトリックス25aとしては、犠牲腐食材層23(詳述すると、犠牲腐食材層23の犠牲腐食材である上述の金属材料)に対して電位的に貴なアルミニウム材料が用いられている。
【0056】
犠牲腐食材層23がAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金からなる場合において、犠牲腐食材層23の犠牲腐食作用を確実に発揮させるためには、複合材25のアルミニウムマトリックス25aとして、高純度アルミニウム(例:純度3N以上)、純アルミニウム系合金(例:A1100、A1050、A1N30)又はAl-Mn系合金(例:A3003、A3203)を用いることが特に望ましい。
【0057】
鍛造加工素材21の製造方法について以下に説明する。
【0058】
図3に示すように、鍛造加工素材21の心材部22は、板状の焼結素材30を焼結することにより形成されたものである。
【0059】
鍛造加工素材21の犠牲腐食材層23は、1枚又は互いに積層状に配置される複数の犠牲腐食材層形成用板材(箔材も含む)31で形成されたものであり、本第1実施形態では板材31の数は1枚である。
【0060】
焼結素材30は、アルミニウム箔33上に多数の炭素粒子25bが付着してなるプリフォーム箔34が複数積層されて形成された板状の積層体35からなる。炭素粒子25bはアルミニウム箔33上に例えば樹脂バインダー(図示せず)で付着している。
【0061】
プリフォーム箔34のアルミニウム箔33のアルミニウム材料は、複合材25のアルミニウムマトリックス25aを形成するものである。
【0062】
プリフォーム箔34の積層枚数は、心材部22の厚さに対応して設定されるものであり限定されるものではなく、例えば3~500000枚である。なお同図では、焼結素材30及び心材部22の構成を理解し易くするため及び図面の大きさの制約のため、プリフォーム箔34の積層枚数を4枚にしている。
【0063】
鍛造加工素材21を製造する場合、犠牲腐食材層23は、焼結素材30の所定面に面接触するように焼結素材30に対して積層配置される。本第1実施形態では、焼結素材30の所定面は、焼結素材30における放熱フィン2が形成される側の面である。
【0064】
そして、犠牲腐食材層23が上述したように焼結素材30に対して積層配置された状態で所定の焼結方法により焼結素材30と犠牲腐食材層23とが密着する方向に両者30、23を加圧しながら焼結素材30を加熱焼結する。これにより、鍛造加工素材21の心材部22を形成すると同時に心材部22の所定面にその全体に亘って犠牲腐食材層23を焼結接合する。その結果、
図2に示した上述の鍛造加工素材21が得られる。
【0065】
焼結素材30の焼結方法は限定されるものではなく、特に真空ホットプレス焼結法又は放電プラズマ焼結法であることが望ましい。この場合、焼結素材30を確実に焼結することができるし、心材部22に犠牲腐食材層23を確実に焼結接合することができる。
【0066】
焼結方法が真空ホットプレス焼結法である場合における好ましい焼結条件は次のとおりである。
【0067】
焼結温度は450~640℃、焼結時間(即ち焼結温度の保持時間)は10~300min、焼結素材30への最終加圧力は1~40MPaである。
【0068】
図2に示すように、鍛造加工素材21の心材部22において、複合材25は、アルミニウムマトリックス25aからなるアルミニウム層27とアルミニウムマトリックス25a中に炭素粒子25bが心材部22の平面方向に分散した炭素粒子分散層28とが交互に複数積層された状態に接合一体化(詳述すると焼結一体化)されたものである。
【0069】
なお、心材部22及び鍛造加工素材21の平面方向とは、心材部22及び鍛造加工素材21の厚さ方向に垂直な面方向である。
【0070】
複合材25の各アルミニウム層27は、プリフォーム箔34のアルミニウム箔33で主に形成されたものである。
【0071】
複合材25の各炭素粒子分散層28は、アルミニウム箔33上に付着した多数の炭素粒子25b間にアルミニウム箔33のアルミニウム材料が浸透することにより形成されたものである。
【0072】
本第1実施形態では、上述のように焼結素材30を焼結する際に同時に心材部22に犠牲腐食材層23を接合することから、焼結素材30を焼結して心材部22を形成する工程とその後で心材部22に犠牲腐食材層23を接合する工程とを行うことで鍛造加工素材21を得る場合よりも、鍛造加工素材21の製造工程数を削減することができる。
【0073】
なお本発明では、心材部22への犠牲腐食材層23の接合方法は、上述の方法に限定されるものではなく、例えば、熱間又は冷間圧延クラッド法であっても良いし、その他の接合方法であっても良い。
【0074】
さらに本発明では、鍛造加工素材21(塑性加工素材20)の心材部22の製造方法は、上述の方法であることに限定されるものではなく、例えば、図示していないが、アルミニウム粉末と炭素粒子としての炭素粉末との混合物を加熱焼結することによりアルミニウム-炭素粒子複合材からなる心材部を製造する方法(これを説明の便宜上「粉末焼結法」という)であっても良いし、その他の方法であっても良い。
【0075】
鍛造加工素材21を用いて放熱器1を製造する方法について以下に説明する。
【0076】
図4及び5に示すように、放熱器1は、鍛造加工素材21を鍛造加工装置40により鍛造加工することにより形成される。
【0077】
鍛造加工素材21への鍛造加工は、例えば冷間又は熱間鍛造加工であり、特に熱間鍛造加工であることが望ましい。この場合、鍛造加工時の成型圧力を低減できるし複雑な形状の放熱器を確実に形成できる。本第1実施形態では、鍛造加工は熱間鍛造加工である。
【0078】
図4に示すように、鍛造加工装置40は詳述すると型鍛造加工装置であり、成型凹部41aを有する雌型41と、雌型41に対応する雄型としての押圧パンチ42とを具備している。
【0079】
雌型41の成型凹部41aの底面41bは平坦状に形成されている。押圧パンチ42の少なくとも先端部は成型凹部41a内に略適合して嵌合可能なものである。押圧パンチ42の先端面からなる押圧面42aには複数の放熱フィン形成孔43が鍛造加工装置40の押圧軸方向に延びて設けられている。
【0080】
鍛造加工装置40により鍛造加工素材21を鍛造する場合、
図4に示すように雌型41の成型凹部41a内に鍛造加工素材21をその犠牲腐食材層23を放熱フィン形成孔43側に向けて配置する。
【0081】
そして、鍛造加工素材21を加熱した状態で鍛造加工素材21を犠牲腐食材層23側から押圧パンチ42で鍛造加工素材21の厚さ方向に押圧する。これにより、
図5に示すように、鍛造加工素材21の心材部22側の材料が放熱器1のベースプレート3の形状になるように且つ鍛造加工素材21の犠牲腐食材層23側の材料が各放熱フィン形成孔43内へ塑性変形(塑性流動)して各放熱フィン形成孔43の箇所で局部的に突出するように鍛造加工素材21を鍛造加工する。
【0082】
このように鍛造加工素材21を鍛造加工することにより、ベースプレート3を形成すると同時にベースプレート3に複数の放熱フィン2をベースプレート3に対して突出状に一体に形成する。その結果、上述の放熱器1が得られる。
【0083】
なお、
図5中の矢印Pは、押圧パンチ42による鍛造加工素材21への押圧方向を示している。この押圧方向Pは鍛造加工装置40の押圧軸方向と一致している。
【0084】
こうして得られた放熱器1において、ベースプレート3は、鍛造加工素材21のアルミニウム-炭素粒子複合材25からなる板状の心材部22と、鍛造加工素材21の犠牲腐食材層23とを有している。犠牲腐食材層23は、心材部22の所定面に焼結接合されている。心材部22の所定面は、心材部22における放熱フィン2が形成される側の面である。
【0085】
放熱フィン2は、鍛造加工素材21への鍛造加工時に鍛造加工素材21の犠牲腐食材層23側の材料が放熱フィン形成孔43内へ塑性変形(塑性流動)することにより鍛造加工素材21の心材部22がベースプレート3に対して局部的に突出して形成された心材突出部22aを有するとともに、心材突出部22aの外周全体とその先端とを覆うように犠牲腐食材層23が心材突出部22aに設けられている。
【0086】
放熱フィン2において、犠牲腐食材層23の厚さは限定されるものではなく、特に10~500μmであることが望ましい。厚さが10μm以上であることにより、犠牲腐食材層23の犠牲腐食作用を確実に発揮できる。厚さが500μm以下であることにより、犠牲腐食材層23の形成に係る費用や時間を確実に抑制することができる。更に望ましい厚さの下限は15μmであり、更に望ましい厚さの上限は300μmである。
【0087】
放熱器1では、放熱フィン2はアルミニウム-炭素粒子複合材25からなる心材突出部22aを放熱フィン2の材料として有しているので、高い放熱性を有している。さらに、ベースプレート3及び放熱フィン2は犠牲腐食材層23をベースプレート3及び放熱フィン2の材料として有しているので、冷却流体に対して高い耐食性を有している。そのため、放熱器1は高い放熱性と高い耐食性を有している。
【0088】
したがって、
図1に示すように、放熱器1を備えた冷却装置10及び当該冷却装置10を具備するモジュール基板50は、発熱性素子55を効果的に冷却することができるし長い耐用寿命を有している。
【0089】
図6及び7は、本発明の第2実施形態に係る冷却装置の放熱器を鍛造加工により形成するための鍛造加工素材を説明する図である。これらの図において、上記第1実施形態の鍛造加工素材21の要素と同じ作用を奏する要素には鍛造加工素材21の要素に付された符号に100を加算した符号が付されている。本第2実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に以下に説明をする。
【0090】
図6に示すように、鍛造加工素材121の心材部122は、上記第1実施形態の心材部22と同じく、アルミニウム-炭素粒子複合材125(これを「第1アルミニウム-炭素粒子複合材125」という)からなる。
【0091】
鍛造加工素材121の犠牲腐食材層123は、心材部122(詳述すると、心材部122の第1複合材125のアルミニウムマトリックス125a)に対して電位的に卑な、アルミニウム-炭素粒子複合材126(これを「第2アルミニウム-炭素粒子複合材126」という)からなる。
【0092】
第2複合材126は、アルミニウムマトリックス126aと、多数の炭素粒子126bとを含むものである。本第2実施形態では、炭素粒子126bはアルミニウムマトリックス126a中に分散している。
【0093】
炭素粒子126bの種類は限定されるものではなく、炭素粒子126bとして、例えば、第1複合材125の炭素粒子125bと同種又は異種のものが用いられる。アルミニウムマトリックス126aとして、心材部122(詳述すると、心材部122の第1複合材125のアルミニウムマトリックス125a)に対して電位的に卑なアルミニウム材料が用いられている。当該アルミニウム材料として、特にAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金を用いることが望ましい。この場合、犠牲腐食材層23の犠牲腐食作用を確実に発揮できる。
【0094】
心材部122の第1複合材125のアルミニウムマトリックス125aとしては、犠牲腐食材層123(詳述すると、犠牲腐食材層123の犠牲腐食材である第2複合材126のアルミニウムマトリックス126a)に対して電位的に貴なアルミニウム材料が用いられる。
【0095】
犠牲腐食材層123の第2複合材126のアルミニウムマトリックス126aとしてAl-Zn系合金、Al-In系合金又はAl-Sn系合金が用いられている場合において、犠牲腐食材層123の犠牲腐食作用を確実に発揮させるためには、第1複合材125のアルミニウムマトリックス125aとして、高純度アルミニウム(例:純度3N以上)、純アルミニウム系合金(例:A1100、A1050、A1N30)又はAl-Mn系合金(例:A3003、A3203)を用いることが特に望ましい。
【0096】
鍛造加工素材121の製造方法について以下に説明する。
【0097】
図7に示すように、心材部122は、板状の第1焼結素材130を焼結することにより形成されたものである。
【0098】
犠牲腐食材層123は、板状の第2焼結素材136を焼結することにより形成されたものである。
【0099】
第1焼結素材130は、第1アルミニウム箔133上に多数の炭素粒子125bが付着してなる第1プリフォーム箔134を複数積層するとともに炭素粒子が付着していない第1アルミニウム箔133を更に積層して形成された板状の第1積層体135からなる。
【0100】
第1アルミニウム箔133のアルミニウム材料は、第1複合材125のアルミニウムマトリックス125aを形成するものである。これらの第1アルミニウム箔133のうち炭素粒子が付着していない第1アルミニウム箔133のアルミニウム材料は、心材部122中の炭素粒子125bが心材部122の表面から脱落しないように心材部122の表面側を保護する保護層を主に形成するものである。
【0101】
第2焼結素材136は、第2アルミニウム箔137上に多数の炭素粒子126bが付着してなる第2プリフォーム箔138を複数積層することにより形成された板状の第2積層体139からなる。
【0102】
第2アルミニウム箔137のアルミニウム材料は、第2複合材126のアルミニウムマトリックス126aを形成するものである。したがって、第2アルミニウム箔137は第1アルミニウム箔133に対して電位的に卑なアルミニウム材料からなる。
【0103】
鍛造加工素材121を製造する場合、第2焼結素材136は、第1焼結素材130の所定面に面接触するように第1焼結素材130に対して積層配置される。本第2実施形態では、第1焼結素材130の所定面は、第1焼結素材130における放熱フィン2(
図1参照)が形成される側の面である。
【0104】
そして、第2焼結素材136が上述したように第1焼結素材130に対して積層配置された状態で所定の焼結方法により第1焼結素材130と第2焼結素材136とが密着する方向に両者130、136を加圧しながら両者130、136を一緒に加熱焼結する。これにより、第1焼結素材130から心材部122と第2焼結素材136から犠牲腐食材層123とを形成すると同時に心材部122の所定面にその全体に亘って犠牲腐食材層123を焼結接合する。その結果、
図6に示した上述の鍛造加工素材121が得られる。
【0105】
第1焼結素材130及び第2焼結素材136の焼結方法は限定されるものではなく、特に真空ホットプレス焼結法又は放電プラズマ焼結法であることが望ましい。
【0106】
こうして得られた鍛造加工素材121は、上記第1実施形態の鍛造加工素材21と同じように鍛造加工される。これにより、本第2実施形態の放熱器(図示せず)が形成される。
【0107】
放熱器において、犠牲腐食材層123が心材部122(詳述すると、心材部122の第1複合材125のアルミニウムマトリックス125a)に対して電位的に卑な第2アルミニウム-炭素粒子複合材126からなるので、放熱フィンの放熱性及び耐食性を更に高めることができる。
【0108】
さらに、第1焼結素材130と第2焼結素材136を一緒に焼結する際に同時に心材部122に犠牲腐食材層123を接合するため、鍛造加工素材121の製造工程数を削減することができる。
【0109】
なお本発明では、心材部122への犠牲腐食材層123の接合方法は、上述の方法に限定されるものではなく、例えば、熱間又は冷間圧延クラッド法であっても良いし、その他の接合方法であっても良い。
【0110】
さらに本発明では、鍛造加工素材121(塑性加工素材120)の心材部122の製造方法及び犠牲腐食材層123の製造方法は、それぞれ、上述の方法であることに限定されるものではなく、例えば、上述した粉末焼結法であっても良いし、その他の方法であっても良い。
【0111】
図8及び9は、本発明の第3実施形態に係る冷却装置の放熱器を説明する図である。これらの図において、上記第1実施形態の放熱器1の要素と同じ作用を奏する要素には放熱器1の要素に付された符号に200を加算した符号が付されている。本第3実施形態について上記第1実施形態との相異点を中心に以下に説明をする。
【0112】
図8に示すように、本第3実施形態の放熱器201は、板状(詳述すると平板状)の複数の放熱フィン202と、棒状の連結部材205とを備えている。放熱フィン202はプレート型フィンと呼ばれているものである。連結部材205は例えば金属製である。
【0113】
各放熱フィン202の外周縁部の一部(同図では各放熱フィン202の上縁部の端部)には切欠き206が形成されている。これらの放熱フィン202は相互間に隙間を開けて並列状に配置されており、この状態でこれらの放熱フィン202の切欠き206に連結部材205がかしめ固定されている。これにより、これらの放熱フィン202が連結部材205を介して連結一体化されている。
【0114】
放熱器201において、放熱フィン202間には冷却流体(図示せず)が流通される。冷却流体としては、冷却液(例:冷却水)、冷却ガス(例:冷却空気)などが用いられる。
【0115】
図9に示すように、放熱フィン202は、アルミニウム-炭素粒子複合材225からなる板状(詳述すると平板状)の心材部222と、心材部222に接合された皮材層としての犠牲腐食材層223とを放熱フィン202の材料として有している。
【0116】
複合材225は、アルミニウムマトリックス225aと、多数の炭素粒子225bとを含むものである。本第3実施形態では、炭素粒子225bは、アルミニウムマトリックス225a中に分散しており、詳述すると、放熱フィン202の表面方向に配向した状態にアルミニウムマトリックス225a中に分散している。そのため、放熱フィン202の表面方向の熱伝導率は放熱フィン202の厚さ方向の熱伝導率よりも高くなっている。これにより、放熱フィン202(及び放熱器201)の放熱性が高められている。
【0117】
犠牲腐食材層223は、心材部222(詳述すると、心材部222のアルミニウム-炭素粒子複合材225のアルミニウムマトリックス225a)に対して電位的に卑な金属材料又はアルミニウム-炭素粒子複合材からなるものである。さらに、犠牲腐食材層223は、心材部222の所定面にその全体に亘って所定の接合方法により接合されている。心材部222の所定面は心材部222の厚さ方向の両面である。
【0118】
心材部222への犠牲腐食材層223の接合方法は限定されるものではなく、熱間又は冷間圧延クラッド法であっても良いし、上記第1実施形態に示したように真空ホットプレス焼結法、放電プラズマ焼結法等であっても良いし、その他の接合方法であっても良い。
【0119】
なお、本第3実施形態では、放熱フィン202は平板状のものであるが、本発明では、その他に例えば波板状のもの(例:波プレート型フィン)であっても良い。
【0120】
以上で本発明の好ましい幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記第1~第3実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0121】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、放熱器1は、ベースプレート3とベースプレート3の厚さ方向の両面のうちの一方の片面にベースプレート3に対して突出状に一体に設けられた複数の放熱フィン2とを備えたものであるが、本発明に係る放熱器は、その他に例えば、ベースプレートとベースプレートの厚さ方向の両面にそれぞれベースプレートに対して突出状に一体に設けられた複数の放熱フィンとを備えたものであっても良い。
【0122】
また、上記第1及び第2実施形態では、放熱フィン2はピン状のものであるが、本発明では、放熱フィンはピン状のものであることに限定されるものではなく、その他に例えば板状のものであっても良い。
【0123】
さらに本発明では、鍛造加工素材を鍛造加工する鍛造加工装置は、上記第1実施形態(
図4及び5参照)に示した構成のものであることに限定されるものではなく、その他に例えば、複数の放熱フィン形成孔が鍛造加工装置の押圧パンチの押圧面ではなく雌型の成型凹部の底面に設けられたものであっても良い。
【0124】
さらに本発明では、ベースプレートとベースプレートの厚さ方向の両面にそれぞれベースプレートに対して突出状に一体に形成された複数の放熱フィンとを備えた放熱器を鍛造加工装置により形成する場合などには、鍛造加工素材を鍛造加工する鍛造加工装置は、複数の放熱フィンが鍛造加工装置の雌型の成型凹部の底面と押圧パンチの押圧面とにそれぞれ設けられたものであっても良い。
【0125】
また、上記第1及び第2実施形態では、塑性加工素材20(120)への塑性加工は鍛造加工であるが、本発明では、塑性加工は鍛造加工であることに限定されるものではなく、その他に例えば、曲げ加工(フィン加工)、絞り加工及びカップ加工であっても良い。
【実施例】
【0126】
本発明の具体的な実施例及び比較例について以下に説明する。
【0127】
<実施例>
図1に示したモジュール基板50の冷却装置10を上記第1実施形態に示した製造方法により製造した。
【0128】
冷却装置10において、放熱器1の心材部22(心材突出部22aを含む)はアルミニウム-炭素粒子複合材25からなるものであった。当該複合材25のアルミニウムマトリックス25aはA1100であった。当該複合材25の炭素粒子25bはピッチ系炭素繊維であり、その最長軸方向の平均長さは300μmであった。
【0129】
犠牲腐食材層23はAl-Zn系合金の一つであるA7072からなるものであった。当該合金のZn含有量は1質量%であった。放熱器1の放熱フィン2において犠牲腐食材層23の厚さは50μmであった。
【0130】
<比較例>
放熱器が犠牲腐食材層を有していない点を除いて実施例の冷却装置10と同様の冷却装置を製造した。
【0131】
実施例の冷却装置10と比較例の冷却装置についてそれぞれ冷却流体としての冷却流水に対する耐食試験を行った。その結果、実施例の冷却装置10の耐食性は比較例のそれよりも高かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、電子部品(例:半導体素子)等の発熱体の熱を放散する放熱フィン、放熱器及び冷却装置、並びに、放熱器の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1:放熱器
2:放熱フィン
3:ベースプレート
10:冷却装置
11:ケーシング
12:冷却流体流路
20:塑性加工素材
21:鍛造加工素材
22:心材部
22a:心材突出部
23:犠牲腐食材層
25:アルミニウム-炭素粒子複合材
30:焼結素材
130:第1焼結素材
136:第2焼結素材
205:連結部材