(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ウェハレベルパッケージ内の熱赤外線センサアレイ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20220118BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20220118BHJP
H01L 35/14 20060101ALI20220118BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01J1/02 Q
G01J1/02 C
G01J1/02 Y
B81B3/00
H01L35/14
H01L35/32 A
(21)【出願番号】P 2018527239
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2016078943
(87)【国際公開番号】W WO2017089604
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2018-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】102015120685.4
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102015120737.0
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507380997
【氏名又は名称】ハイマン・ゼンゾル・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シーフェルデッカー・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】レーネケ・ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】フォルク・ボード
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・マーリオン
(72)【発明者】
【氏名】シュノッル・ミヒャエル
【合議体】
【審判長】井上 博之
【審判官】渡戸 正義
【審判官】樋口 宗彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084987(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02172755(EP,A1)
【文献】特開2000-298063(JP,A)
【文献】特開2011-137744(JP,A)
【文献】国際公開第2014/180635(WO,A1)
【文献】特開2015-175768(JP,A)
【文献】特開平8-35879(JP,A)
【文献】特開2012-215531(JP,A)
【文献】特表2015-507206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B1/00-7/04
B81C1/00-99/00
G01J1/00-1/60
G01J11/00
H01L21/339
H01L27/14-27/148
H01L27/16
H01L27/30
H01L29/762
H01L35/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンマイクロメカニクスでウェハレベルパッケージ内に製造された赤外線を感知する複数の画素(14)を有する熱赤外線センサアレイであって、
前記複数の画素(14)は、1つの絶縁層(10′)上に形成されていて、1つのシリコン縁部(13)が、この絶縁層(10′)を支持し、1つのシリコン基板(3)上の1つのCMOSスタック(10)が、この絶縁層(10′)とこのシリコン縁部(13)と
を含み、
それぞれの前記画素(14)ごとに、前記シリコン縁部(13)に結合されていて且つ複数の梁(4)によって支持されている
1つの薄膜(12)であって、前記薄膜(12)と前記梁(4)との間の少なくとも1つのスリット(7)と、前記薄膜(12)と前記シリコン縁部(13)との間の少なくとも1つのスリット(7)と、前記梁(4)と前記シリコン縁部(13)との間の少なくとも1つのスリット(7)とを有する前記絶縁層(10′)から成る1つの薄膜(12)が、前記シリコン基板(3)内の複数の窪み部(8)のうちの対応する1つの窪み部(8)の上に存在し、
前記複数の窪み部(8)が、前記シリコン基板(3)を貫通して複数の前記薄膜(12)まで延存し、
それぞれの前記画素(14)ごとに、複数のサーモ素子(3′)の複数の冷接点(5)が、1つのシリコン製ヒートシンク(9)上の前記シリコン縁部(13)に存在し、これらのサーモ素子(3′)の複数の温接点(2)が、前記薄膜(12)に存在する当該熱赤外線センサアレイにおいて、
前記赤外線を感知する複数の画素(14)が、直線アレイ状に又は格子アレイ状に前記シリコン基板(3)上に存在する前記絶縁層(10′)上に構成されていて、前記窪み部(8)が、それぞれの薄膜(12)の下の前記シリコン基板(3)内で前記CMOSスタック(10)の下の前記絶縁層(10′)まで貫通エッチングされていて、
前記複数の画素(14)が共通に、1つの空洞(20)を前記CMOSスタック(10)の上の内側に有し、キャップ状に形成された1つのキャップウェハ(1)と前記複数の画素(14)の下の複数の前記窪み部(8)又は空洞(21)を密封する1つのベースウェハ(11)との間に配置されていて、
減圧密封式に減圧ガスを閉じ込めてパッケージを形成するように、前記キャップウェハ(1)が、前記シリコン基板(3)を伴う前記CMOSスタック(10)に接合材(19)によって互いに接合されていて、且つ前記ベースウェハ(11)が、前記シリコン基板(3)に接合材(19)によって互いに接合されていて、
1つのゲッター剤(18)が、いずれか1つの前記薄膜(12)の下の1つの窪み部(8)内に、又は少なくとも前記ベースウェハ(11)上に、又は前記ベースウェハ(11)内の1つの空洞(21)内に、又は前記キャップウェハ(1)内の1つの空洞(20)内に配置されていることを特徴とする熱赤外線センサアレイ。
【請求項2】
前記キャップウェハ(1)は、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛、カルコゲン化物、フッ化バリウム又はポリマーを含む赤外線透過性材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項3】
前記ベースウェハ(11)は、シリコン又はガラス又は金属材料から成ることを特徴とする請求項1に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項4】
アルミニウム、金、銀又は窒化チタンを含む材料から成る全面に実装された又はパターン化された反射層(17)が、前記ベースウェハ(11)上に存在することを特徴とする請求項3に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項5】
予め設定されている波長範囲内にある赤外線を吸収する吸収層(6)が、前記薄膜(12)の中央部分上と前記梁(4)上とに存在することを特徴とする請求項1に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項6】
前記キャップウェハ(1)は、測定対象物に面した外面上と前記空洞(20)を有する内面上とに赤外線を透過する反射防止層又はフィルタ層を有することを特徴とする請求項1及び2に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項7】
前記赤外線を透過する反射防止層は、低域通過特性又は帯域通過特性を有することを特徴とする請求項6に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項8】
前記ベースウェハ(11)は、吸収層で広範囲に被覆されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項9】
前記赤外線を感知する複数の画素(14)は、サーモパイル、ボロメータ又は焦電型センサとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項10】
前記画素(14)は、複数のサーモ素子を有するサーモパイルとして、重なり合っているが、反対にドープされたポリシリコン、アモルファスシリコン層、SiGe又はその他の熱電材料のような2つの半導体材料から成ることを特徴とする請求項9に記載の熱赤外線センサアレイ。
【請求項11】
それぞれの画素(14)が、1つの放射線コレクタ(16)を有し、この放射線コレクタ(16)は、1つの支持部を介してそれぞれの前記薄膜(12)の中央部分に接合されていて、この放射線コレクタ(16)は、前記キャップウェハ(1)の前記空洞(20)内に存在することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の熱赤外線センサアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンマイクロメカニクスで製造された赤外線を感知する少なくとも1つの画素と、1つのシリコン基板内の、シリコン縁部によって包囲されている熱絶縁性の1つの窪み部と、薄い複数の梁によって当該シリコン縁部に接合されている1つの薄膜と、を有するウェハレベルパッケージ内の熱赤外線センサアレイに関する。この場合、複数のスリットが、当該薄膜と当該梁と当該シリコン縁部との間に存在する。
【背景技術】
【0002】
赤外線サーモパイルセンサ及び赤外線サーモパイルセンサアレイが、様々な種類及び構造で周知である。多くの場合、シリコンマイクロメカニクスで基板上に製造されたサーモパイルセンサは、薄膜技術で製造されたサーモ素子が存在する薄膜から成る。シリコン縁部(支持体)によって包囲されている1つの空洞が、当該基板内で当該薄膜の下に存在する。長く延在した複数のサーモパイル素子としての複数のサーモ素子が、経路によって互いに接合されている「温」接点を一方の端部に有し、「冷」接点を他方の端部に有する。この場合、当該「温」接点は、当該薄膜の中央部分上又は中央部分内に存在し、当該「冷」接点は、ヒートシンクとして使用される当該シリコン縁部上に存在する。
【0003】
長くて狭い複数の梁(ウェブ)が、当該シリコン縁部と当該薄膜との間に存在する。これらの梁(ウェブ)は、当該薄膜(吸収層)の中央部分を当該ヒートシンク(それぞれの画素のシリコン縁部)に接合し、これらの梁(ウェブ)は、1つ又は複数のサーモ素子を有する。この場合、これらのサーモパイル素子の経路が、これらの梁上に延在する。これらの梁を当該中央部分又は1つの画素のシリコン縁部、すなわち当該ヒートシンクから分離する複数のスリットが、これらの長い梁の両側に存在する。
【0004】
赤外線の大部分が、当該薄膜の中央領域内で吸収される。特に高い空間分解能を有するアレイの場合、それらの画素は小さく、それらのスリットは非常に狭い。当該センサのフィルファクタ(Fuellgrad)を向上させて、より多い赤外線をより広い面積によって吸収できるようにするため、国際公開第2013/120652号パンフレットに記載されているように、赤外線スクリーンが、当該薄膜又は当該画素の上に掛け渡されてもよい。フィルファクタは、その画素自体の大きさに対する当該吸収面積の大きさの比を意味する。
【0005】
当該複数の梁上の複数のサーモ素子が、当該ヒートシンク(シリコン縁部)の比較的近くに存在するので、熱のより多くの部分が、これらのサーモ素子間に存在するガスを通じて当該ヒートシンクに向かって流入し得る。その結果、信号損失が生じる。当該信号損失に対抗するため、通常は、サーモパイル赤外線アレイセンサの減圧密封が試みられる。
【0006】
Arndt,M.and Sauer,M.“Spectroscopic”,Proc.IEEE Sensors 2004,Vienna,2004,vol.1,252-255に記載の文献では、例えば表面マイクロメカニクスで製造されるいわゆる封着されたサーモパイルセンサが公知である。この場合、薄膜内の複数のスリットが、当該薄膜の下に1つの空洞を製造するために使用される。この空洞は、これらのスリットを異方性エッチングすることによって製造される。この場合、当該薄膜の下のシリコンだけが、エッチング液でエッチングされるように、周囲の電子装置を保護することが必要である。この配置にさらに接合されるウェハが、気密封止(ハーメチックシール)された封着を施すために必要になる。当該封着なしでは、熱が、大気に再び放出され、この空洞を包囲しているシリコン側壁にも放出されるであろう。当該封着のために、この熱は、当該ガスを通じてもはや放出し得ない。
【0007】
米国特許第8519336号明細書では、赤外線受信機が1つの反射層の上に存在する構造が提唱されている。評価回路が、この反射層の下にある回路上に存在する。ここには、3つのシリコン基板(ウェハ)が統合されているシステムが存在する。当該必要な受信機は、減圧され且つ密封された窪み部の上の1つのサーモパイルから成る。この窪み部は、当該受信機のすぐ近くに存在する。
【0008】
さらに、例えば金又はアルミニウムのような反射材から成る1つの反射層が、当該受信機の下に存在する。その結果、検出の新たな可能性が提供されるように、最初に当該受信機で検出されなかった赤外線が、反射され当該受信機に再び向かって集束される。
【0009】
検出装置が、当該評価回路に電気接続される必要があることが分かる。当該電気接続は、例えば貫通接触(Si貫通電極)によって解決され得る。しかし、このバリエーションは、調整時に高い精度を必要とする。何故なら、電気接続を実際に実行できるようにするためには、複数のウェハが、重なり合って非常に正確に位置合わせされる必要があるからである。
【0010】
中国特許出願公開第103148947号明細書には、サーモパイル検出装置の応答速度を向上させるウェハレベルパッケージ構造が記載されている。このため、サーモパイルパターンが、フリップチップ技術によってPCB(プリント回路基板)上に実装される逆さにされたシリコンウェハ上に存在する。当該サーモパイルパターンの温接点が、薄膜上に存在し、サーモ素子を介して冷接点に接続されている。透過した赤外線の一部を当該薄膜に向けて再び戻り反射させ、当該赤外線の一部を新たに検出できるようにするため、赤外線反射層が、当該PCB上に存在する。
【0011】
この配置の場合、当該シリコンウェハ自体のシリコンが、レンズとして使用される。このような構造は、主として、センサ(サーモパイルパターン)に対して比較的近くで温度を測定するのに適するであろう。何故なら、離れた物体は、当該レンズの短い焦点のために検出するのが困難であり得るからである。
【0012】
さらに、米国特許第2008/0128620号明細書には、接合された3つのウェハから成るシステムが記載されている。当該システムの場合、複数のサーモパイルが、別の2つのウェハ間の薄くされた1つのウェハ上に存在し、当該上のウェハと当該下のウェハとがそれぞれ、これらのサーモパイルを包囲している1つの窪み部を有する。この配置の場合、1つのシリコンベースが、当該サーモパイル用に当該下のウェハ内に1つの窪み部をエッチングすることによって当該下のウェハ内に提供される。ただ1つの薄膜が存続されるように、当該中央の第2ウェハが薄くされる。電子装置を接続されている当該サーモパイルが、この薄膜上に実装される。この薄膜が、当該シリコンベース上に接合された後に、-上のウェハである-半導体材料から成るキャップが、当該薄膜上に接合される。
【0013】
このような配置の欠点は、当該サーモパイルが当該薄くされたウェハ上に明らかに事後的に実装される点に見て取れる。当該実装は、非常に経費がかかる。
【0014】
ここでは、当該サーモパイルは、2つの窪み部間のスリット又は開口チャネルなしに当該薄膜上に実装される。さらに、当該サーモパイルの周りの減圧が、ガスを通じた熱伝達を回避するために必要である。さらに、当該減圧を発生させるためには、ゲッター剤が、2つの窪み部内で必要である。その結果、コストが非常にかかる。
【0015】
CMOS工程に対するこの製造工程の互換性が、信号処理に対して制限され、経費の掛かる製造方法を必要とする。
【0016】
欧州特許出願公開第2172755号明細書は、前面上の帯域通過フィルタを有する赤外線センサと減圧空洞とに関する。この減圧空洞内には、温度センサが、この赤外線センサの上に予め設定されている間隔をあけて存在する。これは、当該空洞の上面である。
【0017】
さらに、欧州特許出願公開第2172755号明細書には、1つのウェハによる解決策が記載されている。このウェハの開口部が、当該センサの下の傾斜した側壁を有して当該完全な基板ウェハにわたって形成されている。この開口部を気密密封するため、或る種のベースウェハが使用される。傾斜した窪み部の食刻又は湿式化学エッチングによる当該気密封止のこの解決策は、個別素子センサにとっては十分であるが、多数の個別センサ/画素を有するサーモパイルセンサアレイにとっては、センサの面積又は焦点面アレイ(FPA)の面積が非常に大きくなる。しかし、その結果、付随する光学系のチップ自体のコストも増大する。当該ウェハの後面上のマスクとその前面上の薄膜との間の必要なオフセットが、多数の画素の小型化された配置を困難にする。したがって、400μm未満のdを有する小さい画素は製造不可能である。
【0018】
当該試みようとする小型化は、当該センサ領域又はFPA領域を大きくすることによって、専ら画素数を少なくすることによって、すなわち光学画像を劣化させることによって可能であろう。
【0019】
米国特許第7180064号明細書では、赤外線センサパッケージが、薄膜を外部の影響から保護するために使用される。この場合、当該サーモパイルチップでは、当該薄膜を介した温接点からシリコン製ヒートシンクへの熱伝達を低減し得る穿孔が、当該薄膜内に存在しない。さらに、当該センサ装置の減圧密封に関する記載がない。その結果、確かに、通常の大気下での製造が、明らかに少ない経費で可能でるが、他方では小さい画素の場合に、十分に高い信号分解能が得られない。複数のシリコン素子間の接合は、パッケージを気密封止するとは限らないし、又は、ゲッター剤を上の窪み部と下の窪み部とに互いに別々に設置する必要がある。その結果、コストが増大するであろう。
【0020】
米国特許出願公開第2012/0319303号明細書は、高い誘電率を有するガスの影響の下での合金によるマイクロメカニクス的なシステムのための気密封止に関する。
【0021】
さらに、米国特許第5323051号明細書には、半導体ウェハレベルパッケージが記載されている。この半導体ウェハレベルパッケージの場合、ウェハが、個々のチップにダイシングされる前に、封着ウェハが、パターンを有する実際のウェハ上に実装される。
【0022】
米国特許出願公開第2006/0016995号明細書には、キャップを有するパッケージ内の微細構造の赤外線センサが記載されている。当該キャップは、キャップチップと呼ばれ、当該キャップは、焦点合わせのために組み込まれたレンズ面を有する。しかしながら、このような解決策は、単一素子センサのより大きい画素のためだけに適する。
【0023】
米国特許出願公開第2005/0081905号明細書は、窪み部の上の薄膜を有するサーモパイル赤外線パッケージに関する。当該サーモパイル赤外線パッケージの場合、同様に、キャップが、当該封止のために基板上に実装される。当該薄膜の下の窪み部の封止は必要でないが、そこに存在するガスによる当該薄膜の下の熱伝達が起こり得り、当該薄膜の上の窪み部の封止の実際の効果が失われる。
【0024】
最後に、独国特許第102004020685号明細書には、ゲッター層を有する赤外線センサが記載されている。当該赤外線センサの場合、窪み部が、穿孔された薄膜領域の真下に存在する。この装置が、キャップウェハによって覆われる。
【0025】
要約すると、CMOSコンパチブルな工程が提供可能であり、反射層をセンサ画素の下の空洞上に簡単に設けることを可能にし、個々のゲッター剤を設置することによって気密にされ得る、小さい複数の画素を有する高分解能の赤外線センサアレイが、これらのいずれの明細書にも記載されていないことが認識され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】国際公開第2013/120652号パンフレット
【文献】米国特許第8519336号明細書
【文献】中国特許出願公開第103148947号明細書
【文献】米国特許第2008/0128620号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2172755号明細書
【文献】米国特許第7180064号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0319303号明細書
【文献】米国特許第5323051号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0016995号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0081905号明細書
【文献】独国特許第102004020685号明細書
【非特許文献】
【0027】
【文献】Arndt,M.and Sauer,M.“Spectroscopic”,Proc.IEEE Sensors 2004,Vienna,2004,vol.1,252-255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
それ故に、本発明の課題は、CMOSコンパチブルな簡単なセンサウェハ自体のためのプロセス技術によって、及びウェハ面での減圧密封によって、高感度のサーモパイル赤外線アレイセンサを小さい複数の画素を有するウェハレベルパッケージ内に提供することにある。当該高感度のサーモパイル赤外線アレイセンサを使用することで、当該減圧密封のために通常使用されるゲッター剤をキャップウェハのフィルタ層から空間的に分離して設置することがさらに可能である。
【課題を解決するための手段】
【0029】
当該本発明の課題は、請求項1に記載の:
シリコンマイクロメカニクスでウェハレベルパッケージ内に製造された赤外線を感知する複数の画素(14)を有する熱赤外線センサアレイであって、
前記複数の画素(14)は、1つの絶縁層(10′)上に形成されていて、1つのシリコン縁部(13)が、この絶縁層(10′)を支持し、1つのシリコン基板(3)上の1つのCMOSスタック(10)が、この絶縁層(10′)とこのシリコン縁部(13)とを含み、
それぞれの前記画素(14)ごとに、前記シリコン縁部(13)に結合されていて且つ複数の梁(4)によって支持されている1つの薄膜(12)であって、前記薄膜(12)と前記梁(4)との間の少なくとも1つのスリット(7)と、前記薄膜(12)と前記シリコン縁部(13)との間の少なくとも1つのスリット(7)と、前記梁(4)と前記シリコン縁部(13)との間の少なくとも1つのスリット(7)とを有する前記絶縁層(10′)から成る1つの薄膜(12)が、前記シリコン基板(3)内の複数の窪み部(8)のうちの対応する1つの窪み部(8)の上に存在し、
前記複数の窪み部(8)が、前記シリコン基板(3)を貫通して複数の前記薄膜(12)まで延存し、
それぞれの前記画素(14)ごとに、複数のサーモ素子(3′)の複数の冷接点(5)が、1つのシリコン製ヒートシンク(9)上の前記シリコン縁部(13)に存在し、これらのサーモ素子(3′)の複数の温接点(2)が、前記薄膜(12)に存在する当該熱赤外線センサアレイにおいて、
前記赤外線を感知する複数の画素(14)が、直線アレイ状に又は格子アレイ状に前記シリコン基板(3)上に存在する前記絶縁層(10′)上に構成されていて、前記窪み部(8)が、それぞれの薄膜(12)の下の前記シリコン基板(3)内で前記CMOSスタック(10)の下の前記絶縁層(10′)まで貫通エッチングされていて、
前記複数の画素(14)が共通に、1つの空洞(20)を前記CMOSスタック(10)の上の内側に有し、キャップ状に形成された1つのキャップウェハ(1)と前記複数の画素(14)の下の複数の前記窪み部(8)又は空洞(21)を密封する1つのベースウェハ(11)との間に配置されていて、
減圧密封式に減圧ガスを閉じ込めてパッケージを形成するように、前記キャップウェハ(1)が、前記シリコン基板(3)を伴う前記CMOSスタック(10)に接合材(19)によって互いに接合されていて、且つ前記ベースウェハ(11)が、前記シリコン基板(3)に接合材(19)によって互いに接合されていて、
1つのゲッター剤(18)が、いずれか1つの前記薄膜(12)の下の1つの窪み部(8)内に、又は少なくとも前記ベースウェハ(11)上に、又は前記ベースウェハ(11)内の1つの空洞(21)内に、又は前記キャップウェハ(1)内の1つの空洞(20)内に配置されていることによって解決される。
【0030】
本発明のその他の構成は、付随する従属請求項に記載されている。
【0031】
赤外線センサの感度は、特に、当該赤外線センサを包囲し、ガスを介した熱伝達にも依存し、減圧密封によって向上され得る。減圧密封されたハウジング内では、ガスを介した熱伝達による信号損失が存在しない。しかしながら、取付技術及び接合技術における従来の減圧ハウジングは、必要な減圧密封を達成するためには多くの材料を必要とし、コストがかかる。しかも、通常のチップ用接着剤は、ガス漏れ及び漏洩性に起因してコスト要因及び問題要因になり得る。
【0032】
これに対して、ウェハ面での封着及び減圧封止が、低コストに且つサイズに合わせて実現され得る。必要な減圧密封が、サーモパイルセンサウェハをキャップウェハと下のベースウェハとによって封着することによって達成される。
【0033】
本発明は、シリコンマイクロメカニクスで製造され、少なくとも1つの小さい高感度サーモパイル素子(画素)を有するサーモパイル赤外線センサチップに関する。当該サーモパイル赤外線センサチップの場合、薄膜の下の熱絶縁性の窪み部(空洞)が、犠牲層をエッチングすることによって前面からではなくて、ウェハの後面から形成される。
【0034】
この場合、当該チップは、キャップと下ベースとによって減圧封止される。当該キャップが、減圧下で曲がることを回避するため、当該キャップが、特定の最小厚さ(例えば、数百マイクロメートル)を有しなければならない。しかし、他方では、当該キャップでの赤外線の吸収を僅かに抑えるため、当該キャップは、厚すぎてもよくない。
【0035】
当該薄膜は、上面から下面へのガスの交換を可能にする少なくとも1つの開口部(例えば、スリット)を有する。長期安定な気密性(例えば、減圧)を確保するため、好ましくは、ゲッター剤が、当該両面(キャップウェハ又はベース密封部)の一方の面上に又は当該両面上に設置される。
【0036】
当該ゲッター剤が、当該ベース密封部上だけに存在する一方で、当該キャップウェハが、光学的な反射防止層を有することが、特に好ましい。反射防止層とゲッター剤とを当該キャップウェハ上に同時に実装すると、多くの場合、技術的な問題を引き起こす。
【0037】
当該サーモパイル高感度個別画素は、好ましくはサーモパイルパターンを有するが、例えば焦電型センサ又はボロメータのような別の種類のサーモパイル赤外線センサも可能である。
【0038】
当該1つ又は複数の画素の大きさは、400μm未満であり、好ましくは100μm未満である。
【0039】
例示したサーモパイル画素は、ウェハから製造されるシリコンチップから成る。CMOSコンパチブルなマイクロシステム技術の特別な方法では、実際のCMOS工程後に、センサ素子(画素)が、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン又はこれらの組み合わせのような薄い絶縁層上に製造される。前記の絶縁層から成る薄膜が、当該ウェハの後面から窪み部を食刻することによって形成される。温接点と熱電素子とが、当該薄膜上に存在する。梁上のサーモ素子が、当該薄膜の中央部分内の当該温接点と-当該窪み部を包囲する縁部である-シリコン製ヒートシンクとの間に存在する。当該梁は、当該薄膜内のスリットによって当該薄膜の中央部分から絶縁されていて、したがって当該温接点から当該シリコン製ヒートシンクへの熱伝達を減少させる。
【0040】
製造コストを僅かに抑え得るように、ウェハレベルパッケージが、効率的で且つコストを節約する代替として使用される。この場合、サーモパイルセンサが、キャップウェハと下ベースウェハとの間のウェハ接合部で減圧密封される。当該キャップは、画素の近くに窪み部(空洞)を有する。この場合、赤外線を最大の透過でセンサ素子に向けて偏向させるため、当該赤外線を透過させるための反射防止層が、特に当該キャップの両面上に存在する。例えば、特定の波長範囲を遮断するため、当該キャップウェハの片面又は両面上の反射防止層は、フィルタ特性(いわゆる、低域通過フィルタ又は帯域通過フィルタ)を有してもよい。
【0041】
当該スリットが、ガスを交換し得るように、当該複数の個別画素は、それぞれ穿孔されている複数の薄膜から成る。ウェハを食刻して後側に延在する窪み部が、当該複数の個別画素の下に存在する。このとき、こうして形成された薄膜は、シリコン製ヒートシンクから分離されていて、薄いウェブ(梁)だけを介してこのシリコン製ヒートシンクに接合されている。高い画素密度を達成するため、この窪み部は、理想的には、垂直な側壁を有する。この窪み部は、シリコンディープエッチング(いわゆる、DRIE工程)によって後側から製造され得る。これは、簡単で且つCMOSコンパチブルなバリエーションである。当該バリエーションの場合、当該前面が、その活性領域によってほぼ保護されている。これにより、当該前面の経費のかかる保護が不要である。Kr、Arのような小さい熱伝導率のガスで充填されている場合でも、当該垂直な側壁は、ヒートシンクに向かうより長い経路長を提供する。
【0042】
当然に、この窪み部を製造するためには、別の種類の製造方法も可能である。
【0043】
複数の絶縁層と組み込まれたデュアル・ポリシリコン・サーモ素子とから成る1つの層が、当該薄膜上に存在する。
【0044】
別の実施の形態では、高いゼーベック効果を有する材料から成るサーモ素子が、薄膜スタック上に存在する。アモルファスシリコン層及びシリコン-ゲルマニウム層並びに特別にインプラントされた層が可能である。
【0045】
当該キャップは、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛、カルコゲン化物、フッ化バリウム又はポリマーを含む赤外線透過性材料から成り得る。十分な光学特性の要求を満たすためには、赤外線範囲内で十分な透過性を有するガラス基板又は別の有機材料若しくは無機材料のような別の材料も可能である。
【0046】
当該キャップ上に存在する赤外線コーティングは、様々な材料と、検出すべき赤外線範囲の要求に適合する材料接合部とから成り得る。
【0047】
当該ベースウェハは、シリコン又はガラスのような罰の材料から成り得る。理想的には、透過した赤外線を薄膜の中央部分に向けて戻り反射させる反射層が、当該ベースウェハ上にセンサ向きに存在する。この層は、センサウェハと一緒にする前に下ベースウェハ上に簡単に実装され得る。
【0048】
アルミニウム、金、銀、窒化チタンのような金属及びその他の材料が可能である。当該金属層は、(薄膜の真下で)全面に又はパターン化されて設けられ得る。
【0049】
センサチップをキャップウェハとベースウェハとによって密封する前に、ゲッター剤が、特に1つの面(例えば、ベースウェハ)上に設置される。当該ゲッター剤は、スリットのために当該キャップウェハの下の空洞にも到達でき、持続的な気密性を提供する。この製造は、簡単であり且つCMOSに対して非侵襲的である。さらに、これにより、当該ゲッター剤は、フィルタ層に接触しない。
【0050】
以下に、本発明を複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】3つの個別画素を有する本発明の封着された1つのサーモパイルセンサアレイの基本構造の断面を示す。
【
図2】1つの個別センサの構造のバリエーションの断面を示す。
【
図3】重なり合っている複数のポリシリコン配線を有する本発明の1つの画素の一部の平面を示す。
【
図4】4つの画素と複数の薄膜の中心部分上のそれぞれ1つの放射線コレクタとを有する本発明の1つの赤外線サーモパイルセンサの構造のバリエーションを示す。
【
図5】1つのウェハレベルパッケージ内の本発明の1つの赤外線サーモパイルセンサを示す。
【
図6】ベース密封部上に1つのゲッター剤を有する本発明の1つの赤外線サーモパイルセンサの構造のバリエーションを示す。
【
図7】キャップとベース密封部と
による本発明の1つの赤外線サーモパイルセンサウェハの減圧密封状態を示す。
【
図8】1つのキャップとベース密封部内の1つの空洞と
による本発明の1つの赤外線サーモパイルセンサウェハの減圧密封状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、キャップウェハ1と、測定対象物から赤外線を受信するための列を成した3つの個別画素14を有する気密封止されたサーモパイルセンサアレイとを備え、当該サーモパイルセンサアレイがベースウェハ11上に配置されているシリコン基板3上の下絶縁層を有するCMOSスタック10から成る、本発明のウェハレベルパッケージ(WLP)の原理構造を示す。それぞれの個別画素14が、シリコン基板3内の窪み部8の上の「温」接点2を有する薄膜12と赤外線サーモパイルパターンと薄膜12をシリコン製ヒートシンク9上の縁部13に接合する梁4とから成る。薄膜12は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン又はこれらの組み合わせのような下絶縁層10′とこの下絶縁層10′の上に存在するCMOSスタック10とから成る。
【0053】
赤外線を感知する個別画素14は、ボロメータ又は焦電型センサとしても構成され得る。
【0054】
キャップウェハ1は、CMOSスタック10の上の内側に3つの個別画素14を包囲する空洞20を成すようにキャップ状に形成されている。
【0055】
また、当該サーモパイルパターンに属する「冷」接点(図示せず)が、シリコン製ヒートシンク9上に存在する。評価電子装置13′が、縁部13上に配置され得る。薄膜12と梁4とが、スリット7によって縁部13又はシリコン製ヒートシンク9から分離されている。シリコン基板3の全体にわたって延在する垂直又はほぼ垂直な側壁による窪み部8が、薄膜12の下に存在する。窪み部8の当該垂直な側壁によれば、傾斜した側壁によるバージョンの場合よりも大きい経路長が、最初の照射時に薄膜12を透過した赤外線のために可能である。
【0056】
キャップウェハ1及びベースウェハ11はそれぞれ、シリコンから成る。この場合、ガラスのような別の材料又はポリマー材料のような炭素を含む基板も可能である。CMOSスタック10内のスリット7を通過する赤外線を薄膜12の中央部分に戻り反射させるため、ベース11は、金属材料から成ってもよい。
【0057】
予め設定されている波長範囲内にある測定対象物からの赤外線を吸収する吸収層6が、薄膜12の中央部分上とビーム4上とに存在する。
【0058】
気密封止するためには、シリコン製ヒートシンク9とCMOSスタック10とから成るセンサウェハをキャップウェハ1とベースウェハ11との間で統合することが可能である。ベースウェハ11には、薄膜12の下の窪み部8を気密に閉鎖するという機能がある。
【0059】
当該気密封止は、取付技術及び接合技術から公知のピックアンドプレース技術を用いて、小さいキャップを表側のチップ面と裏側のチップ面とに設けることによっても達成され得る。
【0060】
ベースウェハ11は、1つの窪み部8を閉鎖するために必要であり、又は列を成すか若しくは複数の個別画素14から成るマトリックスパターンを成す複数の個別画素14の場合は複数の窪み部8を閉鎖するために必要である。その一方で、分子が、薄膜12内のスリット7を通じてこの薄膜12の下の空間からこの薄膜12の上の排気空間内に達し、気密封止が無効になるであろう。
【0061】
薄膜12の中央部分上の敏感な構成要素と梁4上の構成要素とからシリコン製ヒートシンク9又はヒートシンクとして機能するキャップウェハ1とベースウェハ11とから成るハウジングへの対流をできるだけ少なく保持するため、当該サーモパイルセンサアレイは、空気又は窒素の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有するガス又はガス混合物で充填されている。
【0062】
当該ハウジング内に閉じ込められている媒体のこの小さい熱伝導を達成するため、理想的には、通常の大気圧に比べて著しく減少した内部圧力を有するガス(例えば、減圧ガス(Gas-Vakuum))が使用される。
【0063】
当該サーモパイルセンサアレイの製造によってパッケージ内に存在する邪魔なガス要素を捕獲、すなわち吸着するためのゲッター剤を使用することが、当該減圧を確保するために有益になる。スリット7による薄膜12の穿孔に起因して、好ましくは、当該パッケージ内のいずれかの場所に存在し得るゲッター剤が1つだけで済む。このため、コストが、薄膜12内にスリット7を有しないバージョンに比べて低下する。
【0064】
図2は基本的に
図1による1つの個別画素14に相当するウェハ構造体内の1つの個別素子センサの構造のバリエーションを示す。この個別画素14の場合、キャップウェハ1とベースウェハ11との間の全ての中空空間の気密封止を得るため、それぞれ1つのキャップウェハ1が、サーモパイルセンサ又はサーモ素子3′を有するシリコン基板3の上に配置されていて、ベースウェハ11が、サーモパイルセンサ又はサーモ素子3′を有するシリコン基板3の下に配置されている。キャップウェハ1(キャップ)は、例えば取付技術及び接合技術の方法であるピックアンドプレース技術でウェハ上に取り付けられてもよい。
【0065】
1つ又は複数のサーモ素子が、薄膜12の中央部分上と梁4上とに存在する。これらのサーモ素子は、CMOS工程中に製造され得る。この場合、後の取り付けも可能である。当該後の取り付けは、熱電材料が当該CMOS工程中に提供できない場合である。
【0066】
好ましくは、反射層17が、ベースウェハ11の上側に、すなわち当該センサに面する側に存在するか、又は、当該ベース自体が反射性である。さらに、ここには、ゲッター剤18が、長期安定な減圧を維持するために存在する。当該複数の個別素子センサの完成後に、当該ウェハが、従来の分離手段によって分離される。
【0067】
図3は、スリット7とシリコン製ヒートシンク9上に存在する冷接点5とを有する本発明の1つの画素の一部を示す。複数のポリシリコン配線15,15′間(上のサーモ素子と下のサーモ素子との間)の熱伝達を阻止するため、減圧ガスが、スリット7内に存在する。これらのポリシリコン配線15,15′は、薄膜12上に重なり合って存在する。特定のゼーベック係数を有する下のポリシリコン配線15上には、反対のゼーベック係数を有する反対にドープされたポリシリコン配線15′が存在する。
【0068】
このため、画素14ごとに生じる温度差に対して最大信号電圧を達成するため、ポリシリコン、又はn導電層とp導電層とを有するアモルファスシリコン層、及び原理的には、n導電層とp導電層とを有する高い熱電性能指数を有する材料が、当該目的のための材料として考慮される。それぞれの画素14が、1つのサーモ素子又は直列に接続された多数のサーモ素子を有し得る。
【0069】
これらの画素14のための評価電子装置13′の一部が、これらの画素14の周り又は外側に配置され得る。
【0070】
図4は、フィルファクタ(Fuellfaktor)を向上させるために薄膜12の中央部分上ごとに4つの画素14と放射線コレクタ16とを有する本発明のサーモパイルセンサの構造のバリエーションを示す。これらの放射線コレクタ16は、キャップウェハ1の空洞20内に存在する。放射線コレクタ16からヒートシンク9又はキャップ1までの間隔が、非常に狭くし得るので、当該センサチップの減圧密封が非常に有益に作用する。金属導線及び評価電子装置(電源、スイッチ、増幅器、アナログ・デジタル変換器、又はこれらの一部)が、複数の画素間に存在する。
【0071】
放射線コレクタ16は、入射する赤外線に対して可能な限り高い吸収係数を達成するために理想的には1つ又は複数の層から成る。温接点2が、薄膜12の中央部分に設置されているか又は放射線コレクタ16を支持し、この放射線コレクタ16をこの薄膜12に接合する支持部に直接に設置されている。したがって、放射線コレクタ16から薄膜12の中央部分までの熱流が、迂回なしに直接に検出され得る。
【0072】
シリコン基板3が、薄膜12まで、すなわちCMOSスタック10の下の絶縁層まで完全に貫通エッチングされているように、薄膜12の中央部分の下に存在するシリコン基板3内の窪み部8が、エッチング又は別の方法によって後側から製造される。このため、理想的には、シリコンディープエッチング(深堀りRIE、DRIE)の工程が使用される。
【0073】
さらに、ゲッター剤18と反射層17とが、窪み部8内に存在する。この反射層17は、当該センサに面した側のベース密封部11上に配置されている。
【0074】
図5は、1つのウェハレベルパッケージ内の本発明の1つのサーモパイルセンサの俯瞰図である。
【0075】
図6には、ベース密封部11上にゲッター剤18を有する本発明の1つのサーモパイルセンサの構造のバリエーションが示されている。
【0076】
個々の画素14が、それぞれ穿孔されている薄膜12から成る。したがって、ガスの交換が、当該スリット7によって実行され得る。それぞれ1つの窪み部8が、当該個々の画素14の下に存在する。当該窪み部8は、シリコンディープエッチング(DRIE工程)によって後側から食刻され、ウェハ(シリコン基板3)に通じている。このとき、これによって生じる薄膜12が、シリコン製ヒートシンク9から分離されている。窪み部8は、理想的には、高い画素密度を達成するために垂直な側壁を有する。
【0077】
特に、それ自体公知のゲッター剤18も、ベースウェハ11上に設置される。当該ゲッター剤18は、密封後の減圧の安定性を長期間にわたって確保する。当該ゲッター剤18は、当該画素の下に存在するので、入射する赤外線が妨害されない。ガスの交換又は減圧が、当該穿孔された薄膜12によって確保される。当該ゲッター剤の大きさ及び種類に応じて、このゲッター剤は、原理的には、密封された領域内のいずれかの場所、例えば上のキャップ1の下又は当該センサ領域の隣に存在し得る。
【0078】
当該画素を支持する実際のセンサウェハによってキャップウェハ1とベースウェハ11とを密封することは、それ自体公知の様々な方法によって実行され得る。陽極接合、ガラスフリット接合又ははんだ付け若しくは溶接のような方法が、当該方法に属する。
【0079】
図7には、ウェハ接合のバリエーションが概略的に示されている。ウェハボンダーを使用することで、当該3つのウェハ(キャップウェハ1、ベースウェハ11、このキャップウェハ1とこのベースウェハ11との間の、シリコン製ヒートシンク9と薄膜12とそれぞれのCMOSスタック10とを有するシリコン基板3から成るセンサウェハ)は、当該ウェハ上に塗布される適切な接合材19によって一体化される。ガラスフリット、はんだ及びその他の溶接可能な材料が、可能な接合材料である。直接の(陽極)接合も可能である。その結果、この場合には、接合材19が省略され得る。
【0080】
複数の反射性金属層17が、ベースウェハ11の内面上に形成される。当該形成は、例えば、蒸着、化学蒸着(CVD)又はスパッタリングによって実行され得る。これらの金属層は、全面に実装されてもよく、画素14ごとにパターン化されてもよい。さらに、光学フィルタ層22又は23が、キャップウェハ1の上面又は下面に存在する。これらのフィルタ層22,23は、キャップウェハ1の光透過を改善するために使用される。これらのフィルタ層22,23は、反射防止層でもよく、又は低域通過特性若しくは帯域通過特性を有し、赤外線の特定のスペクトル成分を遮断し得る。
【0081】
基本的には、
図1~6による本発明の別の解決策の場合でも、ゲッター剤18、反射層17並びにフィルタ層22及び23が使用され得る。
【0082】
しかしながら、特定の場合(例えば、非常に小さい中心距離と隣の画素に対して非常に薄い側壁とを有する複数の画素14の場合)には、例えばスリット7を通過して入射する散乱放射線を当該ベースで反射させず、その帰途で薄いシリコン側壁を透過して隣の画素に到達せず、これにより画像鮮明度を劣化させない非反射性層が、ベースウェハ11上に形成されていることが有益であり得る。
【0083】
さらに、単一の素子センサ又は少ない画素数を有するアレイに対して、個々の画素14の窪み部8と少なくとも同じ大きさである空洞21をベースウェハ11内に当該センサ向きに設けることが可能である。それぞれ1つの反射層17とゲッター剤18とが、この空洞21内に存在する。ゲッター剤18が、それぞれの画素14の下に存在する必要がないことが利点である。
【0084】
画素領域の全体、すなわちアレイの全体の下部がくり抜かれているように、空洞21が、ベースウェハ11内に形成されてもよい。この場合には、空洞21を有するベースウェハ11は、空洞20を有するキャップウェハ1に対応し、専ら一様に鏡像的に組み立てることができる。したがって、同様な部品が、キャップウェハ1とベースウェハ11のために製造され使用され得る(
図8)。反射層17は、空洞21の全体にわたって延在し得る。
【0085】
当該設置されたゲッター剤18が、十分に高い密封性をもたらし得る点が重要である。しかしながら、このバリエーションは、500個より多い画素を有する光分解能のアレイにとっては望ましくない。何故なら、冷接点又は電子装置で発生する熱が、これらの画素間のシリコン製ヒートシンク9によってその周囲に有害に放射され得るからであり、これによって、感度に悪影響を及ぼし得るからである。
【0086】
さらに、以下のバリエーションも可能であり且つ図示されていない:
独立した複数のキャップが、キャップウェハ1の代わりにそれぞれのチップのセンサ領域上に別々に取り付けられる。このため、理想的には、ピックアンドプレース方法が使用される。何故なら、当該方法は低コストだからである。さもなければ必要なキャップウェハ1の高精度な調整が省略されることが利点である。
【符号の説明】
【0087】
1 キャップ(ウェハ)
2 温接点
3 シリコン基板
4 梁
5 冷接点
6 吸収層
7 スリット
8 窪み部
9 シリコン製ヒートシンク/ヒートシンク
10 CMOSスタック
10′ 下絶縁層
11 ベース(ウェハ)
12 薄膜
13 縁部
13′ 評価電子装置
14 個別画素
15 ポリ配線
15′ ポリ配線
16 放射線コレクタ
17 反射層
18 ゲッター剤
19 接合材
20 キャップウェハ内の空洞部
21 ベースウェハ内の空洞部
22 フィルタ層
23 フィルタ層