(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220118BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
(21)【出願番号】P 2019123300
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小原 朋広
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-087273(JP,A)
【文献】特開2016-152020(JP,A)
【文献】国際公開第2006/075513(WO,A1)
【文献】特開2002-99685(JP,A)
【文献】特開2005-128772(JP,A)
【文献】特開2010-140305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースと、(2)複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースと、を記憶する記憶部と、
前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得する取得部と、
前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出する算出部と、
前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てる実施作業割当部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記作業者データベースは、前記複数の時間帯それぞれについて、前記作業者の集中力を示す第1指標と、前記作業者の発想力を示す第2指標とを格納しており、
前記算出部は、前記集中力及び発想力それぞれの割合に基づく前記第1指標と前記第2指標との比例配分を前記評価値として算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記作業者データベースは、前記作業者の睡眠時間の長短に応じて異なる前記第1指標及び前記第2指標を格納しており、
前記情報処理装置は、前記作業者の睡眠時間の長さを取得する睡眠時間取得部をさらに備えており、
前記実施作業割当部は、前記睡眠時間の長さに基づいて前記作業者データベースを参照して取得した前記第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合、前記複数の時間帯のうち前記実施作業を割り当てない時間帯を追加して、前記実施作業を各時間帯に割り当てる、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記睡眠時間の長さに基づいて前記作業者データベースを参照して取得した前記第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合、(1)前記複数の時間帯に新たな時間帯を追加するか、(2)前記実施作業に割り当てる作業時間を減少させるか、のいずれかの選択を受け付ける選択受付部をさらに備え、
前記実施作業割当部は、受け付けられた前記選択に基づく条件下で、前記実施作業を各時間帯に割り当てる、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記実施作業割当部は、前記複数の時間帯のうちあらかじめ定められ少なくとも1つの時間帯には前記実施作業を割り当てないことを制約条件として、前記実施作業を各時間帯に割り当てる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記実施作業割当部は、前記複数の時間帯のうちあらかじめ定められた少なくとも1つの時間帯に所定の実施作業が割り当てられることを制約条件として、前記実施作業を各時間帯に割り当てる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
プロセッサが、
1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースを記憶する記憶部から前記作業者データベースを読み出して取得するステップと、
前記記憶部から、複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースを読み出して取得するステップと、
前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得するステップと、
前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出するステップと、
前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てるステップと、
を実行する情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースを記憶する記憶部から前記作業者データベースを読み出して取得する機能と、
前記記憶部から、複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースを読み出して取得する機能と、
前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得する機能と、
前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出する機能と、
前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てる機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場やオフィス等で作業を行う場合に、限られた人的リソースを効果的に利用するために、作業者の体調等の状態を考慮して作業スケジュールを自動的に提示する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記は、作業者が作業を行うために実際に要した時間に加え、作業者の疲労等の情報を元に作業スケジューリングを行う技術である。しかしながら、作業に要した時間に基づいてスケジューリングを行う手法では、スケジューリングの対象とする作業が、時間をかけて行えば遂行できる作業に限定されることになる。
【0005】
このような作業は、機械学習等の技術の進歩により、いずれは機械が実行するものになると言われている。そのような時代が到来すると、人間がすべき作業は、単に時間をかければできるものではなくなると考えられる。上記のような技術では、人間がすべき作業をスケジューリングの対象とすることができなくなる恐れがある。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、作業遂行のために作業者に要求される能力に基づいて、作業スケジュールを組み立てることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、(1)1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースと、(2)複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースと、を記憶する記憶部と、前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得する取得部と、前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出する算出部と、前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てる実施作業割当部と、を備える。
【0008】
前記作業者データベースは、前記複数の時間帯それぞれについて、前記作業者の集中力を示す第1指標と、前記作業者の発想力を示す第2指標とを格納してもよく、前記算出部は、前記集中力及び発想力それぞれの割合に基づく前記第1指標と前記第2指標との比例配分を前記評価値として算出してもよい。
【0009】
前記作業者データベースは、前記作業者の睡眠時間の長短に応じて異なる前記第1指標及び前記第2指標を格納してもよく、前記情報処理装置は、前記作業者の睡眠時間の長さを取得する睡眠時間取得部をさらに備えてもよく、前記実施作業割当部は、前記睡眠時間の長さに基づいて前記作業者データベースを参照して取得した前記第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合、前記複数の時間帯のうち前記実施作業を割り当てない時間帯を追加して、前記実施作業を各時間帯に割り当ててもよい。
【0010】
前記睡眠時間の長さに基づいて前記作業者データベースを参照して取得した前記第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合、(1)前記複数の時間帯に新たな時間帯を追加するか、(2)前記実施作業に割り当てる作業時間を減少させるか、のいずれかの選択を受け付ける選択受付部をさらに備えてもよく、前記実施作業割当部は、受け付けられた前記選択に基づく条件下で、前記実施作業を各時間帯に割り当ててもよい。
【0011】
前記実施作業割当部は、前記複数の時間帯のうちあらかじめ定められ少なくとも1つの時間帯には前記実施作業を割り当てないことを制約条件として、前記実施作業を各時間帯に割り当ててもよい。
【0012】
前記実施作業割当部は、前記複数の時間帯のうちあらかじめ定められた少なくとも1つの時間帯に所定の実施作業が割り当てられることを制約条件として、前記実施作業を各時間帯に割り当ててもよい。
【0013】
本発明の第2の態様は、情報処理方法である。この方法において、プロセッサが、1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースを記憶する記憶部から前記作業者データベースを読み出して取得するステップと、前記記憶部から、複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースを読み出して取得するステップと、前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得するステップと、前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出するステップと、前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てるステップと、を実行する。
【0014】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者の集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベースを記憶する記憶部から前記作業者データベースを読み出して取得する機能と、前記記憶部から、複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベースを読み出して取得する機能と、前記作業者が1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得する機能と、前記作業者データベースと前記作業データベースとを参照して、前記実施作業それぞれについて、前記複数の時間帯それぞれで実施した場合の前記実施作業に関する評価値を算出する機能と、前記複数の時間帯それぞれで遂行すべき前記実施作業を割り当てたときの前記評価値の合計が最大となるように、前記実施作業を各時間帯に割り当てる機能と、を実現させる。
【0015】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業遂行のために作業者に要求される能力に基づいて、作業スケジュールを組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置の動作の概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る算出部が算出する評価値の一覧を表形式で示す図である。
【
図4】実施の形態に係る実施作業割当部が生成したスケジュールの一例を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る作業者データベースのデータ構造を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態に係る実施作業割当部が生成した作業スケジュールの一例を模式的に示す図である。
【
図7】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態の概要>
実施の形態に係る情報処理装置は、作業現場やオフィス等で作業に従事する複数のユーザUそれぞれについて、各ユーザが1日のうちどの時間帯にどの作業をすべきかを示すスケジュールを生成するための装置である。
【0020】
図1は、実施の形態に係る情報処理装置の動作の概要を説明するための図である。以下、
図1を参照しながら実施の形態に係る情報処理装置の動作の概要を(1)から(4)の順に説明するが、その番号は
図1における(1)から(4)と対応する。
【0021】
(1)実施の形態に係る情報処理装置は、ユーザU毎に、1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて集中力及び発想力それぞれを示す指標を取得する。例えば、
図1には、8時から20時までのユーザUの集中力及び発想力を示す指標が示されている。
図1の例では、ユーザUの集中力は午前8時に最大であり、時間の経過とともに減少している。一方、ユーザUの発想力は午前8時が最低であり、時間の経過とともに増加している。これらは、ユーザ毎にあらかじめ測定されている。なお、集中力及び発想力の測定手法については後述する。
【0022】
(2)情報処理装置は、ユーザが遂行すべき複数の作業毎に、各作業に要求される集中力及び発想力の割合を取得する。
図1には、作業1から作業NまでのN種類の作業それぞれについて、各作業を遂行する際に要求される集中力及び発想力の割合が示されている。例えば、作業1は単純な事務作業であり、作業1を遂行するために発想力は要求されず、集中力のみが要求される。一方、作業Nに要求される能力はほぼ発想力のみである。これらの割合は、あらかじめ人手で設定され、情報処理装置の記憶部に記憶されている。
【0023】
(3)情報処理装置は、ユーザUが1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とを取得する。
(4)情報処理装置は、取得した情報に基づいて作業効率に関する評価関数を生成し、最適化手法を用いて評価関数を最大化することによってユーザUが実施作業を効率よく遂行するための作業スケジュールを生成する。
【0024】
これにより、実施の形態に係る情報処理装置は、作業遂行のために作業者であるユーザUに要求される能力に基づいて、実施作業を効率よく遂行するための作業スケジュールをユーザU毎に組み立てることができる。
【0025】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部2と制御部3とを備える。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってもよい。
図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0026】
記憶部2は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される作業者データベース20及び作業データベース21をはじめとする種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0027】
制御部3は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって取得部30、算出部31、実施作業割当部32、睡眠時間取得部33、及び選択受付部34として機能する。
【0028】
なお、
図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部3を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0029】
上述したように、記憶部2は、1日のうちであらかじめ定められた複数の時間帯それぞれについて、作業者であるユーザUの集中力及び発想力それぞれを示す指標が格納された作業者データベース20を記憶している。また、記憶部2は、複数の作業の種類と、各作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合とが格納された作業データベース21も記憶している。
【0030】
ここで、ユーザUの集中度は、集中度を測定するためのデバイスをユーザUに所定の期間(例えば1ヶ月間)装着させ集計する。このようなデバイスの一例として、装着者の眼球の動きやまばたきの回数などから集中度を測定するメガネ型デバイスが知られている。
【0031】
ユーザの発想力(創造性)は、例えば既知の「The Guilford Measures」を利用して計測できる。既知の技術のため詳細は省略するが、The Guilford Measuresでは、創造性を測定する尺度として、fluency:流暢さ、flexibility:柔軟さ、originality:独自さ、及びelaboration:精巧さ、具体的さの4つの尺度が提案されている。一方、アイデアを創出する手順として、(a)テーマ設定、(b)アイデアを多く出す、(c)良案を抽出、及び(d)アイデアを強化する、の4つの手順が知られており、(a)及び(b)を通して、4尺度の2つ(fluency/flexibility)を実現し、(c)でoriginality、(d)でelaborationを生み出すことが期待される。
【0032】
ここで、(b)においては様々な視点での検討や通常とは異なる思考で着想を得ることが必要となる。そのためにはユーザが疲労状態である方が思考の制限が外れ、多くのアイデアを生み出すのに適した状態となる。したがって、発想に適した度合いとして、疲労の度合いを元にした指標を利用することができる。
【0033】
疲労度を計測するにはいくつか既存の技術が存在するため、それを利用すればよい。例えば、ユーザUの脈波から測定して解析することにより、ストレス指標(交感神経と副交感神経の比)を用いてユーザUの疲労度を推定することができる。
【0034】
作業者データベース20は、作業に従事する複数のユーザUそれぞれについて、1日のうちの複数の時間帯毎の集中力及び発想力をあらかじめ計測してデータベース化したものである。このように、作業者データベース20は、複数の時間帯それぞれについて、ユーザU毎に、集中力を示す第1指標と、発想力を示す第2指標とを格納している。第1指標及び第2指標は、値が大きいほど、それぞれ集中力及び発想力が高いことを示している。
【0035】
取得部30は、作業者であるユーザUが1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とをユーザUから取得する。算出部31は、作業者データベース20と作業データベース21とを参照して、ユーザUから取得した実施作業それぞれについて、複数の時間帯それぞれで実施した場合の実施作業に関する評価値を算出する。
【0036】
例えば、ある作業に要求される集中力の割合がt、発想力の割合が1-t(0≦t≦1)であるとする。また、あるユーザUのある時間帯における集中力を示す第1指標がC、発想力を示す第2指標がIであるとする。このとき、算出部31は、ユーザUがその時間帯に上記作業を遂行する場合の評価値Eを以下の式(1)に基づいて算出する。
E=tC+(1-t)I (1)
【0037】
式(1)は、算出部31が、実施作業に要求される集中力及び発想力それぞれの割合に基づく第1指標と第2指標との比例配分を評価値Eとして算出することを示している。
【0038】
式(1)から明らかなように、作業に要求される集中力の割合tが高く、かつその作業を遂行する時間帯におけるユーザUの集中力を示す第1指標Cが大きいほど、評価値Eは大きくなる。同様に、作業に要求される発想力の割合1-tが高く、かつその作業を遂行する時間帯におけるユーザUの発想力を示す第2指標Iが大きいほど、評価値Eは大きくなる。これにより、算出部31は、作業に要求される能力(集中力又は発想力)と、各時間帯におけるユーザUの状態(集中力が高い状態か、又は発想力が高い状態)とが合致するか否かを数値で評価することができる。
【0039】
図3は、実施の形態に係る算出部31が算出する評価値Eの一覧を表形式で示す図である。具体的には、
図3は、1日のうち8時から18時までを30分毎20個の時間帯に区切り、作業1から作業XXまでのXX個の作業それぞれについて、時間帯毎の評価値Eを算出した場合の例を示している。
図3に示すように、各時間帯はTID01からTID20までの時間帯識別子が割り当てられており、また、各作業にはWID01からWIDXXまでの作業識別子が割り当てられている。以下、本明細書において、時間帯識別子がTID01で特定される時間帯を時間帯01、作業識別子がWID01で特定される作業を作業01のように記載することがある。
【0040】
図3は、作業を遂行するユーザUが、時間帯識別子Tn(nは01から20のいずれかの値)で示される時間帯に、作業識別子WIDm(mは01からXXのいずれかの値)で示される作業を実行した場合の評価値をEnmとして格納している。例えば、ユーザUが作業02を時間帯19に実行する場合の評価値はE0219である。なお、
図3に示す評価値Eの表は、ユーザU毎に、算出部31があらかじめ算出して記憶部2に格納しておいてもよい。
【0041】
図2の説明に戻る。実施作業割当部32は、複数の時間帯それぞれで遂行すべき実施作業を割り当てたときの評価値Eの合計が最大となるように、実施作業を各時間帯に割り当てる。
【0042】
一例として、ユーザUは12時から13時までの間、すなわち時間帯09及び時間帯10は休憩するとする。すなわち、1日のうちにユーザUが作業可能な時間の合計は9時間であるとする。また、取得部30が取得した実施作業は作業01、作業02、及び作業03の3種類であり、作業時間として割り当てられた時間がそれぞれ3時間、2時間、及び4時間(合計9時間)であるとする。さらに、ユーザUがある作業を遂行しているとき、ユーザUは別の作業を同時に遂行できないものとする。
【0043】
ここで、x(t,i)を0又は1を取る2値関数とし、ユーザUが時間帯tに作業iを遂行する場合に1、遂行しない場合に0を取るものとする。ユーザUがある作業を遂行しているとき、ユーザUは別の作業を同時に遂行できないため、休憩時間を除く全ての時間帯tについて、x(t,i)は以下の式(2)を満たさなければならない。
【0044】
【0045】
式(2)は、全ての時間帯tについて、i≠jのとき、x(t,i)=1であれば、x(t,j)=0であることを示している。
【0046】
ユーザUが時間帯tに作業iを実行した場合の評価値EはEtiであるから、実施作業割当部32は、式(2)に示す条件の下、以下の式(3)で示す評価関数Fを最大化するようなx(t,i)を求めることになる。
【0047】
【0048】
式(2)及び式(3)は、いわゆる線形計画問題である。実施作業割当部32は、既知の線形計画法を用いることにより、式(2)に示す条件の下、以下の式(3)で示す評価関数Fを最大化するようなx(t,i)の最適解を求めることができる。なお、式(3)において、休憩時間帯はtから除く。すなわち、実施作業割当部32は、複数の時間帯のうちあらかじめ定められ少なくとも1つの時間帯には実施作業を割り当てないことを制約条件として、線形計画問題を解いて実施作業を各時間帯に割り当てる。このように、実施作業割当部32は、休憩時間を線形計画問題の制約条件として組み込むことにより、作業スケジュール中に休憩時間を組み込むことができる。
【0049】
図4は、実施の形態に係る実施作業割当部32が生成したスケジュールの一例を模式的に示す図である。具体的には、
図4は、取得部30が取得した実施作業が作業01、作業02、及び作業03の3種類であり、各実施作業の割り当てられた時間がそれぞれ3時間、2時間、及び4時間であり、ユーザUが12時から13時まで休憩する場合のx(t,i)の最適解を示す図である。
【0050】
図4は、各時間帯で「1」が記載されている作業を、その時間帯で遂行することを示している。ここで、各時間帯は30分間である。したがって、作業01に関する合計が6であることは、ユーザUは、作業01を合計で3時間(30分間×6=180分間)作業することを示している。例えば、
図4は、ユーザUが作業02を遂行すべき時間帯は、8時から9時までの1時間、10時から10時30分までの30分間、及び11時30分から12時までの30分間、合計で2時間であることを示している。
【0051】
このように、情報処理装置1は、作業遂行のためにユーザUに要求される能力に基づいて、実施作業を効率よく遂行するための作業スケジュールをユーザU毎に組み立てることができる。
【0052】
[作業者データベース20]
図5は、実施の形態に係る作業者データベース20のデータ構造を模式的に示す図である。あるユーザUの1日の集中力及び発想力は、ユーザUの疲労状態によって変化しうる。例えば、ユーザUが睡眠を全く取っていない徹夜明けの場合、ユーザUが十分に睡眠を取っている場合と比べて、ユーザUの集中力は低下すると考えられる。
【0053】
そこで作業者データベース20は、ユーザUの前日の睡眠時間毎に、各ユーザUそれぞれについて、時間帯毎の第1指標と第2指標とを格納している。すなわち、作業者データベース20は、ユーザUの睡眠時間の長短に応じて異なる第1指標及び第2指標を格納している。なお、各ユーザUにはユーザUを特定するためのユーザ識別子が割り当てられており、作業者データベース20は、ユーザ識別子を用いてユーザUを管理している。
【0054】
図5には、ユーザ識別子がUID000002であるユーザUについて、前日の睡眠時間が3時間以上4時間未満である場合における各時間帯の第1指標及び第2指標が例示されている。
【0055】
第1指標及び第2指標がユーザUの睡眠時間の長さに応じて変化するため、睡眠時間取得部33は、ユーザUの睡眠時間の長さを取得する。これにより、算出部31は、ユーザUの睡眠時間の長さに応じて評価値Eを算出することができる。
【0056】
ここで、ユーザUの睡眠時間が短い場合等には、時間帯によっては、例えばユーザUの集中力が極度に低下し、作業に支障を来すことも起こりうる。ユーザUの集中力が一定以上低下している時間帯は、作業を継続するよりも休憩した方がよい場合もある。
【0057】
そこで、実施作業割当部32は、睡眠時間取得部33が取得した睡眠時間の長さに基づいて作業者データベース20を参照して取得した第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合、複数の時間帯のうち実施作業を割り当てない時間帯を追加して、実施作業を各時間帯に割り当てる。
【0058】
ここで「所定の休憩追加条件」とは、ユーザUの状態が作業を継続するよりも休憩した方がよい状態であると推定される条件であり、例えばユーザUの集中力が一定以上低下している場合である。実施作業割当部32は、作業者データベース20を参照して取得した第1指標が所定の値以下となる時間帯を休憩時間とし、実施作業を割り当てない時間帯とする。これにより、実施作業割当部32は、休憩を必要とすると考えられるユーザUに提供する作業スケジュールの中に、休憩時間を含めることができる。
【0059】
ところで、ユーザUが1日のうちで実施作業の遂行に割り当てられる時間帯には限りがある。例えば、
図3に示す例では、時間帯01から時間帯20までの20個の時間帯のうち、昼休みである時間帯09及び時間帯10を除いた18個の時間帯(合計9時間)が実施作業の遂行に割り当てられる時間である。そのため、実施作業割当部32が、所定の休憩追加条件を満たすことに伴って休憩時間を追加すると、ユーザUは実施作業の遂行に割り当てられる時間帯が不足することになる。
【0060】
そこで、選択受付部34は、睡眠時間の長さに基づいて作業者データベース20を参照して取得した第1指標が所定の休憩追加条件を満たしている場合に、(1)複数の時間帯に新たな時間帯を追加するか、又は、(2)実施作業に割り当てる作業時間を減少させるか、のいずれかの選択をユーザUから受け付ける。前者はいわゆる「残業」である。
【0061】
実施作業割当部32は、選択受付部34がユーザUから受け付けた選択に基づく条件下で、実施作業を各時間帯に割り当てる。これにより、実施作業割当部32は、ユーザUの状態を考慮した作業スケジュールをユーザUに提供することができる。
【0062】
以上、ユーザUの1日の集中力及び発想力の変遷に基づいて、実施作業割当部32が最適な作業スケジュールを生成する場合について説明した。ここで、例えば打ち合わせ等のように、ユーザUが他者と協力しながら仕事をする場合等には、あらかじめスケジュールが固定されている時間帯が存在しうる。
【0063】
そこで、実施作業割当部32は、複数の時間帯のうちあらかじめ定められた少なくとも1つの時間帯に所定の実施作業が割り当てられることを制約条件として、実施作業を各時間帯に割り当ててもよい。例えば、実施作業割当部32は、時間帯02に打ち合わせがある場合には、時間帯02に他の実施作業を割り当てないことを制約条件として、線形計画問題を解く。これにより、実施作業割当部32は、打ち合わせや移動時間等、ユーザUの裁量で遂行すべき作業を選ぶことができない時間帯があっても、その時間帯を除いた他の時間帯において最適な作業スケジュールを生成することができる。
【0064】
図6は、実施の形態に係る実施作業割当部32が生成した作業スケジュールの一例を模式的に示す図である。
図6に示すように、実施作業割当部32は、各時間帯においてユーザUが遂行すべき実施作業を表形式にまとめた作業スケジュールを生成する。実施作業割当部32は、例えば無線通信回線を介して、ユーザUが所持する端末(不図示)に作業スケジュールを送信する。
【0065】
なお、
図6において、括弧で囲まれた実施作業は、実施作業割当部32が制約条件としてあらかじめ固定された項目であることを示している。ユーザUは、実施作業割当部32から送信された作業スケジュールを見ることにより、実施作業を効率よく遂行することができる。
【0066】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図7は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0067】
取得部30は、作業者であるユーザUが1日に遂行すべき作業である2以上の実施作業と、各実施作業に割り当てる作業時間とをユーザUから取得する(S2)。睡眠時間取得部33は、ユーザUの睡眠時間の長さを取得する(S4)。
【0068】
睡眠時間の長さに基づいて実施作業割当部32が作業者データベース20を参照して取得したユーザUの集中力に関する指標である第1指標が所定の休憩追加条件を満たす場合(S6のYes)、実施作業割当部32は、作業スケジュール中に新たな休憩時間を追加する(S8)。
【0069】
選択受付部34が、ユーザUから複数の時間帯に新たな作業時間用の時間帯を追加する旨の選択を受け付けた場合(S10のYes)、実施作業割当部32は、作業スケジュール中に新たな時間帯を追加する(S12)。選択受付部34が、ユーザUから実施作業に割り当てる作業時間を減少させる旨の選択を受け付けた場合(S10のNo)、実施作業割当部32は、実施作業に割り当てる作業時間を減少させる(S14)。
【0070】
睡眠時間の長さに基づいて実施作業割当部32が作業者データベース20を参照して取得したユーザUの集中力に関する指標である第1指標が所定の休憩追加条件を満たしていない場合(S6のNo)、又は、実施作業割当部32が作業スケジュール中に新たな時間帯を追加するか、あるいは実施作業割当部32が実施作業に割り当てる作業時間を減少させることを条件として、実施作業割当部32は、取得部30がユーザUから取得した各実施作業それぞれに、遂行すべき時間帯を割り当てる(S16)。実施作業割当部32が時間帯の割り当てを完了すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0071】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、作業遂行のためにユーザUに要求される能力に基づいて、実施作業を効率よく遂行するための作業スケジュールをユーザU毎に組み立てることができる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0073】
<変形例>
上記では、あらかじめ取得部30がユーザUから取得した実施作業及びその実施作業に割り当てる時間に基づいて、実施作業割当部32が1日の作業スケジュールを生成することについて主に説明した。ここで、ユーザUが実施作業を遂行している途中で別の打ち合わせや急ぎの作業依頼が割り込むことも起こりうる。このような場合、ユーザUがあらかじめ予定していた実施作業に割り当てる時間が不足することになる。
【0074】
そこで、選択受付部34は、休憩時間の追加の場合と同様に、残業分の時間帯を追加するか、あるいはあらかじめ予定していた実施作業に割り当てる作業時間を減少させるかに関するユーザUの選択を受け付ける。実施作業割当部32は、選択受付部34が受け付けた選択に基づく制約条件の下、作業スケジュールを再計算する。これにより、変形例に係る情報処理装置1は、ユーザUが実施作業を遂行している途中で別の打ち合わせや急ぎの作業依頼が割り込んだ場合に、その作業を考慮した最適な作業スケジュールを生成することができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・情報処理装置
2・・・記憶部
20・・・作業者データベース
21・・・作業データベース
3・・・制御部
30・・・取得部
31・・・算出部
32・・・実施作業割当部
33・・・睡眠時間取得部
34・・・選択受付部