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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】開閉体開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/20 20140101AFI20220203BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220203BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   E05B 81/66 20140101ALI20220203BHJP
   E05B 81/70 20140101ALI20220203BHJP
   E05B 85/24 20140101ALI20220203BHJP
   E05F 15/622 20150101ALN20220203BHJP
【FI】
E05B81/20 B
B60J5/00 H
B60J5/10 H
B60J5/10 K
E05B81/66
E05B81/70
E05B85/24
E05F15/622
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018217571
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020084490
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健一
(72)【発明者】
【氏名】上甲 篤
(72)【発明者】
【氏名】大道 玄武
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-190416(JP,A)
【文献】特開2004-161181(JP,A)
【文献】特開2005-2745(JP,A)
【文献】特開2014-145226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0030299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05F 15/00-15/79
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の開口に対して開閉する開閉体と、前記開閉体を閉状態でロックするクローズ機構と、前記クローズ機構の駆動を制御する制御部と、前記開閉体の位置を検知する位置検知部を備えた開閉体開閉装置であって、
前記クローズ機構は、前記基体と前記開閉体とのいずれか一方に設けられた係合部と、他方に設けられた被係合部と、前記係合部を開状態と閉状態との間で遷移させるクローズ機構側駆動部と、前記係合部と前記被係合部とが相互作用したことを検知する相互作用検知部とを有し、
前記係合部の前記開状態は、前記被係合部が前記係合部と係合可能な位置へと移動可能な状態であり、
前記係合部の前記閉状態は、前記被係合部が前記係合部によりロックされた状態であり、
前記制御部は、
前記クローズ機構の前記係合部についての前記閉状態または前記開状態への遷移のときに、前記開閉体の位置を表す位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行い、
前記係合部についての前記閉状態または前記開状態への遷移が完了した後、前記位置検知部にて検知された前記開閉体の移動位置の位置情報を取得し、
前記ゼロ位置設定においてゼロ位置に設定された前記開閉体の位置情報であるゼロ位置情報と、取得した前記開閉体の移動位置の位置情報である取得位置情報とを比較する
開閉体開閉装置。
【請求項2】
基体の開口に対して開閉する開閉体と、前記開閉体を閉状態でロックするクローズ機構と、前記クローズ機構の駆動を制御する制御部と、前記開閉体の位置を検知する位置検知部を備えた開閉体開閉装置であって、
前記クローズ機構は、前記基体と前記開閉体とのいずれか一方に設けられた係合部と、他方に設けられた被係合部と、前記係合部を開状態と閉状態との間で遷移させるクローズ機構側駆動部と、前記係合部と前記被係合部とが相互作用したことを検知する相互作用検知部とを有し、
前記係合部の前記開状態は、前記被係合部が前記係合部と係合可能な位置へと移動可能な状態であり、
前記係合部の前記閉状態は、前記被係合部が前記係合部によりロックされた状態であり、
前記制御部は、
前記クローズ機構の前記係合部についての前記閉状態または前記開状態への遷移のときに、前記開閉体の位置を表す位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行い、
前記係合部についての前記閉状態または前記開状態への遷移が完了した後、前記位置検知部にて検知された前記開閉体の移動位置の位置情報を取得するとともに、前記ゼロ位置設定においてゼロ位置に設定された前記開閉体の位置情報であるゼロ位置情報と、取得した前記開閉体の移動位置の位置情報である取得位置情報とを比較し、
前記ゼロ位置情報の値と前記取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていた場合、かつ前記係合部が前記閉状態である場合に、前記クローズ機構側駆動部を駆動して前記係合部の前記閉状態を解除させる、
開閉体開閉装置。
【請求項3】
前記開閉体を開状態または閉状態へと遷移させる開閉体駆動部を有する
請求項1または請求項2に記載の開閉体開閉装置。
【請求項4】
前記開閉体が車両のドアである請求項1~請求項3の何れか一項に記載の開閉体開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基体の開口部を開状態または閉塞状態とする開閉体については、駆動部により駆動する際に、適切な位置での駆動の停止や、位置に応じた駆動速度での駆動をするために、開閉体の現在位置を検知する必要がある。このような開閉体は、例えば駆動部の駆動に応じたパルス信号の検出により現在位置を知ることができるが、このような検知信号は経年変化等により伝達誤差が生じることが知られている。
【0003】
このような伝達誤差等の累積による不正確な位置検出を防止する手段として、クローザ機構のスイッチ部材が作動したときにパルス信号の積算値をリセットし、開閉部材が全閉位置に位置するときにはリセットしない、開閉装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-190416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、坂道等の開閉体が移動可能な状況で、開閉体によるクローズ機構のスイッチ部材の作動によりパルス信号の積算がリセットされてしまうと、開閉体がロックされる前に移動して、クローズ機構による開閉体のロック位置とは異なる位置でパルス信号の積算値がリセットされてしまっても、本来のリセット位置との判別が困難である。パルス信号の積算値が本来のリセット位置と異なる位置でリセットされて開閉体のゼロ位置設定がされてしまうと、本来のゼロ位置との差異の分だけ開閉体の作動に問題が生じてしまい、このような開閉体の作動の問題が生じないように開閉体の移動量を狭くすると、利便性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、開閉体が適切ではない位置でゼロ位置設定されても、クローズ機構でのロックによってゼロ位置設定が可能な開閉体開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する開閉体開閉装置は、以下の特徴を有する。
即ち、本発明の開閉体開閉装置は、基体の開口に対して開閉する開閉体と、前記開閉体を閉状態でロックするクローズ機構と、前記クローズ機構の駆動を制御する制御部と、前記開閉体の位置を検知する位置検知部を備えた開閉体開閉装置であって、前記クローズ機構は、前記基体と前記開閉体とのいずれか一方に設けられた係合部と、他方に設けられた被係合部と、前記係合部を開状態と閉状態との間で遷移させるクローズ機構側駆動部と、前記係合部と前記被係合部とが相互作用したことを検知する相互作用検知部とを有し、前記係合部の前記開状態は、前記被係合部が前記係合部と係合可能な位置へと移動可能な状態であり、前記係合部の前記閉状態は、前記被係合部が前記係合部によりロックされた状態であり、前記制御部は、前記クローズ機構の前記係合部についての前記閉状態または前記開状態への遷移のときに、前記開閉体の位置を表す位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行う。また、開閉体開閉装置は、開閉体を閉状態とするときは、手動によって行うこともできるが、前記制御部により、前記係合部と前記被係合部との相互作用が生じた相互作用情報を得たときには、前記係合部が前記閉状態へと遷移するクローズ駆動を前記クローズ機構側駆動部に行わせることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉体が適切ではない位置でゼロ位置設定されても、クローズ機構でのロックによってゼロ位置設定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】開閉体開閉装置を備えた車両を示す斜視図である。
図2】車両のバックドアが閉姿勢にある状態を示す側面図である。
図3】車両のバックドアが開姿勢にある状態を示す側面図である。
図4】開閉体開閉装置を示すブロック図である。
図5】(a)はストライカとラッチとが離間した状態を示す図であり、(b)はストライカがラッチのカム部材に当接した状態を示す図である。
図6】(a)はストライカとラッチのカム部材とが係合可能な位置関係となった状態を示す図であり、(b)はラッチが閉状態へ遷移して、ストライカがロック位置に到達した状態を示す図である。
図7】閉位置となっているバックドアの当接開始位置、係合位置、および閉止位置を示す図である。
図8】制御部によるクローズ制御のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0011】
[開閉体開閉装置の概略]
図1図4に示す開閉体開閉装置1は、本発明に係る開閉体開閉装置の一実施形態であり、車両10に備えられている。開閉体開閉装置1は、車両10における車体11の開口11aを開閉するバックドア(開閉体)12の開閉動作を制御する装置である。車体11は基体の一例であり、バックドア12は開閉体の一例である。
開閉体開閉装置1は、バックドア12と、開閉体駆動部20と、クローズ機構30と、位置検知部40と、制御部50とを有している。制御部50は、開閉体駆動部20と、クローズ機構30との駆動を制御する。
【0012】
開口11aは車体11の後部に位置している。バックドア12は、車体11の後部に設けられており、開口11aを開閉可能に構成されている。バックドア12は、上端部がヒンジを介して車体11に回動可能に支持されている。バックドア12は、上端部を中心として移動することで、閉位置(図2参照)と開位置(図3参照)との間で遷移可能である。
【0013】
[開閉体駆動部]
開閉体駆動部20は、開口部材100の開口部11aに対して開閉体12を開方向と閉方向とに移動させる。開閉体駆動部20は、複数あっても良い。本実施の形態では、開閉体駆動部20は、開閉体12の左右両端および開口部11aの左右の両縁に1つずつの計2つ設けられている。それぞれの開閉体駆動部20が駆動することにより開閉体12を移動させることで、開閉体12は、開口部材100に対して相対移動して、開状態または閉状態に遷移する。
【0014】
2つの開閉体駆動部20は、開閉体12を開状態とする方向(開方向)と、開閉体12を閉状態とする方向(閉方向)とに開閉体12を移動させる。開閉体12を開状態と閉状態とに遷移させることが可能であれば、開閉体駆動部20のそれぞれが同方向であって同一駆動量で開閉体12を駆動しても良い。また、2つの開閉体駆動部20のそれぞれが、開方向と閉方向とに開閉体12を移動可能であれば、異なる方向の駆動であっても、異なる駆動量で開閉体12を駆動するようにしても良い。本実施の形態においては、各開閉体駆動部20が同一の駆動を同期して行うように設けられている。
【0015】
開閉体駆動部20は、一端が開口部材100と接続し、他端が開閉体12とに接続されている。開閉体12は、開口部材100に対して相対移動可能に設けられ、本実施形態においてはヒンジを中心として旋回可能に開口部材100に設けられている。開閉体12が開口部材100に対して旋回移動するために、開閉体駆動部20のそれぞれは、開閉体12が開口部材100に対して旋回可能に取り付けられ、開口部材100に対して旋回しながら開閉体12を開状態または閉状態へと遷移させている。
【0016】
具体的には、各開閉体駆動部20は、伸縮する棒状の外観を有しており、開閉体駆動部20の一端部側に配置され、開口部材100側に接続される駆動本体部と、開閉体駆動部20の他端部側に配置され、開閉体12側に接続される進退部とを有する。進退部は、駆動本体部の他端部側から出没可能に取り付けられている。各開閉体駆動部20は、開口部材100と開閉体12に、それぞれボールジョイントなどの旋回可能な接続構造を介して接続する。
【0017】
開閉体駆動部20は、駆動本体部に対して進退部を、開閉体駆動部20の長手方向に進退させて開閉体12を全閉位置、つまり、開口部11aを完全に閉塞する位置と、全開位置、つまり、開口部11を最大限に開放する位置とに移動できる。各開閉体駆動部20は、モータ等の回転運動を直線方向の伸縮運動に変換することにより、開閉体12を開方向または閉方向に移動させる。
【0018】
開閉体駆動部20は、自動車後部の左右の両端にそれぞれ1つずつの計2個設けられていたが、開閉体12の開閉を可能とするものであれば、その構造、駆動方式、形状や配置位置に付いては特に限定されない。開閉体駆動部20は、開閉体12を駆動させることができる公知の駆動部を採用することができる。
【0019】
本実施の形態では、開閉体駆動部20は、本体筒部201、スライド筒部202、開閉モータ203(図示省略)、スピンドル(図示省略)、スピンドルナット(図示省略)、付勢部材(図示省略)等を有する。開閉体駆動部20では、本体筒部201、開閉モータ203、スピンドル、付勢部材等が駆動本体部に対応し、スライド筒部202、スピンドルナットが進退部に対応する。
【0020】
本体筒部201は、一端部側が開口部材100に旋回可能に固定され、他端部側が開口している。本体筒部201の内側には、スライド筒部202が、本体筒部201の他端部側から出没するように、長手方向にスライド移動可能に配置される。
【0021】
開閉モータ203は、駆動して、駆動本体部に対し、進退部を長手方向に移動させて開閉体駆動部20を伸縮させる。開閉モータ203は、直流モータまたは交流モータである。開閉体開閉装置1が自動車に適用される場合には、自動車の直流電源を用いることを考慮して、開閉モータ33として直流モータを適用することが望ましい。なお、開閉モータ203は、制御部50に接続され、制御部50により、正回転、逆回転の双方の回転駆動が制御される。
【0022】
スライド筒部202は、本体筒部201の一端側から他端側に向けて付勢部材により付勢されている。スライド筒部202の内部には、開閉モータ203の回転により軸回りに回転するスピンドルが螺合されたスピンドルナットが設けられている。
【0023】
開閉体駆動部20は、本体筒部201とスライド筒部202とが、スピンドルの回転によって互いに供回りしないように構成されている。開閉モータ203が正逆の一方に回転すると、スピンドルが正逆軸回りの一方に回転し、スピンドルに螺合するスピンドルナットがスピンドルの長手方向に沿って移動する。これに伴い、スピンドルナットを有するスライド筒部202が進退移動、つまり、長手方向にスライド移動する。これにより、開閉体駆動部20が、伸縮するように可動し、本体筒部201からスライド筒部202が進出する長さに対応して、開閉体12が開閉作動する。
【0024】
クローズ機構30は、閉位置にある状態のバックドア12を車体11にロックするための機構である。クローズ機構30は、車体11およびバックドア12に設けられている。クローズ機構30は、ラッチ31、ストライカ32、相互作用検知部33、およびクローズ機構側駆動部34を有している。ラッチ31は係合部の一例であり、ストライカ32は被係合部の一例である。ラッチ31は、バックドア12の下端部に取り付けられている。ストライカ32は車体11の後部に取り付けられている。ストライカ32は、バックドア12が閉位置にあるときに、ラッチ31と係合可能な位置に位置することができるように配置されている。ラッチ31はストライカ32と係合可能に構成されている。
【0025】
ラッチ31は、開状態と閉状態との間で遷移可能に構成されている。ラッチ31の開状態は、ストライカ32がラッチ31と係合可能でない位置からラッチ31と係合可能な位置へと移動可能な状態である。ラッチ31の閉状態は、ストライカ32が、ラッチ31によって閉ざされた状態である。ラッチ31は、閉状態では、例えばフルラッチのように、ストライカ32がラッチ31により移動が阻害する。ラッチ31の開状態の位置は、フルオープン位置と呼ばれることもあり、係合可能な位置へと移動可能な状態であれば中立位置を含むことができる。ラッチ31の閉状態の位置は、フルクローズ位置と呼ばれる場合もあり、ストライカ32がラッチ31によりロックされるのであればハーフラッチ位置を含むことができる。ラッチ31の閉状態の位置は、ストライカ32のロック位置でもある。
クローズ機構側駆動部34はラッチ31を駆動するための駆動部材にて構成されており、ラッチ31の開状態と閉状態との間での遷移は、クローズ機構側駆動部34の駆動により行うことで可能である。クローズ機構側駆動部34は、例えば駆動モータにより構成される。
【0026】
開閉体開閉装置1においては、例えば、開位置にあるバックドア12が閉側へ移動して閉位置に達すると、ラッチ31がストライカ32と係合可能な位置に到達する。
この状態で、バックドア12を押すことによるラッチ31の機械的な駆動、または制御部50によるクローズ機構側駆動部34の駆動によって、ストライカ32はロックされた状態となる。ストライカ32がロック状態となると、車両後方の開口はバックドア12が完全に閉止した状態となる。
【0027】
図5(a)に示すように、バックドア12の下端部には、ストライカ32を受け入れることが可能な溝部317が設けられている。クローズ機構30においては、開閉体であるバックドア12が閉側に移動して閉位置に達すると、ストライカ32が溝部317に進入するように構成されている。
ラッチ31は、バックドア12の溝部317に移動可能な位置に配置される。ラッチ31は、バックドア12に回動可能に支持されるカム部材314と、カム部材314を所定の回動位置に保持するためのロック部材315とを有している。
【0028】
カム部材314は略円盤状部材にて形成されている。カム部材314の外周面の一部には、ストライカ32を受け入れることが可能な凹部316が形成されている。
ラッチ31が開状態にあるときにストライカ32が溝部317に進入すると、図5(b)に示すように、ストライカ32がカム部材314の凹部316に当接する。ストライカ32が凹部316に当接した後にさらに溝部317内に進入すると、図6(a)に示すように、カム部材314を回動させる。
【0029】
図6(a)に示す状態では、カム部材314とストライカ32とは、互いに係合可能な位置関係となっている。つまり、図6(a)に示す状態においては、カム部材314の回動位置は、ストライカ32に対する係合可能位置となっている。また、図6(a)に示す状態では、バックドア12はロックされた閉止状態ではなく、いわゆる半ドアの状態となっている。
【0030】
カム部材314が係合可能位置まで回動されると、カム部材314はクローズ機構側駆動部34により回転駆動される。この場合、カム部材314が係合可能位置まで回動されるとオン信号が送信されるカムスイッチをカム部材に設け、カムスイッチからオン信号が入力されるとクローズ機構側駆動部34が駆動されるように構成することができる。
カム部材314を、図6(a)に示す係合可能位置から図における反時計回りに回転駆動して、ラッチ31を閉状態に遷移させることにより、ストライカ32をロック位置に誘導することができる。図6(b)に示すように、ラッチ31の閉状態への遷移が完了すると、ストライカ32がロック位置に到達してバックドア12が完全に閉止状態となる。
【0031】
カム部材314は、カム部材314の外周面における凹部316とは異なる箇所に配置されるカム面318を有している。カム面318は、カム部材314の外周面における他の部分よりも径方向外側に突出している。カム部材314は、周方向におけるカム面318と凹部316との間に外周面314aを有している。
ロック部材315は、カム部材314の外周面に当接する当接部319を有している。ロック部材315は、当接部319がカム部材314の外周面に当接する方向に付勢されている。
【0032】
当接部319は、カム部材314が図5(a)に示す姿勢にあってラッチ31が開状態にあるときから、カム部材314がストライカ32により回動されて図6(a)に示す係合可能位置に達するまでの間、カム面318に当接する。
カム部材314が係合可能位置に達した後にさらに反時計回りに回動すると、当接部319のカム部材314に対する当接箇所が、カム面318から外周面314aに遷移する。
【0033】
その後、図6(b)に示すように、ストライカ32がロック位置に到達するまでカム部材314が反時計回りに回動すると、ロック部材315の当接部319は、カム部材314の凹部316に入り込む。当接部319が凹部316に入り込むと、当接部319と凹部316とが係合して、カム部材314が時計回り方向に回動することが規制される。
これにより、カム部材314によりロック位置へ誘導されたストライカ32のロック状態が維持される。
【0034】
このように、ラッチ31が開状態にあるときに、バックドア12が閉位置に移動してラッチ31がストライカ32と係合可能な位置に到達した後に、ラッチ31を閉状態に遷移させることで、ストライカ32をロック位置に誘導してバックドア12を完全な閉止状態とすることが可能となっている。
なお、本実施形態においては、バックドア12にラッチ31が設けられるとともに、車体11にストライカ32が設けられているが、車体11にラッチ31を設けるとともに、バックドア12にストライカ32を設けることもできる。本発明においては、当然、公知のラッチとストライカとのクローズ機構を採用してもよい。
【0035】
相互作用検知部33は、ラッチ31とストライカ32とが相互作用したことを検知するものである。ここで、「ラッチ31とストライカ32とが相互作用する」とは、ラッチ31とストライカ32との関係性が生じるように一方から他方または両方が働きかけることを意味する。ラッチ31とストライカ32との相互作用としては、例えば、ストライカ32とラッチ31とが係合可能な状態となる際に生じるような、ストライカ32がラッチ31に当接することをいう。具体的には、例えばバックドア12が閉方向へ移動しているときにストライカ32がカム部材314に当接して、カム部材314がストライカ32と係合可能な位置まで回動された状態(図6(a)に示す状態)にあることをいう。相互作用検知部33は、ストライカ32とカム部材314とが当接した状態となったときにオンとなるリミットスイッチとして構成することもできる。
【0036】
位置検知部40は、開閉体であるバックドア12の位置を検知するものである。
位置検知部40は、例えばバックドア12の位置を検出するエンコーダを有しており、エンコーダからの出力パルスをカウントすることで、バックドア12の位置を検知するように構成されている。本発明においては、位置検出部は、当然、公知の位置検出機構を用いることができる。
【0037】
制御部50は、ROMおよびRAMなどのメモリ、ECU(Electronic Control Unit)などのCPU、ならびに各種インターフェイスなどを含むマイクロコンピュータにて構成されており、所定のプログラムを実行することにより、開閉体駆動部20およびクローズ機構30の駆動を制御する。
制御部50には、開閉体駆動部20、クローズ機構30の相互作用検知部33およびクローズ機構側駆動部34、ならびに位置検知部40が接続されている。
【0038】
また、制御部50は、バックドア12が閉位置にあるときに、位置検知部40にて検知されたバックドア12の位置を示す位置情報をリセットして、ゼロ位置に設定するように構成されている。
【0039】
ここで、バックドア12が閉位置にある状態とは、図5(b)に示すようにストライカ32がカム部材314の凹部316に当接を開始した状態から、図6(b)に示すようにストライカ32がロック位置に到達してバックドア12が完全に閉止されるまでの状態を含む。
つまり、ストライカ32とラッチ31との状態は、図7に示すように、バックドア12が閉位置へと移動する位置によって、複数の状態となる。これらの状態は、バックドア12が閉方向へ移動するときにストライカ32とラッチ31とが当接を開始する当接開始位置Paに位置している状態(図5(b)に示す状態)、カム部材314とストライカ32とが係合可能な位置関係となる係合位置Pbに位置している状態(図6(a)に示す状態)、およびストライカ32がロック位置に到達してストライカ32がラッチ31によってロックされた状態(図6(b)に示すように、バックドア12が完全に閉止状態となる閉止位置Pcに位置している状態)を含んでいる。本発明においては、バックドア12の係合可能な位置関係となる係合位置Pbと完全に閉止状態となる閉止位置Pcとは、バックドア12が同じ位置であってもよい。
【0040】
本実施形態においては、制御部50は、バックドア12が閉方向へ移動しているときに、バックドア12の移動位置が係合位置Pbとなって相互作用検知部33がラッチ31とストライカ32とが相互作用したことを検知すると、開状態にあるラッチ31をクローズ機構側駆動部34により閉状態に遷移させる。また、制御部50は、ラッチ31がクローズ機構側駆動部34により閉状態に遷移されると、位置検知部40が検知するバックドア12の移動位置をゼロ位置に設定する。制御部50は、ラッチ31によりバックドア12が閉止状態となったときにバックドア12の移動位置をゼロ位置とするが、ラッチ31が閉状態に遷移し始めたときに移動位置をゼロ位置とすることもできる。
【0041】
さらに、制御部50は、バックドア12が係合位置Pbから閉止位置Pc側に移動したときには、位置検知部40からの出力パルスをマイナス方向にカウントしてバックドア12の移動位置を算出する。逆に、バックドア12が係合位置Pbから当接開始位置Pa側に移動したときには、制御部50は、位置検知部40からの出力パルスをプラス方向にカウントしてバックドア12の移動位置を算出する。
【0042】
車両10においては、バックドア12を閉方向へ移動させて、バックドア12をクローズ機構30により閉状態でロックする際に、バックドア12が一旦係合位置Pbに到達した後に、車体11の開口部の開口周縁に設けられた弾性部材であるウエザーストリップによって押し戻されて開方向へ移動することがある。また、車両10が上り坂に停車している状態では、バックドア12が一旦係合位置Pbに到達した後に、重力により開方向へ移動することがある。
このように、バックドア12が係合位置Pbに到達して相互作用検知部33がラッチ31とストライカ32との相互作用を検知した後にバックドア12が開方向へ移動すると、ラッチ31とストライカ32との係合状態が解除された状態で、ラッチ31が開状態から閉状態へ遷移することがある。
【0043】
この場合、バックドア12が開方向へ移動してラッチ31とストライカ32との係合状態が解除されているにもかかわらず、ラッチ31が閉状態に遷移することでバックドア12の移動位置はゼロ位置に設定される。即ち、バックドア12が適切でない位置にある状態で、バックドア12の移動位置がゼロ位置に設定されてしまう。
【0044】
従って、もし閉状態遷移時だけでなく閉状態にある間もバックドア12の移動位置情報がゼロ位置に保持されたままであると、例えば係合位置Pbよりも開方向に位置しているバックドア12を開閉体駆動部20により開方向へ移動させたときに、バックドア12は全開状態となった後も開閉体駆動部20によって開方向へ駆動されるおそれがある。
また、バックドア12が係合位置Pbよりも開方向に位置しているにもかかわらずラッチ31が閉状態へ遷移しているため、バックドア12を閉止位置にてロックすることができない。さらに、バックドア12を再度閉方向に移動させたとしても、ラッチ31とストライカ32とを係合させることができない。
しかし、このような場合に、閉状態遷移後、ロックされているにも関わらず位置に相分の変化が生じたことをもって誤ったゼロ位置設定を行ったことを判断して、ラッチ31をストライカ32と係合可能な開状態とし、再度、バックドアを閉方向に移動させてバックドアをロックさせる際に、ラッチ31が閉状態へ遷移するときに制御部50がバックドア12の位置情報をゼロ位置設定することができる。このゼロ位置設定により、バックドア12の誤った位置でのゼロ位置設定による過剰なバックドアの開動作を抑制することができる。また、バックドア12の長い時間、閉状態中にあり車両振動や積算誤差等で発生する誤った位置でのゼロ位置設定は、制御部50が、ラッチ31が開状態への遷移をしたときにゼロ位置設定をすることで防止することもできる。
【0045】
[クローズ制御]
開閉体開閉装置1においては、バックドア12を閉方向へ移動させてクローズ機構30により閉状態でロックする際に、制御部50により次のようなクローズ制御を実行するように構成している。
【0046】
図8は、開閉体開閉装置1の制御の一例を示す制御フローである。図8に示すように、例えば、開位置にあるバックドア12を開閉体駆動部20により閉方向へ移動する場合、バックドア12の移動を開始したときには、ラッチ31は開状態となっている(S01)。バックドア12が閉方向へ移動されて閉位置となり係合位置Pbに到達すると、ラッチ31とストライカ32との相互作用が相互作用検知部33により検知される。
【0047】
制御部50は、バックドア12の閉方向への移動が開始された後、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されたか否かの判定を行う(S02)。
制御部50は、ステップS02において、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されていないと判定した場合には、再度ステップS02を実行する。
【0048】
制御部50は、ステップS02において、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されたと判定した場合は、クローズ機構側駆動部34を駆動して、開状態にあるラッチ31の閉状態への遷移を開始する(S03)。つまり、制御部50は、ラッチ31とストライカ32との相互作用が生じた相互作用情報を得たときに、ラッチ31が閉状態へと遷移するクローズ駆動をクローズ機構側駆動部34に行わせる。
【0049】
また、制御部50は、ラッチ31の閉状態への遷移が開始されると、位置検知部40にて検知される、車体11の開口部に対するバックドア12の位置を示す位置情報をリセットして、ゼロ位置に設定する(S04)。つまり、制御部50は、ラッチ31の閉状態への遷移が開始された時点、またはラッチ31の閉状態への遷移が開始された後に、バックドア12の位置を表す位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行う。ラッチ31とストライカ32との相互作用が生じた相互作用情報が取得された場合は、開閉体が車体11の開口部が閉止される閉位置への移動を行っているものと認識することができる。制御部50は、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知した場合を、開閉体の駆動により位置検出部40が検出する第一の位置情報とは別の第二の位置情報として用い、開閉体が開口部を閉止する位置へ移動するものと判断し、位置情報をゼロ位置に設定する。
【0050】
制御部50によりバックドア12の位置情報がゼロ位置に設定された後、クローズ機構側駆動部34によるラッチ31の閉状態への遷移が完了する(S05)。
制御部50は、ラッチ31の閉状態への遷移が完了した後、位置検知部40にて検知されたバックドア12の移動位置の位置情報を取得する(S06)。
【0051】
制御部50は、ステップS04にてゼロ位置に設定されたバックドア12の位置情報であるゼロ位置情報と、ステップS06にて取得したバックドア12の位置情報である取得位置情報とを比較する(S07)。
制御部50は、ステップS07においてゼロ位置情報と取得位置情報とを比較した結果、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じているか否かの判定を行う(S08)。
【0052】
この場合、例えばラッチ31が閉状態へ遷移することによりストライカ32がロック位置に移動して、バックドア12が完全に閉止状態となっている場合には、バックドア12は係合位置Pbよりも閉止位置Pc側へ移動している。従って、取得位置情報は、位置検知部40からの出力パルスが、ゼロ位置からマイナス方向に係合位置Pbと閉止位置Pcとの間の距離に相当するパルス数だけカウントされた値となる。
【0053】
また、バックドア12が係合位置Pbよりも当接開始位置Pa側へ移動している場合、取得位置情報は、位置検知部40からの出力パルスがゼロ位置からプラス方向にカウントされた値となる。取得位置情報がゼロ位置からプラス方向にカウントされた値となるのは、ラッチ31が閉状態へ遷移したにもかかわらず、バックドア12が開方向へ移動してラッチ31とストライカ32との係合状態が解除された状態となっているときに生じる。
【0054】
従って、本実施形態においては、制御部50はステップS08の判定において、取得位置情報の値が、ゼロ位置情報の値よりもプラス方向に所定値以上大きい場合に、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていると判定するように構成している。
【0055】
制御部50は、ステップS08において、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていないと判定した場合は、ステップS06に戻り、再度位置検知部40にて検知されたバックドア12の移動位置の位置情報を取得する。
なお、制御部50は、取得位置情報の値がゼロ位置情報の値に対してマイナス側の値であるとき、または取得位置情報の値がゼロ位置情報の値に対してプラス側かつ所定値未満の値であるときに、ステップS08において、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていないと判定する。取得位置情報の値がゼロ位置情報の値に対してマイナス側の値は、開閉体が開方向とは反対側へ移動したことを表す。
【0056】
制御部50は、ステップS08において、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていると判定した場合は、クローズ機構側駆動部34を駆動してラッチ31を閉状態から開状態へと遷移させて、ラッチ31の閉状態を解除する(S09)。又、閉状態の解除は、判定した直後に限るものではない。例えば所定の差以上の差の発生を判定後、次のユーザーによる操作受付後に解除させてもよい。
【0057】
ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じている場合は、ラッチ31が閉状態へ遷移したにもかかわらず、ラッチ31とストライカ32との係合状態が解除されていて、バックドア12が完全に閉止状態となっていない異常状態であると判断できる。従って、制御部50がゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていると判定した場合は、ラッチ31を閉状態から開状態へと遷移させて、ラッチ31とストライカ32とが係合可能な状態とするように構成している。ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差は、ラッチ31によるストライカ32の移動の阻止ができる範囲の差を越えた値とすることもできる。
【0058】
これにより、係合位置Pbよりも当接開始位置Pa側に位置しているバックドア12が再度閉側に移動した際に、ラッチ31とストライカ32とが係合することが可能となる。
そして、バックドア12が再度閉側に移動してラッチ31が適正な位置である係合位置Pbへ移動した際に、クローズ機構30の相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用を検知し、ラッチ31を閉状態へ遷移させてバックドア12をロックするとともに、バックドア12の位置情報をゼロ位置設定することが可能となる。
つまり、バックドア12が適切ではない位置で一旦ゼロ位置設定されても、クローズ機構30によりバックドア12をロックする際に、制御部50によってゼロ位置設定を再度行うことが可能である。
【0059】
また、制御部50は、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていると判定した場合、バックドア12のロック状態に異常が発生していると判断して、開閉体駆動部20が駆動の指示を受けたとしても駆動を開始しないように制御することができる。これにより、係合位置Pbよりも当接開始位置Pa側に位置しているバックドア12が開閉体駆動部20により開方向へ駆動された際に、全開状態となった後にさらに開方向へ駆動されて、バックドア12に機械的な負担がかかることを抑制できる。
【0060】
さらに、制御部50は、ゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じていると判定した場合、車体11またはバックドア12が備える報知手段により異常状態が発生している旨を報知させることができる。
このように、異常状態の発生を報知させることにより、バックドア12が係合位置Pbよりも当接開始位置Pa側に位置している状態で、ユーザーが制御部50に対して開閉体駆動部20によりバックドア12を開方向へ駆動させる指示を行うことを抑制できる。これにより、バックドア12が全開状態となった後に開閉体駆動部20により開方向へ駆動されて、バックドア12に機械的な負担がかかることを抑制することができる。
【0061】
また、例えば、バックドア12が当接開始位置Paよりも開側に位置している状態で、ユーザーがラッチ31を手動で開状態から閉状態へと遷移させると、ラッチ31が閉状態に遷移したときの移動位置にてバックドア12の位置情報がゼロ位置に設定される。このゼロ位置に設定されたバックドア12の位置は、制御部50がゼロ位置設定を行う係合位置Pbよりも開側に位置している。従って、バックドア12を、ユーザーがラッチ31を閉状態に遷移させた位置から開閉体駆動部20により開方向へ駆動させると、バックドア12が全開状態となった後も開方向へ駆動されて、バックドア12に機械的な負担がかかるおそれがある。
【0062】
しかし、本実施形態の開閉体開閉装置1においては、バックドア12の位置情報がゼロ位置に設定された後に、バックドア12が開方向へ所定値以上移動したこと、つまりバックドア12の移動位置の位置情報であるゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じたことを、制御部50が判定可能となっている。
従って、制御部50がゼロ位置情報の値と取得位置情報の値との間に所定の差以上の差が生じたとの判定を行ったときには、その後に制御部50に対して開閉体駆動部20の駆動開始指示がなされたとしても、制御部50が開閉体駆動部20の駆動を開始しないように構成することができる。
【0063】
また、開閉体開閉装置1は開閉体駆動部20を有しており、開閉体駆動部20によりバックドア12を駆動して閉方向へ移動させることが可能である。これにより、バックドア12を開閉体駆動部20により適切な速度で閉方向へ移動させることができ、ラッチ31とストライカ32との相互作用が相互作用検知部33により検知されたときのラッチ31を閉状態へ遷移させる動作をスムーズに行うことが可能となっている。
【0064】
制御部50は、ステップS09において、ラッチ31を開状態へ遷移させた後、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されたか否かの判定を行う(S10)。
制御部50は、ステップS10において、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されていないと判定した場合には、再度ステップS10を実行する。
【0065】
制御部50は、ステップS10において、相互作用検知部33によりラッチ31とストライカ32との相互作用が検知されたと判定した場合は、クローズ機構側駆動部34を駆動して、開状態にあるラッチ31の閉状態への遷移を開始する(S11)。つまり、制御部50は、ステップS09においてラッチ31を開状態へ遷移させた後に、ラッチ31とストライカ32との相互作用が生じた相互作用情報を得ると、ラッチ31が閉状態へと遷移するクローズ駆動をクローズ機構側駆動部34に行わせる。
【0066】
このように、ラッチ31を再度閉状態へ遷移させることで、バックドア12が一旦係合位置Pbから開方向へ移動した場合でも、その後にラッチ31とストライカ32との相互作用が検知された際に、バックドア12を完全に閉止状態とさせることが可能となる。
【0067】
なお、制御部50は、ステップS11においてラッチ31の閉状態への遷移が開始される際に、再度ステップS04を実行し、位置検知部40にて検知されるバックドア12の移動位置を示す位置情報をリセットして、ゼロ位置に設定することもできる。
このように、バックドア12の位置情報を再度ゼロ位置に設定することで、バックドア12のゼロ位置の精度を向上させることが可能となる。
【0068】
本実施形態においては、バックドア12が係合位置Pbに達してラッチ31の閉状態への遷移が開始されたときにバックドア12の位置情報をゼロ位置に設定するように構成しているが、ラッチ31が完全に閉状態に遷移してバックドア12が係合位置Pbから閉止位置Pcに達したときにゼロ位置に設定することも可能である。また、バックドア12が係合位置Pbから閉止位置Pcに至るまでの過程において、バックドア12の位置情報をゼロ位置に設定するように構成することも可能である。
【0069】
つまり、開閉体開閉装置1においては、ラッチ31が閉状態に遷移したときに、バックドア12の位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行うが、この「ラッチ31が閉状態に遷移したとき」は、ラッチ31の閉状態への遷移開始時、ラッチ31の閉状態への遷移完了時、およびラッチ31の閉状態への遷移開始時から完了時までの間を含むものである。そのため、ゼロ位置設定のときとは、時間を意味するものではなく、ラッチ31の閉状態への遷移を一つの基準とする意味である。
【0070】
また、本実施形態においては、バックドア12を開閉駆動するための開閉体駆動部20を備えた開閉体開閉装置1について説明したが、開閉体開閉装置1が開閉体駆動部20を備えておらず、ユーザー自身が車両10のバックドア12の開閉を行う構成においても、制御部50のクローズ制御を適用することができる。
つまり、ユーザーにより閉方向に移動されるバックドア12をクローズ機構30により閉状態でロックする際に、制御部50によるクローズ制御を実行することも可能である。
本実施形態においては、ラッチ31が閉状態に遷移したときに、バックドア12の位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定を行っているが、制御部50は、ゼロ位置設定をラッチ31が開状態へ遷移したときにゼロ位置設定を行ってもよい。つまり、制御部50は、ラッチ31が閉状態となってしまってバックドア12を閉じた状態とすることができないことを解除するために、クローズ機構側駆動部34を駆動させるときに、バックドア12の位置情報をゼロ位置に設定するゼロ位置設定とすることができる。
制御部50は、クローズ機構30のラッチ31についての閉状態や開状態への遷移のときに、上述のゼロ位置設定を行うことができるので、従来の開閉体開閉装置のように、ラッチ31が閉状態に位置する時にゼロ位置設定をすることによる継続的ゼロ位置設定を回避することができる。制御部50は、ラッチ31についての閉状態への遷移のときと開状態への遷移のときとのいずれか一方のみ、または両方のみにおいて、上述のゼロ位置設定を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態においては、開閉体開閉装置1は、車両10におけるバックドア12の開閉動作を制御する装置に構成しているが、車両10の側面を開閉するスライドドアなどといった他のドアの開閉動作を制御する装置として構成することもできる。
このように、開閉体開閉装置1により開閉動作が制御される開閉体を、バックドア12およびスライドドアといった車両10のドアとすることで、ドアを閉じた際に、ドアの位置が適切ではない位置で一旦ゼロ位置設定されたとしても、クローズ機構30を用いて制御部50によりゼロ位置設定を再度行うことが可能である。また、一旦閉じたドアを開方向へ移動させる際に、ドアの開動作に問題が生じることを抑制することができる。
【0072】
なお、開閉体開閉装置1により開閉動作を制御される開閉体としては、車両10のドア以外にも、トランクリッド、ボンネット、サンルーフ、またはドアに設けられる窓ガラスなどを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 開閉体開閉装置
10 車両
100 開口部材
11 車体
11a 開口
12 バックドア(開閉体)
20 開閉体駆動部
201 本体筒部
202 スライド筒部
203 開閉モータ
21 駆動モータ
22 クラッチ
23 アーム
24 ロッド
30 クローズ機構
31 ラッチ
32 ストライカ
33 相互作用検知部
34 クローズ機構側駆動部
40 位置検知部
50 制御部
60 ガスダンパ
61 チューブ
62 ロッド
314 カム部材
314a 外周面
315 ロック部材
316 凹部
317 溝部
318 カム面
319 当接部
Pa 当接開始位置
Pb 係合位置
Pc 閉止位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8