(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】溶融および熱間等方加圧による製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/64 20210101AFI20220118BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220118BHJP
B22F 3/15 20060101ALI20220118BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20220118BHJP
【FI】
B22F10/64
B22F10/28
B22F3/15 M
B22F3/15 F
B22F10/38
(21)【出願番号】P 2018540225
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(86)【国際出願番号】 FR2016052735
(87)【国際公開番号】W WO2017068300
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-15
(32)【優先日】2015-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネロ フィリップ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171299(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104690970(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103752823(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
B22F 10/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末層の積み重ねから三次元物体(1)を製造するための付加製造方法であって、前記三次元物体(1)は、外側スキン(2)、および、内側三次元メッシュ(3)を含み、前記物体(1)は、内側メッシュ(30)を含む中央部分(5)を取り囲む少なくとも1つの外側縁部(20)を各々が含むいくつかの粉末層(4)の積み重ねによって形成され、前記粉末層(4)の前記外側縁部(20)の積み重ねは、前記物体(1)の前記外側スキン(2)を形成し、前記粉末層(4)の前記内側メッシュ(30)の積み重ねは、前記物体(1)の前記内側三次元メッシュ(3)を形成する、付加製造方法において、
a) 全体表面S1の粉末層(4)を、ワークプレート上に堆積させ、
b) 前記全体表面S1
内に含まれている表面S2を、該表面S2の粉末粒間に微細接続を形成するように、製造されるべき前記三次元物体(1)に応じてエネルギービームによって一体的に走査し、
c) 第1の溶融-固化工程中、前記エネルギービームによって前記外側縁部(20
)の溶融を行い、
d) 第2の溶融-固化工程中、前記外側縁部(20)に侵入している前記内側メッシュ(0)
の一部を二度溶融させるように、前記エネルギービームによって
、前記内側メッシュ(30)の溶融を行い、
e) 工程a)~d)を、積み重ねられた金属粉末のn個の層(4)を形成し、前記三次元物体(1)を製造するように、n回繰り返し、
f) 前記三次元物体(1)の熱間等方加圧を行って、溶融されていない粒の間の少なくとも一部の空間を除去し、溶融されていない粒の間の微細接続は前に作られている、付加製造方法。
【請求項2】
粉末層の積み重ねから三次元物体(1)を製造するための付加製造方法であって、前記三次元物体(1)は、外側スキン(2)、および、内側三次元メッシュ(3)を含み、前記物体(1)は、内側メッシュ(30)を含む中央部分(5)を取り囲む少なくとも1つの外側縁部(20)を各々が含むいくつかの粉末層(4)の積み重ねによって形成され、前記粉末層(4)の前記外側縁部(20)の積み重ねは、前記物体(1)の前記外側スキン(2)を形成し、前記粉末層(4)の前記内側メッシュ(30)の積み重ねは、前記物体(1)の前記内側三次元メッシュ(3)を形成する、付加製造方法において、
a) 全体表面S1の粉末層(4)を、ワークプレート上に堆積させ、
b) 前記全体表面S1
内に含まれている表面S2を、該表面S2の粉末粒間に微細接続を形成するように、製造されるべき前記三次元物体(1)に応じてエネルギービームによって一体的に走査し、
c) 第1の溶融-固化工程中、前記エネルギービームによっ
て前記内側メッシュ(30)の溶融を行い、
d) 第2の溶融-固化工程中、前記外側縁部(20)に侵入している前記内側メッシュ(0)の一部を二度溶融させるように、前記エネルギービームによって
、前記外側縁部(20
)の溶融を行い、
e) 工程a)~d)を、積み重ねられた金属粉末のn個の層(4)を形成し、前記三次元物体(1)を製造するように、n回繰り返し、
f) 前記三次元物体(1)の熱間等方加圧を行
って、溶融されていない粒の間の少なくとも一部の空間を除去し、溶融されていない粒の間の微細接続は前に作られている、付加製造方法。
【請求項3】
前記エネルギービームは、電子ビームからなる、請求項1
または2に記載の付加製造方法。
【請求項4】
方法のすべての工程を、真空下で行う、請求項
1~3のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項5】
前記内側三次元メッシュ(3)は、十二面体の形状を有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項6】
前記内側メッシュ(30)のメッシュの幅は、0.50mmと3.50mmの間にある、請求項1~
5のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項7】
前記内側メッシュ(30)は、層(4)の前記外側縁部(20)に0.1mmと0.9mmの間侵入しており、前記外側縁部(20)は、1.0mmと5.0mmの間の幅を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項8】
微細接続は、1μmと3μmの間の寸法形状を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項9】
工程e)で形成される三次元物体の前記メッシュ間で、粉末粒または粉末粒子は、溶融を受けないが、微細接続によって互いに微細接続され、その結果、三次元物
体はまた、その内部に、溶融されていない粉末粒
子を含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項10】
外側スキン(2)、および、内側三次元メッシュ(3)を含むシェルの形状の三次元物体を得るために、最後の粉末層の全体がそうであるように、最初の粉末層の全体が溶融されるが、最初の粉末層と最後の粉末層の間では、溶融されていないが微細接続されている粉末の粒子が、最終熱間等方加圧工程の前に維持される、請求項1~
9のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項11】
三次元物体上で熱間等方加圧工程が行われ、外側スキンの内側で、外側スキンを除いて、粉末の体積の90%以上が溶融を受け
ない、請求項1~10のいずれか1項に記載の付加製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の付加製造方法を実行することによって得ることができる三次元物体(1)であって、該三次元物体(1)は、外側スキン(2)、および、内側三次元メッシュ(3)を含み、前記物体(1)は、内側メッシュ(30)を含む中央部分(5)を取り囲む少なくとも1つの外側縁部(20)を各々が含むいくつかの粉末層(4)の積み重ねによって形成され、前記粉末層(4)の前記外側縁部(20)の積み重ねは、前記物体(1)の前記外側スキン(2)を形成し、前記粉末層(4)の前記内側メッシュ(30)の積み重ねは、前記物体(1)の前記内側三次元メッシュ(3)を形成する、三次元物体(1)において、前記内側三次元メッシュ(3)は、前記外側縁部(20)の厚さの少なくとも一部に亘って前記外側縁部(20)に侵入しており、前記物体の(1)の90%よりも大きい体積、より好ましくは、95%よりも大きい体積が、溶融されていない、三次元物体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製部品が金属粉末の焼結により得られる粉末冶金の分野に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本方法は、特に革新的な仕方で、粉末冶金を、付加製造方法、すなわち、材料の付加により、特に、次々の層の積み重ねにより部品を形成する方法と組み合わせる。
【0003】
本発明は、主として、部品を製造する方法の分野に適用され、この部品の形成工程は、物理的工程であり、特に、溶融工程に次いで、金属粉末の固化が生じる
【背景技術】
【0004】
粉末冶金の伝統的な方法では、粉末は、一般的には、熱間等方加圧(HIP)工程を行う前に、製造されるべき部品のために前に特に設計された固化金属エンクロージャに収容される。
【0005】
しかしながら、拡散溶接により、HIP工程は、粉末の圧密化を生じさせ、粉末のほとんどは溶融されるので、HIP工程の制御は容易でなく、問題の部品を製造する前に、このことを考慮しておく必要がある。
【0006】
付加製造により部品を形成する現在の方法については、伝統的には、これらの方法は、粉末堆積ローラによって、薄い次々の二次元(2D)層を支持体に付加することによりデジタルデータから三次元(3D)部品を作ることからなる。
【0007】
形成は、例えば、各層を次々に走査し、粉末の局所的溶融を生じさせる電子ビームと関連している。
【0008】
固化は、エネルギー源の直後に生じる。
【0009】
最終製品は、特に、部品の掃除、支持体の取り外し、サンディング、および、機械加工を含むいくつかの仕上げ作業を経て得られる。
【0010】
付加製造で現在使用されている方法は、しかしながら、いくつかの不都合を有する。
【0011】
特に、2~3mmよりも大きいか、2~3mmに等しい寸法を有するかなりの寸法の部品を製造するために、建造中の部品を支持し、解放された熱の排出を可能にする適合支持体を建造する必要がある。
【0012】
実際、先に示したように、溶融に次いで、粉末の固化を生じるために、付加製造は、エネルギー源、一般的には、電子ビームまたはレーザービームの印加を必要とする。電子ビームは、例えば、狭く、かつ、強烈な三次元熱源からなり、その温度は、1600℃に達し、あるいは、これを超えさえし、3000℃までも達することがある。その結果、支持を行い、熱を排出する支持体がないと、最終製品は、得ようとする形態に対して深刻な変形を有することとなる。
【0013】
最終製品上で変形の存在を防止するために一方では有用な支持体の使用は、他方では不都合を呈する。
【0014】
さらに詳しくは、支持体が取り外されるときに、一旦固化が完了した後に、部品から支持体を取り外す必要がある。この作業の結果は、前記製品が支持体と接触していた部位で表面欠陥を創出することである。これらの表面欠陥の存在を修正するために、サンディング工程が必要である。
【0015】
例えば、特許文書WO2013/092997は、層毎に次々に固化を生じさせることによって三次元物体を製造する方法であって、該方法は、
粉末層を支持体上に堆積させ、
前記粉末層の周辺の溶融を、レーザービームによって行い、
前記粉末層の全内側中央部分の溶融を、電子ビームを印加することによって行う、方法を記載している。
【0016】
これらの工程を実行することにより、外部に対して最小の表面粗度を有する部品が製造されることになる。
【0017】
しかしながら、ここで記載されている方法は、いくつかの不都合を有し、特に、部品のコアを溶融させたいか、あるいは、部品のスキンを溶融させたいかによって、2つのエネルギー源の使用を必要とするという不都合を有する。
【発明の概要】
【0018】
本発明に関しては、本発明は、進歩的な仕方で、次々の工程を行って、最終的に、寸法が大きく、密度が高く、均質な内側構造を有することができ、製造中に構造を支持する支持体の時として制限的な使用を必要とすることなく、大変複雑な形態を呈し、さらに有することができる三次元部品または物体に到達する方法に到達するために、粉末冶金および付加製造のための技術の特に興味深くかつ独創的な組み合わせを提案する。
【0019】
本発明の方法を実行することによって得られる部品は、特に機械的および等方的観点で特別な特性を有することにも留意すべきである。
【0020】
この目的のため、本発明は、粉末層の積み重ねから三次元物体(1)を製造するための方法であって、前記三次元物体(1)は、外側スキン(2)、および、内側三次元メッシュ(3)を含み、前記物体(1)は、内側メッシュ(30)を含む中央部分(5)を取り囲む少なくとも1つの外側縁部(20)を各々が含むいくつかの粉末層(4)の積み重ねによって形成され、前記粉末層(4)の前記外側縁部(20)の積み重ねは、前記物体(1)の前記外側スキン(2)を形成し、前記粉末層(4)の前記内側メッシュ(30)の積み重ねは、前記物体(1)の前記内側三次元メッシュ(3)を形成する、方法において、
a) 全体表面S1の粉末層(4)を、ワークプレート上に堆積させ、
b) 前記全体表面S1内に含まれている表面S2を、該表面S2の粉末粒間に微細接続を形成するように、製造されるべき前記三次元物体(1)に応じてエネルギービームによって一体的に走査し、
c) 第1の溶融-固化工程中、前記エネルギービームによって前記外側縁部(20)、または、前記外側縁部(20)の幅の一部に侵入している前記内側メッシュ(30)の溶融を行い、
d) 第2の溶融-固化工程中、前記外側縁部(20)に侵入している前記内側メッシュ(0)の前記一部を二度溶融させるように、前記エネルギービームによって、前記第1の溶融-固化工程中に固化されなかった前記外側縁部(20)、または、前記内側メッシュ(30)から選択される要素の溶融を行い、
e) 工程a)~d)を、積み重ねられた金属粉末のn個の層(4)を形成し、前記三次元物体(1)を製造するように、n回繰り返し、
f) 前記三次元物体(1)の熱間等方加圧を行う、方法に関する。
【0021】
外側スキンに一部が侵入している内側三次元メッシュの存在は、粉末の溶融-固化を可能にするのに使用されるエネルギー源によって発生された熱を層の外部に向けて効果的に排出することを可能にする。
【0022】
有利には、溶融-固化工程c)およびd)中に使用されるエネルギー源は、走査工程b)にあるような電子ビームからなる。
【0023】
興味深いことに、三次元物体の内側三次元メッシュのメッシュは、複数の十二面体、または、一様なメッシュを形成し、もしくは、寸法勾配を有するすべての他の形態を形成する。
【0024】
三次元物体の内側三次元メッシュの横断面における幅は、好ましくは0.50mmと3.50mmの間にある
【0025】
本発明による付加製造方法の有利な例では、内側メッシュは、外側縁部に約0.1mmと0.9mmの間侵入している。
【0026】
本発明は、多くの利点を有し、独創的な仕方で従来技術の方法の不都合を矯正する。
【0027】
一方では、本発明の方法は、大きな寸法の三次元物体の製造中、一般的に、矯正されなければならない表面欠陥の原因である支持体の配置を回避するための解決法を供給する。
【0028】
他方では、本方法中所定位置に置かれ、一部が外側縁部またはスキンに侵入している三次元メッシュは、エネルギー源による粉末の溶融中に必要的に発生される熱の除去を促進する。
【0029】
本発明の方法は、実施するのが簡単かつ迅速であることにも留意すべきである。
【0030】
また、なによりも、堆積された粉末層の全表面S2の走査を行う工程b)は、溶融-固化工程c)およびd)の前に行われ、粉末粒が溶融されることなく、粉末粒間の所定位置に微細接続を配置することを可能にする。
【0031】
これらの微細接続は、有利には、マイクロメータ、例えば、数マイクロメータのオーダーの、および、好ましくは1μmと3μmの間の寸法形状を有し、粉末に、粉末の粒が完全に溶融されずに自由でない特別なコンシステンシーを与える。
【0032】
工程b)を行った後に、粉末層の各々のために得られる粉末のこの構造またはコンシステンシーは、溶融-固化による外側スキンおよび内側メッシュの製造と組み合わさって、最終の熱間等方加圧工程中に特別な特性を最終的に有する物体の均質かつ制御された圧密化を可能にする。
【0033】
それ故、本発明の方法では、三次元物体または部品上で熱間等方加圧工程が行われ、外側スキンの内側で、外側スキンを除いて、粉末の体積の90%以上が溶融を受けず、20~30%のオーダーのある空間率が粒の間に残る。
【0034】
HIP工程は、溶融されていない粒の間のこの空間を除去するが、溶融されていない粒の間の微細接続は前に作られている。粉末粒が溶融を受けた領域での内側三次元メッシュの存在と組み合わさって、HIP前の空間の残留率は、HIPが行われているときに、三次元物体の規則正しい変形を可能にし、それにより、この物体に微細で均質な等方内部構造が与えられ、特に最良の機械的特性が生じる。
【0035】
反対に、従来技術の方法では、HIPが、粉末粒がほとんど完全に溶融されている材料に適用されるときに、寸法形状後退は大変しばしば不規則であり、変形された外観を有しやすい。例えば、本発明を実施することから生じる好ましい円形の横断面の部品を製造する代わりに、「ポテト状」として知られている変形された非円形の部品が一般的に生じる。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照した本発明の制限的でない以下の詳細な説明からわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】三次元物体、このケースでは、本発明による方法の工程を行うことによって得られる馬を表す小立像の長手方向断面の平面図を示し、物体の外側スキンおよび内側三次元メッシュを示している。
【
図2】本発明による方法の工程を行うことによって得られる三次元物体の層の1つの平面図を概略的に示し、このケースでは、層の三次元メッシュが、該層の外側スキンの幅の一部に侵入していることがより特に明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1および
図2に示されているように、本発明は、三次元物体1を製造するための方法に関する。
【0039】
本発明による製造方法は、さらに正確には、粉末、一般的には金属の粉末の薄い層4を積み重ねることにより三次元物体1を形成することからなり、粉末は、エネルギー源またはエネルギービームによって層のいくつかの場所で溶融されることができる。
【0040】
本発明で使用される粉末に関し、これは、一般的には、単一の金属、または、いくつかの金属の混合物若しくは合金を含む金属粉末である。
【0041】
しかしながら、かかる実施形態は、制限的であると考えてはならず、本発明で使用される粉末は、例えば、セラミック粉末からなってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、本方法の異なる工程が使用されているときに、「ドープ(doped)」粉末、すなわち、好ましくは金属の粒がナノ粒子と関連している粉末が使用される。
【0043】
粉末粒子の寸法については、これは、好ましくは、5~500μmの間で変化する。
【0044】
興味深いことに、これは、本発明の方法によって最終的に得られる三次元物体1の機械的特性を高め、特に、前記物体1は、高温でより良好な寸法形状安定性を有し、任意の機械加工に対する改善された抵抗性を有する。機能化された材料がまた、これらの手段から得ることができる。
【0045】
図1を参照して、今再び三次元物体1について言及すると、三次元物体1の構造は、外側スキン2、および、内側三次元メッシュ3の両方を含む。
【0046】
さらに正確には、今、
図2を参照すると、前記三次元物体1は、複数の粉末層4によって形成され、これらの層4の各々は、外側縁部20または周辺縁部20を含み、外側縁部20または周辺縁部20は、中央部分5を取り囲み、中央部分5は、内側メッシュ3を含む。
【0047】
粉末層4の外側縁部20の積み重ねは、最終的に、三次元物体1の外側スキン2を形成することが理解される。
【0048】
層4の内側メッシュ30の積み重ねに関して、これにより、問題の物体1の内側三次元メッシュ3が製造される。
【0049】
これをするために、本発明の方法の第1の工程a)において、全体表面S1の第1の金属粉末層4を、好ましくは、ワークプレートのような実質的な平らな表面上に堆積させる。
【0050】
この第1の工程a)を通じて、粉末層4の堆積が、この目的に適合され、当業者に知られている任意の手段、特に、粉末を分配し、広げる手段により予め形成されることができる。
【0051】
堆積された粉末層4は、一般的には、数十μmのオーダーの厚さを有する。例えば、しかし非制限的に、前記層4の厚さは、約50μmであり、しかしながら、200μmを超えない。
【0052】
工程a)中の特に金属の第1の粉末層4の付加後、広げられた粉末層4の表面S1内に含まれる表面S2の一体的走査を、エネルギービームによって行う。
【0053】
この工程b)中にその全体が走査される表面S2は、最終的に望まれる三次元物体1の形状に依存する。
【0054】
それ故、例えば、堆積される粉末層4は、矩形形状の表面S1を有するのがよく、これに対して、S1内に含まれる円形の表面S2が、工程b)中に走査される。
【0055】
工程a)中に広げられた全体表面S1が、エネルギービームによって走査されることも可能である。この場合、S1は、S2に等しい。
【0056】
エネルギービームは、好ましくは電子ビームからなる。
【0057】
出願人は、堆積工程a)後、かつ、溶融-固化工程c)およびd)前に、方法中この時点でこの走査工程を行うことにより、いかなる溶融も生じることなく、粉末の粒間で微細接続の形成が生じることを、特に有利に、かつ、独創的に決定した。
【0058】
電子ビームの印加による温度の上昇により、粉末粒の拡散が促進され、粉末粒間の微細溶接が可能とされ、粒の溶融に至ることなく、寸法はマイクロメータのオーダーを有する。
【0059】
その結果、粒が互いに微細接続され、または、微細溶接された独創的な構造が生じる。
【0060】
粉末粒は、その結果、粉末粒間の隙間の空間率を維持しながら、もはや自由に流動することができないという意味で、もはや自由ではない。
【0061】
空間率は、好ましくは、20%から40%まで変化し、この率は、各層4の走査される表面S2に対する空間表面、または、工程a)~e)の適用後に得られる三次元物体の全体積に対する空間容積に対応している。
【0062】
電子ビームによる表面S2の一体的走査の工程b)後、次いで、第1の溶融-固化の工程c)を、エネルギー源によって行う。
【0063】
好ましい実施形態では、本方法の実行中、特に、この工程c)中に使用されるエネルギー源は、電子ビームであり、この電子ビームにより、粉末粒子は、高速で発射された電子により爆撃され、その運動エネルギーは、粒子との衝突時に熱エネルギーの発生を可能にする。この熱は、前記粒子の溶融を生じさせるのに十分であり、次いで、冷却時に前記粒子の固化を生じさせる。
【0064】
本発明の方法の異なる工程は、有利には、真空下で、例えば、真空ポンプにより真空下に置かれ、維持される封止エンクロージャ内で行われる。
【0065】
これは、特に、有利には、結果として必要的に排出されなければならない粉末粒子間の気体の発生を防止する。この手段はまた、酸化現象を防止し、電子ビームの正しい機能を可能にする。
【0066】
この第1の溶融-固化の工程c)中、特に興味深くは、メッシュの少なくとも一部、例えば、前記内側メッシュ30の少なくとも一部、例えば、前記内側メッシュ30のメッシュ31、32、33が、前記外側縁部20の幅の一部に侵入している場合には、粉末層4の外側縁部20の溶融、または、内側メッシュ30の溶融のいずれかを等しく行うことができる。
【0067】
好ましくは、添付の
図2に示されているように、内側メッシュのすべてのメッシュが、前記外側縁部の幅の一部に侵入する。
【0068】
エネルギー源により、外側縁部20で粉末を溶融させた後、前記エネルギー源の停止の直後に、粉末粒子を互いに溶接させることによる粉末粒子の固化が起こる。
【0069】
次いで、第2の溶融-固化の工程d)を、好ましくは再び、エネルギー源を構成する電子ビームによって行う。
【0070】
この工程d)中、先の工程c)中にエネルギー源の作用を受けなかった要素、外側縁部20、または、内側メッシュ30のいずれかが、今度は、溶融を受ける。
【0071】
このようにして、さらに詳しくは、第1の溶融-固化の工程c)が、粉末層4をその外側縁部20で溶融させた場合には、第2の溶融-固化の工程d)が、内側メッシュ30、少なくとも一部が層4の前記外側縁部20に侵入している内側メッシュ30のメッシュ31、32、33の溶融を行う。
【0072】
反対に、第1の溶融-固化の工程c)が、内側メッシュ30の粉末の溶融を可能にした場合には、工程d)中の第2の溶融-固化は、層4の外側縁部20で粉末の溶接を可能にしなければならない。
【0073】
内側メッシュ30が一部粉末層4の外側縁部20に侵入していれば、粉末粒子は、このレベルで、2つの溶融-固化の工程を受ける。
【0074】
また、この二重の溶融-固化の工程が粉末層4の各々のために行われるので、最終三次元物体では、外側スキン2の少なくとも一部に侵入した内側三次元メッシュ3ができる。
【0075】
内側メッシュ30が一部縁部20に侵入する部位での材料のこの「二重の溶融」は、外側縁部20と、内側メッシュ30のメッシュの間の中央部分5との間から物体1の外部に向けての熱の交換を促進する。
【0076】
その結果、内側メッシュ30が外側縁部20に侵入していることにより、物体1の製造を生じさせる層4の各々の処理中にエネルギー源によって発生される熱の特に効果的な排出が可能になる。
【0077】
これは、例えば、溶融操作中にエネルギー源から解放された熱の作用下での付加製造による部品の製造中のいかなる部品の爆発をも防止する。
【0078】
また、HIPからなる本方法の最終工程(工程f)の実行中に層4の積み重ねにより三次元物体1が得られると、内側三次元メッシュ30の外側縁部20へのこの侵入は、最終的に得られる三次元物体1の規則正しい変形を引き起こす。
【0079】
堆積工程a)、一体的走査工程b)、溶融-固化の工程c)およびd)は、好ましい三次元物体1を得るのに必要な回数繰り返される。
【0080】
特に有利な仕方では、外側スキン2、および、内側三次元メッシュ3を含むシェルの形状の三次元物体を得るために、最後の粉末層の全体がそうであるように、最初の粉末層の全体が溶融されるが、最初の粉末層と最後の粉末層の間では、溶融されていないが微細接続されている粉末の粒子が、最終熱間等方加圧工程の前に維持される。
【0081】
現在、前記三次元物体1の内側三次元メッシュ3について、前記三次元物体1が完成した後、交差メッシュが容積を構成するのが有利であり、さらに一層有利なのは、十二面体形態であり、これらは、メッシュ、または、物体1の外部に向かっての熱の排出をなお一層向上させる。
【0082】
しかしながら、かかる実施形態は、本発明を制限するものと考えられてはならず、完成物体1の三次元メッシュ3は、例えば、添付の
図2に示されているように、複数の正方形のメッシュを構成するメッシュを有してもよく、あるいは、ピラミッド形ですら、あるいは任意の他の幾何学的形状、あるいは、形状寸法勾配を有するものであってもよい。これは、外側スキン2に近いメッシュ3のメッシュが、随意には、中央部分5の内部のメッシュの横断面よりも小さい横断面を有するのがよいことを意味する。
【0083】
極めて好ましくは、本願発明の方法では、容積を構成する三次元交差メッシュを製造するために、デジタルデータ手段によって規定された異なる溶融経路が、工程c)およびd)中に実行される。
【0084】
物体の異なる要素の現在の寸法形状に関し、例えば、物体1の内側三次元メッシュ3のメッシュの横断面における幅は、0.50mmと3.50mmの間にあるのが有利である。
【0085】
実際、この幅は、特に電子ビームによって発生される熱の特に効果的な排出を促進することが決定された。
【0086】
各層4の内側メッシュ30のメッシュ、例えば、31、32、33は、好ましくは1.0mmと5.0mmの間にある外側縁部20の幅に従い、好ましくは、数1/10ミリメートルだけ、例えば、0.1mmと0.9mmの間、外側縁部20の幅に侵入するのが有利である。
【0087】
本方法の特定の特徴によれば、既に前に述べたように、内側メッシュ30のメッシュ、例えば、31、32、33の間で、工程b)を行うことによって、粉末粒または粉末粒子は、溶融を受けないが、微細接続によって互いに微細溶接される。その結果、三次元物体1はまた、その内部に、溶融されていない粉末粒子、および、これらの粒子間の空間を含む。
【0088】
さらに正確には、本発明の方法を実行することによって得られる三次元物体1の、外側スキン2を除いた、90%よりも大きい最終質量、より好ましくは、95%よりも大きい最終質量が、溶融されていない粉末の粒によって構成される。
【0089】
在来的に行われる溶解中に気化し、または、凝集することができるナノ粒子のような、金属粉末に添加されるドープ要素が、有利には使用されるのがよい。
【0090】
また、メッシュ30のメッシュ31、32、33の間で、溶融されていない粉末の粒子を所定位置に維持することは、メッシュ3の存在と同様に、後の熱間等方加圧(HIP)工程f)後、特に圧密した均質な三次元物体を製造するのを促進する。
【0091】
これはまた、本発明による付加製造の方法中に発生される熱の移送および排出を容易にする。
【0092】
換言すると、一方では、粉末粒子間に隙間を維持しながら粉末粒子の間に微細接続を作り出し、他方では、一部が物体1の外側縁部2に侵入する三次元内側メッシュ3を作り出す工程b)、c)、および、d)を特に繰り返すことにより、工程f)のHIP時に、最終部品を作り出す均質な寸法形状後退を引き起こす。
【0093】
HIP技術は、さらに詳しくは、上記の工程a)~e)を行った後に得られる三次元物体1の熱処理を構成し、特に、前記物体の特性を向上させるために高圧を使用する。
【0094】
本発明は、支持体の時として制限的な使用なしですませることによって、比較的幅広い寸法形状の、より詳しくは、1ミリメートルから数デシメートルのオーダーの寸法形状を有する三次元部品1を製造するために特に興味深く、有利である。
【0095】
金属冶金で在来的に使用されている方法とは反対に、本発明の方法は、HIPのための固化金属エンクロージャの使用を必要としない。
【符号の説明】
【0096】
1 三次元物体
2 外側スキン
3 内側三次元メッシュ
5 中央部分
20 外側縁部
30 内側メッシュ