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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】カスタマイズ可能なストーマインサート
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/445 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61F5/445
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018533659
(86)(22)【出願日】2016-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 AU2016051262
(87)【国際公開番号】W WO2017106911
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】2015905416
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518219402
【氏名又は名称】タン,ジェイソン ジット‐サン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】タン,ジェイソン ジット‐サン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0236335(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0110470(US,A1)
【文献】特表2005-519674(JP,A)
【文献】特開平10-028698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/445
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーマを有する患者のための特注ストーマインサートを製造する方法であって、前記方法が、
ストーマおよび周囲皮膚領域をスキャンして、前記ストーマインサートが製造される領域の三次元スキャンを作製するステップ、
スキャンデータが付加製造環境での使用に適しているように、前記三次元スキャンから得られるスキャンデータを操作して前記ストーマおよび周囲皮膚輪郭の三次元モデルをレンダリングするステップ、
前記ストーマインサート用の特注金型が前記ストーマおよび周囲皮膚領域の輪郭を厳密に描写する相補的表面をもたらすように付加製造を用いて前記金型を作製するステップであって、前記金型が、前記ストーマインサートが成型されたとき、前記ストーマインサートの皮膚接触面上に補足的な平行な線、切り込み線、または筋が付けられた表面を生じる、高くなったまたは筋の付いた領域をそこに含んでおり、前記金型が、前記ストーマのサイズに大体一致する柱を含むステップ、ならびに
記金型に生理学的に許容可能な成型可能材料を流し込むこと、前記成型可能材料を所望の固体性に固体化させること、および前記金型から前記特注ストーマインサートを外すことによって前記ストーマインサートを製造するステップであって、得られる特注ストーマインサートが、前記ストーマ内でおよび前記ストーマを囲む皮膚にわたってぴったりとした適合を確実にするように形状化および寸法化されるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
記金型を作製するステップが、付加製造の好ましい形態として3Dプリンティングを用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記柱が、前記ストーマインサートが適合されるストーマよりもわずかに大きく、そのため、前記ストーマインサートが前記金型から外されるときにそれが前記ストーマの断面直径と同様の、またはそれよりわずかに大きい断面直径を有する中央孔を定め、これによって前記ストーマインサートと前記ストーマの間のわずかな摩擦を伴う適合またはわずかに干渉する適合を確実にする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
記得られる特注ストーマインサートが前記ストーマからのヘルニア形成を低下させるために使用されるブラインドプラグ型である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記金型が、前記ストーマインサートに適合されるオストミーバッグまたはパウチの開口と同様の、またはそれよりわずかに大きい断面直径を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金型が、前記ストーマインサートの成型の間に前記ストーマインサートのストーマインサートコアを囲む少なくとも部分的な周囲伸長カラーの包含をさらに可能にするように形状化および寸法化され、成型されたストーマインサートのカラー領域が次に、前記ストーマを囲む領域を少なくとも部分的に十分覆うように形状化および寸法化されて前記ストーマインサート上のオストミーバッグの十分な支えを確実にする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記周囲伸長カラーが、前記患者におけるストーマを囲む領域の輪郭にぴったり従うように形状化または寸法化され、これによって前記ストーマインサートと前記ストーマとの間のぴったりとしたまたは低圧吸引の適合を確実にする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ストーマインサートコアおよび前記周囲伸長カラーが、一体型で成型される、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ストーマインサートコアおよび前記周囲伸長カラーが、非一体型で成型される、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ストーマインサートおよび前記周囲伸長カラーがそれぞれ、異なる物理化学的特性を有する成型可能材料から作製される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ストーマインサートコアが、前記周囲伸長カラーで使用される材料よりも曲げやすくおよび/または弾性的に柔軟である材料から作製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ストーマおよび周囲皮膚領域をスキャニングすることが、表面スキャニング技術を用いて実施される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記表面スキャニング技術が、光学的、X線、レーザー、青色光もしくは白色光3Dスキャニング、LIDAR、光干渉断層法、およびMRIのいずれか1種類以上を含む群から選択される1種類以上の3Dスキャニング技術を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
3Dスキャニングが、前記患者のストーマおよび周囲皮膚表面の幾何学的サンプルの点群を生じるために実施され、これらの点が、次に使用されて、前記ストーマインサート用の金型を3Dプリンティングすることにおける使用のために、前記ストーマおよび周囲皮膚領域の形状を推定できる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記データを操作するステップが、DICOMフォーマットのデータをSTLファイルのような表面レンダリングに変換するソフトを用いてスキャンデータを3Dプリンティングで使用するために適した形態にすることによって実施される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ストーマインサートが、天然ゴム、ラテックス、ネオプレン、ポリ塩化ビニル、ニトリル、合成ポリマー、合成レジン、合成ゴム、アクリルベースポリマー、またはそれらの混合物のいずれか1種類以上を用いて成型される、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ストーマインサートまたは前記金型が、抗微生物化合物で含浸されるまたはコートされる、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ストーマインサートまたは前記金型が、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)などの、抗炎症性の、解熱性の、または鎮痛性の化合物で含浸されるまたはコートされる、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ストーマインサートまたは前記金型が、1種類以上の防臭剤で含浸されるまたはコートされる、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ストーマインサートが、前記インサートを前記ストーマまたは周囲領域に配置するのに役立ち得る低付着性の、生理学的に許容可能な接着剤でコートされるまたは含浸される、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ストーマインサートまたは前記金型が、発汗抑制化合物でコートされまたは含浸されて、前記ストーマインサート下の発汗を制御しかつ前記ストーマの周囲の皮膚の発汗または脂肪分泌排出からの体臭を防止する、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
医薬化合物を加えるときに、前記ストーマの内側またはこの近位にあるストーマインサートのストーマインサートコアが、そのような化合物で含浸され、前記ストーマが大腸開口である、請求項18乃至21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ストーマインサートが、前記ストーマを囲む皮膚が前記インサートを通して目視できて皮膚に炎症が生じているかさもなければ前記ストーマから前記ストーマインサートを最初に取り外さなければ容易には見分けられない損傷または病的状態がもたらされているかどうかを介護者が容易に決定することを可能にするように透明な材料から作製される、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカスタマイズ可能なストーマインサートおよびストーマインサートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次の背景技術の考察は、本発明の理解を容易にすることのみが意図されている。言及される材料のいずれかが、本出願の優先日で一般的知識の一部である、または一部であったという承認または許可は意図されていない。
【0003】
ストーマは中空器官中へと造られる、特に消化管または気管に導く体表面で造られる人工的開口である。これは通常、排出または他の目的のための通路または孔を作るために実施される。そのようなものとして、人工ストーマの良く知られた型は人工肛門であり、それは、糞便または他の排泄物を体から除去することができる、大腸に手術によって造られる開口であり、直腸をバイパスして、オストミーパウチまたは他の収集デバイス中に排出する。これは、前腹壁で切開を通して大腸または結腸の健常端を引き出し、その場所に縫合することによってストーマを形成する外科処置として実施される。この開口は、取り付けられるストーマ器具と連結され、糞便または他の排泄物を体から除くための代替通路をもたらすが、本出願者が認識している従来のシステムは、しばしば漏出、臭気漏洩、およびストーマとオストミーパウチの間の過剰な炎症を引き起こす。
【0004】
この問題の態様を検討することが、本明細書で説明される発明の目的である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一つの態様により、ストーマを有する患者のための特注ストーマインサートを製造する方法が提供され、本方法は、
ストーマおよび周囲皮膚領域をスキャンして、ストーマインサートが製造されるべき領域の三次元スキャンを作製するステップ、
三次元スキャンから得られるスキャンデータを操作して、スキャンデータが付加製造環境での使用に適しているように、ストーマおよび周囲皮膚輪郭の三次元モデルをレンダリングするステップ、
金型がストーマおよび周囲皮膚領域の輪郭を厳密に描写する相補的表面をもたらすように付加製造を用いてストーマインサート用の特注金型を作製すること、および
特注金型中に生理学的に許容可能な成型可能材料を流し込むこと、成型可能材料を所望の固体性に固体化させること、および特注ストーマインサートを金型から外すことによってストーマインサートを製造するステップ
を含み、
得られる特注ストーマインサートは、ストーマ内およびストーマを囲む皮膚にわたってぴったりとした適合を確実にするように形状化および寸法化されている。
【0006】
特注金型を作製するステップは、付加製造の形態として3Dプリントを用いて実施され得る。
【0007】
有利には、金型は従来の市販されている3Dプリンティングポリマーから製造され得、これによってストーマインサートの製造の際の追加費用および複雑性を除く。
【0008】
金型はストーマのサイズに全体的に一致する中央柱を含み得る。中央柱は、本発明の一つの実施形態では、ストーマインサートが適合されるストーマよりもわずかに大きくてよく、それにより、ストーマインサートが金型から外されるときにこれがストーマの断面直径と同様の、またはわずかに大きい断面直径を有する中央孔を定め、これによってストーマインサートとストーマの間のわずかな摩擦を伴う適合またはわずかに干渉する適合を確実にする。
【0009】
特定の実施形態では、金型は中央柱を含まず、得られる特注インサートはストーマからのヘルニア形成を低下させるために使用できるブラインドプラグ型である。
【0010】
金型はオストミーインサートと合わされるオストミーバッグまたはパウチの開口と同様の、またはこれよりわずかに大きい断面直径を有し得る。このようにして、オストミーパウチまたはバッグはストーマに近接して保持され、患者への不快感を最小限にする。
【0011】
有利には、金型はストーマインサートが成型されたとき、ストーマインサートの皮膚接触面上に補足的な平行な線、切り込み線、または筋が付けられた表面を生じる、高くされたまたは筋の付いた領域をそこに含み得る。平行な線、切り込み線、または筋が付けられた表面は、汗、皮脂、および他の体液がストーマから流れ出るのを助け、患者の皮膚に配置されたときに十分な支えを保持しながら領域を乾燥した状態に維持するのを助ける。
【0012】
金型の表面仕上げは、化学的蒸気処理を用いて、平滑化、粗化、もしくは必要なように改善でき、または所望の場合に、ポリテトラフルオロエチレンなどの非付着性もしくは低付着性化合物でコーティングされ得る。
【0013】
金型は一般的に、成型工程の際にストーマインサートのコアを囲む周囲伸長カラーの
包含をさらに可能にするように形状化および寸法化され得、成型されたストーマインサートのカラー領域が次にストーマを囲む領域を少なくとも部分的に十分覆うように形状化および寸法化されてストーマインサートにおけるオストミーマバッグの十分な支えを十分に確実にする。
【0014】
ストーマインサートコアと同様に、周囲伸長カラーも患者におけるストーマを囲む領域の輪郭にぴったり従うように形状化または寸法化され得、これによってストーマインサートとストーマコアの間のぴったりとしたまたは低圧吸引の適合を確実にする。
【0015】
ストーマインサートコアおよびカラーは一体型で成型され得る。あるいは、ストーマインサートコアおよびカラーは非一体型で成型され得る。非一体型で成型される場合、ストーマインサートおよびカラーは、それぞれ異なる物理化学的特性を有する成型可能材料から作製され得る。このような場合、ストーマインサートコアは、ストーマインサートカラーで使用される材料よりも曲げやすく弾性的に柔軟な材料から作製され得る。
【0016】
ストーマおよび周囲皮膚領域のスキャニングは、表面スキャニング技術、特に3Dスキャニング技術を用いて実施され得る。3Dスキャニング技術は、光学的、X線、レーザー、青色光または白色光3Dスキャニング、LIDAR、光干渉断層法、またはMRIから選択され得る。好ましい実施形態では、スキャニングは断層撮影、特にコンピュータ断層撮影(CT)、コンピュータ体軸断層撮影(CAT)またはコーンビーム断層撮影(CBCT)を用いて実施される。これは一般的には、2mm厚以下のスキャンスライスの高解像度で実施される。スキャニング工程は、患者のストーマおよび周囲皮膚表面の幾何学的なサンプルの点群を生じるために実施される。これらの点は次いで、ストーマインサート用の金型を3Dプリンティングで使用するために、ストーマまたはこれらの皮膚領域の形状を推定するために使用できる。
【0017】
従って、データを操作するステップは、スキャンデータを3Dプリンティングで使用するのに適した形態にすることによって達成され、医療画像用に設計されたソフトウェア、および/またはDICOMフォーマットのデータをSTLファイルとして表面レンダリングに変換するソフトウェアを一般的に用いる。
【0018】
本発明の一つの実施形態では、ストーマインサートは、天然ゴム、ラテックス、ネオプレン、ポリ塩化ビニル、ニトリル、合成ポリマー、合成レジン、合成ゴム、アクリルベースポリマー、または任意のこれらの混合物のいずれか1種類以上を用いて成型され得る。好ましい実施形態では、ストーマインサートはシリコーンゴムを用いて成型され得る。
【0019】
ストーマインサートは、抗微生物化合物で含浸またはコーティングされ得る。抗微生物化合物は、銀塩または銀イオンを含む、抗細菌性、静菌性、細菌溶解性、抗ウイルス性、および/または抗真菌性化合物などの1種類以上の天然の、元素の、または合成の抗微生物化合物から選択され得る。
【0020】
抗微生物剤は、ストームインサートの全重量の約0.001~5wt%で存在し得る。好ましくは、抗微生物剤はインサートの全重量の約0.01~1.0wt%で存在する。より好ましくは、抗微生物剤はインサートの全重量の約0.02~0.5wt%で存在する。最大で約5wt%の抗微生物剤の量を有するストーマインサートは、インサート表面で有効な抗微生物効果を有するだけでなく、インサートによって接触される表面でも有効な抗微生物効果を有する。従って、有害な微生物実体がストーマインサートから接触される皮膚表面またはストーマに移動するのを妨げられるだけでなく、その表面上の微生物実体はまた接触後に低下され、静的に維持され、または排除され得る。
【0021】
一つの実施形態では、ストーマインサートは少なくともその一部が、微生物に対する抗体で、特に、現在の抗生物質に対し多剤耐性である微生物に結合できる、および隔離できる抗体でコーティングされる。
【0022】
ストーマインサートは、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)などの、抗炎症性の、解熱性の、または鎮痛性の化合物で含浸またはコーティングされ得る。NSAIDは任意の1種類以上の天然のまたは合成のNSAID化合物から選択され得る。本発明において有用な好ましいNSAIDの例は、限定されないが、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、フェンブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、これらの医薬品として許容可能な塩、これらのエナンチオマー、およびこれらの混合物を含む。イブプロフェン、インドメタシン、アセチルサリチル酸、およびナプロキセンは、本発明における使用のために特に好ましい。特定の実施形態では、一般的に亜鉛を含む、抗発疹クリームまたは保護クリームが、ストーマインサートと共に、ストーマインサート中に組み込まれて、またはストーマインサート中に含浸されて使用されて、皮膚の治癒および保護に役立ち得る。
【0023】
ストーマインサートは1種類以上の防臭化合物で含浸またはコーティングされ得る。
【0024】
さらに、ストーマインサートは、インサートをストーマまたは周囲領域に配置するのに役立ち得る低粘着性の生理学的に許容可能な接着剤でコーティングまたは含浸され得る。
【0025】
有利には、ストーマインサートはまた、発汗抑制化合物でコーティングまたは含浸されて、ストーマインサート下における発汗を制御し、および本発明のストーマインサートによって覆われる、ストーマを囲む皮膚の発汗または脂肪分泌排出からの体臭を防止し得る。
【0026】
防臭性の、抗炎症性の、接着性の、発汗抑制性の、または抗微生物性の化合物、ならびに抗体が、成型可能な材料と混合され得、または製造の際に特注インサートに融合され得、一般的には熱的に融合され得る。防臭剤、抗体、抗炎症性、および/または抗微生物性化合物は、本発明の別の態様では、金型にコーティングされ、これによって化合物が成型工程中にインサートへ移される。
【0027】
医薬化合物または合剤を加えるとき、多くの医薬化合物または合剤は皮膚ではなくむしろ大腸の粘膜によって吸収されるため、ストーマの内側(すなわち、大腸開口)またはその近位にあるストーマインサートのコアを含浸またはコーティングすることが効果的である。この例では、坐薬製剤と同様の遅延放出製剤を使用してストーマインサートからの化合物の放出を延長し得る。さらに、皮膚を保護する化合物がストーマインサートカラーに使用され、適用され、またはストーマインサートカラー中に含浸され得、言い換えると、本発明はそれらの異なる部分におけるストーマインサートの区別された含浸またはコーティングに及ぶ。
【0028】
ストーマインサートは不透明な材料から作製され得るが、本発明の別の態様により、透明な材料から作製され得、ストーマがインサートを通して目視されて、皮膚に炎症が生じているかどうか、さもなければ本発明のストーマインサートをストーマから最初に取り外さなければ容易には見分けられない損傷または病的状態がもたらされているかどうか、介護者が容易に決定することを可能にする。
【0029】
本発明の別の態様により、オストミーバッグを患者に適合する方法が提供され、本方法は本明細書で説明される本発明によるストーマインサートを製造するステップ、ストーマインサートを患者に合わせるステップ、およびそれが患者に適合されたらオストミーバッグをストーマインサートに取り付けるステップを含む。
【0030】
オストミーバッグを患者に適合する方法は、オストミーバッグの装着前に、ストーマインサートを囲む、パテまたはシリコーンペーストなどの、土台材料を最初に準備するステップを含み得る。
【0031】
本発明のさらなる特徴は、本発明を例示する目的のためにのみ含まれるいくつかの非限定的な実施形態の後述の説明において、より完全に説明される。後述の説明は、前述で示される本発明の幅広い要約、開示、または説明に関する制限ではなく、次の図が参考にされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】本発明の一つの態様により作製される、特注オストミーインサート金型の上面を示す図である。
図1B】本発明の一つの態様により作製される、特注オストミーインサート金型の三次元像を示す図である。
図2A】本発明の一つの態様により作製される、特注オストミーインサート金型の断面図であり、成型材料の添加前の、図1Aにおける1C-1Cを通る断面を示す図である。
図2B】本発明の一つの態様により作製される、特注オストミーインサート金型の断面図であり、成型材料の添加後の、図1Aにおける2A-2Aを通る断面を示す図である。
図3】本発明の一つの態様による特注成型されたストーマインサートの三次元像を示す図である。
図4】患者のストーマに適合される本発明の一つの態様による特注成型されたストーマインサートを示す図である。
図5】患者のストーマに適合されたときの本発明の一つの態様による特注成型されたストーマインサートを示す図である。
図6】適合されたオストミーバッグまたはパウチを有する本発明の一つの態様による特注成型されたストーマインサートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
例示的な実施形態の特徴を説明するために組み込まれる、図中で、同様の参照番号が同様の部分を特定するために全体を通して使用される。
【0034】
本明細書全体を通して、特に文脈で要求されない限り、語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形、または「含む(include)」または「含む(includes)」もしくは「含んでいる(including)」などの変形は、記載される整数または整数群の包含を意味するが任意の他の整数または整数群の除外を意味しないと理解される。
【0035】
次の方法は、例としてのみ示され、好ましい一つの実施形態または複数実施形態の主題のより正確な理解を与えるために説明される。本明細書で使用される用語「3Dプリンティング」は、対象物を作製するためにコンピュータ制御下で材料の連続層を加える工程を指す。従って、3Dプリンティングは、下表1に示される、次のタイプ、技術、および材料のいずれかを包含し得る。
【表1】
【0036】
ここで図1Aおよび1Bの図面を参考にして、全体的に参照番号10で参照される、特注3Dプリントされた金型が示され、金型10は患者16のストーマ14および周囲皮膚14.1(図4、5、および6で最も良く示される)のCTスキャンを実施すること、CTスキャンデータファイルを作製すること、スキャンデータファイルに含まれるCTスキャンデータを操作して3Dプリンティングに適したデータにレンダリングすること、および次いで患者16のストーマ14への装着用の特注ストーマインサート(図2A、2B、3、4、および5では参照番号12によって全体的に示される)のための金型をプリントすることによって作製されている。
【0037】
金型10は周囲の、高くなった、円周状に伸長する縁10.1を含み、これは最終的な成型されたストーマインサート12の外側境界を定め、かつオストミーパウチまたはバッグ(図6で参照番号18によって全体が示される)の開口に内側断面が類似している。
【0038】
金型10はさらに、中央の、全体的に直立した柱10.2を含み、これは最終的な成型されたストーマインサート12が合わされるストーマと断面直径が同様である、またはこれよりわずかに大きいように形状化および寸法化される。このようにして、ストーマインサート12が金型10から外されたとき、ストーマインサート12は中央のまたはオフセットの(金型10およびストーマ14によって定められる)孔12.1を定め、これが患者16の内部とストーマインサート12に適合される最終的なオストミーパウチ18の間の流体流接続をもたらす。
【0039】
本発明の利点は、金型10が患者のストーマ14およびストーマを囲む皮膚領域14.1の正確だが鏡像化された像をもたらすように形状化され、ストーマインサート12がストーマに合わされるとき、患者16のストーマ14および周囲皮膚14.1へのぴったりとした、または低吸引圧の適合をもたらすようにすることである。
【0040】
概説すると、ストーマ14を有する患者16用の特注ストーマインサート12を作製する本発明の一つの態様による方法は一般的に、患者16のストーマ14および周囲皮膚領域14.1をスキャンして、ストーマインサートが製造される領域の三次元スキャンを作製するステップ;三次元スキャンから得られるスキャンデータを操作して、スキャンデータが3Dプリンティングでの使用に適するように、ストーマ14および周囲皮膚14.1輪郭の三次元モデルをレンダリングするステップ;金型10がストーマ14および周囲領域14.1の輪郭を厳密に描写する相補的な表面10.3をもたらすように3Dプリンティングを用いてストーマインサート12用のストーマ金型10を作製するステップ;および生理学的に許容可能な成型可能材料(図2Bで参照番号20によって一般的に示される)を特注金型10中に流し込むこと、成型可能材料を所望の固体性に固体化させること、および特注ストーマインサート12を金型10から外すことによってストーマインサート12を製造するステップを含み、得られる特注ストーマインサート12はストーマ14内でおよびストーマ14を囲む皮膚14.1にわたって確実にぴったりと適合するように形状化および寸法化される。
【0041】
金型10は、3Dプリンティングで使用される従来の市販されているポリマーを用いて作製される。このことは、特注オストミーインサート12が、患者のストーマ14および周囲皮膚領域14.1のCTスキャンデータを受け取る数時間以内に作製できることを意味する。
【0042】
金型10はその表面10.3に高くなった、または筋の付いた領域10.3.1を含み、ストーマインサート12が成型されているときに、ストーマインサート12の皮膚接触面12.2に補足的な平行な線、切り込み線、または筋が付けられた表面を生じる。得られる平行な線、切り込み線、または筋の付けられた表面12.2は、汗、皮脂、および他の体液(図示なし)がストーマ14から流れ出るのを助け、患者16の皮膚14.1に配置されたときに十分な支えを保持しながら周囲皮膚14.1を乾燥した状態に維持するのを助ける。
【0043】
したがって金型10の表面仕上げ10.3は、必要に応じてさらに最適化され、平滑化され、粗化され、または改善され得る。本発明の特定の実施形態では、これは化学蒸気法を用いて達成される。他の実施形態では、平滑な非付着性表面が必要とされ得、このような場合、表面の筋付けは、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレンなどの非付着性または低付着性化合物で平滑化またはコーティングされ得る。
【0044】
特定の実施形態では、金型10は、最終的な成型されたストーマインサート12において、ストーマインサートコア12.3、およびストーマインサートコア12.3を囲む周囲伸長ストーマカラー12.4にそれぞれ相当する2つのゾーン10.4、10.5を定める。
【0045】
ストーマインサートコア12.3と同様に、最終的な成型されたストーマインサート12の周囲伸長カラー12.4は、患者16におけるストーマ14を囲む皮膚領域14.1の輪郭にぴったりと従うように形状化および寸法化され、これによってストーマインサート12とストーマ14の間のぴったりとした、または低吸引圧の適合を確実にする。
【0046】
一つの実施形態では、ストーマインサートコア12.3およびカラー12.4は、一つのものとして、すなわち一体型で成型される。あるいは、特定の実施形態では、および成型に使用される材料に応じて、ストーマインサートコア12.3およびカラー12.4は2つの異なる材料から、すなわち非一体型で成型される。非一体型で成型されるとき、ストーマインサートコア12.3およびカラー12.4は、ストーマインサートコア12.3がカラー12.4で使用される材料よりも曲げやすく弾性的に柔軟な材料から作製されるように、異なる物理化学的特性を有する成型可能材からそれぞれ作製される。このようにして、インサート12のソフトコア12.3はストーマ14の内側でぴったりとした無理のない適合を確実にし、一方、より硬い周辺カラー12.4はストーマ14に近いオストミーパウチ18をしっかり配置するのに十分に弾力的である。
【0047】
ストーマおよび周囲皮膚領域のスキャニングは、コンピュータ断層撮影、CTを用いて達成される。この例ではCTが使用されているが、本発明は任意の適切な表面スキャニング技術、特に3Dスキャニング技術に拡張でき、これは超音波、光学的、X線、光音響、青色光または白色光3Dスキャニング、LIDAR、光干渉断層撮影、またはMRIを含む。スキャニング工程は、患者16のストーマ14および周囲皮膚表面14.1の幾何学的サンプルの点群を生成するために実施される。これらの点を次いで使用して、ストーマインサート12用の金型10を3Dプリントできるように、ストーマ14および周囲皮膚領域14.1の形状を推定する。
【0048】
従って、データを操作するステップは、DICOMデータをステレオリソグラフィ―(STL)ファイルに変換することによって達成される。
【0049】
本発明の一つの実施形態では、ストーマインサート12は、シリコーンラバーを用いて金型内で鋳造され、形成され、または成型され得る。しかし、ストーマインサート12が天然ゴム、ラテックス、ネオプレン、ポリ塩化ビニル、ニトリル、合成ポリマー、合成レジン、合成ゴム、アクリルベースポリマー、またはこれらの任意の組み合わせのいずれか1種類以上を用いて鋳造され、形成され、または成型され得ることは本発明の範囲内である。
【0050】
一つの実施形態では、ストーマインサートは抗微生物化合物、抗炎症性化合物、防臭化合物、および発汗抑制化合物で含浸される。それぞれの化合物は、ストーマインサート12中に、ストーマインサート12の0.001~1wt%の重量パーセントで含まれる。合剤または医薬品として有効な化合物を加えるとき、多くの医薬化合物または合剤は皮膚ではなくむしろ大腸の粘膜によって吸収されるため、ストーマの内側(すなわち、大腸開口)またはその近位にあるストーマインサートのコアを含浸またはコーティングすることが、特定の条件下で、効果的である。この例では、坐薬製剤と同様の遅延放出製剤を使用してストーマインサートからの化合物の放出を延長し得る。さらに、皮膚を保護する化合物がストーマインサートカラーに使用され、適用され、または含浸されてよく、言い換えると、ストーマインサートをその種々の部分で区別的に含浸またはコーティングし得る。
【0051】
抗微生物化合物は抗細菌性の、静菌性の、細菌溶解性の、抗ウイルス性の、および/または抗真菌性の化合物などの自然発生または合成抗微生物化合物のいずれか1種類以上から選択されることが考慮される。
【0052】
抗微生物剤を最大で約5wt%の量で有するストーマインサートは、インサート表面で有効な抗微生物効果を有するだけでなく、インサートによって接触される表面でも抗微生物効果を有する。従って、有害な微生物実体がストーマインサートから接触される皮膚表面またはストーマ壁へ移動するのを妨げられるだけでなく、その表面の微生物実体はまた接触後に低下され、静的に維持され、または排除され得る。
【0053】
一つの実施形態では、ストーマインサートは少なくともその一部が、微生物に対する抗体で、特に現在の抗生物質に対し多剤耐性である微生物に結合できる、および隔離できる抗体でコーティングされる。
【0054】
抗炎症性化合物は、この実施形態では、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)などの、解熱性で鎮痛性の化合物である。NSAIDは任意の1種類以上の自然発生または合成NSAID化合物から選択される。本発明で有用な好ましいNSAIDの例は、限定されないが、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、フェンブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、これらの医薬品として許容可能な塩、これらのエナンチオマー、およびこれらの混合物を含む。イブプロフェン、インドメタシン、アセチルサリチル酸、およびナプロキセンは本発明における使用のため特に好ましい。
【0055】
さらに、一つの実施形態では、ストーマインサート12は、ストーマ14または周囲皮膚領域14.1にストーマインサート12を配置するのに役立ち得る低粘着性の生理学的に許容可能な接着剤でコーティングまたは含浸され得る。
【0056】
防臭性の、抗炎症性の、接着性の、発汗抑制性の、抗微生物性の化合物、ならびに抗体が、成型前に成型可能な材料と混合される。一つの実施形態では、化合物は金型10にコーティングされ、これによって化合物が成型工程中にインサート12へ移される。
【0057】
本発明の特に効果的な実施形態では、ストーマインサート12は透明な材料から作製され、ストーマを囲む皮膚がインサートを通して目視されて、皮膚に炎症が生じているかどうか、あるいはさもなければ本発明のストーマインサートをストーマから最初に取り外さなければ容易には見分けられない損傷または病的状態がもたらされているかどうか、介護者が容易に決定することを可能にする。
【0058】
本発明の別の態様により、患者16にオストミーバッグ18を適合する方法が提供され、本方法は、本明細書で説明される本発明によるストーマインサート12を製造するステップ、ストーマインサート12を患者16で形成されるストーマ14に合わせるステップ、およびそれが患者16に適合されたらオストミーバッグ18をストーマインサートに取り付けるステップを含む。オストミーバッグを患者に適合する方法は、皮膚とオストミーバッグ/パウチの間にわずかな高さがあると仮定して、その領域にさらに防水処理を加えるために、オストミーバッグの装着前に、ストーマインサートを囲む、パテまたはシリコーンペースト22などの、土台材料を最初に用意するステップを含む。
【0059】
前述のように、および図6で示されるように、金型10はオストミーインサートに適合されるオストミーバッグまたはパウチ18の開口と同様の、またはわずかに大きい断面直径を有し、これによってオストミーパウチまたはバッグ18は、ストーマ14に近接した苦痛のない、防水方式でしっかりと保持され得、カスタマイズされたこの性質のために患者16への不快感を最小限にする。
【0060】
本発明で使用されるとき、用語「抗微生物剤」は、任意の自然発生する、元素の、合成のもしくは半合成の化合物もしくは組成物またはこれらの混合物を指し、それは本発明の方法で使用されるときにヒト使用において安全であり、かつ本発明に従って使用されるとき、細菌を死滅させるもしくは大幅に阻害するのに有効である。抗生物質は、本明細書における使用のために好ましい。抗生物質は、化学的組成によって、以下の主な群:ゲンタマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、およびストレプトマイシンなどのアミノグリコシド系;エリスロマイシン、クリンダマイシン、およびリファンピンなどのマクロライド系;ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、およびアモキシリンなどのペニシリン系;バシトラシンおよびポリミキシンなどのポリペプチド系;テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびデオキシサイクリンなどのテトラサイクリン系;セファレキシンおよびセファロチンなどのセファロスポリン系;シプロフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシンなどのキノロン系;ならびにクロラムフェニコールおよびクリンダマイシンなどの他種の抗生物質、に一般的に分類できる。これらの抗生物質は一般的に、4つの手段:細胞壁合成の阻害、細胞壁透過性の変化、タンパク質合成の阻害または核酸合成の阻害、の1つで機能するといわれる。
【0061】
本明細書において有用な他の抗微生物剤は、スルホンアミド;ニトロフラゾン、ニトロフラントイン、およびフロゾリドンなどのニトロフラン;メトロニダゾール、チニダゾール、およびニモラゾールを含む。本明細書において有用なこれらの中の抗微生物剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの薬学),18th Edition,pp.1173-1232(1990)に記載されており、参考によって本明細書に組み込まれる。
【0062】
これらの抗微生物剤のいずれかが使用され得るが、ペニシリン、エリスロマイシン、メトロニダゾール、ドキシサイクリン、チニダゾール、アモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン、ニトロフラントイン、およびこれらの混合物が本発明における使用のために好ましい抗微生物剤の中のものである。
【0063】
本発明のストーマインサートにおける使用のために適する他の抗微生物剤は、例えば、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、2,4,4’-トリクロロ-2’ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、銀塩、ビグアナイド、クロロヘキシデン塩、デキストラン硫酸塩、第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム、アクリフラビン、アクリジン色素、ゲンチアナバイオレット、マーキュロクロム、藍藻抽出物、またはこれらの混合物の任意の一つまたは複数を含む。抗微生物剤は、ストーマインサートの全重量の約0.001~5wt%で存在し得る。好ましくは、抗微生物剤は、インサートの全重量の約0.01~1.0wt%で存在する。より好ましくは、抗微生物剤は、インサートの全重量の約0.02~0.5wt%で存在する。最大で約5wt%の抗微生物剤の量を有するグローブは、インサートの表面で有効な抗微生物効果を有するだけでなく、インサートによって接触される表面でも抗微生物効果を有すると考えられる。従って、有害な微生物実体がインサートから接触した表面に移動するのを妨げられるだけでなく、その表面上の微生物実体はまた減少され、静的に維持され、または排除され得る。
【0064】
抗微生物剤を投与する具体的な方法は、本発明の工程に従い、使用される特定の抗微生物剤、感染の部位、1日に投与される抗微生物剤の量、何らかの有害副作用の存在、および抗微生物剤とビスマスの相互作用(存在する場合)などの要因に依存し得る。このため、抗微生物剤は本発明の工程下で、1日単回用量によって、または1日あたり2、3、4回、またはそれより多い用量での投与によって投与され得る。繰り返しになるが、体内に吸収されるべき任意の医薬品が適用され、またはストーマインサートコアに含浸されてよく、一方で予防のための医薬品が周囲の皮膚の近くで使用されてよく、すなわち、ストーマインサートカラーに適用または含浸されてよい。
【0065】
用語「NSAID」は、本明細書で使用されるとき、抗炎症性、解熱性および/または鎮痛性の特性を有する任意の薬剤を指す。NSAIDの例は、本明細書に参考によってその全体が組み込まれる、米国特許4,985,459、Sunshineら、1991年1月15日発行にすべて記載されている。非ステロイド性抗炎症剤の化学構造、合成、副作用などの詳細な開示について、標準テキストが参考になり得、Anti-Inflammatory and Anti- Rheumatic Drugs(抗炎症性および抗リウマチ剤).K.D.Rainsford,Vol.I-III,CRC Press,Boca Raton(1985)、およびAnti-Inflammatory Agents(抗炎症剤).Chemistry and Pharmacology,1 R.A.Scherrer,et al.,Academic Press,New York(1974)を含み、これらはともに本明細書に参考として組み込まれる。本発明において有用な具体的なNSAIDは、限定されないが、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、およびCP-14,304などのオキシカム;アセチルサリチル酸、サルサラート、ベノリレート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、およびフェンドサルなどのサリチル酸;ジクロフェナク、フェンクロフェナック、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリダナク、オキセピナク、およびフェルビナクなどの酢酸誘導体;メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、およびトルフェナム酸などのフェナム酸;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、およびチアプロフェンなどのプロピオン酸誘導体;ならびにフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、およびトリメタゾンなどのピラゾールを含む。これらのNSAIDの混合物、ならびにこれらの薬剤の医薬品として許容可能な塩およびエステルも使用され得る。
【0066】
NSAIDの別の群は米国特許第4,708,966号、Loomansら、1987年11月24日発行で開示されている。この特許は、特異的に置換されたフェニル化合物、特に置換された2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体を含む非ステロイド性抗炎症性化合物の群を開示する。例えば、4-(4’-ペンチン-3’-オン)-2,6-ジ-t-ブチルフェニル、4-(5’-ヘキシノイル)-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-((S)-(-)-3’-メチル-5’-ヘキシノイル)-2,6-ジ-t-ブチル-フェノール、4-((R)-(+)-3’-メチル-5’-ヘキサノイル)-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、および4-(3’,3’-ジメトキシプロピオニル)-2,6-ジ-t-ブチルフェノールから選択される化合物が本明細書において有用である。本明細書において有用な好ましいNSAIDの例は、限定されないが、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、フェンブプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナプロキセン、これらの医薬品として許容可能な塩、これらのエナンチオマー、およびこれらの混合物を含む。イブプロフェン、インドメタシン、アセチルサリチル酸、およびナプロキセンが、本発明における使用のために特に好ましい。
【0067】
本発明の「一つの例」または「例」への言及は、除外的な意味でなされないと認識されるべきである。従って、一つの例は、本発明の特定の態様を例示し得、一方、他の態様が異なる例で例示される。これらの例は、従来技術の当業者が本発明を実施するのを助けることを意図し、文脈で明確に示されない限り、本発明の全範囲を多少なりとも制限することを意図しない。
【0068】
上で使用される用語は、説明の目的のためであり、限定するものとみなされないと理解されるべきである。説明される実施形態は、本発明の例証であることが意図され、その範囲を限定しない。本発明は、従来技術の当業者が容易に思いつく様々な改良および追加を伴い実施できる。
【0069】
請求される主題の様々な実質的および具体的に実際的で有用な例示的な実施形態が、本明細書で文章および/または図によって説明され、請求される主題を実施するための本発明者らに知られている、場合により、最善の形態を含む。本明細書で説明される1つ以上の実施形態の変形(例えば、改良および/または強化)は、本出願を読むことで従来技術の当業者に明白になるであろう。
【0070】
本発明者(ら)は、従来技術の当業者がこのような変形を、必要に応じて用いることを予期しており、本発明者(ら)は、請求される主題について本明細書で具体的に説明される以外で実行されることを意図する。従って、法律によって許されるように、請求される主題は、請求される主題のすべての均等物および請求される主題のすべての改良を含み網羅する。さらに、前述の構成要素、活動、およびこれらのすべての可能な変形のすべての組み合わせは、本明細書で明確に示されない限り、明確に具体的に放棄されない限り、または文脈において他と明確に矛盾しない限り、請求される主題によって包含される。
【0071】
本明細書で示される、ありとあらゆる例、または例示的な用語(例えば、「のような」)の使用は、1つ以上の実施形態をより良く説明することを単に意図しており、他に言明されない限り、請求されるいずれかの主題の範囲に制限を及ぼさない。本明細書における言語は、請求される主題の実行に欠くことができないような、いずれかの請求されていない主題を示すものと考えられるべきでない。
【0072】
移動の方向または向きを示す語句の使用は、限定的であると考えられるべきではない。このため、「前」、「背後」、「後方」、「側」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「最上」、「底」、「前方」、「後方」、「向かって」、「遠位」、「近位」、「中」、「外」ならびにこれらの同意語、反意語、および派生語などの語句は、文脈で他に示されない限り、便宜のためにのみ選択されている。本発明者(ら)は、請求される主題の様々な例示的な実施形態が任意の特定の方向で提供され得、かつ請求される主題はこのような方向を含むと意図されると想定する。
【0073】
様々な実施形態を説明する文脈において(特に、請求される主題の文脈において)、用語「一つ(a)(an)」、「この(said)」、「その(the)」、および/または同様な指示対象の使用は、本明細書で示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると理解されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、他に注意記載がない限り、制限されない用語(すなわち、「含むが、限定されない」)として理解されるべきである。
【0074】
さらに、任意の数または範囲が本明細書で説明されるとき、他に明確な記載がない限り、数または範囲はおおよそである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で他に指示がない限り、範囲内に収まるそれぞれ別の値を個別に言及する簡略な方法となることが単に意図され、このような別々の値によって定められるそれぞれ別の値およびそれぞれ別の下位範囲はあたかも本明細書に個別に引用されているかのように、本明細書に組み入れられる。例えば、1~10の範囲が説明される場合、範囲は、例えば、1.1、2.5、3.335、5、6.179、8.9999などの、この間のすべての値を含み、かつ例えば、1~3.65、2.8~8.14、1.93~9などの、すべての下位範囲を含む。
【0075】
従って、本出願のすべての部分(例えば、名称、分野、背景、要約、説明、要旨、図、など)は、請求自体以外、事実上例示的であるとみなされ、限定的であるとはみなされないべきであり、本出願に基づいて発行するいずれかの特許によって保護される主題の範囲は、本特許の請求によってのみ定められる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6