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特許7007984位置検出システム、位置検出方法及び位置検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】位置検出システム、位置検出方法及び位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220118BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20220118BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G06F3/041 510
G06F3/041 520
G06F3/045 E
G06F3/041 400
G06F1/16 312E
G06F1/16 313Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018077554
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2018198051
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2017101742
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】西尾 佳高
(72)【発明者】
【氏名】旭 洋
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/153609(WO,A1)
【文献】特開2001-343908(JP,A)
【文献】実開平4-101139(JP,U)
【文献】特開平4-123221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面が設けられた画像表示装置と、
前記画像表示装置の裏面に着脱自在に取付け固定され、前記表示画面にタッチした指示体の位置を検出する位置検出装置とを備え、
前記画像表示装置は、
前記位置検出装置との通信が可能に構成された表示側通信部を有し、
前記位置検出装置は、
前記表示画面と対向して配置され、かつ当該表示画面にタッチした指示体の位置を検出するための導電層と、
互いに離間して配置され、各々が前記導電層に接続された複数の電極と、
前記導電層に計測信号を与える信号源と、
前記複数の電極の中から選択された対をなすペア電極から出力された出力信号の差分情報に基づいて、前記表示画面にタッチした指示体の位置を演算する検出側演算部と、
前記検出側演算部で演算された前記指示体の位置情報を前記画像表示装置の表示側通信部に送信する検出側通信部とを備えている
ことを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記信号源は、前記複数の電極の中から選択された電極を介して前記導電層に計測信号を与える
ことを特徴する請求項1記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記計測信号が与えられる電極は、2つまたは4つであり、
前記検出側演算部は、前記計測信号が与えられた電極の中から前記ペア電極を選択することを特徴する請求項2記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出装置は、前記複数の電極の中で対をなす電極の各組み合わせについて前記指示体の位置に応じた標準差分情報が登録されたテーブルを有し、
前記検出側演算部は、前記出力信号の差分情報と、前記テーブルの標準差分情報とを比較した結果に基づいて、前記表示画面にタッチした指示体の位置を演算する
ことを特徴する請求項1または2に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記画像表示装置は、前記表示画面に識別子を表示させるとともに、前記表示側通信部を介して当該識別子の位置情報を前記位置検出装置に送信する表示側演算部を有し、
前記検出側演算部は、前記表示画面の識別子の位置へタッチされたときの第1タッチを検出したとき、前記第1タッチに係る出力信号の差分情報に基づいて前記テーブルの標準差分情報の補正を行い、かつ、前記第1タッチの位置と前記識別子の位置情報とに基づいて位置検出座標を設定し、
前記検出側通信部は、前記位置検出座標上における前記指示体の位置情報を前記表示側通信部に送信する
ことを特徴する請求項4記載の位置検出システム。
【請求項6】
表示画面が設けられた画像表示装置と、前記画像表示装置の裏側に着脱自在に取付け固定され、前記表示画面の裏面と対向して配置されて、該表示画面にタッチした指示体の位置を検出するための導電層からなる検出領域を有する位置検出装置とを備えた位置検出システムの位置検出方法であって、
前記画像表示装置により、前記表示画面に識別子を表示するとともに、当該識別子の位置情報を前記位置検出装置に送信する基準送信ステップと、
前記表示画面の識別子の位置へタッチされたときの第1タッチを前記位置検出装置により検出して、当該第1タッチに係る第1タッチ位置と前記識別子の位置情報とに基づいて位置検出座標を設定する座標設定ステップと、
座標設定後に、前記表示画面へタッチされたときの第2タッチを前記位置検出装置により検出して、前記座標設定ステップで設定された位置検出座標上における当該第2タッチに係る第2タッチ位置を前記画像表示装置に出力するタッチ位置検出ステップとを備えている
ことを特徴とする位置検出方法。
【請求項7】
前記表示画面は矩形状であり、
前記基準送信ステップにおいて、前記画像表示装置により、前記表示画面の4つの隅角部のうちの少なくとも対角線方向に対向する2つの隅角部に前記識別子を表示する
ことを特徴とする、請求項6記載の位置検出方法。
【請求項8】
前記基準送信ステップにおいて、前記画像表示装置により、前記表示画面のサイズ情報を前記位置検出装置に送信する
ことを特徴とする、請求項6または7に記載の位置検出方法。
【請求項9】
前記座標設定ステップにおいて、前記位置検出装置により、前記表示画面のサイズ情報と前記識別子の位置情報とに基づいて、前記検出領域内に所定の広さを有するタッチ予測領域を設定し、前記第1タッチが前記タッチ予測領域の内側においてされたことを検出した場合、前記位置検出座標を設定する一方、前記第1タッチが前記タッチ予測領域の外側においてされたことを検出した場合、前記位置検出座標を設定せずに、前記画像表示装置にその旨の通知を行う
ことを特徴とする、請求項8に記載の位置検出方法。
【請求項10】
前記座標設定ステップにおいて、前記位置検出装置により、前記画像表示装置から前記識別子の位置情報を受けた後に所定時間が経過しても前記第1タッチが検出されない場合に、前記画像表示装置によりその旨の通知を行う
ことを特徴とする、請求項6から9のうちのいずれか1項に記載の位置検出方法。
【請求項11】
表面に表示画面が設けられた画像表示装置の裏面に着脱自在に取付け固定され、表示画面にタッチした指示体の位置を検出するための位置検出装置であって、
前記表示画面にタッチした指示体の位置を検出するための導電層と、
互いに離間して配置され、各々が前記導電層に接続された複数の電極と、
前記導電層に計測信号を与える信号源と、
前記前記複数の電極の中から選択された対をなすペア電極から出力された出力信号の差分情報に基づいて、前記表示画面にタッチした指示体の位置を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記指示体の位置情報を出力する通信部と、を含む位置検出部と、
前記位置検出部と一体的に設けられ、当該位置検出部を前記画像表示装置に前記導電層が前記表示画面の裏面に沿って配置されるように着脱自在に取付ける取付機構とを備えている
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項12】
前記信号源は、前記複数の電極の中から選択された電極を介して前記導電層に計測信号を与える
ことを特徴する請求項11記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置及びこの位置検出装置と画像表示装置とを備えた位置検出システム並びに位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューターやスマートフォン、タブレット等のコンピュータ機器には、表示画面の前面に静電容量方式のタッチパネルが設けられたディスプレイが採用されているものがある。こうしたディスプレイは、マウス等の操作部を操作しなくても、画像が表示されたディスプレイに指等の指示体を接触させることでコンピュータ機器の操作や文字入力等を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特許文献2には、透明導電膜の4辺に電極を設け、同相かつ同電位の位置検出用の交流電圧を供給するパターンレスのタッチパネルが開示されている。具体的には、導電膜の4隅の電極に対応して4個の波形検出回路を設け、その検出回路の出力電圧に基づいて座標位置を演算している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-138067号公報
【文献】国際公開WO2013/153609号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のコンピュータ機器では、オペレーティングシステムや各種ソフトウェアがタッチ操作に適合するように設計されている。
【0006】
しかしながら、デスクトップパソコンと呼ばれる据え置き型のコンピュータ機器や、ノートパソコンと呼ばれるラップトップ型のコンピュータ機器の中には、ディスプレイにタッチパネル機能を有さないものが多く存在する。例えば古いノートパソコンには、まだ十分に使用できるにもかかわらず、タッチパネルを備えていないために、ソフトウェアの一部の機能が使えないという問題がある。一般的には、ノートパソコンのディスプレイ部分を交換してタッチパネル化することは設計上困難であるために、タッチパネル操作を行うためには、わざわざノートパソコンを一式買い替えしなければならない問題があった。また、タッチパネル機能を有していても、タッチパネルが故障した場合、例えディスプレイの画像表示には問題がなくても、タッチによる操作ができないことがあった。
【0007】
そこで本発明は、タッチパネル機能を有しない、または正常に機能しないタッチパネルを有する画像表示装置であっても、当該画像表示装置に事後的にタッチパネル機能を追加することができる位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る位置検出システムでは、画像表示装置の裏側に着脱自在に取付け固定された位置検出装置を設け、当該位置検出装置で検出された位置情報を画像表示装置に送信するようにした。
【0009】
すなわち、本発明の一態様に係る位置検出システムは、表示画面が設けられた画像表示装置と、前記画像表示装置の裏面に着脱自在に取付け固定され、前記表示画面にタッチした指示体の位置を検出する位置検出装置とを備えている。そして、前記画像表示装置は、前記位置検出装置との通信が可能に構成された表示側通信部を有している。また、前記位置検出装置は、前記表示画面と対向して配置され、かつ当該表示画面にタッチした指示体の位置を検出するための導電層と、互いに離間して配置され、各々が前記導電層に接続された複数の電極と、前記複数の電極のうちから選択された一対の電極に計測信号を与える信号源と、前記計測信号が与えられた一対の電極から出力された出力信号の差分情報に基づいて、前記導電層に接近した指示体の位置を演算する検出側演算部と、前記検出側演算部で演算された前記指示体の位置情報を前記画像表示装置の表示側通信部に送信する検出側通信部とを備えている、ことを特徴とする。
【0010】
ここで、「画像」は、静止画像及び動画像を含む概念である。
【0011】
また、「タッチする」とは、表示画面への直接的なタッチ(表示画面への接触)と、表示画面への間接的なタッチ(いわゆるホバリング)との両方を含む概念である。
【0012】
上記態様に係る位置検出システムでは、画像表示装置の裏面に取付け固定された位置検出装置により、画像表示装置の表示画面にタッチした指示体の位置を検出するように構成されている。さらに、位置検出装置により検出された表示画面への指示体のタッチ位置は、検出側通信部から表示側通信部に送信される。これにより、画像表示装置は、位置検出装置から受信したタッチ位置と、表示画面に表示させた画像とを比較することにより、ユーザー(指示体)のタッチ操作に係る処理を実行することができる。すなわち、タッチパネル機能を有しない画像表示装置、または正常に機能しないタッチパネル(画像表示装置)であっても、当該画像表示装置に事後的にタッチパネル機能を追加することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によると、画像表示装置の裏面に取付け固定した位置検出装置によって指示体のタッチ位置を検出することができるので、画像表示装置に事後的にタッチパネル機能を追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】位置検出システムの概略構成図である。
図2】位置検出装置の概略構成を示す正面図である。
図3図2のIII-III線における概略断面図である。
図4図2のIV-IV線における概略断面図である。
図5】ディスプレイの表示画面と位置検出部の検知領域との位置及び大きさの関係の一例を示す模式図である。
図6】ディスプレイの表示画面と位置検出部の検知領域との位置及び大きさの関係の他の例を示す模式図である。
図7】位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。
図8】位置検出システムのタッチ位置の検出動作の一例を示すフロー図である。
図9】位置検出装置のタッチ位置の検出動作を示すフロー図である。
図10図2の点TPがタッチされた場合における信号波形の一例を示した図である。
図11】位置検出システムのタッチ位置の検出動作の他の例を示すフロー図である。
図12】基準座標の設定動作を示すフロー図である。
図13】タッチ位置の検出動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る位置検出システム1は、ディスプレイ21を備えたコンピュータ機器2と、ディスプレイ21の裏面に取り付け/取り外しができるように構成されている位置検出装置3とを備えている。なお、ディスプレイ21において、表示画面21aが表示される面を表面とし、表面と対向する面を裏面とする。また、表面側を表側、裏面側を裏側といい、裏側から表側に向かう方向を前、表側から裏側に向かう方向を後という場合がある。
【0017】
この位置検出システム1では、ディスプレイ21の表示画面21aに対して、指示体(例えば、操作者の指等)が接近または接触した場合に、そのタッチ位置TPを検出できるように構成されている。なお、本実施形態において、タッチとは、指示体がディスプレイ21に直接タッチする操作状態と、ディスプレイ21に接近した指示体が非接触状態で移動する操作状態(いわゆる、ホバリング操作状態)との両方を含む概念である。また、ディスプレイ21に対して指示体がタッチすることを、単に「タッチする」というものとする。また、指示体がディスプレイ21にタッチした場合におけるタッチされた位置及び指示体の位置と対応する導電層41上の位置を「タッチ位置TP」というものとする。
【0018】
以下、位置検出システムの各構成要素について、詳細に説明する。
【0019】
≪コンピュータ機器(電子機器)≫
図1(a)には電子機器として、タッチパネル機能を有していない横長のディスプレイ21を備えた汎用のラップトップ型のコンピュータ機器2を例示している。コンピュータ機器2は、コンピュータ本体20と、ディスプレイ21とを備えている。
【0020】
コンピュータ本体20は、キーボードやマウス等の入力操作部22と、USB通信等の通信が可能に構成された通信部23(図7参照)と、CPU24(図7参照)と、ハードディスクドライブ等の記憶部25(図7参照)とを備えている。
【0021】
通信部23は、後述する位置検出装置3の通信部32(図7参照)との間で双方向通信ができるように構成されている。双方向通信に係る通信方式は特に限定されず、無線通信であってもよく、有線通信であってもよく、両方に対応していてもよい。図1では、コンピュータ機器2と位置検出装置3とが有線接続される例を示しており、コンピュータ機器2には、インターフェースポート23aが設けられている。
【0022】
なお、本実施形態では、電子機器としてコンピュータ機器2を例に挙げて説明するが、少なくとも表示画面に画像を表示する画像表示装置が含まれていれば本開示に係る技術の適用が可能である。例えば、画像表示装置を含む電子機器には、テレビ、スマートフォン、タブレット、電子書籍リーダー、電子音楽プレーヤー及び携帯電話等が広く含まれる。また、図1(a)の例では、コンピュータ本体20とディスプレイ21とが一体となっている一体型のコンピュータ機器を示しているが、コンピュータ本体20とディスプレイ21とが物理的に分離されていてもよい。
【0023】
<ディスプレイ(画像表示装置)>
画像表示装置としてのディスプレイ21は、表面に形成された表示画面21aに画像が表示可能であり、具体的には、コンピュータ機器が実行しているソフトウェア等の画像情報が表示される。画像には、静止画像と動画像とが含まれる。なお、ディスプレイ21の表示形態、表示原理、表示方法等は、特に限定されない。ディスプレイ21の一例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ、粒子移動型電子ペーパー等が挙げられる。また、ディスプレイ21が、バックライト、光反射板、光反射シート等を備えていてもよい。
【0024】
なお、ディスプレイ21の厚さ(表裏方向)は、特に限定されないが、タッチ位置TPの安定した検出精度を確保する観点から、5cm以下であるのが好ましい。また、ディスプレイ21の裏面は平坦になっていることが好ましく、平坦であれば位置検出装置3の取付けが容易となり、取付け後の位置安定性も高い。
【0025】
≪位置検出装置≫
位置検出装置3は、パターンレス型の検出装置(以下、パターンレス型検出装置という)であり、タッチパネルとして機能させる表示画面を表示させる画像表示装置の裏側に配置される。図1(c)には、位置検出装置3がラップトップ型のコンピュータ機器2のディスプレイ21の裏側に取付け固定されている例を示しており、ディスプレイ21へのタッチの有無及びタッチ位置TPが検出できるように構成されている。具体的には、位置検出装置3は、ディスプレイ21の表示画面21aにタッチした指示体の位置を検出するための検知領域Rdが設けられた位置検出部4(図2参照)と、位置検出部4をディスプレイ21の裏側に取付け固定するための取付機構31と、コンピュータ機器と双方向通信を行うための通信部32とを備えている。
【0026】
以下において、位置検出装置の各構成について詳述する。
【0027】
<取付機構>
取付機構31は、位置検出装置3をディスプレイ21の裏面に着脱自在に取付け固定可能に構成されていればよく、その具体的な取付構造や取付方法は特に限定されない。例えば、取付機構31が、図1(b)に示すようなディスプレイ21の周端(図1(b)では上端の横方向両側)に掛止可能な鉤部で実現されていてもよい。また、取付機構31は、ネジ止め機構を有していてもよく、両面テープ、粘着シートまたは吸盤による貼り付けができるように構成されていてもよい。さらに、取付機構31は、ディスプレイ21の外周に掛け回して使用するゴムバンドであってもよく、ディスプレイ21の裏面が磁性材料で構成されている場合にその裏面に接着させるマグネット等であってもよい。なお、取付け固定においては、着脱容易性が高く、取付け固定時の固定強度、位置安定性及び密着安定性が高いものがより好ましく、それらの実現のために、上記の要素を組み合わせてもよい。例えば、鉤部と吸盤や粘着シート等とを組み合わせることで、取付け固定時の固定強度、位置安定性及び密着安定性を高めることができる。
【0028】
<通信部(検出側通信部)>
通信部32は、コンピュータ機器2の通信部23との間で双方向通信ができるように構成されている。双方向通信に係る通信方式は特に限定されず、無線通信であってもよく、有線通信であってもよく、両方に対応していてもよい。本実施形態では、通信部32が、後述する位置検出回路5(図7参照)に設けられたインターフェース回路(図示省略)と、通信ケーブル32aとを含んでいる例を示している。通信ケーブル32aは、一端が位置検出回路5の端子に接続され、他端には、コンピュータ機器2のインターフェースポート23aに接続するためのコネクタ32bが設けられている。なお、図示しないが、位置検出装置3側にもインターフェースポートを設け、通信ケーブル32aの一端をそのインターフェースポートに接続するようにしてもよい。また、位置検出装置3とコンピュータ機器2との間が無線通信によって接続される場合、通信部32は、位置検出回路5と一体にまたは別体に設けられたアンテナ(図示省略)を含む。
【0029】
<位置検出部>
図2図4に示すように、位置検出部4は、表面に導電層41及び配線42が形成された基体40と、基体40上に実装された位置検出回路5とを備えている。位置検出部4(基体40)の外形形状やその大きさは、特に限定されないが、例えば、位置検出部4は、外形寸法がディスプレイ21と略同じになるように構成されている。これにより、位置検出部4をディスプレイ21に取付け固定する際の位置合わせが容易になる。
【0030】
なお、位置検出部4は、外表面の全部または一部が保護部材(図示省略)によって覆われていてもよい。例えば、樹脂等によって形成された保護部材によって位置検出部4の外表面全体を覆ってもよいし、導電層、電極、配線等の特定の部位を保護部材によって保護するようにしてもよい。すなわち、ディスプレイ21の意匠性を高めたり、耐久性、耐候性等の各種性能を高めたりするために適宜設計変更された保護部材を適用することができる。なお、位置検出装置3は、位置検出部4の全部が保護部材に覆われていても、タッチ位置を検出することができるようになっている。
【0031】
-基体-
基体40の形状は、特に限定されないが、例えば、矩形シート状(フィルム状または薄板状)や矩形平板状である。例えば、基体40がシート状であれば、ディスプレイ21の裏面に凹凸や湾曲があった場合に、その形状に沿わせて基体40を変形させた位置検出部4にすることができるというメリットがある。例えば、基体40が平板状であれば、ディスプレイ21の裏面が平らであった場合に、ディスプレイ21の裏側への取付け固定が容易であり、また取付けの安定性も高いというメリットがある。なお、基体40は、単一物で構成されている必要はない。例えば、絶縁性のシートの表面または裏面に導電層が形成された導電シートを設け、その導電シートを任意の形状(例えば、平板状)のベース部材や電子機器等の筐体に一体的に取り付けや貼り付け等して基体を構成するようにしてもよい。
【0032】
さらに、基体40の前後方向に見た(正面視)形状は、特に限定されないが、ディスプレイ21の表示画面21aの形状が矩形状のものが多いため、汎用性を高める観点から、矩形状であるのが好ましい。したがって、本開示に係る技術をディスプレイ21の形状が矩形状と異なる場合には、そのディスプレイ21の形状にあわせるのが好ましい。また、例えば、取付け容易性を高める観点から、矩形状の基体40の一部の角が丸みを帯びていたり、切り欠かれていてもよい。さらに、基体40が五角形以上の多角形状、円形状等の他の形状であってもよい。後述する導電層41の形状においても同様であり、汎用性を高める観点から、矩形状であるのが好ましく、ディスプレイ21の表示画面21aの形状にあわせるのが好ましい。
【0033】
基体40は、他部材と導電層41との接触による短絡を防ぐ観点から、絶縁性材料を用いることが好ましい。基体40の材料としては、絶縁性を有する物質であればよく、特に限定されない。
【0034】
基体40の表面には、基体40の中央部分を含む検知領域Rdと、前記検出領域Rdを包囲する配線領域Rwとを備えている。図2では、電極Eを導電層41の辺上に設けているため、導電層41の形成範囲と検知領域Rdの範囲とは実質的に同一である。ただし、電極Eを設ける位置は、導電層41の辺上でなくてもよく、電極Eが導電層41の辺から離れた内方に設けられた場合には、導電層41の形成範囲と、検知領域Rdの範囲とが異なる場合がある。
【0035】
図2では、配線領域Rwが、導電層41の周りを取り囲んでいる(包囲している)例を示しており、この配線領域Rwには導電層41が形成されていない。このように、配線領域Rwに導電層41を形成しないようにすることにより、導電層41と配線42との間に生じる寄生容量を小さくすることができ、位置検出動作におけるノイズの発生を抑えることができる。
【0036】
なお、配線領域Rwの形状は図2の態様に限定されず、配線領域Rwが検知領域Rdの周りに設けられていればよい。具体的には、例えば、基体40が矩形状で、かつ、検知領域Rdも矩形状である場合において、配線領域Rwが、(1)コの字状(検知領域Rdの3辺の周りに設けられるもの)、(2)ニの字状(検知領域Rdの対向する2辺の周りに設けられるもの)及び(3)L字状(検知領域Rdの直交する2辺の周りに設けられるもの)であってもよい。ただし、導電層41の周縁に、等しいピッチで導電層41と配線42とを接続する電極Eが設けられていることが、タッチ位置TPの検出精度を向上させる観点から好ましいため、配線領域Rwが検知領域Rdを包囲していることが最も好ましい。例えば、検知領域Rd(導電層41)が矩形状の場合、配線領域Rwはロ字状に形成されていることが最も好ましい。そうすることで、例えば、導電層41が矩形状の場合に、導電層41の各辺に電極Eを設けることができる。
【0037】
なお、基体40の材質は絶縁性材料に限定されず、基体40自体を後述する導電層41と同様の材料で構成し、基体40全体が導電層41としての機能を有するようにし、その表面または裏面に絶縁層(例えば、絶縁フィルムや絶縁膜)を設けるようにしてもよい。この場合、基体40の側端部または隅角部に電極Eが設けられ、リード線等の配線を用いて電極Eと位置検出回路5との間が接続される。
【0038】
-導電層-
導電層41は、基体40表面の検知領域Rdに一様に形成されている。このように、導電層41が形成された検知領域Rdは、タッチ位置を検知する領域に相当する。すなわち、タッチ位置TPの検出処理を行う位置検出回路5によって、導電層41へのタッチ操作の有無が検出できるように構成されている。
【0039】
導電層41には、カーボン、銀、銅、ITO、ATO、ポリチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン、及び水溶性スルホン化ポリアニリンからなる群から選択される1種以上の導電材料が含有されており、基体40上に積層(形成)される。カーボンは、導電性が発現すれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0040】
(導電層の面積)
検知領域Rdは、表示画面21aの全面においてタッチ操作を可能とする観点から、ディスプレイ21の表示画面21aの全面を包含していることが好ましい。検知領域Rdがディスプレイ21の表示画面21aの全面を包含するとは、(1)検知領域Rdの面積が表示画面21a以上の広さを有し、(2)図1(c)に示すように位置検出装置3がディスプレイ21の裏側に取付け固定された状態において、表示画面21aを正面から見た場合に、表示画面21aの全体が検知領域Rdの範囲内に収まることを指し、位置検出装置3がそのように構成されていることが好ましい。
【0041】
(導電層の抵抗値)
導電層41は、検出精度に優れ、かつ経時安定性に優れた特性とする観点から、抵抗値R0が1kΩ/□以上10MΩ/□以下であることが好ましい。抵抗値R0が1kΩ/□未満であると、印加電流と検知電流との差動電位が小さくなるためタッチ位置の検出においてS/N比が低下し、検出精度に影響がでる可能性がある。また、初期抵抗値R0が10MΩ/□を超えると、タッチ位置の検出において遅延が発生してしまうおそれがある。
【0042】
(導電層の抵抗値ばらつき)
導電層41の抵抗値ばらつきは、検出精度の安定性を得る観点から、20%以下であるのが好ましい。これにより、導電層41上の場所によらず安定性が高く、かつ良好な検出精度を実現することができる。
【0043】
-配線-
基体40上の配線領域Rwには、導電層41の周縁に沿って延びる4本の配線42が形成されている。配線42は、導電層41へのパルス電流の印加及び電極Eから出力された電流の取得のために用いられる。それぞれの配線42は、互いに離間して設けられた電極Eを介して導電層41に接続されている。各配線42は、導電層41の周縁に沿って引き回され、基体40上の1つの隅角部(図2では右上の隅角部)に集約され、その隅角部に実装された位置検出回路5に接続されている。
【0044】
電極Eは、導電層41の各辺の中心位置に設けられている。なお、説明の便宜上、図2において、電極Eのうち、導電層41の左端で上下方向に延びる辺に沿って設けられた電極を第1電極E1とし、第1電極E1から時計回りの順番で各辺に設けられた電極をそれぞれ第2、第3及び第4電極E2,E3,E4とする。ただし、特定の電極を指すものでない場合に、単に電極Eと記載する場合がある。
【0045】
なお、電極Eの位置及び数は、図2に示す態様に限定されない。例えば、電極Eは導電層41の四隅に形成されていてもよいし、導電層41の一辺に2以上の電極Eが形成されていてもよい。すなわち、導電層41上に合計で少なくとも2つの電極Eが形成されていればよく、その電極Eがどの辺に設けられているかについて特に限定されない。例えば、導電層41の辺のうち、電極Eが設けられていない辺があってもよい。なお、電極Eの数が変わった場合、その電極Eの数に応じて配線42の数が増減するようにすればよい。
【0046】
具体的には、電極Eの配置及び電極の数は、導電層41のサイズ(ディスプレイのサイズ)、検出精度等の設計仕様に基づいて適宜変更することができる。ただし、パターンレス型検出装置では、従来のアレイ型検出装置(アレイ型タッチパネル)と比較して、多数の電極Eを設ける必要がない特徴がある。具体的には、パターンレス型検出装置に必要な電極Eの数は、導電層41(検知領域Rd)のサイズ及び要求精度にもよるが、導電層41の周の長さが1m未満の場合、20個あれば十分な検出精度を得ることができる。この必要な電極Eの数は、ディスプレイのサイズが大きくなる場合、その大きさに合わせて適宜増加させればよい。例えば、導電層41の周の長さが数mになるような場合においても、30~40個程度の電極Eがあれば十分な検出精度を得ることができる。
【0047】
-位置検出回路-
位置検出回路5は、例えばLSI(Large-Scale Integrated circuit)で実現されている。図2では、位置検出回路5が基体40上に実装されている例を示している。なお、位置検出回路5は、図7に示すブロックの機能が実現可能に構成されていればよく、その具体的な回路構成やその実現方法、実装方法等は、特に限定されない。例えば、位置検出回路5が基体40とは別体の基板に実装されていてもよい。また、位置検出回路5はLSIで実現されている場合に限定されず、例えば、受動素子と能動素子とを組み合わせて回路を構成し、プリント基板等に実装するようにしてもよい。
【0048】
図7は本実施形態にかかる位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。図7に示すように、位置検出回路5は、導電層41に接続された電極Eに計測信号としてのパルス信号を与えるための信号源6と、位置情報取得部7と、演算部8とを備えている。
【0049】
信号源6は、パルスジェネレータ61(図7ではPGと表記する)と、アナログスイッチ62(図7ではASと表記する)とを有する。パルスジェネレータ61は、周期的に変動する矩形状のパルス信号を発生する。アナログスイッチ62は、パルスジェネレータ61と各電極Eとの間に設けられ、4つの電極E1,E2,…,E4のうち、後述する演算部8から出力される電極選択信号SC1が示す電極にパルス信号を与えるためスイッチである。電極選択信号SC1は、対をなす2つの電極、または、4つの電極を示す信号である。
【0050】
位置情報取得部7は、同一構成の一対のアナログスイッチ71,71(図7ではASと表記する)と、差動アンプ72と、ノイズフィルタ73と、ピークホールド回路74(図7ではP/Hと表記する)と、アナログデジタル変換回路75(図1ではADCと表記する)とを備えている。
【0051】
一対のアナログスイッチ71は、4つの電極E1,E2,…,E4からの出力信号を受け、後述する演算部8から出力される電極選択信号SC2に基づいて選択された一対の測定対象となる電極E(以下、ペア電極Eともいう)の出力信号を通過させ、差動アンプ72の入力端子にそれぞれ出力する。具体的には、一方のアナログスイッチ71がペア電極Eの一方の電極Eからの出力信号を通過させ、他方のアナログスイッチ71がペア電極Eの他方の電極Eからの出力信号を通過させる。これにより、差動アンプ72は、ペア電極Eからの出力信号の信号量差を示す差動信号を出力する。ノイズフィルタ73は、差動アンプ72から出力された差動信号のノイズ成分を除去する。ピークホールド回路74は、ノイズが除去された差動信号のピーク電圧をアナログ信号として保持する。アナログデジタル変換回路75は、前記ピーク電圧(アナログ信号)に基づいて、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報をデジタル値に変換する。なお、ピークホールド回路74は、必ずしも必要ではなく、ノイズフィルタ73の出力信号を直接アナログデジタル変換回路75に入力するようにしてもよい。この場合、アナログデジタル変換回路75には、時分割処理の動作をさせるようにすればよい。具体的には、アナログデジタル変換回路75は、ノイズフィルタ73から入力されたアナログ信号に対して、適当なサンプリング数で時分割された所定の単位時間毎にデジタル変換処理を施す。そして、デジタル変換処理後のデジタル信号の中から最大値を抽出し、その最大値に基づいたピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報を記録するようにするとよい。
【0052】
演算部8は、4つの電極E1,E2,…,E4の中からパルス信号を与える電極Eを選択し、その電極Eを示す電極選択信号SC1を信号源6のアナログスイッチ62に出力する。また、測定対象となるペア電極Eを選択し、そのペア電極Eを示す電極選択信号SC2を位置情報取得部7のアナログスイッチ71に出力する。この電極選択信号SC1,SC2により両スイッチの動作が制御される。
【0053】
電極選択信号SC1は、演算部8が任意に選択した対をなす2つの電極E、または、4つの電極Eを示す信号である。ここで、演算部8が、パルス信号を与える電極Eとして、どの電極をどのような順番で選択するかは特に限定されないが、4つの電極を選択する場合に、各辺から1つずつの電極を選択するのが好ましい。また、より好ましくは、導電層上で直交する仮想線を引き、この仮想線と導電層41の辺とが重なる位置(4箇所)に電極を設けて、それらの電極Eに信号を与えるのが好ましい。
【0054】
また、電極選択信号SC2は、電極選択信号SC1で選択された電極の中から任意に選択されたペア電極を示す信号である。したがって、電極選択信号SC1が2つの電極Eを示す信号である場合、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とは、同じ電極を示す信号となる。
【0055】
さらに、演算部8は、アナログデジタル変換回路75から出力された差動信号(デジタル値)に含まれる差分情報に基づいて、ディスプレイ21に接近または接触した指示体(例えば、ユーザーの指)の位置を演算により求める。ここで、差分情報とは、差動信号に基づいて得られる情報全般を指すものとする。例えば、差分情報には、差動信号が正の電圧信号か負の電圧信号かを示す符号情報、差動信号の大きさを示す電圧差情報、差動信号が所定の電圧に到達するまでの時間情報等を含ませることができる。また、演算部8は、上記制御を行うためのプログラムが格納されたメモリ81及び後述するディスプレイ情報、基準座標情報等が登録されるデータベースが格納された格納部82を備えている。
【0056】
≪タッチ位置の検出動作≫
次に、位置検出システムのタッチ位置の検出動作について、詳細に説明する。
【0057】
<検出動作(1)>
ここでは、図5に示すように、ディスプレイ21の表示画面21aの面積と、検知領域Rdの面積が同一であり、図1(c)の固定状態に係る表示画面21aと検知領域Rwとの上下左右方向(縦方向及び横方向)の位置が一致する場合について、タッチ位置TPの検出動作を説明する。
【0058】
本構成は、位置検出装置3とディスプレイ21の位置合わせをして装着すれば、表示画面21aと検知領域Rwとの位置の整合が取れる。そのため、両者間の位置合わせに係る位置合わせ処理(例えば、座標設定処理や座標変換処理)を行うことなく、表示画面21aへのタッチ位置TPを検出することができる。このような構成は、例えば、位置検出装置3が、特定の電子機器(例えば、特定のコンピュータ機器)の専用品である場合等が考えられる。以下において、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0059】
なお、以下の説明に際して、理解を容易にするために、導電層41は、一様なシート抵抗を有するものとして説明する。ただし、導電層41のシート抵抗が部分的に異なる場合においても、抵抗値の補正処理等を行うことにより、以下の説明と同様の効果を得ることができる。また、図2では図示を省略しているが、各配線42は、パルスジェネレータ61からのパルス信号が出力される位置検出回路5の出力端子と電極Eと間を接続する入力配線と、電極Eと位置検出回路5の入力端子との間を接続する出力配線とを含んでいるものとする。さらに、位置検出回路5の出力端子と各電極Eと間(入力配線)には、基準抵抗R0が接続されているものとする。以下の「検出動作(2)」の説明においても同様である。
【0060】
図8は位置検出システム1のタッチ位置の検出動作の一例を示すフロー図である。
【0061】
まず、図1(c)に示すように、位置検出装置3がディスプレイ21の裏面に取付け固定され、位置検出装置3に接続された通信ケーブル32aがコンピュータ機器2に接続されると、位置検出装置3の演算部8と、コンピュータ機器2のCPU24との間で認証処理が実行される(ステップS0)。認証処理では、一般的な相互装置間の認証(例えば、インターフェース規格で規定された認証)に加えて、位置検出動作に係る基本情報がやりとりされる。基本情報は、例えば、CPU24が位置検出装置3から取得する情報である。この基本情報は、専用品であるか否かの判断に必要な情報(例えば、型番)、基体40の外形サイズ、検知領域Rdのサイズなどである。この基本情報に基づいて、CPU24は、前述の位置合わせ処理を行う必要があるか否かを判断する。なお、ここでは、CPU24は、位置合わせ処理が不要と判断したものとする。
【0062】
ステップS0に係る認証処理が終了すると、コンピュータ機器2及び位置検出装置3は、それぞれ次の動作に移行する。例えば、コンピュータ機器2において、ユーザーが入力操作部22を操作して「タッチ操作」に基づいて処理を行うタッチパネル用ソフトを起動したとする。すると、CPU24は、ディスプレイ21の表示画面21aに、例えば上記ソフトの初期画面を表示させる(ステップS21)。このとき、位置検出装置3では、ステップS10に係るタッチ位置の検出処理が実行される。
【0063】
-タッチ位置の検出動作(1)(位置検出装置内)-
以下において、図9を参照しながら位置検出装置3内におけるタッチ位置の検出動作について詳細に説明する。なお、ここでは、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とが同じ2つの電極を示す信号であるものとする。
【0064】
ステップS11において、位置検出回路5の演算部8(以下、単に演算部8という)は、最初のペア電極Eの組み合わせを決定する。ペア電極Eの組み合わせ順序は、あらかじめ自回路内(例えば、メモリ81)に格納されていてもよいし、コンピュータ機器2からの指示やユーザーの入力操作による指示に基づいて決定してもよい。ここでは、第1電極E1及び第2電極E2が最初のペア電極として設定されたものとする。すなわち、演算部8は、電極選択信号SC1,SC2として、第1及び第2電極E1,E2を示す信号を出力する。
【0065】
ステップS12において、パルスジェネレータ61から出力されたパルス信号は、アナログスイッチ62を介して第1及び第2電極E1,E2に与えられる。その後、差動アンプ72には、アナログスイッチ71を介して第1及び第2電極E1,E2からの出力信号(以下、位置検出信号ともいう)が入力され、差動アンプ72から位置検出信号の差動信号(以下、単に差動信号ともいう)が出力される(ステップS13)。
【0066】
ステップS14において、演算部8は、ピーク記録された差動信号(以下、単に差動信号ともいう)の絶対値が所定値以上か否かを判断する。差動信号の絶対値が、所定値未満の場合(ステップS14でNO)、フローはステップS12に戻り、再び、パルスジェネレータ61から出力されたパルス信号が第1及び第2電極E,E2に与えられる。ここで、指示体のディスプレイ21へのタッチがない場合には、差動信号の絶対値が所定値以上にならないように設定されているため、ディスプレイ21へのタッチがされるまでの間、ステップS12からS14の動作が繰り返される。
【0067】
次に、ユーザーがディスプレイのタッチ位置TPにタッチした場合における動作について説明する。ここでは、図2に示すように、タッチ位置TPは、第2電極E2より第1電極E1の方に近いものとする。すなわち、第1電極E1とタッチ位置TPとの間の導電層41の抵抗(以下、第1抵抗R1と称し、抵抗値はRと記載する)と、第2電極E2とタッチ位置TPとの間の導電層41の抵抗(以下、第2抵抗R2と称し、抵抗値はRと記載する)との間には、R<Rの関係が成立するものとする。
【0068】
ステップS12において、タッチ位置TPへのタッチがされた状態で第1電極E1にパルス信号が入力されると、タッチした指示体と導電層41との間の容量CT(容量値はC)と第1抵抗R1との時定数に応じた電圧でタッチ位置TPがチャージアップされる。このチャージアップ状態が第1電極E1に反射され、差動アンプ72の一方の入力端子に下記式(1)で示される反射信号が入力される。
【0069】
=Vdd(1-exp(-t/R)) ‥(1)
【0070】
ここで、容量Cは、主として、基体の取付位置、ディスプレイの厚さ等の設置条件等に応じて一義的に決まる値である。なお、図2に示すように、容量Cとグランドとの間には、タッチするユーザー毎に異なる特定の値の負荷Z1が生じる。発明の理解を容易にするため、本式ではその影響を省略している。以下の式でも同様とする。
【0071】
同様に、位置TPがタッチされた状態において、第2電極E2にパルス信号が入力されると、容量Cと第2抵抗R2との時定数に応じて、差動アンプ72の他方の入力端子に下記式(2)で示される反射信号が入力される。
【0072】
=Vdd(1-exp(-t/R)) ‥(2)
【0073】
したがって、差動アンプ72では、下記式(3)に示す差動信号(式(1),(2)の差分の信号)が生成され、ピークホールド回路74に出力される(ステップS13)。
【0074】
df=V-V
=Vdd(-exp(-t/R)+exp(-t/R)) ‥(3)
【0075】
ピークホールド回路74は、差動信号が正の場合、式(3)の最大電圧値をピーク電圧としてホールドし、差動信号が負の場合、式(3)の最小電圧値をピーク電圧としてホールドする。
【0076】
ステップS14において、差動信号の絶対値が所定値以上となるため(ステップS14でYES)、フローはステップS15に進み、演算部8は、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報に基づいてタッチ位置TPを求める演算を実行する。ここでは、差動信号のピーク電圧及びピーク電圧の到達時間に基づいてタッチ位置を求める演算について図13を参照しながら説明する。
【0077】
ここで、第1電極E1と第2電極E2とを結ぶ仮想直線IE12(図13の二点鎖線参照)の垂直二等分線をBP12(図13の右下がりの太い一点鎖線参照)とし、垂直二等分線BP12よりも第1電極E1寄りの領域を第1領域Rd1とし、垂直二等分線BP12よりも第2電極E2寄りの領域を第2領域Rd2とする。さらに、BP12と平行に延び、かつ、等ピッチαの間隔で配置された仮想直線を、第1領域Rd1及び第2領域Rd2のそれぞれに引く(図13の右下がりの細い一点鎖線参照)。以下の説明において、説明の便宜上、図13では、第1領域Rd1におけるBP12の平行な直線をBP12+Kαとし、第1領域Rd1におけるBP12の平行な直線をBP12-Kαとして図示する。Kは、BP12から遠くなるに従って大きくなる自然数(K=1,2,3,…)である。また、このようにして引いた垂直二等分線BP12及びBP12と平行に延びる仮想直線BP12±Kαを含む線群を仮想直線群BPGと称し、この仮想直線群BPGを構成する仮想直線を総称する場合にBP120という符号を付して説明する。
【0078】
まず、仮想直線BP120の中からタッチ位置TPに最も近い仮想直線(図13ではBP12+3α)を特定する方法について説明する。なお、導電層41は一様なシート抵抗値を有するため、各仮想直線BP120は、抵抗R2の抵抗値Rと抵抗R1の抵抗値Rの比が一定となる(R/R=一定値)となる場所を示している線である。
【0079】
上式(3)において、R1及びR2はともに指数関数内に含まれており、R2/R1が一定の場所では、式(3)の最大電圧値が一定となる。具体的に、各電極から出力される電圧信号(上記式(1),(2)参照)は、抵抗値が高くなるほど減衰が大きくなるため、各仮想直線における電圧信号のピーク値は仮想直線IE12から離れるにしたがって低くなる。一方で、第1及び第2電極E1,E2間の差動電圧Vdfは、略同じプロファイルとして出力される。したがって、両電極E1,E2の差動信号のピーク値の大きさに基づいて、仮想直線群BPGを構成する各仮想直線のうち、タッチ位置TPがどの直線上に存在するか又はどの直線と最も近いかを特定(判別)することができる。
【0080】
次に、タッチ位置TPが上記特定された仮想直線(図13では仮想直線BP12+3α)上におけるどの辺りにあるかを特定するための方法について説明する。
【0081】
各仮想直線BP120上において、第1及び第2電極E1,E2間の仮想直線IE12と交わる点で第1及び第2電極E1,E2とタッチ位置TPとの距離が最小となるため、抵抗R1,R2の抵抗値R,Rがともに最小となる。すなわち、各仮想直線BP120と仮想直線IE12との交点が、差動ピーク電圧に到達する時間が最も短い点群となる。そして、BP12-αの仮想直線上に例示するように、矢印D1,D2で示す方向に離れていくと、抵抗値R,Rが大きくなることから、矢印D1,D2で示す方向への距離に応じて、差動ピーク電圧に到達する時間が遅くなっていく。したがって、差動ピーク電圧に到達する時間に基づいて、特定された仮想直線120上において、タッチ位置がどの辺りにあるかを特定(判別)することができる。
【0082】
このようにして、第1及び第2電極E1,E2間における差動信号のピーク電圧と、その到達時間に基づいて、タッチ位置TPを特定することができる。したがって、この時点でステップS10におけるタッチ位置の検出処理を終了しても、十分な精度でタッチ位置TPを検出することができる。一方で、前述の説明のとおり、タッチ位置TPが測定電極(例えば電極E1,E2)を結ぶ仮想直線IE12から離れるにしたがって抵抗R1,R2の抵抗値R,Rが高くなるため、タッチ位置TPが仮想直線IE12に近い場合と仮想直線IE12から遠い場所とでは、その検出精度に差が生じる場合がある。したがって、図9のステップS16において、電極Eの組み合わせを変更することにより、タッチ位置TPによらず高い精度の検出ができるようになる。なお、タッチ位置TPによらずに高い精度での位置検出を実現する観点において、電極E(図13ではE1~E4)は、導電層41の周方向において、等ピッチで配置するのが好ましい。
【0083】
ステップS16において、電極Eの組み合わせを変更した後のフローは、これまでのステップS11~S15に関する説明と同様である。そして、すべての測定電極の組み合わせについて仮タッチ位置の検出が終わると、S18において、それまでの仮タッチ位置の値に基づいて、タッチ位置TPを確定し、タッチ位置TPの検出処理を終了する。
【0084】
なお、上記「タッチ位置の検出動作(1)」では、差動信号のピーク電圧及びピーク電圧の到達時間に基づくタッチ位置の検出について説明したが、差動信号を用いてタッチ位置TPを検出できる方法であれば、どのような方法やアルゴリズムを用いてもかまわない。具体的には、必要な精度と演算部8の処理能力等に応じて任意に選択すればよい。例えば、以下の「タッチ位置の検出動作(2)」では、差動信号の極性に基づいてタッチ位置TPを検出する例について説明する。なお、以下の説明においても、電極選択信号SC1と電極選択信号SC2とが同じ2つの電極を示す信号であるものとして説明する。
【0085】
-タッチ位置の検出動作(2)(位置検出装置内)-
ここでは、「タッチ位置の検出動作(1)」との違いを中心に説明する。例えば、ステップS11からステップS14の動作は、「タッチ位置の検出動作(1)」と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0086】
ステップS15において、演算部8は、ピーク電圧(図10(b)参照)の符号に基づいて、タッチ位置が第1領域Rd1と第2領域Rd2のどちらにあるかを判別する。第1及び第2抵抗R1,R2の抵抗値R,Rは、タッチ位置と電極との間の距離に比例した値となるため、R<Rの関係が成立し、ピーク電圧(図10(b)参照)の符号は「+」である。そこで、演算部8は、タッチ位置TPが第1領域Rd1にあることを求めることができ、この座標位置を仮座標位置とする。
【0087】
次に、ステップS16において、ペア電極Eの組み合わせを変更するか否かが判断される。例えば、メモリ81に対して、ペア電極Eの組み合わせの変更の順序や組み合わせ数、繰り返し回数等の電極組合せルールが格納されている場合、その電極組合せルールに基づいて判断される。具体的には、あらかじめ定められたペア電極Eの組み合わせがすべて終了していない場合(ステップS16でYES)、ステップS17に進み、ペア電極Eの組み合わせが変更される。ここでは、演算部8は、第1電極E1と第4電極E4をペア電極として選択したものとする。そして、演算部8は、第1電極E1と第4電極E4とを結ぶ仮想直線(図示省略)の垂直二等分線BP14(図2の右上がりの一点鎖線参照)を引き、垂直二等分線BP14よりも第1電極E1寄りの領域を第3領域Rd3とし、垂直二等分線BP14よりも第4電極E4寄りの領域を第4領域Rd4とする。
【0088】
先ほどと同様に、ステップS12からステップS14が実行された後、演算部8は、ステップS15において、ピーク電圧の符号に基づいてタッチ位置TPが第3領域Rd3にあることを求めることができる。すなわち、演算部8は、上記2つの測定に基づいて、仮タッチ位置が第1領域Rd1と第3領域Rd3との重複部分(図3の斜線で示す領域)にあることを求めることができる。このように、S12からS17のフローを繰り返し実行することで、仮タッチ位置の検出精度を高めることができる。なお、S12からS15のフローは、例えば、5msの期間毎に前記ペア電極を構成する電極の組み合わせを変えて行う。したがって、演算部8は、一般的に指示体のタッチ位置TPが変わるまでの間に、繰り返し回数を含む延べ回数として数百通りのペア電極Eの組み合わせについて仮タッチ位置を検出することができる。
【0089】
そして、ペア電極Eの組み合わせの変更があらかじめ定められた所定数に達すると(ステップS16でNO)、演算部8は、それまでに算出された仮タッチ位置に基づいて、最終的なタッチ位置TPを確定し(ステップS18)、タッチ位置TPの検出処理を終了する。
【0090】
タッチ位置の検出処理の終了後、図8に戻り、位置検出装置3のタッチ位置TPの検出動作が終了すると、演算部8は、コンピュータ機器2のCPU24に対して確定したタッチ位置TPを示すタッチ位置信号を出力する。
【0091】
ステップS22において、タッチ位置信号を受信したCPU24は、タッチ位置信号の示すタッチ位置TPと、ステップS21でディスプレイ21に表示させた表示画面21aとを比較し、表示画面21a上のタッチ位置へのタッチに係る処理を実行する。例えば、ステップS21で選択画面が表示されていた場合には、CPU24はディスプレイ21の表示画面21aにタッチ操作に係る選択結果を表示させる(ステップS23)。
【0092】
-タッチ位置の検出動作(3)(位置検出装置内)-
次に、電極選択信号SC1が4つの電極を示す信号であり、電極選択信号SC2が2つの電極を示す信号である場合におけるタッチ位置の検出動作について説明する。なお、基本的な動作フローは、図9に示したとおり(「タッチ位置の検出動作(1)」と同様)であり、ここでは「タッチ位置の検出動作(1)」との違いを中心に説明する。
【0093】
ステップS11では、演算部8は、電極選択信号SC1として最初に設定する4つの電極Eの組み合わせを決定する。図2のように導電層41に設けられた電極Eが4つの場合、演算部8は、電極選択信号SC1としてこの4つの電極E1~E4を示す信号を出力する。なお、導電層41に設けられた電極Eが5つ以上の場合の最初の4つの電極Eの組み合わせは、「タッチ位置の検出動作(1)」と同様にして決定すればよい。
【0094】
さらに、演算部8は、電極選択信号SC1として最初に設定するペア電極Eの組み合わせを決定する。ここでは、第1電極E1及び第2電極E2が最初のペア電極Eとして設定されたものとする。すなわち、演算部8は、電極選択信号SC2として、第1及び第2電極E1,E2を示す信号を出力する。
【0095】
ステップS12では、パルスジェネレータ61から出力されたパルス信号が、アナログスイッチ62を介して第1~第4電極E1~E4に与えられる。このとき、ペア電極E(ここでは、第1電極E1及び第2電極E2)には同じパルス信号を与えるとともに、他の電極E(ここでは、第3電極E3及び第4電極E4)には、別のパルス信号を与えるようにする。そうすることで、検出位置特異性が増大し、感度向上という効果が得られる。ただし、第1~第4電極E1~E4に同じパルス信号を与えるようにしてもよい。
【0096】
ステップS13~S16の動作は、「タッチ位置の検出動作(1)」と同様である。なお、ステップS15における仮タッチ位置の検出は、例えば、電極選択信号SC2として設定されたペア電極Eの組み合わせ毎に、対応するルックアップテーブル(例えば、6種類のテーブル)を用意し、そのルックアップテーブルに基づいて判断するとよい。
【0097】
ステップS17では、電極選択信号SC1,SC2で設定される電極Eの組み合わせが変更される。図2では、導電層41に設けられた電極Eが4つなので、電極選択信号SC1は変更されず、電極選択信号SC2で設定されるペア電極Eの組み合わせのみが変更される。例えば、ペア電極Eの組み合わせとして、すべての電極の組み合わせ(6通り)が順次選択される。ただし、ペア電極Eの組み合わせの変更の順序や組み合わせ数、繰り返し回数等の設定は、任意に設定することができる。設定変更後におけるステップS11~S17のフロー(ループ処理)については、これまでの説明及び「タッチ位置の検出動作(1)」と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0098】
そして、ペア電極Eの組み合わせの変更があらかじめ定められた所定数に達すると(ステップS16でNO)、演算部8は、それまでに算出された仮タッチ位置に基づいて、最終的なタッチ位置TPを確定し(ステップS18)、タッチ位置TPの検出処理を終了する。タッチ位置の検出処理の終了後のフロー(図8参照)については、「タッチ位置の検出動作(1)」及び後述する「その他の実施形態」と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0099】
<検出動作(2)>
ここでは、図6に示すように、ディスプレイの表示画面より、位置検出部の検知領域の方が若干広い場合におけるタッチ位置TPの検出動作を説明する。具体的に、検知領域Rdは、ディスプレイ21の表示画面21aに対して上下左右に均等な幅のはみ出し領域Reを有している。なお、はみ出し領域Reのはみ出し量は、各辺で均等である必要はない。ただし、表示画面21aの全体をタッチパネルとして動作させる観点から、図1(c)の固定状態で検知領域Rdが表示画面21aの全体を包含するのが好ましく、はみ出し幅を均等にすることで、そのような包含状態に設置するのが容易になる。
【0100】
図6のような構成は、汎用性を高めることができるメリットがある。例えば、同じサイズのラップトップパソコンでも、メーカー毎に表示画面のサイズが若干異なる場合がある。そこで、図6に示すように、検知領域Rdを表示画面21aのサイズより広めに設定することにより、両者間のサイズの違いを吸収することができる。
【0101】
以下において、図6及び図11を参照しながら具体的に説明する。なお、図11では図示を省略しているが、本態様でも図8のステップS0に係る「認証処理」は実行される。ステップS0の結果として、ここでは、CPU24が、位置合わせ処理が必要と判断したものとして、以降の説明を行う。
【0102】
-基準座標の設定(位置合わせ処理)-
ステップS41において、CPU24は、ディスプレイ21に識別子としてのマーカーMKを表示するとともに、ディスプレイ21上のメッセージ領域RmにマーカーMKのタッチを促すメッセージ等を表示させる制御を行う。CPU24の制御を受けて、ディスプレイ21には、マーカーMK及びメッセージが表示される(ステップS42)。例えば、図6に示すように、マーカーMKが表示画面の4隅に表示され、メッセージ(例えば、「画面左上のマーカーをタッチしてください」)が表示される。このようにして、ユーザーに対して、画面左上のマーカーMK1(図6参照)へのタッチを促す。なお、マーカーMKの表示順序、表示態様等は特に限定されず、どのマーカーをタッチさせようとしているかをCPU24が把握できればよい。例えば、メッセージ領域Rmへのメッセージの表示を省略し、マーカーMK1のみを点滅してユーザーにタッチを促すようにしてもよい。また、4隅のすべてにマーカーMKを表示させる必要はない。例えば、少なくとも対角線方向に対向する2つの隅角部にマーカーMKを表示させれば、十分に精度の高い位置合わせを実施することができる。なお、図6において、画面左上から時計回りの順でマーカーMK1,MK2,MK3,MK4とする。ただし、特定のマーカーを指すものでない場合に、単にマーカーMKと記載する場合がある。
【0103】
次に、ステップS43において、CPU24は、演算部8に対して、ディスプレイ情報を送信する。ディスプレイ情報とは、例えば、ディスプレイ21の形状情報(ディスプレイ21の外形形状や大きさ、裏面の凹凸の有無)、表示画面情報(例えば、表示画面21aの形状やサイズ、ディスプレイ21内における表示画面21aの位置)、マーカー表示に係るマーカー表示情報(例えば、表示画面21aの中でのマーカーMKの表示座標、マーカーMKの表示順序、マーカーMKの表示時間等)である。
【0104】
ディスプレイ情報を受信した演算部8は、ステップS30において、「基準座標設定」に係る処理を行う。以下において、図12を参照しながら詳細に説明する。
【0105】
ステップS31において、演算部8は、CPU24から受けたディスプレイ情報を参照し、導電層41のどのあたりが最初にタッチされるかのタッチ推定領域Rtを設定する。例えば、検知領域Rdの中心と、表示画面21aの中心とが一致した場合における、マーカーMKの表示位置と対応する検知領域Rd上の位置を中心とする扇形状の領域をタッチ推定領域Rtとして設定する(図6参照)。なお、タッチ推定領域Rtは、任意に設定することが可能であり、領域の形状、大きさは特に限定されない。例えば、タッチ推定領域Rtが矩形状の領域であってもよい。このように、ディスプレイ情報に、ディスプレイ21の形状情報、表示画面情報及びマーカー表示情報を含ませることにより、タッチ推定領域Rtの予測精度を高めることができる。
【0106】
ユーザーによるタッチが行われると、位置検出部4ではタッチ位置TPの検出動作を行う(ステップS32)。ステップS32における具体的な動作は、図9のステップS10の処理と同様であり、ここではその詳細な説明は省略するが、ペア電極Eの組み合わせを変更しながら仮タッチ位置を算出し、ステップS18において、検知領域Rd上におけるマーカーMKへの指示体のタッチ位置を算出する。
【0107】
上記タッチ位置の算出が終わると、S33において、演算部8は、検出したタッチ位置が、推定領域Rt内に入っているかどうかを判定する。検出したタッチ位置が推定領域Rt外である場合(ステップS33でNG)、演算部8は、CPU24に対してマーカーMKへのタッチ検出が正常に検知されなかった旨を示すNG信号を出力する(ステップS34)。これにより、位置検出装置3の取付不良を防止することができるとともに、位置検出装置3の故障検出ができる。
【0108】
NG信号を受けたCPU24は、例えば、メッセージ領域Rmにエラー表示をしてユーザーにその旨を通知する。また、エラー通知と併せて、他の表示をしてもよい。例えば、再タッチを促したり、マーカーの位置を若干異ならせたりすることが考えられる。このとき、位置検出装置3側のフローは、ステップS32に戻る。また、NG信号を受信しない場合であっても、例えば、一定期間経過しても位置検出装置3からの信号受信がない場合に、メッセージ領域Rmにエラー表示をし、ユーザーに再タッチを促したりしてもよい。
【0109】
一方で、検出されたタッチ位置が推定領域Rt内にある場合(ステップS33でOK)、演算部8は、CPU24に対してマーカーMKへのタッチ検出が正常に行われた旨を示すOK信号を出力する(ステップS35)。
【0110】
OK信号を受けたCPU24は、マーカーの表示位置を変更するとともに、メッセージ領域Rmに新たに表示したマーカー(例えば、画面右上のマーカーMK2)をタッチするよう促すコメントを表示したり、音を鳴らしてユーザーに新マーカーMKが表示された旨を知らせたりする。このとき、位置検出装置3側のフローは、ステップS36に進み、ディスプレイ情報に基づいて、次のマーカーMKの表示が行われるか否かを判断する。すなわち、基準座標の設定処理が完了したかどうかを判断する。
【0111】
次のマーカーの表示が行われる場合(ステップS36でNO)、演算部8は、ステップS37において、参照するマーカーの位置を変更し、フローはステップS32に戻る。例えば、CPU24でマーカーMK1の次にマーカーMK2が表示される場合には、マーカーMK2を中心とした位置に推定領域Rtを移動させる。
【0112】
このようにして、ステップS32からS37の処理を、すべてのマーカーが表示されるまで繰り返す。そして、基準座標の設定処理が完了した場合(ステップS36でYES)、すなわち、すべてのマーカーMKの表示が完了した場合、演算部8は算出した基準座標を格納部82のデータベースに登録する。基準座標とは、検知領域Rd上の位置を表示画面21a上の位置に変換するための基準となる座標である。このとき、CPU24では、例えば、最後に表示するマーカー(例えば、マーカーMK4)のOK信号を受信することにより、演算部8における基準座標の設定処理が終了したことを判断することができる。
【0113】
CPU24は、演算部8の処理終了後、表示画面21aのマーカーMKやメッセージの表示を削除し、例えばタッチパネル用ソフトの初期画面を表示させる(ステップS21)。また、位置検出装置では、「検出動作(1)」と同様に、タッチ位置の検出処理を開始する(図9参照)。
【0114】
ステップS10Aにおいて、演算部8は、「検出動作(1)」と同様にして、検知領域Rd上におけるタッチ位置TPの検出を行う。タッチ位置TPの検出が終了すると、演算部8は、格納部82のデータベースに登録された基準座標を用いて、タッチ位置TPの変換処理を行う(ステップS39)。具体的には、検知領域Rd上におけるタッチ位置TP及び基準座標に基づいて、ディスプレイ21の表示画面21a上におけるタッチ位置TPを示すタッチ座標信号を生成し、CPU24に送信する。
【0115】
タッチ座標信号を受信したCPU24は、タッチ座標信号の示すタッチ位置TPと、ステップS21でディスプレイ21に表示させた画面とを比較し、その画面上でタッチ位置TPが操作された場合に必要な処理を実行する。例えば、ステップS21でディスプレイ21に選択画面が表示されていた場合には、CPU24はディスプレイ21の表示画面21aにその選択結果を表示させる(ステップS22,S23)。
【0116】
以上のように、本実施形態によると、位置検出装置3が取付機構31によってディスプレイ21の裏側に、表示画面21aと検知領域Rdとが対向するように取付け固定されている。これにより、指示体が表示画面21aにタッチしたときに、位置検出回路5が導電層41からの出力信号の差分情報に基づいてタッチ位置を検出することができる。したがって、仮に、コンピュータ機器2(ディスプレイ21)が、タッチパネル機能を有しない、または正常に機能しないタッチパネルを有する場合であっても、当該コンピュータ機器2(ディスプレイ21)に事後的にタッチパネル機能を追加することができる。
【0117】
また、「基準座標の設定」のような位置合わせ処理を行うことにより、図1(c)の取付け固定状態において、ディスプレイ21の表示画面21aの位置と、検知領域Rdとの位置が同じでない場合や、取付け毎に互いの相対位置が異なるような場合であっても、タッチパネル機能を有効に機能させることができる。
【0118】
なお、表示画面21aと検知領域Rwとの位置合わせ処理は、上記「検出動作(2)」で示した「基準座標の設定」に限定されない、例えば、タッチ位置の変換に係る変換係数が登録された変換テーブルを作成し、その変換テーブルに基づいてタッチ座標信号を生成するようにしてもよい。また、マーカーMKのタッチ位置の検出結果をそのままCPU24に送信し、CPU24内で座標変換やタッチ位置の補正処理を行うようにしてもよい。また、既存のタッチ位置からの移動軌跡や移動量、移動スピード等に基づいて、演算部8又はCPU24によるタッチ位置の変換処理、補正処理を実行するようにしてもよい。
【0119】
<検出動作(3)>
また、図示は省略するが、ディスプレイの表示画面より、位置検出部の検知領域の方が狭い場合においてもタッチ位置TPの検出は可能である。具体的には、例えば、複数の位置検出装置3又は複数の位置検出部4をディスプレイ21の表面に沿う方向に並べて配置し、検出領域Rdをディスプレイ21の表示画面21aと同じ大きさにするか、若干広くなるようにすればよい。この場合、上記複数の位置検出装置3(複数の位置検出部4)の配置場所に応じて、各位置検出装置3の位置検出座標を設定すればよい。なお、具体的な位置検出動作は、前述の「検出動作(1)」または「検出動作(2)」と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。同様に、位置検出装置3の取付け固定方法においても、「取付機構」に記載した内容と同様であり、ここではその詳細な説明を省略する。
【0120】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態では、ペア電極E間を結ぶ線分の垂直二等分線を境界として検知領域を分割し、重複した領域に基づいてタッチ位置を検出する方法について説明したが、他のアルゴリズムでタッチ位置を検出してもよい。例えば、タッチパネルを複数の検出領域に分割し、各分割された領域がタッチされた場合における標準的な差分情報を示す標準差分情報をリスト化したルックアップテーブル(図示省略)を用意し、そのルックアップテーブルに基づいてタッチ位置を判断するようにしてもよい。
【0121】
このような、標準差分情報を用いることにより、タッチ位置の検知精度を高めることができるようになる。具体的には、検出領域の分割領域数を増やして高精細化を実現することができる。
【0122】
また、ルックアップテーブルを補正したり、複数のルックアップテーブルを用いたりすることにより、検知精度を高めることができる。具体的には、タッチ容量は個人差があるため、必ずしもあらかじめ用意したルックアップテーブルが適合するとは限らない。そのため、ルックアップテーブルの補正や、複数のルックアップテーブルの中から最適なテーブルを参照することでタッチ位置の検知精度を高めることができる。
【0123】
さらに、ペア電極Eの組み合わせを変えた場合の仮タッチ位置の検知結果から多数決処理を行うことにより、タッチ位置TPの検知精度を高めるようにしてもよい。具体的には、例えば、検知領域Rdが矩形状である場合において、各辺にN個(Nは任意に設定された整数)の電極を設けた場合、電極の組み合わせ数PNは、下記式(4)に示すとおりである。
【0124】
PN=4N×3N/2 ‥(4)
【0125】
なお、上式(4)では、同一辺上におけるペア電極Eの組み合わせは感度が鈍いため、多数決処理の対象から除いている。すなわち、上式(4)は、ペア電極Eのうちの一方の電極を任意に選択し、他方の電極を一方の電極とは異なる辺から選んだ場合におけるすべての電極の組み合わせを多数決対象とする場合を例示しており、N=3の場合、54通りの組み合わせ数となる。多数決処理は、例えば、この54通りの電極の組み合わせのそれぞれについて、仮タッチ位置の検出を行い、仮タッチ位置の中から重複度が最も高い位置をタッチ位置として特定すればよい。また、例えば、仮タッチ位置として抽出された位置をその重複度が高い順番に並べ、かつ、それぞれの重複数が所定の閾値を超えているかどうかを判断することにより、複数箇所の同時タッチを検出することも可能である。
【0126】
また、上記ルックアップテーブルの補正において、上記の「基準座標の設定」処理におけるマーカー位置をタッチさせる際に、そのタッチ操作に係る差分情報に基づいて、ルックアップテーブルを補正するようにしてもよい。CPU24がディスプレイ21にマーカーMKを表示させて、ユーザーにそのマーカーMKをタッチさせているため、マーカーMKの位置に基づいた補正ができるためである。これにより、「基準座標の設定」と併せて、ルックアップテーブルの補正処理をすることができるようになり、ユーザーの手間を軽減しつつ、タッチパネルの検知精度を高めることができる。
【0127】
また、本開示に係る技術は、いわゆるホバリングの検知にも対応可能である。タッチ容量は指示体(例えば、指やスタイラスペン)と位置検出部4との間の垂直距離の2乗に反比例する。したがって、差動信号のピーク電圧の大きさに基づいて、指示体と位置検出部4との間の距離を算出することができ、これまで説明したタッチ位置TPの検知方法と組み合わせることでホバリングの検知が可能になる。なお、ホバリング検知において、指示体と位置検出部4との間の垂直距離が大きいことに起因して、タッチ容量が小さい場合と判断された場合には、検知倍率を上げて感度を高めた状態でタッチ位置の検出を行うようにすればよい。より具体的には、サンプリングを繰り返し行い、ピーク値が上昇しないときに、演算部8が上記検知倍率を上昇させるようにすればよい。その後、ピーク値が上昇したときには、演算部8が元の検知精度に戻すように動的に変化させればよい。さらに、繰り返しサンプリングの回数を定めることにより、その判断をより確実にすることができる。
【0128】
また、上記の実施形態において、ディスプレイ21は、タッチパネル機能を有しておらず、このようなディスプレイに上記実施形態に係る位置検出システムを適用することで、タッチパネル機能を事後的に追加できることを説明した。このような形態に限定されず、もともとタッチパネル機能を有するディスプレイにおいても本開示に係る位置検出システムを適用することができる。例えば、タッチパネル機能を有するディスプレイのパネルや位置検出機能が故障や破損等によって使用できなくなった場合に、本発明の位置検出システム1によってタッチパネル機能を補うことができる。
【0129】
また、電極選択信号SC1は、対をなす2つの電極、または、4つの電極を示す信号であるものとしたが、これに限定されない。例えば、導電層41の形状が矩形状以外の多角形状や円形状である場合に、演算部8によって選択される電極数が2つまたは4つ以外であっても本実施形態と同様の効果が得られる場合がある。
【0130】
また、上記実施形態では、計測信号(パルス信号)が与えられた電極Eの中から測定対象となるペア電極Eが選択されている例を示しているが、ペア電極Eが計測信号を与える電極Eに含まれていなくてもよい。例えば、計測信号を与えるための信号供給電極と、測定信号を受信する信号受信電極とを分け、対応する信号供給電極及び信号受信電極を対にし、この対電極同士を互いを近づけて配置するようにしてもよいし、互いに少し離間させて配置するようにしてもよく、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0131】
また、上記実施形態では、信号源6は、導電層41に接続された電極Eを介して導電層41に計測信号を与えるものとしたが、これに限定されない。例えば、信号源6が、電極Eとは異なる別の場所から導電層41に対して、直接または間接的に計測信号を与えるようにしてもよい。
【0132】
具体的に、例えば、信号源6が、導電層41の電極Eとは異なる1つまたは複数のノード(接点)から導電層41に直接計測信号を与えるようにしてもよい。
【0133】
また、信号源6が、容量成分を有する負荷や構成要素等を介して導電層41に計測信号を与えるようにしてもよい。例えば、信号入力のための配線領域やシート状の信号入力領域を、導電層41に対して、その厚さ方向に所定の間隔をあけて対向配置し、信号源6が、その配線領域又は信号入力領域を介して間接的に導電層41に計測信号を与えるようにしてもよい。このとき、導電層41と配線領域又は信号入力領域との間には、空気や基板等の絶縁体を介在させるのが好ましい。この場合においても、位置情報取得部7の構成及び動作は、上記実施形態と同じでよく、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、画像表示装置にタッチパネル機能を事後的に追加することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0135】
1 位置検出システム
3 位置検出装置
4 位置検出部
6 信号源
8 演算部(検出側演算部)
21 ディスプレイ(画像表示装置)
21a 表示画面
23 通信部(表示側通信部)
24 CPU(表示側演算部)
31 取付機構
32 通信部(検出側通信部)
41 導電層
E 電極
Rd 検知領域
MK マーカー(識別子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13